説明

熱伝達組成物

本発明は、約82〜約88重量%のトランス‐1,3,3,3‐テトラフルオロプロペン(R‐1234ze(E))および約12〜約18重量%の1,1‐ジフルオロエタン(R‐152a)から本質的になる熱伝達組成物を提供する。本発明は、約5〜約85重量%のR‐1234ze(E)、約2〜約20重量%のR‐152aおよび約5〜約60重量%の1,1,1,2‐テトラフルオロエタン(R‐134a)を含んでなる熱伝達組成物も提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱伝達組成物、特にR‐134a、R‐152a、R‐1234yf、R‐22、R‐410A、R‐407A、R‐407B、R‐407C、R507およびR‐404aのような既存の冷媒の代替物として適する熱伝達組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
明細書中における既発表文献またはいずれかの背景の掲載または考察は、文献または背景が最新技術の一部であるか、または一般常識である、という認識として必ずしも受け取るべきでない。
【0003】
機械冷却システムおよび関連熱伝達装置、例えばヒートポンプおよび空調システムは周知である。このようなシステムにおいて、冷媒液は周辺ゾーンから熱をうけとり低圧で蒸発する。得られた蒸気は次いで圧縮され、凝縮器へ送られ、そこでそれが凝縮して、第二ゾーンへ熱を放出し、凝縮液は膨張弁を通って蒸発器へ戻され、こうしてサイクルを完了する。蒸気を圧縮して液体を送り出すために要する機械的エネルギーは、例えば電気モーターまたは内燃機関により供給される。
【0004】
適切な沸点および高い気化潜熱を有することに加えて、冷媒で好ましい性質としては、低毒性、不燃性、非腐食性、高安定性および不快臭がないことが挙げられる。他の望ましい性質は、25バール以下の圧力で速やかな圧縮性、圧縮時の低い吐出温度、高い冷却能力、高い効率(高い成績係数)および望ましい蒸発温度で1バール超の蒸発器圧力である。
【0005】
ジクロロジフルオロメタン(冷媒R‐12)は性質の適切な組合せを有し、長年にわたり最も広く用いられた冷媒であった。完全および部分的ハロゲン化クロロフルオロカーボンが地球の保護オゾン層を損なっているという国際的問題のために、それらの製造および使用が厳しく制限され、最終的には完全に廃止されるという一般協定があった。ジクロロジフルオロメタンの使用は1990年代に段階的に廃止された。
【0006】
クロロジフルオロメタン(R‐22)は、その低いオゾン破壊係数のために、R‐12の代替物として導入された。R‐22が強力な温室効果ガスであるという問題から、その使用もまた段階的に廃止されつつある。
【発明の開示】
【0007】
本発明に関するタイプの熱伝達装置は本質的に閉鎖系であるが、設備の作動中またはメンテナンス作業中における漏出のために大気への冷媒の損失が生じうる。したがって、ゼロオゾン破壊係数を有する物質で完全および部分的ハロゲン化クロロフルオロカーボン冷媒を置き換えることが重要である。
【0008】
オゾン破壊の可能性に加えて、大気中で有意な濃度のハロカーボン冷媒は地球温暖化(いわゆる温室効果)に関与しているかもしれないと示唆されてきた。したがって、ヒドロキシルラジカルのような他の大気成分と反応可能な能力の結果として、または光分解プロセスによる速やかな分解の結果として、比較的短い大気寿命を有する冷媒を用いることが望ましいのである。
【0009】
R‐410AおよびR‐407冷媒(R‐407A、R‐407BおよびR‐407Cを含む)がR‐22の代替冷媒として導入されてきた。しかしながら、R‐22、R‐410AおよびR‐407冷媒はすべて高い地球温暖化係数(GWP、温室温暖化係数としても知られる)を有している。
【0010】
1,1,1,2‐テトラフルオロエタン(冷媒R‐134a)がR‐12の代替冷媒として導入された。しかしながら、それほどのオゾン破壊係数でないにもかかわらず、R‐134aは1300のGWPを有している。それより低いGWPを有するR‐134aの代替物を見つけることが望まれるのである。
【0011】
R‐152a(1,1‐ジフルオロエタン)がR‐134aの代替物として特定されていた。それはR‐134aよりやや効率的であり、120の温室温暖化係数を有している。しかしながら、R‐152aの可燃性は、例えば自動車空調システムにおいてその安全な使用を行う上で、高すぎると判断されている。特に、空気中におけるその可燃下限は低すぎ、その火炎速度は高すぎ、その点火エネルギーは低すぎると考えられている。
【0012】
このように、低燃焼性のような改善された性質を有する代替冷媒を提供する必要性がある。フルオロカーボン燃焼化学は複雑かつ予測不能である。不燃性フルオロカーボンと可燃性フルオロカーボンとの混合が流体の可燃性を減らす、または空気中における可燃性組成物の範囲を減らすとは、必ずしも限らない。例えば、不燃性R‐134aが可燃性R‐152aと混合されると、該混合物の可燃下限が予測不能なように変化することを、本発明者らは発見した。三元組成物が考えられると、状況はより一層複雑で予測しづらくなる。
【0013】
ほとんどまたは全く修正なく冷却装置のような既存の装置に用いられる代替冷媒を提供する必要性もある。
【0014】
R‐1234yf(2,3,3,3‐テトラフルオロプロペン)が、ある用途、特に自動車空調またはヒートポンピング用途でR‐134aに置き換わる代替冷媒候補として特定されていた。そのGWPは約4である。R‐1234yfは可燃性であるが、その燃焼特性は自動車空調またはヒートポンピングを含めた一部の用途で許容されると一般的にみなされている。特に、R‐152aと比べた場合、その可燃下限は高く、その最小点火エネルギーは高く、空気中における火炎速度はR‐152aの場合よりかなり低い。
【0015】
温室効果ガスの排出に関して、空調または冷却システムを作動した環境影響は、冷媒のいわゆる“直接”GWPに関するのみならず、該システムを作動させる電気または燃料の消費に起因した二酸化炭素の排出を意味する、いわゆる“間接”排出に関しても考慮されねばならない。総等価温暖化影響(TEWI)分析またはライフサイクル炭素排出量(LCCP)分析として知られるものを含めて、この総GWP影響の幾つかの測定基準が開発されてきた。これら測定の双方には、冷媒GWPの効果の評価と、全体温暖化影響に及ぼすエネルギー効率を含む。
【0016】
R‐1234yfのエネルギー効率および冷却能力はR‐134aの場合よりかなり低いことがわかり、加えて該流体はシステム配管および熱交換器で高い圧力降下を示すことがわかった。この結論として、R‐1234yfを用いて、R‐134aに匹敵するエネルギー効率および冷却性能を達成するためには、設備の複雑さの増加と配管のサイズの増大が必要とされ、設備に伴う間接的排出の増加に繋がる。更に、R‐1234yfの生産は、R‐134aより(フッ素化および塩素化された)原材料の使用に際して複雑かつ低効率であると思われる。そのように、R‐134aに置き換わるR‐1234yfの採用は、R‐134aの場合より原材料を多く消費し、温室効果ガスの間接的排出を多くもたらすのである。
【0017】
R‐134aに関して設計される一部の現行技術は、一部の熱伝達組成物の低減された可燃性すら受け入れられないことがある(150未満のGWPを有する組成物は、ある程度可燃性であると考えられている)。
【0018】
本発明の主目的は、したがって、低GWPを有しながら、例えば既存の冷媒(例えば、R‐134a、R‐152a、R‐1234yf、R‐22、R‐410A、R‐407A、R‐407B、R‐407C、R507およびR‐404a)を用いて到達する場合の値の理想的には10%以内、好ましくはこれら値の10%(例えば、約5%)未満以内で(“成績係数”として便宜上表示される)能力およびエネルギー効率をなおも有する、それ自体で使用可能であるまたは既存の冷却使用の代替物として適した熱伝達組成物を提供することである。流体間におけるこの程度の差異は、設備およびシステム作動特徴の再設計により通常解決されることが、当業界で知られている。組成物は理想的には低毒性および許容可能な可燃性も有しているべきである。
【0019】
本発明は、約82〜約88重量%のトランス‐1,3,3,3‐テトラフルオロプロペン(R‐1234ze(E))および約12〜約18重量%の1,1‐ジフルオロエタン(R‐152a)から本質的になる熱伝達組成物の提供により、上記欠点に取り組んでいる。これらは、別記されない限り、以下において本発明の二元組成物と称される。
【0020】
“から本質的になる”という用語とは、我々は、本発明の組成物が他の成分、特に、熱伝達組成物に用いられることが知られた別の(ヒドロ)(フルオロ)化合物(例えば、(ヒドロ)(フルオロ)アルカンまたは(ヒドロ)(フルオロ)アルケン)を実質的に含有していないことを意味する。我々は、“から本質的になる”の意味内に、用語“からなる”を含めている。
【0021】
ここで記載された化学物質のすべてが市販されている。例えば、フルオロケミカルはApollo Scientific(UK)から得られる。
【0022】
ここで用いられているように、本組成物で挙げられたすべての%量は、請求項を含めて、別記されない限り、組成物の合計重量を基準にした重量によるものである。
【0023】
好ましい態様において、本発明の二元組成物は約83〜約87重量%のR‐1234ze(E)および約13〜約17重量%のR‐152a、または約84〜約86重量%のR‐1234ze(E)および約14〜約16重量%のR‐152aから本質的になる。
【0024】
疑義の回避のために、本発明の二元組成物で諸成分の量の範囲に関する上および下限値はとにかく入れ替えられるが、但し得られる範囲は本発明の最も広い範囲内に属すると理解すべきである。例えば、本発明の二元組成物は約82〜約86重量%のR‐1234ze(E)および約14〜約18重量%のR‐152a、または約84〜約87重量%のR‐1234ze(E)および約13〜約16重量%のR‐152aから本質的になっていてよい。
【0025】
他の態様において、本発明の組成物は約2〜約20重量%のR‐152a、約5〜約60%のR‐134aおよび約5〜約85重量%のR‐1234ze(E)を含んでなる。これらは、以下において、本発明の(三元)組成物と称される。
【0026】
R‐134aは、典型的には、液相および気相の双方において、本発明の組成物の可燃性を減らすために含有される。好ましくは、十分なR‐134aが本発明の組成物を不燃性にするために含有される。
【0027】
本発明の好ましい組成物は、約5〜約20重量%のR‐152a、約10〜約55%のR‐134aおよび約30〜約80重量%のR‐1234ze(E)を含んでなる。
【0028】
本発明の有利な組成物は、約10〜約18重量%のR‐152a、約10〜約50%のR‐134aおよび約32〜約78重量%のR‐1234ze(E)を含んでなる。
【0029】
本発明の別な好ましい組成物は、約12〜約18重量%のR‐152a、約20〜約50%のR‐134aおよび約32〜約70重量%のR‐1234ze(E)を含んでなる。
【0030】
本発明の別の有利な組成物は、約15〜約18重量%のR‐152a、約15〜約50%のR‐134aおよび約32〜約70重量%のR‐1234ze(E)を含んでなる。
【0031】
好ましくは、R‐134aを含有した本発明の組成物は、ASHRAE34方法論を用いたところ、60℃の試験温度で不燃性である。
【0032】
R‐1234ze(E)、R‐152aおよびR‐134aを含有している本発明の組成物は、これらの成分から本質的になって(またはからなって)いてもよい。
【0033】
疑義の回避のために、ここで記載された本発明の三元組成物はいずれも、成分の具体的に明記された量に関するものを含めて、それらの組成物で明記された成分から本質的になって(またはからなって)いてもよい。
【0034】
本発明による組成物は、便宜上実質的にR‐1225(ペンタフルオロプロペン)、便宜上実質的にR‐1225ye(1,2,3,3,3‐ペンタフルオロプロペン)またはR‐1225zc(1,1,3,3,3‐ペンタフルオロプロペン)を含有せず、該化合物は毒性問題を伴うことがある。
【0035】
“実質的にせず”とは、我々は、本発明の組成物が該組成物の合計重量基準で0.5重量%以下、好ましくは0.1%以下の記述成分を含有していることを意味する。
【0036】
本発明の組成物は、実質的に:
(i)2,3,3,3‐テトラフルオロプロペン(R‐1234yf)
(ii)シス‐1,3,3,3‐テトラフルオロプロペン(R‐1234ze(Z))および/または
(iii)3,3,3‐テトラフルオロプロペン(R‐1243zf)
を含有しなくてもよい。
【0037】
本発明の組成物はゼロのオゾン破壊係数を有する。
【0038】
好ましくは、本発明の組成物(例えば、R‐134a、R‐1234yfまたはR‐152aの適切な冷媒代替物であるもの)は、1300未満、好ましくは1000未満、更に好ましくは500、400、300または200未満、特に150または100未満、更には一部の場合に50未満であるGWPを有する。別記されない限り、GWPのIPCC(気候変動に関する政府間パネル)TAR(第三次評価報告書)値がここでは用いられていた。
【0039】
有利には、本組成物は、該組成物の個別可燃性成分、例えばR‐152aと比べた場合に、低い可燃危険性のものである。好ましくは、本組成物は、R‐1234yfと比べた場合に、低い可燃危険性のものである。
【0040】
一面において、本組成物は、R‐152aまたはR‐1234yfと比べて、(a)高い可燃下限;(b)高い点火エネルギー;または(c)低い火炎速度のうち1以上を有している。好ましい態様において、本発明の組成物は不燃性である。有利には、約−20℃〜60℃のどの温度でも本発明の組成物と平衡状態で存在する蒸気の混合物も不燃性である。
【0041】
可燃性は、2004年付けAddendum 34p通りの試験方法論でASTM標準E‐681を組み入れたASHRAE標準34に従い調べられ、その全内容が参照によりここに組み込まれる。
【0042】
一部の用途において、ASHRAE34方法論により不燃性として処方が分類されることは不要かもしれない;例えば冷却設備装填物を周囲へ漏出させることにより可燃性混合物を作ることが物理的に不可能であれば、適用に際し使用上安全とするほど十分に空気中で可燃限界が下げられる流体を開発することが可能である。R‐1234ze(E)を可燃性冷媒R‐152aに加えた効果が、空気との混合物中でこうして可燃性を変えていくことにある、と我々は発見したのである。
【0043】
ヒドロフルオロカーボン(HFC)またはヒドロフルオロカーボン+ヒドロフルオロオレフィンの混合物の可燃性は、炭素‐水素結合と比べた炭素‐フッ素結合の割合に関連していることが知られている。これは比率R=F/(F+H)として表示され、ここではモル基準で、Fは組成物中におけるフッ素原子の総数を表し、Hは水素原子の総数を表す。別記されない限り、これはフッ素比とここでは称される。
【0044】
例えば、Takizawa et al.,Reaction Stoichiometry for Combustion of Fluoroethane Blends,ASHRAE Transactions,112(2),2006(参照によりここに組み込まれる)は、R‐152aを含んでなる混合物のこの比率と火炎速度との間でほぼ直線関係があることを示しており、フッ素比の増加は火炎速度の低下をもたらす。このリファレンスにおけるデータは、ゼロに低下した火炎速度の場合、換言すると不燃性である混合物の場合、フッ素比が約0.65より大きい必要があることを示している。
【0045】
同様に、Minorら(Du Pont特許出願WO2007/053697)は多くのヒドロフルオロオレフィンの可燃性に関する開示を発表しており、フッ素比が約0.7より大きいならば、このような化合物が不燃性であると予想されることを示している。
【0046】
したがって、オレフィンにいかなる量のR‐152aが加えられても混合物のフッ素比を0.67以下に下げてしまうことから、R‐152a(フッ素比0.33)およびR‐1234ze(E)(フッ素比0.67)を含有する混合物は、ほぼ100%R‐1234ze(E)を含んでなる限定組成範囲の場合を除き可燃性であることが、当該技術に基づくと予想される。
【0047】
意外にも、我々はこれがそうではないことを発見したのである。特に、23℃で不燃性である、0.7未満のフッ素比を有したR‐152aおよびR‐1234ze(E)の二元ブレンドが存在することを、我々は発見した。以下の実施例で示されているように、本発明の二元組成物は、それらが約0.58もの低いフッ素比を有していても不燃性である。
【0048】
一態様において、本発明の組成物は約0.57〜約0.61、例えば約0.58〜約0.60のフッ素比を有する。
【0049】
驚くほど少量のR‐1234ze(E)を含有した不燃性R‐152a/R‐1234ze(E)ブレンドを生産することにより、このような組成物中におけるR‐152aの量は増やせる。これは、それより多い量(例えば、ほぼ100%)のR‐1234ze(E)を含有した相当組成物と比べて、例えば、冷却能力の増加、温度勾配の減少および/または圧力降下の減少を示す熱伝達組成物をもたらすと考えられる。
【0050】
このように、本発明の組成物は不燃性、低GWPおよび改善された冷却性能の完全に予想外な組合せを示す。これら冷却性能の一部は以下で更に詳細に説明されている。
【0051】
一定圧力下における非共沸混合物の沸点と露点温度との差異と考えられる温度勾配は、冷媒の特徴をなすものである;流体を混合物で置き換えることが望まれるならば、代替流体で類似したまたは低い勾配を有することが多くの場合に好ましい。一態様において、本発明の組成物は非共沸性である。
【0052】
便宜上、本発明の組成物の(蒸発器における)温度勾配は約10K未満、好ましくは約5K未満、有利には3K未満である。
【0053】
有利には、本発明の組成物の体積冷却能力は、それが置き換わる既存の冷媒流体の少なくとも85%、好ましくは少なくとも90%または更には少なくとも95%である。
【0054】
本発明の組成物は、典型的には、R‐1234yfの場合の少なくとも90%である体積冷却能力を有している。好ましくは、本発明の組成物は、R‐1234yfの場合の少なくとも95%、例えばR‐1234yfの場合の約95%〜約120%である体積冷却能力を有している。
【0055】
一態様において、本発明の組成物のサイクル効率(成績係数,COP)は、それが置き換わる既存の冷媒流体の約5%以内、または更にはそれより良い。
【0056】
便宜上、本発明の組成物の圧縮器吐出温度は、それが置き換わる既存の冷媒流体の約15K、好ましくは約10Kまたは更には約5K以内である。
【0057】
本発明の組成物は、好ましくは、R‐134a値の95%以上で低いまたは同等の圧力降下特性および冷却能力を有しながら、同等条件下でR‐134aの少なくとも95%(好ましくは少なくとも98%)のエネルギー効率を有している。有利には、本組成物は同等条件下でR‐134aより高いエネルギー効率と低い圧力降下特性を有している。本組成物は、有利には、R‐1234yf単独より良いエネルギー効率と圧力降下特性も有している。
【0058】
本発明の熱伝達組成物は既存設計の設備で使用に適し、既定HFC冷媒と一緒に現在用いられている潤滑剤の全種類と適合する。それらは、場合により、適切な添加剤の使用により鉱油で安定化または適合化される。
【0059】
好ましくは、熱伝達設備で用いられる場合、本発明の組成物は潤滑剤と組み合わされる。
【0060】
便宜上、潤滑剤は鉱油、シリコーン油、ポリアルキルベンゼン類(PAB)、ポリオールエステル類(POE)、ポリアルキレングリコール類(PAG)、ポリアルキレングリコールエステル類(PAGエステル)、ポリビニルエーテル類(PVE)、ポリ(アルファ‐オレフィン類)およびそれらの組合せからなる群より選択される。
【0061】
有利には、潤滑剤は更に安定剤を含んでなる。
【0062】
好ましくは、安定剤はジエン系化合物、ホスフェート類、フェノール化合物類およびエポキシド類とそれらの混合物からなる群より選択される。
【0063】
便宜上、本発明の組成物は難燃剤と組み合わせてもよい。
【0064】
有利には、難燃剤はトリ(2‐クロロエチル)ホスフェート、(クロロプロピル)ホスフェート、トリ(2,3‐ジブロモプロピル)ホスフェート、トリ(1,3‐ジクロロプロピル)ホスフェート、リン酸二アンモニウム、様々なハロゲン化芳香族化合物、酸化アンチモン、アルミニウム三水和物、ポリ塩化ビニル、フッ素化ヨードカーボン、フッ素化ブロモカーボン、トリフルオロヨードメタン、ペルフルオロアルキルアミン類、ブロモ‐フルオロアルキルアミン類およびそれらの混合物からなる群より選択される。
【0065】
好ましくは、熱伝達組成物は冷媒組成物である。
【0066】
一態様において、本発明は本発明の組成物を含んでなる熱伝達装置を提供する。
【0067】
好ましくは、熱伝達装置は冷却装置である。
【0068】
便宜上、熱伝達装置は自動車空調システム、住宅用空調システム、業務用空調システム、住宅用冷蔵庫システム、住宅用冷凍庫システム、業務用冷蔵庫システム、業務用冷凍庫システム、冷却機空調システム、冷却機冷却システムと、業務用または住宅用ヒートポンプシステムからなる群より選択される。好ましくは、熱伝達装置は冷却装置または空調システムである。
【0069】
有利には、熱伝達装置は遠心型圧縮器を内蔵している。
【0070】
本発明は、ここで記載されているような熱伝達装置における本発明の組成物の使用も提供する。
【0071】
本発明の別な面によると、本発明の組成物を含んでなる発泡剤が提供される。
【0072】
本発明の他の面によると、発泡体を形成可能な1種以上の成分と本発明の組成物を含んでなる発泡性組成物が提供される。
【0073】
好ましくは、発泡体を形成可能な1種以上の成分は、ポリウレタン類、熱可塑性ポリマーおよび樹脂、例えばポリスチレンおよびエポキシ樹脂から選択される。
【0074】
本発明の別な面によると、本発明の発泡性組成物から得られる発泡体が提供される。
【0075】
好ましくは、発泡体は本発明の組成物を含んでなる。
【0076】
本発明の他の面によると、スプレーされるべき物質と、本発明の組成物を含んでなる噴射剤とを含んでなる、スプレー用組成物が提供される。
【0077】
本発明の別な面によると、本発明の組成物を凝縮させ、その後で冷却されるべき物品の近くで該組成物を蒸発させることを含んでなる、物品を冷却する方法が提供される。
【0078】
本発明の他の面によると、加熱されるべき物品の近くで本発明の組成物を凝縮させ、その後で該組成物を蒸発させることを含んでなる、物品を加熱する方法が提供される。
【0079】
本発明の別な面によると、本発明の組成物を含んでなる溶媒とバイオマスを接触させ、該溶媒から物質を分離することを含んでなる、バイオマスから物質を抽出する方法が提供される。
【0080】
本発明の他の面によると、本発明の組成物を含んでなる溶媒と物品を接触させることを含んでなる、物品を清浄化する方法が提供される。
【0081】
本発明の別な面によると、本発明の組成物を含んでなる溶媒と水溶液を接触させ、該溶媒から物質を分離することを含んでなる、水溶液から物質を抽出する方法が提供される。
【0082】
本発明の他の面によると、本発明の組成物を含んでなる溶媒と粒状固体マトリックスを接触させ、該溶媒から物質を分離することを含んでなる、粒状固体マトリックスから物質を抽出する方法が提供される。
【0083】
本発明の別な面によると、本発明の組成物を含有している機械的動力発生装置が提供される。
【0084】
好ましくは、機械的動力発生装置はランキンサイクルまたはその変法を用いて熱から動力を発生するように構成されている。
【0085】
本発明の他の面によると、既存の熱伝達流体を除去して、本発明の組成物を導入する工程を含んでなる、熱伝達装置を改修する方法が提供される。好ましくは、熱伝達装置は冷却装置または(スタティック)空調システムである。有利には、該方法は温室効果ガス(例えば、二酸化炭素)排出権の割当を得る工程を更に含んでなる。
【0086】
上記の改修方法によると、既存の熱伝達流体は、本発明の組成物を導入する前に、熱伝達装置から完全に除去される。既存の熱伝達流体は熱伝達装置から一部除去され、その後で本発明の組成物を導入することもできる。
【0087】
既存の熱伝達流体がR‐134aであり、本発明の組成物がR‐134a、R‐1234ze(E)およびR‐152a(および潤滑剤、安定剤または難燃剤のような任意の成分)を含有している他の態様において、R‐1234ze(E)、R‐152aなどは熱伝達装置でR‐134aへ加えられ、それにより本発明の組成物と、本発明の熱伝達装置をその場で形成することができる。望ましい割合で本発明の組成物の諸成分を簡単に用意するために、R‐1234ze(E)、R‐152aなどを加える前に、既存のR‐134aの一部が熱伝達装置から除去されてもよい。
【0088】
このように、本発明は、R‐1234ze(E)およびR‐152a、ならびに潤滑剤、安定剤または難燃剤のような任意の成分を、R‐134aである既存の熱伝達流体を含有した熱伝達装置へ導入することを含んでなる、本発明の組成物および/または熱伝達装置を製造する方法を提供する。場合により、R‐134aの少なくとも一部が、R‐1234ze(E)、R‐152aなどを導入する前に、熱伝達装置から除去される。
【0089】
もちろん、本発明の組成物は、望ましい割合でR‐1234ze(E)およびR‐152a、場合によりR‐134a(および潤滑剤、安定剤または難燃剤のような任意の成分)を混合することでも、簡単に製造されることができる。本組成物は次いで、R‐134aまたはいずれか他の既存の熱伝達流体を含有しない熱伝達装置、例えばR‐134aまたはいずれか他の既存の熱伝達流体が除去されていた装置へ加えられる(またはここで記載されているようないずれか他の手法で用いられる)ことができる。
【0090】
本発明の別な面において、既存の化合物または組成物を含んでなる製品の取扱いから生じる環境影響を減らす方法が提供され、該方法は少なくとも部分的に既存の化合物または組成物を本発明の組成物で置き換えることを含んでなる。好ましくは、この方法は温室効果ガス排出権の割当を得る工程を含んでなる。
【0091】
環境影響とは、我々は製品の取扱いによる温室温暖化ガスの発生および排出を含める。
【0092】
上記のように、この環境影響は、漏出または他の損失から有意な環境影響を有する化合物または組成物の排出を含むのみならず、装置によりその使用期間中に消費されるエネルギーから生じる二酸化炭素の排出も含めて考えられる。このような環境影響は総等価温暖化影響(TEWI)として知られる測定により定量しうる。この測定は、例えばスーパーマーケット冷却システムを含めた、ある固定冷却および空調設備の環境影響の定量化に用いられてきた(例えばhttp://en.wikipedia.org/wiki/Total equivalent warming impact参照)。
【0093】
環境影響は、化合物または組成物の合成および製造から生じる温室効果ガスの排出を含めて、更に考えられる。この場合には、ライフサイクル炭素排出量(LCCP、例えばhttp://www.sae.org/events/aars/presentations/2007papasavva.pdf参照)として知られる測定を行うために、製造時排出がエネルギー消費および直接損失効果に加えられる。LCCPの使用は自動車空調システムの環境影響を評価する際に一般的である。
【0094】
排出権は地球温暖化に関与している汚染物質排出を減らすために与えられ、例えば預託、取引または売却される。それらは二酸化炭素の換算量で便宜上表示される。そのため、1kgのR‐134aの排出が避けられるとすれば、1×1300=1300kg CO換算の排出権が与えられる。
【0095】
本発明の他の態様において、(i)既存の化合物または組成物を本発明の組成物で置き換え、このとき本発明の組成物は既存の化合物または組成物より低いGWPを有するものとし、(ii)該置換え工程で温室効果ガス排出権を生み出すことを含んでなる、温室効果ガス排出権を生み出す方法が提供される。
【0096】
好ましい態様において、本発明の組成物の使用は、既存の化合物または組成物の使用により達成される場合よりも低い総等価温暖化影響および/または低いライフサイクル炭素排出量を有する設備をもたらす。
【0097】
これらの方法は、いずれか適切な製品で、例えば、空調、冷却(例えば、低および中温度冷却)、熱伝達、発泡剤、エアロゾルまたはスプレー用噴射剤、気体誘電体、凍結手術、獣医処置、歯科処置、消火、火炎抑制、溶媒(例えば、フレーバーおよびフレグランスの担体)、クリーナー、エアホーン、ペレットガン、局所麻酔剤および膨張用途の分野で行われる。好ましくは、分野は空調または冷却である。
【0098】
適切な製品の例としては、熱伝達装置、発泡剤、発泡性組成物、スプレー用組成物、溶媒および機械的動力発生装置がある。好ましい態様において、製品は熱伝達装置、例えば冷却装置または空調ユニットである。
【0099】
既存の化合物または組成物は、それに置き換わる本発明の組成物より高い、GWPおよび/またはTEWIおよび/またはLCCPで測定されるような環境影響を有している。既存の化合物または組成物はフルオロカーボン化合物、例えばペルフルオロ‐、ヒドロフルオロ‐、クロロフルオロ‐またはヒドロクロロフルオロ‐カーボン化合物を含んでなるか、またはそれはフッ素化オレフィンを含んでなる。
【0100】
好ましくは、既存の化合物または組成物は冷媒のような熱伝達化合物または組成物である。置き換えられる冷媒の例としては、R‐134a、R‐152a、R‐1234yf、R‐410A、R‐407A、R‐407B、R‐407C、R507、R‐22およびR‐404Aがある。本発明の組成物は、R‐134a、R‐152aまたはR‐1234yfの代替物として特に適している。
【0101】
いかなる量の既存の化合物または組成物も、環境影響を減らせるように置き換えられる。これは、置き換えられる既存の化合物または組成物の環境影響と、本発明の代替組成物の環境影響に依存する。好ましくは、製品中における既存の化合物または組成物は本発明の組成物で完全に置換えられる。
【0102】
本発明は以下の非制限例で実証されている。
【実施例】
【0103】
可燃性
大気圧および管理湿度下で空気中におけるR‐152aの可燃性を、ASHRAE標準34の方法論で記載されているように、試験フラスコ器具で研究した。用いられた試験温度は23℃であった;湿度は77°F(25℃)の標準温度に対して50%であるように管理した。用いられた希釈剤はR‐1234ze(E)であり、これはこれらの試験条件下で不燃性であることがわかった。溶存空気または他の不活性ガスを試験前に除去するために、燃料および希釈ガスをシリンダーの真空パージへ付した。
【0104】
この試験の結果が図1で示され、そこではチャートの頂点は純粋な空気、燃料および希釈剤を表している。三角形の内側における諸点は、空気、燃料および希釈剤の混合物を表す。このような混合物の可燃性領域は実験により求められ、曲線で囲まれている。
【0105】
少なくとも70%v/v(約80%w/w)のR‐1234ze(E)を含有した、R‐152aおよびR‐1234ze(E)の二元混合物は、全割合で空気と混ぜた場合に、不燃性であることがわかった。これは図で実線により示され、それが可燃性領域との接線であり、70%v/v希釈剤対30%v/v燃料割合の燃料/希釈剤混合物と空気との混合線を表している。
【0106】
上記方法論を用いて、我々は下記組成物が23℃で不燃性であることを見い出した(関連フッ素比も示されている)。
【表1】

【0107】
R‐152aおよびR‐1234ze(E)を含んでなる不燃性混合物は、該混合物のフッ素比が約0.57より大きければ作製されうることがわかる。
【0108】
R‐152a/R‐1234zeおよびR‐152a/R‐1234ze/R‐134aブレンドの性能
本発明の選択二元および三元組成物の性能を、理想化された蒸気圧縮サイクルと関連した熱力学性質モデルを用いて評価した。熱力学モデルでは、温度に応じた混合物の各成分の理想ガスエンタルピーの変動の多項式相関と一緒に、混合物の気相性質と気‐液平衡を表すためにPeng Robinson状態方程式を用いた。熱力学性質と気液平衡をモデル化する際におけるこの状態方程式の使用の背後にある原理は、The Properties of Gases and Liquids (5th edition) by BE Poling,JM Prausnitz and JM O’Connell pub.McGraw Hill 2000、特に第4および8章(参照によりここに組み込まれる)で更に詳しく説明されている。
【0109】
このモデルを用いるために必要な基本性質データは、臨界温度および臨界圧力;蒸気圧およびPitzer偏心因子の関連性質;理想ガスエンタルピーと、二元系R‐152a/R‐1234ze(E)に関して測定された気液平衡データであった。
【0110】
R‐152aおよびR‐134aに関する基本性質データ(臨界性質、偏心因子、蒸気圧および理想ガスエンタルピー)は、(参照によりここに組み込まれる)NIST REFPROP 8.0を含む文献から求めた。R‐1234ze(E)に関する臨界点および蒸気圧は実験で測定した。ある範囲の温度にわたるR‐1234ze(E)の理想ガスエンタルピーは、参照によりここに組み込まれる分子モデリングソフトウェアHyperchem 7.5を用いて見積もりした。
【0111】
二元混合物に関する気液平衡データは、次のようにvan der Waal’s混合則へ組み込まれた二元相互作用定数を用いて、Peng Robinson方程式へ回帰した。R‐152aとR‐1234ze(E)に関する気液平衡データは、−25℃で約28重量%R‐1234ze(E)の既知共沸組成物を再生するために、van der Waal’s混合則で状態方程式を用い、相互作用定数を適正化することにより、モデル化した。R‐152aとR‐134aに関する気液平衡データは、文献、特にNIST REFPROPコードで引用されたリファレンスから求め、相互作用定数の値を回帰するためにそのデータを用いた。R‐134aとR‐1234ze(E)に関する気液平衡データは−40〜+50℃範囲にわたり等温再循環蒸留装置で測定し、得られたデータもPeng Robinson方程式へあてはめた。この温度範囲でR‐134aとR‐1234ze(E)との間に共沸混合物は存在しないことがわかった。
【0112】
本発明の選択組成物の冷却性能は、下記サイクル条件を用いてモデル化した。
凝縮温度(℃) 60
蒸発温度(℃) 0
準冷却(K) 5
過熱(K) 5
吸引温度(℃) 15
等エントロピー効率 65%
クリアランス比 4%
能力(kW) 6
吸引ライン直径(mm) 16.2
【0113】
これら組成物の冷却性能データが下記表に掲載されている。
【0114】
二元組成物は、不燃性と、R‐1234yfと比べて高いエネルギー効率を呈し、R‐1234ze(E)単独と比べてかなり高い能力を呈する。吸引ライン圧力降下もR‐1234ze(E)より良く、ほとんどの組成物について圧力降下はR‐1234yfよりも良い。この実用効果は、実際のシステムにおいて、R‐1234yfと比べた組成物の有効能力が理論で予想されるよりもやや高いことであり、吸引圧力降下を減らす効果がシステム圧縮器の有効処理能力を増すことだからである。これは自動車空調またはヒートポンプシステムで特にあてはまる。
【0115】
本発明の三元組成物は、混合物の可燃性を更に減らしながら、R‐1234ze(E)と比べて更に高い冷却能力を呈する。意外にも、該流体について、かなり低いGWPで、R‐152aおよびR‐134aの不燃性混合物から予想される場合に近い性能を達成することが可能である。
【表2】

【表3】

【表4】

【表5】

【表6】

【表7】

【表8】

【表9】

【図面の簡単な説明】
【0116】
【図1】

【特許請求の範囲】
【請求項1】
約82〜約88重量%のトランス‐1,3,3,3‐テトラフルオロプロペン(R‐1234ze(E))および約12〜約18重量%の1,1‐ジフルオロエタン(R‐152a)から本質的になる、熱伝達組成物。
【請求項2】
約83〜約87重量%のR‐1234ze(E)および約13〜約17重量%のR‐152aから本質的になる、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
約5〜約85重量%のR‐1234ze(E)、約2〜約20重量%のR‐152aおよび約5〜約60重量%の1,1,1,2‐テトラフルオロエタン(R‐134a)を含んでなる、熱伝達組成物。
【請求項4】
約5〜約20重量%のR‐152a、約10〜約55%のR‐134aおよび約30〜約80重量%のR‐1234ze(E)を含んでなる、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
約10〜約18重量%のR‐152a、約10〜約50%のR‐134aおよび約32〜約78重量%のR‐1234ze(E)を含んでなる、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
約12〜約18重量%のR‐152a、約15〜約50%のR‐134aおよび約32〜約70重量%のR‐1234ze(E)を含んでなる、請求項3に記載の組成物。
【請求項7】
R‐1234ze(E)、R‐152aおよびR‐134aから本質的になる、請求項3〜6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
組成物が、1000未満、好ましくは150未満のGWPを有している、請求項1〜7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
温度勾配が約10K未満、好ましくは約5K未満である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
組成物が、置き換えようと意図される既存の冷媒の約15%以内、好ましくは約10%以内の体積冷却能力を有している、請求項1〜9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
組成物がR‐152a単独またはR‐1234yf単独よりも可燃性が低い、請求項1〜10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
組成物が、R‐152a単独またはR‐1234yf単独と比べて:
(a)高い可燃限界;
(b)高い点火エネルギー;および/または
(c)低い火炎速度;
を有している、請求項16に記載の組成物。
【請求項13】
不燃性である、請求項1〜12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
組成物が、置き換えようと意図される既存の冷媒の約5%以内のサイクル効率を有している、請求項1〜13のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
組成物が、置き換えようと意図される既存の冷媒の約15K以内、好ましくは約10K以内の圧縮器吐出温度を有している、請求項1〜14のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項16】
潤滑剤および請求項1〜15のいずれか一項に記載の組成物を含んでなる、組成物。
【請求項17】
潤滑剤が、鉱油、シリコーン油、ポリアルキルベンゼン類(PAB)、ポリオールエステル類(POE)、ポリアルキレングリコール類(PAG)、ポリアルキレングリコールエステル類(PAGエステル)、ポリビニルエーテル類(PVE)、ポリ(アルファ‐オレフィン類)およびそれらの組合せから選択される、請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
安定剤を更に含んでなる、請求項16または17に記載の組成物。
【請求項19】
安定剤が、ジエン系化合物類、ホスフェート類、フェノール化合物類およびエポキシド類とそれらの混合物から選択される、請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
難燃剤および請求項1〜19のいずれか一項に記載の組成物を含んでなる、組成物。
【請求項21】
難燃剤が、トリ(2‐クロロエチル)ホスフェート、(クロロプロピル)ホスフェート、トリ(2,3‐ジブロモプロピル)ホスフェート、トリ(1,3‐ジクロロプロピル)ホスフェート、リン酸二アンモニウム、様々なハロゲン化芳香族化合物、酸化アンチモン、アルミニウム三水和物、ポリ塩化ビニル、フッ素化ヨードカーボン、フッ素化ブロモカーボン、トリフルオロヨードメタン、ペルフルオロアルキルアミン類、ブロモ‐フルオロアルキルアミン類およびそれらの混合物からなる群より選択される、請求項20に記載の組成物。
【請求項22】
冷媒組成物である、請求項1〜21のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項23】
請求項1〜22のいずれか一項に記載の組成物を含有している、熱伝達装置。
【請求項24】
熱伝達装置における、請求項1〜22のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【請求項25】
冷却装置である、請求項23または24に記載の熱伝達装置。
【請求項26】
自動車空調システム、住宅用空調システム、業務用空調システム、住宅用冷蔵庫システム、住宅用冷凍庫システム、業務用冷蔵庫システム、業務用冷凍庫システム、冷却機空調システム、冷却機冷却システムと、業務用または住宅用ヒートポンプシステムからなる群より選択される、請求項25に記載の熱伝達装置。
【請求項27】
圧縮器を内蔵している、請求項25または26に記載の熱伝達装置。
【請求項28】
請求項1〜22のいずれか一項に記載の組成物を含んでなる、発泡剤。
【請求項29】
発泡体を形成可能な1種以上の成分と請求項1〜22のいずれか一項に記載の組成物を含んでなる発泡性組成物であって、発泡体を形成可能な1種以上の成分が、ポリウレタン類、熱可塑性ポリマーおよび樹脂、例えばポリスチレンおよびエポキシ樹脂と、それらの混合物から選択される、発泡性組成物。
【請求項30】
請求項29の発泡性組成物から得られる、発泡体。
【請求項31】
請求項1〜22のいずれか一項に記載の組成物を含んでなる、請求項30に記載の発泡体。
【請求項32】
スプレーされるべき物質と、請求項1〜22のいずれか一項に記載の組成物を含んでなる噴射剤とを含んでなる、スプレー用組成物。
【請求項33】
請求項1〜22のいずれか一項に記載の組成物を凝縮させ、その後で冷却されるべき物品の近くで該組成物を蒸発させることを含んでなる、物品を冷却する方法。
【請求項34】
加熱されるべき物品の近くで請求項1〜22のいずれか一項に記載の組成物を凝縮させ、その後で該組成物を蒸発させることを含んでなる、物品を加熱する方法。
【請求項35】
請求項1〜22のいずれか一項に記載の組成物を含んでなる溶媒とバイオマスを接触させ、該溶媒から物質を分離することを含んでなる、バイオマスから物質を抽出する方法。
【請求項36】
請求項1〜22のいずれか一項に記載の組成物を含んでなる溶媒と物品を接触させることを含んでなる、物品を清浄化する方法。
【請求項37】
請求項1〜22のいずれか一項に記載の組成物を含んでなる溶媒と水溶液を接触させ、該溶媒から物質を分離することを含んでなる、水溶液から物質を抽出する方法。
【請求項38】
請求項1〜22のいずれか一項に記載の組成物を含んでなる溶媒と粒状固体マトリックスを接触させ、該溶媒から物質を分離することを含んでなる、粒状固体マトリックスから物質を抽出する方法。
【請求項39】
請求項1〜22のいずれか一項に記載の組成物を含有している、機械的動力発生装置。
【請求項40】
ランキンサイクルまたはその変法を用いて熱から動力を発生するように構成されている、請求項39に記載の機械的動力発生装置。
【請求項41】
既存の熱伝達流体を除去して、請求項1〜22のいずれか一項に記載の組成物を導入する工程を含んでなる、熱伝達装置を改修する方法。
【請求項42】
熱伝達装置が冷却装置である、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
熱伝達装置が空調システムである、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
既存の化合物または組成物を含んでなる製品の取扱いから生じる環境影響を減らす方法であって、少なくとも部分的に既存の化合物または組成物を請求項1〜22のいずれか一項に記載の組成物で置き換えることを含んでなる、方法。
【請求項45】
組成物または熱伝達装置がR‐134aを含有している、請求項1〜22のいずれか一項に記載の組成物、および/または請求項23または25〜27のいずれか一項に記載の熱伝達装置を製造する方法であって、R‐1243ze(E)およびR‐152a、ならびに場合により潤滑剤、安定剤および/または難燃剤を、R‐134aである既存の熱伝達流体を含有した熱伝達装置へ導入することを含んでなる、方法。
【請求項46】
R‐1243ze(E)およびR‐152a、ならびに場合により潤滑剤、安定剤および/または難燃剤を導入する前に、既存のR‐134aの少なくとも一部を熱伝達装置から除去する工程を含んでなる、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
(i)既存の化合物または組成物を請求項1〜22のいずれか一項に記載の組成物で置き換え、このとき請求項1〜22のいずれか一項に記載の組成物は既存の化合物または組成物より低いGWPを有するものとし、ii)該置換え工程で温室効果ガス排出権を生み出すことを含んでなる、温室効果ガス排出権を生み出す方法。
【請求項48】
本発明の組成物の使用が、既存の化合物または組成物の使用により達成される場合よりも低い総等価温暖化影響および/または低いライフサイクル炭素排出量をもたらす、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
空調、冷却、熱伝達、発泡剤、エアロゾルまたはスプレー用噴射剤、気体誘電体、凍結手術、獣医処置、歯科処置、消火、火炎抑制、溶媒、クリーナー、エアホーン、ペレットガン、局所麻酔剤および膨張用途の分野からの製品で行われる、請求項47または48に記載の方法。
【請求項50】
製品が熱伝達装置、発泡剤、発泡性組成物、スプレー用組成物、溶媒または機械的動力発生装置から選択される、請求項44または49に記載の方法。
【請求項51】
製品が熱伝達装置である、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
既存の化合物または組成物が熱伝達組成物である、請求項44または47〜51のいずれか一項に記載の方法。
【請求項53】
熱伝達組成物が、R‐134a、R‐1234yfおよびR‐152aから選択される冷媒である、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
場合により実施例を参照して、実質的に以上で記載されているような新規の熱伝達組成物。

【図1】
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【公表番号】特表2013−519778(P2013−519778A)
【公表日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−553387(P2012−553387)
【出願日】平成23年2月14日(2011.2.14)
【国際出願番号】PCT/GB2011/000200
【国際公開番号】WO2011/101620
【国際公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【出願人】(510127697)メキシケム、アマンコ、ホールディング、ソシエダッド、アノニマ、デ、カピタル、バリアブレ (24)
【氏名又は名称原語表記】MEXICHEM AMANCO HOLDING S.A. DE C.V.
【Fターム(参考)】