説明

熱分解装置

【課題】装置の非常停止時に、熱分解炉及びその周りの機器類に残留する熱分解ガスを確実に系外へ排出可能とし、ガス爆発等の発生を阻止して安全性及び経済性の向上を図ることが可能な熱分解装置を提供する。
【解決手段】熱分解炉100において被処理物を加熱して熱分解させ、熱分解ガスを熱分解ガス燃焼炉25に導入するように構成された熱分解装置において、熱分解ガス燃焼炉25の上流部位の熱分解ガス通路8から分岐された非常用ガス抜出し通路6を設け、非常用ガス抜出し通路6には導入された抜出しガスを燃焼させる非常用ガス燃焼装置2を設け、さらに非常用ガス抜出し通路6の分岐部7と熱分解ガス燃焼炉25との間に位置する熱分解ガス通路8には、熱分解ガス燃焼炉25への熱分解ガスの流通を遮断するガス遮断装置9を設けている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、汚泥の炭化処理設備等に適用され、脱水汚泥を含む被処理物を熱分解炉において加熱ガスにより加熱して熱分解させ、該熱分解炉から排出される熱分解ガスを熱分解ガス通路を通して熱分解ガス燃焼炉に導入するように構成された熱分解装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図3は、脱水汚泥を乾燥機にて加熱、乾燥せしめて熱分解炉(炭化炉)に導入し、該熱分解炉において乾燥した当該脱水汚泥を、熱分解炉燃焼炉からの燃焼加熱ガスで加熱して熱分解させることにより、当該脱水汚泥から炭化物を生成するように構成された汚泥の炭化処理設備の要部系統図である。
図3において、脱水汚泥は乾燥機20に導入されて、後述する乾燥機燃焼炉(熱分解ガス燃焼炉)25からの乾燥機循環ガスによって加熱、乾燥せしめられてから、熱分解炉100に導入されるようになっている。熱分解炉100に関連して熱分解炉燃焼炉21が設置されており、この熱分解炉燃焼炉21においては、後述する乾燥機燃焼炉25からの乾燥機循環ガスと補助燃料とを燃焼用空気を用いて燃焼させることにより、1100℃程度の高温燃焼ガスを生成している。
【0003】
上記熱分解炉100においては、熱分解炉燃焼炉21で生成された1100℃程度の高温燃焼加熱ガスによって乾燥機20からの乾燥汚泥を加熱して熱分解させることにより、当該乾燥汚泥から炭化物を生成している。この炭化物は、炭化物冷却コンベア23で搬送されながら降温され、加湿機24で加湿処理されてから図示しない炭化物ホッパーに収容されることになる。
また、熱分解炉100において、乾燥汚泥を炭化処理した後の熱分解炉ガス(排ガス)は空気予熱器22で燃焼用空気を予熱してから、所要の浄化処理を施され、外気中に排出されている。
そして、上記乾燥機燃焼炉25には、熱分解炉100からの熱分解ガスが熱分解ガス管8を通して導入されており、該乾燥機燃焼炉25においては、補助燃料及び空気予熱器22で予熱された燃焼用空気を用いて当該熱分解ガスを燃焼させ、950℃程度の燃焼ガスを生成している。この燃焼ガスは、熱分解炉燃焼炉21及び乾燥機20に供給されることになる。
【0004】
ところで、特許文献1(特開平11−241815号公報)には、熱分解炉を備えた廃棄物処理設備が開示されており、この処理設備では、熱分解装置の非常停止時に、緊急遮断弁を閉じて可燃性ガスの存在区間を遮断し、系全体の可燃性ガスを系内に閉じ込め、その後、遮断区間内にある可燃性ガスを不活性ガスと置換しつつ、押し出された可燃性ガスを再燃焼炉で燃焼させるようにしている。
また、特許文献2(特開2006−35117号公報)には、熱分解炉を備えた廃棄物処理設備が開示されており、この処理設備では、熱分解装置の非常停止時に、誘引ブロアを停止し、熱分解炉から発生し続ける熱分解ガスを安全トーチに導くようにしている。
【0005】
【特許文献1】特開平11−241815号公報
【特許文献2】特開2006−35117号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、図3に示されるような汚泥の炭化処理設備に装備されている熱分解装置にあっては、熱分解装置の非常停止時に、熱分解炉100から乾燥機燃焼炉25に接続される熱分解ガス管8の系統内にある熱分解ガスが、十分に排出されずに系内に残留すると、爆発等の発生原因になり易いという問題点を有している。
【0007】
また、上記特許文献1(特開平11−241815号公報)においては、前述のような熱分解装置の非常停止時に、緊急遮断弁を閉じて可燃性ガスの存在区間を遮断し、系全体の可燃性ガスを系内に閉じ込めておいて、その後、遮断区間内にある可燃性ガスを不活性ガスに置換するようにして、前述のような問題を解決するようになっているが、可燃性ガスが閉じ込められた系内において当該可燃性ガスが爆発性を有する混合気をなっていた場合には、静電気や系内の残留熱などの火種を要因をしたガス爆発を誘起する可能性が残されている。
【0008】
さらに、上記特許文献1においては、不活性ガスボンベと熱分解炉との間のガス通路に、当該不活性ガスを熱分解炉内に押し込む押込みファン(押込みブロア)を設けるとともに、熱分解炉出口側の熱分解ガス通路に非常用ダンパを設けており、非常停止時には、緊急遮断弁を閉じて可燃性ガスの存在区間を遮断してから非常用ダンパを開け、押込みファンによって不活性ガスボンベ〜熱分解炉〜非常用ダンパ間の熱分解ガス管路内の熱分解ガスを不活性ガスに置換しているため、押込みファンによって前記熱分解管路内の微小固形物が熱分解炉及びその前後のシール部に詰まり易くなり、シール不良に起因するガス漏れ発生のおそれがある。
【0009】
一方、上記特許文献2においては、前述のような非常停止時に誘引ブロアを停止し、熱分解炉と後段機器とを流通させたままの状態で、熱分解炉から発生し続ける熱分解ガスを安全トーチに導くようにしているため、後段機器で空気の吸込みや可燃性ガスのリーク等が発生した場合には、ガス爆発を誘起する可能性が残されている。
【0010】
本発明は、このような実状に鑑みてなされたものであって、その目的は、装置の非常停止時に、熱分解炉及びその周りの機器類に残留する熱分解ガスを確実に系外へ排出可能とし、ガス爆発等の発生を阻止して安全性及び経済性の向上を図ることが可能な熱分解装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記従来技術の有する課題を解決するために、本発明は、脱水汚泥を含む被処理物を熱分解炉に導入し、該熱分解炉において前記被処理物を加熱ガスにより加熱して熱分解させ、前記熱分解炉から排出される熱分解ガスを熱分解ガス通路を通して熱分解ガス燃焼炉に導入するように構成された熱分解装置において、前記熱分解ガス燃焼炉の上流部位の前記熱分解ガス通路から分岐された非常用ガス抜出し通路を設けるとともに、該非常用ガス抜出し通路に導入された抜出しガスを燃焼させる非常用ガス燃焼装置を設け、さらに前記非常用ガス抜出し通路の分岐部と前記熱分解ガス燃焼炉との間に位置する前記熱分解ガス通路に、前記熱分解ガス燃焼炉への熱分解ガスの流通を遮断するガス遮断装置を設けている(請求項1)。
【0012】
この発明において、具体的には次のように構成するのが好ましい。
(1)前記非常用ガス抜出し通路には、前記熱分解ガス通路のガスを吸引して前記非常用ガス燃焼装置に送り込む非常用誘引ファンが設けられている(請求項2)。
(2)前記熱分解ガス通路には、前記熱分解ガス通路のガスを吸引して前記熱分解ガス燃焼炉に送り込む定常用誘引ファンが設けられている(請求項3)。
(3)前記熱分解炉の上流側には、該熱分解炉内に不活性ガスを供給する不活性ガス供給手段が設けられている(請求項4)。
(4)前記非常用ガス抜出し通路の前記非常用誘引ファンの上流部位には、前記非常用ガス抜出し通路を通った前記抜出しガスを水封する水封タンクが設置され、前記抜出しガスは、前記水封タンクを通ってから前記非常用誘引ファンに吸入させられるように構成されている(請求項5)。
【0013】
また、本発明において、前記非常用ガス抜出し通路の分岐部と熱分解ガス燃焼炉との間に位置する熱分解ガス通路は、複数の並列通路に形成され、該並列通路のそれぞれには、前記ガス遮断装置が設けられている(請求項6)。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、熱分解ガス燃焼炉の上流部位の熱分解ガス通路から分岐された非常用ガス抜出し通路、及び該非常用ガス抜出し通路に導入された抜出しガスを燃焼させる非常用ガス燃焼装置を設けるとともに、非常用ガス抜出し通路の分岐部と熱分解ガス燃焼炉との間に位置する熱分解ガス通路に、熱分解ガス燃焼炉への熱分解ガスの流通を遮断するガス遮断装置を設けたので(請求項1)、熱分解炉の故障等の非常停止時においては、非常停止と同時に前記ガス遮断装置を作動させて熱分解ガス燃焼炉への熱分解ガスの流通を遮断する一方、前記熱分解ガス通路から分岐された非常用ガス抜出し通路を水封タンクの水を排出することなどにより連通させて、熱分解炉内及び該熱分解炉に通ずる通路内の熱分解ガスを非常用ガス抜出し通路を通して非常用ガス燃焼装置に導入し、当該非常用ガス燃焼装置で燃焼処理することが可能となる。
【0015】
したがって本発明によれば、非常停止時において、熱分解炉内及び該熱分解炉に通ずる通路内の熱分解ガスを残存させることなく、かつ熱分解ガス燃焼炉側へ漏洩させることなく、完全に非常用ガス抜出し通路に導入して非常用ガス燃焼装置で燃焼処理することができ、熱分解炉内及び該熱分解炉に通ずる通路への熱分解ガスの閉じ込め及びこれによるガス爆発誘起の可能性が皆無となり、非常停止時におけるプラント全体の安全性を保持できるとともに、経済性の向上を図ることができる。
【0016】
また、非常用ガス抜出し通路に非常用誘引ファンを設け(請求項2)、あるいは熱分解ガス通路に定常用誘引ファンを設ける(請求項3)ように構成すれば、前記非常停止時において、前記非常用誘引ファンあるいは前記定常用誘引ファンによって熱分解炉内及び該熱分解炉に通ずる通路内の熱分解ガスを吸引して非常用ガス燃焼装置側に送り出せることになるので、上記特許文献1の技術のような、プラントの非常停止時に不活性ガスを押込みファンによって熱分解炉内及び周辺機器内に押し込み置換することに伴って、熱分解通路内の微小固形物が熱分解炉内及びその前後のシール部に詰まるということが無くなり、これによるシール不良及びこれに起因するガス漏れの発生を回避できる。
【0017】
さらに、不活性ガス供給手段によって、熱分解炉の上流側から該熱分解炉内に不活性ガスを供給するように構成すれば(請求項4)、熱分解炉の上流側から不活性ガスを注入して、熱分解炉内及び該熱分解炉の下流側の熱分解ガス通路全体を当該不活性ガスに置換することが可能となる。したがって、不活性ガスを熱分解ガスの通路全体に亘って万遍なく、かつ効率良く分布させることができ、結果的には不活性ガスの使用量が少なくて済む。
【0018】
また、非常用ガス抜出し通路の非常用誘引ファンの上流部位に水封タンクを設置して、非常用ガス抜出し通路を通った抜出しガスが水封タンクに通ってから非常用誘引ファンに吸入されるようにすれば(請求項5)、定常運転時において、水封タンクの水により非常用ガス抜出し通路を確実に遮断できる一方、非常停止時において、水封タンクの水を排出することにより非常用ガス抜出し通路を開放して非常用ガス燃焼装置と確実に連通させることができ、熱分解ガス中のタール分等によって非常用ガス抜出し通路が開放できなくなるということが起こらず、当該抜出しガスを非常用誘引ファンに効率的に吸入させることができる。
【0019】
そしてまた本発明において、非常用ガス抜出し通路の分岐部と熱分解ガス燃焼炉との間に位置する熱分解ガス通路を複数の並列通路に形成し、該並列通路のそれぞれに前記ガス遮断装置を設けるように構成すれば(請求項6)、通常運転時に、熱分解ガス中のタール分等によって1つのガス遮断装置が開放できなくなった場合でも、これに代えて健全な側のガス遮断装置を開放して使用することができ、プラントの稼動効率を高く維持できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0021】
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態に係る熱分解装置を備えた汚泥の炭化処理設備の要部系統図である。
図1で示される炭化処理設備において、脱水汚泥は、ケーキ定量フィーダ27から乾燥機20に導入されて、後述する乾燥機燃焼炉(熱分解ガス燃焼炉)25からの乾燥機循環ガスによって加熱、乾燥せしめられてから、乾燥汚泥定量フィーダ28及び乾燥汚泥搬送路30を通して熱分解炉100に導入されるようになっている。この熱分解炉100に関連して熱分解炉燃焼炉21が設置されており、該熱分解炉燃焼炉21においては、後述する乾燥機燃焼炉25からの乾燥機循環ガスと補助燃料とを燃焼用空気を用いて燃焼させることにより、1100℃程度の高温燃焼ガスが生成されている。
【0022】
上記熱分解炉100は、熱分解炉燃焼炉21で生成された1100℃程度の高温燃焼加熱ガスによって乾燥機20からの乾燥汚泥を加熱して熱分解させることにより、当該乾燥汚泥から炭化物を生成する炉である。この炭化物は、炭化物冷却コンベア23で搬送されながら降温され、加湿機24で加湿処理されてから図示しない炭化物ホッパーに収容されることになる。
また、熱分解炉100において、乾燥汚泥を炭化処理した後の熱分解炉ガス(排ガス)は、空気予熱器22で燃焼用空気を予熱してから、所要の浄化処理を施され、外気中に排出されている。
さらに、上記乾燥汚泥搬送路30の熱分解炉100の上流側部位には、当該熱分解炉100内に不活性ガスを供給する不活性ガス供給手段10が設けられている。
【0023】
上記乾燥機燃焼炉25には、熱分解炉100からの熱分解ガスが集塵機26及び熱分解ガス管(熱分解ガス通路)8を通して導入されており、該乾燥機燃焼炉25においては、補助燃料及び空気予熱器22で予熱され空気管31を通って導入された燃焼用空気を用いて熱分解ガスを燃焼させ、950℃程度の燃焼加熱ガスを生成している。この燃焼加熱ガスは、燃焼ガス管32を介して熱分解炉燃焼炉21及び乾燥機20に供給されるようになっている。
なお、上記乾燥機20において、ケーキ定量フィーダ27からの脱水汚泥を加熱、乾燥させた後の乾燥機循環ガスは、乾燥機汚泥集塵機29を通って循環路に入ることになる。
【0024】
上記熱分解ガス管8の管路途中には、定常用誘引ファン1が設けられており、プラントの定常運転時には、当該定常用誘引ファン1によって熱分解炉100側から熱分解ガスを吸引して乾燥機燃焼炉(熱分解ガス燃焼炉)25に送り込むようになっている。
また、熱分解ガス管8の定常用誘引ファン1の下流側には、乾燥機燃焼炉25の上流部位の熱分解ガス管8から分岐した(分岐部を符号7で示されている)非常用ガス抜出し管(非常用ガス抜出し通路)6が設けられており、この非常用ガス抜出し管6は、該非常用ガス抜出し管6を通して導入された抜出しガスを燃焼させる非常用ガス燃焼炉2に接続されている。
【0025】
そして、上記非常用ガス抜出し管6の管路途中には、分岐部7から下流側へ向かって順に、当該非常用ガス抜出し管6に入った抜出しガスを水封する水封タンク4と、熱分解ガス管8内の熱分解ガスを吸引して非常用ガス燃焼炉2に送り込む非常用誘引ファン3とが設けられている。
水封タンク4は、開閉手段としての機能を有しており、水を貯めた状態では、非常用ガス抜出し管6を閉じ、水を排出した状態では、非常用ガス抜出し管6を開放して非常用誘引ファン3及び非常用ガス燃焼炉2と連通するように構成されている。そのため、水封タンク4の底部には、貯留水を排出する排出管5と、該排出管5を開閉する開閉弁5aとが設けられている。
【0026】
一方、上記非常用ガス抜出し管6の分岐部7と上記乾燥機燃焼炉25との間に位置する熱分解ガス管8には、乾燥機燃焼炉25への熱分解ガスの流通を遮断する遮断ダンパ(ガス遮断装置)9が設けられている。
【0027】
このように構成された汚泥の炭化処理設備において、停電などで起こる熱分解装置の非常停止時には、通常運転時には閉じられている前記非常用ガス抜出し管6に設けられた水封タンク4の開閉弁5aを開き、水封タンク4内の貯留水を排出管5より排出させると、熱分解炉100内から熱分解ガス管8への熱分解ガス通路に残留している熱分解ガスが、非常用ガス抜出し管6に導入され、水封タンク4を通ってから非常用誘引ファン3に吸引され、非常用誘引ファン3から非常用ガス燃焼炉6に送り込まれて燃焼処理されることになる。
【0028】
以上、本発明の第1実施形態によれば、乾燥機燃焼炉(熱分解ガス燃焼炉)25の上流部位の熱分解ガス管8から分岐された非常用ガス抜出し管6、及び該非常用ガス抜出し管6から導入されて抜出された熱分解ガスを燃焼させる非常用ガス燃焼炉2を設けるとともに、非常用ガス抜出し管6の分岐部7と乾燥機燃焼炉25との間に位置する熱分解ガス管8には、乾燥機燃焼炉25への熱分解ガスの流通を遮断する遮断ダンパ9を設けたので、熱分解炉100の故障や停電等の非常停止時においては、非常停止と同時に遮断ダンパ9を作動させて乾燥機燃焼炉25への熱分解ガスの流通を遮断するとともに、熱分解ガス管8から分岐された非常用ガス抜出し管6を、開閉弁5の開弁による水封タンク4の開放で連通させて、熱分解炉100内及び該熱分解炉100に通ずる通路内の熱分解ガスを、非常用ガス抜出し管6を通して非常用ガス燃焼炉2に導入し、当該非常用ガス燃焼炉2で燃焼処理することが可能となる。
【0029】
したがって、この第1実施形態によれば、非常停止時において、熱分解炉100内及び該熱分解炉100に通ずる通路内の熱分解ガスを残存させることなく、かつ乾燥機燃焼炉25側へ漏洩させることなく、完全に非常用ガス抜出し管6に導入して非常用ガス燃焼炉2ですべて燃焼処理することができ、熱分解炉100内及び該熱分解炉100に通ずる通路への熱分解ガスの閉じ込め及びこれによるガス爆発誘起の可能性が皆無となり、非常停止時におけるプラント全体の安全性を確保して保持することができる。
【0030】
また、本発明の第1実施形態では、非常用ガス抜出し管6に非常用誘引ファン3を設け、あるいは熱分解ガス管8に定常用誘引ファン1を設けることにより、上記非常停止時において、非常用誘引ファン3あるいは定常用誘引ファン1によって熱分解炉100内及び該熱分解炉100に通ずる通路内の熱分解ガスを吸引して非常用ガス燃焼炉2側に送り出すので、従来技術のような、プラントの非常停止時に不活性ガスを押込みファンによって熱分解炉内及び周辺機器内に押し込み置換するために、熱分解通路内の微小固形物が熱分解炉内及びその前後のシール部に詰まることによるシール不良及びこれに起因するガス漏れの発生を回避することができる。
【0031】
しかも、上記不活性ガス供給手段10によって、熱分解炉100の上流側から該熱分解炉100内に不活性ガスを供給するように構成し、熱分解炉100の上流側から不活性ガスを注入して、熱分解炉100内及び該熱分解炉100の下流側の熱分解ガス管8内の全体を不活性ガスに置換しているので、不活性ガスを熱分解ガスの通路全体に亘って万遍なく、かつ効率良く分布させることができ、結果的には不活性ガスの使用量が少なくて済む。
また、非常用ガス抜出し管6の非常用誘引ファン3の上流部位に水封タンク4を設置して、非常用ガス抜出し管6を通った抜出しガスを、水封タンク4に通すようにしているので、熱分解ガス中のタール分等で水封タンク4が開放できなくなるということは起こらず、非常用誘引ファン3に効率的に吸入させることができる。
【0032】
[第2実施形態]
図2は本発明の第2実施形態に係る乾燥機燃焼炉近傍の要部系統図である。
この第2実施形態においては、非常用ガス抜出管6の分岐部7と乾燥機燃焼炉25との間に位置する熱分解ガス管8が複数の並列通路8a,8bに形成されており、該並列通路8a,8bのそれぞれには、遮断ダンパ(ガス遮断装置)9a,9bが設けられている。
かかる第2実施形態によれば、通常運転時に、熱分解ガス中のタール分等によって1つの遮断ダンパ(例えば9a)が開放できなくなった場合でも、これに代えて健全な側の遮断ダンパ(例えば9b)を開放して使用することが可能であり、プラントの稼動効率を高く維持できる。
【0033】
以上、本発明の実施の形態につき述べたが、本発明は既述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づいて各種の変形及び変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の第1実施形態に係る熱分解装置を備えた汚泥の炭化処理設備を示す要部系統図である。
【図2】本発明の第2実施形態に係る乾燥機燃焼炉近傍を示す要部系統図である。
【図3】従来技術に係る炭化処理設備を示す要部系統図である。
【符号の説明】
【0035】
1 定常用誘引ファン
2 非常用ガス燃焼炉
3 非常用誘引ファン
4 水封タンク
5 排出管
5a 開閉弁
6 非常用ガス抜出し管
7 分岐部
8 熱分解ガス管
8a,8b 並列通路
9,9a,9b 遮断ダンパ(ガス遮断装置)
10 不活性ガス供給手段
20 乾燥機
21 熱分解炉燃焼炉
25 乾燥機燃焼炉(熱分解ガス燃焼炉)
100 熱分解炉

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脱水汚泥を含む被処理物を熱分解炉に導入し、該熱分解炉において前記被処理物を加熱ガスにより加熱して熱分解させ、前記熱分解炉から排出される熱分解ガスを熱分解ガス通路を通して熱分解ガス燃焼炉に導入するように構成された熱分解装置において、前記熱分解ガス燃焼炉の上流部位の前記熱分解ガス通路から分岐された非常用ガス抜出し通路を設けるとともに、該非常用ガス抜出し通路に導入された抜出しガスを燃焼させる非常用ガス燃焼装置を設け、さらに前記非常用ガス抜出し通路の分岐部と前記熱分解ガス燃焼炉との間に位置する前記熱分解ガス通路に、前記熱分解ガス燃焼炉への熱分解ガスの流通を遮断するガス遮断装置を設けたことを特徴とする熱分解装置。
【請求項2】
前記非常用ガス抜出し通路には、前記熱分解ガス通路のガスを吸引して前記非常用ガス燃焼装置に送り込む非常用誘引ファンが設けられていることを特徴とする請求項1に記載の熱分解装置。
【請求項3】
前記熱分解ガス通路には、前記熱分解ガス通路のガスを吸引して前記熱分解ガス燃焼炉に送り込む定常用誘引ファンが設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の熱分解装置。
【請求項4】
前記熱分解炉の上流側には、該熱分解炉内に不活性ガスを供給する不活性ガス供給手段が設けられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の熱分解装置。
【請求項5】
前記非常用ガス抜出し通路の前記非常用誘引ファンの上流部位には、前記非常用ガス抜出し通路を通った前記抜出しガスを水封する水封タンクが設置され、前記抜出しガスは、前記水封タンクを通ってから前記非常用誘引ファンに吸入させられるように構成されていることを特徴とする請求項2に記載の熱分解装置。
【請求項6】
前記非常用ガス抜出し通路の分岐部と前記熱分解ガス燃焼炉との間に位置する熱分解ガス通路は、複数の並列通路に形成され、該並列通路のそれぞれには、前記ガス遮断装置が設けられていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の熱分解装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−175505(P2008−175505A)
【公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−11107(P2007−11107)
【出願日】平成19年1月22日(2007.1.22)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】