説明

無線通信装置、及びそれを使った列車制御システム

【課題】発生した通信エラーがノイズや干渉等の外的要因によって発生したものかどうかを判断するための情報を出力する仕組みを提供する。
【解決手段】無線通信装置、及びそれを使った列車制御システムであって、無線信号を記録するデータ記録部と、該無線信号の受信エラーを判定するエラー判定部と、少なくとも通信時刻を含むエラー情報を記録するエラー情報記録部と、該無線信号及び該エラー情報を出力するデータ出力部を有し、該エラー判定部が該無線信号の受信をエラーと判定したときに、該データ記録部が該無線信号を記録し、該エラー情報記録部が該エラー情報を記録し、該データ出力部が該無線信号及び該エラー情報を出力することを特徴とする無線通信装置、及びそれを使った列車制御システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信装置、及びそれを使った列車制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
本技術分野の背景技術として、特開2007−124215号公報(特許文献1)がある。この公報には、通信装置が無線である事の明示はないが、ネットワーク上の通信をモニターし、モニターするフレームを分析し、セッション情報に対応付けて出力する旨の記載がある。また、WO2007/049547(特許文献2)がある。この公報では、ランダムなタイミングで異なる無線局から到来する干渉信号を判別することを目的としている。この目的達成のため、受信信号に含まれる干渉信号の特徴量を保存するための方法として、受信信号の特徴量を求める特徴量算出ステップと、受信信号に希望信号が含まれる可能性を判定し、受信信号に希望信号が含まれる可能性がないと判断した場合に受信信号が干渉信号であると判定する受信信号判定ステップと、受信信号判定ステップにおいて受信信号に希望信号が含まれる可能性がないと判定した場合に、受信信号の特徴量を干渉信号特徴量として保存する干渉信号特徴量保存ステップとを備えると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−124215号公報
【特許文献2】WO2007/049547
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記特許文献1には、ネットワーク上の通信をモニターする仕組みが記載されている。しかし、特許文献1ではネットワーク上の通信をモニターし、モニターするフレームを分析し、セッション情報に対応付けて出力する旨の記載があるが、信号データをデジタルサンプリングし記録するという記載はなく、ノイズや干渉等の外的要因によってエラーが発生したのかどうかを判定するための情報は得られない。
【0005】
前記特許文献2には、干渉信号の特徴量を保存する仕組みが記載されている。しかし、特許文献2では干渉信号の特徴量のみを保存し、信号データそのものを記録することはしないため、ノイズや干渉等の外的要因によってエラーが発生したのかどうかを判定するための情報は得られない。
【0006】
そこで、本発明は、発生した通信エラーがノイズや干渉等の外的要因によって発生したものかどうかを判断するための情報を出力する仕組みを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、例えば特許請求の範囲に記載の構成を採用する。
【0008】
本願は上記課題を解決する手段を複数含んでいるが、その一例を挙げるならば、受信した無線信号を記録するデータ記録部と、無線信号の受信エラーを判定するエラー判定部と、通信時刻を含むエラー情報を記録するエラー情報記録部と、無線信号及び前記エラー情報を出力するデータ出力部と、を有し、エラー判定部が前記無線信号の受信をエラーと判定したときに、データ記録部は無線信号を記録し、エラー情報記録部はエラー情報を記録し、データ出力部が無線信号及びエラー情報を出力することを特徴とする無線通信装置である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、無線通信エラーが発生した際に、そのエラー要因がノイズや干渉等の外的な要因によるものか、そうでないかを判断するための情報を得ることができる。
【0010】
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】無線通信装置の構成図の例である。
【図2】無線通信装置の処理を説明するフローチャートの例である。
【図3】無線信号を格納するテーブルの例である。
【図4】エラー情報を格納するテーブルの例である。
【図5】データ出力部の無線信号及びエラー情報表示の例である。
【図6】無線通信装置の構成図の例である。
【図7】無線通信装置の処理を説明するフローチャートの例である。
【図8】無線信号のパケットフォーマットの例である。
【図9】エラーログ及びエラー情報テーブルの例である。
【図10】無線信号及びエラー情報表示の例である。
【図11】列車制御システムの構成図の例である。
【図12】列車制御システムの処理を説明するフローチャートの例である。
【図13】無線信号及びエラー情報表示の例である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を用いて複数の実施例について説明する。
【実施例1】
【0013】
実施例1では、無線信号とエラー情報の出力を行う無線通信装置の例を説明する。
【0014】
図1は、実施例1における無線通信装置の構成図の例である。無線通信装置は、受信処理部101、エラー判定部102、データ記録部103、エラー情報記録部104、データ出力部105から構成される。受信処理部101は、受信した電波をデジタルサンプリングし、無線信号107としてデータ記録部103へ出力する。また受信した電波を復調処理し、受信データ106としてエラー判定部102へ出力する。エラー判定部102は、受信データ106を入力として受け取り、受信データ106の誤り判定処理を行う。またエラー判定部102は、誤り判定処理の結果をエラー情報108としてエラー情報記録部104へ出力する。データ記録部103は、無線信号107を入力として受け取り、メモリ等の記録媒体に記録する。エラー情報記録部104は、エラー情報108を入力として受け取り、メモリ等の記録媒体に記録する。データ出力部105は、無線信号107、及びエラー情報108を入力として受け取り、表示装置等へ表示する。
【0015】
図2は、無線通信装置の処理を説明するフローチャートの例である。無線通信装置は、電源投入後、無線信号の受信待機を開始する(201)。受信処理部101は、受信電力の増大等を検知することで、無線信号107を検出する(202)。受信処理部101は、無線信号107を検出できない場合、受信待機を継続する(201)。受信処理部101が無線信号107を検出した場合は、データ記録部103がその無線信号107の記録を開始する(203)。受信処理部101は、その無線信号107の復調処理及び復号処理を行う(204)。受信処理が終了後、エラー判定部102は、エラー判定処理を行う(205)。エラー判定結果が正常だった場合、データ記録部103は、記録した無線信号107を棄却する(206)。エラー判定結果が正常でなかった場合は、エラー判定部102は受信エラーと判定する(207)。そしてエラー情報記録部104は、エラー判定部102が出力したエラー情報108を保存する(208)。そしてデータ記録部103は、無線信号107を保存する(209)。そしてデータ出力部105は、無線信号107をデータ記録部103から受け取り、エラー情報108をエラー情報記録部104から受け取り、これらの無線信号107とエラー情報108を対応付けて表示装置や外部インタフェース等へ出力する(210)。
【0016】
図3は、無線信号107を格納するテーブルの例である。無線信号データ格納テーブル301は、無線信号をデジタルサンプリングしたデータが格納されている。縦軸に周波数、横軸に時間をとり、値には電力値が格納される。無線信号データ格納テーブル301では、任意の周波数帯域幅を、mステップに離散化した場合の例を示している。同様に、任意の時間幅を、nステップに離散化した場合の例を示している。電力値は、量子化されたデジタル値が格納される。このテーブルにより、周波数軸と時間軸にデジタルサンプリングされた無線信号107を記録することができる。
【0017】
図4は、エラー情報108を格納するテーブルの例である。エラー情報格納テーブル401は、少なくとも通信時刻、及びエラー情報をn個格納する。通信時刻は、例として受信処理部101が受信処理を行った時刻が格納される。エラー情報108は、例として受信データ106のビット誤り数が格納される。
【0018】
図5は、データ出力部105の無線信号107及びエラー情報108表示の例である。無線信号データ表示501は、無線信号107の表示の例である。縦軸に周波数、横軸に時間をとり、表示色の濃さで受信電力の大小を表現する。無線信号データ表示501は、細い周波数帯域幅の信号が所望の無線信号であり、広い周波数帯域幅の信号が所望でない干渉信号を表している。すわなち、無線信号データ表示501は所望の無線信号に、干渉信号が衝突している様子を表している。エラー情報表示502は、エラー情報108の表示の例である。エラー情報表示502に示された通信時刻に受信した無線信号107に関するエラー情報108を表している。
【0019】
以上に説明した構成により、受信エラー時の無線信号、及びエラー情報の出力を得ることができる。また、エラー情報と当該受信エラーとなった無線信号を対応付けて得ることができる。このことによって、受信エラーの原因が干渉信号によるものであったのか、そうでなかったのかを判断するためのデータを取得することができる。
【実施例2】
【0020】
実施例2では、無線信号及びエラー情報の出力だけでなく、無線信号及びエラー情報の対応付けと、干渉信号の受信回数の出力も行える無線通信装置の例を説明する。
【0021】
図6は、実施例2における無線通信装置の構成図の例である。無線通信装置はアンテナ601、RF部602、ADC603、同期処理部604、復調処理部605、復号処理部606、誤り訂正部607、CRCチェック部608(実施例1のエラー判定部102に対応)、パケット検出部609、データ記録部610、時刻記録部611、干渉回数カウンタ612、エラー情報記録部613、エラーログ作成部614、外部インタフェース615から構成される。ここで、無線通信装置はアンテナ601、RF部602、ADC603、同期処理部604、復調処理部605、復号処理部606、誤り訂正部607、は実施例1における受信処理部101に対応しており、CRCチェック部608は実施例1のエラー判定部102に対応している。
【0022】
アンテナ601は到来した無線信号の電力を増幅しRF部602へ送る。RF部602は、高周波帯の電気信号である無線信号の周波数はダウンコンバートし、低い周波数帯の信号(ベースバンド信号)へ変換する。ベースバンド信号は、ADC603でデジタルサンプリングされ、デジタルデータへ変換された無線信号107を出力する。同期処理部604は、無線信号107の周波数及び位相の補正を行う。復調処理部605は、補正された無線信号107に対して復調処理を行い、符号化された受信データ106を出力する。復号処理部606は、符号化された受信データ106に対して復号処理を行い、元情報に相当するビット列からなる受信データ106を出力する。誤り訂正部607は、ビット列からなる受信データ106に対して、誤り訂正処理を行い、誤り訂正後の受信データ106を出力する。CRCチェック部608は、誤り訂正後の受信データ106に対してCRC誤り検出処理を行い、誤り検出結果(エラー情報)を出力し、また、受信データ106を出力する。パケット検出部609は、同期処理部604で補正した無線信号107が所望の無線信号であるかどうかを判定する処理を行う。データ記録部610は、無線信号107をメモリ等の記録媒体へ記録する。時刻記録部611は、無線信号107の受信時刻を記録する。干渉回数カウンタ612は、パケット検出部609が所望の無線信号107を検出できなかった回数を記録する。エラー情報記録部613は、復号処理部606、誤り訂正部607、CRCチェック部608のそれぞれの処理結果を記録する。エラーログ作成部614は、データ記録部610に記録された無線信号107、時刻記録部611に記録された受信時刻、干渉回数カウンタ612に記録されたパケット検出部609が所望の無線信号107を検出できなかった回数、エラー情報記録部613に記録された上記それぞれの処理結果、の各情報を受け取り、各情報を対応付けたエラーログを作成する。外部インタフェース615は、CRCチェック部608の誤り検出結果及び受信データ106、エラーログ作成部614の作成したエラーログを受け取り、データ解析・表示装置1003などのデータ出力部を含む外部の装置へ出力する。
【0023】
図7は、実施例2における無線通信装置の処理を説明するフローチャートの例である。無線通信装置は、電源投入後、無線信号の受信待機を開始する(701)。同期処理部604は、受信電力の増大等を検知することで、無線信号107を検出する(702)。同期処理部604は、無線信号107を検出できない場合、受信待機を継続する(701)。同期処理部604が無線信号107を検出した場合は、データ記録部610がその無線信号107の記録を開始する(703)。さらに時刻記録部611は、受信時刻の値を保存する(704)。パケット検出部609は、無線信号107に対してプリアンブルと呼ぶ既知パターン信号の検出を行う(705)。プリアンブルを検出できなかった場合は、干渉信号と判定する(711)。無線信号107が干渉信号と判定された場合、干渉回数カウンタ612は、干渉回数のカウントを+1増やす(712)。またデータ記録部610は、記録した無線信号107を干渉信号としてメモリ等の記録媒体へ保存する(713)。また時刻記録部611は、記録した受信時刻を干渉信号の受信時刻としてメモリ等の記録媒体へ保存する。その後、受信待機開始状態へ戻る(701)。
【0024】
パケット検出部609がプリアンブルを検出できた場合は、復調処理部605が、復調処理を行う(706)。復調処理が終了後、復号処理部606が、復号処理を行う(707)。復号処理が終了後、誤り訂正部607は、誤り訂正の処理を行う(723)。誤り訂正が終了後、CRCチェック部608は、CRCチェック処理を行う(708)。CRCチェック結果が正常だった場合、データ記録部610は、記録した無線信号107を棄却する(709)。CRCチェック部608は、正常な受信データ106を外部インタフェース615へ出力する。そして受信待機状態へ戻り(701)、1つの受信処理が完了したことになる。
【0025】
CRCチェック部608のCRCチェック結果が正常でなかった場合は、CRCチェック部608は受信エラーと判定する(715)。そしてエラー情報記録部613は、復号処理部606、誤り訂正部607、CRCチェック部608がそれぞれ出力したエラー情報108を保存する。そしてエラーログ作成部614は、エラー情報108と無線信号を対応付け(716)、さらに受信時刻と無線信号を対応付け(717)、さらに干渉回数を無線信号と対応付ける(718)。さらにエラーログ作成部614は、受信時刻と干渉時刻の差が予め設定された閾値以下であるかどうかを判定する(719)。判定の結果、閾値以下であった場合は、記録した干渉信号が、判定したCRCチェックエラーと関連するものと判定し、干渉信号及び干渉時刻を、無線信号と対応付ける(720)。さらにエラーログ作成部614はここまで対応付けたデータをログとして作成し(721)、外部インタフェース615へ出力する。
【0026】
図8は、無線信号のパケットフォーマットの例である。パケットフォーマットは、MACヘッダ情報801、データ情報802、リードソロモン符号803、CRC符号804から構成される。MACヘッダ情報801は、宛先アドレスの情報やパケット長などの情報が格納される。データ情報802は、アプリケーションで利用される様々な情報が格納される。例として、列車制御システムで用いられる列車制御情報などが挙げられる。リードソロモン符号803は、誤り訂正部607が、リードソロモン誤り訂正を行うために必要となるビット列である。リードソロモン符号化の処理を行うことにより、生成される。なお、必ずしもリードソロモン誤り訂正処理である必要はなく、ブロック符号を用いた誤り訂正を用いても良い。CRC符号804は、CRCチェック部608がCRCチェックを行うために必要となるビット列である。
【0027】
図9は、エラーログ及びエラー情報テーブルの例である。エラーログテーブル901は、番号、通信時刻、エラー情報、無線信号、干渉回数、干渉信号を情報として持つ。番号は、ログデータの個数を表す。通信時刻は、ログの対象となる通信が発生した時刻を表す。エラー情報は、エラー情報テーブル902で示す情報を持つ。無線信号は、受信した電波をデジタルサンプリングしたデータとなる。干渉回数は、パケット検出に失敗した回数を表す。干渉信号は、パケット検出に失敗したときの無線信号をデジタルサンプリングしたデータとなる。エラー情報テーブル902は、番号、受信処理結果、ビタビ訂正ビット数、リードソロモンシンドローム、CRCチェック結果、訂正後ビット列を持ち、通信エラーの内容に関する情報を表す。番号はエラー情報の個数を表す。受信処理結果は、各受信処理ステップ702から708において、どのステップまで処理が進んだかを表す。ビタビ訂正ビット数は、復号処理部606が復号処理としてビタビ誤り訂正を行った際に、訂正したビット数を表す。リードソロモンシンドロームは、誤り訂正部607が、リードソロモン誤り訂正処理を行った際に出力されるシンドローム値を表す。CRCチェック結果は、CRCチェック部608が行ったCRCチェックの結果を表す。訂正後ビット数列は、誤り訂正部607の処理の結果、得られたビット列の情報を表す。
【0028】
図10は、無線信号及びエラー情報表示の例である。無線通信装置1001と、データ解析・表示装置1003が、データ線1002で接続された構成となる。無線通信装置1001が出力した無線信号、及びエラー情報が、データ線1002を経由し、データ解析・表示装置1003へ送信される。データ解析・表示装置1003は、受け取った無線信号、及びエラー情報を表示する。
【0029】
以上に説明した構成により、受信エラー時の無線信号、及びエラー情報の出力を得ることができる。また、エラー情報と当該受信エラーとなった無線信号を対応付けて得ることができる。さらに、干渉回数や、ビタビ誤り訂正処理やリードソロモン誤り訂正処理によってカウントしたエラービット数、訂正処理の有無などの詳細な情報を得ることができる。このことによって、受信エラーの原因が外的要因である干渉信号によるものであったのか、そうでなかったのかを判断するためのより詳細なデータを取得することができる。
【実施例3】
【0030】
実施例3では、実施例2で示した無線通信装置を用いることによって、無線信号及びエラー情報を表示し、システム停止の原因となった通信エラーに関する情報を取得できる列車制御システムの例を説明する。
【0031】
図11は、列車制御システムの構成図の例である。列車制御システムは、論理部1101、有線ネットワーク1102、ゲートウェイ1103、中継機1104、AP(アクセスポイント)1105、列車1106、STA(ステーション)1107、線路1108から構成される。論理部1101は、例えばコンピュータや制御基板で実現されるデジタル処理装置である。論理部1101は、列車1106に対し、制御情報を送信し、車両からの位置情報を受信する。有線ネットワーク1102は、光通信ケーブルやイーサネット(登録商標)等のメタル通信ケーブルで実現される。論理部1101と中継機1104の間を接続する。また、中継機1104とAP1105の間を接続する。ゲートウェイ1103は、複数の有線ネットワーク1102同士を接続する処理を行う。論理部1101が送信する列車制御情報は、有線ネットワーク1102及び中継機1104を経由し、AP1105へ到達する。AP1105は、列車制御情報を無線信号として送信する。AP1105は、実施例1又は2に示す地上側の無線通信装置で実現される。列車1106は、線路1108を走行しながら、AP1105と無線通信を行う。列車1106は、STA1107を搭載する。STA1107は実施例1又は2に示す車上側の無線通信装置で実現される。AP1105が送信した列車制御情報は、STA1107が受信する。STA1107は受信した列車制御情報に基づいて列車1106を制御する。STA1107は、列車1106の位置情報をAP1105へ送信する。AP1105が受信した位置情報は、有線ネットワーク1102及び中継機1104を経由し、論理部1101が受信する。論理部1101は、受信した位置情報に基づいて、次の列車制御情報を作成し、送信する。この処理サイクルを繰り返すことで、列車制御が行われる。
【0032】
図12は、列車制御システムの処理を説明するフローチャートの例である。列車制御システムは、電源投入後、システムとしての稼動を開始する(1201)。システムが稼動開始すると、論理部1101は、定周期で列車制御情報である下り電文を送信する(1202)。その後、論理部1101は、STA1107から送信される上り信号の受信待機状態となる(1203)。下り電文は、無線信号としてAP1105から送信される。下り電文を受信したSTA1107は、上り電文を送信する。論理部1101は、上り電文を正常に受信したかどうかを判定する(1204)。論理部1101は、上り電文を正常受信すれば、そのまま次の下り電文の送信処理へと移行する(1202)。論理部1101が、上り電文を正常に受信できなかった場合、AP1105が送信したエラーログを受信する(1205)。論理部1101は、5回連続でエラーログを受信したかどうかを判定する(1206)。5回連続でない場合は、過去に受信した5回分のログより前のログ(6回前のログ)を破棄する(1211)。そして次の電文送信処理へ移る(1202)。論理部1101が、エラーログを5回連続で受信したと判定した場合は、列車1106との通信が途絶したとみなし、緊急停止の措置をとる。ここでは、一つの例として5回連続としたが、回数は適宜設定すれば良い。論理部1101は、過去5回分のエラーログを保存し(1207)、緊急停止信号を列車1106へ送信する(1208)。そして緊急停止アラームを表示し(1209)、保存したエラーログを表示装置1301に表示する(1210)。
【0033】
図13は、無線信号及びエラー情報表示の例である。表示装置1301と論理部1302とデータ線1303で構成される。表示装置1301は、論理部1302が保存したエラーログを表示する。論理部1302はデータ線1303と接続されており、実施例3では、データ線1303が有線ネットワーク1102に該当する。
【0034】
以上に説明した構成により、受信エラー時の無線信号、及びエラー情報の出力を得ることができる。また、エラー情報と当該受信エラーとなった無線信号を対応付けて得ることができる。さらに、列車制御において論理部と車両間の通信が不通となったとき、通信エラーのログを保存し、表示することによって、不通となった原因を解析することができる。このことによって、システム停止の原因となる受信エラーの要因が干渉信号によるものであったのか、そうでなかったのかを判断するためのデータを取得することができる。
【0035】
実施例3においては、地上側の無線通信装置AP1105及び車上側の無線通信装置STA1107が、実施例1又は2に示す無線通信装置であっても良く、いずれか一方の無線通信装置が、実施例1又は2に示す無線通信装置であっても良い。
【符号の説明】
【0036】
101 受信処理部
102 エラー判定部
103、610 データ記録部
104、613 エラー情報記録部
105 データ出力部
106 受信データ
107 無線信号
108 エラー情報
201〜210、701〜722、1201〜1211 フローチャートにおける各処理
301 無線信号データ格納テーブル
401 エラー情報格納テーブル
501 無線信号データ表示
502 エラー情報表示
601 アンテナ
602 RF部
603 ADC(アナログデジタルコンバータ)
604 同期処理部
605 復調処理部
606 復号処理部
607 誤り訂正部
608 CRCチェック部
609 パケット検出部
611 時刻記録部
612 干渉回数カウンタ
614 エラーログ作成部
615 外部インタフェース
801 MACヘッダ情報
802 データ情報
803 リードソロモン符号
804 CRC符号
901 エラーログテーブル
902 エラー情報テーブル
1001 無線通信装置
1002、1303 データ線
1003 データ解析・表示装置
1101、1302 論理部
1102 有線ネットワーク
1103 ゲートウェイ
1104 中継機
1105 AP(アクセスポイント、地上局)
1106 列車
1107 STA(ステーション、車上局)
1108 線路
1301 表示装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
受信した無線信号を記録するデータ記録部と、
前記無線信号の受信エラーを判定するエラー判定部と、
通信時刻を含むエラー情報を記録するエラー情報記録部と、
前記無線信号及び前記エラー情報を出力するデータ出力部と、を有し、
前記エラー判定部が前記無線信号の受信をエラーと判定したときに、前記データ記録部は前記無線信号を記録し、前記エラー情報記録部は前記エラー情報を記録し、前記データ出力部が前記無線信号及び前記エラー情報を出力する
ことを特徴とする無線通信装置。
【請求項2】
請求項1に記載の無線通信装置において、
前記エラー情報と前記無線信号は、対応付けて前記データ出力部に出力されることを特徴とする無線通信装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の無線通信装置において、
前記無線信号を受信した時刻を記録する時刻記録部と、
干渉信号の受信回数を数える干渉回数カウンタと、
前記無線信号と前記エラー情報と前記干渉回数を対応付けるエラーログ作成部と、を有し、
前記エラー判定部が前記無線信号の受信をエラーと判定したときに、
前記エラーログ作成部が、前記無線信号と前記エラー情報と前記干渉回数を対応付けたエラーログを作成することを特徴とする無線通信装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の無線通信装置において、
前記エラー判定部が前記無線信号の受信を正常と判断したときに、前記データ記録部は、記録した無線信号を棄却することを特徴とする無線通信装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の無線通信装置で構成される地上側通信装置と、
前記地上側通信装置へ列車の位置情報を送信する車上側通信装置と、
前記地上側通信装置とネットワークで接続され、前記位置情報に基づいて列車制御情報を生成する論理部と、を備え、
前記地上側通信装置が前記列車制御情報を前記車上側通信装置へ送信することにより列車を制御することを特徴とする列車制御システム。
【請求項6】
請求項5に記載の列車制御システムにおいて、
前記論理部が前記エラー情報を所定回数受信した場合に、緊急停止信号を列車へ送信することを特徴とする列車制御システム。
【請求項7】
請求項1乃至4のいずれかに記載の無線通信装置で構成される車上側通信装置と、
前記車上側通信装置から列車の位置情報を受信する地上側通信装置と、
前記地上側通信装置とネットワークで接続され、前記位置情報に基づいて列車制御情報を生成する論理部と、を備え、
前記地上側通信装置が前記列車制御情報を前記車上側通信装置へ送信することにより列車を制御することを特徴とする列車制御システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−42352(P2013−42352A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−177802(P2011−177802)
【出願日】平成23年8月16日(2011.8.16)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】