説明

熱交換装置

【課題】外皮の熱膨張によって、内壁にクラックが発生することを防止する。
【解決手段】外筒11および内筒12が、同心状かつ半径方向に間隔をおいて配置されている。外筒11および内筒12間に低温ガス通路Lが、内筒12内に高温ガス通路Hがそれぞれ形成されている。内筒12は、金属製外皮21と、外皮21内面に被覆されている耐火材製内壁22とよりなる。内壁22にアンカ31が埋設されている。アンカ31は、外皮の熱膨張による外皮半径方向の変形を自由とするように外皮内面に支持されている外端部41を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、都市ごみ焼却炉や産業廃棄物焼却炉における廃棄物の焼却処理および焼却炉から排出される灰を溶融処理する過程で発生する高温の燃焼ガス(排ガス)の熱エネルギーを空気と熱交換することにより回収し、熱エネルギーの有効利用を図る熱交換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の熱交換装置としては、外筒および内筒が、同心状かつ半径方向に間隔をおいて配置されており、外筒および内筒間に低温ガス通路が、内筒内に高温ガス通路がそれぞれ形成されており、内筒は、金属製垂直状外皮と、外皮内面に被覆されている耐火材製内壁とよりなり、外皮内面には耐火材が貼り付けられているものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
この種の熱交換装置では、金属製外皮の熱膨張率は、耐火材製内壁の熱膨張率よりも大である。そのため、外皮の熱膨張にともなって内壁が外皮半径方向外向きに引っ張られると、内壁には引張応力が作用してクラックが発生する。クラックに高温ガスが侵入すると、外皮の高温腐食を招き、施設の安全操業を阻害するばかりでなく、熱交換装置の補修費用が発生するため経済的でない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−025375号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この発明の目的は、外皮の熱膨張によって、内壁にクラックが発生することを防止することができる熱交換装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この第1発明による熱交換装置は、外筒および内筒が、同心状かつ半径方向に間隔をおいて配置されており、外筒および内筒間に低温ガス通路が、内筒内に高温ガス通路がそれぞれ形成されており、内筒は、金属製外皮と、外皮内面に被覆されている耐火材製内壁とよりなり、内壁にアンカが埋設されており、アンカは、外皮の熱膨張による外皮半径方向の変形を自由とするように外皮内面に支持されている外端部を有しているものである。
【0007】
この第1発明による熱交換装置では、外皮がその熱膨張によって外皮半径方向に変形しても、その変形はアンカに伝達されず、内壁に引張応力が作用させられることがない。したがって、外皮の変形によって、内壁にクラックが発生することを防止できる。
【0008】
さらに、この第1発明による熱交換装置において、アンカの外端部から下向きに係合ロッドがのびており、係合ロッドは、支持枠に通されており、支持枠は、内壁に対し出没自在でありかつ外皮の熱膨張による外皮半径方向の変形量以上の間隔をおいて外皮半径方向に相対させられた内枠部材および外枠部材を有しており、内枠部材にアンカが載置されており、外枠部材は、外皮内面に固定されていると、支持枠だけのシンプルな構造によって、外皮に対しアンカを外皮半径方向の変形を自由に支持することができる。
【0009】
この第2発明による熱交換装置は、外筒および内筒が、同心状かつ半径方向に間隔をおいて配置されており、外筒および内筒間に低温ガス通路が、内筒内に高温ガス通路がそれぞれ形成されており、内筒は、金属製外皮と、外皮内面に被覆されている耐火材製内壁とよりなり、外皮は、外皮軸方向にのびた継ぎ目を有しており、継ぎ目の両縁部は、外皮の熱膨張による外皮周方向の変形量以上の幅でオーバーラップしうるように構成されており、内壁にアンカが埋設されており、アンカは、外皮の熱膨張による外皮周方向の変形を自由とするように外皮内面に支持されている外端部を有しているものである。
【0010】
この第2発明による他の熱交換装置では、外皮がその熱膨張によって変形しようとすると、継ぎ目の両縁部がオーバーラップさせられることにより、外皮がその半径方向には変形させられることなく、その周方向に変形させられ、その変形はアンカに伝達されず、内壁に引張応力が作用させられることがない。したがって、外皮の変形によって、内壁にクラックが発生することを防止できる。
【0011】
さらに、この第2発明による他の熱交換装置において、アンカの外端部から下向きに係合ロッドがのびており、係合ロッドは、支持枠に通されており、支持枠は、内壁に埋設されかつ係合ロッドの外皮周方向の移動を自由とするように係合ロッドを外皮半径方向から挟んでいる内枠部材および外枠部材と、内枠部材および外枠部材の対応する端部同士を連絡しかつ外皮の熱膨張による外皮周方向の変形量より大きい間隔をおいて外皮周方向に相対させられた一対の側枠部材とよりなり、内枠部材にアンカが載置されており、外枠部材は、外皮内面に固定されているいると、支持枠だけのシンプルな構造によって、外皮に対しアンカを外皮周方向の変形を自由に支持することができる。
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば、外皮の熱膨張によって、内壁にクラックが発生することを防止することができる熱交換装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】この発明による熱交換装置の斜視図である。
【図2】同熱交換装置の内筒の垂直縦断面図である。
【図3】図2に示す内筒冷間時の横断面図である。
【図4】図3のA−A線に沿う断面図である。
【図5】図2に示す内筒熱間時の横断面図である。
【図6】図5のB−B線に沿う断面図である。
【図7】変形例による内筒の要部を示す横断面図である。
【図8】図7に示す内筒冷間時の横断面図である。
【図9】図8のC−C線に沿う断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1を参照すると、外筒11および内筒12は、同心状かつ半径方向に間隔をおいて配置されている。外筒11および内筒12間に低温ガス通路Lが、内筒12内に高温ガス通路Hがそれぞれ形成されている。
【0015】
図2に、外筒11を省略して、内筒12のみが示されている。内筒12は、金属製垂直状外皮21と、外皮21内面に被覆されている耐火材製内壁22とよりなる。外皮21の熱膨張率は、内壁22のそれよりも大である。
【0016】
外皮21の上端は、定位置23にハンガ24によって吊下げられている。外皮21の下端は、エクスパンション25によって伸縮自在に受けられている。エクスパンション25は、蛇腹筒状伸縮部材26の内側にセラミックウール27を充填したものである。
【0017】
内壁22の高さ方向に所定間隔で設けられる複数カ所の円周上には、各円周毎に、複数のアンカ31が埋設されている。各アンカ31には支持枠32が備えられている。
【0018】
図3および図4に、アンカ31および支持枠32周辺部の冷間時の状態が、図5および図6に、その熱間時の状態がそれぞれ詳細に示されている。
【0019】
アンカ31は、外端部41から内壁22半径方向中心にむかって水平面内においてY字をなして拡がるアンカ本体42と、内壁22外面にそって外端部41から垂下させられている係合ロッド43とよりなる。
【0020】
支持枠32は、内壁22外面におけるアンカ本体42の下方に形成された半径方向凹所44に対し出没自在に収容されかつ係合ロッド43が通された水平方形枠状ものであって、内壁22半径方向に間隔をおいて相対させられている内枠部材51および外枠部材52と、内枠部材51および外枠部材52の対応する端部同士を連絡している一対の側枠部材53、54とよりなる。外枠部材52は、外皮21内面に溶接により固定されている。
【0021】
冷間時において、外皮21内面および内壁22外面は、ほぼ接触させられている。支持枠32のほぼ全体は、凹所44に収容されている。アンカ本体42は、内枠部材51に載置されている。係合ロッド43は、内枠部材51および外枠部材52の長さの中程のところにおいて外枠部材52寄りのところを高さ方向の下方へのびている。
【0022】
熱間時において、外皮21は、その半径方向外向きに膨張させられるが、これよりも内壁22の膨張は小である。その膨張量の差だけ、外皮21および内壁22間には隙間が形成される。外皮21の膨張にともなって、外皮21とともに支持枠32は外皮21半径方向外向きに移動させられる。その結果、凹所44から支持枠32が引き出されて、アンカ本体42が内枠部材51上を滑りながら、係合ロッド43は、内枠部材51寄りのところまで相対的に移動させられる。内枠部材51および外枠部材52の間隔は、外皮21熱膨張による外皮21半径方向の変形量以上でなければならない。凹所44から支持枠32が引き出された状態で、支持枠32にアンカ31を介して内壁22が支持されることになるが、外皮21の熱膨張にともなう引張応力は内壁22に作用させられることは無い。
【0023】
一方、外皮21の熱膨張により、外皮21は、その軸方向に伸張させられるが、これは、エクスパンション25によって吸収される。
【0024】
図7〜図9に、他の実施の形態が示されている。図7に、内筒12の外皮21の一部のみが示されている。外皮21の周方向の一部には、外皮21軸方向にのびた縦方向継ぎ目61が形成されている。継ぎ目61の一方の縁部には継ぎ目部材62が設けられている。継ぎ目部材62は、継ぎ目61の他方の縁部を外皮21周方向および軸方向に摺動自在にはめ入れた横断面輪郭コ字状シール溝63を有している。
【0025】
この実施の形態では、図8および図9に示すアンカ71および支持枠72が用いられれている。
【0026】
アンカ71は、外端部81から内壁22半径方向中心にむかって水平面内においてV字をなして拡がるアンカ本体82と、内壁22外面にそって外端部81から垂下させられている係合ロッド83とよりなる。この変形例においては、上記半径方向凹所44に代わり、支持枠72を収納した凹所84が内壁22に形成されている。
【0027】
支持枠72は、上記の実施の形態と同様に、内枠部材91、外枠部材92および一対の側枠部材93、94よりなる。内枠部材91は、アンカ本体82を支持している。外枠部材92は、外皮21内面に固定されている。内枠部材91および外枠部材92の間隔は、係合ロッド83を緩く挟んでその相対移動を許す程度でよい。両側枠部材93、94の間隔は、外皮21の熱膨張による外皮21周方向の変形量より大きく設定されている。
【0028】
外皮21が熱膨張すると、継ぎ目61の間隔が大小に変化して、外皮21は、周方向には変形するが、その半径方向には変形させられない。外皮21の周方向の変形により、外皮21および内壁22は周方向に相互に相対的に移動させられる。この移動にともない、係合ロッド83は、支持枠72内を相対的に移動させられることにより、アンカ71を介して内壁22に外力が作用させられることはない。内壁22は半径方向外向きに小さく膨張させられるが、耐火材のクラック防止のために、内壁22の膨張により内壁22外面が外皮21の内面に押し付けることのないように、予め設計されている。冷間時には内壁22外面と外皮21内面の間に隙間があってもよい。
【0029】
上記の2つの実施の形態において、Y字状アンカ本体42またはV字状アンカ本体82を有するアンカ31、71のいずれを用いても良い。さらに、施行時において、アンカ31、71および支持枠32、72にワックスを被覆したり、支持枠32、72内にワックスを充填しておいて、ワックスを燃焼もしくは気化させて消失させるようにすれば、支持枠32、72を収容するための凹所44、84を簡単に形成することができる。
【産業上の利用可能性】
【0030】
この発明による熱交換装置は、都市ごみ焼却炉や産業廃棄物焼却炉における廃棄物の焼却処理および焼却炉から排出される灰を溶融処理する過程で発生する高温の燃焼ガス(排ガス)の熱エネルギーを空気と熱交換することにより回収し、熱エネルギーの有効利用を図ることを達成するのに適している。
【符号の説明】
【0031】
11 外筒
12 内筒
21 外皮
22 内壁
31 アンカ
41 アンカ外端部
L 低温ガス通路
H 高温ガス通路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外筒および内筒が、同心状かつ半径方向に間隔をおいて配置されており、外筒および内筒間に低温ガス通路が、内筒内に高温ガス通路がそれぞれ形成されており、内筒は、金属製外皮と、外皮内面に被覆されている耐火材製内壁とよりなり、内壁にアンカが埋設されており、アンカは、外皮の熱膨張による外皮半径方向の変形を自由とするように外皮内面に支持されている外端部を有している熱交換装置。
【請求項2】
アンカの外端部から下向きに係合ロッドがのびており、係合ロッドは、支持枠に通されており、支持枠は、内壁に対し出没自在でありかつ外皮の熱膨張による外皮半径方向の変形量以上の間隔をおいて外皮半径方向に相対させられた内枠部材および外枠部材を有しており、内枠部材にアンカが載置されており、外枠部材は、外皮内面に固定されている請求項1に記載の熱交換装置。
【請求項3】
外筒および内筒が、同心状かつ半径方向に間隔をおいて配置されており、外筒および内筒間に低温ガス通路が、内筒内に高温ガス通路がそれぞれ形成されており、内筒は、金属製外皮と、外皮内面に被覆されている耐火材製内壁とよりなり、外皮は、外皮軸方向にのびた継ぎ目を有しており、継ぎ目の両縁部は、外皮の熱膨張による外皮周方向の変形量以上の幅でオーバーラップしうるように構成されており、内壁にアンカが埋設されており、アンカは、外皮の熱膨張による外皮周方向の変形を自由とするように外皮内面に支持されている外端部を有している熱交換装置。
【請求項4】
アンカの外端部から下向きに係合ロッドがのびており、係合ロッドは、支持枠に通されており、支持枠は、内壁に埋設されかつ係合ロッドの外皮周方向の移動を自由とするように係合ロッドを外皮半径方向から挟んでいる内枠部材および外枠部材と、内枠部材および外枠部材の対応する端部同士を連絡しかつ外皮の熱膨張による外皮周方向の変形量より大きい間隔をおいて外皮周方向に相対させられた一対の側枠部材とよりなり、内枠部材にアンカが載置されており、外枠部材は、外皮内面に固定されている請求項3に記載の熱交換装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−36634(P2013−36634A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−170851(P2011−170851)
【出願日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【出願人】(000005119)日立造船株式会社 (764)
【Fターム(参考)】