説明

熱可塑性接着剤及び該接着剤を利用する金属製固定具

【課題】樹脂成形体と金属製固定具との接着性能に優れ、且つ屋外での使用により紫外線に暴露されても、接着性能の劣化が抑制された熱可塑性接着剤及びこれを利用した金属製固定具を提供する。
【解決手段】屋外にて施工される樹脂成形体と該樹脂成形体用金属製固定具とを接着する共重合ポリアミド系熱可塑性接着剤であり、前記共重合ポリアミド系熱可塑性接着剤における主要なポリアミン成分が下記一般式で表される化合物である共重合ポリアミド系熱可塑性接着剤、
【化1】


(上式において、Rは水素又は炭素数1〜4のアルキル基であり、4個のRは互いに同じであっても異なっていても良く、Zは水素又はNH2R'であり、R'は炭素数1〜4のアルキレン基である。)
及び屋外にて施工される樹脂成形体を固定するための金属製固定具であり、前記樹脂成形体を固定する面に、上記の共重合ポリアミド系熱可塑性接着剤からなる接着層が形成されている金属製固定具。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防水シート等の樹脂成形体を屋外の施工面に固定するために好適に用いられる熱可塑性接着剤及び該接着剤を利用する金属製固定具に関する。
【背景技術】
【0002】
屋上等の防水施工工事に用いられる防水材として、従来より、合成ゴム製シート、塩化ビニル系樹脂製シート等が用いられており、特に塩化ビニル系樹脂製シートは、耐候性に優れる、柔軟性に優れる、自己消火性がある等優れた点があり、防水シートとして多用されている。
これら防水シートを所定の位置に固定する際、固定面に熱可塑性接着剤を予め塗布した亜鉛鋼板やステンレス鋼板等の金属板からなる固定具が使用される。
通常、固定具の中央部には、下地に密着させるためのボルトを通す穴が設けられ、施工面にこの固定具を固定する。その上に防水シートを敷き詰め、該防水シートの上から誘導加熱或いは高周波誘導加熱により固定具を加熱してこの熱により熱可塑性接着剤を溶融させ、冷却することで防水シートが施工面に固定される。
使用される接着剤として、たとえばEVA系、ポリオレフィン系、ポリエステル系、塩化ビニル系、アクリル系、ポリアミド系及びスチレン・エラストマー系樹脂などが知られている(特許文献1)。
【特許文献1】特開2003−268934号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
固定具用金属板には、ステンレス板が広く使用されているが、防水シート等の樹脂成形体との接着性が未だ充分ではない。
現状において使用されている接着剤は、高い接着特性を有することが知られているポリエステル系樹脂からなる熱可塑性接着剤に限られている。しかし、現状の接着剤は、下地施工面に固定具を設置する工程と防水シートを固定具に固定する工程の間に、固定具の固定面に形成された接着層が太陽光の紫外線に暴露されることから、接着特性が低下し、充分な接着性能が得られないという耐紫外線性の問題があった(特許文献1)。
本発明は、従来の接着剤が有する上記の問題を解消し、樹脂成形体と金属製固定具との接着性能に優れ、且つ屋外での使用により紫外線に暴露されても、接着性能の劣化が抑制された熱可塑性接着剤及びこれを利用した金属製固定具を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者等は、高周波加熱を利用して防水シートを施工面に固定する防水施工法において用いられる従来のステンレス製固定具の問題である接着性及び耐紫外線性の問題を解決し、防水シート等の樹脂成形体を金属製固定具に強固に接着することができる接着剤について鋭意検討した結果、特定のポリアミド系樹脂を用いることにより、PVCシートに対し良好な接着性を有するとともに太陽光の下で放置しても接着強度の低下を起こさないことを見出し本発明に至った。
【0005】
即ち、本発明は、屋外にて施工される樹脂成形体と該樹脂成形体用金属製固定具とを接着する共重合ポリアミド系熱可塑性接着剤であり、前記共重合ポリアミド系熱可塑性接着剤における主要なポリアミン成分が下記一般式で表される化合物であることを特徴とする共重合ポリアミド系熱可塑性接着剤であり、
【化1】

【0006】
(上式において、Rは水素又は炭素数1〜4のアルキル基であり、4個のRは互いに同じであっても異なっていても良く、Zは水素又はNH2R'であり、R'は炭素数1〜4のアルキレン基である。)
また、屋外にて施工される樹脂成形体を固定するための金属製固定具であり、前記樹脂成形体を固定する面に、上記の共重合ポリアミド系熱可塑性接着剤からなる接着層が形成されていることを特徴とする金属製固定具である。
【発明の効果】
【0007】
本発明の接着剤は、ステンレス製固定具に対して、高い接着性を有し、また耐紫外線性に優れる。
本発明の接着剤を用いた固定具は、ステンレス製固定具に対して、高い接着性を有し、また耐紫外線性に優れるため、屋外防水シート等の樹脂成形体を強固に固定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下に本発明の実施の形態を説明する。
本発明の熱可塑性接着剤は、以下の必須成分及び所望成分からなる。
・共重合ポリアミド樹脂(必須)
・共重合ポリアミド樹脂以外の熱可塑性接着用樹脂(所望)
・粘着付与剤(所望)
・無機充填材(所望)
・安定剤(所望)
熱可塑性接着剤における共重合ポリアミド樹脂の好ましい配合割合は、熱可塑性接着剤100質量部当たり40〜100質量部であり、より好ましくは60〜97質量部である。40質量部より少ないと、熱可塑性接着剤の接着性が不十分となる恐れがある。
共重合ポリアミド樹脂以外の上記所望成分の好ましい配合割合は、熱可塑性接着剤100質量部当たり3〜60質量部、より好ましくは5〜40質量部である。3質量部より少ないと、添加の効果が不十分であり、60質量部より多いと、接着性が損なわれる恐れがある。
熱可塑性接着剤の好ましい融点は、80℃以上180℃以下であり、より好ましくは、100℃以上160℃以下である。80℃未満では、夏場の高温ではく離が起きる可能性があり、また180℃より高いと、熱可塑性接着剤を溶融させる電磁誘導加熱の際に防水シートの変形が著しくなる恐れがある。
熱可塑性接着剤の好ましいメルトインデックスは、JIS K 7210「熱可塑性プラスチックの流れ性試験方法」に準じて測定した場合(190℃、21.17N)の特性値として、10〜300(g/10min)であり、より好ましくは50〜150(g/10min)である。
【0009】
以下、各成分について説明する。
○共重合ポリアミド樹脂
本発明の熱可塑性接着剤における共重合ポリアミド樹脂は、ポリカルボン酸成分とポリアミン成分を縮合して成り、必須のポリアミン成分として下記一般式で表される化合物(以下、ピペラジン系化合物と略す)を用いるものである。
ピペラジン系化合物の好ましい割合は、共重合ポリアミド樹脂におけるポリアミン成分の全量を基準にして50〜100モル%であり、より好ましくは60〜100モル%である。
【0010】
【化2】


(上式において、Rは水素又は炭素数1〜4のアルキル基であり、4個のRは互いに同じであっても異なっていても良く、Zは水素又はNH2R'であり、R'は炭素数1〜4のアルキレン基である。)
【0011】
(ポリアミン成分)
本発明における共重合ポリアミド樹脂は、上記一般式で表されるピペラジン系化合物を必須とするものである。
好ましいピペラジン系化合物の例としてピペラジン、2メチルピペラジン、1−(2−アミノエチル)ピペラジン等がある。
ピペラジン系化合物以外の好ましいポリアミン成分は、炭素数が2〜20の直鎖脂肪族ジアミン、環状脂肪族ジアミン、芳香族ジアミンである。
好ましい脂肪族ジアミンの例として、エチレンジアミン、1,3ジアミノプロパン、1,4ジアミノブタン、1,6ヘキサメチレンジアミン、デカメチレンジアミン及びオクタデカメチレンジアミン等がある。
好ましい環状脂肪族ジアミンの例として、ビス(p−アミノ−シクロヘキシル)メタン、ビス(p−アミノシクロヘキシル)プロパン、ビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)メタン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサンおよび1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、イソホロンジアミン等がある。
好ましい芳香族ジアミンの例として、m−キシリレンジアミン、p−キシリレンジアミン等がある。
【0012】
(ポリカルボン酸成分)
好ましいポリカルボン酸成分は、炭素数が6〜16の芳香族二塩基性酸、脂肪族二塩基性酸及び脂環式二塩基性酸、及びそのエステル形成体である。
芳香族二塩基性酸の好ましい例として、テレフタル酸、イソフタル酸、無水フタル酸、α-ナフタレンジカルボン酸、β-ナフタレンジカルボン酸等がある。
脂肪族二塩基性酸の好ましい例として、シュウ酸、コハク酸、グルタル酸、マロン酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバチン酸、ウンデシレン酸、ドデカン二酸、ダイマー酸等がある。
脂環式二塩基性酸の好ましい例として、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、水添ダイマー酸等がある。
好ましいポリカルボン酸成分として例示した上記化合物のうち、炭素数6〜16個を持つ直鎖脂肪族2価酸はより好ましく、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸は特に好ましい。
【0013】
(その他の共重合成分)
共重合ポリアミド樹脂において、上記以外の成分を共重合させることができ、好ましい例としてポリエステルがある。ポリエステルとポリアミドを共重合した樹脂は、ポリエステルポリアミド樹脂として市販されている。共重合ポリアミド樹脂におけるポリエステルの好ましい共重合割合は、40質量%以下である。これより多くポリエステルを共重合させると、共重合ポリアミド樹脂による接着特性や耐紫外線性が損なわれる恐れがある。
【0014】
○共重合ポリアミド樹脂以外の熱可塑性接着用樹脂
接着性、塗布性、取扱性等を調整するために、上記の共重合ポリアミド樹脂以外の熱可塑性接着用樹脂を配合することができる。好ましい樹脂として、ABS,ポリカーボネート,PVC、ポリエステル,ポリウレタン,エチレン酢酸ビニル共重合樹脂及びポリエチレン,ポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂などがある。
【0015】
○粘着付与剤
表面への密着を良くするため、本発明の熱可塑性接着剤に粘着付与剤を添加しても良く、好ましい粘着付与剤として、例えばエポキシ樹脂,芳香族変性テルペン樹脂、フェノキシ樹脂、クマロン・インデン樹脂、スチレン樹脂(スチレンおよびスチレンと共重合可能な重合性モノマーからなるスチレン系共重合樹脂を含む)、αメチルスチレン樹脂、ロジン樹脂等がある。
【0016】
○無機充填材
熱可塑性接着剤の凝集力を上げる目的で無機充填剤を配合してもよい。好ましい無機充填剤としては、炭酸カルシウム、酸化亜鉛、酸化チタン、タルク、クレー、フュームドシリカ等の粉末があり、その好ましい配合量は、本発明における熱可塑性接着剤の全量100質量部当たり、30質量部以下が好ましい。
【0017】
○安定剤
好ましい安定剤として、ヒンダードフェノール等の酸化防止剤等がある。
【0018】
○プライマー
【0019】
金属板への密着性を向上させるために金属製固定具の上面にシランカップリング剤を主成分とする組成物をプライマーの層として設けることで耐久性が向上する。特に耐食性に優れたステンレス製金属製固定具には、エポキシシランカップリング剤を主成分とする組成物をプライマー層に使用することで、高い接着強度,耐紫外線性が得られる。
本発明のプライマーに使用される好ましいシランカップリング剤は、分子内にアルコキシ基などの加水分解性シリル基とグリシジル基やメルカプト基,メタクリロキシ基等の反応性基を有している化合物である。
好ましいシランカップリング剤として、例えば、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピル−トリ(β−メトキシエトキシ)シラン等がある。この中で特に好ましいものは、エポキシシランカップリング剤である。
本発明のプライマーは、シランカップリング剤とその他の成分の混合物であってもよい。好ましくは、MEK,キシレン,シクロヘキサンなど汎用の有機溶剤で希釈して使用した方がよい。
【0020】
○熱可塑性接着剤の製造方法
本発明の熱可塑性接着剤は、使用する共重合ポリアミド樹脂及びその他の添加剤の軟化温度以上の温度で溶融混合することが好ましく、混合装置は、加熱装置を有する縦型攪拌機、単軸もしくは二軸のスクリュー方式の溶融混練機、または、ニーダー式加熱混合機に代表される通常の熱可塑性樹脂の混合器が用いられる。
混合に引き続いて、造粒工程によりペレット化して用いることも、溶融混合品を樹脂シート状に加工して使用することもできる。
○金属製固定具
金属製固定具は、樹脂成形体を固定する面に、ポリアミド系熱可塑性接着剤からなる接着層が形成されている。前記接着層は、所望により、プライマー層を介して金属製固定具に形成しても良い。
金属製固定具の形状は、樹脂成形体を固定するための接着部が形成できる面及び固定具を下地に固定する部位を有していれば特に制限されない。好ましい形状は、円形、四角形、三角形或いは長方形の板状又はバー状である。
金属製固定具の大きさは、固定の対象物の大きさ、金属製固定具に要求される接着力、施工性等により適宜調整すれば良く、特に制限されず、例えば、直径60mm程度の円板状が好ましい。
金属製固定具の素材は、電磁誘導作用により発熱する素材であれば良く、好ましくは、防錆性に優れたステンレス鋼である。
【0021】
プライマー及び熱可塑性接着剤層を金属製固定具の上面に形成する方法としては、(a)加工前の金属板の表面にロールコーターなどでプライマーを塗布・乾燥し、プライマーの層を形成した後, 加熱溶融した熱可塑性接着剤をロールコーターで塗布して形成するかまたは、予めフィルム状に加工しておいた熱可塑性接着剤を熱ラミネーターでラミネートし、その後所定の形状にプレス加工を施して金属製固定具を製造する方法、(b)加工前の金属板の表面にロールコーターなどでプライマーを塗布・乾燥し、プライマーの層を形成した後, 所定の形状にプレス加工を施して、熱可塑性接着剤層のない金属製固定具を形成した後、加熱溶融した熱可塑性接着剤をロールコーターで塗布して形成するかまたは、予めフィルム状に加工しておいた熱可塑性接着剤を熱ラミネーターでラミネートし、金属製固定具を製造する方法及び(c)金属板を所定の形状にプレス加工を施してプライマー及び熱可塑性接着剤を形成していない金属製固定具の表面にロールコーターなどでプライマーを塗布・乾燥し、プライマーの層を形成した後, 加熱溶融した熱可塑性接着剤をロールコーターで塗布して形成するかまたは、予めフィルム状に加工しておいた熱可塑性接着剤を熱ラミネーターでラミネートし、金属製固定具を製造する方法がある。プライマー及び熱可塑性接着剤を金属製固定具の上面に形成する方法に特に制限はない。
尚、図1において従来例と同一の符号で表示した部分は、同一又は相当の部分を示している。
【0022】
○樹脂成形体
本発明における樹脂成形体は、所望の下地に固定するもので、例えば、シート、ブロック、板及び網等があり、好ましい材質は、ポリ塩化ビニルがある。
好ましい樹脂成形体は、屋外防水シートである。
【0023】
○施工方法
図1は、防水シートを屋上の防水下地に固定した施工例を示すものである。金属製固定具は、屋上などの下地上に、所定の間隔の位置にアンカーボルトで固定されており、防水シートは、その金属製固定具の上面に接着固定されている。
尚,金属製固定具の下地への固定は、アンカーボルトに限るものではなく、ビスや、釘、接着剤等の手段によって固定されてもかまわない。
【0024】
前記防水シートは、工場又は現場で、所要幅のロール状PVCシートをその側縁で接合して、下地の上面と同形又は所要数に分割した防水シートを作り、前記金属製固定具が取り付けられた下地に、その防水シートを置いて位置決め等を行い、防水シート上から、各金属製固定具上に電磁誘導加熱工具を当てる。この工具は内部に高周波誘導コイルが設けられており、誘導コイルは、交番電流により励磁され、その発生磁界の電磁誘導作用により、金属製固定具の金属部分にうず電流を生じさせる。このため金属はうず電流損により発熱し、予め金属製固定具に設けられた熱可塑性接着剤が溶融,冷却固化して、防水シートを強固に接着する。
【0025】
前記下地は、当該防水工法においては、屋上に該当し、鉄筋コンクリート構造体や、ALC板を敷き並べて形成した構造体や、デッキプレートや金属折板とコンクリートを組み合わせて形成した構造体などが挙げられる。また、それらの上に断熱層を積層させたものであってもかまわない。下地は、前記金属製固定具を固定するためのアンカーボルトを支持できるものが好ましい。
【0026】
前記金属製固定具は、前記下地上に任意の位置に固定できる。
【実施例】
【0027】
以下、本発明を実施例、比較例により具体的に述べる。
なお、実施例等の説明に先立ち、以下の記載における物性値の測定方法及び評価方法について述べる。
【0028】
○樹脂の物性測定方法
下記(a)〜(c)のようにして評価した。
(a)外観:目視
(b)融点:JIS-K-6810 「ポリアミド樹脂成形材料試験方法」に準じて、加熱ブロック型微量融点測定器2℃/minで、樹脂の溶けはじめと溶け終わりの中間の温度を測定した。
(c)メルトインデックス:JIS-K-7210「熱可塑性プラスチックの流れ性試験方法」に準じて測定した。190℃、21.17N
【0029】
○防水シート接着性評価方法
(1)接着はく離強さ: JIS−K−6854接着剤の接着剥離、接着強さ試験方法に準じて下記(d)〜(g)のようにして評価した。
(d)厚さ1.0mmtのSUS板にプライマーを塗布し、120℃×3分加熱し、溶剤を乾燥した。
(e)プライマーを塗布したSUS板と熱可塑性接着剤の100μmのフィルムを180℃の熱ロールコーターで加熱し、熱可塑性接着剤層を持つSUS板を作成した。75mm×75mmの大きさに切断した。
(f)厚さ2mmt×75mm×100mm寸法のPVCシートを重ね電磁誘導加熱器により加熱接着する。
(g)接着したテストピースを幅25mmに切断して、23℃中、引張り速度200mm/分で強度を測定した。測定は、接着後23℃、50%RHで1日放置したものを使用した。
はく離強さ測定条件:23℃ 200mm/min 25mm巾
【0030】
(2)耐紫外線性評価
下記(h)〜(j)のようにして評価した。
(h)(1)の接着はく離強さと同様に、(e)の熱可塑性接着剤層を持つSUS板を作製し、75mm×75mmの大きさに切断する。
(i)UV照射機で365nmの紫外線を10000mJ/cm2照射する。
(j)(1)の(f),(g)と同様にPVCシートを接着し、接着はく離強さを測定し、耐紫外線性を評価した。
【0031】
[実施例1]
○共重合ポリアミド樹脂の合成
撹拌装置、窒素導入管、留出管、温度計を備えた四ツ口フラスコに、ピペラジン1.0モル、アゼライン酸0.2モル、ドデカン2酸0.8モル及びω-アミノウンデカン酸を0.3モル仕込み3時間窒素ガス気流下で攪拌しながら120℃〜150℃の温度で還流させた。次に水を蒸留で留去しながら加熱し、1時間で200℃とした。リン酸を6×10-3モル加え、混合物を220℃に昇温し、5mmHgで減圧をスタートした。3時間かけて240℃に昇温し、重合を終了した。最終の減圧度は、0.05mmHgであった。得られた樹脂は、外観が淡黄色であり、融点が110〜115℃でメルトインデックスが95g/10min(190℃)であった。これを共重合ポリアミド樹脂Aとする。
【0032】
○プライマー調合
β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン(日本ユニカー株式会社製A−186)1質量部に対し、メチルエチルケトンを99質量部で混合し、プライマーとした。
【0033】
○熱可塑性接着剤調合
共重合ポリアミド樹脂Aの85質量部に対し、タッキファイヤーとして、テルペンフェノールYSポリスターT115(ヤスハラケミカル製)15質量部、2軸押し出し機で混合し、水冷し、ペレット化した。Tダイ押出し機により100μmのフィルムを作製した。
このフィルムを用いて、前記の接着方法によりSUS板とPVCシートを接着したテストピースを作製し、接着はく離強さ及び耐紫外線性評価を実施した。結果を表1に示す。
【0034】
[実施例2]
樹脂組成物の調合でタッキファイヤーを添加しなかったこと以外は、全て実施例1と同様にして、性能の評価を実施した。結果を表1に示す。
【0035】
[実施例3]
プライマーを使用しないこと以外実施例1と同様な樹脂組成物を使用し、性能を評価した。結果を表1に示す。
【0036】
[比較例1]
ピペラジンをヘキサメチレンジアミンに替えた以外は、全て実施例1と同様に共重合ポリアミドの合成を実施し、外観が淡黄色であり、融点が110〜120℃でメルトインデックスが90g/10min(190℃)の共重合ポリアミド樹脂Bを得た。実施例1と同様に樹脂組成物を調合し、評価を実施した結果を表1に示す。
【0037】
[比較例2]
共重合ポリアミドAを使用せず、共重合ポリエステルアロンメルトPES−120H(東亞合成株式会社製融点120℃ メルトインデックス50g/10min at190℃)を使用する以外は、実施例1と同様な樹脂組成物の調合を実施し、性能を評価した。結果を表1に示す。
【0038】
【表1】

【0039】
表1の結果から、ピペラジン系化合物を重合させた共重合ポリアミド樹脂Aを配合した実施例1〜3においては、接着はく離強さが大きく、且つUV照射後においても接着はく離強さが低下する度合は20%以下と小さい。
一方、ピペラジン系化合物を共重合させなかった共重合ポリアミド樹脂Bを配合した比較例1では、接着はく離強さが格段に低下してしまい、また共重合ポリエステル樹脂を配合した比較例2では、接着はく離強さはUV照射後に約60%低下してしまい、劣化の度合が大きかった。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明の熱可塑性接着剤は、屋外防水シート等の樹脂成形体を下地に固定するための金属製固定具に適用することにより、接着性及び耐紫外線性に優れたものとして有用である。
本発明の金属製固定具は、本発明の熱可塑性接着剤からなる接着層を固定面に有するものであるので、屋外での施工に際しても、接着性が劣化せず、樹脂成形体を強固に固定することができる治具として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の金属製固定具を使用した施工例の断面図である。
【符号の説明】
【0042】
1 下地
2 アンカーボルト
3 金属製固定具
4 プライマー
5 熱可塑性接着剤
6 防水シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋外にて施工される樹脂成形体と該樹脂成形体用金属製固定具とを接着する共重合ポリアミド系熱可塑性接着剤であり、前記共重合ポリアミド系熱可塑性接着剤における主要なポリアミン成分が下記一般式で表される化合物であることを特徴とする共重合ポリアミド系熱可塑性接着剤。
【化1】


(上式において、Rは水素又は炭素数1〜4のアルキル基であり、4個のRは互いに同じであっても異なっていても良く、Zは水素又はNH2R'であり、R'は炭素数1〜4のアルキレン基である。)
【請求項2】
屋外にて施工される樹脂成形体を固定するための金属製固定具であり、前記樹脂成形体を固定する面に、請求項1記載の共重合ポリアミド系熱可塑性接着剤からなる接着層が形成されていることを特徴とする金属製固定具。
【請求項3】
金属がステンレス鋼板、亜鉛メッキ鋼板または鉄のうちの1種であることを特徴とする請求項2に記載の金属製固定具。
【請求項4】
樹脂成形体を固定する面にプライマー層を介して接着層が形成されていることを特徴とする請求項2または請求項3記載の金属製固定具。









【図1】
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【公開番号】特開2006−57026(P2006−57026A)
【公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−241717(P2004−241717)
【出願日】平成16年8月20日(2004.8.20)
【出願人】(000003034)東亞合成株式会社 (548)
【出願人】(000230869)日本金属株式会社 (29)
【Fターム(参考)】