説明

熱交換器

【課題】積層型の熱交換器におけるコアを流通する液体流通の均一性の向上を図る。
【解決手段】熱交換器1は、インナーフィンが内装された複数の偏平チューブ10を互いに間隙13aを設けて積層したコア2と、コア2の両端を被嵌する一対のタンクと、コア2の外側を覆うケーシング3とを備え、各偏平チューブ10に熱交換媒体が流通し、その熱交換媒体と熱交換する液体が偏平チューブ10の外面に流通し、前記間隙13aに連通する冷却液供給口6と冷却液排出口7が偏平チューブ10の軸方向に沿って互いに離反して設けられた積層型の熱交換器であって、第1プレートの側壁11bの内側に第2プレートの側壁を挿入した状態で偏平チューブ10が形成され、冷却液供給口6の対向面で、冷却液排出口7側に偏った部分が偏平チューブ10の第1プレートの側壁11bで遮蔽されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、小型燃料電池に供給される空気に含まれる水分を凝縮して除去する熱交換器や、内燃機関の排ガス冷却用熱交換器(EGRクーラ)に適したものに関する。
【背景技術】
【0002】
小型燃料電池に供給される燃料ガスまたは、その燃料電池から排出されるガスに含まれる水分を凝縮、或いは、改質燃焼排ガスから水分を凝縮する場合に、小型で熱交換効率のよい積層型の熱交換器(または凝縮器)が用いられている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図11は従来の積層型の熱交換器の断面図である。熱交換器1は複数の偏平チューブを互いに間隙を有して積層したコア2と、コア2を覆うケーシング3と、ケーシング3の両端部に設けられた熱交換媒体の入口タンク4および出口タンク5と、偏平チューブの軸方向に沿って互いに離反してケーシング3に設けられた冷却液供給口6および冷却液排出口7を備えている。熱交換媒体は例えば小型燃料電池に供給される燃料ガスであり、冷却液はその熱交換媒体と熱交換する冷却水などである。
【0004】
熱交換媒体は入口タンク4からコア2に流入し、コア2を構成する各偏平チューブ内を流通して出口タンク5から流出する。一方、冷却液は冷却液供給口6からコア2に流入し、コア2を構成する各偏平チューブの外周を流通して冷却液排出口7から流出する。そして熱交換媒体は各偏平チューブ内を通過する間に冷却液と熱交換される。
【0005】
熱交換効率(または熱交換量)を高めるためには、冷却液が各偏平チューブの間隙をできるだけ均一に流通することが重要になる。図11に示すような一般的に採用されているコア2は比較的細長い形状であるが、冷却液供給口6から流入した冷却液はできるだけ流通抵抗の少ない経路、すなわち最短経路に偏って冷却液排出口7に向かう傾向がある。そのような場合、図11の点線で示す冷却液供給口6側のA領域と冷却液排出口7側のB領域を流通する冷却液量が少なくなり、全体としての冷却液流通が不均一な分布になって熱交換効率が低下するという問題がある。
【0006】
図12は、上記問題を解決するために従来提案された熱交換器の構造を具体的に示す部分断面図である。この熱交換器1が図11の熱交換器1と異なる点は、小タンクを有する冷却液供給口6の出口に遮蔽板8を装着した点にある。すなわち小タンクの出口に遮蔽板8を装着することにより、冷却液供給口6から流入する冷却液は、遮蔽板8によってコア3への流入方向を冷却液排出口7側とは反対側(図面左側であり、図11に示すA領域側)に偏らせることができる。これにより図11に示す領域Aにも十分に冷却液が供給され、その冷却液流通量の低下現象を防止することができる。さらにコア3全体の冷却液流通がより均一になるので、下流側の領域Bにおける冷却液流通量の低下現象も回避できる。なお、図12には熱交換媒体の入口タンクに配管接続用のフランジ9が参考までに示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−284004号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし図12に示す熱交換器1の構造では、冷却液供給口6の部分に遮蔽板8を別途装着する必要があるので部品の数が増加し、製造工程もそれに応じて多くなるという別の問題がある。そこで本発明はこの問題を解決した新しい熱交換器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決する本発明の熱交換器は、内部にインナーフィン(14)を有する複数の偏平チューブ(10)が互いに間隙(13a)を有して積層されたコア(2) と、コア(2) の両端に接続した一対の入口タンク(4)および出口タンク(5)と、コア(2) の外側を覆うケーシング(3) とを備え、各偏平チューブ(10)内に、前記入口タンク(4)を介して被冷却用の熱交換媒体が流通し、その偏平チューブ(10)の外面に冷却液を供給する冷却液供給口(6)が前記入口タンク(4)側に位置すると共に、冷却液排出口(7) が前記出口タンク(5)側に位置してケーシング(3) に設けられた熱交換器において、
偏平チューブ(10)は、溝形の第1プレート(11)の両側壁(11b) の内面が、溝形の第2プレート(12)の両側壁(12b)の外面に嵌着してなり、
前記冷却液供給口(6)に対向する位置にある前記偏平チューブ(10)間の前記隙間(13a)の入口が、前記側壁(11b)で遮蔽されて、前記冷却液供給口(6)よりも前記入口タンク(4)側に偏って偏平チューブ(10)間の隙間(13a)の開口が配置されたことを特徴とする熱交換器である(請求項1)。
【0010】
上記熱交換器において、偏平チューブ(10)の両側に対向するケーシング(3) 部分が外側に所定間隔で複数膨出されており、各膨出部(3a)の内側の空間が偏平チューブ(10)の積層方向に並行する各間隙(13a)間を互いに連通する間隙連通路(16)とされていることを特徴とすることができる(請求項2)。
【0011】
上記いずれかの熱交換器において、隣接する一方の偏平チューブ(10)の第1プレート(11)の溝底から外側に突出する複数のディンプル(13)と、隣接する他方の偏平チューブ(10)の第2プレート(12)の溝底から外側に突出する複数のディンプル(13)が互いに接触され、その接触する各対のディンプル(13)にそれぞれ貫通孔(17)が同軸状に形成され、一方のディンプル(13)の内側にろう材(18)が配置され、それを溶融して、インナーフィン(14)および互いに接触するディンプル(13)が一体的にろう付けされていることを特徴とする熱交換器とすることができる(請求項3)。
【0012】
さらに上記いずれかの熱交換器は、第1プレート(11)と第2プレート(12)の板厚が0.2〜0.6mmの範囲に形成され、貫通孔(17)の口径はそれら板厚より大きく、且つ、1.5mmより小さい範囲に形成されていることとすることができる(請求項4)。
【発明の効果】
【0013】
本発明の熱交換器は、請求項1に記載のように、偏平チューブが溝形の第1プレートと、溝形の第2プレートを備えており、前記第1プレートの両側壁の内側に第2プレートの両側壁を挿入した状態で偏平チューブが形成され、冷却液供給口に対向する位置にある偏平チューブ間の隙間の入口が、側壁で遮蔽されて、冷却液供給口(6)よりも入口タンク(4)側に偏って隙間(13a)の開口が配置されことを特徴とする。
【0014】
このように冷却液供給口の対向部を側壁で閉鎖することにより、冷却液流入口から流入する冷却液は遮蔽のない冷却液供給口部分に迂回して各偏平チューブの間隙に向かって偏って流れる。そして各偏平チューブの間隙に流通する冷却液の不均一性が改善され、図11に示すような領域A、領域Bにおける冷却液流通量の低下現象はなくなる。このように本発明の熱交換器によれば偏平チューブ自体の構造が従来の図12に示す遮蔽板8の働きを兼用するので、熱交換器の全体構造及び製造工程が簡単になる。
【0015】
上記の熱交換器において、請求項2に記載のように、偏平チューブの軸方向に直交するケーシング部分を外側に所定間隔で複数膨出し、各膨出部の内側の空間を、偏平チューブの積層方向に並行する各間隙を互いに連通するための間隙連通路とすることができる。このような間隙連通路を形成すると、偏平チューブの積層方向に並行する各間隙に流通する冷却液の不均一性を一層改善することができる。
【0016】
さらに上記いずれかの熱交換器において、請求項3に記載のように、隣接する一方の偏平チューブの第1プレートから外側に突出する複数のディンプルと、隣接する他方の偏平チューブの第2プレートから外側に突出する複数のディンプルを互いに接触し、その接触する各対のディンプルにそれぞれ貫通孔を同軸状に形成し、一方のディンプルの内側にろう材を配置し、それを溶融して、インナーフィンおよび互いに接触するディンプルを一体的にろう付けすることができる。
【0017】
内部に波型のインナーフィンを配置した複数の偏平チューブを多段に積層する場合、従来は偏平チューブの内側にろう材を塗布してフィンを偏平チューブ内にろう付けし、さらに偏平チューブの外側にろう材を塗布して偏平チューブどうしをろう付けしていた。しかしこのようなろう付け構造では2段階のろう付け塗布工程が必要であり、付着するろう材も多くなる。これに対し本発明の場合、偏平チューブとフィンの間にろう材を塗布し、その偏平チューブを積層した状態で加熱してろう付けする際に、ろう材が貫通孔を通して流れ出し、偏平チューブとフィンの間と偏平チューブどうしが一体的にろう付けされる。そのため一回のろう付け工程により、共通のろう材で3者が一体化され、コアにおけるろう材の付着量も少なくなる。
【0018】
上記ディンプルを設けた熱交換器において、請求項4に記載のように、第1プレートと第2プレートを0.2〜0.6mmの範囲の同じ板厚に形成し、貫通孔の口径をそれら板厚より大きく、且つ、1.5mmより小さい範囲に形成することができる。このように構成すると、一方の偏平チューブの内側から貫通孔を通して他方の偏平チューブに流出するろう材の量が最適な範囲となり、確実に偏平チューブとフィンの間と偏平チューブどうしを一体的にろう付けができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の熱交換器の全体断面図。
【図2】図1の部分拡大斜視図。
【図3】図1のIII−III断面図。
【図4】図1のIV−IV断面図。
【図5】図1、図2に示す冷却液供給口6とその周辺部分の拡大断面図。
【図6】熱交換器1を構成するケーシング3の一部を拡大して示す断面図。
【図7】図6のVII−VII断面図。
【図8】図6のVIII−VIII断面図。
【図9】図6〜図8に示すケーシング3の膨出構造の効果の確認実験データを示す図。
【図10】図1の熱交換器の偏平チューブ10とインナーフィン14のろう付け方法を説明する部分断面図。
【図11】従来の積層型の熱交換器の断面図。
【図12】従来の熱交換器の構造を具体的に示す部分断面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に、図面に基づいて本発明の実施形態を説明する。
【0021】
図1に示すように、熱交換器1は複数の偏平チューブ10が、両端を除き互いに間隙13aを有する状態で多段に積層して形成されたコア2と、コア2の外側を覆うケーシング3と、コア2の両端部に設けられた入口タンク4および出口タンク5と、偏平チューブの軸方向に沿って互いに離反してケーシング3に設けられた冷却液供給口6および冷却液排出口7を備えている。なお偏平チューブ10およびケーシング3はアルミニウムやアルミニウム合金またはステンレスなどの金属材料で作られる。
【0022】
入口タンクから小型燃料電池に供給される燃料ガス、または、その燃料電池から排出されるガスに含まれる水分を凝縮、或いは、改質燃焼排ガスから水分を凝縮する場合に、熱交換媒体がコア2に流入し、各偏平チューブ10内を流通して出口タンク5から流出する。
【0023】
一方、冷却液供給口6からコア2に流入した冷却液は各偏平チューブ10の外面を流通する間に熱交換媒体と熱交換して冷却液排出口7から流出する。図1では、ガスの流入と冷却水供給口6の関係は平行流で記載されているが、冷却水排出口7が冷却水供給側になる対向流で流す場合もある。その他、図1において、閉塞部110は、冷却水供給口6のみ記載されているが、部品の組み付け性の点より4箇所設けることも可能である。
【0024】
図2、図3および図4等に示すように、偏平チューブ10は溝底となる平坦部11aとその両端部を直角(もしくは略直角)に折り曲げて形成した側壁11bを有する溝形の第1プレート11と、平坦部12aとその両端部を直角(もしくは略直角)に折り曲げて形成した側壁12bを有する溝形の第2プレート12を備えており、その第1プレート11の両側壁11bの内側に第2プレートの両側壁12bを挿入した状態で偏平チューブ10が形成される。各偏平チューブ10の両端部には拡開部10cが形成され、その拡開部10cで互いに偏平チューブ10の端部どうしが密着する。
【0025】
第1プレート11の平坦部11aと第2プレート12の平坦部12aにはそれぞれ外側に円錐台形状に突出する複数のディンプル13が均等に分散して形成され、複数の偏平チューブ10を積層した際に、隣接する一方の偏平チューブ10の第1プレート11から外側に突出する複数のディンプル13と、隣接する他方の偏平チューブ10の第2プレートから外側に突出する複数のディンプル13が互いに接触して間隙13aを形成するようになっている。そして各偏平チューブ10の内部には、アルミニウムまたはアルミニウム合金またはステンレスなどで作られた断面波形のストレートフィン、ウェーブフィン、オフセットフィン(マルチエントリー型フィン)、等のインナーフィン14が配置されている。
【0026】
図3は、冷却液供給口6付近の偏平チューブ10の断面図であり、偏平チューブ10における第1プレート11の側壁11bの先端は、第2プレート12の平坦部12aの外面より下方まで延長されている。そのため隣接する偏平チューブ10の間隙13aの入口が偏平チューブ10の軸方向に直交する端部で遮蔽された状態になっている。なお図3に示されていない反対側の端部は、後述する図4に示した端部と同様になっている。
【0027】
図4は、冷却液供給口6付近以外の側壁11bを含む偏平チューブ10の断面図であり、その側壁11bの先端は第2プレート12の平坦部12aの外面付近までであり、隣接する偏平チューブ10の間隙13aの入口が遮蔽されていない。この状態は図4に示されていない反対側の端部も同様である。
【0028】
図5は、図1、図2に示す冷却液供給口6とその周辺部分の拡大断面の説明図である。冷却液供給口6は熱交換器1に冷却液を供給する図示しない冷却液供給配管と連通するが、本実施形態ではその連通のために図示のような液供給部15が設けられる。液供給部15は冷却液の供給配管に接続される接続部15aと、接続部15aから次第に口径が拡大する拡大開口部15b(小タンクを構成する)とを有し、その拡大開口部15bが冷却液供給口6を兼用している。
【0029】
冷却液供給口6(拡大開口部15b)の一部は、それに対面する各偏平チューブ10の側壁11bによりチューブ間の隙間の入口が遮蔽されている。具体的には図1、図3にも示したように、冷却液供給口6の対向面で、冷却液排出口7側に偏った部分が偏平チューブ10の第1プレート11の側壁11bの遮蔽部110で遮蔽されている。液供給部15の接続部15aから矢印のように直進して流入する冷却液は、拡大開口部15bに入ってその流速が緩和され、次いで偏平チューブ10の側壁11bによる遮蔽部110の存在しな部分から矢印のように迂回して各偏平チューブ10の間隙13aに流出する。
【0030】
その際、冷却液は冷却液排出口7側と反対側(入口タンク4側)に偏った流れとなるので、図11に示す領域A、領域Bにおける冷却液流通量の低下現象を回避できる。なお本実施形態では接続部15aの口径をRとしたとき、それと同軸的に拡大する拡大開口部15bの口径(冷却液供給口6の口径)をその2倍に設定している。接続部15aと重なる冷却液供給口6の部分が偏平チューブ10の側壁11bで遮蔽されることにより、冷却液は遮蔽されていない開放領域から矢印のように流出する。
【0031】
図6は、熱交換器1を構成するケーシング3の側壁部を拡大して示す断面図、図7は図6のVII−VII断面図、図8は図6のVIII−VIII断面図である。図6には偏平チューブ10の軸方向に直交するケーシング3の部分が示されており、ケーシング3の側壁部分は図示のように外側に所定間隔で複数膨出されており、それによって偏平チューブ10の軸方向に沿ってケーシング3に膨出部3aと非膨出部3bが交互に存在するようになる。
【0032】
図7には、偏平チューブ10の側壁とそれに対向するケーシング3の非膨出部3bが示されており、偏平チューブ10の側壁の外面とケーシング3の非膨出部3bの内面は接触している。また図8には偏平チューブ10の側壁とそれに対向するケーシング3の膨出部3aが示されており、偏平チューブ10の側壁の外面とケーシング3の膨出部3aの内面とは所定間隔離れている。
【0033】
ケーシング3の非膨出部3bの部分では、偏平チューブ10の側壁の外面とケーシング3の非膨出部3bの内面は接触しているので、冷却液は積層した偏平チューブ10の積層方向に並行する各間隙13aの流通だけになる。しかしケーシング3の膨出部3aの部分では、偏平チューブ10の側壁の外面とケーシング3の膨出部aの内面が所定間隔離れているので、膨出部3aの内側の空間が偏平チューブ10の積層方向に並行する各間隙13aを互いに連通する間隙連通路16を形成する。そのため膨出部3a部分では、冷却液が偏平チューブ10の各段の間隙13aの流通に加え、間隙連通路16による各段の間隙13a間のバイパス流通も生じる。
【0034】
図9は、図6〜図8に示すケーシング3の膨出構造を設けたことによる効果の確認した実験データである。偏平チューブ10の間隙13aの幅をd、図6に示す膨出部3aの長さをa、非膨出部3bの長さをb、図8に示す間隙連通路16の幅をcとしたとき、図9にそのa/bに対する熱量(熱交換量)の変化がc:dの関係ごとに示されている。
【0035】
なお、実験はbを3〜6mm、dを1〜2mm、冷却液の流量を0.1〜2.04リットル/分の範囲で行った。この実験結果から、ケーシング3に膨出部3aを設けない場合を基準とすると、膨出部3aを設けた場合はいずれもそれより高い熱交換量が得られている。そしてa/bが0.5から2に増加させると熱交換量もそれに応じて上昇する傾向にあり、a/bが2を超えるとその上昇傾向は緩やかになる。
【0036】
図10は図1に示す熱交換器1の偏平チューブ10とインナーフィン14のろう付け方法を説明する部分断面図である。積層される各偏平チューブ10は第1プレート11と第2プレート12により形成され、第1プレート11の平坦部11aと第2プレート12の平坦部12aにはそれぞれ複数のディンプル13が外側に突出している。
【0037】
隣接する一方の偏平チューブ10における第1プレート11の平坦部11aに形成された各ディンプル13と、それに隣接する他方の偏平チューブ10における第2プレート12の平坦部12aに形成された各ディンプル13を互いに接触することにより、隣接する偏平チューブ10の間に間隙13aが形成されるが、各ディンプル13の接触部分(円錐台形の平坦部分)にはそれぞれ貫通孔17が同軸状に形成されている。
【0038】
隣接する2つの偏平チューブ10の外側間、偏平チューブ10とその内部に配置された波型のインナーフィン14間はいずれもコア2の強度確保のためにろう付けで固定する必要がある。本実施形態では、ろう付けに際して先ず偏平チューブ10を形成する第2プレート12の各ディンプル13の内側にペースト状のろう材18を塗布する。
【0039】
次に、ろう材18上に波型のインナーフィン14の一部(図10に示すインナーフィン14の谷部)を接触させた状態で配置してから、第1プレート11を第2プレート12に組み付ける。これらろう材18の塗布工程とインナーフィン14の配置工程により1つの偏平チューブ10のろう付け準備が完了する。このろう付け準備はコア2を構成する各偏平チューブ10について行う。次にろう付け準備が完了した各偏平チューブ10を積み重ねコア2を組立て、そのコアの両側に入口タンクと出口タンクを嵌着すると共に、コアの外周にケーシング3を被嵌し、望ましくは固定具で相互に固定する。次に、組み立てた熱交換器を加熱炉に入れて一括してろう付けする。なおろう付けに際しては、図10に示す状態で各偏平チューブ10の第2プレート12側が上になるように炉内に配置する。
【0040】
ペースト状のろう材18が加熱されて溶融すると、偏平チューブ10の第2プレート12の内側と波型のインナーフィン14との接触部分がろう付けされる。それと共に、ろう材18の一部は第1プレート11のディンプル13に形成した貫通孔17を通り、更にその下側の偏平チューブ10の第1プレート11に流れ落ち、流れ落ちたろう材18の一部は前記第1プレート11のディンプル13に形成した貫通孔17内に流入する。したがって上側の偏平チューブ10のディンプル13と下側の偏平チューブ10のディンプル13はそれらの接触面と互いの貫通孔17の各部分でろう付けされる。このようにして一度のろう付け工程で偏平チューブ10と波型のインナーフィン14間、及び隣接する偏平チューブ10間がろう付けされる。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明の熱交換器は、小型燃料電池に供給される燃料ガス或いは、空気の温調または、その燃料電池から排出されるガスに含まれる水分を凝縮、或いは、改質燃焼排ガスから水分を凝縮する場合の熱交換器や、EGRクーラなどに適した熱交換器として利用できる。
【符号の説明】
【0042】
1 熱交換器
2 コア
3 ケーシング
3a 膨出部
3b 非膨出部
4 入口タンク
5 出口タンク
【0043】
6 冷却液供給口
7 冷却液排出口
8 遮蔽板
9 フランジ
10 偏平チューブ
10c 拡開部
11 第1プレート
11a 平坦部
11b 側壁
【0044】
12 第2プレート
12a 平坦部
12b 側壁
13 ディンプル
13a 間隙
14 インナーフィン
【0045】
15 液供給部
15a 接続部
15b 拡大開口部
16 間隙連通路
17 貫通孔
18 ろう材
110 閉塞部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部にインナーフィン(14)を有する複数の偏平チューブ(10)が互いに間隙(13a)を有して積層されたコア(2) と、コア(2) の両端に接続した一対の入口タンク(4)および出口タンク(5)と、コア(2) の外側を覆うケーシング(3) とを備え、各偏平チューブ(10)内に、前記タンク(4)を介して被冷却用の熱交換媒体が流通し、その偏平チューブ(10)の外面に冷却液を供給する冷却液供給口(6)が前記入口タンク(4)側に位置すると共に、冷却液排出口(7) が前記出口タンク(5)側に位置してケーシング(3) に設けられた熱交換器において、
偏平チューブ(10)は、溝型の第1プレート(11)の両側壁(11b) の内面が、溝形の第2プレート(12)の両側壁(12b)の外面に嵌着してなり、
前記冷却液供給口(6)に対向する位置にある前記偏平チューブ(10)間の前記隙間(13a)の入口が、前記側壁(11b)で遮蔽されて、前記冷却液供給口(6)よりも前記入口タンク(4)側に偏って偏平チューブ(10)間の隙間(13a)の開口が配置されたことを特徴とする熱交換器。
【請求項2】
請求項1において、
偏平チューブ(10)の両側に対向するケーシング(3) 部分が外側に所定間隔で複数膨出されており、各膨出部(3a)の内側の空間が偏平チューブ(10)の積層方向に並行する各間隙(13a)間を互いに連通する間隙連通路(16)とされていることを特徴とする熱交換器。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、
隣接する一方の偏平チューブ(10)の第1プレート(11)の溝底から外側に突出する複数のディンプル(13)と、隣接する他方の偏平チューブ(10)の第2プレート(12)の溝底から外側に突出する複数のディンプル(13)が互いに接触され、その接触する各対のディンプル(13)にそれぞれ貫通孔(17)が同軸状に形成され、一方のディンプル(13)の内側にろう材(18)が配置され、それを溶融して、インナーフィン(14)および互いに接触するディンプル(13)が一体的にろう付けされていることを特徴とする熱交換器。
【請求項4】
請求項3において、
第1プレート(11)と第2プレート(12)の板厚が0.2〜0.6mmの範囲に形成され、貫通孔(17)の口径はそれら板厚より大きく、且つ、1.5mmより小さい範囲に形成されていることを特徴とする熱交換器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−270982(P2010−270982A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−124014(P2009−124014)
【出願日】平成21年5月22日(2009.5.22)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成21年度、独立行政法人新エネルギー・産業技術開発機構、固体高分子形燃料電池実用化戦略的技術開発/要素技術開発/家庭用燃料電池システムの熱交換器の技術開発、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000222484)株式会社ティラド (289)
【Fターム(参考)】