説明

熱伝導性樹脂組成物

【課題】従来は熱伝導性を有する無機充填剤が高充填されても保存性が安定すると共に低温硬化することが困難だった。
【解決手段】以下の(A)〜(D)成分を構成成分とする熱伝導性樹脂組成物である。
(A)成分:1分子中にエポキシ基を1以上有する化合物
(B)成分:1分子中にチオール基を2以上有するポリチオール化合物
(C)成分:アミンイミド化合物、ピロガロール、レソルシノール、カテコールの中から少なくとも1種類選ばれる硬化促進剤
(D)成分:熱伝導性を有する粉体

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エポキシ基を有する化合物、ポリチオール化合物、硬化促進剤、熱伝導性を有する粉体からなる樹脂組成物で、保存性と低温硬化性に優れた熱伝導性樹脂組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の高性能化、小型化への要求が高まり、半導体の高密度化、高機能化が要請されている。半導体の高密度化、高機能化を達成するためには、半導体を実装する回路基板もまた小型化する必要があり、回路基板で発生した熱を逃がす事を考慮した設計が重要となってきている。その為、回路基板に用いられる封止材料は高い熱伝導性を持っていることが望まれている。
【0003】
熱伝導性を有する樹脂組成物としては特許文献1の様に、エポキシ基を有する化合物とポリフェノール化合物を樹脂成分として充填剤を高充填しているものが知られている。この樹脂組成物は主に半導体デバイスのパッケージに使用される封止材料としてこの様な樹脂組成物を使用されている。エポキシ基を有する化合物とポリフェノール化合物を反応させるには180〜200℃と高温で加熱すると共に長時間加熱する必要がある。また、特許文献2では、ポリフェノール化合物をエポキシ樹脂に溶解させると粘度が高くなるため、樹脂組成物の低粘度化を図る目的でポリフェノール化合物ではなくピロガロールを使用している。
【0004】
近年、電子機器は軽量化の要求によりプラスチック材料が多用されるようになってきている。そのため、接着剤にはプラスチック材料を侵さない程度の硬化温度として、70〜90℃位の低温で硬化され、かつ作業性の向上のために120分未満という短時間で硬化する樹脂組成物が求められている。
【0005】
一般に、エポキシ樹脂の硬化剤として、ポリアミン化合物、前記ポリフェノール化合物、酸無水物、ジシアンジアミドなどを使用する。さらに、硬化速度を上げるために、硬化促進剤としてイミダゾールなどの三級アミン化合物を硬化剤と一緒に添加する手法が知られているが、上述の様な低温かつ短時間で硬化させることが困難である。低温かつ短時間の硬化を実現させるため、特許文献3に示されてる通りエポキシ樹脂とポリチオール化合物からなる樹脂組成物が知られている。この組成物はさらに保存性を維持しつつ反応性を向上させるため、三級アミンとエポキシ樹脂を途中まで反応させた硬化促進剤であるアミンアダクト化合物を添加している。しかしながら、特許文献3の樹脂組成物に充填剤が多量に含まれた場合、混合・撹拌時に増粘をする傾向があり粘度の安定性が低くなる。これは充填剤が物理的な力によりアミンアダクト化合物を摩耗させ、アミンアダクト化合物が微細化すると共に表面積が増加することでエポキシ樹脂とポリチオール化合物が急激に反応し粘度上昇を伴うと考えられる。さらには保存時にゲル化による増粘を伴う。
【0006】
一方、アミンイミド化合物は、特許文献4や特許文献5の様に、加熱により転移反応を起こして分解してイソシアネート化合物と三級アミンを生成することが知られている。生成した三級アミンは、エポキシの硬化剤として応用することができることが知られている。しかしながら、アミンイミド化合物が分解するには通常130℃以上の温度が必要であり、接着剤や塗料への応用を考えた場合、熱に弱い被着体には使用できない欠点があった。
【0007】
【特許文献1】特開平6−97325号公報
【特許文献2】特開平8−198937号公報
【特許文献3】特開平6−211969号公報
【特許文献4】特開昭43−12900号公報
【特許文献5】特開昭47−35100号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来は、熱伝導性を有する無機充填剤が高充填されると、保存性安定を維持しつつ低温硬化することが困難だった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは上記の事情を鑑み、これらの課題を改善するべく鋭意検討した結果、熱伝導性を有する無機充填剤が高充填されても保存性が安定すると共に低温硬化する熱伝導性樹脂組成物に関する特許を出願するに至った。
【0010】
本発明の要旨を以下に説明する。本発明の第一の形態は、以下の(A)〜(D)成分を構成成分とする熱伝導性樹脂組成物である。
(A)成分:1分子中にエポキシ基を1以上有する化合物
(B)成分:1分子中にチオール基を2以上有する化合物
(C)成分:アミンイミド化合物、ピロガロール、レソルシノール、カテコールの中から少なくとも1種類選ばれる硬化促進剤
(D)成分:熱伝導性を有する粉体
【0011】
本発明の第二の形態は、前記(A)成分と前記(B)成分と前記(C)成分の混合物100重量部に対して、前記(D)成分が300〜900重量部含まれる請求項1に記載の熱伝導性樹脂組成物である。
【0012】
本発明の第三の形態は、前記(D)成分がアルミナ粉からなる請求項1または2に記載の熱伝導性樹脂組成物である。
【0013】
本発明の第四の形態は、請求項1〜3のいずれか1項に記載の熱伝導性樹脂組成物を硬化することにより得られた熱伝導性樹脂硬化物である。
【0014】
本発明の詳細を以下に説明する。本発明で使用することができる(A)成分は、1分子中に化1の様なエポキシ基を1以上有する化合物で有れば特に限定は無いが、1分子中にエポキシ基を2以上有する化合物と1分子中にエポキシ基を1有する化合物が混合されたものが好ましい。(以下、エポキシ基を有する化合物をエポキシ化合物と略す)
【0015】
【化1】

【0016】
多官能のエポキシ化合物の具体例としては、エピクロルヒドリンとビスフェノール類などの多価フェノール類や多価アルコールとの縮合によって得られるもので、例えばビスフェノールA型、臭素化ビスフェノールA型、水添ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ビスフェノールS型、ビスフェノールAF型、ビフェニル型、ナフタレン型、フルオレン型、ノボラック型、フェノールノボラック型、オルソクレゾールノボラック型、トリス(ヒドロキシフェニル)メタン型、テトラフェニロールエタン型などのグリシジルエーテル型エポキシ樹脂を例示することができる。その他エピクロルヒドリンとフタル酸誘導体や脂肪酸などのカルボン酸との縮合によって得られるグリシジルエステル型エポキシ樹脂、エピクロルヒドリンとアミン類、シアヌル酸類、ヒダントイン類との反応によって得られるグリシジルアミン型エポキシ樹脂、さらには様々な方法で変性したエポキシ樹脂を挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0017】
単官能エポキシ化合物の具体例としては、フェニルグリシジルエーテル、クレシルグリシジルエーテル、p−t−ブチルフェニルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、C12〜C14アルコールグリシジルエーテル,ブタンジグリシジルエーテル、ヘキサンジグリシジルエーテル、シクロヘキサンジメチルジグリシジルエーテル、又はポリエチレングリコールもしくはポリプロピレングリコールをベースとするグリシジルエーテルなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0018】
本発明で使用することができる(B)成分としては、1分子中に2以上のチオール基を有する化合物であれば限定は無いが、保存安定性の観点から塩基性不純物含量が極力少ないものが好ましい。具体例としては、3−メトキシブチル3−メルカプトプロピオネート、2−エチルヘキシル3−メルカプトプロピオネート、トリデシル3−メルカプトプロピオネート、トリメチロールプロパントリスチオプロピオネート、ペンタエリストールテトラキスチオプロピオネート、メチルチオグリコレート、2−エチルヘキシルチオグリコレート、エチレングリコールビスチオグリコレート、1,4−ブタンジオールビスチオグリコレート、トリメチロールプロパントリスチオグリコレート、ペンタエリストールテトラキスチオグリコレート、ジ(2−メルカプトエチル)エーテル、1−ブタンチオール、1−ヘキサンチオール、シクロヘキシルメルカプタン、1,4−ブタンジチオール、3−メルカプト2−ブタノール、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ベンゼンチオール、ベンジルメルカプタン、1,3,5−トリメルカプトメチルベンゼン、1,3,5−トリメルカプトメチル−2,4,6−トリメチルベンゼン、末端チオール基含有ポリエーテル、末端チオール基含有ポリチオエーテル、エポキシ化合物と硫化水素との反応によって得られるチオール化合物、ポリチオール化合物とエポキシ化合物との反応によって得られる末端チオール基を有するチオール化合物等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。前記(A)成分と(B)成分の混合比が、(B)成分のSH当量数/(A)成分のエポキシ当量数比で0.5〜1.2が好ましい。市販されているポリチオール化合物としては、ジャパンエポキシレジン株式会社製のjERキュアQX40(4官能)、jERキュアQX60(6官能)、堺化学工業株式会社製のTEMPIC(3官能)、TMMP(3官能)、PEMP(4官能)、DPMP(6官能)などが上げられる。
【0019】
本発明で使用することができる(C)成分としては、アミンイミド化合物、ピロガロール、レソルシノール、カテコールの中から少なくとも1種類選ばれる。低温硬化性を実現するためには、前記(A)成分が100重量部に対して(C)成分が1〜30重量部添加されている事が好ましい。本発明における硬化促進剤とは、主剤であるエポキシ化合物と硬化剤であるポリチオール化合物の反応を促進させるための添加剤を指す。(以下、アミンイミド化合物、ピロガロール、レソルシノール、カテコールを総称して硬化促進剤と呼ぶ。)
【0020】
アミンイミド化合物とは化2の様なもので、前記(A)成分と前記(B)成分と完全に相溶するものが好ましい。具体例としては、1,1−ジメチル−1−(2−ヒドロキシプロピル)アミンベンジルイミド、1,1−ジメチル−1−(2−ヒドロキシプロピル)アミンマンデルイミド、1,1−ジメチル−1−(2−ヒドロキシプロピル)アミン−2−ヒドロキシカプロイミド、1,1−ジメチル−1−(2−ヒドロキシプロピル)アミン−2−ヒドロキシイソブチルイミド、1,1−ジメチル−1−(2−ヒドロキシ−3−アリロキシプロピル)アミンベンジルイミド、1,1−ジメチル−1−(2−ヒドロキシ−3−アリロキシプロピル)アミンマンデルイミド、1,1−ジメチル−1−(2−ヒドロキシ−3−アリロキシプロピル)アミン−2−ヒドロキシカプロイミド、1,1−ジメチル−1−(2−ヒドロキシ−3−アリロキシプロピル)アミン−2−ヒドロキシイソブチルイミド、1,1−ジメチル−1−(2,3−ジヒドロキシプロピル)アミンベンジルイミド、1,1−ジメチル−1−(2,3−ジヒドロキシプロピル)アミンマンデルイミド、1,1−ジメチル−1−(2,3−ジヒドロキシプロピル)アミン−2−ヒドロキシカプロイミド、1,1−ジメチル−1−(2,3−ジヒドロキシプロピル)アミン−2−ヒドロキシイソブチルイミド、1,1−ジメチル−1−(2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル)アミンベンジルイミド、1,1−ジメチル−1−(2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル)アミンマンデルイミド、1,1−ジメチル−1−(2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル)アミン−2−ヒドロキシカプロイミド、1,1−ジメチル−1−(2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル)アミン−2−ヒドロキシイソブチルイミド、ビス−1,1−ジメチル−1−(2−ヒドロキシプロピル)アミンタータルイミド、ビス−1,1−ジメチル−1−(2−ヒドロキシプロピル)アミンマリイミド、ビス−1,1−ジメチル−1−(2−ヒドロキシ−3−アリロキシプロピル)アミンタータルイミド、ビス−1,1−ジメチル−1−(2−ヒドロキシ−3−アリロキシプロピル)アミンマリイミド、ビス−1,1−ジメチル−1−(2,3−ジヒドロキシプロピル)アミンタータルイミド、ビス−1,1−ジメチル−1−(2,3−ジヒドロキシプロピル)アミンマリイミド、ビス−1,1−ジメチル−1−(2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル)アミンタータルイミド、ビス−1,1−ジメチル−1−(2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル)アミンマリイミドなどが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0021】
【化2】

(R:カルボニル基に結合する炭素に水酸基を少なくとも1有して分子量が50以上でも良いアルキル基またはアリール基。RおよびR:アルキル基。R:置換基を有しても良いアルキル基または−CH−CH(OH)−R(R:置換基を有しても良いアルキル基またはアリール基を示す))
【0022】
アミンイミド化合物はエポキシ化合物に相溶して使用することができるため、充填剤と同時に混合・撹拌しても粘度上昇に影響を与えない。反応機構は充分に解明されていないが、加熱時にアミンイミド化合物からアミン化合物が発生して、エポキシ化合物とポリチオール化合物の反応を促進させる硬化促進剤として作用すると推測される。
【0023】
(C)成分として使用する事ができるピロガロール(1,2,3−Trihydroxybenzene)、レソルシノール(1,3−Dihydroxybenzene)、カテコール(1,2−Dihydroxybenzene)はアミンイミド化合物と構造が異なるため、反応機構はアミンイミド化合物の場合と異なると推測される。樹脂組成物が酸性になるとチオール基の反応性は極端に低下する傾向がある。これは硫黄と水素が解離しにくくなるためと考えられる。ピロガロール、レソルシノール、カテコールはフェノールよりも酸性が高い傾向がある。しかしながら、本発明ではフェノール化合物では反応が進まず、ピロガロール、レソルシノール、カテコールでは反応促進効果があることが検討の結果明らかになった。反応機構は充分に解明されていないが、化3の様にピロガロールは酸を発生すると同時にアニオン種も発生しているため、このアニオン種がチオール基の水素を解離させて反応を促進させていると推測される。レソルシノール、カテコールにも同様の事が言えると推測される。
【0024】
【化3】

【0025】
ピロガロール、レソルシノール、カテコールは必ずしもエポキシ樹脂に溶解させて使用することが好ましいが、粉砕した状態で樹脂組成物に混合・撹拌しても良い。固体のまま添加しても、エポキシ化合物とポリチオール化合物を低温硬化させるには充分な反応促進効果が得られる。
【0026】
本発明で使用することができる(D)成分としては、熱伝導性を有する粉体であれば特に限定は無く、酸化金属粉および/または金属粉が挙げられる。酸化金属粉の具体例としては、アルミナ、シリカ、マグネシア、弁柄などが挙げられる。また、金属粉の具体例としては、アルミニウム、銅、鉄、銀またはステンレスなどの合金も含まれる。回路基板に用いる場合は、電極のショートを考慮して酸化金属粉の方が望ましい。工業材料としての入手のしやすさと、素材そのものの熱伝導率を考慮すればアルミナが最も好ましい。熱伝導性を有する粉体には平均粒径や形状が異なるものが存在し、熱伝導性を安定化する観点から、平均粒径が異なる2種類以上のものを組み合わせることが好ましい。一般的には平均粒径0.1〜300μmの粉体が使用できるが、樹脂に混練する関係上、平均粒径1〜30μmのものが好ましい。一方、電極間のショートの影響が無い箇所には金属粉を使用することができる。
【0027】
(D)成分の添加量としては、前記(A)成分と(B)成分と(C)成分の混合物100重量部に対して、前記(D)成分が300〜900重量部が好ましい。混練後の性状と熱伝導性を考慮すると、600〜800重量部が最も好ましい。
【0028】
本発明の特性を損なわない範囲において顔料、染料などの着色剤、金属粉、炭酸カルシウム、タルク、水酸化アルミニウム等の無機充填剤、難燃剤、有機充填剤、可塑剤、酸化防止剤、消泡剤、シラン係カップリング剤、レベリング剤、レオロジーコントロール剤、溶剤等の添加剤を適量配合しても良い。これらの添加により、樹脂強度・接着強さ・作業性・保存性等に優れた組成物およびその硬化物が得られる。また、全ての成分を混練した一液型の樹脂組成物でも、成分を分割した二液型の樹脂組成物としても使用することができる。
【発明の効果】
【0029】
熱伝導性を有する無機充填剤が高充填されても保存性が安定し、かつ低温硬化することを可能にする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下に、実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0031】
[アミンイミド化合物1の合成]
ベンジル酸メチル:24.2g(0.1mol)、1,1−ジメチルヒドラジン:6.0g(0.1mol)、プロピレンオキシド:5.8g(0.1mol)を2−プロパノール100mlに溶解し、25℃で3日間撹拌する。撹拌終了後、減圧して溶媒と副生したメタノールを留去し得られる白色結晶を酢酸エチルにより再結晶した。化4の構造のアミンイミド化合物1として得た。
【0032】
【化4】

【0033】
[アミンイミド化合物2の合成]
2−ヒドロキシイソ酪酸メチル11.8g(0.1mol)、1,1−ジメチルヒドラジン6.0g(0.1mol)、プロピレンオキシド5.8g(0.1mol)を2−プロパノール100mlに溶解し、25℃で3日間撹拌する。撹拌終了後、減圧して溶媒と副生したメタノールを留去し得られる白色結晶を酢酸エチルにより再結晶して、化5の構造のアミンイミド化合物2として得た。
【0034】
【化5】

【0035】
[実施例1〜15]
放熱性樹脂組成物を調製するために下記成分を準備した。
(A)成分:エポキシ化合物
・水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂(サントートST−4000D 東都化成株式会社製)
・ビスフェノールA型エポキシ樹脂とビスフェノールF型エポキシ樹脂の混合物(エピクロンEXA−835LV 大日本インキ化学工業株式会社製)
・フェニルグリシジルエーテル(デナコールEX−141 ナガセケムテックス株式会社製)
(B)成分:ポリチオール化合物
・4官能チオール化合物(jERキュアQX40 ジャパンエポキシレジン株式会社製)
(C)成分:硬化促進剤
・ピロガロール(東京化成工業株式会社製)
・レソルシノール(東京化成工業株式会社製)
・カテコール(東京化成工業株式会社製)
・アミンイミド化合物1(前記合成1)
・アミンイミド化合物2(前記合成2)
(D)成分:熱伝導性を有する粉体
・平均粒径1.1μmのアルミナ粉(AL−43−L 昭和電工株式会社製)
・平均粒径4.6μmのアルミナ粉(AL−43−KT 昭和電工株式会社製)
・平均粒径10μmのアルミナ粉(DMA−10 電気化学工業株式会社製)
・平均粒径1.5μmの銅粉(Cu−HWQ(1.5μm) 福田金属箔粉工業株式会社製)
・平均粒径10μmの銅粉(Cu−HWQ(10μm) 福田金属箔粉工業株式会社製)
【0036】
上記(A)成分と(C)成分を60℃で加熱しながら30分撹拌する。(B)成分を添加して10分撹拌した後、(D)成分を添加して2時間撹拌する。こうして、表1に示す組成の熱伝導性樹脂組成物を調整した。表1の数値は全て質量部を表す。
【0037】
【表1】

【0038】
[比較例1〜8]
放熱性樹脂組成物を調製するために下記成分を準備した。
(A)成分:エポキシ化合物
・水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂(サントートST−4000D 東都化成株式会社製)
・ビスフェノールA型エポキシ樹脂とビスフェノールF型エポキシ樹脂の混合物(エピクロンEXA−835LV 大日本インキ化学工業株式会社製)
・フェニルグリシジルエーテル(デナコールEX−141 ナガセケムテックス株式会社製)
(B)成分:ポリチオール化合物
・4官能チオール化合物(jERキュアQX40 ジャパンエポキシレジン株式会社製)
(C’)成分:硬化促進剤
・液状ポリフェノール化合物(MEH−8005 明和化成工業株式会社)
・アミンアダクト化合物(アミキュアPN−23 味の素ファインテクノ株式会社)
・アミンアダクト化合物(フジキュアーFXE−1000 富士化成工業株式会社)
・カプセル型アミンアダクト化合物(ノバキュアHX−3742 旭化成ケミカルズ株式会社)
(D)成分:熱伝導性を有する粉体
・平均粒径1.1μmのアルミナ粉(AL−43−L 昭和電工株式会社製)
・平均粒径4.6μmのアルミナ粉(AL−43−KT 昭和電工株式会社製)
・平均粒径10μmのアルミナ粉(DMA−10 電気化学工業株式会社製)
【0039】
上記(A)成分と(B)成分と(C’)成分を10分撹拌した後、(D)成分を添加して2時間撹拌する。こうして、表2に示す組成の熱伝導性樹脂組成物を調製した。こうして、表2に示す組成の熱伝導性樹脂組成物を調整した。表2の数値は全て質量部を表す。
【0040】
【表2】

【0041】
実施例1〜15と比較例1〜8について熱伝導性と保存性の確認を行った。また、それらの結果を表3と表4に示す。
【0042】
[熱伝導性]
80℃にて2時間加熱して、薄膜状の樹脂組成物硬化物を作成する。放置して室温に戻った段階で、挿入法により熱伝導率(W/(m・k))を測定する。挿入法とは、複数のリファレンスを用いてX軸:リファレンスの熱伝導率、Y軸:偏差(数1)により数値をプロットし、Y軸の値が0の時のX軸の値を近似式により計算する。その時のX軸の値が樹脂組成物硬化物の熱伝導率である。加熱により硬化しなかった樹脂組成物は「未硬化」と記載した。
メーカー:京都電子工業株式会社製 QTM−D3
測定条件
試験方法:挿入法
リファレンス:発泡ポリエチレン(λ=0.0352W/(m・k))
シリコーンゴム(λ=0.238W/(m・k))
石英(λ=1.417W/(m・k))
硬化物の厚さ:0.5mm
【0043】
【数1】

【0044】
[保存性]
プラスチック容器に樹脂組成物を100g採取して−20℃雰囲気に放置する。測定時は樹脂組成物の温度が室温になってから粘度を測定し、測定終了後にプラスチック容器を−20℃雰囲気に戻して保存性の確認を継続する。試験開始から5日経過する毎に以下の仕様・測定条件に従い粘度測定を行い、測定上限値を超えるまで測定を継続した。最長で90日まで確認を行った。
粘度計の仕様
メーカー:東機産業株式会社 TV−33型粘度計(EHD型)
測定条件
コーンローター:3°×R14
回転速度:0.5rpm
測定時間:5分
測定上限値:1024Pa・s
測定温度:25℃
【0045】
【表3】

【0046】
【表4】

【0047】
実施例1〜3と比較例1〜2から、フェノール化合物には無い硬化促進剤としての効果がピロガロール、レソルシノール、カテコールに存在することが分かる。また、実施例8〜9と比較例3〜8からアミンイミド化合物はアミン化合物であるにも係わらず、アミンアダクト化合物と比較して保存性を有すると共に低温硬化性も実現している。さらに、比較例よりも全般的に実施例の方が高い熱伝導性を有している。これらの事から、従来では実現し得なかった低温硬化性と保存性を併せ持つ熱伝導性樹脂組成物を得ることが出来た。
【産業上の利用可能性】
【0048】
放熱材料として一般的に知られている材料としてはグリス状やゲル状のものが多い。それらの材料は接着力が必要とされない部分に使用されることが多い。一方、本発明では放熱性を有すると共に接着力も有するため、従来品とは異なる領域で使用することが可能である。また、本発明は低温で硬化することが出来るため、半導体分野をはじめとし、DVD、HDDなどの電子分野にも使用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の(A)〜(D)成分を構成成分とする熱伝導性樹脂組成物。
(A)成分:1分子中にエポキシ基を1以上有する化合物
(B)成分:1分子中にチオール基を2以上有する化合物
(C)成分:アミンイミド化合物、ピロガロール、レソルシノール、カテコールの中から少なくとも1つ選ばれる硬化促進剤
(D)成分:熱伝導性を有する粉体
【請求項2】
前記(A)成分と前記(B)成分と前記(C)成分の混合物100重量部に対して、前記(D)成分が300〜900重量部含まれる請求項1に記載の熱伝導性樹脂組成物。
【請求項3】
前記(D)成分がアルミナ粉からなる請求項1または2に記載の熱伝導性樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の熱伝導性樹脂組成物を硬化することにより得られた熱伝導性樹脂硬化物。

【公開番号】特開2009−269984(P2009−269984A)
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−120849(P2008−120849)
【出願日】平成20年5月7日(2008.5.7)
【出願人】(000132404)株式会社スリーボンド (140)
【Fターム(参考)】