説明

無色透明性ポリイミド複合フィルムおよびその製造方法

【課題】
有機化層状珪酸塩の分散性が良好で、耐熱性および機械特性に優れ、水蒸気バリア性が著しく向上した柔軟性を有する無色透明なポリイミド複合フィルムおよびその製造方法を提供する。
【解決手段】
特定の繰り返し単位を有するポリイミド(A)および特定の構造を有する有機オニウムイオンで処理された有機化層状珪酸塩(B)を、該ポリイミド(A)中に該有機化層状珪酸塩(B)が分散した形で含むポリイミド複合フィルム。ポリイミド(A)、有機化層状珪酸塩(B)、ならびに特定の有機溶媒(C)の3成分を含む液状混合物を支持体上に膜状に押し出しまたは塗布して膜状混合物を形成し、次いで該膜状混合物より該有機溶媒(C)を除去することからなり、且つ特定の条件を満たすことを特徴とする無色透明性ポリイミド複合フィルムの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は特定の構造を有する有機オニウムイオンで処理された層状珪酸塩を含有する無色透明性ポリイミド複合フィルムおよびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、ポリイミド樹脂は芳香族テトラカルボン酸無水物と芳香族ジアミンを原料とし、これらの縮合反応により合成されるポリアミド酸を閉環反応して得られる耐熱性の樹脂で、分子鎖の剛直性、共鳴安定化、強い化学結合により熱分解に優れた抵抗を有し、酸化又は加水分解のような化学変化に対して高い耐久性を持ち、機械的特性及び電気的特性に優れる。加えて柔軟性があるため、電気、電子、自動車および航空宇宙産業などの分野においてフィルム、コーティング剤、成形部品および絶縁材料として幅広く使用されている。また、コンピュータや携帯電話機器等のディスプレー基板に用いられているガラス及びセラミックの代替材料としてフレキシブル性と耐熱性および機械強度を併せ持つ透明高耐熱性樹脂の技術開発が急務となっており、そのような要求を満足する材料として無色透明性ポリイミドに期待が持たれている。
【0003】
また、近年の電子材料分野における半導体素子の高集積化が急速に進行するに伴い、ポリイミドフィルムの薄葉化や高水準の熱安定性、吸湿安定性、高いガスバリア性、機械的物性の向上が要求されるようになっている。これらの物性を改善するため、ポリイミド樹脂中に層状珪酸塩を良好に分散させる検討が行われている。
【0004】
ポリイミド樹脂中に層状珪酸塩を分散させたポリイミド複合材およびその製造方法として、有機オニウムイオンで有機化された層状珪酸塩がポリイミド中に分散したポリイミド複合材及びそれを製造する方法が開示されている(特許文献1参照。)。この方法では、ポリアミド酸と有機化された層状珪酸塩を含有する混合液からプレポリマーフィルムを得た後、高温加熱によりポリアミド酸を脱水環化させる方法によって、ポリイミド複合フィルムを製造している。
【0005】
しかし、このようなポリアミド酸と有機化された層状珪酸塩を含有する混合液から熱的イミド化法によって製造されたフィルムでは、イミド化を進行させるまでに高温かつ長時間を要し、場合によっては、樹脂のガラス転移温度もしくはそれ以上の温度下でイミド化を行うため、樹脂の流動性が高くなり、層状珪酸塩が樹脂中を移動できる状態を生じさせ、結果的に層状珪酸塩を凝集させてしまい、十分な透明性が得られないという問題が起こり易い。
このように、特許文献1では「有機オニウムイオンで有機化された層状珪酸塩がポリイミド中に分散したポリイミド複合材」が規定されているものの、具体的に開示されているものは、有機化された層状珪酸塩の分散性の悪い、十分な透明性を有しないものである。
更に、特許文献1で具体的に示されている、芳香族テトラカルボン酸無水物を原料としたポリイミドを使用した複合材では、水蒸気バリア性は十分ではない。
【0006】
一方、ポリアミド酸と層状珪酸塩との混合液に、カルボン酸無水物とアミン類を含む脱水剤を添加してイミド化反応を行わせる方法について開示されている(特許文献2参照。)。しかしながら、ポリイミドが溶剤可溶性ではないことから、混合液のキャストによりプレポリマーフィルムを得た後、溶剤の揮発およびイミド化を同時に行っているため、塗膜の表面にハジキ、凹凸などが生じ、表面平滑性に欠陥が起こり易く、成形加工性に劣る上、膜厚の制御も難しいという問題を有している。その上、ポリイミド自体が茶褐色を帯びているため、無色・透明性が要求される光学用途などに適用性が無いなどの不具合がある。
更に又、特許文献1と同様に、特許文献2で具体的に示されている、芳香族テトラカルボン酸無水物を原料としたポリイミドを使用した複合材では、水蒸気バリア性は十分ではない。
【特許文献1】特開平4−33955号公報
【特許文献2】特開2000−302867号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、上述の従来用いられてきたポリイミド複合フィルムおよびその製造方法の有する問題点を解決し、有機化層状珪酸塩の分散性が良好で、耐熱性および機械特性に優れ、水蒸気バリア性が著しく向上した柔軟性を有する無色透明なポリイミド複合フィルムおよびその製造方法を提供することにある。
【0008】
すなわち、従来までのポリイミド系フィルムの問題点であった着色を改善し、コンピュータや携帯電話機器等のディスプレー基板に用いられているガラス及びセラミックの代替材料として、フレキシブル性と耐熱性および機械強度を併せ持つ透明高耐熱性フィルムとして有用なポリイミド複合フィルムおよびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは上述の目的を達成するために鋭意検討した結果、特定の繰り返し単位を有するポリイミド(A)および特定の構造を有する有機オニウムイオンで処理された有機化層状珪酸塩(B)を、該ポリイミド(A)中に該有機化層状珪酸塩(B)が分散した形で含むポリイミド複合フィルムおよびその製造方法が、その目的を達成し得ることを見出し、本発明に到達した。すなわち本発明は、
[1] 一般式(1)で示される繰り返し単位を有するポリイミド(A)および一般式(2)または一般式(3)で示される有機オニウムイオンで処理された有機化層状珪酸塩(B)を含み、該ポリイミド(A)中に該有機化層状珪酸塩(B)が分散してなることを特徴とする無色透明性ポリイミド複合フィルム
【0010】
【化1】

【0011】
(式(1)中、Rは炭素数5〜16の4価の鎖状または環状の脂肪族炭化水素基であり、Φは炭素数2〜28の2価の脂肪族炭化水素基または炭素数6〜27の2価の芳香族炭化水素基である。)
【0012】
【化2】

【0013】
(式(2)中、Yは炭素数1〜3のアルキレン基を示し、R、R、Rは炭素数1〜18のアルキル基または水素原子を示し、R〜Rの炭素数の合計は10以上であり、nは1〜25の整数を示す。)
【0014】
【化3】

【0015】
(式(3)中、Yは炭素数1〜3のアルキレン基を示し、R、Rは炭素数1〜18のアルキル基または水素原子を示し、R〜Rの炭素数の合計は10以上であり、nは1〜25の整数、mは1〜25の整数、n+mは2〜50の整数を示す。)
および
[2]一般式(1)で示される繰り返し単位を有するポリイミド(A)、一般式(2)または一般式(3)で示される有機オニウムイオンで処理された有機化層状珪酸塩(B)、ならびにSP値が9.8〜12.7の範囲であって、環状エーテル、環状ケトン、エステル、アミド、およびウレアからなる群から選ばれる構造を少なくとも1つ含有する有機溶媒(C)の3成分を含む液状混合物を支持体上に膜状に押し出しまたは塗布して膜状混合物を形成し、次いで該膜状混合物より該有機溶媒(C)を除去することからなり、且つ下記の条件(I)〜(III)を満たすことを特徴とする無色透明性ポリイミド複合フィルムの製造方法に関するものである。
(I)有機化層状珪酸塩(B)の使用量は、使用量の有機化層状珪酸塩(B)および使用量の有機溶媒(C)からなる2成分液状混合物の曇価(ヘイズ)が50%未満となる量であること。
(II)有機化層状珪酸塩(B)の使用量は、ポリイミド(A)100重量部に対し1重量部以上20重量部未満であること。
(III)有機溶媒(C)の使用量は、有機溶媒(C)100重量部に対してポリイミド(A)が1重量部以上となる量であること。
【0016】
【化4】

【0017】
(式(1)中、Rは炭素数5〜16の4価の鎖状または環状の脂肪族炭化水素基であり、Φは炭素数2〜28の2価の脂肪族炭化水素基または炭素数6〜27の2価の芳香族炭化水素基である。)
【0018】
【化5】

【0019】
(式(2)中、Yは炭素数1〜3のアルキレン基を示し、R、R、Rは炭素数1〜18のアルキル基または水素原子を示し、R〜Rの炭素数の合計は10以上であり、nは1〜25の整数を示す。)
【0020】
【化6】

【0021】
(式(3)中、Yは炭素数1〜3のアルキレン基を示し、R、Rは炭素数1〜18のアルキル基または水素原子を示し、R〜Rの炭素数の合計は10以上であり、nは1〜25の整数、mは1〜25の整数、n+mは2〜50の整数を示す。)
【0022】
本発明のポリイミド複合フィルムの製造方法は、特定の溶媒を使用することによって、ポリイミド溶液中に有機化層状珪酸塩を膨潤させ、均一に微分散させた後に公知のキャスト法でフィルム化する方法であり、従って、本発明のポリイミド複合フィルムは、ポリイミド(A)中に有機化層状珪酸塩(B)が極めて均一に分散したものであって、耐熱性および機械特性に優れ、柔軟性を有する無色透明なフィルムである。
【発明の効果】
【0023】
本発明の無色透明性ポリイミド複合フィルムは、有機化層状珪酸塩の分散性が良好で、耐熱性、機械強度および水蒸気バリア性を併せ持つ透明高耐熱性フィルムであり、コンピュータや携帯電話機器等のディスプレー基板に用いられているガラス及びセラミックの代替材料として有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明の無色透明性ポリイミド複合フィルムは、一般式(1)で示される繰り返し単位を有するポリイミド(A)および一般式(2)または一般式(3)で示される有機オニウムイオンで処理された有機化層状珪酸塩(B)を含むものである。また、本発明の無色透明性ポリイミド複合フィルムの製造方法は、ポリイミド(A)、有機化層状珪酸塩(B)、および特定SP値を有する有機溶媒(C)の3成分を含む液状混合物を支持体上に膜状に押し出しまたは塗布して膜状混合物を形成し、次いで該膜状混合物より該有機溶媒(C)を除去することからなる。
本発明に用いられる一般式(1)で示される繰り返し単位を有するポリイミド(A)は、脂肪族テトラカルボン酸またはその誘導体とジアミンとを反応させることにより得られるポリイミドである。
脂肪族テトラカルボン酸またはその誘導体としては、脂肪族テトラカルボン酸、脂肪族テトラカルボン酸エステル類、脂肪族テトラカルボン酸二無水物などが挙げられるが、好ましいのは脂肪族テトラカルボン酸二無水物である。ジアミンとしては、脂肪族ジアミンと芳香族ジアミンのどちらでもよく、それらの混合物でもよい。
【0025】
脂肪族テトラカルボン酸二無水物としては、例えば、1,2,4,5−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.2]オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物などが挙げられる。これらの中でも特に1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物を用いるのが好ましい。これらの脂肪族テトラカルボン酸二無水物は、単独あるいは二種以上混合して使用することができるが、より好ましくは1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物を単独で用いるのが良い。
【0026】
脂肪族ジアミンとしては、例えば、4,4−ジアミノジシクロヘキシルメタン、イソホロンジアミン、エチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ノルボルナンジアミン、パラキシリレンジアミン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,3−ジアミノシクロヘキサン、ヘキサメチレンジアミン、ポリエチレングリコールビス(3−アミノプロピル)エーテル、メタキシリレンジアミン、4,4−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)、ビシクロヘキシルジアミン、シロキサンジアミン類などが挙げられる。これらのジアミンは、単独あるいは二種以上混合して使用することができる。中でも、高分子量化が容易で、耐熱性に優れるという点で、4,4−ジアミノジシクロヘキシルメタン、イソホロンジアミン、1,3−ジアミノシクロヘキサン等の脂環構造を有するジアミンを用いることが好ましい。これらのジアミンは、単独あるいは二種以上混合して使用することができる。
【0027】
芳香族ジアミンとしては、例えば、オキシジアニリン、ジアミノジフェニルメタン、1,3−フェニレンジアミン、1,4−フェニレンジアミン、ジメチルベンジジン、ジメトキシベンジジン、ジアミノジフェニルスルフィド、ジアミノジフェニルスルホキシド、ジアミノジフェニルスルホン、ジアミノベンゾフェノン、2,2−ビス(3−アミノフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、などが挙げられる。これらのジアミンは、単独あるいは二種以上混合して使用することができる。
【0028】
本発明に用いられるポリイミド(A)の内では、特に、一般式(4)で示される繰り返し単位を有するポリイミドが好ましい。
【0029】
【化7】

【0030】
(式(4)中、Φは炭素数2〜28の2価の脂肪族炭化水素基または炭素数6〜27の2価の芳香族炭化水素基である。)
【0031】
本発明の無色透明性ポリイミド複合フィルムの製造方法で使用される有機溶媒(C)は、SP値(溶解度パラメーター)が9.8〜12.7の範囲であって、環状エーテル、環状ケトン、環状エステル、アミド、およびウレアからなる群から選ばれる構造を少なくとも1つ含有する溶媒である。かかる溶媒は、例えば、γ−ブチロラクトン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルフォルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホルアミド、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン、テトラメチルウレア、テトラヒドロフランなどの非プロトン性有機極性溶媒であることが望ましい。中でも、γ−ブチロラクトン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルフォルムアミドおよびN−メチル−2−ピロリドンからなる群より選ばれる一種以上がより好ましい。
【0032】
本発明で使用される有機化層状珪酸塩(B)の原料となる層状珪酸塩は、陽イオン交換能を有し、さらに層間に水を取り込んで膨潤する性質を示す粘土鉱物である。この層状珪酸塩としては、たとえば、モンモリロナイト、サポナイト、ヘクトライトなどのスメクタイト系粘土や膨潤性雲母、または、これらの化学的に合成したもの、誘導体、あるいは混合物を挙げることができる。これらの中でもスメクタイト系粘土が好ましく、モンモリロナイトおよびヘクトライトが特に好ましい。層状珪酸塩の陽イオン交換能は100〜300meq/100g程度であることが好ましく、陽イオン交換能が300meq/100gを超えるものは、層状珪酸塩の層間結合力が強すぎるために層間拡張が困難なことから、上記有機極性溶媒中における膨潤性が悪く、結果的にポリイミド中への分散性不良を引き起こす恐れがある。また、100meq/100gに満たないものは、有機オニウムイオンによる層間イオン交換量が不十分となり、ポリイミドとの親和性に劣る恐れがある。
【0033】
本発明で用いられる有機化層状珪酸塩(B)は、有機オニウムイオンで処理して、層状珪酸塩に有機オニウムイオンを挿入させたものを言う。本発明で用いられる有機オニウムイオンは、少なくとも1つのアルキレンオキシド構造を含む、上記一般式(2)または(3)で表される有機オニウムイオンである。上記有機溶媒(C)中における層状珪酸塩の層剥離を促進させ、且つ、上記ポリイミド(A)、有機化層状珪酸塩(B)、および有機溶媒(C)の3成分を含む液状混合物を、支持体状に膜状に押し出しまたは塗布して成型される膜状混合物より上記有機溶媒(C)を乾燥除去することにより得られるポリイミド複合フィルム中における層状珪酸塩の分散性を向上させ、熱処理による再凝集を防ぐためには、上記一般式(2)または(3)で表される主鎖にアルキレンオキシド構造を有する有機オニウムイオンで有機化されたものであることが必要である。
アルキレンオキシドの付加モル数としては、一般式(2)で表される有機オニウムイオンの場合は、1〜25の範囲であり、特に4〜25の範囲であることが好ましい。また、一般式(3)で表される有機オニウムイオンの場合は、2〜50の範囲であり、特に4〜25の範囲であることが好ましい。50を超えると熱処理時における安定性に問題がある。また、アルキル基の炭素数の合計は少なくとも10以上であることが好ましく、特に12以上であることが好ましい。炭素数が10未満であると、上記有機化層状珪酸塩の層間距離の拡大が小さく、上記有機溶媒(C)中における層状珪酸塩の層剥離が十分に進行しない恐れがある。なお、炭化水素構造の一部に環状構造、不飽和結合を含んでいても良い。
上記有機オニウムイオンは、アルキレンオキシド構造またはポリアルキレンオキシド構造を有する2級または3級アミノ化合物を塩酸などの無機酸類で処理し、それぞれ、2級、3級アンモニウムイオンとしたものを用いても良いし、アルキレンオキシド構造またはポリアルキレンオキシド構造を有する4級アンモニウムイオンを合成して用いても良いが、既存の市販品の種類が豊富で入手が容易であることから、アルキレンオキシド構造を有する2級または3級アミノ化合物を塩酸などの無機酸類で処理するほうが好ましい。
【0034】
上記の主鎖にアルキレンオキシド構造を有する2級または3級アミノ化合物の具体例として、ヒドロキシエチルデシルアミン、ビス(ヒドロキシエチル)デシルアミンと、ヒドロキシメチルデシルアミン、ビス(ヒドロキシメチル)デシルアミン、ヒドロキシプロピレンデシルアミン、ビス(ヒドロキシプロピレン)デシルアミン、ビス(ヒドロキシエチル)ドデシルアミン、ヒドロキシメチルドデシルアミン、ビス(ヒドロキシメチル)ドデシルアミン、ヒドロキシプロピレンドデシルアミン、ビス(ヒドロキシプロピレン)ドデシルアミン、ヒドロキシエチルオクタデシルアミン、ビス(ヒドロキシエチル)オクタデシルアミン、ヒドロキシメチルオクタデシルアミン、ビス(ヒドロキシメチル)オクタデシルアミン、ヒドロキシプロピレンオクタデシルアミン、ビス(ヒドロキシプロピレン)オクタデシルアミン等が挙げられる。
主鎖にポリアルキレンオキシド構造を有する2級または3級アミノ化合物の例としては、ヒドロキシポリオキシエチレンデシルアミン、ビス(ヒドロキシポリオキシエチレン)デシルアミン、ヒドロキシポリオキシメチレンデシルアミン、ビス(ヒドロキシポリオキシメチレン)デシルアミン、ヒドロキシポリオキシプロピレンデシルアミン、ビス(ヒドロキシポリオキシプロピレン)デシルアミン、ヒドロキシポリオキシエチレンドデシルアミン、ビス(ヒドロキシポリオキシエチレン)ドデシルアミン、ヒドロキシポリオキシメチレンドデシルアミン、ビス(ヒドロキシポリオキシメチレン)ドデシルアミン、ヒドロキシポリオキシプロピレンドデシルアミン、ビス(ヒドロキシポリオキシプロピレン)ドデシルアミン、ヒドロキシポリオキシエチレンオクタデシルアミン、ビス(ヒドロキシポリオキシエチレン)オクタデシルアミン、ヒドロキシポリオキシメチレンオクタデシルアミン、ビス(ヒドロキシポリオキシメチレン)オクタデシルアミン、ヒドロキシポリオキシプロピレンオクタデシルアミン、ビス(ヒドロキシポリオキシプロピレン)オクタデシルアミン等が挙げられる。
【0035】
上記の主鎖にアルキレンオキシド構造を有する4級アンモニウムイオンの具体例として、ヒドロキシエチルヘキシルジエチルアンモニウムクロライド、ヒドロキシエチルオクチルジメチルアンモニウムクロライド、ヒドロキシエチルデシルジメチルアンモニウムクロライド、ヒドロキシエチルドデシルジメチルアンモニウムクロライド、ヒドロキシエチルオクタデシルジメチルアンモニウムクロライド、ヒドロキシエチルオクチルジエチルアンモニウムクロライド、ヒドロキシエチルデシルジエチルアンモニウムクロライド、ヒドロキシエチルドデシルジエチルアンモニウムクロライド、ヒドロキシエチルオクタデシルジエチルアンモニウムクロライド、ヒドロキシエチルトリオクチルアンモニウムクロライド、ジヒドロキシエチルエチルオクチルアンモニウムクロライド、ジヒドロキシエチルメチルデシルアンモニウムクロライド、ジヒドロキシエチルメチルドデシルアンモニウムクロライド、ジヒドロキシエチルメチルオクタデシルアンモニウムクロライド、ジヒドロキシエチルジオクチルアンモニウムクロライド、ジヒドロキシエチルエチルデシルアンモニウムクロライド、ジヒドロキシエチルエチルドデシルアンモニウムクロライド、ジヒドロキシエチルエチルオクタデシルアンモニウムクロライドなどが挙げられる。
主鎖にポリアルキレンオキシド構造を有する4級アンモニウムイオンの例としては、ヒドロキシポリオキシエチレンヘキシルジエチルアンモニウムクロライド、ヒドロキシポリオキシエチレンオクチルジメチルアンモニウムクロライド、ヒドロキシポリオキシエチレンデシルジメチルアンモニウムクロライド、ヒドロキシポリオキシエチレンドデシルジメチルアンモニウムクロライド、ヒドロキシポリオキシエチレンオクタデシルジメチルアンモニウムクロライド、ヒドロキシポリオキシエチレンオクチルジエチルアンモニウムクロライド、ヒドロキシポリオキシエチレンデシルジエチルアンモニウムクロライド、ヒドロキシポリオキシエチレンドデシルジエチルアンモニウムクロライド、ヒドロキシポリオキシエチレンオクタデシルジエチルアンモニウムクロライド、ヒドロキシポリオキシエチレントリオクチルアンモニウムクロライド、ビス(ヒドロキシポリオキシエチレン)エチルオクチルアンモニウムクロライド、ビス(ヒドロキシポリオキシエチレン)メチルデシルアンモニウムクロライド、ビス(ヒドロキシポリオキシエチレン)メチルドデシルアンモニウムクロライド、ビス(ヒドロキシポリオキシエチレン)メチルオクタデシルアンモニウムクロライド、ビス(ヒドロキシポリオキシエチレン)ジオクチルアンモニウムクロライド、ビス(ヒドロキシポリオキシエチレン)エチルデシルアンモニウムクロライド、ビス(ヒドロキシポリオキシエチレン)エチルドデシルアンモニウムクロライド、ビス(ヒドロキシポリオキシエチレン)エチルオクタデシルアンモニウムクロライドなどが挙げられる。
【0036】
層状珪酸塩を有機オニウムイオンで処理して有機化する方法は特に限定されないが、たとえば、層状珪酸塩1重量部と有機オニウムイオン0.5〜2重量部を30〜100重量部の水、メタノール、エタノール、エチレングリコールから選ばれる1種または2種以上の溶媒中において20〜60℃の温度で3時間以上撹拌混合した後、生成した沈殿物を吸引ろ過、乾燥することによって合成することができる。乾燥する方法としては、60〜100℃で24時間程度真空乾燥をするか、凍結乾燥により、上記溶媒を除去する方法が望ましい。
【0037】
具体的に、本発明のポリイミド複合フィルムは下記の工程(1)〜(3)を含む方法により製造される。
工程(1)ポリイミド(A)を合成
工程(2)ポリイミド(A)と有機化層状珪酸塩(B)および有機溶媒(C)の3成分を含む液状混合物を調製
工程(3)該液状混合物を支持体上に膜状に押し出しまたは塗布して、膜状混合物を形成し、次いで該膜状混合物より該有機溶媒(C)を除去して無色透明性ポリイミド複合フィルムを製造
【0038】
まず、工程(1)では、有機溶媒(C)中において脂肪族テトラカルボン酸またはその誘導体とジアミンとを脱水イミド化反応させることにより、ポリイミド(A)の溶液(A溶液)を合成する。具体的には、ジアミンの有機溶媒(C)の溶液に脂肪族テトラカルボン酸またはその誘導体を添加し、4〜30℃の温度に保ってポリアミド酸溶液を得た後、イミド化触媒を添加して、生成水を系外に留出しつつ脱水イミド化反応を行い、A溶液を得る。
【0039】
但し、イミド化触媒は、脂肪族テトラカルボン酸またはその誘導体を添加する以前に加えてもよく、その場合は、一般的にポリアミド酸を形成する反応条件である室温付近ないしそれ以下の温度に保つ必要なく、即座に加熱を開始し、脱水イミド化を行うことができる。
イミド化触媒としては、トリエチルアミン、n−トリプロピルアミン、n−トリブチルアミン、ピリジンまたはβ−ピコリンなどの3級アミン、あるいはフェノール、安息香酸などの酸類を使用することができるが、3級アミンを使用するのが好ましい。これらのイミド化触媒とジアミンの適正なモル比(イミド化触媒/ジアミン)としては、0.01〜1.0の範囲が好ましく、特に0.05〜0.1の範囲が好ましい。
【0040】
工程(1)において使用する、ジアミンと脂肪族テトラカルボン酸またはその誘導体とのモル比(ジアミン/脂肪族テトラカルボン酸またはその誘導体)としては、0.95〜1.05、の範囲が好ましく、特に0.99〜1.01の範囲が好ましい。
【0041】
工程(1)における脱水イミド化反応では、水を主成分とする留出液を反応槽上部に取り付けた蒸気冷却塔とそれに係合した留出液貯留装置によって反応系外へ除去する。反応温度は、通常160〜200℃の範囲であり、好ましくは170〜190℃の範囲、より好ましくは180〜190℃の範囲である。160℃未満であると、温度不足によりイミド化および高分子量化が十分に進行しない恐れがあり、200℃を超えると、溶液粘度が著しく増加した場合に反応容器の壁面に樹脂が焦げ付くなどの不具合が生じる恐れがある。なお、場合によってはトルエン、キシレンなどの共沸脱水剤を用いても良い。反応圧力は通常、常圧であるが、必要に応じて加圧でも反応を行うことができる。反応温度の保持時間としては、少なくとも1時間以上が必要であり、より好ましくは3時間以上10時間以下である。1時間未満であると、イミド化および高分子量化が十分に進行しない恐れがある。10時間を超えても、イミド化および高分子量化の進行は認められない。また、対数粘度を測定することでポリイミド(A)の重合度を相対的に評価することができる。対数粘度は、N−メチル−2−ピロリドンにポリイミド(A)を0.5g/dLの濃度で溶解し30℃で測定した値である。対数粘度が0.4dL/g未満であると、重合度が不十分で自立膜とすることが難しく、0.8dL/g以上であることが好ましい。
【0042】
工程(1)において、有機溶媒(C)と生成するポリイミド(A)との合計量中の該ポリイミドの濃度として、20重量%〜50重量%の範囲が好ましく、特に30重量%〜40重量%の範囲が好ましい。この濃度が20重量%未満であるとポリイミドの対数粘度が上がりにくく、50重量%を超えると、ポリイミドの対数粘度が上がった段階におけるポリイミド溶液の溶液粘度が高くなりすぎる恐れがあり、反応器の壁面部位の撹拌が均一に行われずに樹脂の焦げ付きの原因と成る恐れがある。
【0043】
次に、工程(2)として、ポリイミド(A)と有機化層状珪酸塩(B)および有機溶媒(C)の3成分を含む液状混合物を以下の(1)〜(3)のいずれかの方法により調製する。
方法(1):ポリイミド(A)および有機溶媒(C)を含む混合物と有機化層状珪酸塩(B)とを撹拌混合する方法。
方法(2):ポリイミド(A)と有機化層状珪酸塩(B)および有機溶媒(C)を含む混合物とを撹拌混合する方法。
方法(3):ポリイミド(A)および有機溶媒(C)の一部を含む混合物と有機化層状珪酸塩(B)および有機溶媒(C)の一部を含む混合物とを撹拌混合する方法。
【0044】
なお、方法(2)で使用するポリイミド(A)は、上記の工程(1)において、得られたポリイミド(A)の溶液にメタノールなどのポリイミドの溶解性が乏しい溶剤を添加して、ポリイミド(A)を沈殿させ、ろ過・洗浄・乾燥により固体として分離したポリイミド(A)が適当である。
また、方法(1)で使用するポリイミド(A)および有機溶媒(C)を含む混合物、および、方法(3)で使用するポリイミド(A)および有機溶媒(C)の一部を含む混合物としては、上記の工程(1)において得られたポリイミド(A)の溶液をそのまま使用してもよいが、その溶液にメタノールなどのポリイミドの溶解性が乏しい溶剤を添加して、ポリイミド(A)を沈殿させ、ろ過・洗浄・乾燥により固体として分離したポリイミド(A)を有機溶媒(C)に再溶解した液を使用してもよい。
【0045】
ポリイミド(A)、有機化層状珪酸塩(B)および有機溶媒(C)の3成分を含む液状混合物は、以上のような方法により調製するが、有機化層状珪酸塩(B)が単層に剥離した状態で均一に微分散した液状混合物を得るには、この液状混合物は、以下の条件(I)〜(III)を満たすものでなければならない。
(I)有機化層状珪酸塩(B)の使用量は、使用量の有機化層状珪酸塩(B)および使用量の有機溶媒(C)からなる2成分液状混合物の曇価(ヘイズ)が50%未満となる量であること。
(II)有機化層状珪酸塩(B)の使用量は、ポリイミド(A)100重量部に対し1重量部以上20重量部未満であること。
(III)有機溶媒(C)の使用量は、有機溶媒(C)100重量部に対してポリイミド(A)が1重量部以上となる量であること。
【0046】
上記条件(I)を満たさない場合、即ち、ヘイズが50%以上であると、有機溶媒(C)による有機化層状珪酸塩の層剥離が十分ではなく、ポリイミド(A)を含む3成分液状混合物での有機化層状珪酸塩(B)の分散性に劣る。
【0047】
上記条件(II)を満たさない場合、即ち、有機化層状珪酸塩(B)の使用量がポリイミド(A)100重量部に対し1重量部未満であると、フィルム特性の改善効果が見られず、逆に20重量部以上であると部分的に層状珪酸塩が凝集し、ヘイズの原因となり得るだけでなく、靭性の低下が顕著になる。好ましい有機化層状珪酸塩(B)の使用量は、ポリイミド(A)100重量部に対し1〜15重量部の範囲である。
【0048】
上記条件(III)を満たさない場合、即ち、有機溶媒(C)の使用量が有機溶媒(C)100重量部に対してポリイミド(A)が1重量部未満となる量である場合は、有機溶媒(C)に対するポリイミド(A)の濃度が希薄過ぎ、3成分からなる液状混合物の溶液粘度が小さく、続く工程(3)における膜状混合物を形成するのが困難であるばかりでなく、該有機溶媒(C)を除去するために長時間を要し、生産性に劣る。好ましい有機溶媒(C)の使用量は、有機溶媒(C)100重量部に対してポリイミド(A)が10〜20重量部の範囲となる量である。
【0049】
続く工程(3)では、工程(2)で得られたポリイミド(A)、有機化層状珪酸塩(B)および有機溶媒(C)の3成分を含む液状混合物を、ガラス基板あるいはステンレス製基板等の支持体上に膜状に押し出しまたは塗布して膜状混合物を形成し、次いでホットプレート上あるいは乾燥炉中において、その膜状混合物を、自己支持性を有するまで120℃以下の温度で約30〜60分乾燥させ、該有機溶媒(C)を除去する。次いで、これを支持体から引き剥がし、両端部を固定した後、膜の収縮を制限しながら残留有機溶媒(C)の突沸が起こらないように少なくとも有機溶媒(C)の沸点か、好ましくは沸点よりも5〜10℃高い温度まで1時間かけて昇温を行い、該温度において真空乾燥し、ポリイミド複合フィルムを得る。
【0050】
真空乾燥を行う時間はフィルムの膜厚にも依存するが、フレキシブルディスプレー用プラスチック基板として使用する場合に想定される150〜200μmの厚いフィルム中の残留溶媒を少なくとも1%未満にするには、少なくとも5時間以上行うことが好ましく、より好ましくは8時間以上である。
【0051】
上記工程(3)において、ポリイミド(A)、有機化層状珪酸塩(B)および有機溶媒(C)の3成分を含む液状混合物をガラス基板あるいはステンレス製基板等の支持体上に膜状に押し出しまたは塗布するには、公知の乾式ならびに乾湿式成形方法等のいかなる製膜方法を用いてもよい。例えば、ダイ押し出しによる流延法、アプリケーター、コーター等を用いる方法が挙げられる。また、前記支持体として、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートのような有機高分子のフィルムを使用することもできる。
【0052】
本発明のポリイミド複合フィルムには、表面平滑性や、離型性などの特性を向上させることを目的に、製造の任意の段階で、各種界面活性剤や内部離型剤などを加えることができる。
【0053】
本発明のポリイミド複合フィルムは、フレキシブルディスプレー基板や光センサー等の光学用途に適用可能のものであり、無色透明性を必要とする。例えば、100μmの膜厚において、目視で判断して無色透明である必要があり、100μm厚における全光線透過率は、好ましくは86%以上、特に好ましくは88%以上、より好ましくは90%以上である。また、100μm厚におけるヘイズについても、好ましくは2%未満、特に好ましくは1.5%未満である。
【0054】
液晶表示および有機EL表示用ディスプレー基板や太陽電池基板に適用する場合、駆動素子として薄膜トランジスタを作製する工程において、半導体層に使用されるアモルファスシリコン膜を成膜する場合でも250℃以上の高温に達するため、少なくとも300℃以上の耐熱性が必要であり、成膜温度が高いほど上記シリコン膜の特性が向上する。また、透明電極として、上記ディスプレー基板や太陽電池基板上に酸化インジウム、インジウム−スズ複合酸化物、酸化亜鉛などの透明導電性薄膜を形成する場合、該透明導電性薄膜の結晶化度を上げ、表面抵抗値を低くさせるには、少なくとも200℃以上の耐熱性が必要であり、300℃以上の耐熱性があるのが好ましく、成膜温度が高いほど該透明導電性薄膜の性能が向上する。
【0055】
本発明のポリイミド複合フィルムを上記ディスプレー基板に適用するには、フィルム上へのガスバリア膜の蒸着が必須であり、少なくとも200℃以上の耐熱性が必要である。また、焼成による高密度のガスバリア膜を形成するには300℃以上の耐熱性があるのが好ましく、焼成温度が高いほどバリア性が向上する。また、フィルムの透湿度係数が20g・mm/m2・day以上であると、蒸着工程における真空度が十分に上がらず、不具合が生じる。透湿度係数は5g・mm/m2・day以下であることが好ましく、3g・mm/m2・day以下であることがより好ましい。また、機械強度も数値は限定されないが、高いほうが好ましい。
【実施例】
【0056】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。但し、本発明はこれら実施例になんら制限されるものではない。
【0057】
各実施例および比較例で得られたポリイミド、有機化層状塩と有機溶媒からなる2成分液状混合物、ポリイミド複合フィルムの物性は、以下に示す方法で測定した。
【0058】
<ポリイミドの評価方法>
<対数粘度測定>
ポリイミド0.1gをN−メチル−2−ピロリドン20mLに溶解させ、キャノンフェンスケ粘度計を使用して30℃における対数粘度を測定した。対数粘度(μ)は下記式により求められた。
μ=[ln(t/t)]/C
:溶媒の流れる時間
:希薄高分子溶液の流れる時間
C:0.5g/dL
【0059】
<有機化層状珪酸塩と有機溶媒からなる2成分液状混合物の評価方法>
<全光線透過率および曇価(ヘイズ)>
有機化層状珪酸塩と有機溶媒からなる2成分液状混合物の曇価(ヘイズ)は、光路長1cmの石英セルに採取し、「JIS K7105透明度試験法」に準ずる無色性、透明性を評価する指標として、日本電色工業株式会社製色差・濁度測定器COI−300Aを用いて求めた。また、ポリイミド複合フィルムの全光線透過率およびヘイズは上記の装置を用いて同様に求めた。
【0060】
<ポリイミド複合フィルムの評価方法>
<灰分率の測定>
ポリイミド複合フィルム中の層状珪酸塩に由来する無機物の含有率は、JIS K7052に準拠し、950℃で2時間加熱して、ポリイミド複合フィルム中の無機物の重量を測定した。
【0061】
<ガラス転移温度>
ポリイミド複合フィルムのガラス転移温度は、島津製作所(株)製DSC−40M型示差熱分析装置により、窒素雰囲気下において10℃/分で400℃まで昇温し、ガラス転移温度(以下Tと略記する)を測定した。
【0062】
<引張強度>
ポリイミド複合フィルムの力学的物性(破断時の引張強度)は、ASTM D882−88に準拠し、東洋精機製作所(株)製ストログラフV1−Cを用いて測定した。
【0063】
<透湿度係数>
ポリイミド複合フィルムについて、「JIS K7129」に準ずる透湿度測定を行って、透湿度係数を算出した。
透湿度測定:水蒸気透過率測定装置(LYSSY AG ZLLIKON製:L80−4005L)を用い、40℃/90%RHの条件で測定した。
【0064】
(参考例)
<1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物の合成>
内容積5リットルのハステロイ製(HC22)オートクレーブにピロメリット酸552g、活性炭にRhを担持させた触媒(エヌ・イーケムキャット(株)製)200g、水1656gを仕込み、撹拌をしながら反応容器内を置換し、反応器の水素圧を5.0MPaとして60℃まで昇温した。水素圧を5.0MPaに保ちながら2時間反応させた。反応容器内の水素ガスを窒素ガスで置換し、反応液をオートクレーブから抜き出し、この反応液を熟持濾過して触媒を分離した。濾過液をロータリーエバポレーターにより減圧下で水を飛ばして濃縮し、結晶を析出させた。析出した結晶を室温で固液分離し、乾燥して1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸481g(収率85.0%)を得た。続いて、得られた1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸481gと無水酢酸4000gとを、5リットルのガラス製セパラブルフラスコに仕込み、撹拌をしながら反応容器内を窒素ガスで置換した。窒素ガス雰囲気下に溶媒の還流温度まで昇温し、10分間溶媒を還流させた。撹拌しながら室温まで冷却し、結晶を析出させた。析出した結晶を固液分離し、乾燥して一次結晶を得た。さらに分離母液をロータリーエバポレーターにて減圧下に濃縮し、結晶を析出させた。この結晶を固液分離し、乾燥して二次結晶を得た。一次結晶、二次結晶を合わせて1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物375gが得られた(無水化の収率96.6%)。
【0065】
(製造例1)
<ポリイミド(A1)の合成>
温度計、撹拌器、窒素導入環、分留器付き冷却管を備えた500mLの5つ口フラスコに、オキシジアニリン20.12g(0.1モル)と有機溶媒としてSP値12.6のγ−ブチロラクトン51.65g及び、SP値10.8のN,N−ジメチルアセトアミド12.92gを仕込んで溶解させ、氷水バスを用いて5℃に冷却した。同温に保ちながら、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物22.62(0.1モル)およびイミド化触媒としてトリエチルアミン0.50g(0.005モル)を一括で添加した。滴下終了後、180℃に昇温し、随時留出液を留去させながら3時間還流を行い200℃まで昇温して反応終了とし、内温が100℃になるまで空冷した後、希釈溶媒としてN,N−ジメチルアセトアミド107.6gを加え、撹拌しながら冷却し、濃度20重量%のポリイミド溶液(A1溶液)を得た。このポリイミド溶液の重量は205.26g、また、留出液総重量は3.66gであった。ポリイミド溶液の一部を1Lのメタノールに注ぎいれてポリマーを沈殿させ、ろ過、メタノール洗浄を行った後、100℃の真空乾燥機中24時間乾燥させ、白色粉末(ポリイミド(A1))を得た。この粉末のIRスペクトルを測定したところ、イミド基に特有の1706、1766cm−1の吸収が見られた。ポリイミド(A1)の対数粘度を測定したところ、1.01であった。
【0066】
(製造例2)
<ポリイミド(A2)の合成>
温度計、撹拌器、窒素導入環、分留器付き冷却管を備えた500mLの5つ口フラスコに、4,4−ジアミノジシクロヘキシルメタン21.14g(0.1モル)と有機溶媒としてSP値11.3のN−メチル−2−ピロリドン54.54gおよびSP値10.8のN, N−ジメチルアセトアミド13.60gを仕込んで溶解させ、氷水バスを用いて5℃に冷却した。同温に保ちながら、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物22.62g(0.1モル)およびイミド化触媒としてトリエチルアミン0.50g(0.005モル)を一括で添加した。130℃まで昇温し、30分程撹拌することにより、生成した塊状の塩が均一に溶解した。その後、180℃に昇温し、随時留出液を留去させながら6時間還流を行い、200℃まで昇温して反応終了とし、内温が100℃になるまで空冷した。希釈溶媒としてN,N−ジメチルアセトアミド113.4gを加え、撹拌しながら冷却し、濃度20重量%のポリイミド溶液(A2溶液)を得た。この溶液の重量は223.82g、また、留出液総重量は3.54gであった。ポリイミド溶液の一部を1Lのメタノールに注ぎいれてポリマーを沈殿させ、ろ過、メタノール洗浄を行った後、100℃の真空乾燥機中24時間乾燥させ、白色粉末(ポリイミド(A2))を得た。この粉末のIRスペクトルを測定したところ、イミド基に特有の1691、1764cm−1の吸収が見られた。ポリイミド(A2)の対数粘度を測定したところ、0.86であった。
【0067】
(実施例1)
<有機化層状珪酸塩(D1)の調製>
ビス(ヒドロキシポリオキシエチレン)オクタデシルアミン(製品名:ナイミーンS204,エチレンオキシド付加モル数4,日本油脂株式会社製)12.73gと濃塩酸4.8mLを、蒸留水100mLに溶解させ、内温80℃で撹拌することにより、ビス(ヒドロキシポリオキシエチレン)オクタデシルアミンのアンモニウム塩を得た。これと、蒸留水500mLに、膨潤性モンモリロナイト(製品名:クニピアP,クニミネ工業株式会社製)20gを加え、3時間超音波処理を行い、膨潤分散させた溶液を混合し、80℃で一時間撹拌した後、ろ過し、熱水によって二回以上洗浄し、60℃で12時間真空乾燥してビス(ヒドロキシポリオキシエチレン)オクタデシルアンモニウムイオンで有機化されたモンモリロナイト(有機化層状珪酸塩(D1))を得た。
<2成分液状混合物(D11)の調製>
上記有機化されたモンモリロナイト(有機化層状珪酸塩(D1))を、SP値10.8のN,N−ジメチルアセトアミド100重量部に対して1重量部となるように添加し、マイクロテック・ニチオン株式会社製の高速ホモジナイザー(製品名:ヒスコトロンNS−51)を用いて10000rpmで20分間撹拌混合し、有機化モンモリロナイトの分散液(2成分液状混合物(D11))を得た。この2成分液状混合物の曇価を色差・濁度測定器で測定したところ、43.5%であった。
製造例1で得られたポリイミド(A1)と2成分液状混合物(D11)をポリイミド100重量部に対して有機化モンモリロナイトの含有量が8重量部となるように60℃で混合し、高速ホモジナイザーを用いて10000rpmで2時間撹拌混合した。得られたポリイミドと有機化層状珪酸塩および有機溶媒の3成分を含む液状混合物を、1500μmのドクターブレードを用いて、プラスチック離型剤(製品名:ペリコート、中京化成工業株式会社製)を均一に塗布したステンレス基板上にキャストした。これをホットプレートで100℃、60分間保持し、有機溶媒を揮発させることで自己支持性を有する無色透明な一次乾燥フィルムを得た。このフィルムをステンレス枠に固定し、200℃で5時間真空乾燥により、残留有機溶媒の除去を行い、膜厚117μmの無色透明なポリイミド複合フィルムを得た。このフィルム中の灰分率は6.7%であった。全光線透過率およびヘイズを求め、ガラス転移温度、引張強度、透湿度係数を測定した。結果を表1に示す。
【0068】
(実施例2)
<有機化層状珪酸塩(D2)の調製>
ビス(ヒドロキシポリオキシエチレン)ドデシルアミン(製品名:ナイミーンL207,エチレンオキシド付加モル数7,日本油脂株式会社製)14.10gと濃塩酸4.8mLを、蒸留水100mLに溶解させ、内温80℃で撹拌することにより、ビス(ヒドロキシポリオキシエチレン)ドデシルアミンのアンモニウム塩を得た。これと、蒸留水500mLに、膨潤性モンモリロナイト(製品名:クニピアP,クニミネ工業株式会社製)20gを加え、3時間超音波処理を行い、膨潤分散させた溶液を混合し、80℃で一時間撹拌した後、ろ過し、熱水によって二回以上洗浄し、60℃で12時間真空乾燥してビス(ヒドロキシポリオキシエチレン)ドデシルアンモニウムイオンで有機化されたモンモリロナイト(有機化層状珪酸塩(D2))を得た。
<2成分液状混合物(D21)の調製>
上記有機化されたモンモリロナイト(有機化層状珪酸塩(D2))を、SP値10.8のN,N−ジメチルアセトアミド20重量部とSP値12.6のγ−ブチロラクトン80重量部からなる混合溶媒100重量部に対して1重量部となるように添加し、マイクロテック・ニチオン株式会社製の高速ホモジナイザー(製品名:ヒスコトロンNS−51)を用いて10000rpmで20分間撹拌混合し、有機化モンモリロナイトの分散液(2成分液状混合物(D21))を得た。この2成分液状混合物の曇価を色差・濁度測定器で測定したところ、47.3%であった。
製造例1で得られたA1溶液と2成分液状混合物(D21)をポリイミド100重量部に対して有機化モンモリロナイトの含有量が8重量部となるように60℃で混合した以外は実施例1と同様の操作を行い、膜厚122μmのポリイミド複合フィルムを得た。このフィルム中の灰分率は6.1%であった。全光線透過率およびヘイズを求め、ガラス転移温度、引張強度、透湿度係数を測定した。結果を表1に示す。
【0069】
(実施例3)
<2成分液状混合物(D31)の調製>
ビス(ヒドロキシポリオキシエチレン)ヤシ油アルキルメチルアンモニウムイオンで有機処理された有機化ヘクトライト(製品名:ルーセンタイトSEN,エチレンオキシド付加モル数15,コープケミカル株式会社製)(有機化層状珪酸塩(D3))をSP値10.8のN,N−ジメチルアセトアミド20重量部とSP値12.6のγ−ブチロラクトン80重量部からなる混合溶媒100重量部に対して3重量部となるように添加し、マイクロテック・ニチオン株式会社製の高速ホモジナイザー(製品名:ヒスコトロンNS−51)を用いて10000rpmで20分間撹拌混合し、有機化ヘクトライトの分散液(2成分液状混合物(D31))を得た。この2成分液状混合物の曇価を色差・濁度測定器で測定したところ、8.4%であった。
製造例1で得られたA1溶液に有機化層状珪酸塩(D3)をポリイミド100重量部に対して有機化ヘクトライトの含有量が15重量部となるように添加し、3成分液状混合物の内、有機溶媒(C)と有機化層状珪酸塩(D3)の2成分液状混合物が、有機溶媒(C)100重量部に対して有機化層状珪酸塩(D3)3重量部となるようにSP値10.8のN,N−ジメチルアセトアミドで希釈を行い、60℃で混合した以外は実施例1と同様の操作を行い、膜厚112μmの無色透明なポリイミド複合フィルムを得た。このフィルム中の灰分率は10.2%であった。全光線透過率およびヘイズを求め、ガラス転移温度、引張強度、透湿度係数を測定した。結果を表1に示す。
【0070】
(実施例4)
製造例2で得られたポリイミド(A2)と2成分液状混合物(D11)をポリイミド100重量部に対して有機化モンモリロナイトの含有量が8重量部となるように60℃で混合した以外は実施例1と同様の操作を行い、膜厚115μmの無色透明なポリイミド複合フィルムを得た。このフィルム中の灰分率は6.5%であった。全光線透過率およびヘイズを求め、ガラス転移温度、引張強度を測定した。結果を表1に示す。
【0071】
(実施例5)
製造例2で得られたA2溶液と2成分液状混合物(D21)をポリイミド100重量部に対して有機化モンモリロナイトの含有量が8重量部となるように60℃で混合した以外は実施例1と同様の操作を行い、膜厚120μmのポリイミド複合フィルムを得た。このフィルム中の灰分率は6.0%であった。全光線透過率およびヘイズを求め、ガラス転移温度、引張強度、透湿度係数を測定した。結果を表1に示す。
【0072】
(実施例6)
製造例2で得られたA2溶液に有機化層状珪酸塩(D3)をポリイミド100重量部に対して有機化ヘクトライトの含有量が15重量部となるように添加し、3成分液状混合物の内、有機溶媒(C)と有機化層状珪酸塩(D3)の2成分液状混合物が、有機溶媒(C)100重量部に対して有機化層状珪酸塩(D3)3重量部となるようにSP値10.8のN,N−ジメチルアセトアミドで希釈を行い、60℃で混合した以外は実施例1と同様の操作を行い、膜厚116μmの無色透明なポリイミド複合フィルムを得た。このフィルム中の灰分率は10.2%であった。全光線透過率およびヘイズを求め、ガラス転移温度、引張強度、透湿度係数を測定した。結果を表1に示す。
【0073】
(実施例7)
製造例2で得られたA2溶液に有機化層状珪酸塩(D3)をポリイミド100重量部に対して有機化ヘクトライトの含有量が15重量部となるように添加し、3成分液状混合物の内、有機溶媒(C)と有機化層状珪酸塩(D3)の2成分液状混合物が、有機溶媒(C)100重量部に対して有機化層状珪酸塩(D3)3重量部となるようにSP値12.1のN,N−ジメチルフォルムアミドで希釈を行い、60℃で混合した以外は実施例1と同様の操作を行い、膜厚110μmの無色透明なポリイミド複合フィルムを得た。全光線透過率は89.0%、ヘイズは1.1%であった。結果を表1に示す。
【0074】
(比較例1)
A1溶液を1000μmのドクターブレードを用いて、プラスチック離型剤(製品名:ペリコート、中京化成工業株式会社製)を均一に塗布したステンレス基板上にキャストした。これをホットプレートで100℃、60分間保持し、溶媒を揮発させることで自己支持性を有する無色透明な一次乾燥フィルムを得た。このフィルムをステンレス枠に固定し、200℃で5時間真空乾燥により、残留溶媒の除去を行い、膜厚138μmの無色透明な半脂肪族ポリイミドフィルムを得た。このフィルムを用いて、全光線透過率およびヘイズを求め、ガラス転移温度、引張強度、透湿度を測定した。結果を表1に示す。
【0075】
(比較例2)
A2溶液を1000μmのドクターブレードを用いて、プラスチック離型剤(製品名:ペリコート、中京化成工業株式会社製)を均一に塗布したステンレス基板上にキャストした。これをホットプレートで100℃、60分間保持し、溶媒を揮発させることで自己支持性を有する無色透明な一次乾燥フィルムを得た。このフィルムをステンレス枠に固定し、200℃で5時間真空乾燥により、残留溶媒の除去を行い、膜厚124μmの無色透明な全脂肪族ポリイミドフィルムを得た。このフィルムを用いて、全光線透過率およびヘイズを求め、ガラス転移温度、引張強度を測定した。結果を表1に示す。
【0076】
(比較例3)
A1溶液と2成分液状混合物(D11)をポリイミド100重量部に対して有機化モンモリロナイトの含有量が25重量部となるように60℃で混合した以外は実施例1と同様の操作を行い、膜厚105μmの部分的に白濁したポリイミド複合フィルムを得た。このフィルム中の灰分率は20.4%であった。全光線透過率およびヘイズを求め、ガラス転移温度、引張強度、透湿度係数を測定した。結果を表1に示す。
【0077】
(比較例4)
A2溶液と2成分液状混合物(D11)をポリイミド100重量部に対して有機化モンモリロナイトの含有量が25重量部となるように60℃で混合した以外は実施例1と同様の操作を行い、膜厚102μmの部分的に白濁したポリイミド複合フィルムを得た。このフィルム中の灰分率は19.7%であった。全光線透過率およびヘイズを求め、ガラス転移温度、引張強度を測定した。結果を表1に示す。
【0078】
(比較例5)
<有機化層状珪酸塩(D4)の調製>
ドデシルアミン(関東化学株式会社製)7.33gと濃塩酸4.8mLを、蒸留水100mLに溶解させ、内温80℃で撹拌することにより、ドデシルアミンのアンモニウム塩を得た。これと、蒸留水500mLに、膨潤性モンモリロナイト(製品名:クニピアP,クニミネ工業株式会社製)20gを加え、3時間超音波処理を行い、膨潤分散させた溶液を混合し、80℃で一時間撹拌した後、ろ過し、熱水によって二回以上洗浄し、60℃で12時間真空乾燥してドデシルアンモニウムイオンで有機化されたモンモリロナイト(有機化層状珪酸塩(D4))を得た。
<2成分液状混合物(D41)の調製>
上記有機化されたモンモリロナイト(有機化層状珪酸塩(D4))を、SP値10.8のN,N−ジメチルアセトアミド100重量部に対して1重量部となるように添加し、マイクロテック・ニチオン株式会社製の高速ホモジナイザー(製品名:ヒスコトロンNS−51)を用いて10000rpmで20分間撹拌混合し、有機化モンモリロナイトの分散液(2成分液状混合物(D41))を得た。この2成分液状混合物の曇価を色差・濁度測定器で測定したところ、65.8%であった。
製造例1で得られたポリイミド(A1)と2成分液状混合物(D41)をポリイミド100重量部に対して有機化モンモリロナイトの含有量が8重量部となるように60℃で混合した以外は実施例1と同様の操作を行い、膜厚105μmの部分的に白濁したポリイミド複合フィルムを得た。このフィルム中の灰分率は6.7%であった。全光線透過率およびヘイズを求め、ガラス転移温度、引張強度、透湿度係数を測定した。結果を表1に示す。
【0079】
(比較例6)
製造例2で得られたポリイミド(A2)と2成分液状混合物(D41)をポリイミド100重量部に対して有機化モンモリロナイトの含有量が8重量部となるように60℃で混合した以外は実施例1と同様の操作を行い、膜厚108μmの部分的に白濁したポリイミド複合フィルムを得た。このフィルム中の灰分率は6.7%であった。全光線透過率およびヘイズを求め、ガラス転移温度、引張強度、透湿度係数を測定した。結果を表1に示す。
【0080】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)で示される繰り返し単位を有するポリイミド(A)および一般式(2)または一般式(3)で示される有機オニウムイオンで処理された有機化層状珪酸塩(B)を含み、該ポリイミド(A)中に該有機化層状珪酸塩(B)が分散してなることを特徴とする無色透明性ポリイミド複合フィルム。
【化1】

(式(1)中、Rは炭素数5〜16の4価の鎖状または環状の脂肪族炭化水素基であり、Φは炭素数2〜28の2価の脂肪族炭化水素基または炭素数6〜27の2価の芳香族炭化水素基である。)
【化2】

(式(2)中、Yは炭素数1〜3のアルキレン基を示し、R、R、Rは炭素数1〜18のアルキル基または水素原子を示し、R〜Rの炭素数の合計は10以上であり、nは1〜25の整数を示す。)
【化3】

(式(3)中、Yは炭素数1〜3のアルキレン基を示し、R、Rは炭素数1〜18のアルキル基または水素原子を示し、R〜Rの炭素数の合計は10以上であり、nは1〜25の整数、mは1〜25の整数、n+mは2〜50の整数を示す。)
【請求項2】
ポリイミド(A)が一般式(4)で示される繰り返し単位を有するポリイミドである請求項1記載の無色透明性ポリイミド複合フィルム。
【化4】

(式(4)中、Φは炭素数2〜28の2価の脂肪族炭化水素基または炭素数6〜27の2価の芳香族炭化水素基である。)
【請求項3】
100μmの膜厚における全光線透過率が86%以上である請求項1記載の無色透明性ポリイミド複合フィルム。
【請求項4】
一般式(1)で示される繰り返し単位を有するポリイミド(A)、一般式(2)または一般式(3)で示される有機オニウムイオンで処理された有機化層状珪酸塩(B)、ならびにSP値が9.8〜12.7の範囲であって、環状エーテル、環状ケトン、環状エステル、アミド、およびウレアからなる群から選ばれる構造を少なくとも1つ含有する有機溶媒(C)の3成分を含む液状混合物を支持体上に膜状に押し出しまたは塗布して膜状混合物を形成し、次いで該膜状混合物より該有機溶媒(C)を除去することからなり、且つ下記の条件(I)〜(III)を満たすことを特徴とする無色透明性ポリイミド複合フィルムの製造方法。
(I) 有機化層状珪酸塩(B)の使用量は、使用量の有機化層状珪酸塩(B)および使用量の有機溶媒(C)からなる2成分液状混合物の曇価(ヘイズ)が50%未満となる量であること。
(II)有機化層状珪酸塩(B)の使用量は、ポリイミド(A)100重量部に対し1重量部以上20重量部未満であること。
(III)有機溶媒(C)の使用量は、有機溶媒(C)100重量部に対してポリイミド(A)が1重量部以上となる量であること。
【化5】

(式(1)中、Rは炭素数5〜16の4価の鎖状または環状の脂肪族炭化水素基であり、Φは炭素数2〜28の2価の脂肪族炭化水素基または炭素数6〜27の2価の芳香族炭化水素基である。)
【化6】

(式(2)中、Yは炭素数1〜3のアルキレン基を示し、R、R、Rは炭素数1〜18のアルキル基または水素原子を示し、R〜Rの炭素数の合計は10以上であり、nは1〜25の整数を示す。)
【化7】

(式(3)中、Yは炭素数1〜3のアルキレン基を示し、R、Rは炭素数1〜18のアルキル基または水素原子を示し、R〜Rの炭素数の合計は10以上であり、nは1〜25の整数、mは1〜25の整数、n+mは2〜50の整数を示す。)
【請求項5】
ポリイミド(A)および有機溶媒(C)を含む混合物と有機化層状珪酸塩(B)とを混合して該液状混合物を得る請求項4記載の無色透明性ポリイミド複合フィルムの製造方法。
【請求項6】
ポリイミド(A)と有機化層状珪酸塩(B)および有機溶媒(C)を含む混合物とを混合して該液状混合物を得る請求項4記載の無色透明性ポリイミド複合フィルムの製造方法。
【請求項7】
ポリイミド(A)および有機溶媒(C)の一部を含む混合物と有機化層状珪酸塩(B)および有機溶媒(C)の一部を含む混合物とを混合して該液状混合物を得る請求項4記載の無色透明性ポリイミド複合フィルムの製造方法。
【請求項8】
ポリイミド(A)が一般式(4)で示される繰り返し単位を有するポリイミドである請求項4記載の無色透明性ポリイミド複合フィルムの製造方法。
【化8】

(式(4)中、Φは炭素数2〜28の2価の脂肪族炭化水素基または炭素数6〜27の2価の芳香族炭化水素基である。)
【請求項9】
該フィルムの100μmの膜厚における全光線透過率が86%以上である請求項4記載の無色透明性ポリイミド複合フィルムの製造方法。
【請求項10】
該有機溶媒がγ−ブチロラクトン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルフォルムアミド、およびN−メチル−2−ピロリドンからなる群より選ばれる一種以上である請求項4記載の無色透明性ポリイミド複合フィルムの製造方法。

【公開番号】特開2006−37079(P2006−37079A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−180803(P2005−180803)
【出願日】平成17年6月21日(2005.6.21)
【出願人】(000004466)三菱瓦斯化学株式会社 (1,281)
【Fターム(参考)】