説明

熱交換器及びそれを用いたヒートポンプ給湯機

【課題】熱交換性能に優れた熱交換器を提供すること。
【解決手段】1次流体が流れる配管101と、2次流体が流れる配管112とを備え、前記2次流体が流れる配管112は複数本で、かつ、前記1次流体が流れる配管101内に配設されるとともに、前記2次流体が流れる配管112の長手方向の軸に対する直角断面が、楕円形状であることを特徴とする熱交換器で、1次流体が流れる配管101と前記2次流体が流れる配管112との隙間を確保しながら、前記2次流体が流れる配管112の断面積を大きくすることができるため、前記2次流体が流れる配管112の内表面積及び外表面積を大きくすることができ、前記2次流体が流れる配管112の伝熱性能を向上させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒートポンプ給湯機における熱交換器の構成に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図7は、従来の水−冷媒熱交換器の局部断面図、図8は断面の詳細図である。
【0003】
従来の水−冷媒熱交換器は、2本の中径管11、12を互いに密着させながら絡み合うように螺旋状にねじり合わせて構成する。
【0004】
これにより、大径管10内を流れる流体と中径管内を流れる流体は螺旋状に乱流化され、伝熱促進が図れ、熱交換効率の高い熱交換器がえられるというものである(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−291684号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の構成では、大径管10内に中径管11、12を挿入し、製造するため、図8において、大径管10の内面と中径管11、12の外面の最接近する隙間部分19は、隙間を確保する必要がある。
【0007】
特に、従来の構成は、中径管11、12の断面が略円形であるため、中径管11、12の断面積を大きくしすぎると、最接近する隙間部分19が確保できず、大径管10に中径管11、12を挿入することができず、製作不可になってしまうという課題を有していた。
【0008】
また、最接近する隙間部分19を確保すると、中径管11、12の断面積は大きくすることができず、大径管内の流体が流れる部分17の断面積を減らすことができない。
【0009】
したがって、大径管内を流れる流体の流速を向上させることができず、熱伝達率に限界があり、能力を向上させることができないという課題を有していた。
【0010】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、熱交換性能に優れた熱交換器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記従来の課題を解決するために、本発明の熱交換器は、1次流体が流れる配管と、2次流体が流れる配管とを備え、前記2次流体が流れる配管は複数本で、かつ、前記1次流体が流れる配管内に配設されるとともに、前記2次流体が流れる配管の長手方向の軸に対する直角断面が、楕円形状であることを特徴とするもので、1次流体が流れる配管と前記2次流体が流れる配管との隙間を確保しながら、前記2次流体が流れる配管の断面積を大きくすることができるため、前記2次流体が流れる配管の内表面積及び外表面積を大きくすることができ、前記2次流体が流れる配管の伝熱性能を向上させることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、熱交換性能に優れた熱交換器を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1の実施の形態における熱交換器の平面図
【図2】本発明の第1の実施の形態における熱交換器の側面図
【図3】図2のA―A断面図
【図4】本発明の第2の実施の形態における中径管の中心軸に直角方向の断面図
【図5】図4の中径管を90度回転した場合の断面図
【図6】本発明の第2の実施の形態における中径管の中心軸上で分割した詳細断面図
【図7】従来の水−冷媒熱交換器の局部断面図
【図8】従来の水−冷媒熱交換器の詳細断面図
【発明を実施するための形態】
【0014】
第1の発明は、1次流体が流れる配管と、2次流体が流れる配管とを備え、前記2次流体が流れる配管は複数本で、かつ、前記1次流体が流れる配管内に配設されるとともに、前記2次流体が流れる配管の長手方向の軸に対する直角断面が、楕円形状であることを特徴とする熱交換器で、1次流体が流れる配管と前記2次流体が流れる配管との隙間を確保しながら、前記2次流体が流れる配管の断面積を大きくすることができるため、前記2次流体が流れる配管の内表面積及び外表面積を大きくすることができ、前記2次流体が流れる配管の伝熱性能を向上させることができる。
【0015】
第2の発明は、1次流体が流れる配管を大径菅、2次流体が流れる配管を小径菅、前記小径管の外周に密着させた配管を中径管とし、前記中径管は複数本で互いに螺旋状にねじり合わせて構成され、前記中径菅を大径管に挿入する際、複数本の中径管に外接する円の直径が最小になるように配置したことを特徴とするもので、中径管を軸直角の断面が楕円形状に変形させ、複数本の中径管をねじり合わせることで、中径管の表面積を最大限に大きくした状態で、大径管に挿入することできる。
【0016】
第3の発明は、中径管の外表面に多数の凹みを設けたことを特徴とするもので、中径管表面を流れる流体の流れを乱流にすることができ、伝熱性能を向上させることができ、熱交換器の効率を向上させることができる。
【0017】
第4の発明は、中径管の外表面に設けた凹みの深さは、短径方向の凹みより長径方向の凹みの方が深いことを特徴とするもので、複数の中径管を絡み合うようにねじり合わせる際に、楕円管の短径方向に潰れる力が加わっても、短径方向の凹みを深くすることで、強度を確保することができ、中径管が潰れて小径管の流路を閉塞することなく加工できる。
【0018】
また、凹みを深くすることで、さらに乱流促進を図ることができ、ねじりによる乱流促進を活かすことができ、熱伝達率を向上させることができる。
【0019】
第5の発明は、水出口付近の大径管の内径が、水入口付近の大径管の内径より大きくすることで、高温で析出しやすいスケールが付着しても詰まりにくく、長時間の使用に耐えることができる。
【0020】
第6の発明は、第1〜5のいずれかの発明の熱交換器を備えたヒートポンプ給湯機で、高効率のヒートポンプ給湯機を提供できる。
【0021】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0022】
(実施の形態1)
本発明の第1の実施の形態について、図1〜図3を用いて説明する。図1は平面図、図2は側面図、図3は、A−A断面での断面図である。
【0023】
図1、図2において、100は水冷媒熱交換器、101、102は大径管、193は冷媒側入口、194は冷媒側の出口、191は水側の入口、192は水側の出口である。また、Aは大径管101と大径管102の接続部である。
【0024】
図3において、111は中径管、112は小径管、D1は中径管111の長径、D2は中径管111の短径、151は水流路、152は冷媒流路、130は2本の中径管111に外接する円を示す。
【0025】
以上のように構成された水冷媒熱交換器について、以下の動作、作用を説明する。
【0026】
図1、図2において、1次流体である低温の水は、水入口191から流入し、大径管101、102内を通り、水出口192より流出する。
【0027】
一方、2次流体である冷媒(例えば、二酸化炭素)は、ヒートポンプサイクル(図示せず)にて加熱された高温の冷媒が、冷媒入口193から流入し、大径管101、102に挿入された小径管112内を通り、冷媒出口194より流出する。大径管101と102とは、接続部Aで接続されており、大径管102の内径は、大径管101の内径より大きい管で構成されている。なお、この水冷媒熱交換器にて生成されたお湯が、例えば、床暖房や給湯等に利用される。
【0028】
図3において、中径管111と小径管112とは、その断面が長径D1と短径D2からなる楕円形で形成されている。大径管101、102内を流れる低温の流体は流路151を通り、また、小径管112内を流れる高温の流体は流路152を通る。
【0029】
中径管111を楕円にすることは、2本の中径管111に外接する円の直径130を維持しながら、言い換えると、大径管101との隙間を確保しながら、短径D2より長径D1を長くすることができ、その分、中径管111の断面積を大きくすることができる。
【0030】
これにより、小径管112の内表面積及び中径管111の外表面積を大きくすることができ、小径管内面の伝熱性能及び中径管外面の伝熱性能を向上させることができる。
【0031】
また、小径管112の断面積を大きくできることで、小径管112内を流れる高温の流体の流速を遅くでき、圧力損失を低減でき、伝熱性能を向上させることができる。
【0032】
また、大径管101内を流れる低温の流体の流路151を小さくすることができ、流速を増大させることが可能となり、中径管111の外表面の熱伝達率を向上させることができる。
【0033】
また、大径管101の内径より大径管102の内径を大きくすることは次のような効果を可能とする。低温の水は、水入口191から入り、小径管内を通る高温の流体と熱交換しながら徐々に温度が上昇し、水出口192付近ではかなりの高温になる。水が高温になると、低温では溶け込むことができたスケール成分(例えば、カルシウムやマグネシウムなど)は、高温では固体となって析出してしまう。
【0034】
析出したスケールは、中径管111の外表面や大径管102の内表面に付着し、水が通過する際の圧力損失を増大させてしまう。ここで、大径管101の内径よりも高温部に使
用する水管の内径を大きくした大径管102を用いることで、スケールが多少付着しても圧力損失の急激な上昇を抑制でき、長期間の使用に耐える水冷媒熱交換器を有することができる。
【0035】
(実施の形態2)
本発明の第2の実施の形態について、図4〜図6を用いて説明する。第2の実施の形態は、実施の形態1で説明した中径管の表面に凹みを設けたことを特徴とし、その凹みが短径側の凹みより、長径側の凹みを深くしたことを特徴とするものである。
【0036】
図4〜図6において、図4は中径管の中心軸に直角方向の断面図、図5は図4を90度回転した中径管の断面図、図6は中径管の中心軸上で分割した断面の詳細図を示す。
【0037】
図4、図5において、111は中径管、112は小径管、152は小径管内を流れる低温の流体の流路、131は長径方向に設けた凹み、132は短径方向に設けた凹み、H1は長径方向の凹みの深さ、H2は短径方向の凹みの深さ、141は短径方向に加わる力を示す。図6において、2本の中径管111をねじり合わせ、大径管101内に挿入した状態を示す。
【0038】
以上のように構成された水冷媒熱交換器について、以下の動作、作用を説明する。
【0039】
図4、5において、中径管111の表面には、凹み131と132があり、凹み131は長径方向に設けた凹みで、深さH1を有しており、凹み132は短径方向に設けた凹みで、深さH2を有している。この深さは、短径方向の凹みの深さH2より、長径方向の凹みの深さH1を大きくしている。
【0040】
ここで、図6に示すような中径管をねじり合わせる加工を施した際に、短径方向の力141が生じ、中径管111はつぶれようとするが、H1の深さが深いことで短径方向の力141が加わっても耐えることができ、つぶれることなく所定の小径管内の流路152を確保しながら、製造が可能となる。
【0041】
また、長径方向の凹みの深さH1を深くすることで、小径管112内を通る流体の圧力損失の増加を抑制しながら、中径管の外表面の熱伝達率の向上を図ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0042】
以上のように、本発明に係る熱交換器は、ヒートポンプサイクルと給湯サイクルが一体に構成された一体型ヒートポンプ給湯機、別体に構成された分離型ヒートポンプ給湯機、給湯用熱交換器で加熱したお湯をそのまま出湯できる直接出湯型ヒートポンプ給湯機などの各種ヒートポンプ給湯機の水―冷媒熱交換器に適用でき、給湯機能のほかに、浴槽給湯、暖房機能、乾燥機能を有するヒートポンプ装置にも適用できる。
【符号の説明】
【0043】
100 水冷媒熱交換器
101、102 大径管
111 中径管
112 小径管
121 水入口管
122 水出口管
131 冷媒入口管
132 冷媒出口管
141 中径管が短径方向に受ける力
151 大径管内を流れる流体の流路
152 小径管内を流れる流体の流路
191、192 水の流れ方向
193、194 冷媒の流れ方向
D1 長径
D2 短径
H1、H2 凹みの深さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1次流体が流れる配管と、2次流体が流れる配管とを備え、前記2次流体が流れる配管は複数本で、かつ、前記1次流体が流れる配管内に配設されるとともに、前記2次流体が流れる配管の長手方向の軸に対する直角断面が、楕円形状であることを特徴とする熱交換器。
【請求項2】
1次流体が流れる配管を大径菅、2次流体が流れる配管を小径菅、前記小径管の外周に密着させた配管を中径管とし、前記中径管は複数本で互いに螺旋状にねじり合わせて構成され、前記中径菅を大径管に挿入する際、複数本の中径管に外接する円の直径が最小になるように配置したことを特徴とする請求項1に記載の熱交換器。
【請求項3】
中径管の外表面に多数の凹みを設けたことを特徴とする請求項2に記載の熱交換器。
【請求項4】
中径管の外表面に設けた凹みの深さは、短径方向の凹みより長径方向の凹みの方が深いことを特徴とする請求項3に記載の熱交換器。
【請求項5】
1次流体を水とし、水出口付近の配管の内径は、水入口付近の配管の内径より大きいことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の熱交換器。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の熱交換器を備えたヒートポンプ給湯機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−179763(P2011−179763A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−45155(P2010−45155)
【出願日】平成22年3月2日(2010.3.2)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】