説明

熱交換器

【課題】高温流体との熱交換による低温流体の流動抵抗の増加を抑制することができる熱交換器を得る。
【解決手段】排気熱回収用熱交換器10では、高温流体である排気ガスを流通させるための排気ガス熱交換路38と、排気ガスと熱交換を行う低温流体であるエンジン冷却水を流通するための冷却水熱交換路44とが隣接して設けられている。冷却水熱交換路44は、エンジン冷却水の流れ方向の上流側から下流側に向けて流路断面積が連続的に拡大されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動車等の排気ガスと冷却液との熱交換を行って排気熱を回収するための排気熱回収器等に適用される熱交換器に関する。
【背景技術】
【0002】
排気ガスの排気系路中に該排気ガスと冷却水との熱交換器を配設した技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。この技術では、排気ガスが流通する複数の直管状の管体を周囲から覆う直管状のシェル内に形成された冷却水路を、冷却水が排気ガスと同じ向きに流通しつつ排気熱を回収するようになっている。
【特許文献1】特開2004−293395号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記の如き従来の技術では、排気ガスから受熱した冷却水が膨張して通水抵抗が増大する問題があった。
【0004】
本発明は、上記事実を考慮して、高温流体との熱交換による低温流体の流動抵抗の増加を抑制することができる熱交換器を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1記載の発明に係る熱交換器は、高温流体を流通させるための高温側流路と、内部を流通する低温流体と前記高温側流路を流通する高温流体との熱交換可能に該高温側流路に隣接して設けられ、かつ前記低温流体の流れ方向の上流側から下流側に向けて流路断面積が連続的又は段階的に拡大されている低温側流路と、を備えている。
【0006】
請求項1記載の熱交換器では、高温流体と低温流体との熱交換によって、高温流体が冷却される(放熱する)と共に低温流体が加熱される(受熱する)。この加熱によって低温流体は体積膨張する。ここで、低温流体が流通する冷温側流路は、低温流体の上流から下流に向けて連続的又は段階的に流路断面積が拡大する形状(テーパ形状等)であるため、低温流体の体積膨張による流動抵抗の増加が抑制される。
【0007】
このように、請求項1記載の熱交換器では、高温流体との熱交換による低温流体の流動抵抗の増加を抑制する(流動抵抗の低減を図る)ことができる。一方、高温流体は、放熱によって体積が縮小されるので、流動抵抗の増加が問題となることはない。なお、低温流体の流れ方向の上流側から下流側に向けて流路断面積が連続的又は段階的に拡大されているとの要件は、低温流体の流れ方向の途中に上流側よりも下流側の流路断面積が小さくなる部分が形成されないように低温流体の流れ方向の上流側から下流側に向けて流路断面積を拡大することを示し、流路断面積の増加割合は一定であって不定であっても良い。したがって、例えば、低温側流路の流路壁は、断面視で流れ方向に対し傾斜した直線状であっても良く、傾斜角の変化点を有する折れ線状であっても良く、曲線状であっても良く、階段状であっても良い。
【0008】
請求項2記載の発明に係る熱交換器は、請求項1記載の熱交換器において、前記高温側流路は、前記低温流体の流れ方向の上流側から下流側に向けて流路断面積が連続的又は段階的に縮小されている。
【0009】
請求項2記載の熱交換器では、低温側流路は、隔壁(管壁等)を介して隣接する高温側流路側に張り出すようにして下流側に向けて流路断面積を拡大しているため、全体として大型化することがない。したがって例えば、外郭部(シェル等)の外径を一定に保ちながら、下流側に向けて低温側流路の流路断面積を拡大することができる。
【0010】
請求項3記載の発明に係る熱交換器は、請求項2記載の熱交換器において、前記低温流体の流れ方向と前記高温流体の流れ方向とが同じ向きである。
【0011】
請求項3記載の熱交換器では、低温流体と高温流体とが同じ方向に流れる(高温流体と低温流体とで上下流側が一致する)並行流型熱交換を構成しているため、低温側流の流路断面積が上流側から下流側に向けて連続的又は段階的に拡大する一方、高温側流路は、上流から下流に向けて流路断面積が連続的又は段階的に減少している。これにより、高温側流路は、高温流体が高温である(相対的に体積が大きい)上流側の流路断面が大きく、熱交換に伴い体積が縮小する下流側に向け流路断面が徐々に縮小するので、低温側流路が高温側流路の張り出すことに伴う高温側流動抵抗の増加が防止される。すなわち、熱交換器全体の大きさを維持すると共に高温流体の流動抵抗の増大を防止しながら、低温流体の流動抵抗の低減を図ることができる。
【発明の効果】
【0012】
以上説明したように本発明に係る熱交換器は、高温流体との熱交換による低温流体の流動抵抗の増加を抑制することができるという優れた効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の第1の実施形態に係る熱交換器としての排気熱回収用熱交換器10について、図1及び図2に基づいて説明する。なお、以下の説明で、単に上流・下流の語を用いるときは、排気ガスの流れ方向の上流・下流を示すものとする。
【0014】
図2には、排気熱回収用熱交換器10が適用された排気熱回収システム18の概略全体構成が模式的なフロー図にて示されている。この図に示される如く、排気熱回収システム18は、自動車の内燃機関エンジン12の高温流体としての排気ガスが有する熱を、低温流体(冷却媒体)としてのエンジン冷却水との熱交換によって回収し、暖房やエンジン12の暖機促進等に利用する装置である。
【0015】
エンジン12には、排気ガスを導出する排気経路を構成する排気管14が接続されている。排気管14による排気ガスの排出経路上には、上流側から順に触媒コンバータ16、排気熱回収用熱交換器10、メインマフラ20が配設されている。触媒コンバータ16は、内蔵した触媒16Aによって通過する排気ガスを浄化するように構成されている。消音器としてのメインマフラ20は、排気ガスを大気中に排出するのに伴って生じる排気音を低減するように構成されている。
【0016】
排気熱回収用熱交換器10は、排気ガスとエンジン冷却水のとの熱交換によって排気ガスの熱をエンジン冷却水に回収させる構成とされている。また、この排気熱回収用熱交換器10内には、排気ガスのバイパス流路22、該バイパス流路22を開閉するための流路切替装置としての流路切替バルブ24が配設されており、排気ガスがエンジン冷却水との熱交換を行う排気熱回収モードと、排気ガスがバイパス流路22を通過するノーマルモードとを切り替え得る構成とされている。以下、具体的に説明する。
【0017】
図1(A)及び図1(B)に示される如く、排気熱回収用熱交換器10は、それぞれ円筒状に形成されると共に同心円状に配置された内筒26とシェルとしての外筒28とを有して構成されており、内筒26と外筒28との間に排気ガスとエンジン冷却水とが熱交換を行うための熱交換部30が構成されている。
【0018】
内筒26は、軸線方向が水平方向(例えば、車体前後方向)と一致するように配置され、外筒28の軸心部を貫通しており、軸線方向の両端部が排気管14に接続されて連続している。内筒26は、排気管14の一部として構成されても良い。また、排気熱回収用熱交換器10は、上流端が内筒26の外周に気密状態で固定されると共に下流端が外筒28の上流端28Aに接続されたコニカル胴32と、下流端が内筒26の外周に気密状態で固定されると共に上流端が外筒28の下流端28Bに接続されたコニカル胴34とを備えている。
【0019】
この排気熱回収用熱交換器10における熱交換部30には、内筒26とコニカル胴32との間の空間である排気ガス入口ヘッダ36と、内筒26と外筒28との間に形成された略円筒状空間(後述する冷却水管42の占有分を除く空間)である高温側流路としての排気ガス熱交換路38と、内筒26とコニカル胴34との間の空間である排気ガス出口ヘッダ40とが形成されている。一方、内筒26の内部は、上記したバイパス流路22とされている。この内筒26には、コニカル胴32の内側部分に設けられて排気ガス入口ヘッダ36に連通する熱交換器入口孔26Aと、コニカル胴34の内側部分に設けられて排気ガス出口ヘッダ40に連通する熱交換器出口孔26Bとが形成されている。
【0020】
排気ガス熱交換路38内には、冷却水管42が配設されており、排気熱回収用熱交換器10におけるエンジン冷却水の流通路である低温側流路としての冷却水熱交換路44を構成している。この実施形態では、冷却水管42は、二重筒の内側に内筒26を覆う筒状の冷却水熱交換路44を形成している。より具体的には、冷却水管42は、略円筒状の内水管42Aと、コニカル(円錐筒)状に形成された外水管42Bと、内水管42Aと外水管42Bとの軸線方向端部管を塞ぐ一対の蓋板42Cとを有して構成されている。これにより、冷却水管42の内水管42A、42B、42Cに囲まれた冷却水熱交換路44は、軸線方向一方側から下方側に向けて流路断面積が連続的に(徐々に)拡大している。
【0021】
そして、排気熱回収用熱交換器10では、冷却水熱交換路44における流路断面積の小さい側がエンジン冷却水の流れ方向上流側とされ、冷却水熱交換路44における流路断面積の大きい側がエンジン冷却水の流れ方向下流側とされるように、マクロ的にはエンジン冷却水が筒状の冷却水熱交換路44を軸線方向に沿って流れる構成とされている。また、この実施形態では、エンジン冷却水の流れ方向が排気ガスの流れ方向と一致しており、排気熱回収用熱交換器10は並行流型熱交換器とされている。
【0022】
したがって、上記の如く円筒形状に形成された外筒28と内筒26との間に形成された円筒状空間における冷却水管42(冷却水熱交換路44)の占有分を除く排気ガス熱交換路38は、排気ガス流れ方向の上流から下流に向けて流路断面積が徐々に減少している。以上説明した冷却水管42は、冷却水流れ方向の上流側部分が外筒28を貫通して設けられた入口ポート46に接続されると共に、冷却水流れ方向の下流側部分が外筒28を貫通して設けられた出口ポート48に接続されている。
【0023】
以上説明した排気熱回収用熱交換器10では、流路切替バルブ24が内筒26(バイパス流路22)を閉止している場合には、排気ガスが排気ガス熱交換路38に流れることで熱交換機能を果たし、流路切替バルブ24が内筒26を開放している場合には、排気ガスが主にバイパス流路22を流れて排気ガスバイパス機能を果たす構成とされている。なお、冷却水管42が配設された排気ガス熱交換路38の流動抵抗(圧力損失)は、開放されているバイパス流路22の流動抵抗に対し大きく、流路切替バルブ24が内筒26を開放している場合には、排気ガス熱交換路38には殆ど排気ガスが流れない構成とされている。
【0024】
流路切替バルブ24は、図示しない制御装置としてのECUによって制御され、例えば、エンジン12の暖機促進要求がされた場合、エンジン冷却水温が低いときに暖房要求がされた場合などにバイパス流路22を閉止する(排気熱回収モードを選択する)ようになっている。また、ECUは、例えばエンジン冷却水温が上昇して閾値を超えた場合に、流路切替バルブ24を開作動して22を開放させる(排気熱回収モードからノーマルモードに切り替える)ようになっている。
【0025】
一方、排気熱回収システム18は、エンジン冷却水の熱を暖房用に回収するフロントヒータコア50、リヤヒータコア52、及びエンジン冷却水をフロントヒータコア50、リヤヒータコア52に循環させるヒータ温水路54を備えている。フロントヒータコア50とリヤヒータコア52とは、並列に配置されている。そして、ヒータ温水路54におけるリヤヒータコア52の下流側に排気熱回収用熱交換器10が配置されている。すなわち、ヒータ温水路54におけるリヤヒータコア52側に入口ポート46が配置されると共に、ヒータ温水路54におけるエンジン12の上流側に出口ポート48が配置されている。この実施形態では、排気熱回収用熱交換器10は、エンジン冷却水の系統においては、フロントヒータコア50に対し並列でかつリヤヒータコア52に対し直列に配置されている。
【0026】
したがって、排気熱回収システム18では、図1のヒータ温水路54上に示す矢印の通りエンジン冷却水が流れるようになっている。これにより、エンジン12を通った高温の温水がフロントヒータコア50及びリヤヒータコア52を通る際に熱交換されて暖房に利用され、リヤヒータコア52にて降温されたエンジン冷却水が排気熱回収用熱交換器10に導入されて上記排気ガスと熱交換する構成である。排気熱回収用熱交換器10を通過したエンジン冷却水は、フロントヒータコア50を通過したエンジン冷却水と共にエンジン12に戻されるようになっている。このように、排気熱回収用熱交換器10は、例えば暖房機能の観点からは、エンジン12によって加熱される前のエンジン冷却水を予熱する予熱器として機能する構成である。
【0027】
次に、本第1の実施形態の作用を説明する。
【0028】
上記構成の排気熱回収システム18では、エンジン12の始動直後のようにエンジン冷却水温が低い場合には、例えば暖房要求やエンジン12の暖機促進要求に基づいてECUが流路切替バルブ24を閉駆動してバイパス流路22を閉止させる。すなわち、排気熱回収モードが選択される。すると、エンジン12の排気ガスはバイパス流路22を流れず、排気熱回収用熱交換器10の排気ガス熱交換路38に導入される。排気ガス熱交換路38に導入された排気ガスは、排気熱回収用熱交換器10においてエンジン冷却水との間で熱交換を行い、エンジン冷却水を加熱させる。これにより、暖房が促進され又はエンジン12の暖機が促進される。
【0029】
この熱交換によって排気ガスは、エンジン冷却水に放熱することで例えば略400℃から略100℃まで降温(冷却)されて体積が減少し、一方、エンジン冷却水は、排気ガスからの受熱によって例えば略80℃から82℃乃至83℃まで昇温されて体積膨張する。
【0030】
ここで、排気熱回収用熱交換器10では、冷却水熱交換路44の流路断面積が上流から下流に向けて連続的に拡大されているため、エンジン冷却水の排気ガスとの熱交換(受熱)に伴う体積膨張によって該エンジン冷却水の流動抵抗(通水抵抗)が増大することが防止又は著しく抑制される。すなわち、エンジン冷却水の下流側への流動に伴う体積膨張が冷却水熱交換路44の下流側に向けた容量拡大によって吸収される。
【0031】
これにより、エンジン冷却水を駆動するウォータポンプの負荷が低減される。特に、エンジン12によって機械的に駆動されるメカポンプと比較して容量に余裕の少ない電動ポンプをウォータポンプとして用いた自動車(例えば、車輪の駆動源としてエンジン12の他に電気モータを有し、走行中にエンジン12を停止する場合があるハイブリッド車等)においては、エンジン冷却水の流動抵抗を低減することによる電動ポンプの負荷軽減効果が大きいため、適用された自動車の燃費改善に対する寄与度が大きい。
【0032】
このように、本発明の第1の実施形態に係る排気熱回収用熱交換器10では、排気ガスとの熱交換によってエンジン冷却水の流動抵抗が増加することを抑制することができる。
【0033】
一方、排気熱回収用熱交換器10では、排気ガス熱交換路38の流路断面積が上流から下流に向けて連続的に縮小されているが、換言すれば、冷却水熱交換路44が下流側ほど大きく排気ガス熱交換路38に張り出しているが、上記の通り排気ガスはエンジン冷却水との熱交換によって体積が縮小されるので、排気抵抗が増大することがない。これにより、排気抵抗の増大に起因する燃費の悪化も防止される。
【0034】
そして、排気熱回収用熱交換器10では、排気ガス熱交換路38と冷却水熱交換路44とで流れ方向が一致した並行流型熱交換器であるため、排気ガス熱交換路38の流路断面積を下流側に向けて徐々に縮小しつつ冷却水熱交換路44の流路断面積を下流に向けて徐々に拡大する構成が実現された。これにより、排気熱回収用熱交換器10は、排気ガス熱交換路38、冷却水熱交換路44の流路断面積が流れ方向各部で一定であり熱交換性能が同等である熱交換器と比較して、外筒28の外径を拡大することなく、換言すれば、自動車の搭載スペースを増すことなく、上記した各効果を奏する(機能を果たす)ことができる。
【0035】
次いで、本発明の他の実施形態を説明する。なお、上記第1の実施形態又は前出の構成と基本的に同一の部品・部分については上記第1の実施形態又は前出の構成と同一の符号を付して説明、図示を省略する場合がある。
【0036】
(第2の実施形態)
図3には、本発明の第2の実施形態に係る排気熱回収用熱交換器60が側断面図にて示されている。この図に示される如く、排気熱回収用熱交換器60は、排気ガスの流れ方向とエンジン冷却水の流れ方向とが逆向きである対向流型熱交換器である点で、並行流型熱交換器である排気熱回収用熱交換器10とは異なる。
【0037】
具体的には、排気熱回収用熱交換器60は、冷却水管42が排気ガス熱交換路38内で排気熱回収用熱交換器10における向きとは逆向きに配置されており、入口ポート46が出口ポート48に対し排気ガス流れの下流側に配置されている。これにより、排気熱回収用熱交換器60は、排気ガス熱交換路38の流路断面積が下流(エンジン冷却水の上流側)側に向けて徐々に拡大される構成とされている。排気熱回収用熱交換器60の他の構成は、排気熱回収用熱交換器10の対応する構成と同じである。
【0038】
したがって、第2の実施形態に係る排気熱回収用熱交換器60によっても、エンジン冷却水の流動抵抗の低減について、第1の実施形態に係る排気熱回収用熱交換器10と同様の作用によって同様の効果を得ることができる。また、排気熱回収用熱交換器60は、対向流型の熱交換器であるため、排気熱回収用熱交換器10と比較して熱交換効率が良好である。さらに、排気熱回収用熱交換器10では、円筒状の外筒28の内側に冷却水熱交換路44を構成(配設)しているため、自動車の搭載スペースを増すことがない。さらにまた、排気熱回収用熱交換器60によっても、排気ガスの排気抵抗は、排気ガス熱交換路38の流動に伴って(排気ガス熱交換路38自体の形状に起因して)増大することがない。
【0039】
(第3の実施形態)
図4には、本発明の第3の実施形態に係る排気熱回収用熱交換器70が側断面図にて示されている。この図に示される如く、排気熱回収用熱交換器70は、円筒形状の外筒28に代えて、排気ガス流れ方向の下流側から上流側に向けて内径が連続的に拡大されたコニカル形状の外筒72を備える点で、第2の実施形態に係る排気熱回収用熱交換器60とは異なる。
【0040】
外筒72は、その平均内径が外筒28の内径に略一致しており、かつそのテーパ角が外水管42B(冷却水熱交換路44の外周側)のテーパ角に対し同等か又は若干小とされてしている。これにより、排気熱回収用熱交換器70の排気ガス熱交換路38は、その流路断面積が排気ガスの流れ方向の各部において略一定とされている。排気熱回収用熱交換器70の他の構成は、排気熱回収用熱交換器60の対応する構成と同じである。
【0041】
したがって、第3の実施形態に係る排気熱回収用熱交換器70によっても、エンジン冷却水の流動抵抗の低減について、第1の実施形態に係る排気熱回収用熱交換器10と同様の作用によって同様の効果を得ることができる。また、外筒72を備えた排気熱回収用熱交換器70では、排気熱回収用熱交換器60と比較して、排気ガス熱交換路38の上流端(排気ガス入口)の流路断面積が大きくなるため、排気ガス流の絞り部が形成されることがない(絞り効果が抑制される)。このため、並行流型熱交換器と比較して熱交換効率の良好な対向流型熱交換器において、排気ガス熱交換路38の入口部の絞り効果による背圧上昇を防止することができる。
【0042】
(第4の実施形態)
図5には、本発明の第4の実施形態に係る排気熱回収用熱交換器80が側断面図にて示されている。この図に示される如く、排気熱回収用熱交換器80は、円筒形状の外筒28に代えて、排気ガス流れ方向の上流側から下流側に向けて内径が連続的に拡大されたコニカル形状の外筒82を備える点で、第1の実施形態に係る排気熱回収用熱交換器10とは異なる。
【0043】
外筒82は、その平均内径が外筒28の内径に略一致しており、かつそのテーパ角が外水管42B(冷却水熱交換路44の外周側)のテーパ角に対し同等か又は若干小とされている。これにより、排気熱回収用熱交換器80の排気ガス熱交換路38は、その流路断面積が排気ガスの流れ方向の各部において略一定とされている。排気熱回収用熱交換器80の他の構成は、排気熱回収用熱交換器10の対応する構成と同じである。
【0044】
したがって、第4の実施形態に係る排気熱回収用熱交換器80によっても、排気ガス熱交換路38の流路断面積を下流側に向けて徐々に縮小させることによる効果(大型化防止)を除き、第1の実施形態に係る排気熱回収用熱交換器10と同様の作用によって同様の効果を得ることができる。
【0045】
なお、上記した第1乃至第4の実施形態では、冷却水管42が円筒形状の略円筒状の内水管42Aを有する例を示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、略円筒状の内水管42Aに代えてテーパ状の内水管を設けても良い。この場合、外水管42Bに代えて円筒状の外水管を設ける構成とすることも可能である。
【0046】
(第5の実施形態)
図6(A)には、本発明の第5の実施形態に係る排気熱回収用熱交換器90が側断面図にて示されており、図6(B)には、図6(A)の6A−6A線に沿った断面図が示されている。この図に示される如く、排気熱回収用熱交換器90は、内筒26すなわちバイパス流路22が内部に設けられていない点で、並行流型熱交換器である排気熱回収用熱交換器10とは異なる。
【0047】
この排気熱回収用熱交換器90は、円板状に形成されると共に外筒28の内側に気密状態で保持された上下流一対の管板92と、上下流端がそれぞれ一対の管板92を貫通した複数のガス管94とを備えている。これにより、排気熱回収用熱交換器90では、複数のガス管94の内側の空間が排気ガス熱交換路38とされると共に、外筒28と上下流一対の管板92とで囲まれた空間から各ガス管94(排気ガス熱交換路38)の占有分を除く部分が冷却水熱交換路44とされている。
【0048】
そして、この実施形態では、各ガス管94は、それぞれ排気ガス流れ方向の上流側から下流側に向けて連続的に流路断面積が減少するテーパ管とされている。また、入口ポート46は、出口ポート48に対し排気ガス流れ方向の上流側に配置されている。これにより、排気熱回収用熱交換器90は、冷却水熱交換路44の流路断面積がエンジン冷却水流れ方向の上流から下流に向けて連続的に拡大する構成とされており、かつ並行流型の熱交換器とされている。
【0049】
図示は省略するが、バイパス流路22は、排気熱回収用熱交換器90の外部に該排気熱回収用熱交換器90と並列となるように配置されたバイパス管の内部空間として設けられている。排気熱回収用熱交換器90の他の構成は、排気熱回収用熱交換器10の対応する構成と同じである。
【0050】
したがって、第5の実施形態に係る排気熱回収用熱交換器90によっても、第1の実施形態に係る排気熱回収用熱交換器10と同様の作用によって同様の効果を得ることができる。
【0051】
なお、第5の実施形態では、バイパス流路22が外筒28の外部に設けられた例を示したが、例えば、図6(B)に示す外筒28の軸心部に位置するガス管94に代えて、内筒26(バイパス流路22)を設けた構成としても良い。また、この構成において、入口ポート46と出口ポート48とを入れ替えると共に複数のガス管94の向きを入れ替え、第2の実施形態に相当する対向流型の熱交換器を構成することも可能である。
【0052】
また、第5の実施形態では、複数のガス管94の全てをテーパ管とした例を示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、一部のガス管94を直管としても良い。
【0053】
(第6の実施形態)
図7には、本発明の第6の実施形態に係る排気熱回収用熱交換器100が側断面図にて示されている。この図に示される如く、排気熱回収用熱交換器100は、冷却水流れ方向の下流側に向けて冷却水熱交換路44の流路断面積を同じ割合で増加させる冷却水管42に代えて、流路断面積の増加率がエンジン冷却水の流れ方向の途中で変化する冷却水管102を備える点で、第1の実施形態に係る排気熱回収用熱交換器10とは異なる。
【0054】
具体的には、冷却水管102は、コニカル状に形成された外水管42Bに代えて、外水管102Aを有して構成されている。外水管102Aは、エンジン冷却水の流れ方向の上流側から下流側に向けて徐々に内径が増加しており、その流れ方向中間部にはテーパ角の変化点102Bが設定されている。この実施形態では、外水管102Aは、テーパ角の変化点102Bに対する上流側のテーパ角(流路断面積の増加割合)よりも、テーパ角の変化点102Bに対する下流側のテーパ角の方が大きい設定とされている。
【0055】
冷却水管102の他の構成は、冷却水管42の対応する構成と同じである。すなわち、排気熱回収用熱交換器100の他の構成は、第1の実施形態に係る排気熱回収用熱交換器10の対応する構成と同じである。
【0056】
したがって、第6の実施形態に係る排気熱回収用熱交換器100によっても、第1の実施形態に係る排気熱回収用熱交換器10と同様の作用によって同様の効果を得ることができる。
【0057】
(第7の実施形態)
図8には、本発明の第7の実施形態に係る排気熱回収用熱交換器110が側断面図にて示されている。この図に示される如く、排気熱回収用熱交換器110は、冷却水流れ方向の下流側に向けて冷却水熱交換路44の流路断面積を段階的に増加させる冷却水管冷却水熱交換路112を備える点で、第1の実施形態に係る排気熱回収用熱交換器10とは異なる。
【0058】
具体的には、冷却水管112は、コニカル状に形成された外水管42Bに代えて、外水管112Aを有して構成されている。外水管112Aは、エンジン冷却水の流れ方向の途中部に形成された段部112Bにおいて内径が段階的に(この実施形態では、1段階で)増加している。
【0059】
冷却水管122の他の構成は、冷却水管42の対応する構成と同じである。すなわち、排気熱回収用熱交換器110の他の構成は、第1の実施形態に係る排気熱回収用熱交換器10の対応する構成と同じである。
【0060】
したがって、第7の実施形態に係る排気熱回収用熱交換器110によっても、第1の実施形態に係る排気熱回収用熱交換器10と同様の作用によって同様の効果を得ることができる。
【0061】
(第8の実施形態)
図9には、本発明の第8の実施形態に係る排気熱回収用熱交換器120が側断面図にて示されている。この図に示される如く、排気熱回収用熱交換器120は、冷却水流れ方向の下流側に向けて冷却水熱交換路44の流路断面積を段階的に増加させる冷却水管冷却水熱交換路122を備える点で、第1の実施形態に係る排気熱回収用熱交換器10とは異なる。
【0062】
具体的には、冷却水管122は、コニカル状に形成された外水管42Bに代えて、外水管122Aを有して構成されている。外水管122Aは、エンジン冷却水の流れ方向の途中部に形成された複数(この実施形態では3つ)の段部122B、122C、122Dにおいて、それぞれ内径が段階的に増加している。
【0063】
冷却水管122の他の構成は、冷却水管42の対応する構成と同じである。すなわち、排気熱回収用熱交換器120の他の構成は、第1の実施形態に係る排気熱回収用熱交換器10の対応する構成と同じである。
【0064】
したがって、第8の実施形態に係る排気熱回収用熱交換器120によっても、第1の実施形態に係る排気熱回収用熱交換器10と同様の作用によって同様の効果を得ることができる。
【0065】
なお、第6乃至第8の実施形態に係る冷却水熱交換路44の流路断面積が増加割合を異ならせて増加する構成や段階的に増加する構成を、第5の実施形態に係る複数のガス管94に適用しても良い。
【0066】
さらに、上記各実施形態では、本発明の熱交換器が排気熱回収システム18を構成する排気熱回収用熱交換器10、60、70、80、90、100、110、120として適用された例を示したが、本発明はこれに限定されず、各種用途の熱交換器に適用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る熱交換器を示す側断面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る熱交換器が適用された排気熱回収システムのシステムフロー図である。
【図3】本発明の第2の実施形態に係る熱交換器を示す側断面図である。
【図4】本発明の第3の実施形態に係る熱交換器を示す側断面図である。
【図5】本発明の第4の実施形態に係る熱交換器を示す側断面図である。
【図6】本発明の第5の実施形態に係る熱交換器を示す図であって、(A)は側断面図、(B)は図6(A)の6A−6A線に沿った正面断面図である。
【図7】本発明の第6の実施形態に係る熱交換器を示す側断面図である。
【図8】本発明の第7の実施形態に係る熱交換器を示す側断面図である。
【図9】本発明の第8の実施形態に係る熱交換器を示す側断面図である。
【符号の説明】
【0068】
10 排気熱回収用熱交換器(熱交換器)
38 排気ガス熱交換路(高温側流路)
44 冷却水熱交換路(低温側流路)
60・70・80・90・100・110・120 排気熱回収用熱交換器(熱交換器)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高温流体を流通させるための高温側流路と、
内部を流通する低温流体と前記高温側流路を流通する高温流体との熱交換可能に該高温側流路に隣接して設けられ、かつ前記低温流体の流れ方向の上流側から下流側に向けて流路断面積が連続的又は段階的に拡大されている低温側流路と、
を備えた熱交換器。
【請求項2】
前記高温側流路は、前記低温流体の流れ方向の上流側から下流側に向けて流路断面積が連続的又は段階的に縮小されている請求項1記載の熱交換器。
【請求項3】
前記低温流体の流れ方向と前記高温流体の流れ方向とが同じ向きである請求項2記載の熱交換器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−285264(P2007−285264A)
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−115968(P2006−115968)
【出願日】平成18年4月19日(2006.4.19)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】