説明

照光装置およびその製造方法

【課題】 薄型で、光を導いて乱反射させて拡散することができ、使用環境の温度変化に強い照光装置およびその製造方法を提供する。
【解決手段】 セラミックの多層基板である絶縁基板2に、透光性セラミックである高純度の透光性アルミナの導光層3が重ねられている。絶縁基板2と導光層3は、ガラス層4を介して接合されている。ガラス層4を焼成する際に、導光層3の透光性アルミナとガラス層4とが相互拡散することで、境界部5に乱反射面が形成され、絶縁基板2とガラス層4が相互拡散して境界部6に乱反射面が形成される。よって、導光層3内を進む光が拡散し、光の利用効率の良い照光が可能になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、小型機器などの操作部や表示部を照光するのに適した薄型化が可能な照光装置およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯用などの各種電子機器には、夜間の使用時などのために、操作部や表示部を照光する照光装置が設けられている。この種の照光装置では、スイッチ操作部の周囲またはスイッチ操作部の裏側などに、光が透過する導光部材が設けられており、LEDやランプなどの光源から発せられた光が、前記導光部材内を通過して前記スイッチ操作部などに導かれる。
【0003】
以下の特許文献1には、照光装置が設けられた薄型の操作装置が開示されている。この操作装置では、FPCに回路を形成した回路体が設けられ、この回路体の表面に、スイッチを構成する接点およびLEDが実装されている。そして、前記接点の上にドーム状の反転ばねが配置されている。前記回路体の表面では、前記接点や前記LEDが実装されていない領域に光透過性の合成樹脂シートのスペーサが積層されている。さらに、前記スペーサの表面と前記反転ばねおよびLEDの表面に、光透過性の合成樹脂シートで形成された表面シートが重ねられている。
【0004】
また、光透過性の合成樹脂シートで形成された前記スペーサの表面と裏面に、光を乱反射させるための光反射・拡散層が、印刷や塗布などの手段で形成されている。
【特許文献1】特開2004−22374号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記特許文献1に記載されているような、従来の薄型の操作装置に設けられた照光装置は、FPCに、PETなどの光透過性の合成樹脂シートが積層されて構成されている。しかし、FPCやPETは耐熱性に限界があるため、高い耐熱性能が要求される機器には使用できない。また、FPCとPETは熱膨張係数が相違するため、使用環境温度の変化に応じて操作装置に反りが発生しやすい。
【0006】
さらに、PETなどは内部で光を乱反射できないために、光透過性の合成樹脂シートの表面に、印刷や塗布により前記光反射・拡散層を形成することが必要になるが、印刷や塗布による前記光反射・拡散層では、合成樹脂シート内の光を効果的に乱反射させて拡散することが困難であり、光の利用効率が悪い。
【0007】
本発明は上記従来の課題を解決するものであり、熱の変化により形状が変わることがなく、また常に効果的に光の拡散などができる薄型の照光装置を提供することを目的としている。
【0008】
また本発明は、薄型で光の拡散効率の良好な照光装置を簡単に製造できる製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、絶縁基板と、前記絶縁基板の表面に積層された導光層と、前記導光層の内部に光を与える光源とを有する照光装置において、
前記導光層が透光性セラミックで形成されて、前記導光層がガラス層を介して前記絶縁基板に接合されており、
前記導光層と前記ガラス層との境界部と、前記ガラス層と前記絶縁基板との境界部との、少なくとも一方が、光の乱反射面とされていることを特徴とするものである。
【0010】
本発明の照光装置は、絶縁基板と透光性セラミックがガラス層を介して接合されているため、全体の剛性が高く、使用環境温度の変化によって形状の変化が少なく、また使用環境温度が変化しても光透過性能などの劣化が生じにくい。また、導光層とガラス層との境界部や、ガラス層と絶縁基板との境界部で相互拡散が生じやすいために、この境界部が乱反射面となり、光源からの光が前記境界部で散乱されて、透光性セラミックが光を発するようになる。
【0011】
本発明では、前記導光層を形成する透光性セラミックが、多結晶であり、内部を通過する光の少なくとも一部が乱反射可能であることが好ましい。さらには、透光性アルミナが、彩色されていることが好ましい。
【0012】
透光性セラミックが内部で光を乱反射できると、導光層内に与えられた光を効率よく照光に使用することができる。また、透光性アルミナが彩色されていると、光源から与えられる光が自然光に近い光成分を有するものであっても、導光層で色付きの光を発生させることができる。
【0013】
例えば、本発明は、前記絶縁基板上にスイッチおよび前記光源が実装されており、前記スイッチおよび前記光源が実装されていない領域で、前記導光層が前記ガラス層を介して前記絶縁基板に接合されているものである。
上記構成では、照光装置と操作部とを薄型で一体化できる。
【0014】
本発明では、前記絶縁基板は、セラミック基板であることが好ましい。
さらに本発明の照光装置の製造方法は、絶縁基板と透光性セラミック板とをガラス層を介して積層し、
加熱処理で前記ガラス層を軟化させて、前記絶縁基板と前記透光性セラミック板とを接合し、
このときに、前記透光性セラミック板と前記ガラス層との境界部と、前記ガラス層と前記絶縁基板との境界部との、少なくとも一方で相互拡散させ、
前記透光性セラミック板で導光層を形成し、相互拡散された前記境界部で光の乱反射面を形成することを特徴とするものである。
【0015】
また本発明の照光装置の製造方法では、前記セラミック基板を、前記絶縁基板とすることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明の照光装置は、薄型で形状が変化しにくく、温度変化によって照光特性が変化しずらい。また光の利用効率もよい。本発明の製造方法では、内部で光が乱反射しやすい照光装置を簡単に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
図1は本発明の第1の実施の形態の照光装置1を示す断面図、図2は図1の部分拡大図である。
【0018】
図1に示すように、照光装置1は、絶縁基板2と導光層3とが積層されて構成されている。絶縁基板2は、複数のセラミック基板が積層された積層基板であり、その厚みの中間に、導電パターンが形成されている。例えば、絶縁基板2は、高温焼成セラミック(HTCC)や、低温焼成セラミック(LTCC)で形成されている。
【0019】
導光層3は、透光性セラミック材料で形成されている。透光性セラミック材料は、透光性アルミナまたは透光性YAG(イットリウム・アルミニウム・ガーネット)などであるが、この実施の形態では、導光層3が透光性アルミナで形成されている。透光性アルミナは、アルミナの純度が98%以上で、好ましくは99.9%以上の高純度アルミナである。透光性アルミナは多結晶で、その結晶構造はα−Alであり、目視での外観は、光透過性のある乳白色である。よって、この導光層3内に光が与えられると、光の少なくとも一部が透光性アルミナの内部で乱反射し、透光性アルミナが乳白色に光る。
【0020】
また、前記透光性アルミナに彩色を施すことができる。彩色された透光性アルミナは、原料の高純度アルミナに微小量の酸化マグネシウムを添加し、さらに、クロム、コバルト、マンガンのいずれかを微小量添加することにより、赤色、または青色あるいはピンク色などに着色することができる。このように、白と黒以外の色彩に着色され彩色された透光性アルミナは、内部に自然光に近い光や白色の光を与えることにより、それぞれの色を発することができる。
【0021】
前記絶縁基板2と透光性セラミックで形成された導光層3はガラス層4を介して接合される。ガラス層4は、絶縁基板2と導光層3とを接合する接着ガラスであり、例えばBiO−BO−BaO−CuO系、BiO−ZnO−BO−AlO−SiO系、BiO−ZnO−BO系などのガラス材料である。
【0022】
絶縁基板2と導光層3との間に、前記ガラス材料を挟んで焼成することで、絶縁基板2と導光層3とが接合固定される。その際、導光層3とガラス層4との境界部5では、両層の材料が相互拡散して境界部5が粗面となり、乱反射面として機能できるようになる。同様に、ガラス層4と絶縁基板2との境界部6も材料が相互拡散し、乱反射面として機能できる。
【0023】
図1に示すように、導光層3には、大径の穴である欠損部3aと、小径の穴である欠損部3bが設けられている。小径の穴である前記欠損部3a内には、光源8が設けられている。この光源8はLEDである。LEDはチップ化されたものが、絶縁基板2の表面に形成された導電層のランド部に半田付けされたものであってもよいし、あるいは、絶縁基板2の表面で薄膜プロセスで積層されてLEDが構成されたものであってもよい。
【0024】
大径の穴である前記欠損部3aには操作部10が設けられている。この実施の形態では、操作部10にスイッチ機構が設けられている。スイッチ機構では、前記欠損部3a内に、薄い導電性金属板でドーム上に形成された反転ばね11が収納されている。絶縁基板2の表面には、反転ばね11の外周縁が導通する外周電極12と、前記外周電極12と絶縁されて、反転ばね11の中央部に対向する中央電極13とが設けられている。反転ばね11が押されて反転し、中央電極13に接触すると、反転ばね11を介して、外周電極12と中央電極13とが導通する。反転ばね11に対する押圧力が除去されると、反転ばね11がドーム形状に復帰して中央電極13から離れる。
【0025】
照光装置1の表面の全域にはカバーシート15が積層されて、導光層3の表面および反転ばね11の表面に接着剤を介して接着固定されている。カバーシート15は、軟質で可撓性の透明な合成ゴムシートなどであり、操作部10が設けられている領域では、カバーシート15の表面を押圧することで、反転ばね11を変形させることができる。
【0026】
カバーシート15は光透過性であるが、少なくともLED8を覆う部分では、表面に黒色などの塗装または印刷が施されている。光源8から発せられる光は、導光層3の内部において、境界部5や境界部6で乱反射され、さらに導光層3の内部でも乱反射されるため、導光層3が乳白色に光り、あるいは着色された透光性セラミックを使用しているときには、着色された色を発して光るようになる。
【0027】
例えば、カバーシート15の表面の、操作部10以外が黒色などに塗装または印刷されていると、操作部10のみが照らされる。また操作部10を覆う部分で、カバーシート15の表面に、黒色などに塗装または印刷され、この塗装や印刷部分の一部が、数字や記号の表示となるよう除去されていると、操作部10の表面に、数字や記号を照らすことができる。
【0028】
この照光装置1は、絶縁基板2と導光層3の双方がセラミックで形成されているため、剛性が高く、電子機器に実装されているときに反りなどが生じ難い。また使用環境の温度変化があっても変形したり、透光機能が低下することが生じにくい。
【0029】
図6は、前記照光装置1の製造方法を示す工程図である。
図6では、一連の工程(A)が、導光層3を構成する板状の透光性アルミナの製造工程を示し、一連の工程(B)が、絶縁基板2を構成する高温焼成セラミックの製造工程を示し、一連の工程(C)が、導光層3と絶縁基板2との接合工程を示している。
【0030】
工程(A)では、純度が99.9%の高純度アルミナで粒径が40μm以下の粒子を蒸留水に分散させ、加熱攪拌して蒸発乾燥固化する。さらにこれを粉砕して、粉砕したアルミナを板状に成形し、このときに欠損部3a,3bを同時に形成する。その後に、1000℃で2時間程度で仮焼成し、1700℃で2時間程度で、真空中で本焼成する。
【0031】
工程(B)では、グリーンシートを印刷し、ビアホールを形成し、ビアホール内に導電性材料を充填し、それぞれのシートの表面に導電体のパターンを印刷する。そして積層して焼成することで、アルミナなどの多層の焼成セラミック基板が製造される。
【0032】
そして、工程(C)では、絶縁基板2の表面において、欠損部3a,3bを除く領域にガラスペーストを印刷し、その上に透光性セラミックを積層して焼成する。この焼成工程で、ガラス材料が軟化するが、このとき、透光性セラミックとガラス材料が相互に拡散し、さらにガラス材料と、絶縁基板2を構成するセラミック材料とが相互拡散する。その結果、冷却されてガラス層4が形成されると、図2に示すように、導光層3とガラス層4との境界部5と、ガラス層4と絶縁基板2との境界部6が粗面となり、光を乱反射し拡散する機能を発揮できるようになる。
【0033】
その後、図1に示すように、LED8を実装し、操作部10のスイッチ機構を構成した後に、カバーシート15を接着する。
【0034】
図3は本発明の第2の実施の形態の照光装置101を示す平面図であり、図4は図3をIV−IV線で切断した拡大断面図である。
【0035】
図3は、図1に示す照光装置1を図示上方から見たときの平面図に相当している。よって、図1および図2に示す照光装置1と同じ構成部分には、同じ符号を付して詳しい説明を省略する。
【0036】
図3に示す照光装置101では、図1に示すのと同じスイッチ機構を有する12箇所の操作部10が縦横に間隔を開けて配列されている。カバーシート15の表面は黒色などに塗装されまたは印刷されており、それぞれの操作部10の上に記載された数字と記号の部分でのみ前記塗装または印刷が除去されている。
【0037】
LED8は、複数の操作部の中間に位置している。図4に示すように、導光層3の絶縁基板2に向く裏面には、導光溝3iが形成されている。図3に示すように、この導光溝3iは、主にLED8が実装された欠損部3bから放射状に直線的に延びている。図4に示すように、導光溝3iに対向する部分では、絶縁基板2の表面にも溝2iが形成されている。したがって、図6に示す工程(C)では、絶縁基板2と導光層3との間に介在するガラス層4が、前記溝2i,3iの内部に充填される。さらに、導光溝3iとガラス層4との境界部5aでは、透光性アルミナとガラスが相互拡散し、光を乱反射して拡散する機能を発揮できる。これは、絶縁基板2の溝2iとガラス層4との境界部においても同じである。
【0038】
図3と図4に示す照光装置101では、それぞれのLED8から発せられた光りが、導光層3に入り、導光層3の内部の乱反射や境界部5,6の乱反射により、導光層3の内部に拡散される。さらに、光は、導光溝3iとガラス層4との境界部5aに導かれ且つ乱反射されて、さらには、絶縁基板2の溝2iとガラス層4との境界部6aに導かれ且つ乱反射されて、LED8の周囲に拡散される。その結果、操作部10に記された数字や記号の部分を、十分な輝度によって光らせることができる。
【0039】
図5は本発明の第3の実施の形態の照光装置201を示す断面図である。
この照光装置201は、絶縁基板2の上面が湾曲しており、絶縁基板2と導光層3の厚みが部分的に相違しているが、全体の厚み寸法は均一である。LED8が実装されている欠損部3bから左右方向に向けて、絶縁基板2の上面の高さが徐々に高くなっている。この実施の形態では、LED8から発せられて、導光層3内を左右に進行する光が、境界部5や境界部6で反射して上に向けられるため、LED8から発せられる光を効果的に利用して照光することができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の第1の実施の形態の照光装置を示す断面図、
【図2】図1の部分拡大図、
【図3】本発明の第2の実施の形態の照光装置を示す平面図、
【図4】図3のIV−IV線での拡大断面図、
【図5】本発明の第3の実施の形態の照光装置の断面図、
【図6】照光装置の製造工程図、
【符号の説明】
【0041】
1,101,201 照光装置
2 絶縁基板
3 導光層
3i 導光溝
3a,3b 欠損部
4 ガラス層
5,5a,6,6a 溶解部
8 LED
10 操作部
11 反転ばね
12 周囲電極
13 中央電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁基板と、前記絶縁基板の表面に積層された導光層と、前記導光層の内部に光を与える光源とを有する照光装置において、
前記導光層が透光性セラミックで形成されて、前記導光層がガラス層を介して前記絶縁基板に接合されており、
前記導光層と前記ガラス層との境界部と、前記ガラス層と前記絶縁基板との境界部との、少なくとも一方が、光の乱反射面とされていることを特徴とする照光装置。
【請求項2】
前記導光層を形成する透光性セラミックは、多結晶であり、内部を通過する光の少なくとも一部が乱反射可能である請求項1記載の照光装置。
【請求項3】
透光性アルミナが、彩色されている請求項2記載の照光装置。
【請求項4】
前記絶縁基板上にスイッチおよび前記光源が実装されており、前記スイッチおよび前記光源が実装されていない領域で、前記導光層が前記ガラス層を介して前記絶縁基板に接合されている請求項1ないし3のいずれかに記載の照光装置。
【請求項5】
前記絶縁基板が、セラミック基板である請求項1ないし4のいずれかに記載の照光装置。
【請求項6】
絶縁基板と透光性セラミック板とをガラス層を介して積層し、
加熱処理で前記ガラス層を軟化させて、前記絶縁基板と前記透光性セラミック板とを接合し、
このときに、前記透光性セラミック板と前記ガラス層との境界部と、前記ガラス層と前記絶縁基板との境界部との、少なくとも一方で相互拡散させ、
前記透光性セラミック板で導光層を形成し、相互拡散された前記境界部で光の乱反射面を形成することを特徴とする照光装置の製造方法。
【請求項7】
前記セラミック基板を、前記絶縁基板とする請求項6記載の照光装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−27786(P2008−27786A)
【公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−200302(P2006−200302)
【出願日】平成18年7月24日(2006.7.24)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】