説明

照明装置および表示装置

【課題】小型化および光の利用率向上を図りつつ、干渉パターンの発生を低減することが可能な照明装置および表示装置を提供する。
【解決手段】照明装置は、レーザ光源を含む光源部と、このレーザ光源から出射されるレーザ光の光路上に配設され、入射光の光路を複数の光路に分岐して出射させる光学素子と、複数の光路上を進行する各分岐光が入射し、それらの分岐光に基づいて照明光を出射する光学部材と、各分岐光の位相が個別に変化するように光学素子を駆動する駆動部とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、レーザ光を含む光を照射する照明装置、およびそのような照明装置を用いて映像表示を行う表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プロジェクタ(投射型表示装置)の主要部品の1つである光学モジュールは、一般に、光源を含む照明光学系(照明装置)と、光変調素子を含む投射光学系(投影光学系)とから構成されている。このようなプロジェクタの分野では、近年、マイクロプロジェクタと呼ばれる小型(手のひらサイズ)かつ軽量な携帯型プロジェクタが普及し始めている。このマイクロプロジェクタでは、従来、照明装置の光源として主にLED(Light Emitting Diode)が使用されている。
【0003】
一方で、最近では照明装置の新たな光源として、レーザが注目されている。例えば、赤(R),緑(G),青(B)の3原色のレーザ光を用いたプロジェクタとして、従来から気体レーザを用いたものが知られている。このように、レーザを光源として用いたプロジェクタは、例えば特許文献1,2において提案されている。光源としてレーザを用いることにより、色再現範囲が広く、かつ消費電力も小さいプロジェクタを得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭55−65940号公報
【特許文献2】特開平6−208089号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、レーザ光のようなコヒーレント光を拡散面に照射すると、通常の光では見られない斑点上の模様が観察される。このような模様は、スペックル模様と呼ばれている。このスペックル模様は、拡散面の各点で散乱された光が、面上の微視的な凹凸に応じたランダムな位相関係で干渉し合うために生じるものである。
【0006】
ここで、上記したレーザを光源として用いたプロジェクタでは、スクリーン上において、このようなスペックル模様(干渉パターン)が表示画像に重畳される。このため、人間の眼には強度のランダムノイズとして認識され、表示画質が低下してしまうことになる。このように、スペックル模様の発生は、コヒーレント性を有するレーザ光を光源として用いる場合に共通の問題であることから、従来、スペックル模様(スペックルノイズ)の発生を低減させるための様々な試みがなされている。
【0007】
例えば、上記特許文献1では、レーザを光源として用いたプロジェクタにおいて、このようなスペックル模様の発生を低減させるため、圧電素子を用いてスクリーンを微小振動させている。一般に、人間の眼および脳は、約20〜50ms内の画像のちらつきは判別できない。つまり、その時間内の画像は眼の中で積分され、平均化されている。したがって、この時間内に、スクリーン上において独立のスペックルパターンを多数重畳させることにより、スペックルノイズを人間の眼の中で気にならない程度に平均化しようとするものである。しかしながら、この手法では、大型のスクリーン自体を微小振動させる必要があるため、装置構成が大型化してしまうという問題があった。
【0008】
一方、上記特許文献2では、拡散素子を機械的に回転させることにより、スペックルパターンの位置をスクリーン上で高速に変位させ、スペックルノイズが人の眼に検知されないようにしている。しかしながら、この手法では拡散素子を用いて光を拡散させているため、光の利用効率が低下してしまうという問題があった。
【0009】
本開示はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、小型化および光の利用効率向上を図りつつ、干渉パターンの発生を低減することが可能な照明装置および表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示の照明装置は、レーザ光源を含む光源部と、このレーザ光源から出射されるレーザ光の光路上に配設され、入射光の光路を複数の光路に分岐して出射させる光学素子と、複数の光路上を進行する各分岐光が入射し、それらの分岐光に基づいて照明光を出射する光学部材と、各分岐光の位相が個別に変化するように光学素子を駆動する駆動部とを備えたものである。
【0011】
本開示の表示装置は、上記本開示の照明装置と、この照明装置からの照明光を映像信号に基づいて変調する光変調素子とを備えたものである。
【0012】
本開示の照明装置および表示装置では、レーザ光の光路上に配置された光学素子によって、入射光の光路が複数の光路に分岐して出射されると共に、それら複数の光路上を進行する各分岐光の位相が個別に変化するように、光学素子が駆動される。これにより、レーザ光に起因した干渉パターンの発生が低減する。また、光学部材では、上記した各分岐光が入射し、それらの分岐光に基づいて照明光が出射される。これにより、上記した光学素子の駆動がなされても、光学素子から光学部材への入射の際における光損失(各分岐光の入射ロス)が、低減もしくは回避される。
【発明の効果】
【0013】
本開示の照明装置および表示装置によれば、レーザ光を含む入射光の光路を複数の光路に分岐して出射させる光学素子と、各分岐光を入射させて照明光を出射する光学部材とを設けると共に、各分岐光の位相が個別に変化するように光学素子を駆動するようにしたので、光学素子から光学部材への入射の際の光損失を低減もしくは回避しつつ、レーザ光に起因した干渉パターンの発生を低減することができる。よって、小型化および光の利用効率向上を図りつつ、干渉パターンの発生を低減する(表示画質を向上させる)ことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本開示の一実施の形態に係る表示装置の全体構成を表す図である。
【図2】レーザ光源から出射されるレーザ光におけるファーフィールドパターンについて説明するための模式図である。
【図3】レーザ光源から出射されるレーザ光における強度分布について説明するための模式図である。
【図4】図1に示した光学素子の基本作用について説明するための模式図である。
【図5】図4に示した光学素子の詳細構成例を表す模式図である。
【図6】図4に示した光学素子における回折作用について説明するための模式図である。
【図7】各回折光の重ね合わせ作用について説明するための模式図である。
【図8】図1に示したフライアイレンズの詳細構成例を表す模式図である。
【図9】比較例1に係る表示装置の全体構成を表す図である。
【図10】光学素子の振動動作の一例を表す模式図である。
【図11】図10に示した光学素子の振動動作の際の出射光(回折光)の位相変化について説明するための模式図である。
【図12】実施例1に係る光学素子の構成を表す図である。
【図13】実施例1に係る光学素子による回折特性を表す図である。
【図14】実施例2に係る干渉パターンの測定系の構成を表す模式図である。
【図15】実施例2に係る投影領域と測定領域との関係を表す模式図である。
【図16】比較例2および実施例2に係る干渉パターンの測定結果を表す特性図である。
【図17】変形例1に係る光学素子の振動動作例を表す模式図である。
【図18】変形例2に係る光学素子の構成および作用を表す模式図である。
【図19】図18に示した位相変化素子の詳細構成を表す模式図である。
【図20】図18に示したプリズムアレイの詳細構成を表す模式図である。
【図21】図19および図20に示した位相変化素子およびプリズムアレイの基本作用について説明するための模式図である。
【図22】変形例3に係る光学素子の構成および作用を表す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、説明は以下の順序で行う。

1.実施の形態(光学素子として回折素子を用いた例)
2.実施例(実施の形態に係る実施例1,2)
3.変形例
変形例1(光学素子をその光軸と直交する面内方向で振動させる他の例)
変形例2(光学素子として、位相変化素子とプリズムアレイとを用いた例)
変形例3(光学素子として、液晶素子とプリズムアレイとを用いた例)
その他の変形例
【0016】
<実施の形態>
[表示装置3の全体構成]
図1は、本開示の一実施の形態に係る表示装置(表示装置3)の全体構成を表すものである。この表示装置3は、スクリーン30(被投射面)に対して映像(映像光)を投射する投射型の表示装置であり、照明装置1と、この照明装置1からの照明光を用いて映像表示を行うための光学系(表示光学系)とを備えている。
【0017】
(照明装置1)
照明装置1は、赤色レーザ11R、緑色レーザ11G、青色レーザ11B、レンズ12R,12G,12B、ダイクロイックプリズム131,132、コンデンサレンズ14、光学素子(回折素子)15、駆動部16およびフライアイレンズ17を備えている。なお、図中に示したZ0は光軸を表している。
【0018】
赤色レーザ11R、緑色レーザ11Gおよび青色レーザ11Bはそれぞれ、赤色レーザ光、緑色レーザ光または青色レーザ光を発する3種類の光源である。これらのレーザ光源により光源部が構成されており、ここでは、これら3種類の光源がいずれもレーザ光源となっている。赤色レーザ11R、緑色レーザ11Gおよび青色レーザ11Bはそれぞれ、例えば半導体レーザや固体レーザ等からなる。なお、例えばこれらのレーザ光源がそれぞれ半導体レーザである場合、一例として、赤色レーザ光の波長λr=600〜700nm程度、緑色レーザ光の波長λg=500〜600nm程度、青色レーザ光の波長λb=400〜500nm程度である。
【0019】
ここで、これらの赤色レーザ11R、緑色レーザ11Gおよび青色レーザ11Bが、例えば半導体レーザからなる場合、出射されるレーザ光におけるファーフィールドパターン(FFP;Far Field Pattern)の形状は、例えば図2に示したようになる。すなわち、半導体レーザから出射されるレーザ光(赤色レーザ光Lr,緑色レーザ光Lg,青色レーザ光Lb)におけるFFPの形状は、円形(等方的)ではなく、楕円形等となる。
【0020】
レンズ12R,12Gは、赤色レーザ11Rから出射された赤色レーザ光および緑色レーザ11Gから出射された緑色レーザ光をそれぞれコリメートして(平行光として)、ダイクロイックプリズム131と結合するためのレンズ(結合レンズ)である。同様に、レンズ12Bは、青色レーザ11Bから出射されたレーザ光をコリメートして(平行光として)、ダイクロイックプリズム132と結合するためのレンズ(結合レンズ)である。なお、これらのレンズ12R,12G,12Bによって、ここでは入射した各レーザ光をコリメートしている(平行光としている)が、この場合には限られず、レンズ12R,12G,12Bによってコリメートしなくてもよい(平行光としてなくてもよい)。ただし、上記のようにコリメートしたほうが装置構成の小型化を図ることができるため、より望ましいと言える。
【0021】
ここで、上記したように、赤色レーザ11R、緑色レーザ11Gおよび青色レーザ11Bが、例えば半導体レーザからなる場合、レーザ光における空間的な輝度分布(強度分布)は、以下のようになる。すなわち、例えば図3(A),(B)に示したように、半導体レーザから出射されるレーザ光(ここでは一例として赤色レーザ光Lr)におけるFFPの形状が楕円形であることから、コリメータレンズ12R等から出射されるレーザ光の強度分布にも、空間的な不均等性が生ずる。具体的には、例えば図3(B)中の符号P1で示した領域(最大強度の1/2以上の強度を示す領域)から分かるように、ここでは、X軸方向を長軸方向とすると共にY軸方向を短軸方向とする惰円形状の強度分布を示すことになる。
【0022】
ダイクロイックプリズム131は、レンズ12Rを介して入射した赤色レーザ光を選択的に透過させる一方、レンズ12Gを介して入射した緑色レーザ光を選択的に反射させるプリズムである。ダイクロイックプリズム132は、ダイクロイックプリズム131から出射した赤色レーザ光および緑色レーザ光を選択的に透過させる一方、レンズ12Bを介して入射した青色レーザ光を選択的に反射させるプリズムである。これにより、赤色レーザ光、緑色レーザ光および青色レーザ光に対する色合成(光路合成)がなされるようになっている。
【0023】
コンデンサレンズ14は、ダイクロイックプリズム132からの出射光を集光し、略平行化するためのレンズである。
【0024】
光学素子(回折素子)15は、光源とフライアイレンズ17との間におけるレーザ光の光路上(具体的には、コンデンサレンズ14とフライアイレンズ17との間の光路上)に配置されており、本開示における「光学素子」の一具体例に対応するものである。この回折素子15は、例えば図4に示したように、入射光Linの光路を複数の光路に分岐し、出射光Loutとして出射させる光学素子である。すなわち、入射した光束(入射光Lin)が2方向以上(互いに異なる2種類以上の方向)に分割され、出射光Loutとして出射されるようになっている。換言すると、入射光Linの光路を変化させて1方向のみに出射させるのではなく、入射光Linに対して位相差が付与された2次波を生成することにより、2方向以上(2次波の干渉強度を強め合う方向)に出射光Loutを出射させるようになっている。具体的には、ここでは、回折素子15では、入射光Linを回折することにより、複数の次数の回折光(例えば、図中に示した0次回折光、+1次〜+n次回折光、−1次〜−n次回折光など)を発生して出射させている。この回折素子15はまた、後述するスペックルノイズ(干渉パターン)を低減するための光学素子であり、図中に示した光軸Z0上を進行するレーザ光がこの光学素子15を通過するようになっている。
【0025】
図5は、回折素子15の詳細構成を模式的に表わしたものであり、(A)は平面構成(X−Y平面構成)を、(B)は断面構成(Y−Z断面構成)をそれぞれ示している。回折素子15は、基体部150(回折面)上に、単位ピッチPからなる複数の単位構造(1次元の回折構造)151が、Y軸方向に沿って並んで配置(1次元配列)されたものである。各単位構造151は、レーザ光の出射側(+Z軸側)に、各々がX軸方向に延在する一対の段差面構造(階段面構造,ステップ構造)を有している。この一対の段差面構造は、回折面(X−Y平面)の法線(Z軸方向)を含む所定の平面(ここではZ−X平面)を基準として、互いに対称(面対称)な構造となっている。すなわち、これらの単位構造151は、光出射面(X−Y平面)内における一対の段差面構造の延在方向(X軸方向)と直交する方向(Y軸方向)に沿って、並んで配置されている。なお、ここでは、回折素子15において、一対の段差面構造が上記回折面内で1次元配列されているが、これには限られず、一対の段差面構造が上記回折面内で2次元配列されていてもよい。
【0026】
このような構成により回折素子15では、上記した複数の次数の回折光のうちの1つの回折光(+n次回折光Ln)に着目すると、例えば図6(A),(B)に示したように、入射光Linにおける各光線に対して、所定の回折角θ(n)からなる回折光(+n次回折光Ln)を生じさせるようになっている。したがって、上記した複数の次数の回折光の全てを考慮すると、例えば図7(A),(B)に示したような出射光Loutの強度分布が得られることになる。
【0027】
駆動部16は、回折素子15から出射される各分岐光(各次数の回折光)の位相が個別に変化するように、この回折素子15を駆動するものである。具体的には、駆動部16は、回折素子15をその光軸Z0と直交する面内方向(ここでは、X−Y平面内方向)に振動(微小振動)させることにより、各分岐光(各次数の回折光)における位相を個別に変化させるようになっている。このような駆動部16は、例えば、コイルおよび永久磁石(例えば、ネオジム(Nd)や鉄(Fe)、ホウ素(ボロン;B)等の材料からなる永久磁石)等を含んで構成されている。
【0028】
フライアイレンズ17は、例えば図8に示したように、基板(図示せず)上に複数のレンズ171が2次元配置された光学部材(インテグレータ)であり、これらのレンズ171の配列に応じて入射光束を空間的に分割して出射させるものである。これにより、このフライアイレンズ17からの出射光が均一化され(面内の強度分布が均一化され)、照明光として出射されるようになっている。換言すると、フライアイレンズ17では、回折素子15から出射されて複数の光路上を進行する各分岐光(各次数の回折光)が入射し(例えば、図8中に示した回折素子15からの出射光Loutの強度分布を参照)、それらの分岐光に基づいて均一化された照明光が出射されるようになっている。ここで、このフライアイレンズ17が、本開示における「光学部材」の一具体例に対応している。
【0029】
(表示光学系)
前述した表示光学系は、偏光ビームスプリッタ(PBS;Polarization Beam Splitter)22、反射型液晶素子21および投射レンズ23(投射光学系)を用いて構成されている。
【0030】
偏光ビームスプリッタ22は、特定の偏光(例えばp偏光)を選択的に透過させると共に、他方の偏光(例えばs偏光)を選択的に反射させる光学部材である。これにより、照明装置1からの照明光(例えばs偏光)が選択的に反射されて反射型液晶素子21へ入射すると共に、この反射型液晶変調素子21から出射した映像光(例えばp偏光)が選択的に透過し、投射レンズ23へ入射するようになっている。
【0031】
反射型液晶素子21は、照明装置1からの照明光を、図示しない表示制御部から供給される映像信号に基づいて変調しつつ反射させることにより、映像光を出射する光変調素子である。このとき、反射型液晶素子21では、入射時と出射時とにおける各偏光(例えば、s偏光またはp偏光)が異なるものとなるように、反射がなされる。このような反射型液晶素子21は、例えばLCOS(Liquid Crystal On Silicon)等の液晶素子からなる。
【0032】
投射レンズ23は、反射型液晶素子21により変調された照明光(映像光)をスクリーン30に対して投射(拡大投射)するためのレンズである。
【0033】
[表示装置3の作用・効果]
(1.表示動作)
この表示装置3では、まず照明装置1において、赤色レーザ11R、緑色レーザ11Gおよび青色レーザ11Bからそれぞれ出射された光(レーザ光)が、レンズ12R,12G,12Bによってそれぞれコリメートされ、平行光となる。次いで、このようにして平行光とされた各レーザ光(赤色レーザ光、緑色レーザ光および青色レーザ光)は、ダイクロイックプリズム131,132によって色合成(光路合成)がなされる。光路合成がなされた各レーザ光は、コンデンサレンズ14および回折素子15を通過したのち、フライアイレンズ17へ入射する。この入射光は、フライアイレンズ17によって均一化(面内の強度分布の均一化)がなされ、照明光として出射する。このようにして、照明装置1から照明光が出射される。
【0034】
次いで、この照明光は、偏光ビームスプリッタ22によって選択的に反射され、反射型液晶素子21へ入射する。反射型液晶素子21では、この入射光が映像信号に基づいて変調されつつ反射されることにより、映像光として出射する。ここで、この反射型液晶素子21では、入射時と出射時とにおける各偏光が異なるものとなるため、反射型液晶素子21から出射した映像光は選択的に偏光ビームスプリッタ22を透過し、投射レンズ23へと入射する。そして、この入射光(映像光)は、投射レンズ23によって、スクリーン30に対して投射(拡大投射)される。
【0035】
この際、赤色レーザ11R、緑色レーザ11Gおよび青色レーザ11Bはそれぞれ、時分割的に順次発光(パルス発光)し、各レーザ光(赤色レーザ光,緑色レーザ光,青色レーザ光)を出射する。そして、反射型液晶素子21では、各色成分(赤色成分、緑色成分、青色成分)の映像信号に基づいて、対応する色のレーザ光が時分割的に順次変調される。これにより、映像信号に基づくカラー映像表示が表示装置3においてなされる。
【0036】
(2.特徴的部分の作用)
次に、本開示の特徴的部分の作用(照明装置1の作用)について、比較例と比較しつつ詳細に説明する。
【0037】
(2−1.比較例1)
図9は、比較例1に係る表示装置(表示装置100)の全体構成を表したものである。この比較例1の表示装置100は、本実施の形態の表示装置3と同様に、スクリーン30に対して映像光を投射する投射型の表示装置である。表示装置100は、赤色レーザ101R、緑色レーザ101G、青色レーザ101B、ダイクロイックミラー102R,102G,102B、拡散素子103、モータ(駆動部)104、レンズ105、光変調素子106および投射レンズ107を備えている。
【0038】
この表示装置100では、赤色レーザ101R、緑色レーザ101Gおよび青色レーザ101Bから出射された各色のレーザ光は、ダイクロイックミラー102R,102G,102Bにおいて色合成(光路合成)がなされ、拡散素子103へ入射する。この入射光は、拡散素子103によって拡散されたのち、レンズ105によって照明光として光変調素子106へ照射される。この光変調素子106では、この照明光が映像信号に基づいて変調されつつ反射されることにより、映像光として出射する。そして、この映像光は、投射レンズ107によってスクリーン30に対して投射(拡大投射)され、これにより映像信号に基づくカラー映像表示が表示装置100においてなされる。
【0039】
ところで、レーザ光のようなコヒーレント光を拡散面に照射すると、通常の光では見られない斑点上の模様が観察される。このような模様は、スペックル模様と呼ばれている。このスペックル模様は、拡散面の各点で散乱された光が、面上の微視的な凹凸に応じたランダムな位相関係で干渉し合うために生じるものである。
【0040】
ここで、上記比較例1の表示装置100のようにレーザ光源を用いたプロジェクタでは、スクリーン上において、このようなスペックル模様(干渉パターン)が表示画像に重畳される。したがって、そのままでは人間の眼には強度のランダムノイズとして認識され、表示画質が低下してしまうことになる。
【0041】
そこで、レーザ光源を用いたプロジェクタにおいて、このようなスペックル模様(スペックルノイズ)の発生を低減するために、スクリーンを微小振動させる手法が考えられる。一般に、人間の眼および脳は、約20〜50ms内の画像のちらつきは判別できない。つまり、その時間内の画像は眼の中で積分され、平均化されている。したがって、この時間内に、スクリーン上において独立のスペックルパターンを多数重畳させることにより、スペックルノイズを人間の眼の中で気にならない程度に平均化しようとするものである。しかしながら、この手法では、大型のスクリーン自体を微小振動させる必要があるため、装置構成が大型化してしまう。また、それとともに、消費電力の増加や騒音の問題などについても懸念される。
【0042】
そこで、上記比較例1の表示装置100では、モータ104によって拡散素子103を機械的に回転させ、スペックルパターンの位置をスクリーン30上で高速に変位させることにより、スペックルノイズの発生を低減させている。しかしながら、この手法では、拡散素子103によってこの拡散素子103への入射光を拡散させていることから、光の利用効率が低下してしまうことになる。
【0043】
(2−2.本実施の形態の作用)
これに対して本実施の形態の照明装置1では、光学素子(回折素子)15を用いて、以下のようにして上記の問題を解決している。
【0044】
まず、回折素子15では、図4および図10に示したように、入射光Linの光路が複数の光路に分岐され、出射光Loutとして出射される。具体的には、入射光Linが回折素子15において回折されることにより、出射光Loutとして、複数の次数の回折光(0次回折光、+1次〜+n次回折光、−1次〜−n次回折光など)が生成される。
【0045】
そして、駆動部16は、回折素子15から出射される各分岐光(各次数の回折光)の位相が個別に変化するように、この回折素子15を駆動する。具体的には、駆動部16は、回折素子15をその光軸Z0と直交する面内方向(X−Y平面内方向)に振動(微小振動)させることにより、各分岐光(各次数の回折光)における位相を個別に変化させる。すなわち、例えば図10中の矢印P2で示したように、駆動部16は、光軸Z0と直交する面内(X−Y平面内)において、回折素子15における単位構造151の配列方向成分(Y軸方向成分)を含む方向に、回折素子15を振動させる。詳細には、ここでは一例として、駆動部16は、単位構造151の配列方向(Y軸方向)に沿って、回折素子15を振動させている。これにより、上記した原理(スペックルパターンの多重化(時間平均))に加え、スペックルパターンの空間的な多重化がなされることとなり、レーザ光に起因したスペックルノイズ(干渉パターン)の発生が低減する。
【0046】
ここで、図11(A)〜(C)に示したように、単純な回折構造(開口)を仮定すると、回折素子15から出射される各分岐光は、この回折素子15の振動により、以下のようにして位相が個別に変化する。すなわち、図11(B)に示した位置を回折素子15の基準位置とすると、図11(A)に示したとき(回折素子15が+Y方向に変位したとき)には、出射光Lout(各次数の回折光)の位相は、基準位置のときと比べて−Z方向(回折素子15側)に相対的に変化(進行)する。一方、図11(C)に示したとき(回折素子15が−Y方向に変位したとき)には、出射光Lout(各次数の回折光)の位相は、基準位置のときと比べて+Z方向(回折素子15とは反対側)に相対的に変化(進行)する。このようにして、光軸Z0と直交する面内(X−Y平面内)において、単位構造151の配列方向成分(Y軸方向成分)を含む方向に回折素子15が振動することにより、出射光Lout(各次数の回折光)では、その出射角度は変化せずに位相が変化する。その結果、上記したスペックルパターンの時間的および空間的な多重化の作用により、スペックルノイズが低減するのである。
【0047】
また、本実施の形態では、回折素子15から出射される各分岐光(各次数の回折光)がフライアイレンズ17へ入射し、それらの分岐光に基づいて照明光が出射される。これにより、上記した回折素子15の駆動(光軸Z0と直交する面内方向での微小振動)がなされても、回折素子15からフライアイレンズ17への入射の際における光損失(各分岐光の入射ロス)が、低減もしくは回避される。すなわち、上記比較例1の手法や、例えば光軸Z0に沿って回折素子15を微小振動させる手法などとは異なり、スペックルノイズの多重化を利用したスペックルノイズの低減を行う際に、レーザ光の損失(入射ロス)が最小限に低減もしくは回避される。
【0048】
以上のように本実施の形態では、レーザ光を含む入射光Linの光路を複数の光路に分岐して出射させる回折素子15と、各分岐光を入射させて照明光を出射するフライアイレンズ17とを設けると共に、各分岐光の位相が個別に変化するように回折素子15を駆動するようにしたので、回折素子15からフライアイレンズ17への入射の際の光損失を低減もしくは回避しつつ、レーザ光に起因した干渉パターンの発生を低減することができる。よって、小型化および光の利用効率向上を図りつつ、干渉パターンの発生を低減する(表示画質を向上させる)ことが可能となる。
【0049】
<実施例>
続いて、上記実施の形態に係る具体的な実施例(実施例1,2)について説明する。
【0050】
[実施例1]
図12(A),(B)は、実施例1に係る回折素子15の構成を表したものである。具体的には、回折素子15における単位構造151(単位ピッチPからなる一対の段差面構造を有する1次元回折構造)について、各ラベル(A〜J,A’〜J’,O,O’)で示した面の位置(Y軸方向の位置y)および高さhをそれぞれ示している。また、図13(A)〜(C)は、図12(A),(B)に示した回折素子15による回折特性(計算値)を表したものである。具体的には、(A)赤色レーザ光Lr=640nm、(B)緑色レーザ光Lg=532nm、(C)青色レーザ光Lb=445nmの各場合について、回折素子15から出射される各回折光における回折次数,強度I(n),回折角θ(n)をそれぞれ示している。
【0051】
これらの図12および図13により、赤色レーザ光Lr,緑色レーザ光Lg,青色レーザ光Lbの各々について、0次,±1次,±2次,±3次の回折光(7つの次数の回折光)ではそれぞれ、他の次数の回折光と比べて特に高い回折効率(概ね10%以上の回折効率)を示していることが分かる。これらの結果から、略同等の強度(光量レベル)を有する(人間の眼にとって視感度的に略同等の明るさを有する)回折光ができるだけ多くの次数について得られるように、回折素子15における単位構造151が形成されているのが望ましいと言える。
【0052】
[実施例2]
図14は、実施例2に係る干渉パターンの測定系の構成を模式的に表したものである。この実施例2に係る測定系は、緑色レーザ11G、レンズ12G、回折素子15、駆動部16、フライアイレンズ17、テンセントリック光学系41、矩形状の開口(アパーチャ)42および投射レンズ23と、スクリーン30と、CCD(Charge Coupled Device)432および撮像レンズ431を有する撮像装置43と、を備えている。なお、これらの測定系のうち、緑色レーザ11Gおよびレンズ12Gからなる光源ユニットと、駆動部16と、開口42と、投射レンズ23と、スクリーン30上に投影される投影像と、撮像装置43とについての詳細構成は、以下の通りである。
【0053】
(詳細構成)
・光源ユニット:緑色レーザ光Lg(平行光)の波長=532nm,Lgの径φ=6mm
・駆動部16:振動時の振幅=0.3mm(Y軸方向),振動周波数=90Hz
・開口42:アスペクト比=16:9
・投射レンズ23:Fナンバー=2.0,焦点距離=5mm
・投影像:25インチ
・撮像装置43:解像度=1392ピクセル×1040ピクセル,サイズ=2/3インチ,Fナンバー=16,焦点距離=50mm,撮影距離=933mm
【0054】
また、スクリーン30上の投影像における投影領域51と、撮像装置43による測定領域(撮影領域)52との位置関係は、例えば図15に示したようになっている。具体的には、以下の(1)式により規定されるスペックルコントラストCs(スペックルパターンの発生程度を示す指標)の測定条件(輝度プロファイル)は、以下のようになっている。
Cs=(σ/I) ……(1)
(σ:輝度分布(強度分布)の標準偏差、I:輝度分布の平均値)
【0055】
(測定条件)
・測定数値:輝度階調
・測定領域52:投影領域51におけるX軸,Y軸方向各々についての中心部分
・計測方向:測定領域52内におけるX軸方向,Y軸方向の2方向
【0056】
更に、図16(A),(B)はそれぞれ、比較例2(図14に示した測定系において、回折素子15および駆動部16を設けないようにした例)に係る干渉パターンの測定結果を表したものである。一方、図16(C),(D)はそれぞれ、実施例2に係る干渉パターンの測定結果を表したものである。具体的には、図16(A),(C)はそれぞれ、計測方向がX軸方向である場合の測定結果であり、X軸方向の画素数(撮像画素数)と撮像信号の強度(輝度)との関係を示している。一方、図16(B),(D)はそれぞれ、計測方向がY軸方向である場合の測定結果であり、Y軸方向の画素数(撮像画素数)と撮像信号の強度(輝度)との関係を示している。これらの図16(A)〜(D)により、比較例2(スペックルコントラストCs=0.46)と比べて実施例2(スペックルコントラストCs=0.31)のほうが、スペックルパターンの発生程度が小さくなり、表示画質が向上していることが分かる。
【0057】
<変形例>
続いて、上記実施の形態の変形例(変形例1〜3)について説明する。なお、実施の形態における構成要素と同一のものには同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0058】
[変形例1]
上記実施の形態では、例えば図17(A)中の矢印P2で示したように、駆動部16によって、単位構造151の配列方向(Y軸方向)に沿って回折素子15を振動させる場合について説明したが、これには限られない。すなわち、光軸Z0と直交する面内(X−Y平面内)において、単位構造151の配列方向成分(Y軸方向成分)を含む方向に回折素子15を振動させるのであれば、以下の変形例1のように回折素子15を振動させるようにしてもよい。
【0059】
具体的には、例えば図17(B)中の矢印P3で示したように、光軸Z0と直交する面内(X−Y平面内)において、単位構造151の配列方向成分(Y軸方向成分)を含む斜め方向(X軸方向,Y軸方向のいずれとも異なる斜め方向)に、回折素子15を振動させるようしてもよい。あるいは、例えば図17(C)中の矢印P4で示したように、光軸Z0と直交する面内(X−Y平面内)において、単位構造151の配列方向成分(Y軸方向成分)を含む回転動作によって、回折素子15を振動させるようしてもよい。
【0060】
このような手法を適用した本変形例においても、上記実施の形態等と同様の作用により同様の効果を得ることが可能である。すなわち、小型化および光の利用効率向上を図りつつ、干渉パターンの発生を低減する(表示画質を向上させる)ことが可能となる。
【0061】
[変形例2]
図18は、変形例2に係る光学素子(光学素子15−1)の構成(Y−Z断面構成)および作用を表したものである。本変形例の照明装置は、本開示における「光学素子」の一具体例として複数の光学素子を備えたものであり、他の構成は照明装置1と同様となっている。なお、この図18では、入射光Linおよび出射光Lout1,Lout2における等位相波面を模式的に示しており、以降の同様の図においても同様にして示している。
【0062】
光学素子15−1は、その光軸Z0に沿って互いに対向配置された複数の光学素子を有する光学系であり、ここでは、以下説明する位相変化素子15Aおよびプリズムアレイ(プリズム素子)15Bが、Z軸の正方向(光軸Z0)に沿ってこの順で配置されている。
【0063】
位相変化素子15Aは、例えば図19(A),(B)に示したように、複数の単位構造151Aが、Y軸方向に沿って並んで配置(配列)されたものである。各単位構造151Aは、レーザ光の出射側(+Z軸側)に、各々がX軸方向に延在する段差面構造(階段面構造,ステップ構造)を有している。すなわち、これらの単位構造151Aは、光出射面(X−Y平面)内における段差面構造の延在方向(X軸方向)と直交する方向(Y軸方向)に沿って、並んで配置されている。このような構成により位相変化素子15Aでは、例えば図21(A)に示したように、入射光Linの位相を、所定の単位領域(単位構造151Aの形成領域)ごとに個別に変化させて出射するようになっている。
【0064】
プリズムアレイ15Bは、例えば図20(A),(B)に示したように、複数の単位構造(プリズム)151Bが、Y軸方向に沿って並んで配置(配列)されたものである。各単位構造151Bは、レーザ光の出射側(+Z軸側)に、各々がX軸方向に延在する一対の傾斜面構造(一対の傾斜面S1,S2からなる傾斜面構造)を有している。すなわち、これらの単位構造151Bは、光出射面(X−Y平面)内における傾斜面構造の延在方向(X軸方向)と直交する方向(Y軸方向)に沿って、並んで配置されている。このような構成によりプリズムアレイ15Bでは、例えば図21(B)に示したように、入射光Linの光路を複数の光路(ここでは2つの光路)に分岐して出射させるようになっている。
【0065】
また、本変形例では、駆動部16は、例えば図18中の矢印P2で示したように、光学素子15−1のうちの位相変化素子15Aを選択的に駆動する。具体的には、上記実施の形態および変形例1で説明した手法によって、位相変化素子15Aをその光軸Z0と直交する面内方向(X−Y平面内方向)に振動させる。
【0066】
このような構成により光学素子15−1全体では、図18に示したように、まず、入射光Linの位相が、位相変化素子15Aにおいて、所定の単位領域(単位構造151Aの形成領域)ごとに個別に変化して出射される。そして、プリズムアレイ15Bでは、この位相変化素子15Aからの出射光Lout1の光路がそれぞれ2つの光路に分岐され、出射光Lout2として出射される。すなわち、光学素子15−1全体では、上記実施の形態で説明した回折素子15と同様の作用が生じる。
【0067】
したがって、本変形例においても、上記実施の形態等と同様の作用により同様の効果を得ることが可能である。すなわち、小型化および光の利用効率向上を図りつつ、干渉パターンの発生を低減する(表示画質を向上させる)ことが可能となる。
【0068】
[変形例3]
図22は、変形例3に係る光学素子(光学素子15−2)の構成(Y−Z断面構成)および作用を表したものである。本変形例の照明装置は、上記変形例2と同様に、本開示における「光学素子」の一具体例として複数の光学素子を備えたものであり、他の構成は照明装置1と同様となっている。
【0069】
ただし、本変形例の光学素子15−2は、変形例2の光学素子15−1において、位相変化素子15Aの代わりに以下説明する液晶素子15Cを設けたものとなっている。
【0070】
液晶素子15Cは、所定の単位領域ごとに所定の単位構造151Cが形成されてなる位相変化素子であり、入射光Linの位相を、この単位領域(単位構造151Cの形成領域)ごとに個別に変化させて出射することが可能となっている。
【0071】
また、本変形例では、駆動部16は、例えば図22中に示したように、光学素子15−2のうちの液晶素子15Cを選択的に駆動する。具体的には、駆動部16は、液晶素子15Cに対して、上記した単位構造151Cごとに所定の駆動電圧Vを印加する。これにより、上記したように、単位領域(単位構造151Cの形成領域)ごとに入射光Linの位相を個別に変化させることが可能となっている。
【0072】
このような構成により光学素子15−2全体では、図22に示したように、まず、入射光Linの位相が、液晶素子15Cにおいて、所定の単位領域(単位構造151Cの形成領域)ごとに個別に変化して出射される。そして、プリズムアレイ15Bでは、この液晶素子15Cからの出射光Lout1の光路がそれぞれ2つの光路に分岐され、出射光Lout2として出射される。すなわち、光学素子15−2全体では、上記実施の形態で説明した回折素子15と同様の作用が生じる。
【0073】
したがって、本変形例においても、上記実施の形態等と同様の作用により同様の効果を得ることが可能である。すなわち、小型化および光の利用効率向上を図りつつ、干渉パターンの発生を低減する(表示画質を向上させる)ことが可能となる。
【0074】
[その他の変形例]
以上、実施の形態、実施例および変形例を挙げて本開示の技術を説明したが、本技術はこれらの実施の形態等に限定されず、種々の変形が可能である。
【0075】
例えば、上記実施の形態等では、本開示における「光学素子」の一例として、回折素子、ならびに、位相変化素子もしくは液晶素子とプリズムアレイとを組み合わせたものを挙げて説明したが、これら以外の他の光学素子を用いてもよい。同様に、本開示における「光学部材」として、上記実施の形態等で説明したフライアイレンズ以外の光学部材(例えば、ロッドインテグレータなど)を用いてもよい。
【0076】
また、上記実施の形態等では、複数種類(赤色用,緑色用,青色用)の光源がいずれもレーザ光源である場合について説明したが、この場合には限られず、複数種類の光源のうちの少なくとも1つがレーザ光源であればよい。すなわち、光源部内に、レーザ光源と他の光源(例えばLED等)とを組み合わせて設けるようにしてもよい。
【0077】
更に、上記実施の形態等では、光変調素子が反射型の液晶素子である場合を例に挙げて説明したが、この場合には限られず、例えば透過型の液晶素子であってもよく、更には、液晶素子以外の光変調素子であってもよい。
【0078】
加えて、上記実施の形態等では、異なる波長の光を発する3種類の光源を用いた場合について説明したが、例えば3種類の光源ではなく、1種類や2種類,4種類以上の光源を用いるようにしてもよい。
【0079】
また、上記実施の形態等では、光学装置および表示装置の各構成要素(光学系)を具体的に挙げて説明したが、全ての構成要素を備える必要はなく、また、他の構成要素を更に備えていてもよい。具体的には、例えばダイクロイックプリズム131,132の代わりに、ダイクロイックミラーを設けるようにしてもよい。
【0080】
更に、上記実施の形態等では、光変調素子により変調された光をスクリーンに投射する投射光学系(投影レンズ)を備え、投射型の表示装置として構成されている場合について説明したが、本技術は、直視型の表示装置などにも適用することが可能である。
【0081】
なお、本技術は以下のような構成を取ることも可能である。
(1)
レーザ光源を含む光源部と、
前記レーザ光源から出射されるレーザ光の光路上に配設され、入射光の光路を複数の光路に分岐して出射させる光学素子と、
前記複数の光路上を進行する各分岐光が入射し、それらの分岐光に基づいて照明光を出射する光学部材と、
各分岐光の位相が個別に変化するように前記光学素子を駆動する駆動部と
を備えた照明装置。
(2)
前記光学素子が、所定の単位構造が複数配列されてなる回折素子である
上記(1)に記載の照明装置。
(3)
前記駆動部は、前記回折素子をその光軸と直交する面内方向に振動させることにより、各分岐光を構成する各次数の回折光における位相を個別に変化させる
上記(2)に記載の照明装置。
(4)
前記駆動部は、前記光軸と直交する面内において、前記単位構造の配列方向成分を含む方向に、前記回折素子を振動させる
上記(3)に記載の照明装置。
(5)
前記駆動部は、前記単位構造の配列方向に沿って、前記回折素子を振動させる
上記(4)に記載の照明装置。
(6)
前記単位構造は、回折面の法線を含む所定の平面を基準として互いに対称な一対の段差面構造からなり、
前記一対の段差面構造が、前記回折面内で1次元配列または2次元配列されている
上記(2)ないし(5)のいずれかに記載の照明装置。
(7)
前記光学素子が、その光軸に沿って互いに対向配置された、位相変化素子およびプリズムアレイからなり、
前記位相変化素子は、前記入射光の位相を、所定の単位領域ごとに個別に変化させて出射し、
前記プリズムアレイは、前記位相変化素子からの各出射光の光路を、前記複数の光路に分岐して出射させ、
前記駆動部は、前記位相変化素子を駆動する
上記(1)に記載の照明装置。
(8)
前記駆動部は、前記位相変化素子をその光軸と直交する面内方向に振動させる
上記(7)に記載の照明装置。
(9)
前記位相変化素子が、前記単位領域ごとに所定の単位構造が形成された液晶素子からなり、
前記駆動部は、前記液晶素子に対して、前記単位構造ごとに所定の駆動電圧を印加する
上記(7)に記載の照明装置。
(10)
前記光学部材がフライアイレンズである
上記(1)ないし(9)のいずれかに記載の照明装置。
(11)
前記光源部は、赤色光、緑色光または青色光を発する3種類の光源を有する
上記(1)ないし(10)のいずれかに記載の照明装置。
(12)
前記3種類の光源のうちの少なくとも1つが、前記レーザ光源である
上記(11)に記載の照明装置。
(13)
照明装置と、
前記照明装置からの照明光を映像信号に基づいて変調する光変調素子と
を備え、
前記照明装置は、
レーザ光源を含む光源部と、
前記レーザ光源から出射されるレーザ光の光路上に配設され、入射光の光路を複数の光路に分岐して出射させる光学素子と、
前記複数の光路上を進行する各分岐光が入射し、それらの分岐光に基づいて前記照明光を出射する光学部材と、
各分岐光の位相が個別に変化するように前記光学素子を駆動する駆動部と
を有する表示装置。
(14)
前記光変調素子により変調された照明光を被投射面に対して投射する投射光学系を更に備えた
上記(13)に記載の表示装置。
(15)
前記光変調素子が液晶素子である
上記(13)または(14)に記載の表示装置。
【符号の説明】
【0082】
1…照明装置、11R…赤色レーザ、11G…緑色レーザ、11B…青色レーザ、12R,12G,12B…レンズ、131,132…ダイクロイックプリズム、14…コンデンサレンズ、15…光学素子(回折素子)、15−1,15−2…光学素子、15A…位相変化素子、15B…プリズムアレイ、15C…液晶素子、150…基体部、151,151A,151B,151C…単位構造、16…駆動部、17…フライアイレンズ、171…単位レンズ、21…反射型液晶素子、22…偏光ビームスプリッタ、23…投射レンズ、3…表示装置、30…スクリーン、Z0…光軸、Lr…赤色レーザ光、Lg…緑色レーザ光、Lb…青色レーザ光、Lin…入射光、Lout,Lout1,Lout2…出射光、Ln…+n次回折光、P…単位ピッチ、S1,S2…傾斜面、V…駆動電圧。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光源を含む光源部と、
前記レーザ光源から出射されるレーザ光の光路上に配設され、入射光の光路を複数の光路に分岐して出射させる光学素子と、
前記複数の光路上を進行する各分岐光が入射し、それらの分岐光に基づいて照明光を出射する光学部材と、
各分岐光の位相が個別に変化するように前記光学素子を駆動する駆動部と
を備えた照明装置。
【請求項2】
前記光学素子が、所定の単位構造が複数配列されてなる回折素子である
請求項1に記載の照明装置。
【請求項3】
前記駆動部は、前記回折素子をその光軸と直交する面内方向に振動させることにより、各分岐光を構成する各次数の回折光における位相を個別に変化させる
請求項2に記載の照明装置。
【請求項4】
前記駆動部は、前記光軸と直交する面内において、前記単位構造の配列方向成分を含む方向に、前記回折素子を振動させる
請求項3に記載の照明装置。
【請求項5】
前記駆動部は、前記単位構造の配列方向に沿って、前記回折素子を振動させる
請求項4に記載の照明装置。
【請求項6】
前記単位構造は、回折面の法線を含む所定の平面を基準として互いに対称な一対の段差面構造からなり、
前記一対の段差面構造が、前記回折面内で1次元配列または2次元配列されている
請求項2に記載の照明装置。
【請求項7】
前記光学素子が、その光軸に沿って互いに対向配置された、位相変化素子およびプリズムアレイからなり、
前記位相変化素子は、前記入射光の位相を、所定の単位領域ごとに個別に変化させて出射し、
前記プリズムアレイは、前記位相変化素子からの各出射光の光路を、前記複数の光路に分岐して出射させ、
前記駆動部は、前記位相変化素子を駆動する
請求項1に記載の照明装置。
【請求項8】
前記駆動部は、前記位相変化素子をその光軸と直交する面内方向に振動させる
請求項7に記載の照明装置。
【請求項9】
前記位相変化素子が、前記単位領域ごとに所定の単位構造が形成された液晶素子からなり、
前記駆動部は、前記液晶素子に対して、前記単位構造ごとに所定の駆動電圧を印加する
請求項7に記載の照明装置。
【請求項10】
前記光学部材がフライアイレンズである
請求項1に記載の照明装置。
【請求項11】
前記光源部は、赤色光、緑色光または青色光を発する3種類の光源を有する
請求項1に記載の照明装置。
【請求項12】
前記3種類の光源のうちの少なくとも1つが、前記レーザ光源である
請求項11に記載の照明装置。
【請求項13】
照明装置と、
前記照明装置からの照明光を映像信号に基づいて変調する光変調素子と
を備え、
前記照明装置は、
レーザ光源を含む光源部と、
前記レーザ光源から出射されるレーザ光の光路上に配設され、入射光の光路を複数の光路に分岐して出射させる光学素子と、
前記複数の光路上を進行する各分岐光が入射し、それらの分岐光に基づいて前記照明光を出射する光学部材と、
各分岐光の位相が個別に変化するように前記光学素子を駆動する駆動部と
を有する表示装置。
【請求項14】
前記光変調素子により変調された照明光を被投射面に対して投射する投射光学系を更に備えた
請求項13に記載の表示装置。
【請求項15】
前記光変調素子が液晶素子である
請求項13に記載の表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2013−44800(P2013−44800A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−180779(P2011−180779)
【出願日】平成23年8月22日(2011.8.22)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】