説明

熱収縮性多層フィルム及び熱収縮性ラベル

【課題】遮光性が高く内容物の品質を保持することができ、適度な機械的性質を有するとともに、高い熱収縮性を有する熱収縮性多層フィルム及び該熱収縮性多層フィルムをベースフィルムとする熱収縮性ラベルを提供する。
【解決手段】スチレン−ブタジエン共重合体を含有する表裏層が、スチレン−ブタジエン共重合体及び二酸化チタンを含有する芯層を介して積層された熱収縮性多層フィルムであって、前記表裏層を構成するスチレン−ブタジエン共重合体は、スチレン成分を75〜90重量%、ブタジエン成分を10〜25重量%含有し、かつ、ビカット軟化温度が80〜90℃であり、前記芯層を構成するスチレン−ブタジエン共重合体は、スチレン成分を70〜80重量%、ブタジエン成分を20〜30重量%含有し、かつ、ビカット軟化温度が70〜80℃であり、かつ、熱収縮性多層フィルムの総重量に対して、二酸化チタンを8〜40重量%含有する熱収縮性多層フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遮光性が高く内容物の品質を保持することができ、適度な機械的性質を有するとともに、熱収縮性に優れる熱収縮性多層フィルム及び該熱収縮性多層フィルムをベースフィルムとする熱収縮性ラベルに関する。
【背景技術】
【0002】
飲料等の液状の商品は、紙箱、金属缶、ペットボトル等のプラスチックボトル、ガラス瓶等の容器に充填されて販売されるのが一般的である。これらのなかで、紙箱や金属缶は、一度開封した後、再封するための手段を有していないため、内容量の多い飲料等では、キャップという再封手段を有するプラスチックボトルやガラス瓶が広く用いられている。
【0003】
しかしながら、このようなプラスチックボトルやガラス瓶は、紙箱や金属缶と比較して遮光性に欠けるため、例えば、清酒、ビール、緑茶等のように光によって変質や変色が起こりやすい飲料の容器として用いる場合には、着色することで遮光性を付与したプラスチックボトルやガラス瓶が使用されているが、このような着色容器は、リサイクルの際に再生が困難となる場合が多かった。
これに対して、無色透明なプラスチックボトルやガラス瓶のほぼ全面に、遮光性のある熱収縮性ラベル(以下、単にラベルともいう)を装着させることで、容器に遮光性を付与することが行われている。例えば、特許文献1には、隠蔽性、熱収縮性及びクッション性を兼ね備えたフィルムとして、相溶性に欠けるポリエステル系樹脂とポリオレフィン系樹脂との混合物からなる未延伸フィルムを延伸することによって得られる収縮フィルムが開示されている。また、特許文献2には、軽量でクッション性に優れるとともに、優れた熱収縮性を有するラベルとして、相溶性に欠けるポリエステル系樹脂とポリスチレン系樹脂との混合物からなる未延伸フィルムを延伸することによって得られる熱収縮性ポリエステル系フィルムが開示されている。
【0004】
これに対して、適度な伸びにくさ、硬さ(腰の強さ)及び引き裂き強さを有しつつ、優れた遮光性を有するフィルムとして、特許文献3には、白色微粒子を含有する層を有し、かつ、空洞を実質的に含まない熱収縮性ラベル用白色フィルムが開示されている。また、特許文献4には、所定量の二酸化チタンを含有し、かつ、空洞を実質的に含まない熱収縮性ラベル用白色フィルムが開示されている。
【0005】
しかしながら、遮光性の向上を目的として、白色微粒子や二酸化チタンをフィルム中に含有させた場合、フィルムの熱収縮性が低下し、容器に装着させる際に、装着性が悪化したり、装着後にシワ、収縮ムラ等の不具合が発生したりするという問題点があった。また、押出成形等を用いてフィルムを成形する際に、白色微粒子や二酸化チタンに起因するカスがダイス等に付着し、成形不良や生産性の低下を招くこともあった。
【特許文献1】特開昭63−193822号公報
【特許文献2】特開平5−111960号公報
【特許文献3】特開2002−278460号公報
【特許文献4】特開2002−285020号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記現状に鑑み、遮光性が高く内容物の品質を保持することができ、適度な機械的性質を有するとともに、熱収縮性に優れる熱収縮性多層フィルム及び該熱収縮性多層フィルムをベースフィルムとする熱収縮性ラベルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、スチレン−ブタジエン共重合体を含有する表裏層が、スチレン−ブタジエン共重合体及び二酸化チタンを含有する芯層を介して積層された熱収縮性多層フィルムであって、前記表裏層を構成するスチレン−ブタジエン共重合体は、スチレン成分を75〜90重量%、ブタジエン成分を10〜25重量%含有し、かつ、ビカット軟化温度が80〜90℃であり、前記芯層を構成するスチレン−ブタジエン共重合体は、スチレン成分を70〜80重量%、ブタジエン成分を20〜30重量%含有し、かつ、ビカット軟化温度が70〜80℃であり、かつ、熱収縮性多層フィルムの総重量に対して、二酸化チタンを8〜40重量%含有する熱収縮性多層フィルムである。
以下に本発明を詳述する。
【0008】
本発明者らは、鋭意検討した結果、表裏層に挟まれた芯層のみに二酸化チタンを含有させることで、成形時の不良や、ブロッキング等の不具合が発生することを防止し、優れた遮光性を有しつつ、生産性、取扱性を有する熱収縮性多層フィルムとなることを見出した。
更に、本発明者らは、鋭意検討した結果、二酸化チタンの含有量を規定するとともに、表裏層及び芯層に含まれるスチレン−ブタジエン共重合体の組成、ビカット軟化温度を規定することで、二酸化チタンを含有させた場合でも、高い熱収縮性を実現することができ、その結果、高い生産性、遮光性を有しつつ、熱収縮性に優れる熱収縮性多層フィルムが得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
上記表裏層は、スチレン成分を75〜90重量%、ブタジエン成分を10〜25重量%含有し、かつ、ビカット軟化温度が80〜90℃であるスチレン−ブタジエン共重合体(以下、表裏層用スチレン−ブタジエン共重合体ともいう)を含有する。なお、明細書では、表層、裏層を合わせて表裏層というが、表層と裏層とは同一の組成、厚み等を有するものであってもよく、異なるものであってもよい。
【0010】
本発明の熱収縮性多層フィルムでは、上記表裏層を有することで、フィルム成形時に二酸化チタンに起因するカスがダイス等に付着し、成形不良や生産性の低下が発生することを防止できる。また、表面光沢度が向上し、その上に印刷された印刷面の美麗性が増す。更に、二酸化チタンが欠落して、遮光性が低下することを防止することができる。
【0011】
上記表裏層用スチレン−ブタジエン共重合体は、スチレン成分の含有量の下限が75重量%、上限が90重量%である。75重量%未満であると、フィルムを加熱した場合にブロッキングが起こり、90重量%を超えると、熱収縮性が低下する。好ましい下限は80重量%、好ましい上限は85重量%である。
【0012】
上記表裏層用スチレン−ブタジエン共重合体のメルトフローレート(MFR)の好ましい下限は2g/10分、好ましい上限は15g/10分である。2g/10分未満であると、押出成形時にスチレン−ブタジエン共重合体の流動性が悪くなり各層のバランスを崩しやすく、15g/10分を超えると、フィルム厚みの均一性が悪くなることがある。なお、上記MFRは、温度200℃、荷重49.03Nの条件で測定するものである。
【0013】
上記表裏層用スチレン−ブタジエン共重合体のビカット軟化温度の下限は80℃、上限は90℃である。80℃未満であると、低温で収縮を開始してしまう。また、経時での収縮率低下が大きくなる。90℃を超えると、収縮開始温度が高くなる。なお、上記ビカット軟化温度は、JIS K 7206(1999)に準拠した方法で測定することができる。
【0014】
上記ビカット軟化温度は、スチレン成分とブタジエン成分の比率によって調整される。なお、両者の比率が同じであっても、ランダム(又はテーパー)共重合体の構造をとるか、ブロック共重合体の構造をとるか、又は、これらの混合構造をとるかによってビカット軟化温度は異なる。一般に、両者の比率が同じ場合、ブロック共重合体よりもランダム(又はテーパー)共重合体の方がビカット軟化温度は低くなる傾向にある。また、ブロック共重合体とランダム(又はテーパー)共重合体の両方の構造を有する場合には、ランダム(又はテーパー)共重合体の比率が大きければ、ビカット軟化温度は低くなり、ランダム(又はテーパー)共重合体の比率が小さければビカット軟化温度は高くなる。
なお、上記ビカット軟化温度は、JIS K 7206(1999)に準拠した方法で、樹脂から試験片を採取した後、試験片に置いた針状圧子に10Nの荷重を加えながら、120℃/hの速度で昇温させ、針状圧子が1mm進入したときの温度を確認することにより、測定することができる。
【0015】
上記表裏層用スチレン−ブタジエン共重合体の数平均分子量の好ましい下限は80000、好ましい上限は200000である。数平均分子量を上記範囲内とすることで、物性の安定した熱収縮性多層フィルムを得ることができる。本明細書において、数平均分子量とはゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で測定されたものをいう。
【0016】
上記表裏層は、アンチブロッキング剤及び/又は有機系微粒子を含有することが好ましい。上記アンチブロッキング剤及び/又は有機系微粒子を含有することで、上記表裏層の表面に均一でかつ微細な突起を形成することができる。
【0017】
上記アンチブロッキング剤としては、特に限定されず、例えば、耐衝撃性ポリスチレン等が挙げられる。
上記耐衝撃性ポリスチレンとしては、例えば、ブタジエンにスチレンをグラフト重合させたスチレン−ブタジエングラフト共重合体、ポリブタジエンゴムをスチレンモノマーに溶解し、この溶液を塊状重合、溶液重合又は懸濁重合するか、単純に機械的に混合することにより得られる樹脂等を用いることができる。
【0018】
上記耐衝撃性ポリスチレンの市販品としては、例えば、トーヨースチロールE640(東洋スチレン社製)、PSJ−ポリスチレンH6872(PSジャパン社製)等が挙げられる。
【0019】
上記耐衝撃性ポリスチレンは、通常、ポリスチレン相とゴム相の2相構造となっており、ポリスチレン相中にゴム相が分散した、いわゆる海−島構造となっている。
この場合、上記ポリスチレン相に分散しているゴム相の平均粒子径の好ましい下限は1μm、好ましい上限は3μmである。1μm未満であると、表裏層の表面の改質効果が不充分となり、ブロッキングが発生することがあり、3μmを超えると、印刷加工時にインク飛びによる不良が発生することがある。より好ましい下限は2μm、より好ましい上限は2.5μmである。
【0020】
上記耐衝撃性ポリスチレンのメルトフローレート(MFR)の好ましい下限は1.5g/10分、好ましい上限は10g/10分である。MFRを上記範囲内とすることで、適度な表面粗さを有する熱収縮性多層フィルムが得られる。より好ましい下限は2g/10分、より好ましい上限は8g/10分である。なお、上記MFRは、温度200℃、荷重49.03Nの条件で測定するものである。
【0021】
上記耐衝撃性ポリスチレンの含有量の好ましい下限は、上記表裏層用スチレン−ブタジエン共重合体100重量部に対して0.8重量部、好ましい上限は2.5重量部である。0.8重量部未満であると、得られる熱収縮性多層フィルム同士のブロッキングが発生しやすくなり、2.5重量部を超えると、得られる熱収縮性多層フィルムの透明性が低下することがある。より好ましい下限は1.0重量部、より好ましい上限は2重量部である。更に好ましい上限は1.8重量部である。
【0022】
上記有機系微粒子としては、例えば、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、メチルメタクリレート−スチレン共重合体等が挙げられる。なかでも、メチルメタクリレート−スチレン共重合体が好ましい。また、上記有機系微粒子は、架橋されたものであってもよく、非架橋のものであってもよい。このような有機系微粒子は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0023】
上記有機系微粒子のうち、市販品としては、例えば、ガンツパール(ガンツ化成社製)、アートパール(根上工業社製)等が挙げられる。
【0024】
上記有機系微粒子の平均粒子径の好ましい下限は0.5μm、好ましい上限は5μmである。0.5μm未満であると、滑性やブロッキング性の改善効果が低下することがあり、5μmを超えると、印刷加工時にインク飛び等の不具合が発生することがある。より好ましい下限は1μm、より好ましい上限は4μmである。なお、本発明では、平均粒子径の異なる有機系微粒子を組み合わせて使用してもよい。
【0025】
上記有機系微粒子の含有量の好ましい下限は、上記表裏層用スチレン−ブタジエン共重合体100重量部に対して0.02重量部、好ましい上限は0.15重量部である。0.02重量部未満であると、滑性やブロッキング性の改善効果が低下することがあり、0.15重量部を超えると、得られる熱収縮性多層フィルムの透明性が低下することがある。より好ましい下限は0.04重量部、より好ましい上限は0.12重量部である。更に好ましい下限は0.05重量部である。
なお、本発明の熱収縮性多層フィルムをラベルとして使用する場合、印刷面と容器と接する面とでは、要求される表面の粗さが違う場合があるため、本発明の効果を損なわない範囲で、表層と裏層の耐衝撃性ポリスチレン及び/又は有機系微粒子の含有量を異なるものとしてもよい。
【0026】
上記芯層は、スチレン成分を70〜80重量%、ブタジエン成分を20〜30重量%含有し、かつ、ビカット軟化温度が70〜80℃であるスチレン−ブタジエン共重合体(以下、芯層用スチレン−ブタジエン共重合体ともいう)及び二酸化チタンを含有する。
【0027】
上記芯層用スチレン−ブタジエン共重合体は、スチレン成分の含有量の下限が70重量%、上限が80重量%である。70重量%未満であると、得られる熱収縮性多層フィルムの剛性及び耐自然収縮性が低下し、80重量%を超えると、耐衝撃強度及び熱収縮率が低下する。好ましい下限は75重量%、好ましい上限は80重量%である。
【0028】
上記芯層用スチレン−ブタジエン共重合体のメルトフローレート(MFR)の好ましい下限は2g/10分、好ましい上限は15g/10分である。2g/10分未満であると、添加する二酸化チタンの分散性が悪化し、ムラが生じることがあり、15g/10分を超えると、厚みが不均一となることがある。より好ましい下限は4g/10分、より好ましい上限は9g/10分である。なお、上記MFRは、温度200℃、荷重49.03Nの条件で測定するものである。
【0029】
上記芯層用スチレン−ブタジエン共重合体のビカット軟化温度の下限は70℃、上限は80℃である。70℃未満であると、低温で収縮を開始したり、自然収縮率が大きくなったりすることがある。また、経時での収縮率低下が大きくなる。80℃を超えると、収縮開始温度が高くなる。なお、上記ビカット軟化温度は、JIS K 7206(1999)に準拠した方法で測定することができる。
【0030】
上記芯層用スチレン−ブタジエン共重合体の数平均分子量の好ましい下限は50000、好ましい上限は200000である。数平均分子量を上記範囲内とすることで、物性の安定した熱収縮性多層フィルムを得ることができる。本明細書において、数平均分子量とはゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で測定されたものをいう。
【0031】
上記芯層は二酸化チタンを含有する。上記二酸化チタンは、アナタアーゼ型、ルチル型、ブルカイト型の3種の結晶形態があるが、本発明では、遮光性、耐侯性、耐熱性、鮮明性等の観点から、ルチル型の酸化チタンを用いることが好ましい。
また、上記二酸化チタンの平均粒子径の好ましい下限は150nm、好ましい上限は400nmである。
【0032】
本発明の熱収縮性多層フィルムにおける二酸化チタンの含有量の下限は、熱収縮性多層フィルムの総重量に対して8重量%、上限は40重量%である。
8重量%未満であると、得られる熱収縮性多層フィルムの遮光性が低下し、40重量%を超えると、得られる熱収縮性多層フィルムの熱収縮性が低下し、また引張破壊伸度が低下する。好ましい下限は12重量%、好ましい上限は20重量%である。
【0033】
本発明の熱収縮性多層フィルムには、必要に応じて、酸化防止剤、熱安定剤、滑剤、帯電防止剤等の添加剤を添加してもよい。特に、熱安定剤や酸化防止剤を添加することでゲルの発生を抑制することができる。
【0034】
本発明の熱収縮性多層フィルム全体の厚さの好ましい下限は20μm、好ましい上限は40μmである。
【0035】
本発明では、表層、裏層及び芯層の厚さの比(表層の厚さ:芯層の厚さ:裏層の厚さ)は1:2:1〜1:22:1の範囲内であることが好ましい。1:2:1よりも芯層の厚さが薄いと、遮光性が不充分となることがある。1:22:1よりも芯層の厚さ大きくなると、表裏層を安定して成形できないことがある。
【0036】
フィルム全体の厚さが30μmである場合、上記芯層の厚さの好ましい下限は21.5μm、好ましい上限は27.5μmである。また、上記表裏層の厚さの好ましい下限は1.25μm、好ましい上限は4.25μmである。
【0037】
本発明の熱収縮性多層フィルムの熱収縮特性については、70℃の温水中に10秒間浸した場合の収縮率の好ましい下限は10%、好ましい上限は20%である。10%未満であると、装着時に多くの熱量が必要となるため、容器の変形を招くことがあり、20%を超えると、加熱によって急激に収縮するため、シワ等が生じやすくなる。より好ましい下限は13%、より好ましい上限は16%である。
なお、上記70℃の温水中に10秒間浸した場合の収縮率とは、熱収縮性多層フィルムを、100mm×100mmの大きさにサンプルをカットし、70℃の温水中に10秒間浸した後の、加熱処理前の寸法に対する加熱後の寸法の変化率を%で表した値のことであり、主収縮方向(収縮率の大きい方向)の値のことである。
【0038】
また、本発明の熱収縮性多層フィルムの80℃の温水中に10秒間浸した場合の収縮率の好ましい下限は40%、好ましい上限は50%である。40%未満であると、装着時に多くの熱量が必要となるため、容器の変形を招くことがあり、50%を超えると、加熱によって急激に収縮するため、シワ等が生じやすくなる。より好ましい下限は44%、より好ましい上限は47%である。
なお、上記80℃の温水中に10秒間浸した場合の収縮率とは、熱収縮性多層フィルムを、100mm×100mmの大きさにサンプルをカットし、80℃の温水中に10秒間浸した後の、加熱処理前の寸法に対する加熱後の寸法の変化率を%で表した値のことであり、主収縮方向(収縮率の大きい方向)の値のことである。
【0039】
本発明の熱収縮性多層フィルムは、波長300〜800nmの光線透過率の好ましい上限が50%である。50%を超えると、遮光性が不充分であることから、内容物に変質や変色が起こる可能性が高くなる。より好ましい上限は40%である。
【0040】
本発明の熱収縮性多層フィルムの主収縮方向の自然収縮率は、40℃7日間放置したとき、好ましい上限は3%である。3%を超えると、本発明の熱収縮性多層フィルムを保管する際に、寸法変化を起こしやすくなり、印刷加工時にトラブルとなる場合がある。より好ましい上限は2%である。
【0041】
本発明の熱収縮性多層フィルムは、圧縮強度の好ましい下限が1.2Nである。1.2N未満であると、柔らかすぎて、熱収縮性多層フィルムを容器に装着する際に、スムーズに装着できないことがある。より好ましい下限は2.0Nである。なお、圧縮強度とは、熱収縮性多層フィルムに略筒状にした状態で、円筒周方向に垂直な方向に荷重を掛けたとき、円筒が折れてつぶれるときの強度を指す。
【0042】
本発明の熱収縮性多層フィルムを製造する方法としては特に限定されないが、共押出法により各層を同時に成形する方法が好適である。例えば、Tダイによる共押出では、積層の方法として、フィードブロック方式、マルチマニホールド方式、又は、これらを併用した方法のいずれであってもよい。具体的には例えば、表裏層を構成する原料、芯層を構成する原料それぞれ押出機に投入し、多層ダイスにより、シート状に押し出し、引き取りロールにて冷却固化した後、1軸又は2軸に延伸する方法を用いることができる。
上記二酸化チタンの添加方法としては、特に限定されないが、芯層用スチレン−ブタジエン共重合体に二酸化チタンを添加することでマスターバッチとして、該マスターバッチと芯層用スチレン−ブタジエン共重合体とを芯層を構成する原料として添加する方法が、生産性に優れることから好ましい。
【0043】
本発明の熱収縮性多層フィルムをベースフィルムとして使用することにより、熱収縮性ラベルを得ることができる。このような熱収縮性ラベルもまた本発明の1つである。
本発明の熱収縮性ラベルは、上記熱収縮性多層フィルムをベースフィルムとして、必要に応じて、印刷層等の他の層を積層してもよい。
【0044】
容器に熱収縮性ラベルを装着する方法としては、通常、溶剤を用いて熱収縮性多層フィルムの端部間を接着してチューブ状に加工(センターシール加工)し熱収縮性ラベルとした後、容器を覆った状態で加熱して収縮させる方法が採用されている。
【発明の効果】
【0045】
本発明によれば、遮光性が高く内容物の品質を保持することができ、適度な機械的性質を有するとともに、熱収縮性に優れる熱収縮性多層フィルム及び該熱収縮性多層フィルムをベースフィルムとする熱収縮性ラベルを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0046】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0047】
(実施例1)
表裏層を構成する成分として、スチレン−ブタジエン共重合体SBS−1(スチレン85重量%、ブタジエン15重量%:MFR=5.6g/10分、ビカット軟化温度82℃)100重量部、耐衝撃性ポリスチレンHIPS(MFR=2.7g/10分、ビカット軟化温度93℃)1.4重量部、有機系微粒子としてメチルメタクリレート−スチレン共重合体(平均粒子径:3.3μm)0.06重量部を、バレル温度が160〜190℃の表層形成用一軸押出機及び裏層形成用一軸押出機のそれぞれに投入した。同時に、芯層を構成する成分として、スチレン−ブタジエン共重合体SBS−2(スチレン78重量%、ブタジエン22重量%:MFR=6.2g/10分、ビカット軟化温度72℃)100重量部、SBS−2をベース樹脂として二酸化チタンを60重量%含有する白色マスターバッチ20重量部を芯層形成用一軸押出機に投入し、190℃の多層ダイスから、表層/芯層/裏層の3層構造のシート状に押出し、25℃の引き取りロールにて冷却固化した。その後、得られたシートを85℃に調整された加熱ロールを有する縦延伸機にて約1.3倍に縦延伸し、次いで、予熱ゾーン110℃、延伸ゾーン90℃のテンター延伸機にて約5.5倍に横延伸し、70℃でアニーリングした後、巻き取り機で巻き取ることにより、白色でロール状の熱収縮性多層フィルム(二酸化チタン含量:8重量%)を得た。
得られた熱収縮性多層フィルムは、総厚みが30μmであり、表層(2.7μm)/芯層(24.6μm)/裏層(2.7μm)であった。
なお、ビカット軟化温度は、JIS K 7206(1999)に準拠した方法で行い、樹脂から試験片を採取した後、試験片に置いた針状圧子に10Nの荷重を加えながら、120℃/hの速度で昇温させ、針状圧子が1mm進入したときの温度を確認することにより、測定した。
【0048】
(実施例2)
芯層を構成する成分として、スチレン−ブタジエン共重合体SBS−2(スチレン78重量%、ブタジエン22重量%:MFR=6.2g/10分、ビカット軟化温度72℃)100重量部、SBS−2をベース樹脂として二酸化チタンを60重量%含有する白色マスターバッチ33重量部を用いた。
これらの樹脂を用いた以外は実施例1と同様にして熱収縮性多層フィルム(二酸化チタン含量:12重量%)を得た。
【0049】
(実施例3)
芯層を構成する成分として、スチレン−ブタジエン共重合体SBS−2(スチレン78重量%、ブタジエン22重量%:MFR=6.2g/10分、ビカット軟化温度72℃)100重量部、SBS−2をベース樹脂として二酸化チタンを60重量%含有する白色マスターバッチ47重量部を用いた。
これらの樹脂を用いた以外は実施例1と同様にして熱収縮性多層フィルム(二酸化チタン含量:16重量%)を得た。
【0050】
(実施例4)
芯層を構成する成分として、スチレン−ブタジエン共重合体SBS−2(スチレン78重量%、ブタジエン22重量%:MFR=6.2g/10分、ビカット軟化温度72℃)100重量部、SBS−2をベース樹脂として二酸化チタンを60重量%含有する白色マスターバッチ69重量部を用いた。
これらの樹脂を用いた以外は実施例1と同様にして熱収縮性多層フィルム(二酸化チタン含量:20重量%)を得た。
【0051】
(実施例5)
芯層を構成する成分として、スチレン−ブタジエン共重合体SBS−2(スチレン78重量%、ブタジエン22重量%:MFR=6.2g/10分、ビカット軟化温度72℃)100重量部、SBS−2をベース樹脂として二酸化チタンを60重量%含有する白色マスターバッチ129重量部を用いた。
これらの樹脂を用いた以外は実施例1と同様にして熱収縮性多層フィルム(二酸化チタン含量:30重量%)を得た。
【0052】
(実施例6)
芯層を構成する成分として、スチレン−ブタジエン共重合体SBS−2(スチレン78重量%、ブタジエン22重量%:MFR=6.2g/10分、ビカット軟化温度72℃)100重量部、SBS−2をベース樹脂として二酸化チタンを60重量%含有する白色マスターバッチ683重量部を用いた。
これらの樹脂を用いた以外は実施例1と同様にして熱収縮性多層フィルム(二酸化チタン含量:40重量%)を得た。
【0053】
(実施例7)
芯層を構成する成分として、スチレン−ブタジエン共重合体SBS−3(スチレン78重量%、ブタジエン22重量%:MFR=5.6g/10分、ビカット軟化温度76℃)100重量部、SBS−2をベース樹脂として二酸化チタンを60重量%含有する白色マスターバッチ47重量部を用いた。
これらの樹脂を用いた以外は実施例1と同様にして熱収縮性多層フィルム(二酸化チタン含量:16重量%)を得た。
【0054】
(比較例1)
芯層を構成する成分として、スチレン−ブタジエン共重合体SBS−2(スチレン78重量%、ブタジエン22重量%:MFR=6.2g/10分、ビカット軟化温度72℃)100重量部、SBS−2をベース樹脂として二酸化チタンを60重量%含有する白色マスターバッチ11重量部を用いた。
これらの樹脂を用いた以外は実施例1と同様にして熱収縮性多層フィルム(二酸化チタン含量:5重量%)を得た。
【0055】
(比較例2)
芯層を構成する成分として、スチレン−ブタジエン共重合体SBS−2(スチレン78重量%、ブタジエン22重量%:MFR=6.2g/10分、ビカット軟化温度72℃)100重量部、SBS−2をベース樹脂として二酸化チタンを60重量%含有する白色マスターバッチ1150重量部を用いた。
これらの樹脂を用いた以外は実施例1と同様にして熱収縮性多層フィルム(二酸化チタン含量:45重量%)を得た。
【0056】
(比較例3)
芯層を構成する成分として、SBS−2をベース樹脂として二酸化チタンを60重量%含有する白色マスターバッチ100重量部を用いた。
これらの樹脂を用いた以外は実施例1と同様にして熱収縮性多層フィルム(二酸化チタン含量:50重量%)を得た。
【0057】
(比較例4)
芯層を構成する成分として、スチレン−ブタジエン共重合体SBS−1(スチレン85重量%、ブタジエン15重量%:MFR=5.6g/10分、ビカット軟化温度82℃)100重量部、耐衝撃性ポリスチレンHIPS(MFR=2.7g/10分、ビカット軟化温度93℃)100重量部、SBS−2をベース樹脂として二酸化チタンを60重量%含有する白色マスターバッチ100重量部を用いた。
これらの樹脂を用いた以外は実施例1と同様にして熱収縮性多層フィルム(二酸化チタン含量:16重量%)を得た。
【0058】
(評価)
(1)光線透過率測定
得られた熱収縮性多層フィルムについて、紫外可視分光光度計(V−670、日本分光社製)を用い、紫外線及び可視光線(波長:300〜800nm)の透過率を測定した。
なお、300〜800nmの領域での光線透過率が40%以下であれば、充分な紫外線カット性を有するものと考えられる。また、表2には、300〜800nmにおける紫外線透過率の最大値を記載した。
【0059】
(2)圧縮強度測定
得られた熱収縮性多層フィルムについて、JIS P 8126に準拠した方法で圧縮強度を測定した。具体的には以下の方法を用いた。
得られた熱収縮性多層フィルムを長さ152.4mm、幅12.7mmの短冊状にカットし、予め作製した支持具に円筒状にセットした後、支持具をリングクラッシュテスタ(東洋精機製作所社製、型式D)の架台に乗せ、測定を行った。測定はMD方向の圧縮強度のみで行い、n=5とした。
【0060】
(3)熱収縮率
得られた熱収縮性多層フィルムを、100mm×100mmの大きさにサンプルをカットし、70℃の温水に10秒間浸漬させた後、熱収縮性多層フィルムを取り出し、加熱処理前の寸法に対する加熱後の寸法の比率を算出した。なお、収縮率はn=3としてその平均値を用いた。また、平均値よりも2%以上離れた値はカウントしないこととした。測定は、温水を80℃に設定した場合についても行った。
【0061】
(4)自然収縮率
(3)熱収縮率で得られた測定サンプルを40℃で7日間放置した後、放置前の寸法に対する放置後の寸法の比率を算出した。
【0062】
(5)引張破断伸度測定
得られた熱収縮性多層フィルムを幅10mm×長さ100mm(長さ方向は、熱収縮性多層フィルムのMD方向と同じ)の短冊状にカットし、長さ方向の中央付近に標線間40mmとなるように線を引いて測定サンプルとした。
この測定サンプルについて、引張試験機(東洋精機製作所社製、ストログラフVE1D)を用いて引張破断伸度を測定した。
チャック間距離は標線と同じ40mmとし、標線の部分をチャックで挟み、速度200mm/minでサンプルが破断するところまで引っ張った。
試験前のチャック間距離と破断したときのチャック間距離とから、引張破断伸度を求めた。なお、試験回数は10回とし、その平均値を求めた。
引張破断伸度が100%未満のものは、急激なテンション変化に耐えられず破断することから、好ましくないとした。
【0063】
【表1】

【0064】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明によれば、遮光性が高く内容物の品質を保持することができ、適度な機械的性質を有するとともに、高い熱収縮性を有する熱収縮性多層フィルム及び該熱収縮性多層フィルムをベースフィルムとする熱収縮性ラベルを提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スチレン−ブタジエン共重合体を含有する表裏層が、スチレン−ブタジエン共重合体及び二酸化チタンを含有する芯層を介して積層された熱収縮性多層フィルムであって、
前記表裏層を構成するスチレン−ブタジエン共重合体は、スチレン成分を75〜90重量%、ブタジエン成分を10〜25重量%含有し、かつ、ビカット軟化温度が80〜90℃であり、
前記芯層を構成するスチレン−ブタジエン共重合体は、スチレン成分を70〜80重量%、ブタジエン成分を20〜30重量%含有し、かつ、ビカット軟化温度が70〜80℃であり、かつ、
熱収縮性多層フィルムの総重量に対して、二酸化チタンを8〜40重量%含有する
ことを特徴とする熱収縮性多層フィルム。
【請求項2】
請求項1記載の熱収縮性多層フィルムを用いてなることを特徴とする熱収縮性ラベル。

【公開番号】特開2009−83230(P2009−83230A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−254531(P2007−254531)
【出願日】平成19年9月28日(2007.9.28)
【出願人】(000001339)グンゼ株式会社 (919)
【Fターム(参考)】