説明

熱収縮性ポリエステル系フィルム及び熱収縮性ラベル

【課題】印刷や加工を施さなくとも光線カット性を有し、フィルムの片面に印刷を施した反対面の白色度の低下が少ない熱収縮性ポリエステル系フィルム、さらには印刷後のフィルム伸びが十分確保されている熱収縮性ポリエステル系フィルムを提供すること。
【解決手段】フィルムの全光線透過率が30%以下であり、且つ少なくともフィルム片側の白色度が85%以上であることを特徴とする熱収縮性ポリエステル系フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱収縮性ポリエステル系フィルムに関し、さらに詳しくは、光線カット性を有し、フィルムの片面に印刷を施した反対面の白色度の低下が少なく、さらに印刷後のフィルム伸びが十分確保されている熱収縮性ポリエステル系フィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
最近、容器の内容物の紫外線からの保護を目的として収縮ラベルを使用するケースが増えている。従来はポリ塩化ビニルの紫外線カットタイプ収縮フィルムが用いられてきたが、他素材の紫外線カットタイプの要求が強まっている。具体的なカット性は内容物によって異なるが、食品・飲料の場合、長波長領域の紫外線である360nm〜400nmの波長で内容物の変質や着色等が起こるため長波長領域、特に380nm及び400nmのカット性が重要である。
しかしながら、従来の熱収縮性ポリエステル系フィルムでは上記の長波長領域の紫外線をカットするものはなかった。
【0003】
このようなラベルとしては、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン等からなる熱収縮性フィルムが主として用いられてきた(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特公平7−33063号公報
【0004】
しかし、ポリ塩化ビニルについては、近年、廃棄時に焼却する際の塩素系ガス発生が問題となり、又ポリスチレンについては印刷が困難である等の問題があり、最近は熱収縮性ポリエステル系フィルムの利用が注目を集めている。
【0005】
また、このような熱収縮性ポリエステル系フィルムはPETボトルのラベル用として使用されている。PETボトルはリサイクルする場合に、これらのラベルと分別する必要がある。ボトルとラベルを分別する方法の一つとして、両者を混合したまま粉砕し、それを水中で攪拌することにより分別する方法がある。この方法を採用する場合にボトルの主原料であるPETは比重が約1.4なので、ラベル用の樹脂はそれ以下にする必要がある。 その方法としてラベル用のポリエステル樹脂そのものの比重を下げることは、困難であるため、フィルム内部に空洞を含有させ見掛け密度を下げる方法が考えられている(例えば、特許文献2、特許文献3参照。)。
【特許文献2】特開平5−111960号公報
【特許文献3】特開平11−188817号等
【0006】
しかし、これらのフィルムは空洞を設けることにより表面の荒れが大きくなり、印刷したラベルの外観が不良となり美観が損なわれたり、白色度が不足、または全光線透過率が高すぎたため、内容物が透けて見えるといった問題やフィルム両面のバランスが悪く、美観と装着性が両立されていないといった問題があった。
また、溶剤や膨潤剤によるフィルム接着ができなかったため、接合部の外観不良や作業性の悪さがある。
【0007】
また、従来、問題にならなかった可視光線(400〜700nm波長)領域の光線カットの要求が高まってきている。これまでは、従来からある熱収縮白色フィルムのラベル内側に黒色印刷、白色印刷を施して光線カット性を付与してきた。印刷インキの厚みは通常3μm程度であり、重ねて印刷を施す方法で光線遮断を試みているが、品質要因(インキの厚みによる収縮特性の変化等)や納期およびコスト的にも不利であった。
【0008】
これらの課題を解決するために酸化チタン及びポリスチレン樹脂を含有する主にポリエステルからなる樹脂層を中間層に、酸化チタン及びポリスチレン樹脂を含まない樹脂層を最外層にすることで、光線カット性と溶剤接着性を両立する方法が考えられている。(例えば、特許文献4、特許文献5参照。)
【特許文献4】特開2003−236930号
【特許文献5】特開2003−305772号等
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前記従来技術の実情にかんがみ、本発明の目的は、印刷や加工を施さなくとも光線カット性を有し、フィルムの片面に印刷を施した反対面の白色度の低下が少ない熱収縮性ポリエステル系フィルム、さらには印刷後のフィルム伸びが十分確保されている熱収縮性ポリエステル系フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、前記従来技術の問題点を解消すべく鋭意研究した結果、熱収縮性ポリエステル系フィルムの全光線透過率、白色度を特定範囲とし、積層構成とすることによって、目的が達成できることを見出し、これに基づき本発明を完成するに至った。
【0011】
即ち、本発明は、主にポリエステル樹脂からなるフィルムであって、フィルムの全光線透過率が30%以下であり、且つ少なくともフィルム片側の白色度が85%以上で、少なくとも2層以上の積層構成からなることを特徴とする熱収縮性ポリエステル系フィルムに係るものである。
【0012】
この場合において、主にポリエステル樹脂からなるフィルムであって、温湯収縮率が、主収縮方向において処理温度95℃・処理時間10秒で50%以上であり、主収縮方向と直交する方向において10%以下であることを特徴とする熱収縮性ポリエステル系フィルムに係るものである。
【0013】
この場合において、印刷を施した後に経時促進条件(処理温度30℃・処理湿度85%)雰囲気下で28日間後の主収縮方向と直交する方向の破断伸度が5%以上であることが好適である。
【0014】
この場合において、酸化チタンを含有しており、その含有量が、フィルム換算で0.1〜20.0重量%の範囲であることが好適である。
【0015】
またこの場合において、ポリエステルに非相溶な熱可塑性樹脂としてポリスチレン系樹脂を添加していることが好適である。
【0016】
さらにまた、この場合において、前記ポリスチレン系樹脂の含有量が、フィルム換算で1.0〜20.0重量%の範囲であることが好適である。
【0017】
この場合において、主にポリエステル樹脂からなるフィルムであって、溶剤接着可能であることが好適である。
【0018】
特に好適にはB/A/Bの3層からなり、A層又はB層のいずれかの層に酸化チタン及びポリスチレン系樹脂が含有されていることを特徴とする熱収縮性ポリエステル系フィルムである。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、印刷や加工を施さなくとも光線カット性を有し、フィルムの片面に印刷を施した反対面の白色度の低下が少ない熱収縮性ポリエステル系フィルム、さらには印刷後のフィルム伸びが十分確保されている熱収縮性ポリエステル系フィルムが得られる。
従って、ラベル用、特に商品価値の高いラベル用の熱収縮性ポリエステル系フィルムとして極めて有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムは、フィルムの全光線透過率が30%以下であり、且つ少なくともフィルム片側の白色度が85%以上であり、少なくとも2層以上の積層構成とすることを特徴とし、そのことにより上記目標が達成される。
【0021】
本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムは、実質的にポリエステル樹脂又はポリエステル樹脂及び後記酸化チタン、ポリスチレン樹脂からなっている。ポリエステル樹脂としては、例えば、ジカルボン酸成分とジオール成分とを構成成分とするポリエステルと、ポリエステル系エラストマーとを含有するポリエステル組成物から好ましく使用できる。該ポリエステル樹脂組成物において、ポリエステルとポリエステル系エラストマーとの配合割合は、両者合計量に対して、通常、前者が50〜98重量%程度、特に70〜95重量%で、後者が2〜50重量%程度、特に5〜30重量%程度であるのが好適である。
【0022】
上記ポリエステルを構成するジカルボン酸成分としては、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸等の脂肪族ジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸等の公知ジカルボン酸の1種又は2種以上を使用すれば良い。また、ジオール成分としては、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、トリエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、テトラメチレングリコールエチレンオキサイド付加物等の公知のジオールの1種又は2種以上を使用すれば良い。
【0023】
特に、ポリエステルを構成する主構成成分がエチレンテレフタレートであり、副次構成成分としてネオペンチルグリコール成分、1,4−シクロヘキサンジメタノール成分のうちいずれか少なくとも1種以上を含有することが好適な実施様態である。ネオペンチルグリコール成分及びまたは、1,4−シクロヘキサンジメタノール成分の含有量は15〜30モル%の範囲内であることが好ましい。
【0024】
また、上記ポリエステル系エラストマーは、例えば、高融点結晶性ポリエステルセグメント(Tm200℃以上)と分子量400以上好ましくは400〜800の低融点軟質重合体セグメント(Tm80℃以下)からなるポリエステル系ブロック共重合体であり、ポリ−ε−カプロラクトン等のポリラクトンを低融点軟質重合体セグメントに用いたポリエステル系エラストマーが、特に好ましい。
【0025】
本発明フィルム特定の全光線透過率、白色度を達成して、フィルムに光線カット性を付与するためには、例えば、フィルム中に、無機滑剤、有機滑剤等の微粒子をフィルム重量に対して0.1〜20重量%、好ましくは0.5〜10重量%含有させることが、好適である。該微粒子の含有量が0.1重量%未満の場合は、光線カット性を得ることが困難な傾向にあり、一方20重量%を超えるとフィルム強度が低下して製膜が困難になる傾向にある。
【0026】
微粒子は、ポリエステル重合前に添加しても良いが、通常は、ポリエステル重合後に添加される。微粒子として添加される無機滑剤としては、例えば、カオリン、クレー、炭酸カルシウム、酸化ケイ素、テフタル酸カルシウム、酸化アルミニウム、酸化チタン、リン酸カルシウム、カーボンブラック等の公知の不活性粒子、ポリエステル樹脂の溶融製膜に際して不溶な高融点有機化合物、架橋ポリマー及びポリエステル合成時に使用する金属化合物触媒、例えばアルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物などによってポリエステル製造時に、ポリマー内部に形成される内部粒子であることができる。
【0027】
フィルム中に含まれる該微粒子の平均粒径は、通常、0.001〜3.5μmの範囲である。ここで、微粒子の平均粒径は、コールターカウンター法により、測定したものである。本発明のポリエステルの極限粘度は好ましくは0.50以上、更に好ましくは0.60以上、特に好ましくは0.65以上である。ポリエステルの極限粘度が0.50未満であると結晶性が高くなり、十分な収縮率が得られなくなり、好ましくない。
【0028】
本発明において、適度な光線透過率を得るためには、例えば、内部に微細な空洞を含有させることが好ましい。例えば発泡材などを混合して押出してもよいが、好ましい方法としてはポリエステル中に非相溶な熱可塑性樹脂を混合し少なくとも1軸方向に延伸することにより、空洞を得ることである。本発明に用いられるポリエステルに非相溶の熱可塑性樹脂は任意であり、ポリエステルに非相溶性のものであれば特に限定されるものではない。具体的には、ポリスチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリアクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリスルホン系樹脂、セルロース系樹脂などがあげられる。特に空洞の形成性からポリスチレン系樹脂あるいはポリメチルペンテン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂が好ましい。
【0029】
ポリスチレン系樹脂とは、ポリスチレン構造を基本構成要素として含む熱可塑性樹脂を指し、アタクティックポリスチレン、シンジオタクティックポリスチレン、アイソタクティックポリスチレン等のホモポリマーのほか、その他の成分をグラフトあるいはブロック共重合した改質樹脂、例えば耐衝撃性ポリスチレン樹脂や変性ポリフェニレンエーテル樹脂等、更にはこれらのポリスチレン系樹脂と相溶性を有する熱可塑性樹脂、例えばポリフェニレンエーテルとの混合物を含む。
【0030】
前記ポリエステルと非相溶な樹脂を混合してなる重合体混合物の調整にあたっては、例えば、各樹脂のチップを混合し押出機内で溶融混練して押出してもよいし、予め混練機によって両樹脂を混練したものを更に押出機より溶融押出ししてもよい。また、ポリエステルの重合工程においてポリスチレン系樹脂を添加し、撹拌分散して得たチップを溶融押出しても構わない。
【0031】
本発明における好ましい第一の実施様態は、フィルムは内部に多数の空洞を含有する層Bの少なくとも片面にB層よりも空洞の少ない層Aを設けることが好ましい。この構成にするためには異なる原料をA,Bそれぞれ異なる押出機に投入、溶融し、T−ダイの前またはダイ内部にて溶融状態で貼り合わせ、冷却ロールに密着固化させた後、少なくとも1方向に延伸することが好ましい。このとき、原料としてA層の非相溶な樹脂はB層より少ないことが好ましい。こうすることによりA層の空洞が少なく、また表面の荒れが少なくなり、印刷の美観を損なわないフィルムとなる。このとき、B層中に酸化チタンとポリスチレンの両方を含有することが好ましい。フィルムの積層構成はA/Bの2層構成あるいはA/B/Aの3層構成のいずれでもよい。
【0032】
さらに、本発明における好ましい第2の実施様態は、フィルムは酸化チタンとポリスチレン樹脂の白色フィルムB層を両表層とし、中間層に非相溶な樹脂が少ないまたは無いA層を設ける事が好ましい。この層は空洞が多数存在しないため、フィルムの腰が弱くならず印刷後のフィルム伸びが十分確保されているフィルムとなる。
【0033】
また、本発明フィルムは、必要に応じて、安定剤、着色剤、酸化防止剤、帯電防止剤、蛍光増白剤等の添加剤を含有するものであっても良い。
【0034】
本発明のポリエステル系フィルムは、JIS K 7136に準じて測定されたフィルムの全光線透過率が30%以下であることが必要である。該透過率が30%以上であると、内容物が透けて見えたり、光線カットできずに内容物が劣化したりしていずれも好ましくない。また、フィルムの片面に黒色等のベタ印刷を施した場合、反対面の白色度の低下が起きて、好ましくない。特に全光線透過率が25%以下が好ましい。
【0035】
本発明のポリエステル系フィルムは、JIS K7105に準じて測定されたフィルムの白色度(W値)が85以上であることが必要である。該白色度が85未満であると、フィルム片面に印刷した色が反対面に写って、白色の発色が出なくなり好ましくない。該白色度は、88以上であることが、特に好ましい。
【0036】
本発明のフィルムを印刷加工後に経時促進条件(処理温度30℃・処理湿度85%)雰囲気下で28日間処理後の主収縮方向と直交する方向の破断伸度が5%以上であり、好ましくは10%以上である。破断伸度が5%未満の場合はチュービング加工時のフィルム張力で切れが発生し、生産性が悪くなり好ましくない。生産直後の破断伸度も当然ながら、5%以上であることが好ましい。
【0037】
本発明のフィルムの主収縮方向に温湯95℃、10秒の収縮率が50%以上であり、好ましくは、50〜80%である。収縮率が50%未満では瓶の細い部分で、ラベルの収縮不足が発生する。一方、80%を越えると収縮率が大きいために、収縮トンネル通過中にラベルの飛び上がりが発生する場合があるので、いずれも好ましくない。ここで、主収縮方向とは、収縮率の大きい方向を意味する。
【0038】
また、主収縮方向に直角方向の収縮率が0〜10%であることが、好ましい。収縮率が0%未満で伸びる方向になると収縮時に生じたラベルの横シワが消えにくくなる傾向にあり、一方10%を超えるとラベルの縦収縮が大きくなり、使用するフィルム量が多くなり経済的に問題が生ずるので、いずれも好ましくない。
【0039】
本発明のフィルムのガラス転移温度Tgは50〜90℃程度、好ましくは55〜85℃、さらに好ましくは55〜80℃の範囲である。Tgがこの範囲内にあれば、低温収縮性は十分でかつ自然収縮が大きすぎることがなく、ラベルの仕上がりが良好である。
【0040】
本発明のフィルムは、ベンゼン、トルエン、キシレン、トリメチルベンゼン等の芳香族炭化水素、塩化メチレン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素、フェノール等のフェノール類、テトラヒドロフラン等のフラン類、1,3−ジオキソラン等のオキソラン類等の有機溶剤による溶剤接着性を有することが好ましい。特に、安全性の面からすれば、1,3−ジオキソランによる溶剤接着性を有することがより好ましい。溶剤接着強度は、4N/15mm以上であることが好ましい。4N/15mm未満では、ラベルを容器に収縮させる際に接合部が剥がれ、好ましくない。
【0041】
本発明のフィルムの溶剤接着性をさらに向上させるためには、例えば、ポリエステルに低Tg成分を共重合することが有効である。
【0042】
以上の特性を満足するために本発明のフィルムの好ましい層構成は前述のA層、B層においてA/BあるいはA/B/AあるいはB/A/Bのいずれかが好ましい。A層とB層の厚み比率は例えば3層構成では、B/A/B=25/50/25から45/10/45、あるいはA/B/A=25/50/25から45/10/45が好ましい。A層の厚み比率を10%未満では、空洞が多数存在しない層が少ないため、印刷後のフィルム伸びが十分確保されずに好ましくない。
【0043】
以下、本発明のフィルムの製造方法を具体的に説明する。
【0044】
滑剤として無機粒子等を必要に応じて適量含有するポリエステルまたは共重合ポリエステルを通常のホッパードライヤー、パドルドライヤー、真空乾燥機等を用いて乾燥した後、200〜320℃の温度で押出しを行う。押出しに際しては、Tダイ法、チューブラー法等、既存の方法を使用しても構わない。
【0045】
押出し後、急冷して未延伸フィルムを得るが、Tダイ法の場合、急冷時にいわゆる静電印加密着法を用いることにより、厚み斑の少ないフィルムが得られ好ましい。
得られた未延伸フィルムを、最終的に得られるフィルムが本発明の構成要件を満たすように、1軸延伸または2軸延伸する。
【0046】
延伸方法としては、ロール縦1軸のみに延伸したり、テンターで横1軸にのみ延伸する方法の外、公知の2軸延伸に際し縦または横のいずれか一方向に強く延伸し、他方を極力小さく延伸することも可能であり、必要に応じて再延伸を施してもよい。
【0047】
上記延伸において、主収縮方向には少なくとも2.0倍以上、好ましくは2.5倍以上延伸し、必要に応じて主収縮方向と直交する方向に延伸し、次いで熱処理を行う。
【0048】
熱処理は通常、緊張固定下、実施されるが、同時に20%以下の弛緩または幅出しを行うことも可能である。熱処理方法としては加熱ロールに接触させる方法やテンター内でクリップに把持して行う方法等の既存の方法を行うことも可能である。
【0049】
前記延伸工程中、延伸前または延伸後にフィルムの片面または両面にコロナ処理を施し、フィルムの印刷層および/または接着剤層に対する接着剤層等に対する接着性を向上させることも可能である。
【0050】
また、上記延伸工程中、延伸前または延伸後にフィルムの片面または両面に塗布を施し、フィルムの接着性、離型性、帯電防止性、易滑性等を向上させることも可能である。
【0051】
本発明のフィルム厚みは好ましくは15〜300μm、さらに好ましくは25〜200μmの範囲である。
【実施例】
【0052】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、これらの実施例に限定されるものではない。
【0053】
(1)全光線透過率
日本電飾工業(株)製NDH−2000Tを用い、JIS K 7136に準じ測定した。
【0054】
(2)白色度
日本電飾工業(株)製Z−300Aを用い、JIS K 7105に準じ測定した。
但し、フィルムの押さえ板は黒色(L値=9.94、a値=−0.45、b値=−0.44)のもので押さえて、反射で測定したW値を白色度とした。
【0055】
(3)800nm波長光線透過率
(株)日立製U−3500を用い、200〜840nm波長の光線透過率を連続で測定した。
【0056】
(4)熱収縮率
フィルムを10cm×10cmの正方形に裁断し、95±0.5℃の温水中に無荷重状態で10秒間浸漬処理して熱収縮させた後、フィルムの縦及び横方向の寸法を測定し、下式に従い熱収縮率を求めた。該収縮率の大きい方向を主収縮方向とした。
【0057】
熱収縮率={(収縮前の長さ−収縮後の長さ)/収縮前の長さ}×100(%)
【0058】
(5)破断伸度
東洋インキ製造社製シュリンクEXの墨色、白色のインキ及び溶剤(シュリンクEX202F溶剤)を1:8:1の割合で調色したインキを印刷した後、温度30℃±1℃、湿度85RH%±3%の雰囲気下で28日保管した後、主収縮方向において15mm幅のフィルムを、東洋ボールドウィン社製のテンシロン(型式:STM−T−50BP)でチャック間距離50mm、引張速度200mm/分で測定した。
【0059】
(6)溶剤接着性
1、3−ジオキソランを用いてフィルムをチューブ状に接合加工し、該チューブ状体を加工時の流れ方向と直交方向に15mm幅に切断してサンプルを取り、東洋精機社製のテンシロン(型式:UTL−4L)を用いてチャック間を20mmで引っ張り剥離し、剥離抵抗力を測定した。測定値が4N以上であれば、「○」とし、4N未満であれば「×」とした。
【0060】
(7)Tg(ガラス転移点)
島津製作所(株)製の示差走査熱量計(型式:DSC−60)を用いて、未延伸フイルム5mgを0℃から200℃まで昇温速度20℃/分で昇温した際に得られた発熱曲線より低い温度にあるDSC曲線の変曲点の前後に接線を引きその交点をTg(ガラス転移点)とした。
【0061】
実施例、比較例に用いたポリエステルは以下の通りである。
ポリエステルa:ポリエチレンテレフタレート(IV 0.75)
ポリエステルb:テレフタル酸100モル%と、エチレングリコール70モル%、ネオペンチルグリコール28モル%とからなるポリエステル(IV 0.72)
ポリエステルc:ポリブチレンテレフタレート70重量%とε−カプロラクトン30重量%とからなるポリエステルエラストマー(還元粘度(ηsp/c)1.30)
ポリエステルd:ポリエチレンテレフタレート50重量%と二酸化チタン50重量%とからなるポリエステル原料(日本ピグメント株式会社製、名称:ET−550)
ポリエステルe: ポリエチレンテレフタレート40重量%と二酸化チタン60重量%とからなるポリエステル原料(大日本インキ工業株式会社製、名称:EGR MS 0163)
ポリエステルf:ポリエチレンテレフタレート99重量%と蛍光増白剤1重量%とからなるポリエステル原料(大日本インキ工業株式会社製、名称:EGR OB 0024)
【0062】
(実施例1)
表1に示すように、A層の原料して、ポリエステルaを30重量%、ポリエステルbを65重量%、ポリエステルcを5重量%混合したポリエステル組成物を、B層の原料して、ポリエステルbを65重量%、ポリエステルcを5重量%、ポリエステルdを20重量%と結晶性ポリスチレン樹脂(G797N 日本ポリスチレン株式会社製)10重量%それぞれ
別々の押出機に投入、混合、溶融したものをフィードブロックで接合し、280℃でTダイから延伸後のB/A/Bの厚み比率が10μm/10μm/10μmとなるように積層しながら溶融押し出しし、チルロールで急冷して未延伸フィルムを得た。
該未延伸フィルムを、テンターでフィルム温度70℃で横方向に4.0倍延伸し、厚み30μmの熱収縮性ポリエステル系フィルムを得た。
【0063】
(実施例2)
表1に示すように、A層の原料して、ポリエステルaを30重量%、ポリエステルbを65重量%、ポリエステルcを5重量%混合したポリエステル組成物を、B層の原料して、ポリエステルbを63重量%、ポリエステルcを5重量%、ポリエステルdを20重量%、ポリエステルfを2重量%と結晶性ポリスチレン樹脂(G797N 日本ポリスチレン株式会社製)10重量%それぞれ別々の押出機に投入、混合、溶融したものをフィードブロッ
クで接合し、280℃でTダイから延伸後のB/A/Bの厚み比率が10μm/10μm/10μmとなるように積層しながら溶融押し出しし、チルロールで急冷して未延伸フィルムを得た。
該未延伸フィルムを、テンターでフィルム温度70℃で横方向に4.0倍延伸し、厚み30μmの熱収縮性ポリエステル系フィルムを得た。
【0064】
(比較例1〜2)
表1に示すように、ポリエステル、添加剤配合割合を変えたこと以外は、実施例1と同様にして厚み30μmの熱収縮性ポリエステル系フィルムを得た。
【0065】
【表1】

【0066】
実施例1〜2及び比較例1〜2で得られたフィルムの評価結果を表2に合わせて示す。
【0067】
【表2】

【0068】
表2から明らかなように、実施例1〜2で得られた熱収縮性ポリエステル系フィルムは、いずれも良好な光線カット性を有するものであった。
【0069】
本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムは、高品質で実用性が高く、特に劣化しやすい内容物の包装収縮ラベル用として好適である。
【0070】
一方、比較例1〜2で得られた熱収縮性ポリエステル系フィルムは、白色度や破断伸度が劣っていた。このように比較例の熱収縮性ポリエステル系フィルムは、品質が劣り、実用性の低いものであった。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムは、印刷や加工を施さなくとも光線カット性するため、可視光線で変質し易い食品・飲料等のラベルへの幅広い用途分野に利用することができ、産業界に寄与すること大である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主にポリエステル樹脂からなるフィルムであって、フィルムの全光線透過率が30%以下であり、かつ少なくともフィルム片側の白色度が85%以上で、少なくとも2層以上の積層構成からなることを特徴とする熱収縮性ポリエステル系フィルム。
【請求項2】
フィルムの温湯収縮率が、主収縮方向において処理温度95℃・処理時間10秒で50%以上であり、主収縮方向と直交する方向において10%以下であることを特徴とする請求項1に記載の熱収縮性ポリエステル系フィルム。
【請求項3】
フィルムに印刷を施した後に経時促進条件(処理温度30℃・処理湿度85%)雰囲気下で28日間後の主収縮方向と直交する方向の破断伸度が5%以上であることを特徴とする請求項1又は2のいずれかに記載の熱収縮性ポリエステル系フィルム。
【請求項4】
ポリスチレン系樹脂を添加している層を少なくとも1層有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の熱収縮性ポリエステル系フィルム。
【請求項5】
フィルムが溶剤接着可能であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の熱収縮性ポリエステル系フィルム。
【請求項6】
フィルムが少なくともB/A/Bの3層からなり、A層又はB層のいずれかの層に酸化チタン及びポリスチレン系樹脂が含有されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の熱収縮性ポリエステル系フィルム。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の熱収縮性ポリエステル系フィルムから作成された熱収縮性ラベル。

【公開番号】特開2006−297708(P2006−297708A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−121183(P2005−121183)
【出願日】平成17年4月19日(2005.4.19)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】