説明

照明装置及びこれを用いた投写型映像表示装置

【課題】ロッドインテグレータからの照明光束の射出面の面積を大きくすることなく、この照明光束を偏光変換できるようにした照明装置を提供すること。
【解決手段】光源ランプ10からの光束が導入される第1ロッドインテグレータ21と、第1ロッドインテグレータ21の斜めに切断された端面に設けられた偏光分離板22と、この偏光分離板22の表面に直交するように第1ロッドインテグレータ21に対し交差状に接続される第2ロッドインテグレータ25とを有する。第2ロッドインテグレータ25は、長手方向の中間位置に1/4λ板23を有するとともに、先端端面には全反射ミラー24を有する。そして、偏光分離板22では、一方の直線偏光光(例えばS偏光光)が透過され、他方の直線偏光光(例えばP偏光光)を、第2ロッドインテグレータ25内を長手方向に往復動させることにより一方の直線偏光光(例えばS偏光光)に偏光される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、照明装置、特に、映像形成領域に照射される照明光の面内光強度分布を均一なものとするために、光源ランプの光路にロッドインテグレータを用いた照明装置に関する。また、本発明は、このような照明装置を用いた投写型映像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
このような照明装置、及びこのような照明装置を用いた投写型映像表示装置としては、光源ランプの出射側に偏光変換素子が配置されるとともに、この偏光変換素子の出射側にロッドインテグレータが配置されているものが特許文献1により知られている。また、光源ランプの出射側にロッドインテグレータが配置されるとともに、このロッドインテグレータの出射側に偏光変換素子が配置されたものが特許文献2により知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−140839号公報
【特許文献2】特開2007−72250号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1は、偏光変換素子の出射側にロッドインテグレータが配置されていた。このため、偏光変換素子の機能によって光源ランプからの照明光束を1種類の直線偏光光に変換したとしても、ロッドインテグレータの内面で多重反射されることにより、偏光変換素子から射出される照明光束の偏光度が低下してしまうという問題があった。
【0005】
一方、特許文献2は、ロッドインテグレータにより照明光の面内光強度分布を均一にするとともに、特許文献1のような偏光度の低下を生じさせないようにしたものである。この特許文献2は、図8に示すように構成されている。すなわち、特許文献2は、照明光束を射出する光源ランプ110と、光源ランプ110からの照明光束を均一な面内光強度分布を有する照明光束に変換して射出するロッドインテグレータ120と、ロッドインテグレータ120から射出される照明光束を略1種類の直線偏光光に揃える偏光変換素子130と、導光部材140とを備えている。
【0006】
偏光変換素子130は、偏光分離層131aを有する偏光分離プリズム131と、反射層132aを有する反射プリズム132と、λ/2板133とを有するものである。そして、ロッドインテグレータ120から照射される照明光束に含まれる直線偏光光のうち一方の直線偏光光(例えばP偏光光)は、偏光分離層131aを透過し、λ/2板133において他方の直線偏光光(例えばS偏光光)に変換されて出射される。また、ロッドインテグレータ120から照射される他方の直線偏光光(例えばS偏光光)は、偏光分離層131aにおいて照明光軸111に直角な方向に反射され、さらに、反射層132aにより照明光軸111に平行な方向に反射されて出射される。
【0007】
しかしながら、この特許文献2の場合は、偏光変換素子130を通過した後の照明光束の射出面の大きさがロッドインテグレータ120の射出面の大きさの倍になっていた。このため、その後段の光学系が大きくなり、それに伴いこの照明装置を利用する装置が大型化するという問題点があった。
【0008】
本発明は、このような問題点に鑑み成されたもので、ロッドインテグレータからの照明光束の射出面の面積を大きくすることなく、この照明光束を偏光変換するようにした照明装置を提供すること、及びこれを用いた投写型映像表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る照明装置は、上記課題を解決するために、照明光束を射出する光源ランプと、光源ランプからの照明光束が導入される導光装置とを有し、この導光装置は、光源ランプから射出された照明光束の面内光強度分布を均一化するための第1ロッドインテグレータと、第1ロッドインテグレータの斜め方向に切断された端面に設けられた偏光分離板と、この偏光分離板の表面に直交するように第1ロッドインテグレータに対し交差状に接続される第2ロッドインテグレータとからなり、この第2ロッドインテグレータは、長さ方向の中間位置に1/4λ板を有するとともに、その第2ロッドインテグレータの先端端面には全反射ミラーが配置され、前記第1ロッドインテグレータから伝播してくる照明光束は、この光束に含まれる直線偏光光のうち一方の直線偏光光が前記偏光分離板を透過し、他方の直線偏光光が前記偏光分離板により反射されて第2ロッドインテグレータに導かれ、この第2ロッドインテグレータに導かれた直線偏光光は、前記1/4λ板を経由して前記全反射ミラーで反射されるとともに、前記1/4λ板を再度経由して前記偏光分離板へ照射されるように構成されていることを特徴とする。
【0010】
本発明に係る照明装置によれば、光源ランプからの照明光束が第1ロッドインテグレータに導かれて偏光分離板へ導かれる間に多重反射されることにより、面内光強度分布が均一化される。また、このように面内光強度分布が均一化された照明光束のうち一方の直線偏光光(例えばS偏光光)は、偏光分離板を透過し、他方の直線偏光光(例えばP偏光光)は、偏光分離板で反射され第2ロッドインテグレータ内を反射しながら1/4λ板を透過して円偏光光に変換される。そして、円偏光光に変換された光束は、全反射ミラーにて全反射されて再度1/4λ板を透過することにより、前記一方の直線偏光光(S偏光光)に変換されて偏光分離板へ戻ってくる。このようにして、この光束は偏光分離板を透過して射出される。したがって、本発明においては、偏光分離板と第2ロッドインテグレータが偏光分離装置を構成している。このように、本照明装置によれば、偏光分離装置を構成する偏光分離板及び第2ロッドインテグレータの前段に、面内光強度分布を均一化するための第1ロッドインテグレータが設けられているので、偏光度の低下を来たすことなく光源ランプからの照明光束の面内光強度分布を均一化することができる。また、この照明装置の光射出面が第1ロッドインテグレータの斜め方向の端面と同一の大きさとなるので、この照明装置の後段に接続される機器を小型化することが可能となる。
【0011】
この照明装置において、前記偏光分離板の出射面側に導光部材としての第3ロッドインテグレータが設けられ、この第3ロッドインテグレータの端面と前記第1ロッドインテグレータの端面との間に前記偏光分離板が配置されるように構成されていることが好ましい。このように構成すれば、第3ロッドインテグレータを、後段の光学系へ照明光束を導くために必要な長さとすることにより、偏光分離板から射出される光束を第3ロッドインテグレータにより所定の位置の後段機器へ容易に案内することができるので、照明装置の光射出面を大きくすることなく照明光束を後段の機器へ容易に導くことができる。
【0012】
また、前記第1ロッドインテグレータと前記第2ロッドインテグレータとが交差して接合される接合面には、第1ロッドインテグレータ及び第2ロッドインテグレータを構成する素材の屈折率より低い屈折率からなる低屈折率層が形成されていることが好ましい。第1ロッドインテグレータの内部では偏光の揃っていない照明光束が内面反射しており、しかもさまざまな角度を有しているが、このような低屈折率層を設けることにより、光源ランプからの照明光束の一部(例えばS偏光光)が偏光分離板に到達する前に第2ロッドインテグレータに入射することが防止される。偏光分離板に到達する前に照明光束の一方の直線偏光光(例えばS偏光光)が第2ロッドインテグレータに入射すると、第2ロッドインテグレータにおいて他方の直線偏光光(例えばP偏光光)に変換されて偏光分離板へ戻ってくることがある。この場合、他方の直線偏光光が偏光分離板を透過せず第1ロッドインテグレータへ逆戻りすることがあり、照明光の利用効率が低下するとともに迷光が増加する。
【0013】
前記第1ロッドインテグレータ及び第2ロッドインテグレータは中実の棒状部材からなるとともに、その交差する接合面が低屈折率の材料からなる接着剤により接着され、この接着剤が前記低屈折率層を形成することが好ましい。このように構成すると、第1ロッドインテグレータ及び第2ロッドインテグレータが組み合わされる導光装置の組み付けが容易になる。
【0014】
前記第2ロッドインテグレータは、長さ方向中間位置において分断され、この分断面に1/4λ板が配置されるとともに、この1/4λ板がこの分断面に接着剤により接着されていることが好ましい。このように構成すると偏光分離板で反射された一方の直線偏光光を他方の直線偏光光に変換する第2ロッドインテグレータの構成が簡略化される。
【0015】
前記偏光分離板は、前記第1ロッドインテグレータの端面及び第3ロッドインテグレータの端面に対しそれぞれ接着剤により接着されていることが好ましい。このように構成すると第1ロッドインテグレータ、偏光分離板及び第3ロッドインテグレータの結合構成が簡略化される。
【0016】
また、前記第1ロッドインテグレータの光入射面には複数の光源ランプからの照明光束が入射するように構成されているようにすることができる。このように構成すると、光源ランプを複数個にすることにより照度アップした照明装置を提供することができる。
【0017】
また、本発明に係る投写型映像表示装置は、上記記載の照明装置と、この照明装置からの照明光束を映像情報に応じて変調する変調装置と、この変調装置により変調された映像光を投写する投写光学系とを備えていることを特徴とする。このように構成すれば、ロッドインテグレータにより面内光強度分布が均一化された照明装置からの出射光が用いられるとともに、ロッドインテグレータ通過後の偏光度の低下を少なくし、さらに、この照明装置の後段に接続される装置の小型化を図ることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る照明装置によれば、偏光分離装置を構成する偏光分離板及び第2ロッドインテグレータの前段に、面内光強度分布を均一化するための第1ロッドインテグレータが設けられているので、偏光度の低下を来たすことなく光源ランプからの照明光束の面内光強度分布を均一化することができる。また、この照明装置の光射出面が第1ロッドインテグレータの斜め方向に切断された端面と同一の大きさとなるので、この照明装置の後段に接続される機器を小型化することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施の形態に係る照明装置を用いた投写型映像表示装置全体の光学系系統図である。
【図2】同投写型映像表示装置における照明装置に係り、第1ロッドインテグレータから光軸方向の光束が導入される場合の動作図である。
【図3】同投写型映像表示装置における照明装置に係り、第1ロッドインテグレータから内面で多重反射されてくる光束が導入される場合の動作図である。
【図4】同照明装置における低屈折率層の機能説明用の参考動作図である。
【図5】同照明装置における各部の配置条件の説明図である。
【図6】同照明装置における各部の配置条件を理解するための参考動作図である
【図7】本発明の変形例に係る投写型映像表示装置全体の光学系系統図である。
【図8】従来例に係る照明装置の要部構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態に係る投写型映像表示装置の光学系について、図1を参照しながら説明する。
本実施の形態に係る投写型映像表示装置は、図1に示すような照明装置1を備えている。また、照明装置1から出射された光束を赤、緑、青の各色光に分離し変調するために結像レンズ2a,2bと、ダイクロイックミラー3a、3bと、反射ミラー4a,4b,4cと、リレーレンズ5a,5bと、集光レンズ6R,6G,6Bと、赤、緑、青色用の透過型液晶ライトバルブ7R,7G,7Bを備えている。また、分離され変調された各色光を合成して投写するためにダイクロイックプリズム8と、投写レンズ9と、スクリーンSとを備えている。
【0021】
照明装置1は、光源ランプ10と、導光装置20とを備えている。
光源ランプ10は、楕円形リフレクタ11を備えており、出射された照明光が導光装置20の入射面に結像するように出射されている。導光装置20には、面内光強度分布を均一にするための第1ロッドインテグレータ21、及び第1ロッドインテグレータ21からの照明光を略1種類の直線偏光光に変換するための偏光分離板22が設けられている。また、導光装置20には、偏光分離板22で反射された直線偏光光を他の直線偏光光に変換するように1/4λ板23及び全反射ミラー24を備えた第2ロッドインテグレータ25と、偏光された照明光を所定位置に案内するための、導光部材としての第3ロッドインテグレータ26とが設けられている。なお、この導光装置20の詳細については後述する。
【0022】
結像レンズ2a,2b及び集光レンズ6R,6G,6Bは、上記照明装置1の出射面から出射される照明光束を、発散させずに照明装置1の出射面と略共役の位置に配置されている透過型液晶ライトバルブ7R,7G,7Bの被照明領域に結像させるためのものである。
【0023】
結像レンズ2a,2bと集光レンズ6R,6G,6Bの間に配置されているダイクロイックミラー3a,3bは、色分離機能を有する部材である。第一のダイクロイックミラー3aは、赤色波長域を反射し、他の波長域を透過させる機能を有する。第二のダイクロイックミラー3bは、緑色波長域を反射し、青色波長域を透過する機能を有する。照明装置1からの照明光はこれらダイクロイックミラー3a,3bにより赤、緑、青の3色光に分離されて、それぞれの色光用の透過型液晶ライトバルブ7R,7G,7Bへ導かれ、画像情報又は映像情報に基づき光変調される。なお、リレーレンズ5a,5bはダイクロイックミラー3bを透過した照明光束を集光レンズ6Bまで発散させずに到達させる機能を有している。
【0024】
透過型液晶ライトバルブ7R,7G,7Bにより光変調された各色光は、ダイクロイックプリズム8によって合成される。そして、合成された光束は、投写レンズ9によって拡大投射され、スクリーンS上に投影表示される。
【0025】
次に、本発明の要部である導光装置20構造及び作用の詳細について、図1〜図7に基づき詳細に説明する。
本実施の形態に係る導光装置の第1ロッドインテグレータ21は、断面4角形のガラス製の中実棒状部材からなる。光源ランプ10からの照明光は、図1に示すように導光装置20の入射面となる第1ロッドインテグレータ21の入射面に結像するように出射される。これにより、光源ランプ10からの照明光が導光装置に導入され易く構成されている。
【0026】
光源ランプ10からの出射光は、第1ロッドインテグレータ21に入射された後、ガラス製の中実棒状部材からなる第1ロッドインテグレータ21の内面において多重反射されながら他端面へ導かれる。また、この他端面には、図2等に示すように偏光分離板22が取り付けられている。
【0027】
そして、偏光分離板22に直交するように、かつ、第1ロッドインテグレータ21に対し交差するように第2ロッドインテグレータ25が接続されている。また、第2ロッドインテグレータ25は、長さ方方向の中間位置において分断されるとともに、この分断面に1/4λ板23が配置される、接着により固定されている。また、第2ロッドインテグレータ25の先端端面には全反射ミラー24が配置されている。この第2ロッドインテグレータ25は、各部の寸法は異なるが第1ロッドインテグレータ21と同一の素材により同様構造に形成されている。そして、第1ロッドインテグレータ21と第2ロッドインテグレータ25とは、互いに交差して接合する接合面において接着剤により接着されている。この接着剤は、第1ロッドインテグレータ及び第2ロッドインテグレータを構成する素材の屈折率より低い屈折率からなり、低屈折率層27を成すように形成されている。
【0028】
また、偏光分離板22の出射面側に、偏光分離板22から出射される照明光束を所定の位置に配置された後段の光学系に導くための導光部材としての第3ロッドインテグレータ26が設けられ、この第3ロッドインテグレータ26の端面と第1ロッドインテグレータ21の端面との間に偏光分離板22が配置されるように構成されている。第3ロッドインテグレータ26は、基本的には偏光分離板22から出射された光を所定位置に導くために設けられたものであるため、各部の寸法は異なるが、第1ロッドインテグレータ21と同一の素材により同様の構造に形成されている。
【0029】
そして、このように形成された導光装置20に対し、光源ランプ10から照明光が入射されると、照明光束は第1ロッドインテグレータ21における内面で多重反射を繰り返しながら偏光分離板22の方へ導かれる。
【0030】
この第1ロッドインテグレータ21の光軸方向に伝播してきた照明光束は、図2に示すように、偏光分離板22に導かれ(直線矢印参照)、一方の直線偏光光(例えばS偏光光、破線矢印参照)は偏光分離板22を透過し、他方の直線偏光光(例えばP偏光光、1点鎖線参照)は偏光分離板22で反射される。偏光分離板22で反射され直線偏光光(P偏光光)は、第2ロッドインテグレータ25内を多重反射しながら1/4λ板23を透過して円偏光光(2点鎖線参照)に変換される。そして、円偏光光に変換された光束は、全反射ミラー24にて全反射されて再度1/4λ板23を透過することにより、偏光分離板22を透過する直線偏光光(S偏光光)に変換されて、偏光分離板22へ再度導かれる。
【0031】
一方、第1ロッドインテグレータ21内を内面で反射されながら進んできた照明光束は、図3に示すように、低屈折率層27(接着剤による層)で全反射されて偏光分離板22へ導かれる。照明光束が全反射されるのは次の理由による。低屈折率層27への入射光角をφ1、第1ロッドインテグレータ21の屈折率をn1、低屈折率層27の屈折率をn2、第1ロッドインテグレータ21内を伝搬する光束が低屈折率層27で全反射される臨界角をφとしたときに、sinφ=n1/n2となる。また、前述のようにn1>n2となるように素材が選択されており、φ1>φとなるように設定されている。また、偏光分離板22に導かれた光束は、一方の直線偏光光(例えばS偏光光、破線矢印参照)が偏光分離板22を透過し、他方の直線偏光光(例えばP偏光光、1点鎖線参照)が偏光分離板22で反射される。この反射光の低屈折率層27への入射角をφ2とすると、φ2<φとなっており全反射の条件を満たさないため、偏光分離板22で反射された直線偏光光(P偏光光)は、低屈折率層27を透過して第2ロッドインテグレータ25に導かれる。
【0032】
第2ロッドインテグレータ25に導かれた反射光(P偏光光)は、第2ロッドインテグレータ25内を反射しながら1/4λ板23を透過して円偏光光(2点鎖線参照)に変換される。また、円偏光光に変換された光束は、全反射ミラー24にて全反射されて再度1/4λ板23を透過することにより、偏光分離板22を透過する直線偏光光(S偏光光)に変換されて、偏光分離板22へ再度導かれて偏光分離板22を透過する。
【0033】
このようにして、光源ランプ10から導光装置20に導かれた照明光は、低屈折率層27が存在することにより、偏光分離板22へ導かれる。そして、一方の直線偏光光(例えばS偏光光、破線矢印参照)は偏光分離板22を透過し、他方の直線偏光光(例えばP偏光光、1点鎖線参照)は偏光分離板22で反射される。また、偏光分離板22で反射された他方の直線偏光光(P偏光光)が第2ロッドインテグレータ25内に導かれ、第2ロッドインテグレータ25内で一方の直線偏光光(S偏光光)に変換されて、偏光分離板22へ再度導かれて偏光分離板22を透過する。
【0034】
このように、第1ロッドインテグレータから伝播してくる照明光束は、偏光分離板22、第2ロッドインテグレータ25、及び低屈折率層27により1種類の直線偏光光に変換され、第3ロッドインテグレータ26を通じて後段の光学系へ導かれる。したがって、この実施の形態において、第1ロッドインテグレータ21の後段側に配置される偏光分離板22、第2ロッドインテグレータ25、及び低屈折率層27は、第1ロッドインテグレータ21から伝播してくる照明光束を1種類の偏光光に変換する偏光分離装置を構成する。
【0035】
なお、低屈折率層27が存在しない場合は、例えば図4に示すように、次のような不都合が発生する。
すなわち、第1ロッドインテグレータ21内を伝播してきた光束のうちの,S偏光光は、低屈折率層27が存在しないため第1ロッドインテグレータ21から直接第2ロッドインテグレータ25内に入る。そして、第2ロッドインテグレータ内で反射されながら先端側へ進行し、1/4λ板23を介し先端の全反射ミラー24で反射されてP偏光光となって偏光分離板22へ導かれる。しかしながら、この光束は、P偏光光であるため偏光分離板22で反射され再度第1ロッドインテグレータ21へ戻される。したがって、このような動作が発生すると、光源ランプ10から発生された照明光束の利用効率が低下するとともに、迷光が発生するという問題が生ずる。
【0036】
次に、第1ロッドインテグレータ21、第2ロッドインテグレータ25、第3ロッドインテグレータ26及び偏光分離板22の相対位置は、次のような関係に構成されている。これを図5及び図6を用いながら説明する。
【0037】
図5に示すように、第2ロッドインテグレータ25は、中心線が偏光分離板22の法線Qの方向と同一とする。また、第1ロッドインテグレータ21内を反射しながら伝搬する照明光束と第1ロッドインテグレータ21の内面との成す最大角度をαとする。また、第3ロッドインテグレータ26の垂直断面と偏光分離板22との成す角度をθa、第1ロッドインテグレータ21と第3ロッドインテグレータ26との成す角度をθb、第2ロッドインテグレータ25と第3ロッドインテグレータ26との成す角度をθcとする。そして、偏光分離板22に入射される照明光束の偏光分離板22の法線Qに対する角度をβとする。さらに、角度βは、偏光分離板22に入射される光束が図5に図示されるように法線Qの下側から入射される場合を正とする。
【0038】
このように設定して定義した場合、βは、β=θa+θb−αで表される。
また、偏光分離板22で反射された光束(この実施の形態の場合はP偏光光)が支障なく第2ロッドインテグレータ25に入射されるには、β=θa+θb−α>0(すなわち、角度βが正)でなければならない。
【0039】
角度βが正の場合は、図5に示すように低屈折率層27で全反射された光束のうち一方の直線偏光光(この実施の形態の場合S偏光光)が偏光分離板22を透過し、他の直線偏光光(この実施の形態の場合P偏光光)が偏光分離板22で反射され、第2ロッドインテグレータ25の方向に導かれる。したがって、この場合は、所定の偏光分離機能が発揮される。しかしながら、角度βが負の場合は、図6に示すように偏光分離板22で反射された他の直線偏光光(この実施の形態の場合P偏光光)が第2ロッドインテグレータ25の方向ではなく第1ロッドインテグレータ21の方向に反射される。したがって、この場合は、光源ランプ10から発生された照明光束の利用効率が低下するとともに、迷光が発生するという問題が生ずる。
【0040】
以上のごとく構成された本実施の形態によれば次の効果を奏することができる。
(1)光源ランプ10からの照明光束は、偏光分離装置を構成する偏光分離板22、第2ロッドインテグレータ25、及び低屈折率層27へ導かれる前に、第1ロッドインテグレータ21に導かれて多重反射されることにより、面内光強度分布が均一化される。
【0041】
(2)面内光強度分布を均一化するための第1ロッドインテグレータ21の後段側に、偏光分離板22、第2ロッドインテグレータ25、及び低屈折率層27からなる偏光分離装置が設けられているので、偏光度の低下を来たすことなく光源ランプ10からの照明光束の面内光強度分布を均一化することができる。
【0042】
(3)照明装置1の光射出面は、第1ロッドインテグレータ21の斜め方向の端面と同一の大きさとなるので、この照明装置1の後段に接続される機器を小型化することができる。
【0043】
(5)この照明装置1においては、偏光分離板22の出射面側に偏光された照明光を所定位置に案内するための導光部材としての第3ロッドインテグレータ26が設けられている。したがって、偏光分離板22から射出される光束を、第3ロッドインテグレータ26により所定の位置に配置されている後段の光学系へ、照明装置1の光射出面を大きくすることなく容易に導くことができる。
【0044】
(6)第1ロッドインテグレータ21と前記第2ロッドインテグレータ25とが交差する接合面には、第1ロッドインテグレータ21及び第2ロッドインテグレータ25を構成する素材の屈折率n1,n2より低い屈折率からなる低屈折率層27が形成されている。したがって、第1ロッドインテグレータ21の内部では偏光の揃っていない照明光束が内面反射しており、しかもさまざまな角度を有している。しかし、このような低屈折率層27が設けられることにより、光源ランプ10からの照明光束が偏光分離板22に到達する前に第2ロッドインテグレータ25に入射することが防止される。なお、低屈折率層27が設けられていない場合は、偏光分離板22に到達する前に照明光束の一方の直線偏光光(例えばS偏光光)が第2ロッドインテグレータ25に入射する。そして、第2ロッドインテグレータ25において他方の直線偏光光(例えばP偏光光)に変換されて偏光分離板22へ戻ってくる。この場合、他方の直線偏光光(P偏光光)が偏光分離板22を透過せず第1ロッドインテグレータ21へ逆戻りすることになり、照明光の利用効率が低下するとともに迷光が増加する。
【0045】
(7)第1ロッドインテグレータ21及び第2ロッドインテグレータ25は中実の部材からなるとともに、その交差する接合面が低屈折率の材料からなる接着剤により接着され、この接着剤が前述の低屈折率層27を形成している。したがって、第1ロッドインテグレータ21及び第2ロッドインテグレータ25が組み合わされる導光装置20の組み付けが容易になる。
【0046】
(8)第2ロッドインテグレータ25は、長さ方向中間位置において分断され、この分断面に1/4λ板23が配置されるとともに、1/4λ板23がこの分断面に接着剤により接着されている。したがって、偏光分離板22で反射された一方の直線偏光光を他方の直線偏光光に変換する第2ロッドインテグレータ25の構成を簡略化することができる。
【0047】
(9)偏光分離板22は、第1ロッドインテグレータ21の端面及び第3ロッドインテグレータ26の端面に対しそれぞれ接着剤により接着されるように構成されているので、第1ロッドインテグレータ21、偏光分離板22及び第3ロッドインテグレータ26の組付け構造が簡略化される。
【0048】
(10)また、本発明に係る投写型映像表示装置は、上記記載の照明装置1と、この照明装置1からの照明光束を映像情報に応じて変調する変調装置と、この変調装置により変調された映像光を投写する投写光学系とを備えているので、この照明装置1の後段に接続される機器が小型化され、全体としても小型化される。
【0049】
(変形例)
本発明は、上記実施の形態において以下のように変更することができる。
・前記実施の形態においては、第1ロッドインテグレータ21の光入射面に1個の光源ランプ10からの光束が入射されていたが、光源ランプ10を複数としてもよい。例えば、図7に示すように、二つの光源ランプ10からの照明光束を第1ロッドインテグレータ21の光入射面に同時に入射するように構成することもできる。このようにすれば、照明装置1の照度を向上させることができる。
【0050】
・また、この図7においては、照明光束を直接第1ロッドインテグレータ21の入射面に照射しているが、二つの光源ランプ10と第1ロッドインテグレータ21との間にミラーやレンズを設置し、反射や屈折を利用してそれぞれの光源ランプ10からの照明光束を第1ロッドインテグレータ21の入射面に導くようにしてもよい。
【0051】
・第1ロッドインテグレータ21、第2ロッドインテグレータ25及び第3ロッドインテグレータ26は、それぞれ中実のガラス製棒状部材として形成されているが、中空構造のもの、すなわちライトトンネルとも称される断面四辺形の外周4面をガラス製板材により構成し、その内面で光束を反射させるようにしたものとしてもよい。
【0052】
・投写型映像表示装置の光学系として、3板式の透過型液晶ライトバルブ7R,7G,7Bを用いたものとしているが、他の形式の光学系を用いたものとしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明に係る照明装置は、種々の照明装置に適用できる他、投写型映像表示装置などの発光量の大きい照明装置を使用する装置に幅広く使用することができる。
【符号の説明】
【0054】
1…照明装置、10…光源ランプ、20…導光装置、21…第1ロッドインテグレータ、22…偏光分離板、23…1/4λ板、24…全反射ミラー、25…第2ロッドインテグレータ、26…第3ロッドインテグレータ、27…低屈折率層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
照明光束を射出する光源ランプと、
光源ランプからの照明光束が導入される導光装置とを有し、
この導光装置は、光源ランプから射出された照明光束の面内光強度分布を均一化するための第1ロッドインテグレータと、第1ロッドインテグレータの斜め方向に切断された端面に設けられた偏光分離板と、この偏光分離板の表面に直交するように第1ロッドインテグレータに対し交差状に接続される第2ロッドインテグレータとからなり、
この第2ロッドインテグレータは、長さ方向の中間位置に1/4λ板を有するとともに、その第2ロッドインテグレータの先端端面には全反射ミラーが配置され、
前記第1ロッドインテグレータから伝播してくる照明光束は、この光束に含まれる直線偏光光のうち一方の直線偏光光が前記偏光分離板を透過し、他方の直線偏光光が前記偏光分離板により反射されて第2ロッドインテグレータに導かれ、
この第2ロッドインテグレータに導かれた直線偏光光は、前記1/4λ板を経由して前記全反射ミラーで反射されるとともに、前記1/4λ板を再度経由して前記偏光分離板へ照射されるように構成されている
ことを特徴とする照明装置。
【請求項2】
請求項1記載の照明装置において、前記偏光分離板の出射面側に導光部材としての第3ロッドインテグレータが設けられ、この第3ロッドインテグレータの端面と前記第1ロッドインテグレータの端面との間に前記偏光分離板が配置されるように構成されていることを特徴とする照明装置。
【請求項3】
前記第1ロッドインテグレータと前記第2ロッドインテグレータとが交差して接合される接合面には、第1ロッドインテグレータ及び第2ロッドインテグレータを構成する素材の屈折率より低い屈折率からなる低屈折率層が形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の照明装置。
【請求項4】
前記第1ロッドインテグレータ及び第2ロッドインテグレータは中実の棒状部材からなるとともに、その交差する接合面が低屈折率の材料からなる接着剤により接着され、この接着剤が前記低屈折率層を形成することを特徴とする請求項3記載の照明装置。
【請求項5】
前記第2ロッドインテグレータは、長さ方向中間位置において分断され、この分断面に1/4λ板が配置されるとともに、1/4λ板がこの分断面に接着剤により接着されていることを特徴とする請求項4記載の照明装置。
【請求項6】
前記偏光分離板は、前記第1ロッドインテグレータの端面及び第3ロッドインテグレータの端面に対しそれぞれ接着剤により接着されていることを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の照明装置。
【請求項7】
前記第1ロッドインテグレータの光入射面には複数の光源ランプからの照明光束が入射するように構成されていることを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載の照明装置。
【請求項8】
請求項1〜7の何れか1項に記載の照明装置と、この照明装置からの照明光束を映像情報に応じて変調する変調装置と、この変調装置により変調された映像光を投写する投写光学系とを備えていることを特徴とする投写型映像表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−227345(P2011−227345A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−98047(P2010−98047)
【出願日】平成22年4月21日(2010.4.21)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】