説明

照光シート構造体及びその製造方法並びに操作スイッチ用カバー部材

【課題】優れた外観を得やすいと共に所定形状で光を放射可能であり、しかも製造が容易な照光シート構造体を提供する。
【解決手段】光源13からの光がシート状の内部を通して導かれて、所定の放射面領域15から放射される照光シート10と、照光シート10を覆う表面被覆部12とを備えた照光シート構造体であり、照光シート10はシート状のコア層21と、コア層21の表面を密着して覆うクラッド層23とを備え、光源13からの光がクラッド層23により反射されながらコア層21内で導かれるように構成され、クラッド層23は放射面領域15に所定形状に開口した放射開口部25を備え、表面被覆部12は、照光シート10側視認性を低下させて表面側から視認される隠蔽層16を備え、放射開口部25から放射される光が、隠蔽層16を透過して表面側から視認可能に構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、各種部品の表面に配置され、内部を隠蔽可能であると共に所定形状の光を放射な照光シート構造体と、その製造方法と、照光シート構造体を用いた操作スイッチ用カバー部材とに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、光源からの光をシート状の内部を通して導き、表面の所定の放射面領域で放射させるように構成された照光シートを用いた照光シート構造体が種々の分野で提案されている。
【0003】
例えば、下記特許文献1では、導光板内に広がる光の一部を表面側に反射させるための反射パターンが少なくとも一つ設けられたキーパッドが提案されている。ここでは、反射パターンが部分的に設けられているため、一部の表面から光を放射させることが可能となっている。
【0004】
このキーパッドを用いてキーパッドアセンブリを構成するには、ドーム部を備えたスイッチ基板上に導光板を積層し、ドーム部上に反射パターンを配置すると共に、ドーム部に対向する位置にキーボタンを配置する。このキーパッド装置では、導光板により導光された光が反射パターンで乱反射して放射されることで、キーボタンを背面側から照光することができる。
【0005】
このキーパッドアセンブリでは、キーボタンの上面に、文字や数字等の所定形状の印刷層が施され、この印刷層によりキーボタンの内部側が外部から視認されないように隠蔽されており、キーボタンを背面側から照光した際には、印刷層を透過した光が外部から視認されるようになっている。
【特許文献1】特開2006−323843号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このような従来のキーパッド等の構造体では、導光板の反射パターンにより放射された光により印刷層全体を表示するようにしていた。そのため、この印刷層か
ら所定形状で光を放射させることはできず、優れた外観を得にくかった。
【0007】
そこで、この発明では、所定形状で光を放射可能であると共に優れた外観を得やすく、しかも製造が容易な照光シート構造体を提供することを課題とすると共に、この照光シート構造体を容易に製造する方法を提供することを他の課題とし、更に、この照光シート構造体を用いた操作スイッチ用カバー部材を提供することを別の課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する請求項1に記載の照光シート構造体は、光源からの光がシート状の内部を通して導かれて、所定形状の放射面領域から放射される照光シートと、該照光シートを覆う表面被覆部とを備えた照光シート構造体において、前記照光シートは、シート状のコア層と、該コア層の表面を密着して覆うクラッド層とを備え、前記光源からの光が前記クラッド層により反射されながら前記コア層内で導かれるように構成され、前記クラッド層は、前記放射面領域と同形状に開口した放射開口部を備え、前記表面被覆部は、表面側から視認されて前記照光シート側の視認性を低下させる隠蔽層を備え、前記放射開口部から放射される前記光が、前記隠蔽層を透過して表面側から視認可能に構成されていることを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の照光シート構造体は、請求項1に記載の構成に加え、前記隠蔽層は、前記放射開口部を覆った状態で前記クラッド層に密着して積層されていることを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載の照光シート構造体は、請求項1又は2に記載の構成に加え、前記コア層及び前記クラッド層は、無色透明に形成されていることを特徴とする。
【0011】
請求項4に記載の照光シート構造体の製造方法は、請求項1乃至3の何れか一つに記載の照光シート構造体を製造する方法であり、前記コア層と所定形状の前記放射開口部を有する前記クラッド層とを備えた前記照光シートを形成し、前記放射開口部及び前記クラッド層を覆う前記隠蔽層を有する前記表面被覆部を前記照光シートに積層一体化することを特徴とする。
【0012】
請求項5に記載の操作スイッチ用カバー部材は、請求項1乃至3の何れか一つに記載の照光シート構造体からなり、前記表面被覆部は、表面側からスイッチ操作可能であって、該表面被覆部と前記照光シートとが一体に形成されていること特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に記載の照光シート構造体によれば、照光シートが光源からの光をクラッド層により反射させながらコア層内で導くように構成されると共にクラッド層に放射開口部を備え、この照光シートを覆う表面被覆部が表面側から視認されて照光シート側の視認性を低下させる隠蔽層を備え、放射開口部から放射される光が隠蔽層を透過して表面側から視認可能に構成されているので、光源から光が放射されると、放射面領域以外の領域では、照光シートから光が放射され難く、表面被覆部の表面側から隠蔽層が視認される。一方、放射面領域では、放射開口部から所定形状の光が放射され、この光が隠蔽層を透過して表面被覆部の表面側から視認される。そのため、光源から光が放射されると、表面操作部の表面側から隠蔽層と共に所定形状の光を視認することができて優れた外観を得ることが可能である。
【0014】
しかも、所定形状の光を放射させるのに、照光シートとは別に、光を透過する部位と遮光する部位とを形成する必要がないため、製造を極めて簡単にできる。
【0015】
請求項2に記載の照光シート構造体によれば、隠蔽層が放射開口部を覆いクラッド層に密着して積層されているので、放射開口部から放射される光を隠蔽層に直接入射させることができ、照光シートと表面被覆部との間で乱反射等が生じ難い。そのため、放射開口部の形状の光の輪郭を鮮明に形成し易い。
【0016】
請求項3に記載の照光シート構造体によれば、コア層及びクラッド層が無色透明に形成されているので、隠蔽層が放射開口部から放射される光を透過可能な程度の透光性を有するものであっても、照光シートが表面被覆部の表面側から視認され難いことから、隠蔽層の背面側を遮蔽するための層などを別途設ける必要がなく、より製造が容易である。
【0017】
請求項4に記載の照光シート構造体の製造方法によれば、クラッド層を所定形状の放射開口部を設けて形成することにより照光シートを形成した後、この放射開口部及びクラッド層を覆うように隠蔽層を有する表面被覆部を形成するだけで、光を所定形状に放射させるための層を別に形成することなく、容易に照光シート構造体を製造することができる。
【0018】
請求項5に記載の操作スイッチ用カバー部材によれば、請求項1乃至3の何れか一つに記載の照光シート構造体からなるので、優れた外観を得やすいと同時に所定形状で光を放射可能であり、しかも、製造が容易である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
[実施の形態1]
【0020】
以下、この発明の実施の形態を図を用いて説明する。
【0021】
図1乃至図3は、実施の形態1の照光シート構造体を示す。
【0022】
この照光シート構造体は、所定形状の光を放射する放射面領域15が所定位置に設けられた照光シート10と、照光シート10の表面側を覆い、照光シート10から放射される光が透過して表面側に放射される表面被覆部12とを備え、この照光シート10が表面被覆部12に接合された状態で、支持基体11の固定部11aに固定されている。
【0023】
支持基体11の固定部11aには、図1及び図2に示すように、照光シート10に光を面方向に供給可能なLED等の光源13が設けられており、光源13から供給された光が照光シート10により導光されて放射面領域15から放射することが可能となっている。
【0024】
より詳しくは、その照光シート10は、図3に示すように、光が内部で導光されるためのシート状のコア層21と、このコア層21の一方の表面を覆うクラッド層23とを備え、コア層21とクラッド層23とが密着して一体に接合されている。この照光シート10では、クラッド層23に、放射面領域15と同形状の放射開口部25が形成されている。
【0025】
そのコア層21は、透明性を有し、光を面方向に透過させて導光する層である。このコア層21は、可視光領域の光の全光線透過率が80%以上の層であることが好ましい。透過率が高い程、導光される光の減衰を抑えることができるからである。また、コア層21は無色透明であることが好ましい。これにより、照光シート10を後述する隠蔽層16により被覆して表面から視認され難くすることができるからである。
【0026】
コア層21の屈折率は、高い程好ましく、例えば1.3以上とするのが好適である。クラッド層23として使用可能な材料の選択の幅を広げられるからである。
【0027】
このコア層21は、可撓性を有することが好ましい。照光シートを変形させて支持基体11や表面被覆部12の表面形状に沿って配置し易くできるなど、配置や用途の自由度が向上するからである。
【0028】
このようなコア層21を構成する材料としては、例えば、シリコーン、ポリウレタン、ポリカーボネート等の樹脂やエラストマーなどを使用することができる。
【0029】
コア層21の厚さは、コア層21の用途等に応じて適宜選択することができるが、放射面領域15において所望の輝度が確保できる範囲で出来るだけ薄肉に形成されることが好ましい。但し、光源13と対向して光源13からの光が入射される入射面の面積は、光源13の対向する側の光の放射面の面積の少なくとも50%以上とする必要がある。
【0030】
このコア層21のクラッド層23側の表面は、鏡面であることが好ましい。鏡面であれば、導光される光がコア層21とクラッド層23との界面で乱反射して放射面領域15以外の部位でコア層21から光が放射することを抑制でき、導光性能を向上させることができるからである。
【0031】
この鏡面とは、表面粗さが小さく抑えられている状態である。鏡面は、例えば成形型を用いてコア層21を成形する場合には、型面の表面粗さを小さく抑えることにより作製することが可能である。この型面の表面粗さとしては、例えば、三次元形状測定装置等により測定される算術平均粗さ(Ra)が0.01〜0.5μmの範囲となるものが好適である。
【0032】
コア層21の支持基体11側の表面も、クラッド層23側の表面と同様に鏡面であることが好ましい。導光性能を向上させ易いからである。
【0033】
そして、コア層21の放射開口部25が設けられている部位には、放射開口部25に対応した形状で、光を放射し易くするための光放射部26が設けられていることが好ましい。この光放射部26は、コア層21内で導かれる光をクラッド層23より放射し易くするものであり、例えば、導光された光が乱反射するように構成されていてもよい。この実施の形態1では、放射開口部25から表面被覆部12側に露出するコア層21の表面を、クラッド層23により被覆されているコア層21の表面より粗面化することで形成されている。粗面であることにより、コア層21内を導光された光が乱反射してコア層21の表面から放射し易くなるからである。
【0034】
この粗面は、各種の方法で形成することができ、例えば、コア層21の鏡面を成形型により成形する場合には、型面の所定位置の表面粗さを粗くして形成してもよい。その場合、型面の表面粗さとしては、例えば、三次元形状測定装置等により測定される算術平均粗さ(Ra)が1.0μm以上であれば好適である。
【0035】
次に、この照光シート10のクラッド層23は、コア層21の少なくとも一方の面に積層一体化された層で、コア層21内の光が、コア層21との間の界面で反射されながらコア層21内を導光されるようにする層である。
【0036】
このクラッド層23の屈折率は、少なくともコア層21の屈折率より小さいことが必要であり、コア層21の屈折率に対して0.1%以上小さくなることが好ましく、特に、1%以上小さくすることが好適である。クラッド層23の屈折率が大きい程、コア層21内を導光される光の全反射の条件が狭くなり、導光性能が低下するからである。
【0037】
このクラッド層23は、コア層21より透明度が低いものであってもよい。コア層21の表面が鏡面であるため、コア層21内で導かれる光はクラッド層23との間の界面で十分に反射でき、導光される光の反射条件に対する影響が小さいからである。また、クラッド層23は無色透明であることが好ましい。
【0038】
さらに、クラッド層23は、可撓性を有することが好ましい。照光シートを変形させて支持基体11や表面被覆部12の表面形状に沿って配置し易くでき、配置や用途の自由度が向上するからである。
【0039】
このクラッド層23を構成する材料としては、接着剤等の他の材料を介在させることなくコア層21と積層一体化できる材料であることが要求される。具体的には、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素樹脂や他の樹脂、エラストマーなどを使用することができる。シリカ等のように多孔質空間内に空気を保持することで見かけの屈折率を小さくできる材料であってもよい。
【0040】
クラッド層23の厚さは、出来るだけ薄肉に形成されることが好ましい。クラッド層23はコア層21との界面においてコア層21内で導光される光を反射させるために使用される層であるため、厚さの影響が少ないからである。
【0041】
次に、この照光シート構造体の表面被覆部12は、照光シート10の表面側の全面を覆う表面プレート14と、表面プレート14の照光シート10側の全面に積層された隠蔽層16とを備えている。
【0042】
表面被覆部12の表面プレート14は、各種の透明樹脂、硝子等の光を透過可能な板材からなる。この表面プレート14は、照光シート構造体の表面側から隠蔽層16を視認可能な透過性を有し、隠蔽層16や照光シート10を保護できればよい。この実施の形態1では、表面プレート14により照光シート構造体としての剛性を確保できるものが好ましい。
【0043】
表面被覆部12の隠蔽層16は、表面被覆部12より照光シート10側となる内部視認性を低下させて、表面側から内部が視認され難くすると同時に、照光シート10の放射面領域15から放射される光を透過する層である。
【0044】
この隠蔽層16としては、可視光領域の光の全光線透過率が5〜45%であればよく、特に10〜30%が好ましい。透過率が高過ぎると内部が視認され易くなり、一方、低すぎると照光シート10の放射面領域15から照射された光が表面側に透過され難くなるからである。
【0045】
このような隠蔽層16としては、例えば、インジウム、錫、アルミニウム等の金属を透光性を有する程度の物理的蒸着や化学的蒸着、または電気メッキ、化学メッキなどの手法による金属蒸着膜の他、スクリーン印刷や塗装による着色層が挙げられる。
【0046】
一方、前記光源13は、図1及び図2に示すように、放射面領域15とは異なる配置位置に設けられ、光源配置孔29がコア層21に設けられており、このLED等の光源13が内部に収容されるようになっている。この光源13の配置位置周辺では、クラッド層23の表面に光源13からの光を遮光する遮光層27が設けられている。
【0047】
この遮光層27は、図2に示すように、光源13からの光がクラッド層23を透過して直接外部に放射されることを防止する層であり、光源13の直上及びその周囲に配置されている。遮光層27の配置される範囲は、光源13からコア層21に供給された光がコア層21とクラッド層23との界面に達した際、略全反射可能となるような入射角となるまでの範囲を覆うように配置されることが好ましい。
【0048】
この遮光層27は光を確実に遮光できる不透明な層からなり、クラッド層23と共に変形可能なものが好適である。また、遮光層27は不透明であると共に反射効果を備えたものであってもよい。この遮光層27はクラッド層23に印刷等により直接接合されていてもよいが、接着剤や両面粘着テープ等の他の層を介して接合されていてもよい。コア層21に直接接触しないため、コア層21内で導光される光に対する影響がないからである。
【0049】
このような遮光層27としては、例えば、シリコーン、ポリウレタン、ポリカーボネート等の樹脂やエラストマー、ステンレス鋼、アルミニウム等の金属などを使用することができる。この遮光層27の厚さは、十分な遮光性が得られる範囲で、出来るだけ薄肉に形成されるのが好ましい。
【0050】
このような照光シート10は、各種の部材の内部を隠蔽するように装着して使用される。
【0051】
まず、光源13から光が放射されない間は、表面被覆部12の全面で表面側から隠蔽層16が視認されている。
【0052】
そして、光源13から光が発光すると、照光シート10では、コア層21の光源配置孔29内で点光源から四方に放射され、コア層21及びクラッド層23に供給されて入射される。コア層21の面方向に対して大きく交差する方向で入射した光は、コア層21及びクラッド層23を透過し、遮光層27に達して遮光される。コア層21の面方向に沿って全反射可能な条件で入射された光は、クラッド層23により反射されながらシート状のコア層21の内部を通して導かれる。そして、その光のうちコア層21の放射開口部25内の表面に達した光は、粗面化された表面により乱反射されることで、放射開口部25を通して外部に放射される。残部の光は、更にコア層21内を導光され、他の放射開口部25内の表面から同様にして外部に放射される。
【0053】
このとき、放射面領域15以外の領域では照光シート10から光が放射され難いため、表面被覆部12の表面側からは隠蔽層16が視認されている。一方、放射面領域15では、放射開口部25から所定形状の光が放射され、この光が隠蔽層16を透過して表面側から視認される。そのため、光源から光が放射されると、表面操作部12の表面側から隠蔽層16と共に所定形状の光が視認される。
【0054】
次に、このような照光シート構造体の製造方法について説明する。
【0055】
まず、照光シート10を製造するには、例えば、予めコア層21を構成可能なコア層形成用シート材を、表面が鏡面となるようにして作製し、このコア層形成用の表面にクラッド層23を密着して形成する。このとき、所定形状の放射開口部25を設ける必要がある。
【0056】
放射開口部25を設けてクラッド層23を形成するには、例えば、クラッド層23を形成可能な印刷用インク等を用いて、放射開口部25を形成するように印刷してもよい。また、放射開口部25に対応した位置に治具等を配置し、クラッド層23を形成可能なペースト等を塗布し、その治具を外して硬化させることにより放射開口部25を成形することもできる。
【0057】
なお、放射開口部25から露出されるコア層21の表面は、コア層21の作製と共に、或いは、クラッド層23を形成した後で、粗面化させればよい。
【0058】
照光シート10を形成後、例えば、予め形成された表面プレート14に隠蔽層16を積層することにより表面被覆部12を形成しておき、この表面被覆部12を、クラッド層23及びその放射開口部25を覆うようにして積層及び接合することにより、製造してもよい。
【0059】
また、照光シート10のクラッド層23及びその放射開口部25の覆うように、隠蔽層16を塗布等により形成し、これに表面プレート14を積層して接合してもよい。
【0060】
以上のような照射シート10によれば、光源13から光が放射されない間は、表面被覆部12の全面で隠蔽層16が視認され、光源から光が放射されると、表面被覆部12で隠蔽層16が視認されると共に、所定形状の光が視認される。そのため、表面被覆部12の表面側から見ると内部が常に隠蔽層16により隠蔽された状態となり、隠蔽層16により意匠性を付与することができ、優れた外観を得易く、又、光源13により所定形状の光を放射させることができる。
【0061】
しかも、光を導光するためのクラッド層23の放射開口部25から所定形状の光を放射させることができるため、所定形状の光を放射させるための層を照光シート10とは別に設ける必要がなく、照光シート構造体の製造が容易である。
【0062】
また、この照光シート構造体では、隠蔽層16がクラッド層23及び放射開口部25に密着して積層されているので、放射開口部25から放射される光を隠蔽層16に直接入射させることができ、照光シート10と表面被覆部12との間で乱反射等が生じ難い。その結果、放射開口部25の形状の光の輪郭を鮮明に形成することができる。
【0063】
更に、コア層21及びクラッド層23が無色透明に形成されているので、隠蔽層16が放射開口部25から放射される光を透過可能な程度の透光性を有するものであっても、照光シート10が表面被覆部12の表面側から視認され難く、隠蔽層16の背面側を遮蔽するための層などを設ける必要がなくて、より製造が容易である。
【0064】
なお、上記実施の形態1は、この発明の範囲内において適宜変更可能である。例えば、上記実施の形態1では、コア層21の一方の面にクラッド層23が形成された例について説明したが、コア層21の両面にクラッド層23が形成されていてもよい。
【0065】
また、上記実施の形態1では、光源13がコア層21の光源配置孔29内に完全に収容された例について説明したが、例えば、光源13が照光シート10のクラッド層23側まで貫通して配置されるようなものであっても使用可能である。
【0066】
更に、上記では、コア層21に設けられた光放射部26を、クラッド層23の放射開口部25から露出される表面を粗面化して乱反射し易く構成したが、例えば、放射開口部25にクラッド層23より屈折率の大きい材料をコア層21に密着して配置したり、コア層21を放射開口部25内に突出して配置するなどにより形成してもよい。また、遮蔽層16をコア層21の表面に直接密着して積層することで、クラッド層23よりも光が放射され易くなる場合には、放射開口部25から露出するコア層21の表面を粗面化することなく、遮蔽層16を密着させてもよい。
【0067】
また、上記では、表面被覆部12が照光シート10の表面に接合された例について説明したが、表面被覆部12と照光シート10とが離間して配置されていてもよい。
【0068】
更に、上記では、表面被覆部12として、隠蔽層16が表面プレート14に積層された例について説明したが、隠蔽層16からなる表面被覆部12を直接照光シート10の表面に設けたものであってもよい。
[実施の形態2]
【0069】
図4及び図5は、実施の形態2を示している。
【0070】
この実施の形態2では、実施の形態1の照光シート構造体を操作スイッチとしての携帯電話機に使用した例である。
【0071】
この携帯電話機は、図4及び図5に示すように、開口部30aを有する筐体30と、筐体30の開口部30aに配置された操作スイッチ用カバー部材としての操作パネル31と、筐体30の内部に操作パネル31と離間して対向配設された基体部32と、基体部32に固定されて操作パネル31に光を供給するLED等の光源13とを備えている。
【0072】
詳しくは、その基体部32には、基板33が設けられ、この基板33の所定位置には図示しない回路と接続されて互いに離間して配置された接点端子37が設けられており、これら各接点端子37間を離接すると共に押圧操作時の操作感を付与するためのメタルドーム47が配設され、このメタルドーム47と基板33とが弾性変形可能なシート48で覆われることにより、スイッチ操作時に弾性変形される押圧変形部39が形成されている。
【0073】
その基板33は、硬質のプリント基板やフレキシブルプリント基板等からなり、筐体30に固定して装着されている。この基板33には、図示しない多数の回路が設けられており、接点端子37が押圧操作部35に対応する位置に設けられている。
【0074】
また、メタルドーム47は、各スイッチ位置の対応する位置に配置され、弾性変形可能な中空立体形状を有する弾性ドーム形状を呈し、このメタルドーム47は基板33上に操作パネル31側に向けて凸となるように配置されている。
【0075】
このメタルドーム47は、周縁で接点端子37の一方に常時接触し、中央部で他方の接点端子37と離間した状態で配置され、後述するプランジャ部43aで押圧されることにより、メタルドーム47により接点端子37間が接続されるように構成されている。
【0076】
一方、操作パネル31は、押圧操作部35の操作面31aを有するキーシート41と、キーシート41の背面に形成された隠蔽層16と、キーシート41及び隠蔽層16を背面側から照射可能な照光シート10と、押圧操作部35への押圧操作で押圧変形部39を押圧可能なプランジャシート43とが、上方から順に積層されて接合されている。
【0077】
操作パネル31の照光シート10は、光源13からの光を面に沿う方向に供給することで、操作パネル31の各押圧操作部35に対応する複数の位置に設けられた放射面領域15から光を放射させるものであり、実施の形態1と同様に構成されている。各押圧操作部35の位置には、それぞれ文字、線図等の各種の形状(例えば、1,2等の数字形状)に形成された放射開口部25が設けられている。
【0078】
操作パネル31のキーシート41は、ポリカーボネート、PET等の光を透過可能であると共に弾性変形可能な樹脂により平板状に形成された硬質樹脂シートなどからなる。この実施形態では、キーシート41は、操作パネル31の形状を保持できると共に押圧操作が可能な程度の強度を有している。
【0079】
キーシート41には、筐体30の開口部30aから露出される面に押圧操作部35の操作面31aが設けられており、この操作面31aとは反対側の照光シート10側の面に実施の形態1と同様の隠蔽層16が設けられ、携帯電話機の内部側視認性を低下させてキーシート41の表面側から視認されるようになっている。
【0080】
この隠蔽層16は、押圧操作部35の位置に文字、線図等の各種の形状に形成された形状表示部16aと、その他の部位を形状表示部16aとは異なる色に着色するように均一に形成された均一着色部16bとを有している。形状表示部16aは照光シート10の放射開口部25上に形成されており、放射開口部25より大きい相似形を有している。一方、均一表示部16bは、照光シート10のクラッド層23上に形成されている。この均一着色部16bが設けられる部位では、光が透過されないことが好ましいが、クラッド層23から光が放射されないため、均一着色層16bは十分な遮光性を有する必要はない。
【0081】
操作パネル31のプランジャシート43は、キーシート41の複数位置の押圧操作部35を含む大きさの平坦なシート形状部43bと、押圧変形部39と対向する位置にそれぞれ突設された複数のプランジャ部43aとを備えている。
【0082】
このプランジャシート43は、ポリウレタン、ポリエステル、ポリカーボネート、アクリルの単体若しくはそれらの複合物、シリコーンゴム等から成形されている。シート形状部43bは、操作パネル31を薄肉に形成するために、より薄肉に形成されており、又、キーシート41の弾性変形を阻害し難くするために、キーシート41より大幅に軟質に形成されている。このプランジャシート43は、弾性変形を容易にするため、切れ込み(スリット)を設けていてもよい。
【0083】
このような構成を有する携帯電話機では、基板33に固定された図示しない光源13から光が放射されない間は、操作パネル31の全面で表面側から隠蔽層16の形状表示部16a及び均一着色部16bが視認されている。
【0084】
そして、光源13から光が発光すると、照光シート10では、光がクラッド層23により反射されながらシート状のコア層21の内部を通して導かれる。コア層21の放射開口部25内の表面に達した光は乱反射して放射開口部25から放射され、隠蔽層16の形状表示部16aを透過してキーシート41の表面側に放射されて視認される。一方、放射面領域15以外の領域ではクラッド層23から光が放射されないため、キーシート41の表面側からは隠蔽層16の均一着色部16bが視認される。
【0085】
更に、押圧操作を行うには、操作パネル31の複数の押圧操作部35の一部をキーシート41の操作面31a側から押圧する。すると、照光シート10を含む操作パネル31全体が弾性変形し、プランジャシート43のプランジャ部43aが下降し、プランジャ部43aにより押圧変形部39が押圧される。そして、メタルドーム47が弾性変形され、クリック動作感が得られた状態で、メタルドーム47により接点端子37間が導通され、各種の処理が実行される。
【0086】
以上のような携帯電話機によれば、照光シート10により実施の形態1と同様の作用効果が得られ、操作パネル31の表面側からは常に携帯電話機の内部が隠蔽層16により隠蔽され、隠蔽性16の意匠性を付与することができ、優れた外観を得易く、更に、所定の文字等の形状の光も放射させることができる。しかも、光を導光するためのクラッド層23により所定形状の光を放射させることができるため、操作パネル31の製造も容易である。
【0087】
なお、上記実施の形態2では、操作パネル31に押圧操作可能な押圧操作部35を設けた例について説明したが、接触操作を行う接触操作を行うものであってもよい。
【0088】
また、上記では、キーシート41として、硬質樹脂シートからなる例について説明したが、例えば、ステンレス鋼等の金属からなる平板状の薄肉シートに貫通孔を設け、この貫通孔に透光性樹脂を封入して放射開口部25からの光が透過するように構成された複合材料製のシートなど、他の材料からなるものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】この発明の実施の形態1の照光シートの平面図である。
【図2】同実施の形態1の図1のA−A断面図である。
【図3】同実施の形態1の照光シートの図1のB−B断面図である。
【図4】この発明の実施の形態2の携帯電話機の部分平面図である。
【図5】同実施の形態2の図4のC−C断面図である。
【符号の説明】
【0090】
10 照光シート
11 支持基体
12 表面被覆部
13 光源
15 放射面領域
16 隠蔽層
21 コア層
23 クラッド層
25 放射開口部
27 遮光層
30 筐体
31 操作パネル
33 基板
35 押圧操作部
39 押圧変形部
41 キーシート
43 プランジャシート
47 メタルドーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源からの光がシート状の内部を通して導かれて、所定形状の放射面領域から放射される照光シートと、該照光シートを覆う表面被覆部とを備えた照光シート構造体において、
前記照光シートは、シート状のコア層と、該コア層の表面を密着して覆うクラッド層とを備え、前記光源からの光が前記クラッド層により反射されながら前記コア層内で導かれるように構成され、
前記クラッド層は、前記放射面領域と同形状の開口された放射開口部を備え、
前記表面被覆部は、表面側から視認されて前記照光シート側の視認性を低下させる隠蔽層を備え、
前記放射開口部から放射される前記光が、前記隠蔽層を透過して表面側から視認可能に構成されていることを特徴とする照光シート構造体。
【請求項2】
前記隠蔽層は、前記放射開口部を覆った状態で前記クラッド層に密着して積層されていることを特徴とする請求項1に記載の照光シート構造体。
【請求項3】
前記コア層及び前記クラッド層は、無色透明に形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の照光シート構造体。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか一つに記載の照光シート構造体を製造する方法であり、
前記コア層と所定形状の前記放射開口部を有する前記クラッド層とを備えた前記照光シートを形成し、
前記放射開口部及び前記クラッド層を覆う前記隠蔽層を有する前記表面被覆部を前記照光シートに積層一体化することを特徴とする照光シート構造体の製造方法。
【請求項5】
請求項1乃至3の何れか一つに記載の照光シート構造体からなり、前記表面被覆部は、表面側からスイッチ操作可能であって、該表面被覆部と前記照光シートとが一体に形成されていること特徴とする操作スイッチ用カバー部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−251367(P2008−251367A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−91788(P2007−91788)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】