説明

無線LANの電波強度を用いた位置検出方法

【課題】無線LAN基地局の設置箇所における電波強度の事前測定を不要にすること、既設基地局の更新を不要にすること、および各基地局の電波強度情報から端末の位置を検出することが課題である。
【解決手段】利用する無線LAN基地局の電波強度を測定し、その結果から利用基地局と端末間の距離推定を行う近似曲線を求めておくで、基地局設置箇所での電波強度の事前測定を不要とする。また利用基地局の機種毎に近似曲線を求めて記憶することで既設基地局の更新を不要にする。基地局設置箇所では端末104が測定した各基地局101、102、103の電波強度情報を基地局を介してサーバ105に送信し、サーバ105は受信した電波強度情報と各基地局の電波特性を示す近似曲線から各基地局101、102、103と端末104間の距離を推定し、端末104の位置を検出および配信・表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線LAN基地局の電波強度による無線LAN端末の位置検出方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
店舗等において子供が迷子になると親子共にストレスを感じ、ショッピングの楽しさが失われる。また、消防活動の現場における消防士の位置確認手段は、肉声に頼っている現状がある。そこで、子供や消防士の位置を検出できる方法が期待されている。本発明は、このように命の危険を伴いながら消防活動にあたる消防士や、迷子になった親子の不安感を払拭できる位置検出方法を提供するものである。また、駅、空港、ホテル、店舗、オフィスなどにおいてもデータ通信手段として無線LANの利用が浸透しつつあるが、本発明は無線LAN設備を設置済みの環境においても既存の設備を更新する必要がないため、導入コストの低減化が期待できる。屋外ではGPS等を用いて人や物の位置を確認するサービスが普及しているため、GPS電波の届かない屋内や地下街においても位置検出への需要は今後高まると推察される。本発明は屋内や地下街でも利用できるため、その効果は非常に大きいと考えられる。
【0003】
無線LANによる位置検出方法には、特許文献1のように端末からのデータ受信時間を利用する方法と、特許文献2のように無線LAN基地局が発する電波強度を利用する方法がある。前者の方法では、位置検出用以外のデータ通信量により伝播時間が変化する可能性があり、その抑制に優先制御等のQoSの手法を取り入れた場合は専用の機器や設定が別途必要になると予想され、結果として導入コストの増大が懸念される。後者の無線LAN基地局の電波強度を利用する方法では、端末がどの基地局に最も近いかを判別するのみで、詳細な位置情報を検出できない。詳細な位置情報を検出するために、基地局を設置した箇所において電波強度特性を事前に測定する方法も存在するが、活動場所が不特定である消防士の位置特定には適さない。また基地局設置箇所での事前測定に伴う導入コストの増大や日常業務への影響も懸念される。本発明は位置情報の特定に無線LAN基地局の電波強度を利用するが、上記手法とは考え方を異にするものである。
【0004】
【特許文献1】特開2005−110314号公報
【特許文献2】特開平7−154848号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、無線LAN基地局の電波強度により端末の位置を検出することである。また他の課題は基地局設置箇所において各基地局の電波強度の事前測定を不要にすること、および既設の基地局の更新を不要にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による課題の解決手段は、無線LAN基地局の電波強度により端末の位置を検出すること、さらに基地局設置箇所での電波強度の事前測定を不要にすること、および既設の基地局の更新を不要にすることである。無線LAN基地局が発する電波は障害物等の影響を受けやすいため、設置箇所での電波強度の事前測定を不要にするには、利用する基地局の電波強度特性を詳細に把握する必要がある。それには、基地局からの距離や障害物の種類・数を変え、利用する基地局の電波強度を電波干渉の影響も考慮して測定する必要がある。こうして得られた測定結果から障害物の種類や数に応じた近似曲線をそれぞれ求めることにより、電波強度から基地局と端末間の距離を推定することが可能となり、基地局設置箇所での電波強度の事前測定を不要にすることが可能となる。また利用する基地局の機種毎に近似曲線を求めて記憶することで、既設の基地局の更新を不要にすることも可能となる。ここで残る課題は、基地局と端末間の距離ではなく端末の位置を検出することである。
【0007】
基地局と端末間の距離が推定できれば、端末が3箇所以上の基地局電波を受信できるようにすることで、端末の位置検出が可能となる。具体的には、各基地局を円の中心とし推定距離を半径とする円をそれぞれ描き、全ての円が交わる座標点が端末の検出位置となる。但し、障害物や電波干渉の影響により全ての円が一点で交わらない可能性がある。この場合は、2つ以上の円が交わる座標点をそれぞれ算出・抽出し、さらに抽出した各座標点からの距離が最小となる座標点を端末の検出位置とする。以上が本発明の解決の手段である。
【0008】
以上のように本発明による課題の解決手段は、無線基地局の電波強度特性を測定するステップ、電波強度の測定結果から利用基地局毎に電波強度と距離の相関を求めて記憶するステップ、複数の無線基地局の電波強度測定結果から端末の位置を検出するステップ、検出した位置を1座標点に限定するためのステップから成るものである。
【発明の効果】
【0009】
無線LAN端末も子供にとって苦にならない程度まで小型・軽量化が進みつつあるため、本発明をこのような端末と組み合わせることで迷子の位置特定が可能となる。これにより迷子になった親子の不安感は払拭されることとなる。また消防服に無線LAN端末を装備し指令車との情報通信を可能とする消防服の開発が行われているため、本発明をこの消防服と組み合わせることで消防士の位置特定も可能となる。これにより消防士の危険を軽減することが期待される。
【0010】
無線LANは、駅、空港、ホテル、店舗、オフィスなどにおいてもデータ通信手段として浸透しつつある。このように無線LAN設備を導入済みの環境においても、本発明は既存設備を更新することなく適用できるため、さらに屋内や地下街における位置検出への需要は今後高まると推察されるため、本発明の効果は計り知れないものがある。
【実施例1】
【0011】
本発明による無線LANシステムの実施例を図1に示す。同図において101、102、103は無線LAN基地局を、104は無線LAN端末を、105はサーバを、106は有線LANを、107は有線LAN106に接続された端末を示す。端末104は基地局101、102、103の電波強度を測定し、その結果を基地局を介してサーバ105に送信する。サーバ105は受信した電波強度情報と各基地局の電波特性を示す近似曲線を用いて端末の位置を検出し、その結果を例えば一般的なWebブラウザで閲覧できる形式で配信・表示する。そしてWebブラウザを搭載した機器、例えばWebブラウザ機能を搭載した端末104や107、携帯電話などから位置検出の結果を確認する。
【0012】
本発明による基地局設置箇所における基地局の電波強度の事前測定を不要にする方法と既設基地局の更新を不要にする方法の実施例を図2のフローチャートと図3を用いて説明する。まず、図3に示すように利用する無線基地局を用いて、障害物および無線基地局からの距離を変えて基地局の電波強度測定を行う(202)。ここで図3の横軸は基地局からの距離を、縦軸は電波強度を示す。この図から電波強度は基地局からの距離が長くなるにつれて小さくなること、また同じ距離でも障害物が存在すると測定される電波強度が小さくなることが分かる。これらの測定結果を多項式で近似することで、端末で測定した電波強度から各基地局と端末間の距離を推定することが可能となる(203)。また図3の電波強度特性は利用する無線基地局によって異なるので、機種毎に距離推定の近似曲線を求めて記憶することで、既設基地局の更新を不要にすることが可能となる(204)。
【0013】
本発明による無線LAN端末の位置検出方法の実施例を図4のフローチャートと図5を用いて説明する。図5において501、502、503は無線基地局を、504は無線端末を示す。端末504が測定した各基地局の電波強度をサーバは受信し(402)、受信した電波強度情報と近似曲線から各基地局と端末間の距離を推定する(403)。さらに各基地局を円の中心とし推定距離を半径とする円を図5の破線のようにそれぞれ描き端末の位置座標を算出する(404)。全ての円が一点で交わる場合はその位置座標を端末504の検出位置とし(405)、障害物や電波干渉の影響により全ての円が一点で交わらない場合は、2つ以上の円が交わる座標点をそれぞれ算出・抽出し、さらに抽出した各座標点からの距離が最小となる座標点を端末の検出位置とする(410)。そして、検出した端末の位置座標の配信・表示を行う(406)。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】無線LANシステムの実施例を示した図である。
【図2】基地局設置箇所での電波強度の事前測定と既設基地局の更新を不要にする方法を示したフローチャートである。
【図3】無線基地局の電波強度特性例を示した図である。
【図4】端末の位置検出方法を示したフローチャートである。
【図5】端末の位置検出方法を示した図である。
【符号の説明】
【0015】
101、102、103、501、502、503:無線基地局
104、504:無線端末
105:サーバ
106:有線LAN
107:端末

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線LAN端末の位置検出方法において、無線LAN基地局設置箇所における各基地局の電波強度の事前測定を不要にするステップと利用基地局毎に電波強度と距離の相関を求めて記憶するステップ、ならびに基地局の設置箇所において端末で観測された各基地局の電波強度情報から端末の位置を検出するステップからなることを特徴とする、位置検出方法

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2007−124406(P2007−124406A)
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−315446(P2005−315446)
【出願日】平成17年10月28日(2005.10.28)
【出願人】(303002930)財団法人青森県工業技術教育振興会 (17)
【Fターム(参考)】