説明

焼結用粒状燃料及びその製造方法

【課題】 セメントや石炭を用いることなく、微粉コークスを造粒することのできる焼結用粒状燃料及びその製造方法を提供する。
【解決手段】 粒径0.3mm以下の含有量が50質量%以上の粉コークスに、生石灰と消石灰の1種又は2種(生消石灰)を配合し、その後造粒し養生することを特徴とする焼結用粒状燃料及びその製造方法である。生消石灰の配合率がCaO換算で3〜30質量%であると好ましい。配合する生消石灰の平均粒度が0.5〜3mmであると好ましい。配合する生消石灰源として溶銑脱硫スラグを用いると好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉コークスを主成分とする焼結用粒状燃料及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
鉄鉱石を原料として焼結鉱を製造する焼結工程においては、焼結原料として鉄鉱石に加え粉コークスが用いられる。粉コークスは、焼結中に燃焼して燃料として作用する。このように用いられる粉コークスとして、高炉用コークスとしてコークス炉で製造されたものの中から、30mm以下となるものが、粉砕されて粉コークスとなり、焼結用燃料として使用される。また、コークス乾式消火工程で発生するコークス粉(CDQ粉)や集塵粉などの微粉コークスが用いられる。微粉コークスは、通常粒径0.3mm以下の微粉を50質量%以上含有している。
【0003】
微粉コークスをそのままの状態で焼結燃料として使用すると、特に粒径0.3mm以下の微粉部分については、そのままでは焼結工程で発塵の原因となり、さらに焼結時に細かい燃料ほど瞬時に燃焼してしまい、焼結原料への着熱効率が悪くなる。そこで、粉コークスを造粒して焼結用粒状燃料とする試みがなされている。
【0004】
粉コークスは一般的に粘性成分に乏しいため、そのままでは造粒することが困難である。特許文献1においては、粒径が0.3mm以下の微細粉を15%以上含む粉コークスに、セメント等の凝結剤を配合し、さらに粒径が1mm以上の粗粒粉コークスを微細粉量の30%以上含有せしめる微細粉コークスの造粒法が記載されている。凝結剤として3〜10%のセメントが配合される。
【0005】
特許文献2には、微粉部分を含む石炭を造粒媒体として微粉コークスに配合し、得られた混合物に少量の水硬性結合材を添加し、造粒、養生する粒状燃料の製造方法が記載されている。微粉コークス100部に対して、石炭を10〜70部の割合で配合し、水硬性結合材としてセメントや高炉水砕微粉末が用いられている。
【0006】
【特許文献1】特開昭59−39333号公報
【特許文献2】特開昭62−220590号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1、2に記載のものはいずれも、造粒のためにセメント等の結合材が用いられている。セメントにはAl23やSiO2が含まれるので、セメントを含有する粒状燃料を焼結燃料として使用すると、焼結鉱中のAl23やSiO2の含有率が増大することとなる。しかし、焼結鉱中のこれら成分含有量が増大すると、焼結性が悪くなるという影響があるため、好ましくない。使用するセメントが速乾セメントであれば、特に高濃度のS分を含有しているので、焼結排ガス中のSOxが増大するため、特に排ガス脱硫設備を有しない焼結工程での使用は好ましくない。最近の焼結原料の品位低下に鑑みると、焼結原料の反応性維持と脈石成分の低減を考えればセメントの使用は避けたい。特許文献2にあるように原料中に石炭を配合する場合には、揮発分や灰分を含むので一層不利になる。さらに、セメントや石炭を用いるということは、造粒にともなって費用が増大することとなり、好ましくない。
【0008】
本発明は、セメントや石炭を用いることなく、微粉コークスを造粒することのできる焼結用粒状燃料及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
即ち、本発明の要旨とするところは以下のとおりである。
(1)粒径0.3mm以下の含有量が50質量%以上の粉コークスに、生石灰と消石灰の1種又は2種(以下「生消石灰」という。)を配合し、その後造粒し養生することを特徴とする焼結用粒状燃料の製造方法。
(2)生消石灰の配合率がCaO換算で3〜20質量%であることを特徴とする上記(1)に記載の焼結用粒状燃料の製造方法。
(3)配合する生消石灰の平均粒度が0.5〜3mmであることを特徴とする上記(1)又は(2)に記載の焼結用粒状燃料の製造方法。
(4)配合する生消石灰源として溶銑脱硫スラグを用いることを特徴とする上記(1)乃至(3)のいずれかに記載の焼結用粒状燃料の製造方法。
(5)粉コークスの配合率が50質量%以上であることを特徴とする上記(1)乃至(4)のいずれかに記載の焼結用粒状燃料の製造方法。
(6)粒径0.3mm以下の含有量が50質量%以上の粉コークスに、生石灰と消石灰の1種又は2種(以下「生消石灰」という。)を配合した上で粒状化してなることを特徴とする焼結用粒状燃料。
(7)生消石灰の配合率がCaO換算で3〜20質量%であることを特徴とする上記(6)に記載の焼結用粒状燃料。
(8)配合する生消石灰の平均粒度が0.5〜3mmであることを特徴とする上記(6)又は(7)に記載の焼結用粒状燃料。
【発明の効果】
【0010】
本発明の焼結用粒状燃料及びその製造方法は、粒径0.3mm以下の微粉を含む粉コークスを主成分とし、セメントや石炭を用いることなく、微粉コークスを造粒することができるので、焼結用燃料として用いたときに発塵の問題がなく、焼結時の燃焼効率を維持することができるとともに、焼結品質を悪化させることがなく、造粒費用を低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
CaO分は、水和することによってCa(OH)2となる。Ca(OH)2は空気中の二酸化炭素と反応して炭酸カルシウムを形成するに際し、結合力を有する。Ca(OH)2が炭酸化する際におけるこの結合力を利用することができれば、粒径0.3mm以下の含有量が50質量%以上である微粉コークスを主成分とし、CaOあるいはCa(OH)2を配合することによって、セメントや石炭を用いることなくコークスの造粒が可能となる。
【0012】
粒径0.3mm以下の含有量が60質量%である微粉コークスを原料とし、これにCaO分が90質量%以上であって平均粒径が0.8mmである生石灰を配合し、パンペレタイザーを用いて転動造粒を行った。そしてパンペレタイザーで造粒した粒状燃料を、約3日間大気中に放置し養生した。CaO分の含有量を0〜20質量%の範囲で変化させた。造粒後に粒度分布評価を行い、粒径0.3mm以下の粉体構成率をもって微粉率として比較を行った。
【0013】
生石灰配合後における原料中のCaO含有量を横軸とし、微粉率を縦軸として図示したのが図1である。図1から明らかなように、CaO分を含有しない配合においては、造粒後の微粉率が55%という高い比率であった。これに対し、CaO分を含有すると微粉率が急速に減少し、CaO含有量が3%以上とすると微粉率を30%以下とすることができた。微粉率が30%以下であれば、焼結用粒状燃料として焼結に使用したときに、発塵の問題や着熱効率低下の問題を回避することが可能である。
【0014】
一方、図1から明らかなように、配合原料中のCaO含有量を3%以上としたときの微粉率はほぼ一定している。CaO含有量が多くなるほど、焼結用粒状燃料中のコークス含有量が低下し、焼結原料として装入する際の粒状燃料原単位が増加して焼結の操業性が悪化するため、粒状燃料中におけるCaO含有量の上限は20%とすると好ましい。
【0015】
なお、配合する生消石灰は、CaO主体であってもCa(OH)2主体であっても、CaOとCa(OH)2の混合物主体であっても構わない。好ましい含有量は、CaO換算で3〜20質量%である。
【0016】
本発明において、コークス源として粒径0.3mm以下の含有量が50質量%以上の粉コークスを用いる。本発明によれば、粒径0.3mm以下の含有量が50質量%以上の粉コークスであっても十分に良好な造粒を行うことができ、また、このように微粉分の多い粉コークスを用いて粒状化することにより、本発明の効果を発揮することができるからである。
【0017】
生消石灰を配合することによる微粉コークスの造粒は、CaOやCa(OH)2の周りに微粉を凝集させ、CaOやCa(OH)2の結合力を利用して擬似粒子を造り、微粉率を低下せしめる技術である。よって、生消石灰の粉体はある程度細かい方が好ましい。
【0018】
そこで、配合する生消石灰の平均粒径が微粉率に及ぼす影響について調査した。上記図1の場合と同様、粒径0.3mm以下の含有量が60質量%である微粉コークスを原料とし、これにCaO分が90質量%以上の生石灰を配合して配合後のCaO配合率を4質量%とし、パンペレタイザーを用いて転動造粒を行った。混合する生石灰の平均粒径を0.5mmから7mmまで変化させ、造粒後において粒径0.3mm以下の粉体構成率(微粉率)を評価した結果を図2に示す。なお、平均粒径としてはD50(構成比率50%の粒度)を用いた。
【0019】
図2から明らかなように、配合する生石灰の平均粒径が0.5〜3mmの範囲において、微粉率は30%以下であり、良好な結果を得ることができた。配合する生石灰の平均粒径が3mmを超えると、微粉率が漸次上昇する。一方、配合する生石灰の平均粒径が細かすぎると、生石灰を配合するに際して粉体が飛散しやすく、うまく混合できないことがある。生消石灰の平均粒径が0.5mm以上であれば、粉体飛散の問題も発生せず、良好に混合することが可能である。
【0020】
溶銑を脱硫するに際し、CaO系の脱硫剤が用いられる。例えば、トーピードカーに収容された溶銑中にランスを浸漬し、インジェクションガスとともに粉末のCaO系脱硫剤を溶銑に吹き込むことにより、溶銑の脱硫が行われる。吹き込んだ脱硫剤は、溶銑中を浮上して脱硫スラグとなり、集められる。溶銑温度が1250〜1500℃と低温であるのに対し、CaOの融点は約2700℃と高いので、脱硫剤として溶銑中に吹き込んだCaO分はほとんど溶解せず、細かい粒子状のフリーCaOがそのまま脱硫スラグとなる。あるいは、脱硫スラグとしての回収時あるいは回収後の散水によって一部又は大部分がCa(OH)2の形で存在している。
【0021】
本発明において、配合する生消石灰源として上記のような溶銑脱硫スラグを用いることとすると好ましい。溶銑脱硫スラグとしては、CaO系の脱硫剤を用いて得られた脱硫スラグが適合する。CaO系の脱硫剤を用いて得られた溶銑脱硫スラグは、上記のように生消石灰が主体となっているので、粉コークスに溶銑脱硫スラグを配合して造粒・養生することにより、微粉率の低い良好な焼結用粒状燃料を形成することができる。生消石灰源として溶銑脱硫スラグを用いることにより、焼結用粒状燃料を製造するコストを大幅に低減することができる。なお脱硫スラグ使用時は、焼結排ガス中のSOx濃度が上昇するので、使用する場合は排ガスの脱硫設備のある焼結設備で使用することが望ましい。
【0022】
また、本発明において、粒径0.3mm以下の含有量が50質量%以上の粉コークスを50%以上配合したものを原料として造粒することが好ましい。粉コークスの配合率が50%未満になると、燃焼源である炭素分の比率が低くなる為、粒状燃料あたりの燃焼効率が低下するため、好ましくない。粉コークス・生消石灰以外に、本来は焼結原料として使用可能なものを適宜、燃焼に影響のない範囲で混合することも可能である。例えば、換気集塵機のダストを混合すれば、新たにホッパーなどの設備を増設する必要が無く、焼結原料として使用が可能となるため、設備投資抑制と発生物削減の点から望ましい。
【0023】
以上のようにして製造された本発明の焼結用粒状燃料は、粒径0.3mm以下の含有量が50質量%以上の粉コークスに、生石灰と消石灰の1種又は2種(生消石灰)を配合した上で粒状化してなることを特徴とする。また、焼結用粒状燃料中の生消石灰の配合率がCaO換算で3〜20質量%であると好ましい。配合する生消石灰の平均粒度が0.5〜3mmであるとさらに好ましい。好ましい理由は、上記本発明の焼結用粒状燃料の製造方法について詳述したとおりである。
【実施例】
【0024】
表1に示す微粉コークス、粗コークス、石炭、生石灰、溶銑脱硫スラグ、セメント、換気集塵ダスト(T.Fe=56%)を用い、表2に示す配合率で配合した上で造粒し養生することにより、焼結用粒状燃料を製造した。表1には各原料の粉体粒度分布、平均粒径、フリーCaO含有量を示す。平均粒径にはD50を用いた。フリーCaO含有量は、原料中のCaOとCa(OH)2の合計をCaO換算で表した含有量である。造粒については、パンペレタイザーを用いて転動造粒を行った。養生については、パンペレタイザーで造粒した原料を、約3日間大気中に放置して行った。製造した焼結用粒状燃料について、0.3mm以下の粉体構成率を測定し、微粉率として表2に示した。
【0025】
【表1】

【0026】
【表2】

【0027】
表2に示す本発明例No.1〜5が本発明例である。微粉コークスは0.3mm以下の含有量が55%と高いにもかかわらず、造粒後における微粉率はいずれも30%以下であり、良好な造粒成績を実現することができた。
【0028】
比較例No.6はCaO含有量が十分ではなく、微粉率が高い結果となった。比較例No.7は石炭とセメントを含有させた例であり、比較例No.8は粗コークスとセメントを含有させた例である。No.7、8いずれも微粉率は良好であったものの、セメントを用いるために製造コストが上昇する結果となり、さらにセメント起因のAl23やSiO2の含有量が増大することとなった。またNo.7は、焼結用粒状燃料内に石炭起因の揮発分と灰分が含有される結果となった。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】微粉コークスに生石灰を配合して造粒した場合の、CaO含有量と微粉率の関係を示す図である。
【図2】微粉コークスに生石灰を配合して造粒した場合の、生石灰の平均粒径と微粉率との関係を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒径0.3mm以下の含有量が50質量%以上の粉コークスに、生石灰と消石灰の1種又は2種(以下「生消石灰」という。)を配合し、その後造粒し養生することを特徴とする焼結用粒状燃料の製造方法。
【請求項2】
生消石灰の配合率がCaO換算で3〜20質量%であることを特徴とする請求項1に記載の焼結用粒状燃料の製造方法。
【請求項3】
配合する生消石灰の平均粒度が0.5〜3mmであることを特徴とする請求項1又は2に記載の焼結用粒状燃料の製造方法。
【請求項4】
配合する生消石灰源として溶銑脱硫スラグを用いることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の焼結用粒状燃料の製造方法。
【請求項5】
粉コークスの配合率が50質量%以上であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の焼結用粒状燃料の製造方法。
【請求項6】
粒径0.3mm以下の含有量が50質量%以上の粉コークスに、生石灰と消石灰の1種又は2種(以下「生消石灰」という。)を配合した上で粒状化してなることを特徴とする焼結用粒状燃料。
【請求項7】
生消石灰の配合率がCaO換算で3〜20質量%であることを特徴とする請求項6に記載の焼結用粒状燃料。
【請求項8】
配合する生消石灰の平均粒度が0.5〜3mmであることを特徴とする請求項6又は7に記載の焼結用粒状燃料。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2006−290925(P2006−290925A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−109433(P2005−109433)
【出願日】平成17年4月6日(2005.4.6)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】