説明

無線通信装置、携帯電話機及び無線通信装置制御方法

【課題】基地局と移動局との距離に応じた送信電力の適切な制御による消費電力の低減が行える無線通信装置を提供する。
【解決手段】基準値取得部203は、送信信号の送信タイミングの調整に用いるタイミング調整値を基地局から受信し、受信した前記タイミング調整値に対応する送信電力が過剰か否かを判定する閾値である基準値を取得する。変動量取得部202は、所定のタイミング毎に、基地局が送信した送信電力制御命令を受信し、受信した送信電力制御命令から送信電力の変動量を順次取得する。送信電力算出部201は、送信電力値が基準値取得部203により取得された基準値を超えていない場合、変動量取得部202により取得された送信電力の変動量を基に送信電力値を変動させ、送信電力値が基準値取得部203により取得された基準値を超えている場合、変動量取得部202により取得された送信電力の変動量より少ない変動量を基に送信電力値を変動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信装置、携帯電話機及び無線通信装置制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
移動無線通信システムは、移動局及び無線基地局を有している。移動局では、上り回線(UL:Up Link)においてデータを送信するときに用いる送信電力(以下、単に「UL送信電力」という。)の制御を行う。基地局は、移動局から送信されたデータを受信し、受信レベルを検出する。そして、基地局は、検出した受信レベルが低いと判定すると、下り制御チャネルを使用して、UL送信電力を上げる命令を移動局へ送信する。逆に、検出した受信レベルが高いと判定すると、基地局は、下り制御チャネルを使用して、UL送信電力を下げる命令を移動局へ送信する。UL送信電力の制御命令には、TPC(Transmit Power Control:送信電力制御)値が含まれている。移動局は、基地局から送信されたUL送信電力の制御を指示する命令を受信する。そして、移動局は、受信したUL送信電力の制御を指示する命令からTPC値を抽出する。その後、移動局は、抽出したTPC値を用いて、UL送信電力値の制御を行う。ここで、無線通信システムにおいては、データは時間単位であるフレーム単位で取り扱われ、さらにデータの送受信を行う際には、1フレームのデータを分割したサブフレームを用いて送受信を行う。そして、移動局によるUL送信電力値の制御は、サブフレーム毎に行われる。
【0003】
従来、無線通通信システムにおけるUL送信電力制御では、移動局は、基地局からUL送信電力の制御命令を受けた場合、指定されたTPC値に従って制御を行っていた。しかし、基地局からの伝播路状態が悪い場合では基地局側から送信されたUL送信電力の制御命令が誤ってしてしまう場合や基地局から間違った命令が送信されてくる場合がある。このような場合、本来であれば送信電力を下げなければならない状態にもかかわらず、移動局は、送信電力を上げることを指示するUL送信電力の制御命令を受けてしまうおそれがある。そのため、過剰な送信電力を要求する送信電力制御が行われ、移動局の消費電力の増加や、基地局側において、他の移動局の信号に干渉してしまうおそれがあった。
【0004】
そこで、送信電力を上げる命令を過剰に受けた場合、移動局は、基地局からのUL送信電力の制御命令を無視するマスク処理を行うという従来技術が提案されている。また、パケット専用チャネルを使用しない場合、送信電力制御用チャネルを使用した制御命令の送信を行わないことで、無線資源の無駄な消費を回避する従来技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−186757号公報
【特許文献2】国際公開第2004/027676号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、送信電力制御チャネルを使用した制御命令の送信を停止する従来技術では、送信電力を上げろという指示が過剰か否かの判定はしておらず、過剰な送信電力の上昇を制限することは困難である。また、送信電力を上げろという命令を過剰に受けた場合に、基地局からの制御命令を無視する従来技術では、基地局と移動局との間の距離は考慮されない。実際には、基地局と移動局の距離に応じて必要なUL送信電力は異なる。しかし、従来技術では、制御距離に応じて送信電力が過剰か否かを判定することが困難であり、UL送信電力の制御を基地局と移動局との距離に合せて適切に行うことが困難であった。
【0007】
開示の技術は、上記に鑑みてなされたものであって、基地局と移動局との距離に応じたUL送信電力の適切な制御による消費電力の低減が行える無線通信装置、携帯電話機及び無線通信装置制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願の開示する無線通信装置、携帯電話機及び無線通信装置制御方法は、一つの態様において、基準値取得部は、送信信号の送信タイミングの調整に用いるタイミング調整値を基地局から受信し、受信した前記タイミング調整値に対応する送信電力が過剰か否かを判定する閾値である基準値を取得する。変動量取得部は、所定のタイミング毎に、前記基地局が送信した送信電力制御命令を受信し、受信した前記送信電力制御命令から送信電力の変動量を順次取得する。送信電力算出部は、送信電力値が前記基準値取得部により取得された前記基準値を超えていない場合、前記変動量取得部により取得された送信電力の変動量を基に前記送信電力値を変動させ、送信電力値が前記基準値取得部により取得された前記基準値を超えている場合、前記変動量取得部により取得された送信電力の変動量より少ない変動量を基に前記送信電力値を変動させる。
【発明の効果】
【0009】
本願の開示する無線通信装置、携帯電話機及び無線通信装置制御方法の一つの態様によれば、基地局と移動局との距離に応じたUL送信電力の適切な制御による消費電力の低減が行えるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、基地局と携帯電話機との関係を説明するための概略図である。
【図2】図2は、携帯電話機のブロック図である。
【図3】図3は、実施例1に係る携帯電話機における送信電力制御部のブロック図である。
【図4】図4は、TA制御と基準値との関係を表す対応テーブルの一例の図である。
【図5】図5は、実施例1における送信電力値の調整について説明するための図である。
【図6】図6は、実施例1に係る送信電力制御部による送信電力の算出処理のフローチャートである。
【図7】図7は、実施例2に係る携帯電話機における送信電力制御部のブロック図である。
【図8】図8は、実施例2における送信電力値の調整について説明するための図である。
【図9】図9は、実施例2に係る送信電力制御部による送信電力の算出処理のフローチャートである。
【図10】図10は、携帯電話機のハードウェア構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本願の開示する無線通信装置、携帯電話機及び無線通信装置制御方法の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施例により本願の開示する無線通信装置、携帯電話機及び無線通信装置制御方法が限定されるものではない。特に以下の説明では、無線通信装置として携帯電話機を例に説明するが、これに限らず、基地局との間で無線通信を行う装置であればよい。
【実施例1】
【0012】
図1は、基地局と携帯電話機との関係を説明するための概略図である。図1に示すように、本実施例に係る無線通信装置である携帯電話機1は、基地局2との間で無線通信によるデータパケットの送受信を行う。携帯電話機1は、基地局2が送信した無線信号101を受信する。また、基地局2は、携帯電話機1が送信した無線信号102を受信する。携帯電話機1と基地局2との間のデータパケットの送受信は、フレーム周期で行なわれる。そして、携帯電話機1及び基地局2は、フレームを所定の数に分割したサブフレーム単位でデータパケットの送受信を行う。
【0013】
基地局2は、例えば、無線信号101としてTPC値を含む送信電力の制御命令を携帯電話機1に向けてサブフレーム毎に送信する。この送信電力の制御命令には、送信電力を変動させる量を指示するTPC値が含まれる。また、基地局2は、例えば、無線信号101として携帯電話機1から基地局2への信号の送信タイミングを調整するタイミング制御信号を送信する。基地局2は、このタイミング制御信号によって、送信タイミング制御命令(「TA(Timing Advance)情報」と呼ばれる場合がある。)によるTA制御を携帯電話機1に対して指示する。送信タイミング制御命令には、送信タイミングを早めたり遅くしたりする指示を行うTA制御の値が含まれる。このTA制御の値が「タイミング調整値」の一例にあたる。
【0014】
携帯電話機1は、送信電力の制御命令及びタイミング制御信号を基地局2から受信する。そして、携帯電話機1は、受信した送信電力の制御命令及びタイミング制御信号を用いて送信電力値を算出し、算出した送信電力値でデータを送信する。携帯電話機1による送信電力値の算出については後で詳細に説明する。
【0015】
図2は、携帯電話機のブロック図である。図2に示すように、携帯電話機1は、RF(Radio Frequency)部11、BB(Base Band)部12及びMAC(Medium Access Control)部13を有する。
【0016】
RF部11は、基地局2から送信された無線信号をアンテナを介して受信する。そして、RF部11は、無線信号をベースバンド信号にダウンコンバートし、ダウンコンバートしたベースバンド信号をBB部12に出力する。また、RF部11は、ベースバンド信号の入力をBB部12から受ける。そして、RF部11は、受信したベースバンド信号を無線信号にアップコンバートする。また、RF部11は、送信電力値の入力をBB部12から受ける。そして、RF部11は、受信した送信電力値を用いて、アップコンバートした無線信号を、アンテナを介して基地局2に送信する。
【0017】
BB部12は、サーチャ部121、デモジュレータ部122、デコーダ部123、コーダ部124及びモジュレータ部125を有する。
【0018】
サーチャ部121は、ベースバンド信号の入力をRF部11から受ける。そして、受信したベースバンド信号を用いて、基地局2の特定を行う。また、サーチャ部121は、受信したベースバンド信号を用いて、パス及びパスタイミングの検出などを行う。そして、サーチャ部121は、ベースバンド信号をデモジュレータ部122へ出力する。
【0019】
デモジュレータ部122は、ベースバンド信号の入力をサーチャ部121から受ける。そして、デモジュレータ部122は、受信したベースバンド信号を復調する。その後、デモジュレータ部122は、復調したベースバンド信号をデコーダ部123へ出力する。また、デモジュレータ部122は、受信したベースバンド信号から送信電力の制御命令を取得し、モジュレータ部125へ出力する。
【0020】
デコーダ部123は、符号化されたベースバンド信号の入力をデモジュレータ部122から受ける。そして、デコーダ部123は、受信したベースバンド信号に対して、復号化処理を施す。その後、デコーダ部123は、複合化したベースバンド信号をMAC部13へ出力する。
【0021】
コーダ部124は、基地局2へ送信するデータのベースバンド信号の入力をMAC部13から受ける。そして、コーダ部124は、受信したベースバンド信号に対して符号化処理を施す。その後、コーダ部124は、符号化したベースバンド信号をモジュレータ部125へ出力する。
【0022】
モジュレータ部125は、送信電力制御部200を有する。モジュレータ部125は、基地局2から送られてきた送信電力の制御命令の入力をデモジュレータ部122より受ける。また、モジュレータ部125は、基地局2から送られてきた送信タイミング制御命令を含むタイミング制御信号の入力をMAC部13から受ける。
【0023】
さらに、モジュレータ部125は、基地局2へ送信するデータのベースバンド信号の入力をコーダ部124から受ける。そして、モジュレータ部125は、受信したベースバンド信号を変調する。その後、モジュレータ部125は、受信したタイミング制御信号を用いて信号の送信タイミングを調整した後、変調したベースバンド信号をRF部11へ出力する。
【0024】
また、送信電力制御部200は、基地局2から受信した送信電力の制御命令及び送信タイミング制御命令を用いて送信電力値を算出する。そして、モジュレータ部125は、送信電力制御部200が算出した送信電力値をRF部11へ出力する。送信電力制御部200による送信電力値の算出については次に詳細に説明する。
【0025】
MAC部13は、MACヘッダなどのプロトコル解析といった携帯電話機1と基地局2との間のMACレイヤに関する処理などを行う。MAC部13は、ベースバンド信号の入力をデコーダ部123から受ける。そして、MAC部13は、受信したベースバンド信号に対してMACレイヤに関する処理を施し、操作者に提供する。また、MAC部13は、受信したベースバンド信号から送信タイミング制御命令を含むタイミング制御信号を取得し、モジュレータ部125へ出力する。
【0026】
さらに、MAC部13は、操作者が入力した送信データを取得する。そして、MAC部13は、受信した送信データに対して、MACレイヤに関する処理を施しベースバンド信号を生成して、生成したベースバンド信号をコーダ部124へ出力する。
【0027】
図3は、実施例1に係る携帯電話機における送信電力制御部のブロック図である。図3では、説明を分かりやすくするため、RF部11及び送信電力制御部200以外の各部を省略している。
【0028】
図3に示すように、送信電力制御部200は、送信電力算出部201、変動量取得部202及び基準値取得部203を有している。そして、送信電力算出部201は、送信電力制御値調整部211、累積加算部212及び初期電力値加算部213を有している。
【0029】
変動量取得部202は、TPC値と送信電力の変動量との対応関係を表す変動量算出テーブルを記憶している。変動量取得部202は、デモジュレータ部122からサブフレーム毎に入力される基地局2から送られてきた送信電力の制御命令を取得する。このサブフレームが「所定のタイミング」の一例にあたる。そして、変動量取得部202は、取得した送信電力の制御命令からTPC値を抽出する。そして、変動量取得部202は、抽出したTPC値に対応する送信電力の変動量を自己が有する変動量算出テーブルから取得する。そして、変動量取得部202は、取得した変動量を送信電力制御値調整部211へ出力する。
【0030】
基準値取得部203は、図4に示すようなTA制御と基準値との関係を表す対応テーブル300を記憶している。図4は、TA制御と基準値との関係を表す対応テーブルの一例の図である。基準値とは、送信電力が過剰になっているか否かを判定するための閾値である。すなわち、送信電力値が基準値を超えた場合に、その送信電力は過剰と判定される。
【0031】
ここで、TA制御と基準値との関係を表す対応テーブル300について説明する。本実施例では分かりやすいように対応テーブル300は、TA制御の値が小さい順に紙面に向かって上から下に向けて並んでいる。対応テーブル300では、TA制御の値301が最小のTA制御の値であり、0〜2564である。また、TA制御の値303が最大のTA制御の値であり、17949〜20512である。ここで、携帯電話機1は、TA制御の値が大きいほど送信タイミングを早くするように制御する。すなわち、TA制御の値が大きいほど、携帯電話機1と基地局2との距離が遠いといえる。つまり、対応テーブル300は、対応テーブル300の紙面に向かって右手に記載する矢印310のように、紙面に向かって下に行くに従い携帯電話機1と基地局2との間の距離が遠くなっていることを表している。
【0032】
これは、携帯電話機1と基地局2との間の距離が遠い場合、大きな出力が必要であり送信電力値が高くなるので、送信電力値が有る程度高くなっても過剰とはいえない。そこで、携帯電話機1と基地局2との間の距離が遠い場合には、基準値を高く設定している。これに対して、携帯電話機1と基地局2との間の距離が近い場合、小さい出力で十分であり送信電力値は低く抑える。そのため、携帯電話機1と基地局2との間の距離が遠い場合と比較して送信電力値が低くても過剰といえる。そこで、携帯電話機1と基地局2との間の距離が遠い場合には、基準値を低く設定している。
【0033】
さらに、対応テーブル300には、それぞれのTA制御の値に対して、基準値が対応付けられて記載されている。例えば、TA制御の値301には、−25dBmである基準値302が対応する。また、TA制御の値303には、+10dBmである基準値304が対応する。すなわち、TA制御の値が小さくなるに従い、言い換えれば携帯電話機1と基地局2との間の距離が遠いほど、そのTA制御の値に対応する基準値は小さい値となる。逆に、TA制御の値が大きくなるに従い、言い換えれば携帯電話機1と基地局2との間の距離が近いほど、そのTA制御の値に対応する基準値は大きい値となる。ここで、対応テーブルは、操作者からの入力を受けて対応するTA制御の値や基準値などを変更できるようにしてもよい。
【0034】
基準値取得部203は、MAC部13からサブフレーム毎に入力されるタイミング制御信号から送信タイミング制御命令を取得する。そして、基準値取得部203は、取得した送信タイミング制御命令からTA制御の値を抽出する。その後、基準値取得部203は、抽出したTA制御の値に対応する基準値を対応テーブル300から取得する。例えば、基準値取得部203は、抽出したTA制御の値がTA制御の値301の場合、−25dBmである基準値302を取得する。そして、基準値取得部203は、取得した基準値を送信電力制御値調整部211へ出力する。
【0035】
送信電力制御値調整部211は、送信電力値が基準値を上回った場合に用いる変動量を予め記憶している。例えば、送信電力制御値調整部211は、送信電力値が基準値を上回った場合に用いる変動量として1dBmの半分である0.5dBmや1dBmの4分の1である0.25dBmなどを記憶している。ここで、送信電力値が基準値を上回った場合に用いる変動量は、基地局2から指定されるいずれの変動量よりも小さい値であれば特に制限はない。ここで、送信電力値が基準値を上回った場合に用いる変動量は、操作者などからの入力を受け付けて変更できるようにしてもよい。
【0036】
送信電力制御値調整部211は、送信電力の変動量の入力を変動量取得部202からサブフレーム毎に受ける。また、送信電力制御値調整部211は、基準値の入力を基準値取得部203からサブフレーム毎に受ける。
【0037】
送信電力制御値調整部211は、初期電力値加算部213から出力された送信電力値を取得する。そして、基地局2から送信電力値を増加させる指示を受けた場合、送信電力制御値調整部211は、取得した送信電力値と基準値とを比較する。取得した送信電力値が基準値よりも低い場合には、受信した送信電力の変動量を累積加算部212へ出力する。これに対して、取得した送信電力値が基準値よりも高い場合、記憶している変動量を出力する。ここで、本実施例では、送信電力制御値調整部211は、基準値を超えた場合に、予め記憶している固定の変動量を出力しているが、これは他の方法でも良く、例えば、基地局2に指定された変動量の予め決められた割合を変動量として出力しても良い。
【0038】
送信電力制御値調整部211は、送信電力を減らす指示を基地局2から受信した場合には、基地局2に指定された変動量を累積加算部212へ出力する。そして、基準値を超えた送信電力値を減らすことで再度基準値を下回った場合には、送信電力制御値調整部211は、その後、基地局2から指定された変動量を累積加算部212へ出力する。
【0039】
累積加算部212は、変動量の入力を送信電力制御値調整部211から受ける。さらに、累積加算部212は、1つ前のサブフレームにおいて出力した累積値をフィードバックして取得する。そして、累積加算部212は、1つ前のサブフレームにおいて出力した累積値に受信した変動量を加算し、今回のサブフレームにおける累積値を算出する。そして、累積加算部212は、算出した累積値を初期電力値加算部213へ出力する。
【0040】
初期電力値加算部213は、初期電力値を予め記憶している。また、初期電力値加算部213は、累積値の入力を累積加算部212から受ける。そして、初期電力値加算部213は、予め記憶している初期電力値に受信した累積値を加えて送信電力値を算出する。その後、初期電力値加算部213は、算出した送信電力値をRF部11へ出力する。また、初期電力値加算部213は、RF部11へ出力した送信電力値を送信電力制御値調整部211へ出力する。
【0041】
図5は、実施例1における送信電力値の調整について説明するための図である。図5は、縦軸を送信電力の電力値(送信電力値)とし、横軸を時間としている。グラフ431は、携帯電話機1と基地局2との間の距離が遠い場合における送信電力の変化を表している。また、グラフ441は、携帯電話機1と基地局2との間の距離が近い場合における送信電力の変化を表している。また、実線401は、送信電力値の最大値を表している。また、実線402は、送信電力値の最小値を表している。さらに、基準値403は、グラフ431のときの基準値を表している。また、基準値404は、グラフ441のときの基準値を表している。すなわち、グラフ431のときのように携帯電話機1と基地局2との間の距離が遠い場合、送信電力制御値調整部211が基準値取得部203から受ける基準値も高くなる。これに対して、グラフ441のときのように携帯電話機1と基地局2との間の距離が近い場合、送信電力制御値調整部211が基準値取得部203から受ける基準値も小さくなる。
【0042】
そして、グラフ431のように、携帯電話機1と基地局2との間の距離が遠い場合、高い基準値である基準値403を超えるまで送信電力制御値調整部211は、基地局2に指定された変動量を累積加算部212へ出力する。グラフ431では、b、bn+1を基地局2から指定された変動量としている。これにより、送信電力値は、基地局2に指定された変動量分増えることになる。すなわち、送信電力値は、b、bn+1と増えていく。そして、点432で基準値403を超えた後は、送信電力制御値調整部211は、予め決められた変動量(ここでは、「d」とする。)を累積加算部212へ出力する。すなわち、送信電力値は、基準値403を超えた後は、dずつ増えていく。この後、基地局2からの指示により送信電力値が減らされ基準値403を下回るまで、基地局2から送信電力値の増加が指示された場合には、送信電力制御値調整部211は、変動量dを累積加算部212へ出力する。
【0043】
また、グラフ441のように、携帯電話機1と基地局2との間の距離が近い場合、低い基準値である基準値404を超えるまで送信電力制御値調整部211は、基地局2に指定された変動量を累積加算部212へ出力する。グラフ441では、b、bm+1を基地局2から指定された変動量としている。これにより、送信電力値は、基地局2に指定された変動量分増えることになる。すなわち、送信電力値は、b、bm+1と増えていく。そして、点442で基準値404を超えた後は、送信電力制御値調整部211は、予め決められた変動量dを累積加算部212へ出力する。すなわち、送信電力値は、基準値404を超えた後は、dずつ増えていく。この後、基地局2からの指示により送信電力値が減らされ基準値404を下回るまで、基地局2から送信電力値の増加が指示された場合には、送信電力制御値調整部211は、変動量dを累積加算部212へ出力する。
【0044】
次に、図6を参照して、本実施例に係る送信電力制御部による送信電力の算出の処理について説明する。図6は、実施例1に係る送信電力制御部による送信電力の算出処理のフローチャートである。ここでは、基地局から送信電力値の増加の指示のみが送られてきた場合で説明する。
【0045】
RF部11は、送信電力の制御命令を基地局2からアンテナを介して受信する(ステップS101)。その後、デモジュレータ部122は、送信電力の制御命令を変動量取得部202へ出力する。
【0046】
変動量取得部202は、デモジュレータ部122から入力された送信電力の制御命令からTPC値を抽出する(ステップS102)。そして、変動量取得部202は、抽出したTPC値に対応する変動量を変動量算出テーブルから取得する(ステップS103)。その後、変動量取得部202は、取得した変動量を送信電力制御値調整部211へ出力する。
【0047】
また、RF部11は、タイミング制御信号を基地局2から受信する(ステップS104)。その後、MAC部13は、タイミング制御信号に含まれる送信タイミング制御命令を基準値取得部203へ出力する。
【0048】
基準値取得部203は、MAC部13から入力された送信タイミング制御命令からTA制御の値を取得する。そして、基準値取得部203は、取得してTA制御の値に対応する基準値をTA制御と基準値との関係を表す対応テーブルから取得する(ステップS105)。その後、基準値取得部203は、取得した基準値を送信電力制御値調整部211へ出力する。
【0049】
送信電力制御値調整部211は、変動量の入力を変動量取得部202から受ける。また、送信電力制御値調整部211は、基準値の入力を基準値取得部203から受ける。さらに、送信電力制御値調整部211は、初期電力値加算部213が出力した送信電力値のフィードバックを受ける。そして、送信電力制御値調整部211は、フィードバックされた送信電力値、言い換えれば、前回の送信電力値が、受信した基準値を超えているか否かを判定する(ステップS106)。
【0050】
送信電力値が基準値を超えていない場合(ステップS106:否定)、送信電力制御値調整部211は、基地局2に指定された変動量を累積加算部212へ出力する(ステップS107)。これに対して、送信電力値が基準値を超えている場合(ステップS106:肯定)、送信電力制御値調整部211は、自己が記憶している予め決められた変動量を累積加算部212へ出力する(ステップS108)。
【0051】
累積加算部212は、フィードバックされた1つ前のサブフレームにおける累積値に送信電力制御値調整部211から入力された変動量を加算して今回のサブフレームにおける累積値を算出する(ステップS109)。そして、累積加算部212は、求めた累積値を初期電力値加算部213へ出力すると共に、その累積値を自己にフィードバックする。
【0052】
初期電力値加算部213は、予め記憶している初期電力値に累積加算部212から受信した累積値を加算して送信電力値を算出する(ステップS110)。そして、初期電力値加算部213は、算出した送信電力値をRF部11へ出力すると共に、その送信電力値を送信電力制御値調整部211へフィードバックする。
【0053】
RF部11は、初期電力値加算部213から受信した送信電力値を用いて、今回のサブフレームにおけるデータを基地局に送信する(ステップS111)。
【0054】
送信電力制御部200は、基地局2へのデータの送信が完了したか否かを判定する(ステップS112)。送信電力制御部200がデータの送信が完了していないと判定した場合(ステップS112:否定)、ステップS101へ戻る。これに対して、データの送信が完了している場合(ステップS112:肯定)、送信電力制御部200は、送信電力値の算出の処理を終了する。
【0055】
ステップS101〜S111はサブフレーム毎に繰り返されることになる。
【0056】
ここで、図6のフローチャートでは、制御命令の受信から変動量の取得までのステップ(ステップS101〜S103)の後にタイミング制御信号の取得から基準値を取得するまでのステップ(ステップS104〜S105)を行なっている。ただし、ステップS101〜S103とステップS104〜S105の順番は逆でも良く、また並行して行なわれてもよい。
【0057】
また、図6のフローでは、予め決められた変動量を出力した後も、送信電力値が基準値を超えているかの判定を行なっているが、これは他の方法でもよい。例えば、予め決められた変動量を出力した場合、次からは、送信電力制御値調整部211は、判定を行なわずに、予め決められた変動量を出力してもよい。ただし、図6のフローの流れでも、送信電力値が基準値を超えた場合には、次の判定においても送信電力値が基準値を超えるので、問題は無い。
【0058】
以上に説明したように、本実施例に係る無線通信装置は、基地局から指定されたTA制御の値に応じた基準値を用いて、送信電力が過剰となっているか否かを判定し、過剰の場合には、送信電力の増加を抑える。これにより、自装置と基地局との間の距離に応じて送信電力の過剰を判断することができ、UL送信電力の制御を適切に行うことができる。また、基準値を超えた場合にも、抑えた変化量を用いることで、過剰と判断した場合に送信電力の増加を禁止してしまう場合に比べて、細かい制御を行うことができる。例えば、無線通信装置が過剰と判断したが、実際には基地局の指定する変化量が要求される場合にも、本実施例に係る無線通信装置は、送信電力を徐々に増加させるので、要求される変化量に達することが可能となる。
【実施例2】
【0059】
図7は、実施例2に係る携帯電話機における送信電力制御部のブロック図である。本実施例に係る無線通信装置における送信電力制御部は、実施例1における送信電力の過剰の判定に加えて、累積値の増加量を送信電力が過剰か否かの判定に用いることが実施例1と異なるものである。そこで、以下では、送信電力制御部による送信電力の過剰の判定について主に説明する。図7において、図3と同じ符号を有する各部は、特に説明の無い限り同じ機能を有するものとする。また、本実施例に係る携帯電話機1も、図1を用いて実施例1で説明したように、基地局2と無線通信を行う。さらに、本実施例に係る携帯電話機1の全体構成は、図2を用いて実施例1で説明した構成と同様である。
【0060】
本実施例に係る送信電力制御部200は、実施例1の構成に加えて判定区間設定部204を有する。
【0061】
判定区間設定部204は、累積値の増加量が過剰か否かの判定を開始するタイミングを決定する。本実施例では、判定区間設定部204は、モジュレータ部125に入力された送信データにおける各フレームの先頭のタイミングを累積値の増加量が過剰か否かの判定を開始するタイミングとする。例えば、フレームの長さを10msとすると、判定区間設定部204は、最初のサブフレームの開始のタイミングを最初のフレームの開始タイミングとし、そのタイミングから10ms毎を各フレームの先頭のタイミングとして取得できる。判定区間設定部204は、次のフレームの先頭のタイミングを累積値の増加量が過剰か否かの判定を開始するタイミングとする。そして、判定区間設定部204は、各フレームの先頭のタイミングを送信電力制御値調整部211が有するカウンタをリセットするタイミングとして送信電力制御値調整部211へ通知する。
【0062】
送信電力制御値調整部211は、内部に時間を計測するカウンタを有している。また、送信電力制御値調整部211は、予め決められた累積値の増加量を判定する時間を記憶している。さらに、送信電力制御値調整部211は、予め決められた累積値の増加量が過剰か否かの過剰を判定するための累積閾値を記憶している。この累積閾値は、操作者からの入力などにより変更できるようにしてもよい。
【0063】
送信電力制御値調整部211は、変動量取得部202から変動量の入力を受ける。また、送信電力制御値調整部211は、基準値取得部203から基準値の入力を受ける。さらに、送信電力制御値調整部211は、判定区間設定部204から自己が有するカウンタをリセットするタイミングの通知を受ける。
【0064】
また、送信電力制御値調整部211は、初期電力値加算部213が出力した送信電力値のフィードバックを受ける。さらに、送信電力制御値調整部211は、累積加算部212が出力した累積値のフィードバックを受ける。
【0065】
送信電力制御値調整部211は、判定区間設定部204から受信したタイミングで自己が有するカウンタをリセットする。また、送信電力制御値調整部211は、カウンタをリセットした時点での累積値を記憶する。そして、送信電力制御値調整部211は、カウンタが予め決められた累積値の増加を判定する時間になるまで、カウンタリセット後にフィードバックを受けた累積値からリセットした時点での累積値を減算し、累積値の増加量を算出する。そして、送信電力制御値調整部211は、算出した累積値の増加量が記憶している累積閾値を超えたか否かを判定する。
【0066】
累積値の増加量が累積閾値を超えていない場合、送信電力制御値調整部211は、基地局2に指定された変動量を累積加算部212へ出力する。
【0067】
これに対して、累積値の増加量が累積閾値を超えた場合、送信電力制御値調整部211は、累積値の増加量が過剰と判定する。
【0068】
累積値の増加量が過剰の場合、送信電力制御値調整部211は、1つ前のサブフレームにおける送信電力値が基準値を超えているか否かを判定する。1つ前のサブフレームにおける送信電力値が基準値を超えていない場合、送信電力制御値調整部211は、基地局2に指定された変動量を累積加算部212へ出力する。
【0069】
これに対して、1つ前のサブフレームにおける送信電力値が基準値を超えている場合、送信電力制御値調整部211は、記憶している変動量を累積加算部212へ出力する。
【0070】
次に、図8を参照して、実施例2における送信電力値の調整について説明する。図8は、実施例2における送信電力値の調整について説明するための図である。図8は、縦軸を送信電力の電力値(送信電力値)とし、横軸を時間としている。また、区間501は、累積値の増加量が過剰か否かの判定を行う区間を表している。すなわち、区間501の紙面に向かって左端が、判定区間設定部204により指定された累積値の増加量が過剰か否かの判定の開始のタイミングである。本実施例では、区間501の紙面に向かって左端がフレームの先頭になる。この区間501の中で、送信電力制御値調整部211は、累積値の増加量が累積閾値502を超えるか否かを判定する。さらに、基準値503は、図8で示される送信電力値の基準値を表している。
【0071】
そして、送信電力制御値調整部211は、判定を開始した時点の累積値からの増加量が累積閾値502を超えるか否かを判定する。累積閾値502を超えるまで、送信電力制御値調整部211は、基地局2に指定された変動量を累積加算部212へ出力する。図8のグラフでは、b〜bn+5を基地局2から指定された変動量としている。これにより、送信電力値は、基地局2に指定された変動量分増えることになる。すなわち、送信電力値及び累積値は、b、bn+1、bn+2、bn+3、bn+4、bn+5、と増えていく。例えば、送信電力制御値調整部211が、変動量bn+3を累積加算部212に入力した場合、累積値は、変動量505の分増える。そして、累積値の増加量が累積閾値502を超えると、送信電力制御値調整部211は、その時点での送信電力値が基準値503を超えているか否かを判定する。図8のグラフでは、基準値503を超えているので、送信電力制御値調整部211は、予め決められた変動量(ここでは、「d」とする。)を累積加算部212へ出力する。すなわち、送信電力値は、基準値503を超えた後は、変動量506のようにdずつ増えていく。この後、基地局2からの指示により送信電力値が減らされ基準値503を下回るまで、基地局2から送信電力値の増加が指示された場合には、送信電力制御値調整部211は、変動量dを累積加算部212へ出力する。
【0072】
次に、図9を参照して、本実施例に係る送信電力制御部による送信電力の算出の処理について説明する。図9は、実施例2に係る送信電力制御部による送信電力の算出処理のフローチャートである。ここで、図9は、1つの判定区間における処理の流れを現している。また、ここでは、基地局から送信電力値の増加の指示のみが送られてきた場合で説明する。
【0073】
送信電力制御値調整部211は、判定区間設定部204から受信した累積値の増加量が過剰か否かの判定を開始するタイミングで、自己のカウンタをリセットすることで、判定区間を設定する(ステップS201)。
【0074】
RF部11は、送信電力の制御命令を基地局2からアンテナを介して受信する(ステップS202)。その後、デモジュレータ部122は、受信した送信電力の制御命令を変動量取得部202へ出力する。
【0075】
変動量取得部202は、デモジュレータ部122から入力された送信電力の制御命令からTPC値を抽出する(ステップS203)。そして、変動量取得部202は、抽出したTPC値に対応する変動量を変動量算出テーブルから取得する(ステップS204)。その後、変動量取得部202は、取得した変動量を送信電力制御値調整部211へ出力する。
【0076】
また、RF部11は、タイミング制御信号を基地局2から受信する(ステップS205)。その後、MAC部13は、タイミング制御信号に含まれる送信タイミング制御命令を基準値取得部203へ出力する。
【0077】
基準値取得部203は、MAC部13から入力された送信タイミング制御命令からTA制御の値を取得する。そして、基準値取得部203は、取得してTA制御の値に対応する基準値をTA制御と基準値との関係を表す対応テーブルから取得する(ステップS206)。その後、基準値取得部203は、取得した基準値を送信電力制御値調整部211へ出力する。
【0078】
送信電力制御値調整部211は、変動量の入力を変動量取得部202から受ける。また、送信電力制御値調整部211は、基準値の入力を基準値取得部203から受ける。また、送信電力制御値調整部211は、累積加算部212が出力した累積値のフィードバックを受ける。さらに、送信電力制御値調整部211は、初期電力値加算部213が出力した送信電力値のフィードバックを受ける。そして、送信電力制御値調整部211は、フィードバックされた累積値からカウンタをリセットした時点での累積値を減算した累積値の増加量が累積閾値を超えているか否かを判定する(ステップS207)。
【0079】
累積値の増加量が累積閾値を超えていない場合(ステップS207:否定)、送信電力制御値調整部211は、ステップS209へ進む。
【0080】
これに対して、累積値の増加量が累積閾値を超えている場合(ステップS207:肯定)、送信電力制御値調整部211は、フィードバックされた送信電力値、言い換えれば、前回の送信電力値が、受信した基準値を超えているか否かを判定する(ステップS208)。
【0081】
送信電力値が基準値を超えていない場合(ステップS208:否定)、送信電力制御値調整部211は、基地局2に指定された変動量を累積加算部212へ出力する(ステップS209)。これに対して、送信電力値が基準値を超えている場合(ステップS208:肯定)、送信電力制御値調整部211は、自己が記憶している予め決められた変動量を累積加算部212へ出力する(ステップS210)。
【0082】
累積加算部212は、フィードバックされた1つ前のサブフレームにおける累積値に送信電力制御値調整部211から入力された変動量を加算して今回のサブフレームにおける累積値を算出する(ステップS211)。そして、累積加算部212は、求めた累積値を初期電力値加算部213へ出力すると共に、その累積値を自己にフィードバックする。
【0083】
初期電力値加算部213は、予め記憶している初期電力値に累積加算部212から受信した累積値を加算して送信電力値を算出する(ステップS212)。そして、初期電力値加算部213は、算出した送信電力値をRF部11へ出力すると共に、その送信電力値を送信電力制御値調整部211へフィードバックする。
【0084】
RF部11は、初期電力値加算部213から受信した送信電力値を用いて、今回のサブフレームにおけるデータを基地局に送信する(ステップS213)。
【0085】
送信電力制御部200は、基地局2へのデータの送信が完了したか否かを判定する(ステップS214)。送信電力制御部200がデータの送信が完了していないと判定した場合(ステップS214:否定)、ステップS202へ戻る。これに対して、データの送信が完了している場合(ステップS214:肯定)、送信電力制御部200は、送信電力値の算出の処理を終了する。
【0086】
ここで、図9のフローでは、予め決められた変動量を出力した後も、累積値の増加量が累積基準値を超えているかの判定及び送信電力値が基準値を超えているかの判定を行なっているが、これは他の方法でもよい。例えば、予め決められた変動量を出力した場合、次からは、送信電力制御値調整部211は、各判定を行なわずに、予め決められた変動量を出力してもよい。ただし、図9のフローの流れでも、累積値の増加量が累積基準値を超えてさらに送信電力値が基準値を超えた場合には、次のときにも累積値の増加量が累積基準値を超え且つ送信電力値が基準値を超えるので、問題は無い。
【0087】
以上に説明したように、本実施例に係る無線通信装置は、基地局から指定されたTA制御の値に応じた基準値及び変動量の累積値の増加量を用いて、送信電力が過剰となっているか否かを判定し、過剰の場合には、送信電力の増加を抑える。これにより、変動量が徐々に加えられて基準値を超えた場合を除くことができ、短時間のうちに多くの変動量が加えられた場合のみに送信電力が過剰であると判断することができる。したがって、自装置と基地局との間の距離に応じて送信電力の過剰を判断することができることに加えて、より適切なUL送信電力の制御を行うことができる。
【0088】
〔ハードウェア構成〕
次に、図10を参照して、本実施例に係る携帯電話機のハードウェア構成について説明する。図10は、携帯電話機のハードウェア構成図である。
【0089】
本実施例に係る携帯電話機は、アンテナ1010、無線部1020、オーディオ入出力部1030、スピーカ1031、マイク1032、プロセッサ1040、記憶装置1050、表示部1060及びキー入力部1070を有している。
【0090】
無線部1020、オーディオ入出力部1030、記憶装置1050、表示部1060及びキー入力部1070は、それぞれプロセッサ1040と接続されている。また、アンテナ1010は、無線部1020と接続されている。さらに、オーディオ入出力部1030は、スピーカ1031及びマイク1032が接続されている。
【0091】
無線部1020は、アンテナ1010を介して移動体通信網を用いて他の無線通信機器と通信を行う。例えば、無線部1020及びプロセッサ1040により、図2に示したRF部11の機能が実現される。
【0092】
表示部1060は、LCDなどの映像表示画面である。また、キー入力部1070は、キーパッドなどである。操作者はキー入力部1070を操作して文字や実行命令などの入力を行う。
【0093】
オーディオ入出力部1030は、例えば、通話を行う際に、スピーカ1031から通話の相手から送られてきた音声を出力する。また、オーディオ入出力部1030は、例えば、マイク1032から操作者の音声の入力を受ける。
【0094】
記憶装置1050は、ROM(Read Only Memory)1051及びRAM(Random Access Memory)1052を有する。
【0095】
プロセッサ1040及び記憶装置1050は、例えば、図2に示した、サーチャ部121、デモジュレータ部122、デコーダ部123、コーダ部124、モジュレータ部125及び送信電力制御部200などの機能を実現する。例えば、ROM1051は、図3に例示した送信電力制御部200の各部による処理を実現する各種プログラムを記憶している。そして、プロセッサ1040及びRAM1052は、これら各種プログラムを読み出して実行することで、上述した機能を実現するプロセスを生成する。
【符号の説明】
【0096】
1 携帯電話機
2 基地局
11 RF部
12 BB部
13 MAC部
121 サーチャ部
122 デモジュレータ部
123 デコーダ部
124 コーダ部
125 モジュレータ部
200 送信電力制御部
201 送信電力算出部
202 変動量取得部
203 基準値取得部
204 判定区間設定部
211 送信電力制御値調整部
212 累積加算部
213 初期電力値加算部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信信号の送信タイミングの調整に用いるタイミング調整値を基地局から受信し、受信した前記タイミング調整値に対応する送信電力が過剰か否かを判定する閾値である基準値を取得する基準値取得部と、
所定のタイミング毎に、前記基地局が送信した送信電力制御命令を受信し、受信した前記送信電力制御命令から送信電力の変動量を順次取得する変動量取得部と、
送信電力値が前記基準値取得部により取得された前記基準値を超えていない場合、前記変動量取得部により取得された送信電力の変動量を基に前記送信電力値を変動させ、送信電力値が前記基準値取得部により取得された前記基準値を超えている場合、前記変動量取得部により取得された送信電力の変動量より少ない変動量を基に前記送信電力値を変動させる送信電力算出部と
を備えたことを特徴とする無線通信装置。
【請求項2】
前記送信電力算出部は、所定期間内における送信電力値の増加量が所定値を超えた場合に、送信電力値が前記基準値を超えたか否かを判定することを特徴とする請求項1に記載の無線通信装置。
【請求項3】
前記送信電力算出部は、前記変動量取得部により取得された送信電力の変動量より小さい変動量として予め決められた値を用いることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の無線通信装置。
【請求項4】
前記送信電力算出部は、前記変動量取得部により取得された送信電力の変動量より小さい変動量として、前記変動量取得部により取得された送信電力の変動量の所定の割合の値を用いることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の無線通信装置。
【請求項5】
基地局とデータの送受信を行う無線通信部と、
前記無線通信部が受信したデータ及び送信データに対してベースバンド処理を行うベースバンド処理部とを備え、
前記ベースバンド処理部は、
送信信号の送信タイミングの調整に用いるタイミング調整値を基地局から受信し、受信した前記タイミング調整値に対応する送信電力が過剰か否かを判定する閾値である基準値を取得する基準値取得部と、
所定のタイミング毎に、前記基地局が送信した送信電力制御命令を受信し、受信した前記送信電力制御命令から送信電力の変動量を順次取得する変動量取得部と、
送信電力値が前記基準値取得部により取得された前記基準値を超えていない場合、前記変動量取得部により取得された送信電力の変動量を基に前記送信電力値を変動させ、送信電力値が前記基準値取得部により取得された前記基準値を超えている場合、前記変動量取得部により取得された送信電力の変動量より少ない変動量を基に前記送信電力値を変動させる送信電力算出部と
を備えたことを特徴とする携帯電話機。
【請求項6】
送信信号の送信タイミングを調整に用いるタイミング調整値を基地局から受信し、
受信した前記タイミング調整値に対応する送信電力が過剰か否かを判定する閾値である基準値を取得し、
所定のタイミング毎に、前記基地局が送信した送信電力制御命令を受信し、受信した前記送信電力制御命令から送信電力の変動量を順次取得し、
送信電力値が前記基準値を超えていない場合、取得した送信電力の変動量を基に前記送信電力値を変動させ、
送信電力値が前記基準値を超えている場合、取得した送信電力の変動量より少ない変動量を基に前記送信電力値を変動させる
処理を無線通信装置に実行させることを特徴とする無線通信装置制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−42394(P2013−42394A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−178517(P2011−178517)
【出願日】平成23年8月17日(2011.8.17)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】