説明

熱分解炉軸シール装置

【課題】回転ドラム内に収納された廃棄物等の被処理物を加熱して熱分解させる際に、回転ドラムの熱膨張による熱変形に追従でき、シール性能を長期間、安定的に維持できる熱分解炉軸シール装置を提供する。
【解決手段】熱分解炉軸シール装置2は、回転ドラム11側に連結され軸方向円筒部分34bを有する回転シール板34と、出口フード29側に設けられ半径方向円板部分35aを有する固定シール板35とを備えている。また、回転シール板と固定シール板との間に配置され、回転シール板に摺動自在に設けられた端面シール36と、回転シール板と固定シール板との間であって、端面シールより半径方向外方に配置され、回転シール板の軸方向円筒部分34bに摺動自在に設けられたラジアルシール37とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転ドラム内に収納された廃棄物等の被処理物を外熱式で加熱して熱分解し、熱分解ガスと不揮発性成分を主とする熱分解残渣とに分離して出口フードへ排出する横型外熱回転式熱分解炉に設けられ、回転ドラムと出口フードとの間に配置された熱分解炉軸シール装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、様々な汚染物質を含む未分別でかつ未処理の廃棄物を処理することにより利用可能な物質に変質させる廃棄物処理システムにおいて、廃棄物を熱分解により処理する熱分解処理システムが知られている。
【0003】
図15は、このような熱分解処理システムの一例を示す図である。図15において、廃棄物等の被処理物101は、前処理装置102を介して廃棄物供給装置103により熱分解炉装置104内へ供給され、熱分解炉装置104内で熱分解されることにより処理される。ここで、熱分解炉装置104で熱分解されることにより発生した有機性の熱分解ガス105は、ガス化もしくは油化への再生、または燃焼によって処理される。一方、熱分解炉装置104で発生する不揮発性の熱分解残渣106は、残渣冷却装置107を経て再資源化される。
【0004】
このような熱分解処理システムの主要機器である熱分解炉装置104は、廃棄物等が熱分解処理される回転ドラムを外部から加熱する横型外熱回転式熱分解炉が一般的に用いられている。この横型外熱回転式熱分解炉では、回転ドラム内は酸素濃度が極めて低い状態で熱分解処理が行われるため、回転部と静止部とは軸シールによって外気の空気が遮断されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した熱分解炉装置104の回転ドラムは高温に加熱されるため、回転ドラムの軸方向に百ミリオーダー、回転ドラムの径方向に数十ミリオーダーの熱膨張が発生することがある。また、運転状況により温度状態も変わり、それに伴って熱変形も複雑に変化する。このため、このような熱分解処理システムにおいては、廃棄物を安定的に長期間継続して熱分解処理を行うために、熱分解炉装置104の軸シール性能の健全性が強く必要とされる。
【0006】
本発明は、このような点を考慮してなされたものであり、熱分解炉装置の回転ドラムの直径が大きく、かつ回転ドラムが加熱される温度が高い場合においても、回転ドラムの熱膨張による熱変形に追従することが可能で、さらに、シール性能を長期間、安定的に維持することができる横型外熱回転式分解炉の熱分解炉軸シール装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、回転ドラム内に収納された廃棄物等の被処理物を外熱式で加熱して熱分解し、熱分解ガスと不揮発性成分を主とする熱分解残渣とに分離して出口フードへ排出する横型外熱回転式熱分解炉に設けられ、回転ドラムと出口フードとの間に配置された熱分解炉軸シール装置において、回転ドラム側に連結され軸方向円筒部分を有する回転シール板と、出口フード側に設けられ半径方向円板部分を有する固定シール板と、回転シール板と固定シール板との間に配置され、回転シール板に摺動自在に設けられた端面シールと、回転シール板と固定シール板との間であって、端面シールより半径方向外方に配置され、回転シール板の軸方向円筒部分に摺動自在に設けられたラジアルシールと、を備えたことを特徴とする熱分解炉軸シール装置である。
【0008】
本発明は、端面シールおよびラジアルシールは、いずれもリング状をなし円周方向に分割自在となり、端面シールおよびラジアルシールはカーボン材からなることを特徴とする熱分解炉軸シール装置である。
【0009】
本発明は、回転シール板は、固定シール板に対して半径方向外方に向かって離間距離が小さくなるように傾斜する傾斜円板部分を有し、端面シールはリング状をなし、円周方向に分割自在となり、端面シールの分割継ぎ目部分は球面結合されてリング状に組み合わされるとともに、固定シール板の半径方向円板部分と回転シール板の傾斜円板部分との間に配置されていることを特徴とする熱分解炉軸シール装置である。
【0010】
本発明は、回転シール板は、固定シール板の半径方向円板部分に対して平行に設けられた回転側半径方向円板部分を有し、端面シールはリング状をなし、円周方向に分割自在となり、端面シールの分割継ぎ目部分は球面結合されてリング状に組み合わされるとともに、固定シール板の半径方向円板部分と回転シール板の回転側半径方向円板部分との間に配置されていることを特徴とする熱分解炉軸シール装置である。
【0011】
本発明は、回転ドラム内に収納された廃棄物等の被処理物を外熱式で加熱して熱分解し、熱分解ガスと不揮発性成分を主とする熱分解残渣とに分離して出口フードへ排出する横型外熱回転式熱分解炉に設けられ、回転ドラムと出口フードとの間に配置された熱分解炉軸シール装置において、回転ドラム側に連結された回転シール板と、出口フード側に設けられ半径方向円板部分を有する固定シール板と、回転シール板と固定シール板との間に配置され、回転シール板に摺動自在に設けられた端面シールと、回転シール板と固定シール板との間であって、端面シールより半径方向外方に配置されたパッキンシールと、を備えたことを特徴とする熱分解炉軸シール装置である。
【0012】
本発明は、端面シールはカーボン材からなり、パッキンシールは耐熱用ゴムからなることを特徴とする熱分解炉軸シール装置である。
【0013】
本発明は、回転シール板は、固定シール板に対して半径方向外方に向かって離間距離が小さくなるように傾斜する傾斜円板部分を有し、端面シールはリング状をなし、円周方向に分割自在となり、端面シールの分割継ぎ目部分は球面結合されてリング状に組み合わされるとともに、固定シール板の半径方向円板部分と回転シール板の傾斜円板部分との間に配置されていることを特徴とする熱分解炉軸シール装置である。
【0014】
本発明は、回転シール板は、固定シール板の半径方向円板部分に対して平行に設けられた回転側半径方向円板部分を有し、端面シールはリング状をなし、円周方向に分割自在となり、端面シールの分割継ぎ目部分は球面結合されてリング状に組み合わされるとともに、固定シール板の半径方向円板部分と回転シール板の回転側半径方向円板部分との間に配置されていることを特徴とする熱分解炉軸シール装置である。
【0015】
本発明は、固定シール板の端面シールと反対側の面であって、端面シールより半径方向外方およびラジアルシールより半径方向内方に、不活性ガス注入装置が設けられたことを特徴とする熱分解炉軸シール装置である。
【0016】
本発明は、固定シール板の端面シールと反対側の面であって、端面シールより半径方向外方およびパッキンシールより半径方向内方に、不活性ガス注入装置が設けられたことを特徴とする熱分解炉軸シール装置である。
【0017】
本発明は、固定シール板の端面シールと反対側の面であって、端面シールより半径方向外方およびラジアルシールより半径方向内方に、清掃口を設けたことを特徴とする熱分解炉軸シール装置である。
【0018】
本発明は、固定シール板の端面シールと反対側の面であって、端面シールより半径方向外方およびパッキンシールより半径方向内方に、清掃口を設けたことを特徴とする熱分解炉軸シール装置である。
【0019】
本発明は、出口フードと固定シール板との間に伸縮継ぎ手が介在され、伸縮継ぎ手と出口フードとの間および伸縮継ぎ手と固定シール板との間に各々冷却単管を設けたことを特徴とする熱分解炉軸シール装置である。
【0020】
本発明は、回転ドラム内に収納された廃棄物等の被処理物を外熱式で加熱して熱分解し、熱分解ガスと不揮発性成分を主とする熱分解残渣とに分離して出口フードへ排出する横型外熱回転式熱分解炉に設けられ、回転ドラムと出口フードとの間に配置された熱分解炉軸シール装置において、回転ドラム側に連結され、傾斜面をもった傾斜体を有する回転シール板と、出口フード側に設けられ、一対の半径方向円板部分を有する固定シール板と、を備え、固定シール板と回転シール板との間に、固定シール板の一方の半径方向円板部分と回転シール板の傾斜体との間に第1端面シールを設け、他方の半径方向円板部分と回転シール板の傾斜体との間に第2端面シールを設けたことを特徴とする熱分解炉軸シール装置である。
【0021】
本発明は、ラジアルシールのうち回転ドラムの中心軸を含む水平面より下側の下半周部分には、ラジアルシールの下半周部分を持ち上げるために、ガータースプリングが取り付けられたことを特徴とする熱分解炉軸シール装置である。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、熱分解炉装置の回転ドラムの直径が大きく、かつ回転ドラムが加熱される温度が高い場合においても、回転ドラム側に連結された回転シール板と出口フード側に設けられた固定シール板との間に配置された端面シールおよびラジアルシールにより、回転シール板と固定シール板との間からの外気の流入を遮断することができる。また、回転ドラムの熱膨張による熱変形に追従してシール性能を保持することができる。このことにより、熱分解炉軸シール装置のシール性能を長期間、安定的に維持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
第1の実施の形態
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。ここで、図1乃至図7は、本発明による熱分解軸シール装置の第1の実施の形態を示す図である。このうち図1は、横型外熱回転式熱分解炉を示す全体構成図であり、図2は、熱分解炉軸シール装置のA部詳細図であり、図3は、端面シールの分割継ぎ目部分を示す構成図であり、図4は、ラジアルシールの分割継ぎ目部分を示す構成図であり、図5は、熱分解炉軸シール装置のB方向矢視図であり、図6および図7は、端面シールのシール作用説明図である。
【0024】
本発明による熱分解炉軸シール装置2は、回転ドラム11内に収納された廃棄物20等の被処理物を外熱式で加熱して熱分解し、熱分解ガス105と不揮発性成分を主とする熱分解残渣106とに分離して出口フード29へ排出する横型外熱回転式熱分解炉1に設けられ、回転ドラム11と出口フード29との間に配置されるものである。
【0025】
まず、図1により、横型外熱回転式熱分解炉1の全体構成について説明する。横型外熱回転式熱分解炉1は、静止架台3と、静止架台3上に設置され、廃棄物20を一時的に溜めておく投入ホッパ21と、静止架台3に対して回転自在に設置され、投入ホッパ21に連結されて廃棄物20を熱分解するための回転ドラム11と、静止架台3上に設置され、回転ドラム11に連結され、熱分解により生じた熱分解ガス105および熱分解残渣106を排出するための出口フード29とを備えている。また、回転ドラム11には、静止架台3上に設置され、回転ドラム11を収納するように、回転ドラム11を加熱するための燃焼室27が設けられている。燃焼室27内の下部であって、回転ドラム11の下方には回転ドラム11を加熱するためのバーナ28a、28b、28cが設けられている。
【0026】
このうち、回転ドラム11には、回転ドラム11の入口側にタイヤ12が設けられ、このタイヤ12は静止架台3上に設置されたローラ14によって回転自在に支持されている。同様に、回転ドラム11には、回転ドラム11の出口側にタイヤ13が設けられ、このタイヤ13は静止架台3上に設置されたローラ15によって回転自在に支持されている。タイヤ12またはタイヤ13のいずれか一方のタイヤは、回転ドラム11の軸線方向に沿った回転ドラム11の移動を拘束している。
【0027】
また、回転ドラム11の入口側には、回転ドラム11を回転駆動させるための駆動装置19が設けられている。この駆動装置19は、モータ18と、モータ18の回転を伝達させるためのチェーン17と、回転ドラム11側に設けられ、チェーン17と係合されてモータ18の回転を伝達するスプロケット16とを有している。
【0028】
また、回転ドラム11の入口側には、投入ホッパ21に溜められた廃棄物20を回転ドラム11内に投入させるための投入装置22が連結されている。この投入装置22は、駆動モータ26と、駆動モータ26の出力軸に連結されたスクリュー主軸24と、スクリュー主軸24に設けられ、廃棄物20を回転ドラム11内に投入させるためのスクリュー羽根25とを有している。また、投入装置22は、スクリュー主軸24およびスクリュー羽根25を覆うように設けられたスクリューケーシング23を有している。
【0029】
回転ドラム11と投入装置22との間には、回転ドラム11内への外気の流入を遮断するために入口側軸シール装置30が設けられている。また、回転ドラム11と出口フード29との間には、回転ドラム11内への外気の流入を遮断するために本発明による熱分解炉軸シール装置(出口側軸シール装置ともいう)2が設けられている。
【0030】
次に、本発明による熱分解炉軸シール装置2について説明する。図2に示すように、熱分解炉軸シール装置2は、回転ドラム11側に連結され回転ドラム11に対して軸線方向に延びる軸方向円筒部分34bを有する回転シール板34と、出口フード29側に設けられ回転ドラム11に対して半径方向に延びる半径方向円板部分35aを有する固定シール板35とを備えている。このうち、回転ドラム11と回転シール板34は、回転ドラム11に連結され回転ドラム11と同芯となる薄肉コーン32と、薄肉コーン32の先端と連結されたフランジ33とを介して剛に連結されている。また、回転シール板34は、固定シール板35に対して半径方向外方に向かって離間距離が小さくなるように傾斜する傾斜円板部分34aを有している。この傾斜円板部分34aは軸方向円筒部分34bに連結されている。さらに、固定シール板35は、回転シール板34に対して離間して配置されているため、回転シール板34を介して回転ドラム11の回転が伝わることはない。
【0031】
また、熱分解炉軸シール装置2は、回転シール板34と固定シール板35との間に配置され、回転シール板34の傾斜円板部分34aに対して摺動自在に設けられた端面シール36と、回転シール板34と固定シール板35との間であって、端面シール36より半径方向外方に配置され、回転シール板34の軸方向円筒部分34bに摺動自在に設けられたラジアルシール37とを備えている。このうち、端面シール36およびラジアルシール37は、いずれもリング状をなし円周方向に分割自在に設けられている。
【0032】
次に、図3により、端面シール36についてさらに説明する。図3に示すように、端面シール36はリング状をなし、円周方向に分割自在となり、端面シール36の分割継ぎ目部分36bは球面結合されてリング状に組み合わされるとともに、固定シール板35の半径方向円板部分35aと回転シール板34の傾斜円板部分34aとの間に配置されている。ところで図2に示すように、端面シール36の断面形状は傾斜部36cを有した傾斜型をなし、端面シール36はカーボンシール材からなっている。また、固定シール板35には、固定シール板35の端面シール36側に固定ピン38が取り付けられている。端面シール36を取り付ける際、固定ピン38と、端面シール36内に有する固定ピン38に対応する穴部36aとが係合され、このようにして端面シール36の円周方向の移動が制限される。さらに、端面シール36をリング状に組み合わせるために、端面シール36の外周面にはガータースプリング39が取り付けられている。
【0033】
次に、図4により、ラジアルシール37についてさらに説明する。ラジアルシール37はリング状をなし、図4に示すように円周方向に分割自在となり、ラジアルシール37の分割継ぎ目部分37bは段差結合されてリング状に組み合わされる。ところで図2に示すように、ラジアルシール37の断面形状は長方形をなし、ラジアルシール37はカーボンシール材からなっている。また、固定シール板35には、固定シール板35の端面シール36側に摺動板40が取り付けられ、摺動板40に固定ピン41が取り付けられている。ラジアルシール37を取り付ける際、固定ピン41と、ラジアルシール37内に有する固定ピン41に対応する穴部37aとが係合され、このようにしてラジアルシール37の円周方向の移動が制限される。さらに、ラジアルシール37をリング状に組み合わせるために、ラジアルシール37の外周面にはガータースプリング42が取り付けられている。また、図示しないが、ラジアルシール37のうち回転ドラム11の中心軸を含む水平面より下側のラジアルシール37の下半周部分には、ラジアルシール37の下半周部分を持ち上げるために、追加のガータースプリングが取り付けられている。
【0034】
また、ラジアルシール37によるシール性能を保持するために、固定シール板35にはスプリング固定板44が設けられている。このスプリング固定板44の先端には、ラジアルシール37を固定シール板35へ押し付けるためのスプリング43が取り付けられている。
【0035】
また、固定シール板35には荷重受機構45が設けられている。この荷重受機構45は、回転シール板34の最外周部34dを半径方向内方へ押し付けるために、回転シール板34に対して半径方向外方に配置されている。荷重受機構45は、固定シール板35に連結されたアーム48と、アーム48を中心軸体として取り付けられたローラ47とを有している。このローラ47により、回転シール板34の最外周部34dが半径方向内方へ押し付けられる。
【0036】
また、固定シール板35には押付機構46が設けられている。この押付機構46は、回転シール板34の端部34cを回転ドラム11の軸線方向の固定シール板35側へ押し付けるために、荷重受機構45に対して半径方向外方に配置されている。押付機構46は、固定シール板35に対して、回転ドラム11の軸線方向に摺動自在に取り付けられたアーム50と、アーム50を中心軸体として取り付けられたローラ49と、ローラ49を回転シール板34の端部34cに押し付けるためのスプリング51とを有している。このローラ49により、回転シール板34の端部34cは固定シール板35側へ押し付けられる。
【0037】
次に、図5により、荷重受機構45および押付機構46の円周方向配置について説明する。図5に示すように、固定シール板35に対して複数の荷重受機構45が円周方向に設けられ、固定シール板35に対して複数の押付機構46が円周方向に設けられている。また、固定シール板35は、回転シール板34と連結されることなく、冷却単管57を介して伸縮継ぎ手56に連結され、回転ドラム11の軸線方向に摺動自在となっている(図2参照)。また、固定シール板35には、回転ドラム11の回転方向を拘束するための拘束機構52が設けられている。拘束機構52は、固定シール板35に連結されたアーム53と、アーム53を中心軸体として取り付けられたローラ54と、横型外熱回転式熱分解炉1を設置するための静止架台3に固定された静止板55とを有している。このローラ54が静止板55で拘束されることにより、固定シール板35の半径方向の移動が拘束される。
【0038】
また、図2に示すように、出口フード29と固定シール板35との間に伸縮継ぎ手56が介在され、伸縮継ぎ手56と出口フード29との間および伸縮継ぎ手56と固定シール板35との間に各々冷却単管57、58が設けられている。冷却単管57、58には、冷却単管57、58の外周面にそれぞれ冷却フィン59、60が取り付けられている。また、伸縮継ぎ手56の半径方向内方には、出口フード29から円筒形状の支持板61が延びている。この支持板61と伸縮継ぎ手56との間には断熱材62が挿入されている。また、支持板61の内側であって回転シール板34には円筒形状のシール板63が取り付けられている。このシール板63と支持板61との間に断熱材64が挿入されている。さらに、支持板61の内側には回転ドラム11の外周面に金属ブラシ65が取り付けられている。この金属ブラシ65の先端と回転ドラム11の外周面との間には若干の隙間が設けられている。
【0039】
また、回転ドラム11のうちタイヤ13が取り付けられた部分と、回転ドラム11のうち熱分解炉軸シール装置2が取り付けられた部分の近傍において、回転ドラム11は二重円筒構造となっている。この二重円筒構造の間には断熱材66が挿入されている。
【0040】
また、図2に示すように、固定シール板35の端面シール36と反対側の面であって、端面シール36より半径方向外方およびラジアルシール37より半径方向内方に、不活性ガス注入装置90が設けられている。不活性ガス注入装置90は、端面シール36とラジアルシール37との間の中間室94に不活性ガス(窒素もしくは燃焼性排気ガスなど)を注入する配管91と、配管91に連結され、注入された中間室94における不活性ガスの圧力を計測する圧力計92とを有している。
【0041】
次に、このような構成からなる本実施の形態の作用について述べる。
まず、横型外熱回転式熱分解炉1の全体の動作について説明する。図1において、投入ホッパ21に一時的に溜められた廃棄物20は、投入装置22により回転ドラム11内に投入される。そして、回転ドラム11は駆動装置19により回転する。また回転ドラム11は、回転ドラム11の下部であって燃焼室27内下部に設けられたバーナ28a、28b、28cにより加熱され、回転ドラム11内部は、500℃乃至600℃の高温状態に維持される。そして、回転ドラム11内部の廃棄物20は、熱分解ガス105と不揮発性成分を主とする熱分解残渣106とに熱分解され、同時に燃焼性排気ガスを発生させる。熱分解ガス105は出口フード29を介して熱分解ガス処理装置へ送られ、他方、熱分解残渣106は出口フード29を介して残渣冷却装置へ送られる。また、燃焼性排気ガスは燃焼室27から外部に排気される。前述したように、回転ドラム11内部で廃棄物20の熱分解を行っている間、回転ドラム11は500℃乃至600℃の高温状態にあるため、回転ドラム11が熱膨張により熱変形する。
【0042】
またこの間、回転ドラム11の回転により、回転ドラム11と共に、回転ドラム11に連結された薄肉コーン32と、薄肉コーン32の先端と連結されたフランジ33と、フランジ33に連結された回転シール板34と、回転シール板34に取り付けられたシール板63とが回転する。
【0043】
次に、図6および図7により、回転ドラム11の回転および加熱中における端面シール36によるシール作用について述べる。上述のように端面シール36は、固定シール板35に取り付けられた固定ピン38と係合し、回転が制限される。これにより、端面シール36は固定シール板35の半径方向円板部分35aに対して円周方向の移動が拘束される。一方、固定ピン38と端面シール36の穴部36aとの隙間の範囲において、端面シール36は固定シール板35の半径方向円板部分35aに対して半径方向に摺動自在となっている。また、端面シール36は回転シール板34の傾斜部34aに対しては円周方向および半径方向に摺動自在となっている。
【0044】
また、端面シール36は、回転シール板34の傾斜部34aと固定シール板35とに挟み込まれていることにより、回転シール34の側から端面シール36に固定シール板35側への押付力96が作用している。この押付力96は、回転シール板34の傾斜部34aを介して端面シール36に作用しているため、端面シール36には、半径方向内方への分力97が作用している。また、端面シール36の外周面にはガータースプリング39が取り付けられているため、端面シール36を半径方向内方へ締め付ける力が作用している。これらの力により、熱変形に応じて自動調整し、端面シール36は分割継ぎ目部分36bが密接に保持されてリング状に形成される。このため、端面シール36のシール性能が保持される。
【0045】
また、図2に示すように、固定シール板35に荷重受機構45が設けられていることにより、回転シール板34の最外周部34dが半径方向内方へ押し付けられている。また固定シール板35に押付機構46が設けられていることにより、回転シール板34の端部34cが固定シール板35側へ押し付けられている。このため、端面シール36のシール性能が安定的に保持される。また、図5に示すように、荷重受機構45および押付機構46は、熱分解炉軸シール装置2の円周方向に複数設けられているため、円周方向に渡って等しく端面シール36のシール性能が安定的に保持される。
【0046】
次に、図2により、回転ドラム11の回転および加熱中におけるラジアルシール37によるシール作用について述べる。ラジアルシール37は、摺動板40を介して固定シール板35に取り付けられた固定ピン41と係合されて取り付けられている。これにより、ラジアルシール37は固定シール板35の半径方向円板部分35aに対して円周方向の移動が拘束される。一方、半径方向に対しては、固定ピン41とラジアルシール37の穴部37aとの隙間の範囲において、ラジアルシール37は固定シール板35の半径方向円板部分35aに対して摺動自在となっている。また、ラジアルシール37は回転シール板34の軸方向円筒部分34bに対しては軸線方向に摺動自在となっている。
【0047】
また、ラジアルシール37の外周面にはガータースプリング42が取り付けられているため、ラジアルシール37を半径方向内方へ締め付ける力が作用している。この力により、熱変形に応じて自動調整し、ラジアルシール37は分割継ぎ目部分37bが密接に保持されてリング状に形成される。このため、ラジアルシール37は回転シール板34の軸方向円筒部分34bに対してのシール性能が保持される。
【0048】
さらに、ラジアルシール37は回転ドラム11の中心軸を含む水平面を介して上下に分割して構成され、上半周部分および下半周部分はいずれもガータースプリング42により保持されている。ラジアルシール37のうち下半周部分には、ラジアルシール37の下半周部分を持ち上げるために追加のガータースプリングが取り付けられている。このため、ラジアルシール37のうち上半周部分と下半周部分とを比較すると、ガータースプリング42で同じ圧力を加えても下半周部分は重力の関係で面圧が低くなる。従って、ラジアルシール37の下半周部分を持ち上げるガータースプリングを追加することにより、分割して構成されたラジアルシール37がばらける方向に力が掛かることを抑制し、面圧を均一にすることができる。
【0049】
また、ラジアルシール37は、固定シール板35に設けられたスプリング固定板44の先端に設けられたスプリング43により、固定シール板35側への押付力が作用している。この力により、熱変形に応じて自動調整し、ラジアルシール37は固定シール板35に対してのシール性能が保持される。なお、スプリング43は、スプリング固定板44と共に熱分解炉軸シール装置2の円周方向に複数設けられているため、ラジアルシール37の円周方向に渡って等しく押付力を作用させることができる。
【0050】
次に、図2により、回転ドラム11の回転および加熱中における伸縮継ぎ手56の作用について述べる。伸縮継ぎ手56は、出口フード29と固定シール板35との間をフレキシブルに連結させ、回転ドラム11の熱伸縮を吸収する。これにより、出口フード29と固定シール板35とを堅固に固定した場合に比べて、回転ドラム11側から熱分解炉軸シール装置2に熱伸縮による力を作用させることはなく、熱分解炉軸シール装置2は構造的に安定して保持される。また、固定シール板35は、拘束機構52が設けられているため、円周方向の移動が拘束されている。一方、固定シール板35は、回転シール板34と連結されることなく、冷却単管57を介して伸縮継ぎ手56に連結されているため、軸線方向には摺動自在である。このため、固定シール板35は伸縮継ぎ手56の軸線方向の伸縮に追従することができる。
【0051】
次に、回転ドラム11の回転および加熱中における伸縮継ぎ手56の両側に設けられた冷却単管57、58の作用について述べる。ところで上述のように、伸縮継ぎ手56の両側に設けられた冷却単管57、58には、冷却単管57、58の外周面に冷却フィン59、60が取り付けられている。このため、回転ドラム11から冷却単管57、58に伝わった熱は冷却フィン59、60を介して効率良く外気側へ伝達される。これにより、伸縮継ぎ手56が加熱されることを抑制して伸縮継ぎ手56の柔軟性が保持される。さらに伸縮継ぎ手56が焼損することを防止できる。
【0052】
またこの間、出口フード29に取り付けられた円筒形状の支持板61と伸縮継ぎ手56との間に断熱材62が挿入されているため、回転ドラム11から伸縮継ぎ手56へ熱が伝わることが抑えられる。これにより、伸縮継ぎ手56が加熱されることを抑制して伸縮継ぎ手56の柔軟性が保持される。さらに伸縮継ぎ手56が焼損することを防止できる。
【0053】
またこの間、回転シール板34に固定されたシール板63と支持板61との間に断熱材64が挿入されている。さらに、支持板61の内側には回転ドラム11の外周面に向けて金属ブラシ65が取り付けられている。このため、カーボンの粉塵が端面シール36側に侵入することが抑えられる。
【0054】
ところで、端面シール36およびラジアルシール37は、上述したようにそれぞれ摺動部が存在するため、異物の混入や異常磨耗などによりシール性能が低下することが想定される。本実施の形態では、不活性ガス注入装置90により、端面シールとラジアルカーボンシールとの間の中間室94に不活性ガス(窒素もしくは燃焼性排気ガスなど)が注入されるため、中間室94の雰囲気が不活性ガスで満たされている。これにより、端面シール36またはラジアルシール37のシール性能が低下した場合においても、回転ドラム11の内部への外気の流入を遮断することができる。
【0055】
このように、本実施の形態によれば、高温に加熱された回転ドラム11が大きく熱膨張により熱変形した場合でも、この熱変形に応じて自動調整することができるため、端面シール36およびラジアルシール37には熱膨張による無理な力が作用することがない。このため、端面シール36とラジアルシール37とは、回転ドラム11の熱膨張による熱変形に追従してシール性能を保持することができる。これにより、熱分解炉軸シール装置2のシール性能を長期間、安定的に維持することができる。
【0056】
また、本実施の形態によれば、回転シール板34と固定シール板35との間は、端面シール36とラジアルシール37とにより二重にシールされているため、一方のシールのシール性能が不良になった場合においても、他方のシールにより回転シール板34と固定シール板35との間がシールされる。このため、回転ドラム11の内部への外気の流入を遮断することができる。
【0057】
また、本実施の形態によれば、カーボンの粉塵が端面シール36側へ侵入することを防止できる。このため、熱分解炉軸シール装置2を、長期間、安定的に廃棄物の処理を継続することができる。
【0058】
第2の実施の形態
次に、図8により、本発明による熱分解炉軸シール装置の第2の実施の形態について説明する。ここで、図8は、熱分解炉軸シール装置のA部詳細図である。
図8に示す第2の実施の形態は、回転シール板の形状と端面シールの形状とが異なるものであり、他の構成は、図1乃至図7に示す第1の実施の形態と略同一である。
【0059】
本実施の形態において、図1乃至図7に示す第1の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。図8に示すように、熱分解炉軸シール装置2は、回転ドラム11側に連結され回転ドラム11に対して軸線方向に延びる軸方向円筒部分67bを有する回転シール板67と、出口フード29側に設けられ回転ドラム11に対して半径方向に延びる半径方向円板部分35aを有する固定シール板35とを備えている。このうち、回転ドラム11と回転シール板67は、回転ドラム11に連結され回転ドラム11と同芯となる薄肉コーン32と、薄肉コーン32の先端と連結されたフランジ33とを介して剛に連結されている。また、回転シール板67は、固定シール板35の半径方向円板部分35aに対して平行に設けられた回転側半径方向円板部分67aを有している。この回転側半径方向円板部分67aは軸方向円筒部分67bに連結されている。このさらに、固定シール板35は、回転シール板34に対して離間して配置されているため、回転シール板67を介して回転ドラム11の回転が伝わることはない。
【0060】
また、熱分解炉軸シール装置2は、回転シール板67と固定シール板35との間に配置され、回転シール板67の回転側半径方向円板部分67aに対して摺動自在に設けられた端面シール68と、回転シール板67と固定シール板35との間であって、端面シール68より半径方向外方に配置され、回転シール板67の軸方向円筒部分67bに摺動自在に設けられたラジアルシール37とを備えている。このうち、端面シール68およびラジアルシール37は、いずれもリング状をなし円周方向に分割自在に設けられている。
【0061】
また、端面シール68は、リング状をなし、円周方向に分割自在となり、端面シール68の分割継ぎ目部分68bは球面結合されてリング状に組み合わされるとともに、固定シール板35の半径方向円板部分35aと回転シール板67の回転側半径方向円板部分67aとの間に配置されている。ところで図8に示すように、端面シール68の断面形状は長方形をなし、端面シール68はカーボンシール材からなっている。また、固定シール板35には、固定シール板35の端面シール68側に固定ピン38が取り付けられている。端面シール68を取り付ける際、固定ピン38と、端面シール68内に有する固定ピン38に対応する穴部68aとが係合され、このようにして端面シール68の円周方向の移動が制限される。さらに、端面シール68をリング状に組み合わせるために、端面シール68の外周面にはガータースプリング69が取り付けられている。また、図示しないが、回転ドラム11の中心軸を含む水平面より下側の端面シール68には、端面シール68の下半周分を持ち上げるために、ガータースプリングが取り付けられている。
【0062】
また、固定シール板35には荷重受機構45が設けられている。この荷重受機構45は、回転シール板67の最外周部67dを半径方向内方へ押し付けるために、回転シール板67に対して半径方向外方に配置されている。荷重受機構45は、固定シール板35に連結されたアーム48と、アーム48を中心軸体として取り付けられたローラ47とを有している。このローラ47により、回転シール板68の最外周部68dが半径方向内方へ押し付けられる。
【0063】
また、固定シール板35には押付機構46が設けられている。この押付機構46は、回転シール板68の端部68cを回転ドラム11の軸線方向の固定シール板35側へ押し付けるために、荷重受機構45に対して半径方向外方に配置されている。押付機構46は、固定シール板35に対して、回転ドラム11の軸線方向に摺動自在に取り付けられたアーム50と、アーム50を中心軸体として取り付けられたローラ49と、ローラ49を回転シール板68の端部68cに押し付けるためのスプリング51とを有している。このローラ49により、回転シール板68の端部68cは固定シール板35側へ押し付けられる。
【0064】
本実施の形態によれば、図8に示すように、回転ドラム11の回転により、回転ドラム11と共に、回転ドラム11に連結された薄肉コーン32と、薄肉コーン32の先端と連結されたフランジ33と、フランジ33に連結された回転シール板67と、回転シール板34に取り付けられたシール板63とが回転する。
【0065】
また、回転ドラム11の回転および加熱中における端面シール68は、固定シール板35に取り付けられた固定ピン38と係合し、回転が制限される。これにより、端面シール68は固定シール板35の半径方向円板部分35aに対して円周方向の移動が拘束される。一方、固定ピン38と端面シール68の穴部68aの隙間の範囲において、端面シール68は固定シール板35の半径方向円板部分35aに対して半径方向に摺動自在となっている。また、端面シール68は回転シール板67の回転側半径方向円板部分67aに対しては円周方向および半径方向に摺動自在となっている。
【0066】
また、端面シール68は、回転シール板67の回転側半径方向円板部分67aと固定シール板35とに挟み込まれていることにより、回転シール板67の側から端面シール68には固定シール板35側への押付力が作用している。また、端面シール68の外周面にはガータースプリング69が取り付けられているため、端面シール68を半径方向内方へ締め付ける力が作用している。これらの力により、熱変形に応じて自動調整し、端面シール68は分割継ぎ目部分68bが密接に保持されてリング状に形成される。このため、端面シール68のシール性能が保持される。
【0067】
また、回転シール板67の端部67cは、押付機構46により、固定シール板35側へ押し付けられている。これにより、端面シール68のシール性能が安定的に保持される。また、押付機構46は、熱分解炉軸シール装置2の円周方向に複数設けられているため、端面シール68の円周方向に渡って等しく押し付けられる。これにより、端面シール68の円周方向に渡って等しく端面シール68のシール性能が安定的に保持される。
【0068】
第3の実施の形態
次に、図9および図10により、本発明による熱分解炉軸シール装置の第3の実施の形態について説明する。ここで、図9は、熱分解炉軸シール装置のA部詳細図であり、図10は、熱分解炉軸シール装置のC方向矢視図である。
図9および図10に示す第3の実施の形態は、第1の実施の形態におけるラジアルシールに代えてパッキンシールを用いたものであり、他の構成は、図1乃至図7に示す第1の実施の形態と略同一である。
【0069】
本実施の形態において、図1乃至7に示す第1の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。図9に示すように、熱分解炉軸シール装置2は、回転ドラム11側に連結された回転シール板70と、出口フード29側に設けられ回転ドラム11に対して半径方向に延びる半径方向円板部分71aを有する固定シール板71とを備えている。このうち、回転ドラム11と回転シール板70は、回転ドラム11に連結され回転ドラム11と同芯となる薄肉コーン32と、薄肉コーン32の先端と連結されたフランジ33とを介して剛に連結されている。また、回転シール板70は、固定シール板71に対して半径方向外方に向かって離間距離が小さくなるように傾斜する傾斜円板部分70aを有している。さらに、固定シール板71は、回転シール板70に対して離間して配置されているため、回転シール板70を介して回転ドラム11の回転が伝わることはない。
【0070】
また、熱分解炉軸シール装置2は、回転シール板70と固定シール板71との間に配置され、回転シール板70の傾斜円板部分70aに対して摺動自在に設けられた端面シール72と、回転シール板70と固定シール板71との間であって、端面シール72より半径方向外方に配置されたパッキンシール73とを備えている。このうち、端面シール72はリング状をなし円周方向に分割自在に設けられている。
【0071】
また、端面シール72はリング状をなし、円周方向に分割自在となり、端面シール72の分割継ぎ目部分72bは球面結合されてリング状に組み合わされるとともに、固定シール板71の半径方向円板部分71aと回転シール板70の傾斜円板部分70aとの間に配置されている。端面シール72の断面形状は傾斜部72aを有した傾斜型をなし、端面シール72はカーボンシール材からなっている。また、固定シール板71には、固定シール板71の端面シール72側に固定ピン74が取り付けられている。端面シール72を取り付ける際、固定ピン74と、端面シール72内に有する固定ピン74に対応する穴部72aとが係合され、このようにして端面シール72の円周方向の移動が制限される。端面シール72の円周方向の回り止めのために、この固定ピン74と、端面シール72内に有する固定ピン74に対応する穴部74aとが係合されて、端面シール72が取り付けられている。さらに、端面シール72をリング状に組み合わせるために、端面シール72の外周面にはガータースプリング75が取り付けられている。
【0072】
次に、回転ドラム11の回転および加熱中におけるパッキンシール73についてさらに説明する。パッキンシール73はU字形状のリップシールを形成し、パッキンシール73の材料には耐熱ゴム(例えばフッ素系ゴム)を用いている。パッキンシール73は、回転シール板70または固定シール板71のいずれか一方に接着されることにより固定される。他方の接着されない側でリップシールが構成されている。パッキンシール73は、内側リップ、外側リップ、側面リップがあるが、いずれのリップでも良い。また、パッキンシール73は、着脱可能で部品取替えが容易な構造となっていてもよい。
【0073】
また、固定シール板71には荷重受機構76が設けられている。この荷重受機構76は、回転シール板70の最外周部70dを半径方向内方へ押し付けるために、回転シール板70に対して半径方向外方に配置されている。荷重受機構76は、固定シール板71に連結されたアーム79と、アーム79を中心軸体として取り付けられたローラ78とを有している。このローラ78により、回転シール板70の最外周部70dが半径方向内方へ押し付けられる。
【0074】
また、固定シール板71には、押付機構77が設けられている。この押付機構77は、回転シール板70の端部70cを回転ドラム11の軸線方向の固定シール板71側へ押し付けるために、荷重受機構76に対して半径方向外方に配置されている。押付機構77は、固定シール板71に対して、回転ドラム11の軸線方向に摺動自在に取り付けられたアーム81と、アーム81を中心軸体として取り付けられたローラ80と、ローラ80を回転シール板70の端部70cに押し付けるためのスプリング82とを有している。このローラ80により、回転シール板70の端部70cは固定シール板71側へ押し付けられる。
【0075】
次に、図10により、荷重受機構76および押付機構77の円周方向配置について説明する。図10に示すように、固定シール板71に対して複数の荷重受機構76が円周方向に設けられ、固定シール板71に対して複数の押付機構77が円周方向に設けられている。また、固定シール板71は、回転シール板70と連結されることなく、冷却単管57を介して伸縮継ぎ手56に連結され、回転ドラム11の軸線方向に摺動自在となっている(図9参照)。また、固定シール板71には、回転ドラム11の回転方向を拘束するための拘束機構83が設けられている。拘束機構83は、固定シール板71に連結されたアーム84と、アーム84を中心軸体として取り付けられたローラ85と、横型外熱回転式熱分解炉1を設置するための静止架台3に固定された静止板86とを有している。このローラ85が静止板95で拘束されることにより、固定シール板71の半径方向の移動が拘束される。
【0076】
本実施の形態によれば、回転ドラム11の回転により、回転ドラム11と共に、回転ドラム11に連結された薄肉コーン32と、薄肉コーン32の先端と連結されたフランジ33と、フランジ33に連結された回転シール板70と、回転シール板34に取り付けられたシール板63とが回転する。
【0077】
また、回転ドラム11の回転および加熱中における端面シール72は、固定シール板71に取り付けられた固定ピン74と係合し、回転が制限される。これにより、端面シール72は固定シール板71の半径方向円板部分71aに対して円周方向の移動が拘束される。一方、固定ピン74と端面シール72の穴部72aとの隙間の範囲において、端面シール72は固定シール板71の半径方向円板部分71aに対して半径方向に摺動自在となっている。また、端面シール72は回転シール板70の傾斜部70aに対しては円周方向および半径方向に摺動自在となっている。
【0078】
また、端面シール72は、回転シール板70の傾斜部70aと固定シール板71とに挟み込まれていることにより、回転シール板70の側から端面シール72には固定シール板71側への押付力96が作用している。この押付力96は、回転シール板70の傾斜部70aを介して端面シール72に作用しているため、端面シール72には、半径方向内方への分力97が作用している。また、端面シール72の外周面にはガータースプリング75が取り付けられているため、端面シール72を半径方向内方へ締め付ける力が作用している。これらの力により、熱変形に応じて自動調整し、端面シール72は分割継ぎ目部分72bが密接に保持されてリング状に形成される。このため、端面シール72のシール性能が保持される。
【0079】
また、図8に示すように、回転シール板70の端部70cは、押付機構77により、固定シール板71側へ押し付けられている。これにより、端面シール72およびパッキンシール73のシール性能が安定的に保持される。また、押付機構77は、熱分解炉軸シール装置2の円周方向に複数設けられているため、端面シール72およびパッキンシール73の円周方向に渡って等しく押し付けられる。これにより、端面シール72およびパッキンシール73の円周方向に渡って等しく端面シール72およびパッキンシール73のシール性能が安定的に保持される。
【0080】
また、図8に示すように、パッキンシール73は、回転シール板70または固定シール板71のいずれか一方に接着されて固定されているため、他方の接着されない側では摺動自在となっている。また、パッキンシール73の材料には耐熱ゴムを用い、U字形状のリップシールを形成しているため、熱変形に応じて自動調整し、パッキンシール73のシール性能が保持される。さらに、パッキンシール73は、回転シール板70または固定シール板71との接触面が少なく、接触面圧が低い。このため、回転ドラム11を回転させるためのトルクを、比較的低くすることができる。
【0081】
また、図8に示すように、回転ドラム11の回転および加熱中における伸縮継ぎ手56は、出口フード29と固定シール板71との間をフレキシブルに連結させ、回転ドラム11の熱伸縮を吸収する。これにより、出口フード29と固定シール板71を堅固に固定した場合に比べて、回転ドラム11側から熱分解炉軸シール装置2に熱伸縮による力を作用させることはなく、熱分解炉軸シール装置2は構造的に安定して保持される。また、固定シール板71は、拘束機構83が設けられているため、円周方向の移動が拘束されている。一方、固定シール板71は、回転シール板70と連結されることなく、冷却単管57を介して伸縮継ぎ手56に連結されているため、軸線方向には摺動自在である。このため、固定シール板71は伸縮継ぎ手56の軸線方向の伸縮に追従することができる。
【0082】
第4の実施の形態
次に、図11により、本発明による熱分解炉軸シール装置の第4の実施の形態について説明する。ここで、図11は、熱分解炉軸シール装置のA部詳細図である。
図11に示す第4の実施の形態は、回転シール板の形状と端面シールの形状とが異なるものであり、他の構成は、図9および図10に示す第3の実施の形態と略同一である。
【0083】
本実施の形態において、図9および図10に示す第3の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。図11に示すように熱分解炉軸シール装置2は、回転ドラム11側に連結された回転シール板86と、出口フード29側に設けられ回転ドラム11に対して半径方向に延びる半径方向円板部分71aを有する固定シール板71とを備えている。このうち、回転ドラム11と回転シール板86は、回転ドラム11に連結され回転ドラム11と同芯となる薄肉コーン32と、薄肉コーン32の先端と連結されたフランジ33とを介して剛に連結されている。また、回転シール板86は、固定シール板71の半径方向円板部分71aに対して平行に設けられた回転側半径方向円板部分86aを有している。さらに、固定シール板71は、回転シール板86に対して離間して配置されているため、回転シール板86を介して回転ドラム11の回転が伝わることはない。
【0084】
また、熱分解炉軸シール装置2は、回転シール板86と固定シール板71との間に配置され、回転シール板86の回転側半径方向円板部分86aに対して摺動自在に設けられた端面シール87と、回転シール板86と固定シール板71との間であって、端面シール87より半径方向外方に配置されたパッキンシール73とを備えている。このうち、端面シール87はリング状をなし円周方向に分割自在に設けられている。
【0085】
また、端面シール87はリング状をなし、円周方向に分割自在となり、端面シール87の分割継ぎ目部分87bは球面結合されてリング状に組み合わされるとともに、固定シール板71の半径方向円板部分71aと回転シール板86の回転側半径方向円板部分86aとの間に配置されている。端面シール87の断面形状は長方形をなし、端面シール87はカーボンシール材からなっている。また、固定シール板71には、固定シール板71の端面シール87側に固定ピン89が取り付けられている。端面シール87を取り付ける際、固定ピン89と、端面シール87内に有する固定ピン89に対応する穴部87aとが係合され、このようにして端面シール87の円周方向の移動が制限される。さらに、端面シール87をリング状に組み合わせるために、端面シール87の外周面にはガータースプリング88が取り付けられている。また、図示しないが、回転ドラム11の中心軸を含む水平面より下側の端面シール87には、端面シール87の下半周分を持ち上げるために、ガータースプリングが取り付けられている。
【0086】
また、固定シール板71には、荷重受機構76が設けられている。この荷重受機構76は、回転シール板86の最外周部86dを半径方向内方へ押し付けるために、回転シール板86に対して半径方向外方に配置されている。荷重受機構76は、固定シール板71に連結されたアーム79と、アーム79を中心軸体として取り付けられたローラ78とを有している。このローラ78により、回転シール板86の最外周部86dが半径方向内方へ押し付けられる。
【0087】
また、固定シール板71には、押付機構77が設けられている。この押付機構77は、回転シール板86の端部86cを回転ドラム11の軸線方向の固定シール板71側へ押し付けるために、荷重受機構76に対して半径方向外方に配置されている。押付機構77は、固定シール板71に対して、回転ドラム11の軸線方向に摺動自在に取り付けられたアーム81と、アーム81を中心軸体として取り付けられたローラ80と、ローラ80を回転シール板86の端部86cに押し付けるためのスプリング82とを有している。このローラ80により、回転シール板86の端部86cは固定シール板71側へ押し付けられる。
【0088】
本実施の形態によれば、図11に示すように、回転ドラム11の回転により、回転ドラム11と共に、回転ドラム11に連結された薄肉コーン32と、薄肉コーン32の先端と連結されたフランジ33と、フランジ33に連結された回転シール板86と、回転シール板34に取り付けられたシール板63とが回転する。
【0089】
また、回転ドラム11の回転および加熱中における端面シール87は、固定シール板71に取り付けられた固定ピン89と係合し、回転が制限される。これにより、端面シール87は固定シール板71の半径方向円板部分71aに対して円周方向の移動が拘束される。一方、固定ピン89と端面シール87の穴部87aとの隙間の範囲において、端面シール87は固定シール板71の半径方向円板部分71aに対して半径方向に摺動自在となっている。また、端面シール87は回転シール板86の回転側半径方向円板部分86aに対しては円周方向および半径方向に摺動自在となっている。
【0090】
また、端面シール87は、回転シール板86の回転側半径方向円板部分86aと固定シール板71とに挟み込まれていることにより、回転シール板86の側から端面シール87には固定シール板71側への押付力が作用している。また、端面シール87の外周面にはガータースプリング88が取り付けられているため、端面シール87半径方向内方へ締め付ける力が作用している。これらの力により、熱変形に応じて自動調整し、端面シール87は分割継ぎ目部分87bが密接に保持されてリング状に形成される。このため、端面シール87のシール性能が保持される。
【0091】
また、回転シール板86の端部86cは、押付機構77により、固定シール板71側へ押し付けられている。これにより、端面シール87およびパッキンシール73のシール性能が安定的に保持される。また、押付機構77は、熱分解炉軸シール装置2の円周方向に複数設けられているため、端面シール87およびパッキンシール73の円周方向に渡って等しく押し付けられる。これにより、端面シール87およびパッキンシール73の円周方向に渡って等しく端面シール87およびパッキンシール73のシール性能が安定的に保持される。
【0092】
第5の実施の形態
次に、図12により、本発明による熱分解炉軸シール装置の第5の実施の形態について説明する。ここで、図12は、熱分解炉軸シール装置のA部詳細図である。
図12に示す第5の実施の形態は、第3の実施の形態における不活性ガス注入装置の代わりに清掃口を設けたものであり、他の構成は、図9および図10に示す第3の実施の形態と略同一である。
【0093】
本実施の形態において、図9および図10に示す第3の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。図12に示すように、固定シール板71の端面シール72と反対側の面であって、端面シール72より半径方向外方およびパッキンシール73より半径方向内方に、清掃口93が設けられている。 この清掃口93は、端面シール72とパッキンシール73との間の中間室94に連結されている。また、清掃口93は固定シール板71に対して円周方向に複数設けられている。
【0094】
中間室94には、長期の運転によってカーボンが堆積することが想定される。中間室94におけるカーボンの堆積量が多くなると、端面シール72またはパッキンシール73と、固定シール板71または回転シール板70とのシール面に食い込まれ、端面シール72やパッキンシール73のシール性能を低下させる可能性がある。
【0095】
本実施の形態によれば、図12に示すように、清掃口93を開放して中間室94内に堆積されたカーボンを除去することができる。このため、端面シール72またはパッキンシール73と、固定シール板71または回転シール板70とのシール面にカーボンが食い込まれることがなく、端面シール72またはパッキンシール73のシール性能を低下させることを防止することができる。
【0096】
第6の実施の形態
次に、図13および図14により、本発明による熱分解炉軸シール装置の第6の実施の形態について説明する。ここで、図13は、熱分解炉軸シール装置のA部詳細図であり、図14は、熱分解炉軸シール装置のD方向矢視図である。
図13および図14に示す第6の実施の形態は、第1の実施の形態における回転シール板の形状が異なり、ラジアルシールの代わりに端面シールを用いたものであり、他の構成は、図1乃至図7に示す第1の実施の形態と略同一である。
【0097】
本実施の形態において、図1乃至図7に示す第1の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。図13に示すように、熱分解炉軸シール装置2は、回転ドラム11側に連結され、傾斜面をもった傾斜体201aを有する回転シール板201と、出口フード29側に設けられ、回転ドラム11に対して半径方向に延びる一対の半径方向円板部分202a、203aを有する固定シール板202、203とを備えている。このうち、回転ドラム11と回転シール板201は、回転ドラム11に連結され回転ドラム11と同芯となる薄肉コーン32と、薄肉コーン32の先端と連結されたフランジ33とを介して剛に連結されている。また、回転シール板201の傾斜体201aは、固定シール板202に対して半径方向外方に向かって離間距離が小さくなるように傾斜する傾斜円板部分201bと、固定シール板203に対して半径方向外方に向かって離間距離が小さくなるように傾斜する傾斜円板部分201cとを有している。この傾斜円板部分201bは、傾斜体201aに対して傾斜円板部分201cの反対側に設けられている。さらに、固定シール板202、203は、回転シール板201に対して離間して配置されているため、回転シール板201を介して回転ドラム11の回転が伝わることはない。
【0098】
また、熱分解炉軸シール装置2は、固定シール板202、203と回転シール板201との間に、固定シール板202、203の一方の半径方向円板部分202aと回転シール板201の傾斜体201aの傾斜円板部分201bとの間に第1端面シール204を設けている。また、他方の半径方向円板部分203aと回転シール板201の傾斜体201aの傾斜円板部分201cとの間に第2端面シール205を設けている。このうち、第1端面シール204は、回転シール板201の傾斜円板部分201bに対して摺動自在に設けられ、第2端面シール205は、回転シール板201の傾斜円板部分201cに対して摺動自在に設けられている。また、第1端面シール204および第2端面シール205は、いずれもリング状をなし円周方向に分割自在に設けられている。
【0099】
また、端面シール204、205はリング状をなし、円周方向に分割自在となり、端面シール204、205の分割継ぎ目部分204b、205bは球面結合されてリング状に組み合わされる。ところで、図13に示すように、端面シール204、205の断面形状は傾斜部204c、205cを有した傾斜型をなし、端面シール204、205はカーボンシール材からなっている。また、固定シール板202、203には、固定シール板202、203の端面シール204、205側に固定ピン206、207が取り付けられている。端面シール204、205を取り付ける際、固定ピン206、207と、端面シール204、205内に有する固定ピン206、207に対応する穴部204a、205aとが係合され、このようにして端面シール204、205の円周方向の移動が制限される。さらに、端面シール204、205をリング状に組み合わせるために、端面シール204、205の外周面にはガータースプリング208、209が取り付けられている。
【0100】
また、固定シール板203には荷重受機構210が設けられている。この荷重受機構210は、回転シール板201の最外周部201dを半径方向内方へ押し付けるために、回転シール板201に対して半径方向外方に配置されている。荷重受機構210は、固定シール板203に連結されたアーム213と、アーム213を中心軸体として取り付けられたローラ212と、固定シール板202に対して回転ドラム11の軸線方向に摺動自在に取り付けられたスライド機構217とを有している。このローラ212により、回転シール板201の最外周部201dが半径方向内方へ押し付けられる。
【0101】
また、固定シール板203には押付機構211が設けられている。この押付機構211は、固定シール板203を回転ドラム11の軸線方向の固定シール板202側へ押し付けるために、荷重受機構210に対して半径方向外方に配置されている。押付機構211は、固定シール板203に連結されたアーム214と、固定シール板203を固定シール板202に押し付けるためのスプリング215と、固定シール板202に対して回転ドラム11の軸線方向に摺動自在に取り付けられたスライド機構216とを有している。これにより、固定シール板203は固定シール板202側へ押し付けられる。
【0102】
また、図14により、荷重受機構210および押付機構211の円周方向配置について説明する。図14に示すように、固定シール板203に対して複数の荷重受機構210が円周方向に設けられ、固定シール板203に対して複数の押付機構211が円周方向に設けられている。また、固定シール板202、203は、回転シール板201と連結されることなく、冷却単管57を介して伸縮継ぎ手56に連結され、回転ドラム11の軸線方向に摺動自在となっている(図13参照)。また、固定シール板203には、回転ドラム11の回転方向を拘束するための拘束機構219が設けられている。拘束機構219は、固定シール板203に連結されたアーム221と、アーム221を中心軸体として取り付けられたローラ220と、横型外熱回転式熱分解炉1を設置するための静止架台3に固定された静止板222とを有している。このローラ220が静止板222で拘束されることにより、固定シール板203の半径方向の移動が拘束される。なお、図示しないが、固定シール板202についても、同様の拘束機構が設けられている。
【0103】
また、図13に示すように、回転ドラム11の内部への外気の流入を遮断するために、固定シール板202と固定シール板203とをフレキシブルに連結させ、固定シール板202と固定シール板203との間であって、端面シール204、205に対して半径方向外方には、伸縮継ぎ手218が取り付けられている。
【0104】
また、図13に示すように、固定シール板203の端面シール205と反対側の面であって、端面シール205より半径方向外方および伸縮継ぎ手218より半径方向内方に、不活性ガス注入装置223が設けられている。不活性ガス注入装置223は、第1端面シール204と第2端面シール205と伸縮継ぎ手218との間の中間室98に不活性ガス(窒素もしくは燃焼性排気ガスなど)を注入する配管224と、配管224に連結され、注入された中間室98における不活性ガスの圧力を計測する圧力計225とを有している。
なお、不活性ガス注入装置223の代わりに、清掃口93を設けてもよい。
【0105】
本実施の形態によれば、図13に示すように、回転ドラム11の回転により、回転ドラム11と共に、回転ドラム11に連結された薄肉コーン32と、薄肉コーン32の先端と連結されたフランジ33と、フランジ33に連結された回転シール板201と、回転シール板34に取り付けられたシール板63とが回転する。
【0106】
また、回転ドラム11の回転および加熱中における端面シール204、205は、固定シール板202、203に取り付けられた固定ピン206、207と係合し、回転が制限される。これにより、端面シール204、205は固定シール板202、203の半径方向円板部分202a、203aに対して円周方向の移動が拘束される。一方、固定ピン206、207と端面シール204、205の穴部204a、205aとの隙間の範囲において、端面シール204、205は固定シール板202、203の半径方向円板部分202a、203aに対して半径方向に摺動自在となっている。また、端面シール204、205は回転シール板201の傾斜部201b、201cに対しては円周方向および半径方向に摺動自在となっている。
【0107】
また、端面シール204、205は、回転シール板201の傾斜部201b、201cと固定シール板202、203とに挟み込まれていることにより、回転シール板201の側から端面シール204、205には固定シール板202、203側への押付力96が作用している。この押付力96は、回転シール板201の傾斜部201b、201cを介して端面シール204、205に作用しているため、端面シール204、205には、半径方向内方への分力97が作用している。また、端面シール204、205の外周面にはガータースプリング208、209が取り付けられているため、端面シール204、205を半径方向内方へ締め付ける力が作用している。これらの力により、熱変形に応じて自動調整し、端面シール204、205は分割継ぎ目部分204b、205bが密接に保持されてリング状に形成される。このため、端面シール204、205のシール性能が保持される。
【0108】
また、図13に示すように、固定シール板203は、押付機構211により、固定シール板202側へ押し付けられている。これにより、端面シール204、205のシール性能が安定的に保持される。また、押付機構211は、熱分解炉軸シール装置2の円周方向に複数設けられているため、端面シール204、205の円周方向に渡って等しく押し付けられる。これにより、端面シール204、205の円周方向に渡って等しく端面シール204、205のシール性能が安定的に保持される。
【0109】
また、回転ドラム11の回転および加熱中における伸縮継ぎ手56は、出口フード29と固定シール板202との間をフレキシブルに連結させ、回転ドラム11の熱伸縮を吸収する。これにより、出口フード29と固定シール板202とを堅固に固定した場合に比べて、回転ドラム11側から熱分解炉軸シール装置2に熱伸縮による力を作用させることはなく、熱分解炉軸シール装置2は構造的に安定して保持される。また、固定シール板202には、図示しない拘束機構が設けられているため、円周方向の移動が拘束されている。一方、固定シール板202は、回転シール板201と連結されることなく、冷却単管57を介して伸縮継ぎ手56に連結されているため、軸線方向には摺動自在である。このため、固定シール板202は伸縮継ぎ手56の軸線方向の伸縮に追従することができる。
【0110】
また、回転ドラム11の回転および加熱中における伸縮継ぎ手218は、固定シール板202と固定シール板203との間をフレキシブルに連結させ、回転ドラム11の熱伸縮を吸収する。これにより、固定シール板202と固定シール板203を堅固に固定した場合に比べて、回転ドラム11側から熱分解炉軸シール装置2に熱伸縮による力を作用させることはなく、熱分解炉軸シール装置2は構造的に安定して保持される。また、固定シール板203には、拘束機構219が設けられているため、円周方向の移動が拘束されている。一方、固定シール板203は、回転シール板201と連結されることなく、伸縮継ぎ手218に連結されているため、軸線方向には摺動自在である。このため、固定シール板203は伸縮継ぎ手218の軸線方向の伸縮に追従することができる。
【0111】
また、固定シール板202と固定シール板203との間に伸縮継ぎ手218が取り付けられているため、第1端面シール204と第2端面シール205との間に設けられた中間室98に、外気が流入することを遮断することができる。これにより、回転ドラム11の内部への外気の流入を遮断することができる。
【0112】
ところで、端面シール204、205は、上述したようにそれぞれ摺動部が存在するため、異物の混入や異常磨耗などによりシール性能が低下することが想定される。本実施の形態では、不活性ガス注入装置223により、第1端面シール204と第2端面シール205と伸縮継ぎ手218との間の中間室98に不活性ガス(窒素もしくは燃焼性排気ガスなど)が注入されるため、中間室98の雰囲気が不活性ガスで満たされている。これにより、端面シール204、205のシール性能が低下した場合においても、回転ドラム11の内部への外気の流入を遮断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0113】
【図1】本発明の第1の実施の形態における横型外熱回転式熱分解炉を示す全体構成図。
【図2】本発明の第1の実施の形態における熱分解炉軸シール装置のA部詳細図。
【図3】本発明の第1の実施の形態における端面シールの分割継ぎ目部分を示す構成図。
【図4】本発明の第1の実施の形態におけるラジアルシールの分割継ぎ目部分を示す構成図。
【図5】本発明の第1の実施の形態における熱分解炉軸シール装置のB方向矢視図。
【図6】本発明の第1の実施の形態における端面シールのシール作用説明図。
【図7】本発明の第1の実施の形態における端面シールのシール作用説明図。
【図8】本発明の第2の実施の形態における熱分解炉軸シール装置のA部詳細図。
【図9】本発明の第3の実施の形態における熱分解炉軸シール装置のA部詳細図。
【図10】本発明の第3の実施の形態における熱分解炉軸シール装置のC方向矢視図。
【図11】本発明の第4の実施の形態における熱分解炉軸シール装置のA部詳細図。
【図12】本発明の第5の実施の形態における熱分解炉軸シール装置のA部詳細図。
【図13】本発明の第6の実施の形態における熱分解炉軸シール装置のA部詳細図。
【図14】本発明の第6の実施の形態における熱分解炉軸シール装置のD方向矢視図。
【図15】従来技術の熱分解炉装置を説明する全体構成図。
【符号の説明】
【0114】
1 横型外熱回転式熱分解炉
2 熱分解炉軸シール装置
3 静止架台
11 回転ドラム
12 タイヤ
13 タイヤ
14 ローラ
15 ローラ
16 スプロケット
17 チェーン
18 モータ
19 駆動装置
20 廃棄物
21 投入ホッパ
22 投入装置
23 スクリューケーシング
24 スクリュー主軸
25 スクリュー羽根
26 駆動モータ
27 燃焼室
28a バーナ
28b バーナ
28c バーナ
29 出口フード
30 入口側軸シール装置
32 薄肉コーン
33 フランジ
34 回転シール板
34a 傾斜円板部分
34b 軸方向円筒部分
34c 端部
34d 最外周部
35 固定シール板
35a 半径方向円板部分
36 端面シール
36a 穴部
36b 分割継ぎ目部分
36c 傾斜部
37 ラジアルシール
37a 穴部
37b 分割継ぎ目部分
38 固定ピン
39 ガータースプリング
40 摺動板
41 固定ピン
42 カータースプリング
43 スプリング
44 スプリング固定板
45 荷重受機構
46 押付機構
47 ローラ
48 アーム
49 ローラ
50 アーム
51 スプリング
52 拘束機構
53 アーム
54 ローラ
55 静止板
56 伸縮継ぎ手
57 冷却単管
58 冷却単管
59 冷却フィン
60 冷却フィン
61 支持板
62 断熱材
63 シール板
64 断熱材
65 金属ブラシ
66 断熱材
67 回転シール板
67a 回転側半径方向円板部分
67b 軸方向円筒部分
67c 端部
67d 最外周部
68 端面シール
68a 穴部
68b 分割継ぎ目部分
69 ガータースプリング
70 回転シール板
70a 傾斜円板部分
70c 端部
70d 最外周部
71 固定シール板
71a 半径方向円板部分
72 端面シール
72a 穴部
72b 分割継ぎ目部分
73 パッキンシール
74 固定ピン
75 ガータースプリング
76 荷重受機構
77 押付機構
78 ローラ
79 アーム
80 ローラ
81 アーム
82 スプリング
83 拘束機構
84 アーム
85 ローラ
86 回転シール板
86a 回転側半径方向円板部分
86d 最外周部
87 端面シール
87a 穴部
87b 分割継ぎ目部分
88 ガータースプリング
89 固定ピン
90 不活性ガス注入装置
91 配管
92 圧力計
93 清掃口
94 中間室
95 静止板
96 押付力
97 分力
98 中間室
101 廃棄物
102 前処理装置
103 廃棄物供給装置
104 熱分解炉装置
105 熱分解ガス
106 熱分解残渣
107 残渣冷却装置
201 回転シール板
201a傾斜体
201b傾斜円板部分
201c傾斜円板部分
201d最外周部
202 固定シール板
202a半径方向円板部分
203 固定シール板
203a半径方向円板部分
204 端面シール
204a穴部
204b分割継ぎ目部分
205 端面シール
205a穴部
205b分割継ぎ目部分
206 固定ピン
207 固定ピン
208 ガータースプリング
209 ガータースプリング
210 荷重受機構
211 押付機構
212 ローラ
213 アーム
214 アーム
215 スプリング
216 スライド機構
217 スライド機構
218 伸縮継ぎ手
219 拘束機構
220 ローラ
221 アーム
222 静止板
223 不活性ガス注入装置
224 配管
225 圧力計

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転ドラム内に収納された廃棄物等の被処理物を外熱式で加熱して熱分解し、熱分解ガスと不揮発性成分を主とする熱分解残渣とに分離して出口フードへ排出する横型外熱回転式熱分解炉に設けられ、回転ドラムと出口フードとの間に配置された熱分解炉軸シール装置において、
回転ドラム側に連結され軸方向円筒部分を有する回転シール板と、
出口フード側に設けられ半径方向円板部分を有する固定シール板と、
回転シール板と固定シール板との間に配置され、回転シール板に摺動自在に設けられた端面シールと、
回転シール板と固定シール板との間であって、端面シールより半径方向外方に配置され、回転シール板の軸方向円筒部分に摺動自在に設けられたラジアルシールと、を備えたことを特徴とする熱分解炉軸シール装置。
【請求項2】
端面シールおよびラジアルシールは、いずれもリング状をなし円周方向に分割自在となり、
端面シールおよびラジアルシールはカーボン材からなることを特徴とする請求項1記載の熱分解炉軸シール装置。
【請求項3】
回転シール板は、固定シール板に対して半径方向外方に向かって離間距離が小さくなるように傾斜する傾斜円板部分を有し、
端面シールはリング状をなし、円周方向に分割自在となり、端面シールの分割継ぎ目部分は球面結合されてリング状に組み合わされるとともに、固定シール板の半径方向円板部分と回転シール板の傾斜円板部分との間に配置されていることを特徴とする請求項1記載の熱分解炉軸シール装置。
【請求項4】
回転シール板は、固定シール板の半径方向円板部分に対して平行に設けられた回転側半径方向円板部分を有し、
端面シールはリング状をなし、円周方向に分割自在となり、端面シールの分割継ぎ目部分は球面結合されてリング状に組み合わされるとともに、固定シール板の半径方向円板部分と回転シール板の回転側半径方向円板部分との間に配置されていることを特徴とする請求項1記載の熱分解炉軸シール装置。
【請求項5】
回転ドラム内に収納された廃棄物等の被処理物を外熱式で加熱して熱分解し、熱分解ガスと不揮発性成分を主とする熱分解残渣とに分離して出口フードへ排出する横型外熱回転式熱分解炉に設けられ、回転ドラムと出口フードとの間に配置された熱分解炉軸シール装置において、
回転ドラム側に連結された回転シール板と、
出口フード側に設けられ半径方向円板部分を有する固定シール板と、
回転シール板と固定シール板との間に配置され、回転シール板に摺動自在に設けられた端面シールと、
回転シール板と固定シール板との間であって、端面シールより半径方向外方に配置されたパッキンシールと、を備えたことを特徴とする熱分解炉軸シール装置。
【請求項6】
端面シールはカーボン材からなり、パッキンシールは耐熱用ゴムからなることを特徴とする請求項5記載の熱分解炉軸シール装置。
【請求項7】
回転シール板は、固定シール板に対して半径方向外方に向かって離間距離が小さくなるように傾斜する傾斜円板部分を有し、
端面シールはリング状をなし、円周方向に分割自在となり、端面シールの分割継ぎ目部分は球面結合されてリング状に組み合わされるとともに、固定シール板の半径方向円板部分と回転シール板の傾斜円板部分との間に配置されていることを特徴とする請求項5または6に記載の熱分解炉軸シール装置。
【請求項8】
回転シール板は、固定シール板の半径方向円板部分に対して平行に設けられた回転側半径方向円板部分を有し、
端面シールはリング状をなし、円周方向に分割自在となり、端面シールの分割継ぎ目部分は球面結合されてリング状に組み合わされるとともに、固定シール板の半径方向円板部分と回転シール板の回転側半径方向円板部分との間に配置されていることを特徴とする請求項5または6に記載の熱分解炉軸シール装置。
【請求項9】
固定シール板の端面シールと反対側の面であって、端面シールより半径方向外方およびラジアルシールより半径方向内方に、不活性ガス注入装置が設けられたことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の熱分解炉軸シール装置。
【請求項10】
固定シール板の端面シールと反対側の面であって、端面シールより半径方向外方およびパッキンシールより半径方向内方に、不活性ガス注入装置が設けられたことを特徴とする請求項5乃至8のいずれかに記載の熱分解炉軸シール装置。
【請求項11】
固定シール板の端面シールと反対側の面であって、端面シールより半径方向外方およびラジアルシールより半径方向内方に、清掃口を設けたことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の熱分解炉軸シール装置。
【請求項12】
固定シール板の端面シールと反対側の面であって、端面シールより半径方向外方およびパッキンシールより半径方向内方に、清掃口を設けたことを特徴とする請求項5乃至8のいずれかに記載の熱分解炉軸シール装置。
【請求項13】
出口フードと固定シール板との間に伸縮継ぎ手が介在され、
伸縮継ぎ手と出口フードとの間および伸縮継ぎ手と固定シール板との間に各々冷却単管を設けたことを特徴とする請求項1乃至12のいずれかに記載の熱分解炉軸シール装置。
【請求項14】
回転ドラム内に収納された廃棄物等の被処理物を外熱式で加熱して熱分解し、熱分解ガスと不揮発性成分を主とする熱分解残渣とに分離して出口フードへ排出する横型外熱回転式熱分解炉に設けられ、回転ドラムと出口フードとの間に配置された熱分解炉軸シール装置において、
回転ドラム側に連結され、傾斜面をもった傾斜体を有する回転シール板と、
出口フード側に設けられ、一対の半径方向円板部分を有する固定シール板と、を備え、
固定シール板と回転シール板との間に、固定シール板の一方の半径方向円板部分と回転シール板の傾斜体との間に第1端面シールを設け、他方の半径方向円板部分と回転シール板の傾斜体との間に第2端面シールを設けたことを特徴とする熱分解炉軸シール装置。
【請求項15】
ラジアルシールのうち回転ドラムの中心軸を含む水平面より下側の下半周部分には、ラジアルシールの下半周部分を持ち上げるために、ガータースプリングが取り付けられたことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の熱分解炉軸シール装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2008−232538(P2008−232538A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−72940(P2007−72940)
【出願日】平成19年3月20日(2007.3.20)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】