説明

照明装置、画像表示装置及びプロジェクタ

【課題】容易に照射領域の整形及び光量分布の均一化を可能とする照明装置、その照明装置を用いる画像表示装置、及びプロジェクタを提供すること。
【解決手段】コヒーレント光を射出する光源部であるレーザ光源12Rと、光源部から射出したコヒーレント光を回折させ、被照射面S2へ回折光である一次回折光L1を進行させる回折光学素子13Rと、を有し、回折光学素子13Rは、回折光学素子13Rを配置する基準面である入射面S1の垂線Nに対してコヒーレント光が斜めに入射するように配置され、回折光学素子13Rから射出した光のうち、回折光以外の光であるゼロ次光L0を、被照射面S2以外の位置へ進行させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、照明装置、画像表示装置及びプロジェクタ、特に、レーザ光源を用いる照明装置の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、プロジェクタの照明装置にレーザ光源を用いる技術が提案されている。被照射面においてレーザ光を重畳させる重畳手段には、例えば、回折光学素子を用いることができる。回折光学素子は、コヒーレント光であるレーザ光を回折させることにより、照射領域の整形及び拡大、照射領域における光量分布の均一化を行う。回折光学素子により複数の機能を果たすことで、照明装置は、少ない部品点数にでき、小型化、省スペース化が容易となる。回折光学素子からのゼロ次光と回折光とが被照射面に入射する場合、ゼロ次光と回折光とが重なることで、照射領域の一部のみが明るくなることがある。照射領域の一部のみが明るくなることで、良好な光量分布を得ることが困難になる。これに対しては、被照射面以外の位置へゼロ次光を進行させることで、照射領域における光量分布の均一化が容易となる。例えば、特許文献1には、光源部から射出したレーザ光の光線の延長線上の位置以外の位置に被照射面を設ける技術が提案されている。回折光学素子から射出したゼロ次光は、光源部から射出したレーザ光の光線の延長線上を進行し、被照射面以外の位置へ進行する。
【0003】
【特許文献1】特開2007−58148号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に提案される技術では、回折光学素子から射出する回折光の主光線は、回折光学素子を配置する基準面の垂線に対して大きく傾けられることになる。回折光学素子は、基準面の垂線に対して主光線が大きく傾けられた回折光について照射領域の整形や光量分布の均一化を実現するためには、高度な設計技術を要する。このため、従来の技術によると、照射領域の整形や、光量分布の均一化が困難となる場合があるという問題を生じる。本発明は、上述の問題に鑑みてなされたものであり、容易に照射領域の整形及び光量分布の均一化を可能とする照明装置、その照明装置を用いる画像表示装置、及びプロジェクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る照明装置は、コヒーレント光を射出する光源部と、光源部から射出したコヒーレント光を回折させ、被照射面へ回折光を進行させる回折光学素子と、を有し、回折光学素子は、回折光学素子を配置する基準面の垂線に対してコヒーレント光が斜めに入射するように配置され、回折光学素子から射出した光のうち、回折光以外の光であるゼロ次光を、被照射面以外の位置へ進行させることを特徴とする。
【0006】
回折光学素子から射出したゼロ次光は、基準面の垂線に対して斜め方向へ進行する。基準面の垂線に対して斜め方向へゼロ次光を進行させることで、基準面の垂線と回折光の主光線とがなす角度を小さくすることが可能となる。基準面の垂線に対する回折光の主光線の傾きを小さくできるほど、容易に照射領域の整形、及び光量分布の均一化を可能とする回折光学素子を設計できる。これにより、容易に照射領域の整形及び光量分布の均一化を可能とする照明装置を得られる。
【0007】
また、本発明の好ましい態様としては、照明装置を構成する照明光学系の光軸に平行な方向へ被照射面を移動させたとした場合に、被照射面の軌跡によって形成される空間領域を所定領域とすると、少なくとも回折光学素子の一部が、所定領域に含まれることが望ましい。回折光学素子の一部が所定領域に含まれる場合、所定領域から離れた位置に回折光学素子が配置される場合に比較して、照明装置を用いる機器をコンパクトにできる。また、回折光学素子から射出する回折光の主光線を、被照射面に対してできるだけ垂直に近づけることができる。
【0008】
また、本発明の好ましい態様としては、基準面は、光軸に略直交することが望ましい。これにより、基準面の垂線と回折光の主光線とがなす角度を最も小さくでき、照射領域の整形及び光量分布の均一化を最も容易にできる。また、回折光の主光線を、被照射面に対して最も垂直に近づけることができる。
【0009】
また、本発明の好ましい態様としては、回折光学素子からの回折光の光束を平行化して被照射面へ進行させる平行化レンズを有することが望ましい。基準面の垂線に対する回折光の主光線の傾きを小さくできるほど、球面の一部と略同一の形状を備える球面レンズの中央部分を使用することが可能となる。球面レンズの中央部分を使用可能であることで、球面レンズの外縁部近傍の部分を使用する場合に比較して、球面レンズの収差の影響を低減できる。収差の影響を低減可能とすることで、照射領域の輝度ムラや、照射領域の歪曲(ディストーション)による光利用効率の低下を軽減できる。これにより、非球面レンズに対して容易に製造可能な球面レンズを用いて、輝度ムラ及び光利用効率低下を軽減できる。
【0010】
また、本発明の好ましい態様としては、被照射面に沿う特定の方向を第1方向とし、被照射面に沿い、かつ第1方向に略直交する方向を第2方向とすると、被照射面のうち回折光が入射する領域である照射領域は、第1方向に対して第2方向へ長い形状をなし、回折光学素子へ入射するコヒーレント光の主光線は、垂線に対して第1方向へ傾けられることが望ましい。これにより、ゼロ次光の光線と、回折光の主光線とがなす角度をできるだけ小さくすることができる。ゼロ次光の光線と、回折光の主光線とがなす角度を小さくできるほど、回折光学素子における回折効率を高くでき、高い光利用効率を実現できる。
【0011】
また、本発明の好ましい態様としては、複数の光源部を有することが望ましい。複数の光源部を用いることで、明るい光を供給することができる。
【0012】
また、本発明の好ましい態様としては、複数の光源部は、照明装置を構成する照明光学系の光軸、或いは光軸を含む面に関して略対称に、コヒーレント光を進行させることが望ましい。これにより、被照射面以外の位置へ各ゼロ次光を進行させ、かつ、ゼロ次光の光線と、回折光の主光線とがなす角度を小さくできる。
【0013】
また、本発明の好ましい態様としては、光源部から射出したコヒーレント光の主光線同士が、光源部及び回折光学素子の間の光路で最も接近することが望ましい。光源部及び回折光学素子の間で収束させた各コヒーレント光を回折光学素子へ入射させることで、各光源部から発散させたコヒーレント光を回折光学素子へ入射させる場合に比較して、小さい入射面の回折光学素子を用いることが可能となる。これにより、回折光学素子を小型にでき、回折光学素子の製造時間、及びコストを低減できる。
【0014】
また、本発明の好ましい態様としては、回折光学素子から射出したゼロ次光の主光線同士が、回折光学素子及び被照射面の間の光路で最も接近することが望ましい。この場合も、回折光学素子を小型にできることで、回折光学素子の製造時間、及びコストを低減できる。さらに、光源部及び回折光学素子の間隔を短くできるため、照明装置の小型化も可能となる。
【0015】
また、本発明の好ましい態様としては、光源部から射出したコヒーレント光を偏向させ、回折光学素子へ入射させる偏向素子を有することが望ましい。これにより、基準面の垂線に対して斜めに進行するコヒーレント光を回折光学素子へ入射させることができる。偏向素子を用いてレーザ光を適宜偏向させることで、光源部を高い自由度で配置することが可能となる。
【0016】
また、本発明の好ましい態様としては、偏向素子は、コヒーレント光を屈折させることが望ましい。これにより、コヒーレント光を偏向させることができる。
【0017】
また、本発明の好ましい態様としては、偏向素子は、コヒーレント光を回折させることが望ましい。これにより、コヒーレント光を偏向させることができる。
【0018】
また、本発明の好ましい態様としては、偏向素子と回折光学素子とが一体に構成されることが望ましい。これにより、照明装置の部品点数を低減させ、照明装置を簡易かつコンパクトにできる。
【0019】
さらに、本発明に係る画像表示装置は、上記の照明装置により供給された光を用いて画像を表示することを特徴とする。上記の照明装置を用いることにより、コンパクトな構成により、良好な光量分布及び高い光利用効率を得ることができる。これにより、コンパクトな構成により、良好な光量分布で明るい画像を表示することが可能な画像表示装置を得られる。
【0020】
さらに、本発明に係るプロジェクタは、上記の照明装置と、照明装置により供給された光を画像信号に応じて変調する空間光変調装置と、空間光変調装置から射出した光を投写する投写光学系と、を有することを特徴とする。上記の照明装置を用いることにより、コンパクトな構成により、良好な光量分布及び高い光利用効率を得ることができる。これにより、コンパクトな構成により、良好な光量分布で明るい画像を表示することが可能なプロジェクタを得られる。空間光変調装置へ入射する光線がなす角度を抑制することができるため、高いコントラストの画像を表示することも可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下に図面を参照して、本発明の実施例を詳細に説明する。
【実施例1】
【0022】
図1は、本発明の実施例1に係るプロジェクタ10の上面概略構成を示す。プロジェクタ10は、スクリーン(不図示)に光を投写させ、スクリーンで反射する光を観察することで画像を鑑賞するフロント投写型のプロジェクタである。プロジェクタ10は、第1照明装置11R、第2照明装置11G、第3照明装置11Bを有する。第1照明装置11Rは、第1色光である赤色(R)光を供給する照明装置である。第2照明装置11Gは、第2色光である緑色(G)光を供給する照明装置である。第3照明装置11Bは、第3色光である青色(B)光を供給する照明装置である。プロジェクタ10は、第1照明装置11Rにより供給されたR光、第2照明装置11Gにより供給されたG光、第3照明装置11Bにより供給されたB光を用いて画像を表示する画像表示装置である。
【0023】
第1照明装置11Rは、R光を射出するレーザ光源12Rを有する。レーザ光源12Rは、コヒーレント光であるレーザ光を射出する光源部であって、例えば、半導体レーザを備える。回折光学素子13Rは、レーザ光源12RからのR光を回折させ、第1空間光変調装置15Rの被照射面へ回折光を進行させる。回折光学素子13Rは、第1空間光変調装置15Rの被照射面上に、矩形形状、かつ均一化された光量分布の照射領域を形成する。回折光学素子13Rは、照射領域の整形及び拡大、照射領域における光量分布の均一化を行う。平行化レンズ14は、回折光学素子13Rからの回折光の光束を平行化して被照射面へ進行させる。第1空間光変調装置15Rは、第1照明装置11Rにより供給されたR光を画像信号に応じて変調する空間光変調装置であって、透過型液晶表示装置である。第1空間光変調装置15RからのR光は、クロスダイクロイックプリズム16へ入射する。
【0024】
第2照明装置11Gは、G光を射出するレーザ光源12Gを有する。レーザ光源12Gは、コヒーレント光であるレーザ光を射出する光源部であって、例えば、半導体レーザを備える。回折光学素子13Gは、レーザ光源12GからのG光を回折させ、第2空間光変調装置15Gの被照射面へ回折光を進行させる。回折光学素子13Gは、第2空間光変調装置15G上の被照射面上に、矩形形状、かつ均一化された光量分布の照射領域を形成する。回折光学素子13Gは、照射領域の整形及び拡大、照射領域における光量分布の均一化を行う。平行化レンズ14は、回折光学素子13Gからの回折光の光束を平行化して被照射面へ進行させる。第2空間光変調装置15Gは、第2照明装置11Gにより供給されたG光を画像信号に応じて変調する空間光変調装置であって、透過型液晶表示装置である。第2空間光変調装置15GからのG光は、クロスダイクロイックプリズム16のうちR光が入射する面とは異なる面へ入射する。
【0025】
第3照明装置11Bは、B光を射出するレーザ光源12Bを有する。レーザ光源12Bは、コヒーレント光であるレーザ光を射出する光源部であって、例えば、半導体レーザを備える。回折光学素子13Bは、レーザ光源12BからのB光を回折させ、第3空間光変調装置15Bの被照射面へ回折光を進行させる。回折光学素子13Bは、第3空間光変調装置15Bの被照射面上に、矩形形状、かつ均一化された光量分布の照射領域を形成する。回折光学素子13Bは、照射領域の整形及び拡大、照射領域における光量分布の均一化を行う。平行化レンズ14は、回折光学素子13Bからの回折光の光束を平行化して被照射面へ進行させる。第3空間光変調装置15Bは、第3照明装置11Bにより供給されたB光を画像信号に応じて変調する空間光変調装置であって、透過型液晶表示装置である。第3空間光変調装置15BからのB光は、クロスダイクロイックプリズム16のうちR光が入射する面、及びG光が入射する面とは異なる面へ入射する。
【0026】
回折光学素子13R、13G、13Bとしては、例えば、計算機合成ホログラム(Computer Generated Hologram;CGH)を用いることができる。透過型液晶表示装置としては、例えば、高温ポリシリコンTFT液晶パネル(High Temperature Poly-Silicon;HTPS)を用いることができる。
【0027】
クロスダイクロイックプリズム16は、互いに略直交させて配置された2つのダイクロイック膜17、18を有する。第1ダイクロイック膜17は、R光を反射し、G光及びB光を透過させる。第2ダイクロイック膜18は、B光を反射し、R光及びG光を透過させる。クロスダイクロイックプリズム16は、それぞれ異なる方向から入射したR光、G光及びB光を合成し、投写レンズ19の方向へ射出する。投写レンズ19は、各空間光変調装置15R、15G、15Bから射出した光を投写する投写光学系として機能する。
【0028】
図2は、回折光学素子13R、13G、13Bに形成された回折格子20を模式的に表したものである。図3は、図2のAA断面構成を示す。回折格子20は、回折光学素子13R、13G、13Bのうちレーザ光が入射する位置に形成されている。回折格子20は、回折光学素子13R、13G、13Bの表面、例えば、光を射出する射出面に形成されている。回折格子20は、矩形領域22を単位として形成された複数の凹凸を備える。かかる凹凸は、図3に示す断面において矩形形状をなしている。図2において、各矩形領域22に塗潰しやハッチング等を付すことで、紙面に垂直な方向への高低差が設けられていることを表している。
【0029】
回折格子20は、矩形領域22ごとにレーザ光の位相を変化させる。回折光学素子13R、13G、13Bは、回折格子20においてレーザ光の位相を空間的に変化させることにより、回折光を生じさせる。矩形領域22のピッチ及び凹凸の高さを含む表面条件を最適化することにより、回折光学素子13R、13G、13Bに所定の機能を持たせることができる。回折格子20の表面条件を最適化する設計手法としては、例えば反復フーリエ変換等、所定の演算手法(シミュレーション手法)を用いることができる。回折光学素子13R、13G、13Bは、断面において矩形形状をなす凹凸を備える回折格子20を設ける他、断面において三角形状をなす凹凸を備える回折格子を設けることとしても良い。
【0030】
例えば、回折光学素子13R、13G、13Bは、所望の形状を備えるモールド(型)を形成した後、モールドの形状を基板に熱転写する、いわゆるナノインプリントの手法を用いて製造することができる。この他、回折光学素子13R、13G、13Bは、所望の形状を形成可能であれば、従来用いられる他の手法により製造することとしても良い。
【0031】
図4は、第1照明装置11Rの側面概略構成を示す。第1照明装置11R、第2照明装置11G、第3照明装置11Bは、供給する光の波長、及び配置する向きが異なる以外は同様の構成を有する。以下、第1照明装置11Rの構成を代表例として説明する。回折光学素子13R、平行化レンズ14、第1空間光変調装置15Rは、第1照明装置11Rを構成する照明光学系の光軸AX上に設けられている。光軸AXは、第1空間光変調装置11Rの照射領域の中心を通る、被照射面に垂直な線であるとする。平行化レンズ14の主軸は、光軸AXと一致している。光軸AXに平行な軸を、Z軸とする。X軸は、Z軸に直交する軸である。Y軸は、Z軸及びX軸に直交する軸である。
【0032】
回折光学素子13Rの入射面S1、第1空間光変調装置15Rの被照射面S2は、いずれも光軸AXに略直交している。入射面S1及び被照射面S2は、いずれも、X軸及びY軸に略平行である。回折光学素子13Rの入射面S1は、回折光学素子13Rを配置する基準面であるとする。回折光学素子13Rの基準面である入射面S1の垂線Nは、光軸AXに略平行である。レーザ光源12Rは、垂線Nに対してレーザ光の主光線がY軸方向へ傾くように、垂線Nに対してレーザ光を斜めに進行させる。回折光学素子13Rは、垂線Nに対してレーザ光が斜めに入射するように配置されている。
【0033】
回折光学素子13Rは、レーザ光源12Rから射出したレーザ光を回折させ、被照射面S2へ一次回折光L1を進行させる。回折光学素子13Rは、一次回折光L1を用いて、矩形形状、かつ均一化された光量分布の照射領域を形成する。照射領域は、被照射面S2のうち一次回折光L1が入射する領域である。回折光学素子13Rは、一次回折光L1以外の光であるゼロ次光L0を射出する。ゼロ次光L0は、回折光学素子13Rで回折せず、回折光学素子13Rをそのまま透過した光である。
【0034】
回折光学素子13Rから射出した一次回折光L1は、光軸AXを中心として拡張する。回折光学素子13Rから射出した一次回折光L1の主光線は、光軸AXと略一致する。回折光学素子13Rから射出したゼロ次光L0は、レーザ光源12Rから射出したレーザ光の光線の延長線上を進行し、被照射面S2以外の位置へ進行する。被照射面S2以外の位置へゼロ次光L0を進行させることで、照射領域の一部が明るくなるようなムラの発生を低減させ、照射領域における光量分布の均一化が容易となる。
【0035】
回折光学素子13Rから射出したゼロ次光L0が入射する位置には、光吸収部21が設けられている。回折光学素子13Rから射出したゼロ次光L0は、光吸収部21へ吸収される。光吸収部21は、例えば、光吸収性樹脂部材を用いて構成されている。光吸収部21を用いることにより、迷光の発生を低減させることができる。
【0036】
図5は、本実施例の比較例に係る従来の照明装置23、及び照明装置23から投写レンズ19までの各部の側面概略構成を示す。照明装置23は、同一の光軸AX上に設けられたレーザ光源12R、回折光学素子24、及び平行化レンズ25を有する。第1空間光変調装置15R、クロスダイクロイックプリズム16、及び投写レンズ19は、光軸AXから特定方向、例えばY軸方向へ移動させた位置に設けられている。レーザ光源12Rは、垂線Nに略平行にレーザ光を進行させる。回折光学素子24は、垂線Nに対してレーザ光が略平行に入射するように配置されている。
【0037】
回折光学素子24から射出したゼロ次光L0は、光軸AXに略平行に進行し、被照射面S2以外の位置へ進行する。回折光学素子24から射出した一次回折光L1は、被照射面S2へ進行する。回折光学素子24から射出した一次回折光L1の主光線は、光軸AXに対して傾いている。回折光学素子24は、垂線Nに対して主光線が大きく傾けられた回折光について照射領域の整形や光量分布の均一化を実現するためには、高度な設計技術を要する。このため、本比較例に係る照明装置23は、照射領域の整形や、光量分布の均一化が困難となる場合がある。
【0038】
また、光軸AXに対して主光線が傾けられた一次回折光L1を第1空間光変調装置15Rへ入射させる構成とすることで、光軸AX上に第1空間光変調装置15Rが配置される場合と比較して、プロジェクタ10が大型化することにもなる。平行化レンズ25は、外縁部近傍の部分を用いて、一次回折光L1の光束を平行化させる。
【0039】
図6は、従来の照明装置23を使用する場合における照射領域LAについて説明するものである。例えば、平行化レンズ25は、球面形状を備える球面レンズであるとする。球面レンズは、外縁部に近い部分を使用するほど、球面レンズの収差の影響が顕著となる。例えば、球面レンズの外縁部に近い部分を使用するほど像が縮むディストーションの影響が顕著であると、図示するように、矩形形状の画素領域PAに対して照射領域LAが歪曲することになる。照射領域LAが矩形形状から大きく変形するほど、画素領域PA以外の位置へ入射することにより損失する光が増加し、光利用効率が低下することとなる。また、収差の影響により、照射領域LAの輝度ムラが生じる場合がある。被照射面S2において、光軸AXから離れるほど明るくなるような輝度ムラが生じると、画素領域PA以外の位置へ入射することにより損失する光がさらに増加することになる。このような収差の影響を低減させるために、平行化レンズ25として非球面レンズを用いる場合、非球面レンズについて高い難易度の設計が必要となる。
【0040】
図4に戻って、垂線Nに対して斜め方向へゼロ次光L0を進行させることで、垂線Nと一次回折光L1の主光線とがなす角度を小さくすることが可能となる。垂線Nに対する一次回折光L1の主光線の傾きを小さくできるほど、容易に照射領域の整形、及び光量分布の均一化を可能とする回折光学素子13Rを設計できる。本実施例の第1照明装置11Rは、回折光学素子13Rの垂線Nと、一次回折光L1の主光線とを略一致させることで、照射領域の整形、及び光量分布の均一化が最も容易となる。以上により、各照明装置11R、11G、11Bは、容易に照射領域の整形及び光量分布の均一化を可能にできるという効果を奏する。
【0041】
光軸AX上に第1空間光変調装置15Rを配置可能とすることで、プロジェクタ10は、コンパクトな構成にできる。プロジェクタ10は、コンパクトな構成により、良好な光量分布で明るい画像を表示することができる。また、被照射面S2に対してできるだけ垂直になるように一次回折光L1を進行させることもできる。第1空間光変調装置15Rへ入射する一次回折光L1の光線がなす角度を抑制することができるため、高いコントラストの画像を表示することも可能となる。垂線Nと一次回折光L1の主光線とを略一致させることで、平行化レンズ14は、光軸AXを中心とする中央部分を使用して、一次回折光L1の光束を平行化させる。
【0042】
図7は、本実施例に係る第1照明装置11Rを使用する場合における照射領域LAについて説明するものである。例えば、平行化レンズ14は、球面形状を備える球面レンズであるとする。球面レンズの中央部分を使用可能であることで、球面レンズの外縁部近傍の部分を使用する場合に比較して、球面レンズの収差の影響を低減できる。収差の影響を低減可能とすることで、照射領域LAの輝度ムラや、ディストーションによる光利用効率の低下を軽減できる。これにより、非球面レンズに対して容易に製造可能な球面レンズを用いて、輝度ムラ及び光利用効率低下を軽減できる。
【0043】
図8は、回折光学素子13Rへ入射する入射光線の延長線、及び回折光の光束がなす角度と、回折光学素子13Rの回折効率との関係を表す。グラフの縦軸は任意単位の回折効率、横軸は入射光線の延長線及び回折光の光束がなす角度をそれぞれ表している。回折効率とは、回折光学素子13Rへ入射する入射光の強度に対する、回折光学素子13Rから射出する回折光の強度を示す値であるとする。第1照明装置11Rは、回折光学素子13Rの回折効率が高いほど、高い光利用効率を実現できる。回折光学素子13Rは、入射光線の延長線と回折光の光束がなす角度を、設計に応じて適宜決定できる。入射光線の延長線と回折光の光束とがなす角度が5度付近から7.5度付近へ大きくなるに従って、回折光学素子13Rの回折効率は低くなる。このことから、回折光学素子13Rは、一次回折光L1を被照射面S2へ効率良く入射させるには、入射光線の延長線と一次回折光L1の光束とがなす角度をできるだけ小さく設定するのが望ましいといえる。
【0044】
図9及び図10は、本実施例において、高い回折効率を得るために望ましい構成について説明するものである。図9及び図10では、レーザ光源12R、回折光学素子13R、及び第1空間光変調装置15R以外の構成について図示を省略している。被照射面S2に形成される照射領域LAは、Y軸に略平行な短辺、及びX軸に略平行な長辺を備える矩形形状をなしている。Y軸方向は、被照射面S2に沿う特定の方向であって、第1方向とする。X軸方向は、被照射面S2に沿い、かつ第1方向であるY軸方向に略直交する方向であって、第2方向とする。照射領域LAは、第1方向であるY軸方向に対して、第2方向であるX軸方向へ長い形状をなしている。
【0045】
図9は、回折光学素子13Rへ入射するレーザ光の主光線が、垂線Nに対してX軸方向へ傾けられる場合について説明するものである。図9左は、XZ面内におけるゼロ次光L0、一次回折光L1の振舞いを表している。回折光学素子13Rから射出するゼロ次光L0の光線は、レーザ光源12Rから回折光学素子13Rへの入射光線の延長線に一致している。一次回折光L1の主光線L1Cとゼロ次光L0の光線とは、角度θ’をなしている。図9右は、XY面内におけるゼロ次光L0の振舞いを表している。
【0046】
図10は、回折光学素子13Rへ入射するレーザ光の主光線が、垂線Nに対してY軸方向へ傾けられる場合について説明するものである。図10左は、YZ面内におけるゼロ次光L0、一次回折光L1の振舞いを表している。一次回折光L1の主光線L1Cとゼロ次光L0の光線とは、角度θをなしている。図10右は、XY面内におけるゼロ次光L0の振舞いを表している。図9の場合における角度θ’、及び図10の場合における角度θを比較すると、θ’>θの関係が成り立つ。
【0047】
このことから、回折光学素子13Rは、高い回折効率を得るには、回折光学素子13Rへ入射するレーザ光の主光線は、垂線Nに対してX軸方向よりもY軸方向へ傾けられるほうが望ましいといえる。このように、照射領域LAの形状に応じて、ゼロ次光L0の光線と一次回折光L1の主光線L1Cとがなす角度をできるだけ小さくすることで、回折光学素子13Rにおける回折効率を高くすることができる。回折光学素子13Rにおける回折効率を高くすることで、プロジェクタ10は、高い光利用効率を実現できる。
【0048】
回折光学素子13Rは、入射面S1が光軸AXに直交するように配置する場合に限られない。図11に示すように、回折光学素子13Rは、光軸AXに直交するXY平面に対して入射面S1が傾くように配置することとしても良い。この場合、入射面S1の垂線Nは、光軸AXに対して傾けられている。入射面S1の垂線Nと光軸AXとがなす角度をできるだけ小さくすることにより、容易に照射領域の整形及び光量分布の均一化を可能にできる。
【0049】
また、回折光学素子13Rは、光軸AX上に設けられる場合に限られない。回折光学素子13Rは、少なくとも回折光学素子13Rの一部が、図中破線で示す所定領域27に含まれていれば良い。さらに、回折光学素子13Rの入射面S1においてレーザ光が入射する位置が、所定領域27に含まれることが望ましい。所定領域27は、光軸AXに平行な方向へ被照射面S2を移動させたとした場合に、被照射面S2の軌跡によって形成される空間領域であるとする。回折光学素子13Rの一部が所定領域27に含まれる場合、所定領域27から離れた位置に回折光学素子13Rが配置される場合に比較して、プロジェクタ10をコンパクトにできる。また、回折光学素子13Rから射出する第1回折光L1の主光線を、被照射面S2に対してできるだけ垂直に近づけることができる。レーザ光源12Rは、回折光学素子13Rの入射面S1の垂線Nに対してレーザ光を斜めに進行させるいずれの位置に配置しても良い。レーザ光源12Rについても、少なくとも一部が所定領域27に含まれるように配置することで、所定領域27から離れた位置にレーザ光源12Rを配置する場合に比較して、プロジェクタ10をコンパクトにすることが可能となる。
【実施例2】
【0050】
図12は、本発明の実施例2に係る照明装置30の側面概略構成を示す。本実施例の照明装置30は、上記実施例1に係るプロジェクタ10に適用することができる。上記実施例と同一の部分には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。本実施例に係る照明装置30は、3つのレーザ光源12を有する。レーザ光源12は、コヒーレント光であるレーザ光を射出する光源部である。3つのレーザ光源12は、Y軸方向に並列している。各レーザ光源12は、いずれも、回折光学素子31を配置する基準面である入射面S1の垂線Nに対して斜めにレーザ光を進行させる。各レーザ光源12から射出されたレーザ光は、略平行に進行する。
【0051】
回折光学素子31は、レーザ光源12からの各レーザ光を回折させ、空間光変調装置15の被照射面S2へ第1回折光L1を進行させる。回折光学素子31は、各レーザ光が入射する位置に設けられた回折格子20(図2参照)を用いて、各レーザ光を回折させる。空間光変調装置15は、照明装置30により供給されたレーザ光を画像信号に応じて変調する空間光変調装置である。
【0052】
回折光学素子31は、各レーザ光源12からのレーザ光により生じた各一次回折光L1が被照射面S2の照射領域にて重畳するように設計されている。本実施例の照明装置30は、複数のレーザ光源12を用いることで、一つのレーザ光源12を用いる場合と比較して明るい光を供給することができる。また、回折光学素子31は、一次回折光L1以外の光であるゼロ次光L0を射出する。各レーザ光源12からのレーザ光を回折光学素子31へ入射させることにより生じた各ゼロ次光L0は、略平行に進行し、光吸収部21へ入射する。
【0053】
Y軸方向へ並列させた複数のレーザ光を回折光学素子13Rへ入射させる構成において、例えば、図11に示すように、光軸AXに対してY軸方向へ垂線Nを傾けて回折光学素子13Rを配置する場合、各一次回折光L1の焦点距離に差が生じることになる。各一次回折光L1の焦点距離に差が生じると、平行化レンズ14により一次回折光L1の光束を平行化することが困難になる。従って、本実施例の照明装置30は、光軸AXに対して垂線Nが略平行となるように回折光学素子13Rを配置することが望ましい。
【0054】
レーザ光源12の数及び配置は、本実施例で説明する場合に限られない。照明装置30は、X軸方向及びY軸方向の少なくとも一方に並列された複数のレーザ光源12を有する構成であれば良い。
【実施例3】
【0055】
図13は、本発明の実施例3に係る照明装置33の側面概略構成を示す。本実施例の照明装置33は、上記実施例1に係るプロジェクタ10に適用することができる。上記実施例2では、複数のレーザ光源から略平行にレーザ光を進行させるのに対して、本実施例は、複数のレーザ光源から互いに異なる方向へレーザ光を進行させる。上記実施例と同一の部分には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。本実施例に係る照明装置33は、第1レーザ光源12a、第2レーザ光源12bを有する。第1レーザ光源12a、第2レーザ光源12bは、コヒーレント光であるレーザ光を射出する光源部である。第1レーザ光源12a及び第2レーザ光源12bは、Y軸方向に並列している。
【0056】
第1レーザ光源12a及び第2レーザ光源12bは、光軸AXを含むXZ平面に関して略対称に、レーザ光を進行させる。第1レーザ光源12aからのレーザ光、及び第2レーザ光源12bからのレーザ光は、Y軸方向について互いに離れるように発散する。回折光学素子34は、第1レーザ光源12aにより生じた一次回折光L1aと、第2レーザ光源12bからのレーザ光により生じた一次回折光L1bとが、被照射面S2の照射領域にて重畳するように設計されている。第1レーザ光源12aからのレーザ光により生じたゼロ次光L0aと、第2レーザ光源12bからのレーザ光により生じたゼロ次光L0bとは、光軸AXを含むXZ平面に関して略対称に進行する。第1レーザ光源12aからのレーザ光によって生じたゼロ次光L0aが入射する位置、第2レーザ光源12bからのレーザ光によって生じたゼロ次光L0bが入射する位置には、それぞれ光吸収部21が設けられている。
【0057】
図14は、光軸AXを含むXZ平面に関して略対称にレーザ光を進行させる利点について説明するものである。仮に、破線で示すように、第2レーザ光源12bからのレーザ光を、第1レーザ光源12aからのレーザ光と略同一の方向へ進行させるとする。このとき、第2レーザ光源12bからのレーザ光によって生じた一次回折光L1bの主光線L1Cと、ゼロ次光L0b’の光線とがなす角度がθ1’であるとする。第2レーザ光源12bからのレーザ光によって生じたゼロ次光L0b’は、第1レーザ光源12aからのレーザ光によって生じた一次回折光L1aと交差する。角度θ1’は、平行化レンズ14の手前においてゼロ次光L0b’が一次回折光L1aの光束を完全に貫くように設定される。
【0058】
実線で示す本実施例の構成の場合に、第2レーザ光源12bからのレーザ光によって生じた一次回折光L1bの主光線L1Cと、ゼロ次光L0bの光線とがなす角度がθ1であるとする。この場合、第2レーザ光源12bからのレーザ光によって生じたゼロ次光L0bは、第1レーザ光源12aからのレーザ光によって生じた一次回折光L1aとは交差しない。角度θ1は、ゼロ次光L0bが一次回折光L1aの光束を貫く場合より小さく設定できる。従って、角度θ1’及び角度θ1を比較すると、θ1’>θ1の関係が成り立つ。
【0059】
以上により、本実施例の照明装置33は、被照射面S2以外の位置へゼロ次光L0a、L0bを進行させ、かつゼロ次光L0a、L0bの光線と、一次回折光L1a、L1bとがなす角度を小さくできる。図8を用いて上述したように、回折光学素子34は、入射光線の延長線と回折光の光束とがなす角度をできるだけ小さく設定することにより、高い回折効率を得ることができる。ゼロ次光L0a、L0bの光線と、一次回折光L1a、L1bとがなす角度を小さくできることで、回折光学素子34における回折効率を高くすることができる。従って、照明装置33は、高い光利用効率を実現できる。
【0060】
図15は、本実施例の変形例1について説明するものである。被照射面S2に形成される照射領域LAは、Y軸に略平行な短辺、及びX軸に略平行な長辺を備える矩形形状をなしている。照射領域LAは、第1方向であるY軸方向に対して、第2方向であるX軸方向へ長い形状をなしている。
【0061】
図15上段は、第1レーザ光源12a及び第2レーザ光源12bにより、光軸AXを含むXZ平面S3に関して略対称にレーザ光を進行させる場合の、XY面内におけるゼロ次光L0a、L0bの振舞いを表している。かかる構成は、本実施例に係る上記の照明装置33に適用されている。図15下段は、本変形例に係る照明装置の構成を示す。本変形例に係る照明装置は、第1レーザ光源12a及び第2レーザ光源12bにより、光軸AXを含むYZ平面S4に関して略対称にレーザ光を進行させる。照明装置は、図示するいずれの構成であっても良い。
【0062】
なお、図9及び図10を用いて説明した上記実施例1の場合と同様に、回折光学素子34は、回折光学素子34へ入射するレーザ光の主光線が、垂線Nに対してX軸方向よりもY軸方向へ傾けられるほうが、高い回折効率を得ることが可能となる。従って、本実施例の場合も、図15上段に示す構成とする場合、図15下段に示す構成とする場合に比較して、さらに高い回折効率を得ることが可能となる。
【0063】
図16は、本実施例の変形例2について説明するものである。本変形例に係る照明装置は、4つのレーザ光源を有する。4つのレーザ光源は、X軸方向に2つ、Y軸方向に2つをそれぞれ並列させて配置されている。回折光学素子36は、各レーザ光源からのレーザ光により生じた一次回折光が、被照射面S2の照射領域LAにて重畳するように設計されている。
【0064】
図16上段は、各レーザ光源により、光軸AXを含むXZ平面S3に関して略対称にレーザ光を進行させる場合の、XY面内におけるゼロ次光L0の振舞いを表している。図16中段は、各レーザ光源により、光軸AXを含むYZ平面S4に関して略対称にレーザ光を進行させる場合の、XY面内におけるゼロ次光L0の振舞いを表している。図16下段は、各レーザ光源により、光軸AXに関して略対称にレーザ光を進行させる場合の、XY面内におけるゼロ次光L0の振舞いを表したものである。本変形例に係る照明装置は、図示するいずれの構成であっても良い。
【0065】
ゼロ次光L0の光線と、一次回折光L1の主光線とがなす角度は、図16の上段の場合が最も小さく、下段の場合が最も大きくなる。本変形例の場合、図16の上段に示す構成、中段に示す構成、下段に示す構成の順に、高い回折効率を得ることが可能となる。なお、本実施例で説明する回折光学素子34、36の回折効率の高低は、回折光学素子34、36による再生像の形状に応じて変化する場合があるものとする。本実施例の照明装置は、光軸AX、或いは光軸AXを含む面に関して略対称にレーザ光を進行させる構成であれば良く、レーザ光源の数や配置を適宜変更しても良い。
【実施例4】
【0066】
図17は、本発明の実施例4に係る照明装置40の側面概略構成を示す。本実施例の照明装置40は、上記実施例1に係るプロジェクタ10に適用することができる。上記実施例と同一の部分には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。本実施例の照明装置40は、プリズム41を有する。プリズム41は、第1レーザ光源12a、第2レーザ光源12bから射出したレーザ光を偏向させ、回折光学素子34へ入射させる偏向素子として機能する。
【0067】
第1レーザ光源12a及び第2レーザ光源12bは、いずれも、回折光学素子34を配置する基準面である入射面S1の垂線Nに略平行にレーザ光を進行させる。プリズム41は、回折光学素子34の入射面S1に配置されている。プリズム41は、透明部材を用いて構成されている。プリズム41は、入射面S1に対して傾けて設けられた界面42を有する。プリズム41は、界面42においてレーザ光を屈折させることで、レーザ光を偏向させる。第1レーザ光源12a及び第2レーザ光源12bからのレーザ光は、プリズム41を用いた偏向により、光軸AXを含むXZ平面に関して略対称に進行する。プリズム41を透過したレーザ光は、回折光学素子34へ入射する。
【0068】
光軸AXを含むXZ平面に関して略対称にレーザ光を進行させることで、本実施例の場合も、上記実施例3に係る照明装置と同様に、高い回折効率を得ることができる。本実施例の照明装置40は、プリズム41によりレーザ光を適宜偏向させることで、入射面S1の垂線Nに対して斜めに進行するレーザ光を回折光学素子34へ入射させることができる。照明装置40は、プリズム41を用いることにより、レーザ光源12a、12bを高い自由度で配置することが可能となる。プリズム41は、レーザ光を適宜偏向させることが可能であれば良く、いずれの形状であっても良い。プリズム41は、回折光学素子34の入射面S1に配置される場合に限られず、回折光学素子34の入射面S1とは間隔を設けて配置することとしても良い。
【0069】
図18は、本実施例の変形例1に係る照明装置44の側面概略構成を示す。本変形例の照明装置44は、偏向素子として機能する凹レンズ45を有することを特徴とする。凹レンズ45は、第1レーザ光源12a及び第2レーザ光源12bと、回折光学素子34との間の光路中に設けられている。凹レンズ45は、凹形状の凹面46を有する。凹レンズ45は、凹面46においてレーザ光を屈折させることで、レーザ光を偏向させる。本変形例の場合も、レーザ光源12a、12bを高い自由度で配置することができる。なお、凹レンズ45は、回折光学素子34の入射面S1に設けることとしても良い。
【0070】
レーザ光を屈折させる偏向素子としては、プリズム41や凹レンズ45の他、屈折率勾配を有する屈折率分布型レンズや、電界に応じて屈折率分布を変化させる電界光学素子等を用いても良い。偏向素子は、レーザ光を屈折させるものである場合に限られない。偏向素子は、レーザ光を回折させるものであっても良い。レーザ光を回折させる偏向素子として、例えば、図19に示す回折格子47を用いても良い。回折格子47は、回折により光を偏向可能であれば良く、例えば、微細バイナリ構造を備える。微細バイナリ構造は、略一定の高さで形成された凸部と略一定の高さで形成された凹部が交互に形成された微細構造である。また、レーザ光を回折させる偏向素子として、図20に示すブレーズ格子48を用いても良い。偏向素子として、フレネルレンズを用いても良い。
【0071】
図21は、本実施例の変形例2に係る照明装置50の側面概略構成を示す。本実施例の照明装置50は、ブレーズ格子52と回折格子53とが一体に構成された光学素子51を有することを特徴とする。光学素子51は、レーザ光源12から射出されたレーザ光が入射する位置に設けられている。光学素子51は、透明部材を用いて構成されている。ブレーズ格子52は、光学素子51のうち、レーザ光源12からのレーザ光が入射する入射面に形成されている。ブレーズ格子52は、レーザ光を回折させる偏向素子として機能する。
【0072】
回折格子53は、光学素子51のうち、ブレーズ格子52からの光を射出させる射出面に形成されている。回折格子53は、ブレーズ格子52からのレーザ光を回折させ、被照射面S2へ一次回折光L1を進行させる回折光学素子として機能する。回折格子53は、ブレーズ格子52からのレーザ光を入射させることにより生じた一次回折光L1が被照射面S2の照射領域にて重畳するように設計されている。また、ブレーズ格子52からのレーザ光を回折格子53へ入射させることにより生じたゼロ次光L0は、略平行に進行し、光吸収部21へ入射する。
【0073】
ブレーズ格子52及び回折格子53が一体に構成された光学素子51を用いることにより、照明装置50の部品点数を減少させ、照明装置50を簡易かつコンパクトにできる。図17に示す照明装置40の場合も、回折光学素子34の入射面S1にプリズム41を設ける構成とすることで、本変形例と同様、照明装置40を簡易かつコンパクトにできる。光学素子51は、ブレーズ格子52に代えて、微細バイナリ構造を備える回折格子や、光を屈折させるプリズムや凹レンズ等を設けても良い。
【0074】
光学素子51は、偏向素子として機能する構造を入射面に、回折光学素子として機能する構造を射出面に形成する場合に限られず、適宜変形しても良い。例えば、偏向素子として機能する構造を、光学素子51の内部に形成することとしても良い。本実施例の各照明装置は、一つ又は複数のレーザ光源からのレーザ光を偏向素子により偏向させる構成であれば良く、レーザ光源の数や配置を適宜変更しても良い。
【実施例5】
【0075】
図22は、本発明の実施例5に係る照明装置60の側面概略構成を示す。本実施例に係る照明装置60は、上記実施例1に係るプロジェクタ10に適用することができる。本実施例に係る照明装置60は、レーザ光源12から射出したレーザ光の主光線同士が、レーザ光源12及び回折光学素子61の間の光路で最も接近することを特徴とする。上記実施例と同一の部分には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0076】
照明装置60は、2つのレーザ光源12を有する。各レーザ光源12は、光軸AXを含むXZ平面に関して略対称に、レーザ光を進行させる。各レーザ光源12からのレーザ光は、Y軸方向について互いに近づくように収束し、レーザ光源12及び回折光学素子61の間の光路にて交わる。各レーザ光は、レーザ光源12及び回折光学素子61の間の光路で交差した後はY軸方向について互いに離れるように発散する。各レーザ光は、回折光学素子61の入射面S1のうち、Y軸方向について互いに異なる位置へ入射する。
【0077】
回折光学素子61は、各レーザ光源12からのレーザ光を入射させることにより生じた一次回折光L1が、被照射面S2の照射領域にて重畳するように設計されている。各レーザ光源12からのレーザ光によって生じたゼロ次光L0は、それぞれ光吸収部21へ入射する。本実施例の場合も、上記実施例3に係る照明装置33(図13参照)の場合と同様に、ゼロ次光L0の光線と、一次回折光L1とがなす角度を小さくできることで、回折光学素子61における回折効率を高くでき、高い光利用効率を実現できる。
【0078】
レーザ光源12及び回折光学素子61の間で収束させた各レーザ光を回折光学素子61へ入射させることで、各レーザ光源12から発散させたレーザ光を回折光学素子61へ入射させる場合に比較して、小さい入射面S1の回折光学素子61を用いることが可能となる。これにより、回折光学素子61を小型にでき、回折光学素子61の製造時間、及びコストを低減できる。例えば、レーザ光源12が大型であって、各レーザ光源12の射出位置を密にできないような場合、各レーザ光を平行に進行、或いは発散させると、回折光学素子61を大型にせざるを得ない場合が生じる。本実施例に係る照明装置60は、各レーザ光を収束させることで回折光学素子61を小型にできるため、レーザ光源12が大型である場合に有用である。なお、照明装置60は、レーザ光の主光線同士がレーザ光源12及び回折光学素子61の間の光路で最も接近する構成であれば良く、レーザ光源12及び回折光学素子61の間の光路でレーザ光同士が交わる構成に限られない。
【0079】
図23は、本実施例の変形例に係る照明装置65の側面概略構成を示す。本変形例に係る照明装置65は、回折光学素子66から射出したゼロ次光L0の主光線同士が、回折光学素子66及び被照射面S2の間の光路で最も接近することを特徴とする。各レーザ光源12からのレーザ光は、Y軸方向について互いに近づくように収束する。各レーザ光は、回折光学素子66の入射面S1のうち、Y軸方向について互いに異なる位置へ入射する。回折光学素子66は、各レーザ光源12からのレーザ光を入射させることにより生じた一次回折光L1が、被照射面S2の照射領域にて重畳するように設計されている。
【0080】
各レーザ光源12からのレーザ光によって生じたゼロ次光L0は、回折光学素子66へ入射するレーザ光の光線の延長線上を進行し、回折光学素子66及び被照射面S2の間の光路で交わる。各ゼロ次光L0は、回折光学素子66及び被照射面S2の間の光路で交差した後は、Y軸方向について互いに離れるように発散し、それぞれ光吸収部21へ入射する。本変形例の場合も、レーザ光源12及び回折光学素子66の間で収束させた各レーザ光を回折光学素子66へ入射させることで、回折光学素子66を小型にでき、回折光学素子66の製造時間、及びコストを低減できる。さらに、上記の照明装置60(図22参照)と比較して、レーザ光源12及び回折光学素子66の間隔を短くできるため、照明装置65の小型化も可能となる。なお、照明装置65は、ゼロ次光の主光線同士が回折光学素子66及び被照射面S2の間の光路で最も接近する構成であれば良く、回折光学素子66及び被照射面S2の間の光路でゼロ次光同士が交わる構成に限られない。
【0081】
本実施例に係る照明装置60、65は、いずれも、回折光学素子61、66の入射面S1のうち互いに異なる位置にレーザ光が入射することを要する。入射面S1のうちできるだけ近い位置に各レーザ光が入射する構成とすることで、回折光学素子61、66をできるだけ小型にすることが可能となる。
【0082】
なお、上記各実施例の照明装置は、半導体レーザを備えるレーザ光源を用いる場合に限られず、固体レーザ、液体レーザ、ガスレーザ等を備えるレーザ光源を用いても良い。照明装置は、光源部にレーザ光源を用いる場合に限られない。照明装置は、光源部として、例えば、発光ダイオード(LED)、スーパールミネッセンスダイオード(SLD)等の固体光源を用いる構成としても良い。本発明に係るプロジェクタは、空間光変調装置として透過型液晶表示装置を用いる場合に限られない。空間光変調装置としては、反射型液晶表示装置(Liquid Crystal On Silicon;LCOS)、DMD(Digital Micromirror Device)、GLV(Grating Light Valve)等を用いても良い。プロジェクタは、色光ごとに空間光変調装置を備える構成に限られない。プロジェクタは、一の空間光変調装置により2つ又は3つ以上の色光を変調する構成としても良い。プロジェクタは、空間光変調装置を用いる場合に限られない。プロジェクタは、画像情報を持たせたスライドを用いるスライドプロジェクタであっても良い。プロジェクタは、スクリーンの一方の面に光を供給し、スクリーンの他方の面から射出される光を観察することで画像を鑑賞する、いわゆるリアプロジェクタであっても良い。
【0083】
本発明に係る照明装置は、画像表示装置以外の電子機器、例えば、照明装置からの光を用いて照明された被写体を撮像するモニタ装置等に適用しても良い。また、本発明に係る照明装置は、例えば、レーザ光を用いた露光のための露光装置やレーザ加工装置等の光学系に用いても良い。
【産業上の利用可能性】
【0084】
以上のように、本発明に係る照明装置は、プロジェクタ等の画像表示装置に用いる場合に適している。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】本発明の実施例1に係るプロジェクタの上面概略構成を示す図。
【図2】回折光学素子に形成された回折格子を模式的に表した図。
【図3】回折格子の一部の断面構成を示す図。
【図4】第1照明装置の側面概略構成を示す図。
【図5】従来の照明装置等の側面概略構成を示す図。
【図6】従来の照明装置を使用する場合における照射領域について説明する図。
【図7】第1照明装置を使用する場合における照射領域について説明する図。
【図8】入射光線の延長線及び回折光の光束がなす角度と回折効率の関係を表す図。
【図9】レーザ光の主光線が垂線に対してX軸方向へ傾けられる場合の図。
【図10】レーザ光の主光線が垂線に対してY軸方向へ傾けられる場合の図。
【図11】入射面の垂線を光軸に対して傾けて回折光学素子を配置する場合の図。
【図12】本発明の実施例2に係る照明装置の側面概略構成を示す図。
【図13】本発明の実施例3に係る照明装置の側面概略構成を示す図。
【図14】略対称にレーザ光を進行させる利点について説明する図。
【図15】実施例3の変形例1について説明する図。
【図16】実施例3の変形例2について説明する図。
【図17】本発明の実施例4に係る照明装置の側面概略構成を示す図。
【図18】実施例4の変形例1に係る照明装置の側面概略構成を示す図。
【図19】偏向素子として用いる回折格子を示す図。
【図20】偏向素子として用いるブレーズ格子を示す図。
【図21】実施例4の変形例2に係る照明装置の側面概略構成を示す図。
【図22】本発明の実施例5に係る照明装置の側面概略構成を示す図。
【図23】実施例5の変形例に係る照明装置の側面概略構成を示す図。
【符号の説明】
【0086】
10 プロジェクタ、11R 第1照明装置、11G 第2照明装置、11B 第3照明装置、12R、12G、12B レーザ光源、13R、13G、13B 回折光学素子、14 平行化レンズ、15R 第1空間光変調装置、15G 第2空間光変調装置、15B 第3空間光変調装置、16 クロスダイクロイックプリズム、17 第1ダイクロイック膜、18 第2ダイクロイック膜、19 投写レンズ、20 回折格子、22 矩形領域、21 光吸収部、AX 光軸、L0 ゼロ次光、L1 一次回折光、N 垂線、S1 入射面、S2 被照射面、23 照明装置、24 回折光学素子、25 平行化レンズ、LA 照射領域、PA 画素領域、L1C 主光線、27 所定領域、12 レーザ光源、15 空間光変調装置、30 照明装置、31 回折光学素子、12a、12b レーザ光源、33 照明装置、34 回折光学素子、L0a、L0b ゼロ次光、L1a、L1b 一次回折光、S3 XZ平面、S4 YZ平面、36 回折光学素子、40 照明装置、41 プリズム、42 界面、44 照明装置、45 凹レンズ、46 凹面、47 回折格子、48 ブレーズ格子、50 照明装置、51 光学素子、52 ブレーズ格子、53 回折格子、60 照明装置、61 回折光学素子、65 照明装置、66 回折光学素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コヒーレント光を射出する光源部と、
前記光源部から射出した前記コヒーレント光を回折させ、被照射面へ回折光を進行させる回折光学素子と、を有し、
前記回折光学素子は、前記回折光学素子を配置する基準面の垂線に対して前記コヒーレント光が斜めに入射するように配置され、
前記回折光学素子から射出した光のうち、前記回折光以外の光であるゼロ次光を、前記被照射面以外の位置へ進行させることを特徴とする照明装置。
【請求項2】
前記照明装置を構成する照明光学系の光軸に平行な方向へ前記被照射面を移動させたとした場合に、前記被照射面の軌跡によって形成される空間領域を所定領域とすると、
少なくとも前記回折光学素子の一部が、前記所定領域に含まれることを特徴とする請求項1に記載の照明装置。
【請求項3】
前記基準面は、前記光軸に略直交することを特徴とする請求項2に記載の照明装置。
【請求項4】
前記回折光学素子からの前記回折光の光束を平行化して前記被照射面へ進行させる平行化レンズを有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の照明装置。
【請求項5】
前記被照射面に沿う特定の方向を第1方向とし、前記被照射面に沿い、かつ前記第1方向に略直交する方向を第2方向とすると、
前記被照射面のうち前記回折光が入射する領域である照射領域は、前記第1方向に対して前記第2方向へ長い形状をなし、
前記回折光学素子へ入射する前記コヒーレント光の主光線は、前記垂線に対して前記第1方向へ傾けられることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の照明装置。
【請求項6】
複数の前記光源部を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の照明装置。
【請求項7】
複数の前記光源部は、前記照明装置を構成する照明光学系の光軸、或いは前記光軸を含む面に関して略対称に、前記コヒーレント光を進行させることを特徴とする請求項6に記載の照明装置。
【請求項8】
前記光源部から射出した前記コヒーレント光の主光線同士が、前記光源部及び前記回折光学素子の間の光路で最も接近することを特徴とする請求項6又は7に記載の照明装置。
【請求項9】
前記回折光学素子から射出した前記ゼロ次光の主光線同士が、前記回折光学素子及び前記被照射面の間の光路で最も接近することを特徴とする請求項6又は7に記載の照明装置。
【請求項10】
前記光源部から射出した前記コヒーレント光を偏向させ、前記回折光学素子へ入射させる偏向素子を有することを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の照明装置。
【請求項11】
前記偏向素子は、前記コヒーレント光を屈折させることを特徴とする請求項10に記載の照明装置。
【請求項12】
前記偏向素子は、前記コヒーレント光を回折させることを特徴とする請求項10に記載の照明装置。
【請求項13】
前記偏向素子と前記回折光学素子とが一体に構成されることを特徴とする請求項10〜12のいずれか一項に記載の照明装置。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか一項に記載の照明装置により供給された光を用いて画像を表示することを特徴とする画像表示装置。
【請求項15】
請求項1〜13のいずれか一項に記載の照明装置と、
前記照明装置により供給された光を画像信号に応じて変調する空間光変調装置と、
前記空間光変調装置から射出した光を投写する投写光学系と、を有することを特徴とするプロジェクタ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate


【公開番号】特開2009−162984(P2009−162984A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−372(P2008−372)
【出願日】平成20年1月7日(2008.1.7)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】