説明

熱交換器およびこれを備えた車両用空調装置

【課題】ヘッダータンクを形成するヘッダーパイプと偏平チューブとの接合強度およびヘッダーパイプ自体の強度を向上させるとともに、熱交換器のコンパクト化、軽量化、コストダウンおよび設計自由度の向上を図る。
【解決手段】ヘッダーパイプ7の径方向断面形状を非円形とし、該ヘッダーパイプ7の軸方向視で、ヘッダーパイプ7の外表面(7c面、7e面)と偏平チューブ3の外表面とが交差する表面交点C1における第1の挟み角θ1を120°以上の鈍角にし、かつヘッダーパイプ7の図心点C2と表面交点C1とを結ぶ連結線Lと、表面交点C1における偏平チューブ3の接線Tとがなす第2の挟み角θ2を80°以上104°以下に設定したことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘッダータンクと偏平チューブとの接合部における強度を向上させた熱交換器およびこれを備えた車両用空調装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両用空調装置のコンデンサやエバポレータ、エンジン冷却水を熱交換するラジエータ、ヒーターコア等の熱交換器として一般的な構造は、左右一対のヘッダータンクが平行に配置され、これら2つのヘッダータンクの間に、相互に間隔を保って平行かつヘッダータンクに対して直角に複数の偏平チューブが接合され、各偏平チューブの間に放熱フィンが設けられたものである。
【0003】
ヘッダータンクは、板金材料を折曲したり円筒状に丸めたりして形成されたヘッダーパイプによって形成される。下記特許文献1には、板金材料を折曲して形成した角パイプ状のヘッダーパイプでヘッダータンクを形成した例(図1、図2参照)と、板金材料を丸めて形成した丸パイプ状のヘッダーパイプでヘッダータンクを形成した例(図6参照)が開示されている。また、下記特許文献2には、丸パイプ状のヘッダーパイプでヘッダータンクを形成した例(図2参照)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−114199号公報
【特許文献2】特開2006−162116号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、角パイプ状に形成したヘッダーパイプでヘッダータンクを形成した場合には、ヘッダータンクの各面が平面状になるため、熱交換器の内圧上昇に伴い、これら各面が外方に膨らむ傾向が生じて耐圧性能が低くなる上に、ヘッダータンクの外面と偏平チューブの外面との交点における相対角度が直角、即ち鋭角に近くなるために、応力集中が大きくなり、熱交換器の内圧が高まった際においてこの部分から破壊に繋がる懸念があり、これを防止するにはヘッダータンク(ヘッダーパイプ)と偏平チューブの肉厚を大きくしなければならず、重量増加とコストアップに繋がる。
【0006】
一方、丸パイプ状に形成したヘッダーパイプでヘッダータンクを形成した場合には、ヘッダータンクの剛性が高くなるため、上述した耐圧性における懸念が無くなり、しかもヘッダータンクの外面と偏平チューブの外面との交点における相対角度が鈍角になるため、この部分における応力集中を低くすることができる。しかしその反面、曲面の加工や溶接等が困難になるため、ヘッダータンクの製造コストが高くなるという問題がある。
【0007】
しかも、平面視でヘッダータンクが円形になるため、例えばヘッダータンクの横幅を狭めて熱交換器のコンパクト化を図ることができず、設計自由度が低い。このような場合、丸パイプの代わりに楕円パイプ状のヘッダーパイプを用いてヘッダータンクを形成し、平面視でその楕円形断面の長径がヘッダータンク幅となるように配置すれば、ヘッダータンクの横幅を狭めて熱交換器のコンパクト化を図ることができる。しかしこうすると、角パイプ状のヘッダータンクの場合と同じく、ヘッダータンクの外面と偏平チューブの外面との交点における相対角度が鋭角に近くなるため、この接合部分から破壊の懸念が高まる。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、ヘッダーパイプと偏平チューブとの接合強度およびヘッダーパイプ自体の強度を向上させるとともに、コンパクト化、軽量化、コストダウンおよび設計自由度の向上を図ることのできる熱交換器およびこれを備えた車両用空調装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の熱交換器およびこれを備えた車両用空調装置は以下の手段を採用した。
即ち、本発明に係る熱交換器は、ヘッダータンクを形成する平行に配置された一対のヘッダーパイプと、該ヘッダーパイプの間に相互に間隔を保って平行に、かつ該ヘッダーパイプに対して直角に接合された複数の偏平チューブと、該偏平チューブに付設された放熱フィンを主体として構成された熱交換器において、前記ヘッダーパイプの径方向断面形状を非円形とし、該ヘッダーパイプの軸方向視で、該ヘッダーパイプの外表面と前記偏平チューブの外表面とが交差する表面交点における第1の挟み角を鈍角にし、かつ前記ヘッダーパイプの図心点と前記表面交点とを結ぶ連結線と、前記表面交点における前記偏平チューブの接線とがなす第2の挟み角を80°以上104°以下に設定したことを特徴とする。
【0010】
発明者らの実験解析によれば、上記のように、ヘッダーパイプの外表面と偏平チューブの外表面とが交差する表面交点における第1の挟み角を鈍角にし、かつヘッダーパイプの図心点と表面交点とを結ぶ連結線と、表面交点における偏平チューブの接線とがなす第2の挟み角を104°以下に設定した場合、ヘッダーパイプと偏平チューブとの接合強度を目標値よりも高くすることができる。上記第2の挟み角は小さい程、接合強度を向上させることができるが、80°以下にすると、ヘッダーパイプと偏平チューブの干渉が起きる。このため、第2の挟み角を80°以上104°以下に設定することにより、ヘッダーパイプとして丸パイプを用いなくても、ヘッダーパイプと偏平チューブの接合強度を最も高い範囲に設定し、しかもヘッダーパイプと偏平チューブとの干渉を防ぐことができる。
【0011】
こうして、丸パイプ状のヘッダーパイプを用いずにヘッダータンクを形成することができ、熱交換器の製造コストを低減することができる。また、ヘッダータンクの断面形状を円形状以外の形状に形成できるため、熱交換器の設計自由度が大きく向上する。
【0012】
上記構成において、前記ヘッダーパイプの径方向断面における寸法を、前記偏平チューブの長手方向に沿う方向の寸法が、前記偏平チューブの長手方向に直交する方向の寸法よりも短くなるようにしてもよい。こうした場合、ヘッダーパイプの横幅を狭めて熱交換器のコンパクト化と軽量化を図ることができる。こうすれば、ヘッダータンクの内部に貯留される放熱液の量が大幅に減るため、熱交換器全体としての軽量化効果が高い。
【0013】
また、上記構成においては、前記ヘッダーパイプを、径方向断面形状が略U字形をなす2本のパイプ半体を互いに対向する向きで接合して形成するのが好ましい。本構成によれば、パイプ材を使用せずに、板金材料を成型してヘッダーパイプ(ヘッダータンク)を形成できるため、熱交換器のコストダウンを図ることができる。
【0014】
さらに、上記構成において、前記ヘッダーパイプを、多角形断面パイプとすることが好ましい。こうすれば、ヘッダータンクの剛性を高めることができる。
【0015】
また、上記構成において、多角形断面パイプである前記ヘッダーパイプを、その径方向断面において、前記表面交点のある面が、径方向外側または内側に湾曲するR形状断面となるようにしてもよい。これにより、ヘッダーパイプの剛性を高めるとともに、ヘッダーパイプと偏平チューブとの接合強度を高めることができる。
【0016】
また、上記構成において、前記パイプ半体を、前記偏平チューブが固定される内側パイプ半体と、この内側パイプ半体の外側に接合される外側パイプ半体としてもよい。本構成により、内側パイプ半体に偏平チューブ差し込み用の開口部(スリット穴)を形成しやすくするとともに、内側パイプ半体と偏平チューブの接合作業を容易にすることができる。
【0017】
さらに、上記構成において、前記外側パイプ半体は、その一対の接合代が、前記内側パイプ半体の一対の接合代の内側に接合され、かつこの外側パイプ半体の接合代には、前記偏平チューブとの干渉を避ける切欠部が設けられていることを特徴とする。これにより、ヘッダータンクの、特に幅方向の寸法のコンパクト化と、熱交換器の軽量化を図ることができる。
【0018】
そして、本発明に係る車両用空調装置は、上記の各構成の熱交換器を備えたことを特徴とする。これにより、車両振動や、熱、風雨等により壊れやすい熱交換器を丈夫に形成するとともに、軽量化とコスダウンに貢献することができる。
【発明の効果】
【0019】
以上のように、本発明に係る熱交換器およびこれを備えた車両用空調装置によれば、熱交換器を構成するヘッダーパイプと偏平チューブとの接合強度およびヘッダーパイプ自体の強度を向上させるとともに、コンパクト化、軽量化およびコストダウンを図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明を適用可能な熱交換器の一例であるコンデンサを示す外観斜視図である。
【図2】図1に示すコンデンサのヘッダータンクの構造例を示す斜視図である。
【図3】本発明の第1実施形態を示す、ヘッダーパイプと偏平チューブとの接合部における横縦断面図である。
【図4】ヘッダーパイプの図心点と表面交点とを結ぶ連結線と、表面交点における偏平チューブの接線とがなす挟み角と、破壊圧力との関係をグラフで示す図である。
【図5】本発明の第2実施形態を示す、ヘッダーパイプと偏平チューブとの接合部における横縦断面図である。
【図6】本発明の第3実施形態を示す、ヘッダーパイプと偏平チューブとの接合部における横縦断面図である。
【図7】本発明の第4実施形態を示す、ヘッダーパイプと偏平チューブとの接合部における斜視断面図である。
【図8】本発明の第4実施形態を示す、ヘッダーパイプと偏平チューブとの接合部における横縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る熱交換器の複数の実施形態について、図1〜図8を参照しながら説明する。なお、以下の説明では、熱交換器の一例として、車両空調装置のコンデンサに本発明が適用された例について説明する。
【0022】
〔第1実施形態〕
図1は、本発明の第1実施形態に係るコンデンサを示す外観斜視図である。このコンデンサ1は、一般的なレイアウトを持つものであり、縦方向に延びる左右一対のヘッダータンク2L,2Rと、このヘッダータンク2L,2R間を連結し、相互に上下間隔を保って平行に、かつヘッダータンク2L,2Rに対して直角に接合された複数の偏平チューブ3と、これらの偏平チューブ3に付設されたコルゲート状の放熱フィン4を主体として構成されている。これらの部材は、例えば熱伝導性の良いアルミニウム系の材料で形成されている。
【0023】
図2に示すように、ヘッダータンク2L,2Rは、ヘッダーパイプ7の上下開口部をエンドプレート8で気密的に閉塞して構成された圧力タンクであり、ヘッダータンク2L,2Rの、互いに対向する面(内側面)には、偏平チューブ3が差し込まれる多数のスリット穴9が穿設されている。これらのスリット穴9に偏平チューブ3の端部が挿入されてロウ付け等の接合手段により固定され、スリット穴9と偏平チューブ3との間の気密性が保たれると同時に、コンデンサ1としての強度が確保される。なお、ヘッダータンク2L,2Rの内部空間は図示しない複数の仕切り板によって上下数段の部屋に区画されている。
【0024】
例えばヘッダータンク2Lには、その下部に流入ポート11、上部に流出ポート12が設けられている。流入ポート11にはコンプレッサ(非図示)側に繋がる高圧ホースが接続され、流出ポート12にはコンプレッサ(非図示)側に繋がる低圧ホースが接続される。なお、ヘッダータンク2Rにはドライヤおよびストレーナが内蔵されたレシーバ13が一体に付設されているが、このレシーバ13はコンデンサ1とは別体に設けてもよい。
【0025】
冷媒は、コンプレッサで圧縮されてからコンデンサにより凝縮され、液相状となって流入ポート11からヘッダータンク2Lの下段の部屋に流入し、偏平チューブ3を通ってヘッダータンク2Rの下段から中段の部屋に流入し、再び偏平チューブ3を通ってヘッダータンク2Lの中段の部屋に流入し、このように2つのヘッダータンク2L,2R間を行き来して最後に流出ポート12から流出する。
【0026】
冷媒は図示しないエバポレータの内部で気化して気相状になり、これにより気化熱が奪われてエバポレータが冷却され、図示しないブロアファンにより送風された空気がエバポレータを通過することにより冷やされて車内に送られる。冷媒はコンプレッサにより10気圧以上に圧縮された状態でコンデンサ1に流入するため、コンデンサ1には高い気密性と耐圧性が要求される。
【0027】
図3は、ヘッダーパイプ7と偏平チューブ3との接合部における横縦断面図である。ここに示すように、ヘッダーパイプ7は、径方向断面形状が略U字形(又は略C字形)をなす内側パイプ半体7Aと、この内側パイプ半体7Aの外側に接合される略U字形(略C字形)の外側パイプ半体7Bとが互いに対向する向きでロウ付け等の接合手段により接合されて形成されている。偏平チューブ3が差し込まれるスリット穴9は内側パイプ半体7Aの方に形成されており、内側パイプ半体7Aの一対の接合代15の内側に、外側パイプ半体7Bの一対の接合代16が接合される構造である。
【0028】
また、ヘッダーパイプ7は、その径方向断面形状が非円形であり、例えば6つの面7a,7b,7c,7d,7e,7fを有する多角形断面パイプ状に形成されている。そして、その縦横寸法は、偏平チューブ3の長手方向に沿う方向のY寸法が、偏平チューブ3の長手方向に直交する方向のX寸法よりも短く設定されている。もちろん、偏平チューブ3の幅寸法は上記X寸法よりも小さい。なお、ヘッダーパイプ7の前面である7b面と、後面である7f面は互いに平行する面であり、外側面である7a面と内側面である7d面は外方に膨出するように緩やかに湾曲している。また、7c面と7e面は平坦面である。
【0029】
本発明において、ヘッダーパイプ7の軸方向視で、ヘッダーパイプ7の外表面(7c面、7e面)と偏平チューブ3の外表面とが交差する表面交点C1における挟み角θ1(第1の挟み角)は120°以上の鈍角にされている。また、ヘッダーパイプ7の図心点C2、即ちX寸法の半分の位置を通る鉛直線とY寸法の半分の位置を通る水平線とが交差する点と、上記表面交点C1とを結ぶ連結線Lを想定した場合、この連結線Lと、上記の表面交点C1における偏平チューブ3の接線Tとがなす挟み角θ2(第2の挟み角)が、80°以上104°以下になるように、ヘッダーパイプ7の断面形状および表面交点C1の位置が設定されている。本実施形態では、表面交点C1がヘッダーパイプ7の7c面と7e面に位置しており、挟み角θ2が90°となっている。
【0030】
このように、ヘッダーパイプ7の外表面(7c面、7e面)と偏平チューブ3の外表面とが交差する表面交点C1における挟み角θ1を120°以上の鈍角にし、かつヘッダーパイプ7の図心点C2と表面交点C1とを結ぶ連結線Lと、表面交点C1における偏平チューブ3の接線Tとがなす挟み角θ2を104°以下に設定した場合、ヘッダーパイプ7と偏平チューブ3との接合強度を高めることができる。
【0031】
図4は、ヘッダーパイプ7の図心点C2と表面交点C1とを結ぶ連結線Lと、表面交点C1における偏平チューブ3の接線Tとがなす挟み角θ2と、破壊圧力との関係をグラフで示す図である。本発明者らは、このグラフに示すように、上記形状のコンデンサ1において、表面交点C1における破壊圧力の目標値を1.00とし、挟み角θ2を80°から110°の範囲で変更した場合に、各々の角度において実際に破壊の兆候が起きる圧力を解析してみた。その結果、挟み角θ2が104°の時に目標値の1.00を達成し、以後、挟み角θ2が狭まるにつれて接合強度が向上して破壊圧力が高まることを解明した。
【0032】
このように、挟み角θ2が104°から小さくなる程、ヘッダーパイプ7と偏平チューブ3の接合強度を向上させることができるが、挟み角θ2が80°以下になると、ヘッダーパイプ7を構成する外側パイプ半体7Bと偏平チューブ3との干渉が起こる。このため、挟み角θ2を80°以上104°以下に設定することにより、ヘッダーパイプ7として丸パイプを用いなくても、ヘッダーパイプ7と偏平チューブ3の接合強度を最も高い範囲に設定し、しかもヘッダーパイプ7と偏平チューブ3との干渉を防ぐことができる。
【0033】
以上のようにコンデンサ1を構成することにより、丸パイプ状のヘッダーパイプを用いずにヘッダータンク2L,2Rを形成することができるため、コンデンサ1の製造コストを低減することができる。また、ヘッダータンク2L,2Rの断面形状を円形状以外の形状に形成できるため、コンデンサ1の設計自由度を向上させることができる。特に本実施形態では、ヘッダーパイプ7を多角形断面パイプ状に形成したため、ヘッダータンク2L,2Rとしての剛性を格段に高めることができる。
【0034】
しかも、ヘッダーパイプ7の径方向断面におけるY寸法がX寸法よりも短く設定されているため、ヘッダーパイプ7の横幅を狭めてコンデンサ1のコンパクト化と軽量化を図り、車両用空調装置への設置を容易にすることができる。こうすれば、ヘッダータンク2L,2Rの内部に貯留される冷媒の量を大幅に減らすことができるため、コンデンサ1全体としての軽量化効果が高い。
【0035】
また、ヘッダーパイプ7が、径方向断面形状が略U字形をなす内側パイプ半体7Aと、この内側パイプ半体7Aの外側に接合される略U字形の外側パイプ半体7Bとを接合して形成されているため、パイプ材を使用せずに、板金材料を成型してヘッダーパイプ7(ヘッダータンク2L,2R)を形成することができる。このため、コンデンサ1の製造コストダウンを図ることができる。
【0036】
しかも、内側パイプ半体7Aと外側パイプ半体7Bとを接合してヘッダーパイプ7を形成することにより、内側パイプ半体7Aに偏平チューブ3差し込み用のスリット穴9を容易に加工形成することができる。つまり、曲げ加工を施す前の平板材料にスリット穴9を加工形成してから曲げ加工を施して内側パイプ半体7Aを完成させる加工順序とすれば、スリット穴9の形成が容易になる。また、内側パイプ半体7Aと外側パイプ半体7Bとを接合する前に、内側パイプ半体7Aのスリット穴9に偏平チューブ3を接合することができるため、ロウ付け等による偏平チューブ3の接合作業を容易にすることができる。
【0037】
〔第2実施形態〕
図5は、本発明の第2実施形態を示す、ヘッダーパイプ7と偏平チューブ3との接合部における横縦断面図である。この図5に示すコンデンサ21は、そのヘッダーパイプ7の断面形状が若干異なる点以外は、第1実施形態に示すコンデンサ1と同様な構成であるため、各部に同符号を付して説明を省略する。
【0038】
このコンデンサ21において、多角形断面パイプであるヘッダーパイプ7における偏平チューブ3の外表面と交差する表面交点C1のある面、即ち7c面と7e面は、径方向外側に膨らむように湾曲するR形状断面となっている。このように、表面交点C1のある7c面と7e面を外側に膨らむR形状断面とすることにより、ヘッダーパイプ7の剛性を高めるとともに、ヘッダーパイプ7と偏平チューブ3との接合強度を高めることができる。
【0039】
〔第3実施形態〕
図6は、本発明の第3実施形態を示す、ヘッダーパイプ7と偏平チューブ3との接合部における横縦断面図である。この図6に示すコンデンサ31も、そのヘッダーパイプ7の断面形状が若干異なる点以外は、第1実施形態に示すコンデンサ1と同様な構成であるため、各部に同符号を付して説明を省略する。
【0040】
このコンデンサ31において、多角形断面パイプであるヘッダーパイプ7における偏平チューブ3の外表面と交差する表面交点C1のある面、即ち7c面と7e面は、径方向内側に凹むように湾曲するR形状断面となっている。このようにすることにより、第3実施形態の場合と同じく、ヘッダーパイプ7の剛性を高めるとともに、ヘッダーパイプ7と偏平チューブ3との接合強度を高めることができる。
【0041】
特に、このコンデンサ31では、第1実施形態および第2実施形態のコンデンサ1,21に比べて、ヘッダーパイプ7の外表面(7c面、7e面)と偏平チューブ3の外表面とが交差する表面交点C1における挟み角θ1を大きくすることができる上に、ヘッダーパイプ7の図心点C2と表面交点C1とを結ぶ連結線Lと、上記表面交点C1における偏平チューブ3の接線Tとがなす挟み角θ2を小さくすることができるため、ヘッダーパイプ7と偏平チューブ3の接合強度を高めることができる。
【0042】
〔第4実施形態〕
図7は、本発明の第4実施形態を示す、ヘッダーパイプ7と偏平チューブ3との接合部における斜視断面図であり、図8は同じく接合部における横縦断面図である。この図7および図8に示すコンデンサ41は、ヘッダーパイプ7を形成する外側パイプ半体7Bの接合代16に、偏平チューブ3との干渉を避ける切欠部42が設けられている点以外は、第1実施形態に示すコンデンサ1と同様な構成であるため、各部に同符号を付して説明を省略する。
【0043】
このように、外側パイプ半体7Bの接合代16に、偏平チューブ3との干渉を避ける切欠部42を設けたことにより、ヘッダーパイプ7のX寸法およびY寸法を小さくしても、外側パイプ半体7Bの接合代16に偏平チューブ3の先端部が干渉することを防止することができる。これにより、ヘッダータンク2L,2RのX寸法およびY寸法のコンパクト化と、コンデンサ41の軽量化を図ることができる。
【0044】
そして、以上のように構成されたコンデンサ1〜41を車両用空調装置に用いることにより、車両振動や、熱、風雨等により壊れやすいコンデンサを丈夫に形成するとともに、軽量化とコスダウンに貢献することができる。なお、本発明の技術範囲は、上記の各実施形態の態様のみに限定されないことは言うまでもなく、例えば各実施形態の態様を組み合わせる等してもよい。また、コンデンサのみならず、エバポレータ、ラジエータ、オイルクーラ、インタークーラ、ヒーターコア等、各種の熱交換器にも本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0045】
1,21,31,41 コンデンサ(熱交換器)
2L,2R ヘッダータンク
3 偏平チューブ
4 放熱フィン
7 ヘッダーパイプ
7A 内側パイプ半体
7B 外側パイプ半体
15 内側パイプ半体の接合代
16 外側パイプ半体の接合代
42 切欠部
C1 表面交点
C2 ヘッダーパイプの図心点
L 連結線
T 接線
X ヘッダーパイプの偏平チューブ長手方向に直交する方向の寸法
Y ヘッダーパイプの偏平チューブ長手方向に沿う方向の寸法
θ1 挟み角(第1の挟み角)
θ2 挟み角(第2の挟み角)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘッダータンクを形成する平行に配置された一対のヘッダーパイプと、該ヘッダーパイプの間に相互に間隔を保って平行に、かつ該ヘッダーパイプに対して直角に接合された複数の偏平チューブと、該偏平チューブに付設された放熱フィンを主体として構成された熱交換器において、
前記ヘッダーパイプの径方向断面形状を非円形とし、該ヘッダーパイプの軸方向視で、該ヘッダーパイプの外表面と前記偏平チューブの外表面とが交差する表面交点における第1の挟み角を鈍角にし、かつ前記ヘッダーパイプの図心点と前記表面交点とを結ぶ連結線と、前記表面交点における前記偏平チューブの接線とがなす第2の挟み角を80°以上104°以下に設定したことを特徴とする熱交換器。
【請求項2】
前記ヘッダーパイプの径方向断面における寸法は、前記偏平チューブの長手方向に沿う方向の寸法が、前記偏平チューブの長手方向に直交する方向の寸法よりも短いことを特徴とする請求項1に記載の熱交換器。
【請求項3】
前記ヘッダーパイプは、径方向断面形状が略U字形をなす2本のパイプ半体が互いに対向する向きで接合されて形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の熱交換器。
【請求項4】
前記ヘッダーパイプは、多角形断面パイプであることを特徴とする請求項3に記載の熱交換器。
【請求項5】
多角形断面パイプである前記ヘッダーパイプは、その径方向断面において、前記表面交点のある面が、径方向外側または内側に湾曲するR形状断面であることを特徴とする請求項4に記載の熱交換器。
【請求項6】
前記パイプ半体は、前記偏平チューブが固定される内側パイプ半体と、この内側パイプ半体の外側に接合される外側パイプ半体であることを特徴とする請求項3から5のいずれかに記載の熱交換器。
【請求項7】
前記外側パイプ半体は、その一対の接合代が、前記内側パイプ半体の一対の接合代の内側に接合され、かつこの外側パイプ半体の接合代には、前記偏平チューブとの干渉を避ける切欠部が設けられていることを特徴とする請求項6に記載の熱交換器。
【請求項8】
請求項1から7のいずれかに記載の熱交換器を備えた車両用空調装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−102928(P2012−102928A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−250961(P2010−250961)
【出願日】平成22年11月9日(2010.11.9)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】