説明

焼入れ鋼部品の製造方法

【課題】陰極防食が付与された焼入れ鋼部品の製造方法、焼入れ鋼部品へ施される防食層、及び焼入れ鋼部品を提供する。
【解決手段】焼入れ鋼部品の製造方法を、a)焼入れ可能な鋼合金から成る薄鋼板へ連続コーティング処理によってコーティングを施し、b)前記コーティングをほぼ亜鉛で構成し、c)前記コーティングへさらに酸素親和性元素の1または2種以上を全量としてコーティング全重量に対して0.1重量%〜15重量%の割合で含ませ、d)次いで前記コーティングされた薄鋼板の少なくとも一部を大気中の酸素を取り入れながら焼入れに必要な温度まで至らしめて該薄鋼板に焼入れに必要な微細構造変化が起こるまで加熱し、e)前記コーティング上へ酸素親和性元素酸化物から成る表面被膜を形成させ、f)加熱前あるいは加熱後に薄鋼板を形状化し、及びg)十分な加熱後に、薄鋼板合金の焼入れが完了するように算出された冷却速度で薄鋼板を冷却する各工程から構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、陰極防食された焼入れ(硬化)鋼部品の製造方法、陰極防食、及び陰極防食された薄鋼板から成る部品に関する。
【背景技術】
【0002】
特に車両車体用に使用される低合金薄鋼板は、熱間圧延あるいは常温圧延によって適する成形工程を経て製造された後は腐食耐久性ではなくなる。このことは、比較的短時間後であっても空気中の水分によって酸化がひき起こされ薄鋼板表面上へ現れることを意味している。
【0003】
適当な防食コーティングを施すことによって薄鋼板を腐食から保護することは公知である。DIN50900第1部には、腐食は金属材料とその周囲環境との反応によって該材料中に重要な変化が起こって金属部分あるいは材料系全体の機能が損なわれることであると記載されている。腐食による損傷を防止するためには、一般的に鋼材が要求される耐用期間に亘って腐食をひき起こす作用因に対して耐久性となるように鋼に対し保護処理が施される。腐食による損傷の防止は、反応相手の特性を改変し、及び/または反応条件を変え、保護コーティングを施して腐食性媒体から金属材料を引き離し、また電気化学的手段を用いることによって達成可能である。
【0004】
DIN50902には、防食コーティングは金属上あるいは金属表面の近接部分中に形成された1層あるいは2層以上から成るコーティングであると記載されている。さらに多層コーティングも防食系として記載されている。
【0005】
防食コーティングとなり得るものとしては、例えば有機質コーティング、無機質コーティング、及び金属質コーティングを挙げることができる。金属質防食コーティングを用いる理由は、鋼表面へコーティング材料の特性を可能な最長期間に亘って与えるためである。それゆえ、有効な金属質防食の選択に際しては、鋼、コーティング材料及び反応性媒体から成る系における腐食をひき起こす化学的関連についての知識が要求される。
【0006】
前記コーティング材料は電気的不活性度が鋼に比べてより高くても、あるいはより低くてもよい。前者の場合、コーティング金属それぞれによる鋼の保護は保護コーティングを形成することによってのみ為される。かかる保護はバリヤ保護と称される。コーティング金属表面に細孔が生じるか、あるいはそれが損傷を受けるや否や、水分存在下において「局部構成分子」が形成され、その中で基体、すなわち保護対象金属に破壊的化学作用が働く。不活性度のより高いコーティング材料としては錫、ニッケル及び銅が挙げられる。
【0007】
他方、卑金属によって保護被覆層が与えられるが、これらの被覆層は鋼に比べれば不活性でないため、コーティング材中に裂け目があるとこれら被覆層にも同様に破壊的化学作用が及ぶ。かかるコーティングに損傷が生じても結果的に鋼には破壊的化学作用は及ばないが、局部構成分子が形成されることにより卑被覆金属の腐食が進行する。このような保護はガルヴァーニ電気防食あるいは陰極防食と称される。前記卑金属としては例えば亜鉛が用いられる。
【0008】
金属質保護層は種々方法を用いて処理される。鋼表面と保護層は、使用される金属及び方法に依存して、化学的、物理的、あるいは機械的に接着され、具体的には合金形成及び拡散から始まって、接着及び単純な機械的ブレースに至るまであらゆる手段が用いられる。
【0009】
前記金属質コーティングの技術的及び機械的特性は鋼のそれら特性と類似していなければならず、また機械的応力あるいは塑性変形に対する反応においても鋼と類似した反応を示さなければならない。また前記コーティングは成形によって損傷されてはならず、また成形加工によって不利な作用を受けてもならない。
【0010】
熱浸漬コーティング処理を行う場合、保護対象となる金属は液状の溶融金属中に浸漬される。熱浸漬によって鋼とコーティング金属間の相境界に対応する合金層が生成される。熱浸漬亜鉛めっきはかかるコーティング処理の一例である。
【0011】
連続熱浸漬亜鉛めっきにおいては、浴温約450℃に保たれた亜鉛浴中へスチールベルトを通過させる。コーティングの厚さは、スチールベルトによってすくい上げられた過剰の亜鉛を取り除くスロットノズルを用いて(除去媒体として空気あるいは窒素を用い)典型例として6〜20μmの範囲内に調整される。熱浸漬亜鉛めっき品は高度な耐腐食性を有し、かつ溶接及び成形に適しているため、主として建設、自動車、家電分野において利用される。
【0012】
亜鉛・鉄合金からコーティングを生成することも公知である。かかるコーティングを生成するために、熱浸漬めっき後に、これら部材は亜鉛の融点より高い温度、すなわち一般的には480〜550℃の範囲内の温度おいて拡散アニールされる。かかる処理より亜鉛・鉄合金層の成長がひき起こされ、そして上部の亜鉛層が減少する。この方法は「ガルヴァニーリング(galvannealing)」と称される。このようにして生成された亜鉛・鉄合金も同様に高耐腐食性をもち、溶接及び成形にも良好な適性をもつことから、主として自動車及び家電分野において使用される。熱浸漬法は、他のアルミニウム、アルミニウム・珪素、亜鉛・アルミニウム、及びアルミニウム・亜鉛・珪素から成るコーティングにも利用可能である。
【0013】
電解質から成る金属質コーティングが電解方式、すなわち電流の通過を利用して沈積される電解沈積金属コーティングの生成も公知である。
【0014】
電解コーティングはまた、熱浸漬法を用いて処理できない金属に対して利用可能である。電解コーティングの層厚は通常2.5〜10μmの範囲内であり、一般的に熱浸漬コーティングの厚さよりも薄い。亜鉛等の幾つかの金属でも電解コーティング法を用いて層厚の厚いコーティングを生成することが可能である。電解亜鉛めっきされた板は主に自動車分野において使用され、表面品質に優れることから主として外側車体の製造に用いられる。これら板は成形性能に優れ、溶接に適し、かつ保存性に優れ、また塗料付着性に優れたつや消し面を備えている。
【0015】
とりわけ自動車分野においては、車体をこれまで以上に軽くすることを常時目指している。これは、一方においては車両重量が軽いと燃料消費が減じられるからであり、また他方において最新車両に装備されるこれまで以上に多くの補助機能及び補助装置の重量と相殺するために車体重量を軽くする必要があるからである。
【0016】
しかしながら、自動車に対する安全性要求が次第に厳格になっているため、車体には車中の乗客の安全を保証し、かつ事故に際して乗客を守ることが同時に要求されている。そのため、車体重量の軽量化と共に事故に対する高度な安全性を満たすことが必要とされている。かかる要求はとりわけ乗客区画部分における強度を増大できる材料を用いることによってのみ満たすことが可能である。
【0017】
必要とされる強度レベルを達成するためには、機械的特性の向上された鋼材を用いるか、あるいは鋼材を処理して該鋼材へ必要な機械的特性を付与することが必要である。
【0018】
強度の向上された薄鋼板を製造するために、単一工程において鋼製部品を成形すると同時に焼入れする手法が公知である。この方法は「プレス焼入れ」とも称される。この処理方法においては、薄鋼板は通常オーステナイト化温度以上の温度、すなわち900℃以上の温度まで加熱され、次いで常温ダイ中において成形される。前記ダイによって薄鋼板が成形され、成形品は常温ダイ表面と接触していることから極めて急速に冷えるため鋼材中において既知の焼入れ効果が得られる。またまず薄鋼板を成形してから冷やし、次いで成形された板状鋼部品を較正成形機中において焼入れする方法も公知である。この方法には、最初に述べた方法と異なり、板材が常温状態で成形され、またより複雑な形状化が可能である利点がある。しかしながら、上記両方法においては、加熱によって板材表面上にスケールが生ずるため、成形及び焼入れ後に例えばサンドブラストを用いて板材表面を磨くことが必要となる。次いで板材を一定の大きさに切断し、必要があれば板材に必要な穴があけられる。この場合、板材の機械加工に際して該板材の硬度が極めて高いと、機械加工にコストが掛かり、特に加工機具が大量に摩損される点で不利である。
【0019】
US6,564,604B2の目的は、後に加熱処理を受ける薄鋼板を製造し、及びこれらコーティングされた薄鋼板の焼入れによる部品の製造方法を提供することである。この目的は、温度上昇が生じても、薄鋼板が脱炭されず、また熱プレスあるいは加熱処理前、処理中及び処理後に薄鋼板表面が酸化しないことを確実にすることを意図したものである。この目的のため、穴あけ前あるいは穴あけ後に、腐食及び脱炭からの保護を与えさらに潤滑機能も果たす合金化された2種以上の金属から成る混合材料が薄鋼板表面へ処理される。上記特許出願の一実施態様では明確に電解によって処理された公知の亜鉛層の使用が提案されており、この亜鉛層を用いる目的は、後続する鋼基板のオーステナイト化において鋼基板と共に均質な亜鉛・鉄合金へと変換することである。かかる均質な層構造は顕微鏡画像を用いて確認される。このコーティングには該コーティングを融解から保護する機械的耐久性がなければならないので前述した仮定と矛盾する。しかしながら、かかる特性は実際的にはない。さらに、切断部分が存在する場合は、亜鉛または亜鉛合金の使用によって縁部分へ陰極保護が与えられなければならない。しかしながら上記特許出願における主張に反して、この実施態様の場合、この種のコーティングによっては前記縁部分及び板状金属表面部分において陰極防食は殆ど与えられず、コーティングが損傷を受けた場合に僅かな防食のみ与えられる点で不利である。
【0020】
US6,564,604B2の第二の実施例には、アルミニウム50〜55%及び亜鉛45〜50%から成り、さらに珪素が少量含まれていてもよいコーティングが開示されている。この種のコーティングは実質的にかつそれ自体新規ではなく、Galvalume(登録商標)の商標で公知である。上記特許出願には、コーティング金属である亜鉛及びアルミニウムを鉄と混合して均質な亜鉛・アルミニウム・鉄合金コーティングが生成されることが記載されている。このコーティングの欠点は、このコーティングによっては十分な陰極防食が得られないことであり、また該コーティングがプレス焼入れ処理において使用される場合でも、該コーティングによって与えられる主としてバリヤ型保護も数箇所部分に避けられない表面損傷があると不十分となる。要約すれば、上記特許出願に記載された方法によっては、亜鉛を基材とする陰極防食コーティングは薄鋼板保護に適さず、コーティング後に加熱処理を加え、さらに形状化あるいは成形工程を経なければならない難題を解決しない。
【0021】
EP1013785A1には板表面にアルミニウムコーティングまたはアルミニウム合金コーティングが施された板状金属部品の製造方法が開示されている。この種のコーティングが施された板はプレス焼入れ処理されなければならず、使用可能なコーティング合金として、珪素9〜10%、鉄2〜3.5%を含み残余部分が不純物を含むアルミニウムである合金と、鉄2〜4%を含み残余部分が不純物を含むアルミニウムである第二の合金が開示されている。この種のコーティングは事実上公知であり、熱浸漬によってアルミニウム処理された薄鋼板に相当するものである。この種のコーティングは所謂バリヤ保護としてのみ機能する点で不利である。この種のバリヤ保護コーティングが損傷を受けるか、あるいは鉄・アルミニウムコーティング中に破断が生ずると、基材、すなわちこの場合は鋼が化学作用を受けて腐食する。この種のコーティングでは陰極防食は付与されない。
【0022】
薄鋼板がオーステナイト化温度まで加熱され、さらに後続のプレス焼入れ工程を経る場合において、熱浸漬アルミニウム処理されたコーティングでさえ、仕上げ部品が十分な防食コーティングを欠くような化学的及び機械的応力を受けることも不利である。このことは、このような熱浸漬アルミニウム処理されたコーティングが複雑な構造のプレス焼入れ、すなわち薄鋼板のオーステナイト化温度より高温度までの加熱に十分適しないことを実証するものである。
【0023】
DE10246614A1には自動車産業用のコーティングされた構造部品の製造方法が開示されている。この方法は上記欧州特許出願1013785A1の欠点を取り除くことを意図している。この特許出願においては、欧州特許出願1013785Aに記載された浸漬方法を用いることにより、特に鋼材のコーティング中に合金から成る相が既に生成されていること、及び鋼と実際のコーティングとの間の前記合金層が硬くかつ脆くて常温成形中に破損されるであろうことが主張されている。その結果、コーティング自体が基材から遊離して保護機能を失う程度まで微細な割れ目が生ずる可能性がある。それゆえ、DE10246614A1では金属あるいは金属合金から成るコーティングがガルヴァーニコーティングの少なくとも1方法が有機非水性溶液中において処理され、また同特許出願にはアルミニウムあるいはアルミニウム合金が特に適するのでコーティング材料として好ましいことが記載されている。前記アルミニウム及びアルミニウム合金の代替として亜鉛または亜鉛合金も適すると考えられる。このような方式でコーティングされた板は次いで常温予備成形され、その後に熱仕上げ成形される。しかしこの方法には、アルミニウムコーティングが電解処理されても、保護バリヤが破れて仕上げ部品表面が一旦損傷を受けると、アルミニウムコーティングがそれ以上の防食を与えない欠点がある。また電解沈積された亜鉛コーティングには、熱成形のために加熱された際に亜鉛の殆どが酸化して陰極防食が不能となる欠点がある。これら亜鉛は保護ガス雰囲気中において気化する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
本発明は向上された陰極防食効果が付与された焼入れ(硬化)薄鋼板から成る部品の製造方法を提供することを目的とする。
上記目的は請求項1項において限定された特徴を備える方法を用いることによって達成される。
本発明に従った本発明の有利な変更例は本願特許請求の範囲中の従属請求項において開示されている。
【0025】
本発明はさらに、成形及び焼入れ処理を受ける薄鋼板へ陰極防食を付与することを目的とする。
この目的は請求項27項において限定された特徴を備える防食を行うことによって達成される。またこの請求項に従属する請求項には前記防食の有利な変更例が開示されている。
【課題を解決するための手段】
【0026】
本発明に従った方法では、焼入れ可能な薄鋼板へ、主成分としての亜鉛及び1または2以上のマグネシウム、珪素、チタン、カルシウム、アルミニウム、硼素、及びマンガン等の高酸素親和性元素を0.1〜15重量%含む混合物から成るコーティングが施され、前記コーティングされた薄鋼板の少なくともある程度の部分が薄板合金のオーステナイト化温度より高い温度まで酸素を取り入れながら加熱され、前記コーティングされた薄鋼板は前記加熱前あるいは加熱後に成形され、十分な加熱の後、前記薄鋼板は薄板合金の焼入れが為されるように算出された冷却速度で冷却される。上記方法の結果として、好ましい程度の陰極防食を与える板状鋼から成る焼入れ部品が製造される。
【0027】
まず加熱処理された後に成形及び焼入れされる本発明に従った薄鋼板の防食は、実質的に亜鉛を基材とする陰極防食である。本発明に従って、コーティングを成す亜鉛は、1または2以上のマグネシウム、珪素、チタン、カルシウム、アルミニウム、硼素、及びマンガン等の高酸素親和性元素、あるいはそれらの混合物または合金0.1〜15%と混合される。このようなマグネシウム、珪素、チタン、カルシウム、アルミニウム、硼素、及びマンガン等の高酸素親和性元素が少量含まれることにより、本願における特定の用途において驚くべき効果が発揮されることが明らかとなった。
【0028】
本発明において、前記高酸素親和性元素には少なくともMg、Al、Ti、Si、Ca、B及びMnが含まれる。以下の説明においては、アルミニウムと記載されている場合であっても、上記他元素のいずれをも表す意図であることを理解されたい。
【0029】
例えば、本発明に従ったコーティングを所謂熱浸漬亜鉛めっき、すなわち亜鉛及び高酸素親和性元素の液状混合物が処理される熱浸漬コーティング処理によって薄鋼板上へ沈積することが可能である。また前記コーティングを電解沈積すること、すなわち亜鉛及び高酸素親和性元素の混合物を薄鋼板表面上へ沈積し、あるいはまず亜鉛コーティングを沈積してから第二段階として1または2以上の高酸素親和性元素を代わるがわるに、あるいは混合物あるいはそれらの合金の形態で亜鉛表面上へ沈積し、あるいはそれら元素を気化させる方法あるいは他の適当な方法により薄鋼板上へ沈積することも可能である。
【0030】
驚くべきことに、アルミニウム等の高酸素親和性元素が少量であるにも拘らず、加熱と同時に、殆どAlあるいは高酸素親和性元素酸化物(MgO、CaO、TiO、SiO、B、MnO)から成る極めて有効かつ自己治癒性の表面被覆保護層が形成される。この極めて薄い酸化物層によって極めて高温においても下方に存在する亜鉛含有防食コーティングが酸化から保護される。このことは、プレス焼入れ処理において亜鉛めっきされた薄鋼板を特別に処理する間に、1または2以上の酸化物(Al、MgO、CaO、TiO、SiO、B、MnO)から成る極めて薄い酸化保護コーティングによって酸化及び気化からそれぞれ保護される高含量の亜鉛を含む極めて有効な陰極層から成るほぼ2層の防食層が形成されることを意味する。このようにして化学的攻撃に驚くほど耐久性な陰極防食コーティングが形成される。このことは前記加熱処理が酸化雰囲気中で実施される必要があることを意味している。保護ガスが用いられる場合(無酸素雰囲気)において酸化を防止することは事実上可能であっても、それでは高蒸気圧によって亜鉛の気化が起こってしまう。
【0031】
プレス焼入れ処理のための本発明に従った防食コーティングも、薄鋼板のオーステナイト化に後続する成形工程においてこの層が破損されない程高安定性である。たとえ焼入れ部分上に微細な割れ目が生じても、陰極保護作用はプレス焼入れ処理のための既知防食コーティングによる保護作用よりも強力な状態で残存する。
【0032】
薄鋼板へ本発明に従った防食を与えるために、第一工程において含量として0.1重量%以上、かつ15重量%未満、とりわけ10重量%未満、さらに好ましくは5重量%未満のアルミニウムを含む亜鉛合金を薄鋼板、特に合金薄鋼板へ処理し、第二工程において前記コーティングされた薄鋼板を機械加工、特に切断あるいは型抜き加工し、そして大気中の酸素を取り入れながら薄板合金のオーステナイト化温度以上の温度まで加熱してから急速に冷却することが可能である。前記薄鋼板から切り出された部分(板金)の成形は薄鋼板のオーステナイト化温度までの加熱前あるいは加熱後に実施可能である。
【0033】
前記処理の第一工程において薄鋼板がコーティングされる際、特にFeAl5−xZnから成り、液状金属コーティング処理において特に690℃以上の温度で起こるFe−Zn拡散を阻止する薄い阻止相が薄鋼板表面上あるいは薄鋼板への近接部分中に生成される。従って第一工程において、亜鉛・金属コーティングされかつアルミニウムが添加された薄鋼板が製造され、この薄鋼板には薄鋼板表面の近く、すなわちコーティング近接部分にだけ鉄・亜鉛結合相の急速な成長を有効に阻止する極めて薄い阻止相が備えられる。また、アルミニウムが存在するだけで境界層部分において鉄・亜鉛が拡散する傾向が減じられると考えられる。
【0034】
第二工程において亜鉛−アルミニウム−金属コーティングされた薄鋼板が大気中の酸素を取り入れながら薄鋼板材料のオーステナイト化温度まで加熱されると、前記薄鋼板上の前記金属コーティングは当座融解する。薄鋼板末端表面において前記亜鉛からの高酸素親和性アルミニウムは大気中の酸素と反応して固形の酸化物あるいはアルミナを生成し、この酸化物あるいはアルミナはアルミニウム−金属濃縮物の前記末端表面の方向の低下を形成し、その結果として減少方向、すなわち末端部分へ向かってアルミニウムの安定な拡散を起こす。前記空気へ暴露されたコーティング部分中のアルミナに富む部分はその後コーティング金属の酸化保護及び亜鉛の気化阻止としての機能を果たす。
【0035】
また加熱処理中、前記アルミニウムは安定的に拡散されて近接阻止相から末端部分の方へ引き出され、そこでAlから成る表面層が形成される。これにより、亜鉛を高含量含んだ高度に有効な陰極コーティングがあとに残された薄鋼板コーティング形成が成し遂げられる。
【0036】
亜鉛合金として適する例はアルミニウムを含量として0.2重量%以上かつ4重量%未満、好ましくは0.26重量%以上かつ2.5重量%未満含む亜鉛合金である。
【0037】
第一工程において薄鋼板表面上への亜鉛合金コーティング処理が425℃以上かつ690℃未満、とりわけ440〜495℃に保たれた液状金属浴中を通過することで適切に為され、次いでコーティングされた薄鋼板が冷却されたならば、効率的に近接阻止相が生成されて該阻止相部分において目立った極めて良好な拡散阻止が達成されるだけでなく、薄鋼板材料の熱成形特性を向上させることも可能である。
【0038】
本発明の有利な実施態様は、厚さが例えば0.15mm以上であり、合金元素の少なくとも1種の濃度範囲が下記重量%の限度内にある熱間圧延あるいは常温圧延されたスチールベルトを用いる方法から構成される。
炭素 0.4以下、 好ましくは0.15〜0.3
珪素 1.9以下、 好ましくは0.11〜1.5
マンガン 3.0以下、 好ましくは0.8〜2.5
クロム 1.5以下、 好ましくは0.1〜0.9
モリブデン 0.9以下、 好ましくは0.1〜0.5
ニッケル 0.9以下、
チタン 0.2以下、 好ましくは0.02〜0.1
バナジウム 0.2以下、
タングステン 0.2以下、
アルミニウム 0.2以下、 好ましくは0.02〜0.07
硼素 0.01以下、 好ましくは0.0005〜0.005
硫黄 最大0.01、 好ましくは最大0.008
燐 最大0.025、 好ましくは最大0.01
残余分としての鉄及び不純物
【0039】
本発明に従った陰極防食の表面構造は塗料及びラッカーの高度な付着に特に適することが実証されている。
【0040】
もし前記表面コーティングが亜鉛に富む鉄−亜鉛−アルミニウム合金相及び鉄に富む鉄−亜鉛−アルミニウム相を有し、及び前記鉄に富む層の亜鉛の鉄に対する比が多くても0.95(Zn/Fe≦0.95)、好ましくは0.20〜0.80(Zn/Fe≧0.20〜0.80)であり、また前記亜鉛に富む層の亜鉛の鉄に対する比が少なくとも2.0(Zn/Fe≧2.0)、好ましくは2.3〜19.0(Zn/Fe=2.3〜19.0)であるならば、板状鋼部材への前記コーティングの付着をさらに向上させることが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
以下本発明の実施例について添付図面を参照しながら詳細に説明する。
【0042】
両面に層厚15μmの防食コーティングが施された厚さ約1mmの薄鋼板を複数製造して試験に供した。これらの薄鋼板を900℃の放射炉中に4分30秒間置いてから鋼板間で急速に冷却した。前記炉からの薄鋼板除去から薄鋼板間の冷却までの所要時間は5秒間であった。放射炉中におけるアニール処理期間中の薄鋼板の加熱曲線は図1に示した曲線にほぼ従った。
【0043】
次いで得られた試験片について目視的及び電気化学的差異を分析した。ここでの評価基準にアニール処理された薄鋼板の外観及び保護エネルギーを含めた。定電流溶解を用いて測定されるコーティングの電気化学的保護の測定基準として前記保護エネルギーを用いた。
【0044】
材料の金属質表面コーティングを電気化学的方法で定電流溶解することによってコーティングの防食機構を類別することが可能となる。防食対象となるコーティングの電位/時間作用特性は所定の一定電流の流れにおいて確認される。この測定のため電流密度を12.7mA/cmに予め設定しておく。測定装置として3電極系が用いられる。白金回路網を対抗電極として用い、基準電極はAg/AgCl(3M)で構成した。電解質はZnSO5HOを100g/l及びNaClを200g/lの濃度で脱イオン水中に溶解して調製した。
【0045】
表面コーティングを取り除くかあるいは擦り取ることによって容易に測定できる薄鋼板電位に対して、前記層の溶解に必要とされる電位が同等あるいはそれ以上であるならば、これは活動的な陰極防食のない純粋なバリヤ保護と称される。バリヤ保護は基材と腐食性媒体とが分離されることで特徴付けられる。
【0046】
以下にコーティングの実施例における結果について説明する。
【実施例1】
【0047】
本発明によらない実施例
薄鋼板を液状アルミニウム浴中へ通過させて熱浸漬アルミニウム処理された薄鋼板を製造した。900℃でのアニール処理により、薄鋼板はアルミニウムコーティングと反応してアルミニウム−鉄表面層が生成された。このようにしてアニール処理された薄鋼板は暗灰色の外観を呈し、その表面は均質で視覚的に識別可能な欠陥は全くない。
【0048】
熱浸漬アルミニウム処理された薄鋼板表面コーティングの定電流溶解には12.7mA/cmの電流密度を確保するために測定開始時点において極めて高い電位(+2.8V)が必要とされた。短い測定時間の後、要求される電位は薄鋼板電位まで低下した。かかる特性から熱浸漬アルミニウム処理によって生成されるコーティングが施されたアニール処理済薄鋼板が極めて有効なバリヤ保護作用を与えることが明らかである。しかしながら、コーティング中に穴ができると直ぐに前記電位は薄鋼板電位まで下降して基材への損傷が起こり始めた。前記溶解に要求される電位が薄鋼板電位以下まで下降することは決してないため、このコーティングが陰極防食を伴わない純粋なバリヤ層であることを示している。図3は測定時間全体に亘った電位曲線を示した図であり、図2は横断面の顕微鏡画像を示した図である。
【実施例2】
【0049】
本発明によらない実施例
アルミニウム55%、亜鉛44%及び珪素約1%から成る溶融金属を熱浸漬亜鉛めっきを行って薄鋼板をアルミニウム−亜鉛コーティングで被覆した。この後、さらに後続して900℃でのアニール処理を行うことにより表面が灰青色を呈した欠陥のない薄鋼板が得られた。図4はこの薄鋼板の横断面を示した図である。
【0050】
アニール処理された材料は次いで定電流溶解された。測定開始時点において、前記材料の溶融に要求される電位は薄鋼板電位よりもかなり低い約−0.92Vであることが示された。この電位値はアニール処理前における熱浸漬亜鉛めっきされたコーティングの溶融に要求される電位に匹敵する数値である。しかしこの極めて亜鉛に富んだ相は僅か約350秒の測定時間後には消失した。その後に薄鋼板電位より僅かに低い電位までの急速な電位増加が起こる。このコーティングが破損されると、前記電位はまず約−0.54Vまで減少し、次いで約−0.35Vに達するまで持続的に上昇した。但し前記電位はその後に薄鋼板電位まで徐々に減少した。この極めて負な電位は測定開始時点において薄鋼板電位よりかなり低いため、この材料によってバリヤ保護に加えてある程度の陰極防食が与えられる。しかしながら、陰極防食を与えるコーティング部分は僅か約350秒の測定時間後にはなくなる。前記コーティングの残りの部分は、コーティング溶解に要求される電位と薄鋼板電位との差が0.12V未満しかないため、僅かな陰極防食しか与えることができない。電解質の導電性が劣る場合には、このような陰極防食はもはや役に立たない。電位/時間の相関を表すグラフを図5に示す。
【実施例3】
【0051】
本発明に従った実施例
亜鉛95%及びアルミニウム5%から殆ど成る熱溶解浴中において薄鋼板を熱浸漬亜鉛めっきした。アニール処理後、薄鋼板表面は欠陥の無い銀灰色を呈する。該薄鋼板の横断面図(図6)において、コーティングは明らかに明るい層と暗い層から成り、これら層はZn−Fe−Al含有層であることを示している。前記明るい層には亜鉛がより豊富であり、前記暗い層には鉄がより豊富である。アルミニウムの一部はアニール処理中に大気中の酸素に対して反応して保護性のAl被膜を形成する。
【0052】
定電流溶解では、薄鋼板は測定開始時点において溶解に要求される約−0.7Vの電位を有していた。この電位値は薄鋼板電位よりはかなり低くなっている。約1,000秒間の測定後、電位は約−0.6Vとなった。この電位もまた薄鋼板電位よりかなり低い。約3,500秒間の測定時間後、コーティングのこの部分は無くなり、コーティングの溶解に必要な電位は薄鋼板電位に近づく。アニール処理後、このコーティングによって結果的にバリヤ保護に加えて陰極防食が与えられる。たとえ薄鋼板温度がオーステナイト化温度まで達しても長時間に亘って目に見える陰極保護が持続されるように、電位は3,500秒間の測定時間まで−0.6V以下に保持される。電位/時間の相関を表すグラフを図7に示す。
【実施例4】
【0053】
本発明に従った実施例
薄鋼板を亜鉛含量99.8%及びアルミニウム含量0.2%の熱溶融浴あるいは亜鉛浴中へ通過させた。アニール処理期間中、亜鉛コーティング中に含まれるアルミニウムが大気中の酸素に対して反応して保護性のAlスキンが形成される。高酸素親和性アルミニウムの薄鋼板表面への持続的拡散によって保護被膜が形成されかつ維持された。アニール処理後、欠陥の無い表面が銀灰色を呈した薄鋼板が得られた。アニール処理期間中に拡散によって当初約15μmであった亜鉛コーティングの厚さが約20〜25μmの厚さまで変形し、このコーティング(図8)はZn/Fe組成比が約30/70である暗く見える層とZn/Fe組成比が約80/20である明るい部分から構成された。このコーティング表面ではアルミニウム含量が増加していることが確認された。薄鋼板表面上における酸化物の検出によってAlから成る薄い保護コーティングの存在が示された。
【0054】
定電流溶解開始時点において、アニール処理された材料は約−0.75Vの電位をもっていた。約1,500秒間の測定時間後には溶解に必要とされる電位は−0.6V以下まで上昇した。この状態は約2,800秒間の測定時間まで持続した。次いで必要とされる電位は薄鋼板電位まで上昇した。この場合においても、バリヤ保護に加えて陰極防食が与えられる。2,800秒間の測定時間まで前記電位は−0.6V以下であった。結果的にこの種の材料によっても長時間に亘って陰極保護が与えられる。電位/時間の相関を表すグラフを図9に示す。
【実施例5】
【0055】
本発明によらない実施例
スチールベルト(ベルト温度約450℃)が亜鉛浴から出た後、薄鋼板は約500℃まで加熱された。この加熱により亜鉛層はZn−Fe相へと完全に変換された。このように亜鉛層はその表面に至るすべてが完全にZn−Fe相へ変換された。これにより、薄鋼板上にZnのFeに対する比がすべて70%以上である亜鉛に富む相が生じた。この防食コーティングにおいて、亜鉛浴には約0.13%程度の少量のアルミニウムが含まれていた。
上記熱処理が行われかつ完全に変換されたコーティングが施された厚さ1mmの薄鋼板を900℃の炉中において4分30秒間加熱した。これにより薄鋼板表面は黄緑色を呈した。
【0056】
黄緑色の表面はアニール処理中のZn−Fe相の酸化を示すものである。アルミニウム酸化物保護層の存在は確認できなかった。アルミニウム酸化物層が生じなかった理由は、アニール処理中に固形状のZn−Fe相の存在によってアルミニウム表面への急速な移動が妨げられ及びZn−Feコーティングが酸化から保護された事実によって説明可能である。この材料が500℃前後の温度まで加熱されても、液状の亜鉛に富む相は全く生じない。かかる相はより高温の782℃でしか生じないからである。一旦782℃まで達すると、熱力学的に生成された液状の亜鉛に富む相が生じ、該相中においてアルミニウムは自由になる。但し表面層の酸化からの保護はない。
【0057】
この時点において、防食コーティングは既に部分的に酸化されていてもよいが、もはや全面被覆のアルミニウム酸化物被膜の形成は不可である。コーティングは横断面においては荒く波状を呈し、Zn酸化物及びZn−Fe酸化物から構成されている(図11)。さらに、表面が極めて結晶性かつ針状であるために上記材料の表面積はずっと大きくなり、この点も全面被覆の厚いアルミニウム酸化物保護コーティングの形成にとって不利である。最初の状態、すなわち未だ加熱処理されていない状態では、本発明によらない前記コーティングは該コーティングに対して横方向及び縦方向の双方に向いた多数の割れ目がある脆弱なコーティングである(図10において本発明に従った前記実施例と比較されている(図中左側))。その結果、加熱中に特に常温成形部分において鋼基体の脱炭及び酸化が起こる可能性がある。
【0058】
この材料の定電流溶解では、一定電流を流して溶解を行うため測定開始時に+1Vの電位が印加され、この電位は次いで約+0.7Vで落ち着いた。この場合においても、溶解全期間中の電位は薄鋼板電位よりもかなり低い(図12)。これらのアニール処理条件からも純粋なバリヤ保護であることが示された。この場合にも陰極防食を確認することは不可である。
【実施例6】
【0059】
本発明に従った実施例
前記実施例と同様に、薄鋼板は熱浸漬亜鉛めっき処理直後に約490℃〜550℃において加熱処理され、この加熱処理によって亜鉛層の一部のみがZn−Fe相へ変換された。前記加熱処理は、この場合には前記相変換が一部にのみ起こり、未変換の亜鉛がアルミニウムと伴に表面中に存在し、その結果として遊離のアルミニウムが亜鉛コーティングの酸化保護として利用可能となるようにされた。
【0060】
本発明に従って一部のみがZn−Fe相へ変換された加熱処理済コーティングが施された厚さ1mmの薄鋼板を900℃まで急速に誘導加熱した。この加熱により欠陥のない灰色を呈した薄鋼板表面が得られた。前記薄鋼板の横断面(図13)のREM/EDX試験から、表面層の厚さが約20μmであること、コーティング上の厚さが当初15μmである亜鉛コーティングが誘導アニール処理中に拡散によって約20μmのZn−Feコーティングへ変換されること、及びこのコーティングが画像中で暗く見えかつZn/Feを約30/70の組成比で含む相とZn/Feを約80/20の組成比で含む明るい部分から形成される「豹模様」をもつ本発明の典型例としての2相構造をもつことが示された。さらに、いくつかの個別部分には亜鉛が含量として90%以上含まれていた。薄鋼板表面にはアルミニウム酸化物から成る保護コーティングがあることが分かった。
【0061】
前記表面コーティングの定電流溶解では、本発明に従って熱浸漬亜鉛めっきされたコーティングが施された鋼板が実施例5と異なってプレス焼入れ前に一部のみ急速に加熱され、溶解に必要とされる電位は測定開始時点で約−0.94Vであり、それゆえアニール処理されていない亜鉛コーティングの溶解に必要とされる電位に匹敵している。約500秒間の測定時間後には前記電位は−0.79Vまで上昇して薄鋼板電位よりかなり低い電位となった。約2,200秒間の測定時間後には−0.6V以上の電位が溶解に必要とされ、前記電位は−0.38Vまで上昇し、その後薄鋼板電位に近づく(図14)。プレス焼入れ前に本発明に従って不完全に急速加熱された材料はバリヤ保護及び極めて良好な陰極防食の双方を与えることが可能である。この材料の場合も、長時間に及ぶ測定期間中、陰極防食を維持することが可能である。
【実施例7】
【0062】
本発明によらない実施例
亜鉛を薄鋼板上へ電気化学沈積することにより薄鋼板を電解亜鉛めっきした。アニール処理期間中、亜鉛コーティングが施された薄鋼板を拡散させて薄いZn−Fe層を形成した。亜鉛の大部分は酸化されて酸化亜鉛となるが、同時に酸化鉄も生成されるため概観は緑色を呈する。薄鋼板表面は緑色を呈し、該表面にはさらに酸化亜鉛層が薄鋼板へ付着していない局部的うろこ状部分が生じた。
【0063】
薄鋼板サンプルのREM/EDX試験(図15)を行い、横断面中においてコーティングの大部分が亜鉛・鉄酸化物で被覆されていることを確認した。定電流溶解において電流を流すために必要な電位は約+1Vであるので、薄鋼板電位よりかなり高い。測定中、前記電位は+0.8V〜−0.1Vの間を変動するが、コーティングがすべて溶解する間は薄鋼板電位以上の電位となる。従って、アニール処理され電解亜鉛めっきされたコーティングの防食は純粋なバリヤ保護であるが、測定開始時点での前記電位は電解コーティングされた薄鋼板においては熱浸漬アルミニウム処理された薄鋼板におけるよりも低いため、この防食は熱浸漬アルミニウム処理された薄鋼板におけるそれよりも効率的に劣る。溶解に必要とされる電位は溶解の全期間中薄鋼板電位より高くなる。その結果、アニール処理され電解亜鉛めっきされた薄鋼板であっても常に陰極防食を与えることはない。図16に電位/時間の相関を表すグラフを示す。電位は殆どの場合薄鋼板電位より高くなるが、たとえ同一試験条件下であっても試験ごとに細かく変動する。
【実施例8】
【0064】
本発明によらない実施例
薄鋼板表面上へ亜鉛及びニッケルを電気化学沈積して薄鋼板を製造した。防食コーティング中における亜鉛のニッケルに対する重量比は約90/10であった。また沈積された層の厚さは約5μmであった。
コーティングが施された薄鋼板を大気中の酸素存在下において900℃で4分30秒間アニール処理した。このアニール処理中、亜鉛コーティングの施された薄鋼板を拡散することによって亜鉛、ニッケル及び鉄から成る薄い拡散層が生成された。しかしながら、アルミニウムが欠如しているため、亜鉛の殆どは酸化されて酸化亜鉛が生じた。この薄鋼板表面はうろこ状の緑色を呈し、また該表面には薄鋼板へ前記酸化物が付着していない小さな剥落部分が局部的に生じた。
【0065】
横断面(図17)のREM/EDX試験により、コーティングの大部分が酸化されており、そのためそれら部分が陰極防食に無効であることが分かる。
【0066】
測定開始時点におけるコーティングの溶解に要求される電位は1.5Vであり、薄鋼板電位よりずっと高くなっている。約250秒後、前記電位は約0.04Vまで下降し、そして±0.25Vの範囲内で変動する。約1,700秒間の測定時間後、前記電位は−0.27Vまで下降して安定し、測定終了までその電位値が維持される。コーティングの溶解に要求される電位は全測定時間中薄鋼板電位よりかなり高くなる。その結果、アニール処理後、このコーティングによって純粋なバリヤ機能が発揮される一方、陰極防食は全く認められない(図18)。
【実施例9】
【0067】
GDOES分析を用いたアルミニウム酸化物層の確認
GDOES(グロー放電光放出分光)試験によってアニール処理(及び表面へのアルミニウム移動)中におけるアルミニウム酸化物の生成を確認することが可能である。
【0068】
GDOES測定:
実施例4に従って厚さ15μmのコーティングが施された厚さ1mmの薄鋼板を900℃の放射炉中において4分30秒間加熱してから厚さ5cmの鋼板間で急速に冷却し、次いで炉をGDOES測定によって分析した。
【0069】
図25及び図26に実施例4に従ってコーティングされたアニール処理前後におけるGDOES分析を示す。焼入れ前(図25)における亜鉛コーティングから薄鋼板への転移は約15μmに達し、焼入れ後におけるコーティングの厚さは約23μmである。
焼入れ後(図26)、表面におけるアルミニウム含量はアニール処理されていない薄鋼板に比較して明らかに増加している。
【0070】
結論
前記実施例から、プレス焼入れ処理に本発明に従って用いられた腐食保護薄鋼板だけがアニール処理後に特に4J/cm以上の陰極防食エネルギーを伴う陰極防食を与えることが示された。図19では溶解に必要とされる電位が時間の関数として表され比較されている。
【0071】
陰極防食を質的に適切に評価するためには、陰極防食を維持できた時間の長さを調べるだけでは不十分であり、溶解に必要とされる電位と薄鋼板電位との差を考慮することも必要である。この差が大きければ大きい程、たとえ導電性に劣る電解質を用いても陰極防食効果はより高まる。薄鋼板電位との電圧差が100mVである場合、導電性の劣る電解質中における陰極防食は無視される程度に低い。しかしながら、薄鋼板電位との差が小さくとも、薄鋼板電極が用いられる時に電流の流れが検出される限り陰極防食は基本的に猶生ずる。しかしながら、陰極防食に寄与するためには、腐食性媒体がこの電極にとって極めて導電性でなければならないことから、この保護効果は実用的には無視される程低い。このような状態は実際には大気の影響(降雨も湿度等)によって決して起こらない。そのため、前記評価においては溶解に要求される電位と薄鋼板電位との差を考慮しておらず、それに代わって薄鋼板電位より100mV低い閾値が考慮されている。尚、前記差がこの閾値までである場合にのみ前記評価において陰極保護が考慮された。
【0072】
定電流溶解中の電位曲線と設定された薄鋼板電位より100mV低い閾値との間の部分をアニール処理後の各表面コーティングの陰極保護に関する評価基準として確立した(図20)。前記閾値以下にある部分だけが前記基準として考慮された。前記閾値以上の部分は無視できる程小さく、また陰極防食には実際上何ら寄与しないことから評価において考慮されていない。
【0073】
このようにして得られた部分は、電流密度を掛け算すると、基材を腐食から活発に保護できる単位面積当りの保護エネルギーと一致する。このエネルギーが大きければ大きい程、陰極防食は向上される。図21は測定された単位面積当りの保護エネルギーを互いに比較した図である。従来技術から既知であるアルミニウム55%及び亜鉛44%から成るアルミニウム−亜鉛コーティングが施された薄鋼板の単位面積当りの保護エネルギーが約1.8J/cmである一方、本発明に従ってコーティングされた薄鋼板の単位面積当りの保護エネルギーは5.6J/cm及び5.9J/cmである。
【0074】
本発明に従った陰極防食について測定された陰極防食エネルギーは、コーティング厚15μm及び上記処理及び試験条件下で、低く少なくとも4J/cmである。
【0075】
薄鋼板表面上へ電解沈積された亜鉛コーティングは、オーステナイト化温度以上の温度まで加熱処理したとしてもそれ自体で本発明に従った防食を与えることはできない。しかしながら、本発明は本発明に従った電解沈積コーティングを用いることによっても達成可能である。この達成のため、電解工程において亜鉛を高酸素親和性元素と共に薄鋼板表面上へ同時に沈積して薄鋼板表面へ亜鉛及び高酸素親和性元素の双方を含む構造の均質なコーティングを施すことが可能である。オーステナイト化温度まで加熱された場合、この種のコーティングは熱浸漬亜鉛めっきによって薄鋼板表面上へ沈積された同一組成のコーティングと同じ方式で機能する。
【0076】
別の有利な実施態様では、第一電解工程において薄鋼板表面へ亜鉛のみが沈積され、次いで第二電解工程において高酸素親和性元素が前記亜鉛層上へ沈積される。高酸素親和性元素から成るこの第二層は前記亜鉛層よりかなり薄く形成可能である。本発明に従ったこのようなコーティングが加熱されると、高酸素親和性元素から成り前記亜鉛層上に位置する外側コーティング部分が酸化されることによりこの酸化物被膜の下側の亜鉛が保護される。この高酸素親和性元素としては、亜保護性酸化物スキンをあとに残すことなく亜鉛層から気化あるいは酸化しないものが当然選択される。
【0077】
さらに別の有利な実施態様では、まず亜鉛層が電解沈積され、次いで高酸素親和性元素が気化あるいは他の適する非電解的コーティング処理法を用いて沈積される。
【0078】
本発明に従ったコーティングの典型例では、高酸素親和性元素酸化物、特にAlから成る表面保護層に加えて、本発明に従ったコーティングの横断面には、プレス焼入れのための熱処理後において、亜鉛に富むZn−Al合金相と鉄に富むFe−Zn−Al相から成る典型的な「豹模様」が形成される。前記鉄に富む相中における亜鉛の鉄に対する比は多くても0.95(Zn/Fe≦0.95)、好ましくは0.20〜0.80(Zn/Fe=0.20〜0.80)であり、前記亜鉛に富む相中における亜鉛の鉄に対する比は少なくとも2.0(Zn/Fe≧2.0)、好ましくは2.3〜19.0(Zn/Fe=2.3〜19.0)である。かかる2相構造が得られた場合のみ十分な陰極防食が与えられることが確認されている。しかしながら、かかる2相構造はAlがコーティング表面上に既に形成されていなければ形成されない。またこの場合、US6,564,604B2に従ったZn−Fe針状結晶が亜鉛マトリックス中にあると考えられる構造及び質感において均質に構成された公知のコーティングと異なり、少なくとも2つの異なる相から成る非均質な構造が形成される。
【0079】
本発明は、プレス焼入れ部品の製造に用いられる薄鋼板を連続的かつ経済的に製造でき、及び薄鋼板がオーステナイト化温度以上まで加熱された後に製造されても陰極防食が確実に保持される点で有利である。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】放射炉中でのアニール処理中における試験薄鋼板の加熱曲線を示した図である。
【図2】本発明によらない方法を用いて熱浸漬アルミニウム処理されたアニール済薄鋼板試験片横断面の顕微鏡画像を示した図である。
【図3】本発明によらない方法を用いて熱浸漬アルミニウム処理された薄鋼板についての定電流溶解における測定時間全体に亘る電位曲線を示した図である。
【図4】本発明方法によらずアルミニウム−亜鉛−珪素合金コーティングされたアニール済薄鋼板試験片横断面の顕微鏡画像を示した図である。
【図5】本発明方法によらずアルミニウム−亜鉛−珪素合金コーティングされた薄鋼板の定電流溶解試験における測定時間全体に亘る電位曲線を示した図である。
【図6】本発明に従って陰極防食が与えられた薄鋼板のアニール済試験片横断面の顕微鏡画像を示した図である。
【図7】図6に従った薄鋼板についての電位曲線を示した図である。
【図8】本発明に従って陰極防食が与えられた薄鋼板のアニール済試験片横断面の顕微鏡画像を示した図である。
【図9】図8に従った薄鋼板についての電位曲線を示した図である。
【図10】図8及び図9に示した未焼入れ(加熱処理前)状態で本発明に従ってコーティングされた薄鋼板表面の顕微鏡画像を本発明によらない方法を用いてコーティング及び処理された薄鋼板と比較して示した図である。
【図11】本発明によらない方法を用いてコーティング及び処理された薄鋼板横断面の顕微鏡画像を示した図である。
【図12】図11に示した本発明によらない薄鋼板についての電位曲線を示した図である。
【図13】本発明に従ってコーティング及び処理された薄鋼板横断面の顕微鏡画像を示した図である。
【図14】図13に従った薄鋼板についての電位曲線を示した図である。
【図15】本発明方法によらずに電解亜鉛めっきされた薄鋼板横断面の顕微鏡画像を示した図である。
【図16】図15に従った薄鋼板についての電位曲線を示した図である。
【図17】本発明方法によらずに亜鉛−ニッケルコーティングされた薄鋼板のアニール済試験片横断面の顕微鏡画像を示した図である。
【図18】図17に示した本発明よらない薄鋼板についての電位曲線を示した図である。
【図19】試験材料について溶解に必要とされる電位を時間の関数として表して比較した図である。
【図20】防食の評価に使用される部分を示したグラフである。
【図21】試験材料についてそれぞれの保護エネルギーを示した図である。
【図22】2つの異なる加熱条件下における本発明に従った薄鋼板の保護エネルギーをそれぞれ示したグラフである。
【図23】本発明に従ったコーティング中の「豹模様」の相形成を質的に示した図である。
【図24】本発明に従って実施可能な処理手順を示したフローチャートである。
【図25】薄鋼板のアニール処理前における表面コーティングの深さに依存した元素、すなわちアルミニウム、亜鉛及び鉄の分布を示したグラフである。
【図26】薄鋼板のアニール処理後における表面コーティングの深さに依存した元素、すなわちアルミニウム、亜鉛及び鉄の分布を該表面上への保護アルミニウム酸化物スキン形成の証明として示したグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)焼入れ可能な鋼合金から成る薄鋼板へ連続コーティング処理によってコーティングを施し、
b)前記コーティングを実質的に亜鉛から構成し、
c)前記コーティングへさらに1または2種以上の高酸素親和性元素を全量としてコーティング全重量に対して0.1重量%〜15重量%の割合で含ませ、
d)次いで前記コーティングされた薄鋼板の少なくとも部分領域を大気中の酸素を取り入れながら、焼入れに必要な温度へ至らしめて前記薄鋼板に焼入れに必要な微細構造変化が起こるまで加熱し、
e)前記コーティング上へ酸素親和性元素酸化物から成る表面被膜を形成させ、
f)加熱前あるいは加熱後に薄鋼板を形状化し、及び
g)十分な加熱後に、薄板合金の焼入れが完了するように算出された冷却速度で薄鋼板を冷却する各工程から構成される、陰極防食が付与された焼入れ鋼部品の製造方法。
【請求項2】
混合物として用いられる前記高酸素親和性元素がマグネシウム及び/または珪素、及び/またはチタン、及び/またはカルシウム、及び/またはアルミニウム、及び/またはマンガン、及び/または硼素であることを特徴とする請求項1項記載の方法。
【請求項3】
前記混合物が、実質的に亜鉛及び前記高酸素親和性元素から成る混合物を用いる熱浸漬処理によって処理されることを特徴とする請求項1または2項記載の方法。
【請求項4】
前記コーティングが電解処理されることを特徴とする請求項1または2項記載の方法。
【請求項5】
前記電解コーティングにおいて亜鉛層がまず沈積され、次いで第二工程において先に沈積された亜鉛層上へ前記高酸素親和性元素が沈積されることを特徴とする請求項4項記載の方法。
【請求項6】
亜鉛層がまず薄鋼板表面上へ電解沈積され、次いで高酸素親和性元素から成るコーティングが前記亜鉛層上へ沈積されることを特徴とする請求項4項記載の方法。
【請求項7】
前記高酸素親和性元素が気化されるか、あるいは他の適当な方法を用いて処理されることを特徴とする請求項6項記載の方法。
【請求項8】
前記高酸素親和性元素が0.2重量%〜5重量%の割合で用いられることを特徴とする請求項1または2項記載の方法。
【請求項9】
前記高酸素親和性元素が0.26重量%〜2.5重量%の割合で用いられることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記高酸素親和性元素として実質的にアルミニウムが用いられることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記コーティング混合物が、前記加熱中に前記コーティングが前記高酸素親和性元素酸化物からなる酸化物被膜を生成するように選択され、及び前記コーティングが少なくとも亜鉛に富む相と鉄に富む相の2相から成ることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記鉄に富む相中における亜鉛の鉄に対する比が多くても0.95(Zn/Fe≦0.95)、好ましくは0.20〜0.80(Zn/Fe=0.20〜0.80)であり、及び前記亜鉛に富む相中における亜鉛の鉄に対する比が少なくとも2.0(Zn/Fe≧2.0)、好ましくは2.3〜19.0(Zn/Fe=2.3〜19.0)であることを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記鉄に富む相中における亜鉛の鉄に対する比が約30:70であり、及び前記亜鉛に富む相が亜鉛及び鉄の組成比が80:20となるように構成されることを特徴とする請求項1〜12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
前記コーティングがさらに亜鉛含量が90%以上の個別領域をもつことを特徴とする請求項1〜13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
前記コーティングが当初15μmの厚さをもち、焼入れ処理後に前記コーティングによって少なくとも4J/cmの陰極保護作用が生ずるように構成されることを特徴とする請求項1〜14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
亜鉛及び高酸素親和性元素から成るコーティングが425〜690℃の温度に保たれた液状金属浴中へ通過される間に生成され、次いでコーティングされた薄板が冷却されることを特徴とする請求項1〜15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
亜鉛及び高酸素親和性元素から成るコーティングが440〜495℃の温度に保たれた液状金属浴中へ通過される間に生成され、次いでコーティングされた薄鋼板が冷却されることを特徴とする請求項1〜16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
前記薄鋼板が誘導加熱されることを特徴とする請求項1〜17のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
前記薄鋼板がダイ中で誘導加熱されることを特徴とする請求項1〜18のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
前記薄鋼板が放射炉中で加熱されることを特徴とする請求項1〜19のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
前記冷却が成形ダイ中において行われることを特徴とする請求項1〜20のいずれかに記載の方法。
【請求項22】
前記冷却が冷却された成形ダイを用いた成形中に実施されることを特徴とする請求項1〜21のいずれかに記載の方法。
【請求項23】
前記冷却が成形後に成形ダイ中において行われることを特徴とする請求項1〜22のいずれかに記載の方法。
【請求項24】
前記冷却が型焼入れダイ中において行われるが、前記ダイ中には成形された薄鋼板が加熱後に挿入され、及び前記ダイ中において成形された薄鋼板と形状化及び冷却された型焼入れダイとの間に形状係合が生じることを特徴とする請求項1〜23のいずれかに記載の方法。
【請求項25】
前記加熱及び冷却が型焼入れダイ中において行われ、前記加熱が誘導加熱によって実施され、及び前記誘導加熱後に成形ダイが冷却されることを特徴とする請求項1〜24のいずれかに記載の方法。
【請求項26】
前記部品の成形及び焼入れがロール成形装置を用いて実施され、コーティングされた薄鋼板が少なくともいくつかの領域においてオーステナイト化温度まで加熱され、及び加熱前、加熱中あるいは加熱後にロール成形され、次いで薄板合金の焼入れが完了する冷却速度でロール成形ダイ中において冷却されることを特徴とする請求項1〜26のいずれかに記載の方法。
【請求項27】
焼入れ工程へ暴露される薄鋼板のための防食コーティングであって、
前記コーティングは薄鋼板へ処理された後で酸素を取り入れながら熱処理され、実質的に亜鉛と、全混合物重量に対して全量で0.1重量%〜15.0重量%の1または2種以上の高酸素親和性元素から成り、及びその表面上に前記高酸素親和性元素酸化物から成る酸化物被膜を有してかつ少なくとも2相から構成され、及び
前記コーティング中に亜鉛に富む相と鉄に富む相が生ずることを特徴とする前記防食コーティング。
【請求項28】
防食コーティングが、マグネシウム及び/または珪素、及び/またはチタン、及び/またはカルシウム、及び/またはアルミニウム、及び/または硼素、及び/またはマンガンの混合物としての高酸素親和性元素から成ることを特徴とする請求項27項記載の防食コーティング。
【請求項29】
防食コーティングが熱浸漬処理法を用いて処理された防食コーティングであることを特徴とする請求項27または28項記載の防食コーティング。
【請求項30】
コーティングが実質的に亜鉛から成る混合物から成り、前記混合物には1または2以上の高酸素親和性元素がさらに含まれることを特徴とする請求項29項記載の防食コーティング。
【請求項31】
防食コーティングが電解沈積法を用いて処理された防食コーティングであることを特徴とする請求項27または28項記載の防食コーティング。
【請求項32】
防食コーティングが、1または2以上の高酸素親和性元素と、実質的に亜鉛を用いた電解沈積を経て形成された防食コーティングであることを特徴とする請求項31項記載の防食コーティング。
【請求項33】
防食コーティングが、まず実質的に亜鉛を用いた電解沈積を行って、次いで他の適した方法を用いて1または2以上の高酸素親和性元素を気化あるいは沈積させて形成されることを特徴とする請求項31項記載の防食コーティング。
【請求項34】
前記高酸素親和性元素が全コーティング重量に対する全含量として0.1〜15.0重量%含まれることを特徴とする請求項1〜33のいずれかに記載の防食コーティング。
【請求項35】
高酸素親和性元素の全コーティング重量に対する全含量が0.02〜0.5重量%の範囲内であることを特徴とする請求項27〜33のいずれかに記載の防食コーティング。
【請求項36】
高酸素親和性元素の全コーティング重量に対する全含量が0.06〜2.5重量%の範囲内であることを特徴とする請求項27〜33のいずれかに記載の防食コーティング。
【請求項37】
高酸素親和性元素として実質的にアルミニウムが用いられることを特徴とする請求項27〜36のいずれかに記載の防食コーティング。
【請求項38】
前記鉄に富む相中における亜鉛の鉄に対する比が多くても0.95(Zn/Fe≦0.95)、好ましくは0.20〜0.80(Zn/Fe=0.20〜0.80)であり、及び前記亜鉛に富む相中における亜鉛の鉄に対する比が少なくとも2.0(Zn/Fe≧2.0)、好ましくは2.3〜19.0(Zn/Fe=2.3〜19.0)であることを特徴とする請求項27〜37のいずれかに記載の防食コーティング。
【請求項39】
前記鉄に富む相における亜鉛の鉄に対する比が約30:70であり、及び前記亜鉛に富む相における亜鉛の鉄に対する比が80:20であることを特徴とする請求項27〜38のいずれかに記載の防食コーティング。
【請求項40】
防食コーティングがさらに亜鉛含量が90%以上の個別の領域をもつことを特徴とする請求項27〜39のいずれかに記載の防食コーティング。
【請求項41】
防食コーティングが当初の15μmの厚さにおいて少なくとも4J/cmの陰極保護エネルギーをもつことを特徴とする請求項27〜40のいずれかに記載の防食コーティング。
【請求項42】
請求項27〜41のいずれかに記載の防食コーティングを用いて請求項1〜27のいずれかに記載の方法によって製造された焼入れ鋼部品。
【請求項43】
前記部品が、0.15mm以上の厚さをもち及び合金元素の少なくとも1種を下記に限定された重量%範囲内で含む熱間圧延または常温圧延されたスチールベルトから成ることを特徴とする請求項42項記載の焼入れ鋼部品:
炭素 0.4以下、 好ましくは0.15〜0.3
珪素 1.9以下、 好ましくは0.11〜1.5
マンガン 3.0以下、 好ましくは0.8〜2.5
クロム 1.5以下、 好ましくは0.1〜0.9
モリブデン 0.9以下、 好ましくは0.1〜0.5
ニッケル 0.9以下、
チタン 0.2以下、 好ましくは0.02〜0.1
バナジウム 0.2以下、
タングステン 0.2以下、
アルミニウム 0.2以下、 好ましくは0.02〜0.07
硼素 0.01以下、 好ましくは0.0005〜0.005
硫黄 最大0.01、 好ましくは最大0.008
燐 最大0.025、 好ましくは最大0.01
残余分としての鉄及び不純物。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【公表番号】特表2007−500285(P2007−500285A)
【公表日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−521403(P2006−521403)
【出願日】平成16年6月9日(2004.6.9)
【国際出願番号】PCT/EP2004/006251
【国際公開番号】WO2005/021822
【国際公開日】平成17年3月10日(2005.3.10)
【出願人】(506029255)フェストアルピネ シュタール ゲーエムベーハー (11)
【氏名又は名称原語表記】VOESTALPINE STAHL GMBH
【Fターム(参考)】