説明

熱可塑性廃プラスチックの減容と再資源化の方法とその装置

【課題】。
発泡スチロール熱圧縮によるインゴット、又は溶解液によるゲルによるマテリアルリサイクルが進められている。これらの処理は悪臭やその取り扱いが面倒であるばかりか、処理費用がかさむ。中間製品は、品質も落ちる。
【解決手段】
密閉した圧力容器1内の140〜200℃の高温水に廃棄発泡スチロール2を浸し、溶融減容させる。温度管理した水を循環ポンプ361およびノズル362を使い、満遍なく材料にかける。溶融プラスチックは水と溶け合わず、水より軽い物は回収スチロール431、重いものは回収スチロール432となり、内圧により外部に押し出される。ここで溶融プラスチックは大気または常圧下の水に触れ、急冷硬化する。また金型と直結させ、直接製品を作成することによって付加価値を格段にあげることが出来る。また中間製品を別途高圧溶融装置で固化することにより溶融物の特性を生かし装飾品や環境教育用具を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃棄物の有効活用技術であり、発泡スチロールのような熱可塑性プラスチックを高圧容器内の高温水で溶融減容して、常圧に戻したときそのままペレットとして使える、高品質の再生プラスチックを経済的に得る方法であり、環境技術分野でもある。
【背景技術】
【0002】
プラスチックのリサイクルには既に幾多の先人の歴史がある。中でも発泡スチロールは嵩も大きくそれなりの処理が種々考えられてきた。
【非特許文献1】発泡スチロール再資源化協会 HP http://www.jepsra.gr.jp/2004年度の統計でも、使用済み発泡スチロールは、30.3%が処分場での廃棄処分されてリサイクルが進んでいない。これは粉砕加熱溶融やリモネンなどの溶解による減容処理方法があるが、経済的負担が大きく、また悪臭など環境問題も発生するので敬遠されがちである。たとえインゴットのような形状にしたとしても低品質のため用途が限られている。その結果リサイクル率が思うように拡大していない。
【0003】
【特許文献1】特許出願2002−372229発泡スチロールを減容して得られるゲル状のスチロールよりも比重が重く、かつゲル状のスチロールと分離する減容液を用い、前記減容液を減容槽内に収容し、減容槽中に発泡スチロールを投入して前記減容液により発泡スチロールを減容してゲルを得て、減容液を排出せずに、減容液と分離した状態で減容液中に浮遊しているゲルのみを任意な時に任意な量を容易に減容槽外部へ排出する方法が提案されている。
【0004】
【非特許文献2】カタログ 株式会社ユーテックジャポン カタログ 融ちゃんそのなかで、近年加熱水蒸気を使う方法も開発されてきた。これは、臭いを水で包みつつ、適度の溶融を保つので、従来の熱溶融や溶剤方法とは異なり、環境にもやさしい有望な手法である。しかし装置は非常に高価でランニングコストもかかり普及には大きな問題点となっている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
廃プラスチックを減容、再利用するとき、悪臭が発生せず、再生品も高品質であり、そのプロセスが安価であること。
【課題を解決するための手段】
【0006】
密閉圧力容器内に高圧とした100℃以上の水に廃プラスチックを浸し、廃材を溶融させ減容させる。水の温度を管理して分子量の変化など化学的変質させないようにする。水は空気と異なり熱容量が大きく、また材料全体に接触するので材料溶融は満遍なく進む。空気の場合接触する部分が限られ、しかも材料自身空気層がある発泡材だとその断熱性が相乗して一部分が異常に温度上昇して焦げなどが発生しやすい。
【0007】
この溶融状態での廃プラスチックは水と溶け合わず両者の比重の差で分離する。高温の溶融プラスチックは排出コックを徐々に開ければ、内圧により外部に押し出される。すなわちここで溶融プラスチックは大気または常圧下での水に触れ、急冷硬化する。
【発明の効果】
【0008】
請求項1記載の発明の方法および請求項2記載の装置によれば、熱可塑性廃プラスチックは密閉容器内で高温の水蒸気または水のような液体に包まれ、溶融減容する。このとき密閉容器内であり、液体に包まれるので悪臭が発生しにくい状態でしかも化学的性質を損なうことなく再生材料を、可動部のない押し出しという単純な機構で減容再資源化ができる。
【0009】
請求項3によれば、溶融廃プラスチックを出口と直結した金型に密閉容器内圧を使い、常温常圧で溶融材を固化した形状物にする装置を提供するもので、その場で製品が製作できる。
【0010】
請求項4によれば、発泡スチロールのような98%が空気といわれるものがメダルのような小物品にその場で変身する。装置はコンパクトにでき、悪臭も無いので、店頭などで設置できる。また環境教育機器としても優れていることが実証される。
【0011】
請求項5によれば、加熱され溶融した発泡スチロールと溶液でゲル状になった発泡スチロールとを混合することによって軟化度の異なるスチロール材を得ることができる。
【0012】
請求項6によればサーモカラーやプリクラの写真を封じ込めたアイデア装飾品がお客様の好み応じ、商品がその場で容易に提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態として実施例を図1から図9を使い、説明する。
【実施例1】
【0014】
図1は請求項2による廃発泡スチロールの減容装置の外観図を示す。ここでは圧力容器1を中心に回収部4(A)4(B)で構成されている。図2はその断面図であり、発泡スチロール2を入れる圧力容器1には水3が入っている。水は発熱体31で温められる。容器が密閉されているので加熱とともに昇温し、やがて1気圧以上となり、水温も100℃以上となる。発泡スチロール2はこれら高温水または水蒸気にさらされると軟化溶融する。これらの温度は温度センサーによって監視される。
【0015】
図3はこれらのプロセスの詳細を記述したものである。(1)は発泡スチロールの投入前の状態で、圧力容器1には水3が注入されている。(2)において蓋13を開け、発泡スチロール2を投入する。投入後は蓋13を密閉して、発熱体31を通電して加熱する。加熱水は循環ポンプ361で汲み上げノズル362からシャワー状で発泡スチロール2に注ぐ。発泡スチロール2は150〜160℃で軟化するが、重合度の大きな変化はない領域である。気圧は4〜5気圧である。この環境管理は温度計と制御箱5内の制御装置で自動的に行う。また圧力については設定圧以上になったとき安全弁14が働くようになっている。
【0016】
(3)は減容中の状態を示している。暫時減容が進み溶融物は水と共存する。このとき比重の差によって浮かぶも、沈むものが出る。
【0017】
(4)は減容が完了した状態を示している。ここで水に浮いている回収スチロール(A)431は排出バルブ上453を開けると圧力容器1の内圧で回収容器(A)441に回収される。回収部(A)を温水で満たしておくと凝固の速度を加減できる。また吐出ノズルと水槽を設けて、溶融物を糸状の凝固物にすることもできる。さらに後述の成型機と直結することも出来る。
【0018】
水に沈降した回収スチロール(B)432は排出バルブ454を開けて回収容器(B)442に回収される。いずれの場合も、容器内の圧力によってそれぞれの容器に注入される。液の材質、材料の溶融具合で(A)(B)どちらに出るかが決まるので、対象の廃プラスチックの物性値によって当然異なるが、いずれも溶融状態で排出される。
【実施例2】
【0019】
図4は圧力容器が2つ(A)と(B)とがあり、これらは同じ形状と機能を持っている。また個別の溶融のプロセスは実施例1と同じで、150〜160℃の水3が発泡スチロール2を溶融減容する。材料の投入は共通のホッパー19を使っている。2つの圧力容器とリターンパイプ36、上部切り替えバルブ15および下部切り替えバルブ16は液体の還流で共通の流路となっている。このバルブの開閉の組み合わせて還流を圧力容器(A)にしたり圧力容器(B)にしたりする。
【0020】
図5は減容の工程を示している。(A)と(B)とは対称でであるので(B)の工程を中心に説明する。(1)では(B)への材料投入をしている。蓋13は(B)側では開いているので、ホッパー19にある発泡スチロール2が圧力容器(B)に落下する。
【0021】
(2)で投入完了。(3)で上部切り替えバルブ15が(B)側(すなわち絵では右側R)へ切り替わる。(A)内の内圧で注水が始まる。(4)注水が完了すると蓋13がスライドして閉まり、下部切り替えバルブ16も切り替わり、加熱が始まる。温度は120〜160℃、圧力は4〜5気圧。溶融したものは回収スチロール432として容器底部に溜まる。
【0022】
(5)ある一定の溶融量が溜まった時点で排出バルブ下454を開けると、内圧により溶融物46を得る。(6)では(A)への注水の状態であり、上部切り替えバルブ15の向きが変わっている。(A)については(B)と同じ工程である。
【実施例3】
【0023】
図6は圧力容器1内に溶融物46ができたあと、そのまま成型する方法について述べている。排出バルブ454を開けると、実施例1−2ではおよそ温度が100〜130℃近辺の発泡スチロールの溶融物46が排出パイプ452通じて金型6に流れる。この場合図のようなロータリー金型61の場合、湯口611から溶融物46が5〜6気圧の内圧で注入されるが、矢印の方向に回転するにつれ、冷却され、270度回転する頃には固化している。成型品62は押し出し棒612で排出される。
【0024】
図7は溶融物46が製品になるプロセスを大まかに表している。(1)は上記の容器で溶融物46が発生し(2)で固化され(3)で製品となる過程を示している。aは溶融物を回収容器44で空冷又水没して固化したものを破砕機にかけ、粉末にする。bは押し出しノズルを使いペレットを作成する。cは直接溶融物を容器から受け、ペレットや製品そのものを作成する。要は中間処理もさまざまあり、製品も目的に合わせそれなりの形状ができることを示している。
【0025】
図8、図9は上記で出来た粉末を成型する方法を示している。図8は加圧装置を示す。油圧ポンプ74は手動式でも良い。シリンダー78は作動油75により上昇し、材料を圧縮する。このときヒーター77で加熱すると容易に流動が起きる。図9は材料の投入(1)から製品の取り出し(4)の工程を示している。材料の投入時に写真、紙や固形物、サーモカラーなどを封入するとことも可能である。
【0026】
図10はその事例であり、記念品や記録やサンプルの封入が容易に出来ることを示している。もともとは廃棄物からの材料でありリサイクルの学習具としても小学生でも理解しやすいものとなり、環境への理解が身近なものとなる。

【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】実施例1の外観図
【図2】実施例1の断面図
【図3】実施例1の工程図
【図4】実施例2の断面図
【図5】実施例2の工程図
【図6】溶融材を直接成型する方法および金型
【図7】溶融から成型までのプロセス図
【図8】粉末成型装置
【図9】成型のプロセス
【図10】成型品の事例
【符号の説明】
【0028】
1 圧力容器
11 水位計
12 隔壁
13 蓋
14 安全弁
15 上部切り替えバルブ
16 下部切り替えバルブ
17 観察窓
18 ストレーナー
19 ホッパー
2 発泡スチロール
3 水
31 発熱体
32 高温水蒸気2
33 逆止弁
34 水導入口
35 温度センサー入り口
36 リターンパイプ
361 循環ポンプ
362 ノズル
37 高温水蒸気3
38 高温水蒸気流れ1
4 回収部
41 断熱層
42 レリーフバルブ
43 回収スチロール
431 回収スチロール(A)
432 回収スチロール(B)
44 回収容器
441 回収容器(A)
442 回収容器(B)
45 排出パイプ
451 排出パイプ上
452 排出パイプ下
453 排出バルブ上
454 排出バルブ下
46 溶融物
5 制御箱
6 成型機
61 ロータリー金型
611 湯口
612 押し出し棒
613 上型
614 下型
62 成型品
7 簡易成型機
71 蓋
72 容器
73 内筒
74 油圧ポンプ
75 作動油
76 リング
77 ヒーター
78 シリンダー


【特許請求の範囲】
【請求項1】
密閉容器内に、熱可塑性プラスチックを可溶しない液と熱可塑性プラスチックを封じ込め、加圧高温状態で該プラスチックを溶融減容させ、同時に液と該溶融材とが比重差で分離したところを、容器内圧で該溶融材を外部に押し出し、再利用できる材料を得る、熱可塑性プラスチックの減容と再資源化の方法。
【請求項2】
密閉容器内に水溶液と熱可塑性廃プラスチックを封じ込め、水溶液を加熱体で加熱し、容器内の圧力を常圧以上、液温を100℃以上とし、該廃プラスチックを溶融減容させ、容器内圧でノズルを通し常温常圧環境下の回収容器に該プラスチックを押し出す請求項1を使った熱可塑性廃プラスチックの減容回収装置。
【請求項3】
請求項2のごとき、溶融廃プラスチックを原料とし、溶融材排出口と直結した金型を使い、密閉容器内圧で溶融材を押し出し、溶融材を固化させる押し出し成型機。
【請求項4】
溶融廃発泡スチロールを常温で固化、粉砕またはペレット状にし、これを原料としてシリンダーに封じ込め高温高圧を加えることにより成型する、廃発泡スチロールの成型機
【請求項5】
請求項2のごとき、溶融した発泡スチロールに、柑橘系溶剤または有機溶剤で溶融した発泡スチロールを混合させ固化させたスチレン重合体。
【請求項6】
サーモペイント、写真、印刷物などを封じ込めた請求項3乃至請求項5の成型品。

【図3】
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【図4】
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【図1】
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【図2】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−45893(P2007−45893A)
【公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−230341(P2005−230341)
【出願日】平成17年8月9日(2005.8.9)
【出願人】(399052202)
【Fターム(参考)】