説明

熱可塑性樹脂の押出方法

【課題】良好な表面品質を有する押出物をもたらす熱可塑性樹脂組成物の加工方法を提供すること。
【解決手段】(A)100重量部の熱可塑性樹脂;(B)0.01〜1重量部の数平均分子量が少なくとも10,000であるヒドロキシ官能性ジオルガノポリシロキサン;及び(C)0.001〜1重量部の有機燐化合物を含む熱可塑性樹脂組成物をニッケルダイを通じて押出すことにより表面荒さの程度が低い押出物を提供する熱可塑性樹脂組成物の加工方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はプラスチック製品の形成方法に関する。より詳細には、本発明はニッケルダイを通して熱可塑性樹脂組成物を押出す方法に関する。前記樹脂はヒドロキシ官能性ジオルガノポリシロキサンと有機燐化合物の組み合わせにより改質されたものであるため、得られる押出物は当該技術分野でメルトフラクチャー又は「サメ肌」として知られている表面欠陥の程度が低い。
【背景技術】
【0002】
高分子量熱可塑性樹脂をダイから押出す場合に、ある剪断応力(すなわち、剪断速度、押出機押出量)まででのみ平滑な押出物が得られる。それを超えると、表面不整が現れ始める。曇り及び表面荒さのような当該技術分野でメルトフラクチャー又は「サメ肌」として知られている不整は、商業的用途において生産量を制限する。これらの望ましくない現象に対抗してより高い生産量を得るために、押出に先立って熱可塑性樹脂に加工助剤が通常添加される。加工助剤の主な役割のうちの1つは、曇り及びサメ肌等の表面流れ欠陥の開始を遅延、抑制又はなくすこと並びにより高い剪断応力での運転を可能にすることである。
【0003】
例えば、特定のフルオロエラストマーが、高い剪断速度及び生産量を達成できる一方で許容できる押出物を生産できるように、熱可塑性樹脂におけるメルトフラクチャー及び前述の表面欠陥の開始を遅らせることが見いだされた。そのような添加剤は、典型的には、熱可塑性樹脂の質量を基準にして約250〜3,000百万分率のレベルで使用される。そのような添加剤は、一般的に、押出に先立って、フルオロエラストマーコンセントレートとのドライブレンディングにより熱可塑性樹脂に添加される。しかしながら、それらのフッ素含有エラストマーは非常に高価であり、他のシステムが提案されている。
【0004】
好ましくはシリコーン−グリコールコポリマーと燐アジュバントの組み合わせからなる熱可塑性ポリマー用の加工助剤がLeung 等により米国特許第4,925,890号に記載されている。種々のポリオレフィン及びポリカーボネート熱可塑性樹脂用の加工助剤として実際に示されているこのシリコーン−グリコールはカルビノール末端ポリ(エチレンオキシド)グラフトを有する(すなわち、側鎖に−COH末端基が結合している)ポリジメチルシロキサンである。この特許は、それらの組成物を加工するために使用される装置の構成材料について特に認識しておらず、軟鋼及びクロムめっき押出ダイインサートが例示されている唯一の種類のものである。
【0005】
類似の押出方法が、1996年7月24日に公開されたヨーロッパ特許出願公開第0722981号(Dow Corning Corp. )に開示されている。この場合において、0.01〜1重量部のヒドロキシ官能性ジオルガノポリシロキサン(すなわち、シラノール又は−SiOH官能性ポリマー)を100重量部のポリオレフィン樹脂に添加する。その結果得られる組成物を、ほとんどサメ肌の形成を生じずに、比較的高い押出量で押出すことができる。この場合でも、ダイ構成が重要であることについては言及されておらず、実施例ではP−20合金スチール(すなわち、非ニッケル含有スチール)ダイのみが使用された。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】ヨーロッパ特許出願公開第0722981号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
我々は、ヨーロッパ特許出願公開第0722981号に記載されている種類の組成物とそれらの組成物を押出すために使用されるダイの性質との間に相互作用が存在することを見いだした。すなわち、ヨーロッパ特許出願公開第0722981号に記載の組成物は、スチールダイを通じて加工された場合に高品質の押出物を提供するが、それらのブレンドは同様な加工条件のもとでニッケル被覆ダイを通じて押出された場合にはより高い程度のメルトフラクチャーを示す。実際的な観点から、この発見はプラスチック産業にとって重要なものである。なぜなら、ニッケル被覆ダイは格別に平滑な押出物が提供されるように容易に研摩できるものであるためである。それゆえ、インフレートフィルムの生産のような重要な用途で通常使用されている。さらに、これらのダイは、耐腐蝕性であることが知られており、押出加工の間に高い程度の滑性及び剥離性を与える。驚くべきことに、ニッケルダイ表面を電解めっき法というよりもむしろ無電解めっき法により形成した場合に、前述の不都合な効果は低減する。無電解めっき法は、還元剤を含む適切な金属浴にダイを浸漬することにより実施される。無電解めっき法において、基材金属の表面は、その後の析出反応用の触媒表面を提供するものでなくてはならず、この方法は還元剤の使用によるニッケルイオンの自己触媒還元としても知られている。製造されたばかりの初めの状態では、そのような無電解ニッケルダイの表面層は典型的には約5〜7質量%の燐を含む。本発明者はいかなる機構にも特定の理論にも縛られるわけではないが、この元素がヒドロキシル官能性ジオルガノポリシロキサンとニッケル表面との相互作用をどういうわけか高め、前述の電解法の純粋なニッケル表面よりも改良された押出物が生じるものと考えられる。しかしながら、無電解ニッケルダイを通じてプラスチック組成物を押出すにつれて、押出物表面外観の劣化が観察される。この現象は恐らくはダイ表面からの燐の脱離に帰因する。明らかであるが、製品の品質のそのような変化は多くのプラスチック加工用途で許容されない。
【課題を解決するための手段】
【0008】
我々は、ポリオレフィン/ヒドロキシ官能性ジオルガノポリシロキサン組成物に関する上記の加工上の制約を、この組成物に少量の有機燐化合物を含めることにより大幅に克服した。
【0009】
以上のように、本発明は、
(A)100重量部の熱可塑性樹脂;
(B)0.01〜1重量部の数平均分子量が少なくとも10,000であるヒドロキシ官能性ジオルガノポリシロキサン;及び
(C)0.001〜1重量部の有機燐化合物;
を含む熱可塑性樹脂組成物をニッケルダイを通して押出すことを含む熱可塑性樹脂組成物の加工方法に関する。
さらに、本発明は、前記熱可塑性樹脂組成物に関する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
熱可塑性樹脂(A)は、樹脂をそのガラス転移点又は融点よりも高い温度に加熱して樹脂溶融物をニッケルダイに通すことにより常用の押出装置で加工できる任意の有機(すなわち非シリコーン)樹脂である。本発明の目的に対し、このダイ構成はスチール(例えば、前述の電解めっき又は無電解システム)及びニッケル合金のようなベース基材上にニッケルコーティングを具備することが考えられる。そのようなコーティング又は合金のニッケル含有量は少なくとも約50質量%、好ましくは少なくとも80質量%、最も好ましくは実質的に100質量%であることが考えられる。ダイ表面のニッケル含有量が約50質量%未満である場合、有機燐化合物の添加は前述の利点を与えないので、他のダイ組成を使用して高品質の押出物を得ることができる。
【0011】
前述の加工上の制約の中で、成分(A)は任意の有機重合体又は共重合体であることができる。例えば、この樹脂は、ポリオレフィン、フルオロカーボンポリマー、ビニルポリマー、スチレンポリマー、アクリルポリマー、ジエンエラストマー、熱可塑性エラストマー及びポリアセタールのような系から選ばれる付加重合体であることができる。ポリオレフィンの例は、エチレン、プロピレン、ブテン−1,4−メチルペンテン−1及びイソブチレンのホモポリマー、コポリマー及びターポリマーである。フルオロカーボンポリマーの例は、ポリテトラフルオロエチレン及びポリトリフルオロクロロエチレンである。ビニルポリマーの例はポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル、並びにそれらのコポリマー及びターポリマーである。スチレンポリマーの例は、ポリスチレン、ポリ(a−メチルスチレン)、それらのコポリマー及びターポリマー並びにそれらとアクリロニトリル、メチルメタクリレート等の他のモノマーとのコポリマー及びターポリマーである。アクリル及びメタクリルポリマーの例は、ポリアクリル酸及びポリメタクリル酸、それらのコポリマー、エステル及び塩である。ポリジエンの例は、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリクロロプレン、ポリシアノプレン及びそれらのコポリマーである。ポリアセタールの例は、ポリメチレンオキシド、ポリトリオキサン及びそれらのコポリマーである。
【0012】
代わりに、樹脂は、ポリエステル、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリスルホン及びポリウレタンのようなシステムから選ばれる縮合ポリマーであってもよい。ポリエステルの例は、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンイソフタレート及びそれらのコポリマーである。ポリアミドの例は、ポリ−e−カプロラクタム、ポリヘキサメチレンアジパミド及びポリヘキサメチレンセバカミドである。ポリカーボネートの例はビスフェノールAとジフェニルカーボネートの反応生成物であり、ポリスルホンの例はビスフェノールAのアルカリ塩とp,p’−ジクロロフェニルスルホンの反応生成物である。ポリウレタンの例としては、ヘキサメチレンジイソシアネートとテトラメチレングリコールの反応生成物及びジフェニルメタン−p,p’−ジイソシアネートとアジピン酸とブタンジオールの反応生成物が挙げられる。
【0013】
さらに、エチルセルロース、セルロースアセテート、セルロースブチレート、ヒドロキシプロピルセルロース等の熱可塑性セルロースエーテル及びエステルのようなシステムから樹脂を選択することができる。
【0014】
好ましくは、熱可塑性樹脂(A)は、オレフィンポリマー、コポリマー、ターポリマー及びそれらのブレンドから選ばれる。例えば、樹脂は、オレフィンのホモポリマーだけでなく、1種以上のオレフィン間の共重合体及び/又は1種以上のオレフィンとオレフィンと共重合可能な1種以上のモノマー約40モル%以下との共重合体から選ばれてもよい。適切なポリオレフィンの例としては、特にエチレン、プロピレン、ブテン−1、イソブチレン、ヘキセン、1,4−メチルペンテン−1、ペンテン−1、オクテン−1、ノネン−1及びデセン−1のホモポリマーが挙げられる。前記オレフィンのうちの2種以上の共重合体を成分(A)として使用してもよく、前記オレフィンのうちの2種以上を例えばビニル化合物若しくはジエン化合物と共重合させるか又はオレフィンと共重合しうる他のそのような化合物と共重合させてもよい。適切な共重合体の具体例は、エチレンをベースとするコポリマー、例えばエチレン−プロピレンコポリマー、エチレン−ブテン−1コポリマー、エチレン−ヘキセン−1コポリマー、エチレン−オクテン−1コポリマー、エチレン−ブテン−1コポリマー、及びエチレンと前述のオレフィンのうちの2種以上との共重合体である。
【0015】
成分(A)は、前述のホモポリマー又は共重合体のうちの2種以上のブレンドであってもよい。例えば、このブレンドは、前述のシステムのうちの1つと次の化合物:ポリプロピレン、高圧法低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリブテン−1、及び極性モノマー含有オレフィンコポリマー、例えば、特にエチレン/アクリル酸コポリマー、エチレン/メチルアクリレートコポリマー、エチレン/エチルアリレートコポリマー、エチレン/ビニルアセテートコポリマー、エチレン/アクリル酸/エチルアクリレートターポリマー及びエチレン/アクリル酸/ビニルアセテートターポリマーのうちの1種以上との均質混合物であることができる。
【0016】
特に好ましいポリオレフィン(A)は、低圧法の実質的に線状のエチレンホモポリマーや、エチレンと炭素原子数3〜10のα−オレフィンとの共重合体等のポリエチレン(PE)ポリマーである。そのような共重合体は当該技術分野において線状低密度ポリエチレン(LLDPE)と知られている。好ましくは、これらのシステムの密度は約0.85〜0.97g/cc、より好ましくは0.875〜0.930g/ccであり、重量平均分子量は約60,000〜約200,000である。
前記重合体及び共重合体は、当該技術分野で良く知られており、それらのさらなる説明は必要ないと考える。
【0017】
本発明のジオルガノポリシロキサン(B)は、数平均分子量(Mn )が少なくとも約10,000で好ましくは約1,000,000未満であるヒドロキシ官能性(すなわち、シラノール官能性)オイル又は高コンシステンシーのガムである。好ましくは、成分(B)のMn は約40,000〜約400,000、より好ましくは約75,000〜約400,000である。分子量が約10,000未満であると、組成物が押出中に過剰なスクリュースリップを示す傾向がある。さらに、より低い分子量では、組成物が2回押し出された場合に、押出量が著しく減少する。そのような2回の押出しは、商業的作業では往々にして必要である。例えば、誤った押出機の設定又は基本成分が省略されていたり量が不十分である等の生産上のエラーは、生じた「規格外」材料の再押出しを必然的にもたらす。同様に、フィルムインフレート作業において、平たくなったバブルの端部はトリムされ、押出機にリサイクルされる。さらに、スクラップが回収されリサイクルされる場合に再押出しが用いられる。スクラップが回収されリサイクルされるこの手順は「消費後リサイクル」として知られている。一方、分子量が約1,000,000を超える場合には、ジオルガノポリシロキサンをポリオレフィンに混合することは困難になるが、そのようなシロキサンは依然として使用されるであろう。
【0018】
すなわち、リサイクルされた材料のサメ肌とスクリュースリップと押出効率に関して良好な釣り合いをとるためには、成分(B)が、100,000〜約400,000、最も好ましくは約250,000〜約350,000のおおまかな範囲内のMn を有するガムであることが好ましい。
【0019】
成分(B)は、有機基がメチル基又はフェニル基から独立に選ばれる線状又は分枝ポリマー又はコポリマーであってよい。適切なジオルガノポリシロキサンとしては、ポリジメチルシロキサンホモポリマー、ジメチルシロキサン単位とメチルフェニルシロキサン単位から実質的になるコポリマー、ジメチルシロキサン単位とジフェニルシロキサン単位から実質的になるコポリマー、ジフェニルシロキサン単位とメチルフェニルシロキサン単位から実質的になるコポリマー、及びメチルフェニルシロキサン単位のホモポリマーが挙げられる。2種以上のそのようなポリマー又はコポリマーの混合物を成分(B)として使用してもよい。
【0020】
本発明の目的に対して、ジオルガノポリシロキサン(B)は、少なくとも1個のケイ素結合ヒドロキシル基(すなわち、≡SiOH)をその分子中に有する。1個又は複数のヒドロキシル基が、分子の末端に存在していても、鎖に沿って分布していても、末端と鎖の両方に存在していてもよい。好ましくは、ヒドロキシルは、特にジメチルヒドロキシシロキシ、ジフェニルヒドロキシシロキシ及びメチルフェニルヒドロキシシロキシ等のジオルガノヒドロキシシロキシ基の形態で分子鎖末端に存在する。ヒドロキシルが鎖に沿ってのみ存在する場合には、ジオルガノポリシロキサンの末端基は、いかなる非反応性部分であってもよく、典型的にはトリオルガノシロキシ種、例えばトリメチルシロキシである。
【0021】
ジオルガノポリシロキサン(B)が、約50モル%以下のフェニル基を含む線状ポリジメチルシロキサンであることが好ましい。最も好ましくは、ジオルガノポリシロキサン(B)はジメチルヒドロキシシロキシ末端基を有するポリジメチルシロキサンホモポリマーである。
【0022】
成分(B)は当該技術分野で良く知られており、多くのそのようなポリマー及びコポリマーは市販入手可能である。しかしながら、これらのポリマーの通常の工業的調製においては、かなりの量の低分子量環状ポリシロキサン種が形成される。本発明の目的に対し、それらの環状種は本発明の組成物及び/又は方法に望ましくない特性を概して与えるために、それらの環状種が除去(例えば、高温及び/又は減圧下でのストリッピングにより)されることが好ましい。例えば、環状種の存在が、押出物の表面品質の低下をもたらす場合、気泡及び/又は煙の発生をもたらす場合、又は押出中のスクリュースリップの量の増加をもたらす場合がある。
【0023】
成分(C)は、その分子中に少なくとも1個の燐原子を有する有機燐化合物である。この化合物に存在する有機官能基の性質は、それらの基が得られる樹脂押出物の特性又は加工性に悪影響を与えない限り、特に限定されない。従って、例えば、成分(C)は、有機ホスフェート、有機ホスファイト、有機ホスフィン又は有機ホスフィンオキシドであって、有機基が例えば1〜20個の炭素原子を有するものであることができる。さらに、(C)の有機基はこの成分の燐原子に直接結合している必要はなく、ヘテロ原子、例えばケイ素を介して結合していても良い。例えば、
【0024】
【化1】

【0025】
(式中、R’は炭素原子数1〜20のヒドロカルビル基、好ましくは炭素原子数1〜8のアルキル基又はフェニル基であり、zは1〜3である)
のような有機シリルホスフェートは本発明の組成物において有用である。有機官能基がケイ素に結合している非常に好ましい有機燐化合物は、
【0026】
【化2】

【0027】
から選ばれる式により表される有機シリルホスホネートである。
【0028】
式(i)及び(ii)において、Rは炭素原子数1〜20のヒドロカルビル基から独立に選ばれる。好ましくは、式(i)又は(ii)中のRは、炭素原子数1〜8のアルキル基又は炭素原子数2〜8のアルケニル基である。最も好ましくは、この態様におけるRは、下記実施例において例示するようにメチル又はビニル基から選ばれる。
【0029】
実際的な観点から、成分(C)の有機官能基がいかなる所与のシステムに対しても押出条件のもとで安定であるとともに、組成物を押出すのに必要とされる高温で樹脂又はヒドロキシ官能性ジオルガノポリシロキサンと反応しないことが好ましい。これは、少なくとも1つの有機官能基がその熱安定性で知られているアリールである場合に概して観察される。従って、好ましい有機燐化合物は、
【0030】
【化3】

【0031】
(式中、Rは炭素原子数1〜20、好ましくは1〜8のヒドロカルビル基から独立に選ばれる)
からなる群から選ばれる式により表される。式(iii)及び(iv)において、R”は、アリール又は置換アリール基であり、xは0〜3の整数である。好ましくは、R”はフェニルであるか又は1個以上のC1 〜C20アルキル基で置換されたフェニルであり、xは0である。式(iii)に従う好ましい化合物としては、トリフェニルホスフェート、tert−ブチルフェニルジフェニルホスフェート及びトリフェニルホスフィンオキシドが挙げられる。式(iv)に従う好ましい化合物としては、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、トリスノニルフェニルホスファイト及びトリフェニルホスフィンが挙げられる。
【0032】
もう1つの非常に好ましい成分(C)は式:
【0033】
【化4】

【0034】
(式中、R”は独立に選ばれるものであって、先に定義した意味を有し、好ましくはR”は式(v)においてフェニル基である)
により表される。この式中、nの平均値は1〜3であり、好ましくは1である。
【0035】
本発明の方法において使用される組成物は、約0.01〜1重量部(100〜10,000ppm)のジオルガノポリシロキサン(B)を100重量部のポリオレフィン(A)に完全に分散させることにより調製される。各100重量部の成分(A)に対して約0.02〜0.5重量部(200〜5,000ppm)の成分(B)を使用することが好ましい。100重量部の(A)当たり約0.03〜0.2重量部の(B)を使用することがより好ましく、約0.04〜0.2重量部を使用することが最も好ましい。100重量部の(A)当たり約0.01重量部未満のレベルでジオルガノポリシロキサンが添加される場合、対応する未変性ポリオレフィンに対する表面品質(すなわち、サメ肌)の観点でほとんど改良は得られない。同様に、100重量部の(A)当たり約1重量部よりも多い量の(B)が添加される場合でも、押出物の表面品質は劣化し始める。従って、前述の好ましい組成範囲は、良好な表面品質(すなわちサメ肌がほとんどない)、透明性、平滑性、シール性、彩色適性及び光沢について望ましい釣り合いのとれた押出材がもたらされるとともに、加工中、特に高押出量での低スクリュースリップがもたらされる。
【0036】
有機燐化合物は、ニッケルダイを通じて加工される場合に、この重要な成分を含まない対応する押出物よりも押出物の品質を改良するのに十分な量で添加される。この量は概して、各組成物をニッケルダイ又はニッケル被覆ダイを通じて押出し、続いて押出物の評価を行うことによる常套的実験作業から求められる。押出物表面の定量的評価は、以下で示すように表面荒さの測定により行うことができる。しかしながら、典型的には、この評価は、存在するサメ肌及び/又は透明性の量及び程度について押出物又はフィルムの視覚的比較を伴う定性的側面を有するものである。本発明の目的に対し、前述のような合金効果 (alloy effects)をなくすために純粋なニッケルダイ又は電解めっきニッケルダイを使用することが好ましい。得られる組成物のバルクな物理的特性を低下させずに押出物表面の前記改良を得るのに必要な最少量の(C)が使用されることが好ましい。このバルクな物理的特性の低下は概して100重量部の(A)当たり(C)が約1重量部よりも多い量で添加される場合に生じる。典型的には、成分(C)は各100重量部の成分(A)に対して約0.001〜約1重量部、好ましくは約0.01〜0.5重量部のレベルで添加され、最適な範囲は常套的実験作業により所与のシステムに対して容易に求められる。
【0037】
樹脂(A)へのジオルガノポリシロキサン(B)及び有機燐化合物(C)の分散は、高温で熱可塑性樹脂に添加剤を混合するための慣用的手段のいずれによっても行うことができる。例えば、2つの成分を、ミキシングヘッドを具備する又は具備しない2軸スクリュー押出機、バンバリーミキサー、2本ロール機又は単軸スクリュー押出機内でブレンドしてもよい。すなわち、これらの成分を混合するために使用される装置は、(A)への(B)の均一な分散が達成される限り、特に限定されない。分散される粒子の粒径が約10マイクロメートル以下であることが好ましい。
【0038】
上記成分に加えて、本発明の組成物は、充填剤、硬化剤、滑剤、紫外線安定剤、酸化防止剤、アンチブロッキング剤、触媒安定剤及び樹脂の改質に通常使用される他の加工助剤の各々を約1重量%まで含んでいても良い。これらの添加剤のうちのいずれかを約1重量%よりも多く使用すると、本発明の加工助剤に影響を及ぼして上記の加工上の利点及び/又は得られる押出材の特性が得られなくなる。これは、良好な表面品質が極めて重要であるインフレートフィルム生産の場合に特に重要である。
【0039】
上記添加剤の具体的かつ非限定的な例として、次の物質が挙げられる:珪藻土、オクタデシル−3−(3,5−ジ−5−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ビス(2−ヒドロキシエチル)タローアミン、ステアリン酸カルシウム、2,4,6−トリクロロ−1,3,5−トリザイン及び2,4,6−トリクロロ−1,3,5−トリザイン及び2,4,4−トリメチル−1,2−ペンタンアミンを含むN,N−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)−1,6−ヘキサンジアミンポリマー、2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジンエタノール,2,2−チオビス)4−tert−オクチルフェノラト−n−ブチルアミンニッケルを含むコハク酸ジメチルポリマー、ポリエチレングリコール、エルカミド、二酸化チタン、二酸化チタン、アルミナ、水和アルミナ、タルク、2−ヒドロキシ−4−n−オクチルオキシ−ベンゾフェノン、酸化亜鉛、硫化亜鉛及びステアリン酸亜鉛が挙げられる。
【0040】
本発明の方法によると、上記ジオルガノポリシロキサン(B)及び有機燐化合物(C)は樹脂(A)に添加され、その樹脂をニッケルダイを通じて高温で押出して成形品(例えば、環状断面、例えばフィルム、リボン、棒、環、繊維、シート等)を形成する場合に、樹脂に対して加工助剤として作用する。ヨーロッパ特許出願公開第0722981号に教示されているように、得られる押出物は、添加剤としてジオルガノポリシロキサン(B)のみを含む同様な押出物と比較して改良された表面(例えば、サメ肌が少ない、改良された均質性及び透明性)を有する。この方法は、キャストフィルムの製造(フィルムキャスト成形)又はインフレートフィルムの製造(フィルムインフレート成形)に特に有用であるが、押出吹込成形;射出成形;管材、線材又はケーブルの押出;繊維の製造;及びポリオレフィン樹脂の任意の類似する高剪断溶融加工においても有用である。これらの技術の全てが当該技術分野で良く知られている。簡単に説明すると、インフレートフィルムは典型的には「バブル(bubble)」法により製造される。このバブル法において、ポリオレフィン組成物(すなわち、メルト)は環状ダイを通じて押出されてバブル形状のフィルムを形成する。バブル内を正の空気圧に保ちながら、このバブルは押出速度よりも高い速度でダイから引き出される。この手法で製造されるフィルムは、半径方向及び軸方向で延伸される結果として二軸延伸されたものであり、一般的にこの二軸延伸はフィルムに改良された機械的特性を付与する。キャストフィルムは一般的に、樹脂、典型的にはポリオレフィンをスロットダイを通じて押出し、続いて1つ以上の冷却ロール上で冷却することにより製造される。
【0041】
押出機のホッパーを通じてポリオレフィンペレットを供給しながら、押出機のスクリュー部分に沿って成分(B)及び(C)を射出することにより比較的均質な分散体が得られるが、まず、これらの成分を成分(A)の一部に完全に分散させてマスターバッチを形成することが好ましい。好ましくは約1〜50質量%、より好ましくは2.5〜25質量%のジオルガノポリシロキサンと同様な質量%の有機燐化合物を含むこのマスターバッチ(又はコンセントレート)を粉砕又はペレット化し、得られた粒状物を追加の樹脂(マトリックス)とドライブレンドし、次にこのブレンドを押出して本発明の組成物を形成してもよい。このマスターバッチ法の使用により、樹脂マトリックスへのジオルガノポリシロキサン及び有機燐化合物のより均質な分散がもたらされる。マスターバッチの調製に使用される樹脂は、マトリックスのポリオレフィン樹脂と同じであっても異なっていても良い。これらの2つの樹脂が同じ一般タイプに属するものであること(例えば、マスターバッチ中のポリエチレンがマトリックスと同じであること)が好ましい。
【実施例】
【0042】
以下の実施例により本発明の組成物及び方法をさらに例示するが、特許請求の範囲に規定される本発明を限定するものと解釈されるべきではない。特に断らない限り、全ての部及び百分率は質量を基準にしたものであり、全ての測定値は約25℃で得られたものである。
【0043】
材料
実施例において以下の材料を使用した。
LDPE1=密度0.923g/ccの低密度ポリエチレン、the Dow Chemical Co.によりDOW (商標)GP-LDPE 5004IMとして販売。
LDPE2=20%の珪藻土が充填された密度0.919g/ccの低密度ポリエチレン、A. Schulman, Inc. によりASI F20 として販売。
LLDPE1=線状低密度ポリエチレン;エチレンのオクテン系コポリマーであって、密度0.917g/ccを有するもの、the Dow Chemical Co.[ミシガン州ミッドランド(Midland )所在]により商品名DOWLEX(商標)2047A (ロット番号1155943 )で販売。
LLDPE2=線状低密度ポリエチレン;エチレンのオクテン系コポリマー、the Dow Chemical Co.[テキサス州フリーポート(Freeport)所在]により商品名DOWLEX(商標)2035で販売。
LLDPE3=線状低密度ポリエチレン;エチレンのヘキセン系コポリマーであって、0.918g/ccの密度を有するもの、Novacor Chemical Ltd. [カナダ国カルガリー(Calgary )所在]により商品名NOVAPOL (商標)TF-0119-F で販売。
【0044】
OP1=有機燐化合物、Monsanto[ミズーリー州セントルイス(St. Louis )所在]により販売されているSanticizer(商標)154 、t−ブチルフェニルジフェニルホスフェートと表される。
OP2=有機燐化合物、Ciba Geigy Corp.[ニューヨーク州ホーソン(Hawthorne )所在]により販売されているIrgafos (商標)168 、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイトと表される。
OP3=有機燐化合物、Monsantoにより販売されているSanticizer(商標)143 、トリアリールホスフェートエステルと表される。
OP4=有機燐化合物、Witco [コネチカット州グレニッチ(Greenwich )所在]により販売されているMark(商標)11788 、トリスノニルフェニルホスファイトと表される。
OP5=Aldrich Chemical Co.[ワイオミング州ミルウォーキー(Milwaukee )所在]から入手したトリスノニルフェニルホスファイト。
OP6=有機燐化合物、Witco により販売されているMark(商標)5082、約95%のトリスノニルフェニルホスファイトを含むトリアリールホスファイト組成物と表される。
OP7=有機燐化合物、Akzo Nobel[コネチカット州ドブスフェリー(Dobbs Ferry )所在]により販売されているFyrolflex (商標)RDP 、
【0045】
【化5】

【0046】
(式中、Phはフェニル基を表し、nは1である)
の構造を有するレゾルシノールビス(ジフェニルホスフェート)と表される。
OP8=下記のおおよその割合で下記構造式で表されるものから実質的になるシリルホスホネート混合物:
【0047】
【化6】

【0048】
(式中、Me及びViはそれぞれメチル基及びビニル基を表し、以下同様とする)。
PDMS1=GPCによる数平均分子量が約265,000である線状ジメチルヒドロキシシロキシ末端ポリジメチルシロキサンガム。
PDMS2=GPCによる数平均分子量が52,950であり、1モル%(M%)の末端単位がトリメチルシロキシであり、99モル%の末端単位がジメチルヒドロキシシロキシである線状ポリジメチルシロキサンオイル。
【0049】
マスターバッチMB1
75%のLDPE1と25%のPDMS1からなるマスターバッチを、リヤ直径1.225インチ、フロント直径0.775インチ及び長さ約13インチの2本の異方向回転型強混合スクリューを具備するTW 100押出機を備えたHaake Rheocord(商標)90システム二軸スクリュー押出機[ニュージャージ州パラマス(Paramus )所在Haake ]内でそれらの成分を高温で完全に混合することにより調製した。押出機の4つのゾーンの温度を170℃、185℃、185℃及び185℃にそれぞれ設定した。このマスターバッチ組成物(MB1)をストランドダイを通じて押出し、そして冷却の際にペレットに切断した。
【0050】
マスターバッチPA1
同様にして、45.02gのポリエチレンを、60rpmのブレード速度を使用し、140℃のHaake Rheocord(商標)9000(シグマブレード)ミキサーに加え、10分後に15.09gのOP5を20分間にわたって加えることにより25%のOP5及び75%のLDPE1からなるマスターバッチを調製した。
【0051】
実施例1
MB1及びPA1をLLDPE1中に均一に分散させることにより本発明のポリエチレン樹脂組成物を調製した。この作業において、16gのMB1ペレット及び48gのPA1を20lbs.(9,072g)のLLDPE1ペレットに加え、その組み合わせたものを振盪して、プレミックの全質量を基準にして約440百万分率(ppm)のPDMS1及び1320ppmのOP5を含むプレミックスを得た。
【0052】
次に、上記プレミックスを2つの押出速度(20及び40回転毎分(RPM))で押出した。使用した押出機は、リボンダイ(0.04インチ×1.0インチ=1.02mm×25.4mm)、直径2インチ(50.8mm)のスクリュー(圧縮比3:1)を具備し、長さ対直径比が24/1であるDavis-Standard DS-20単軸スクリュー押出機であった。押出機のゾーン1、2及び3をそれぞれ340°F(171℃)、365°F(185℃)及び365°F(185℃)に設定し、一方、フランジ及びダイ温度を350°F(177℃)に設定した。リボンダイは、呼称ニッケルコーティング厚みが0.0002〜0.0004インチとなるように光沢塩化ニッケルめっき法を使用してニッケルを電解めっきした1018軟鋼から製造されたものであった。
【0053】
表面荒さの評価のために、押出されたリボンの試料を2つの押出速度で得た。20RPMの押出速度で、長さ20フィートのリボン試料を作製し、20個の1フィートの断片に切断した。各1フィートの断片について表面荒さの測定を行い、平均表面荒さを求めた。このプロセスを押出速度40RPMで繰り返した。平均表面荒さの値Ra (マイクロcm単位)を表1に報告する。
【0054】
Mitutoyo Surftest 402 表面荒さ試験機により表面荒さを求めた。簡単に述べると、この試験は、押出された試料の上面(長手方向又は押出方向)で、可変抵抗変換器に接続されたダイヤモンドを先端に付けた針を引きずることからなっていた。各ストロークは長さが約3mmであり、不整の平均高さを得た。
【0055】
実施例2
実施例1の一般手順に従って、MB1及びOP2をLLDPE1に分散させ、その結果、プレミックスの全質量を基準にしてプレミックスにおいてPDMS1が約440百万分率(ppm)及びOP2が約10031ppmの量となった。このプレミックスを押出して、上記のように評価した。その結果を表1に示す。
【0056】
例(比較例)3〜5
未使用のLLDPE1のみを使用した未変性ポリエチレン対照物を押出し、実施例1〜2におけるように表面荒さについて評価した。それらの結果も表1に示す(例3)。
【0057】
同様に、PDMS1量が約440ppmとなるようにLLDPE1中MB1のみの分散体からなる組成物を調製し、試験した(例4)。さらに、OP2量が約1320ppmとなるようにLLDPE1中OP2のみの分散体からなる組成物を調製し、試験した(例5)。これらの組成物の表面荒さの値も表1に示す。
【0058】
【表1】

【0059】
表1から、線状低密度ポリエチレンへの有機燐化合物のみの添加(例5)又はヒドロキシ官能性ポリジメチルシロキサンのみの添加(例4)が、ニッケルめっきされたダイを通じて押し出された場合に、表面荒さ特性をあまり改良しないことがわかる。これに対し、シリコーン及び有機燐化合物の両方による本発明に従う変性は、表面荒さの劇的な減少をもたらした(実施例1及び2)。しかしながら、実施例2の組成物から製造されるフィルムの表面は粘着性であり、粉末状の残留物を有していたことが観察された。このことは、この系においてOP2量がより少ないことが好ましいことを示唆するものである。
【0060】
実施例6
表2の第1欄に示されているOP5の量となり、PDMS1の量が440ppmに保たれるように、PA1の量を変えて、実施例1の手順を繰り返した。表2に示されているように、押出及び得られたフィルムの評価から、有機燐化合物含有量を増加させるにつれて、表面荒さの初期減少が示された。この効果は33ppm〜55ppmの量のOP5でかなり顕著になった。
【0061】
【表2】

【0062】
実施例7〜13
L/D比40:1及びスクリュー直径18mmのスクリューを有するLeistritz 同方向回転型二軸スクリュー押出機を使用して220℃(全てのゾーン)で上記の方法と同様な方法により以下のマスターバッチを調製した。ブレンドを、その後、ペレット化した。
MB2=95重量部のLLDPE2中に5重量部のPDMS1が分散されたもの。
MB3=95重量部のLLDPE2中に5重量部のPDMS2が分散されたもの。
MB4(MB4a〜MB4g)=95重量部のLLDPE2中に表3に示されている各有機燐化合物が5重量部分散されたもの。
これらのマスターバッチを、表3に示されているように、PDMS1が500ppm、PDMS2が500ppm、各有機燐化合物が1000ppmとなるように、LLDPE3中に分散させた。
【0063】
次に、上記組成物の各々を以下の装置構成を使用してインフレートフィルムに加工した:
Killion インフレートフィルム押出機;スクリュー直径1インチ(25.4mm);L/D=24:1;Maddok混練ヘッド付きスクリュー;スクリュー先端にブレーカープレートあり、スクリーンパックなし;製造から約1年経過した無電解ニッケルダイ;内部マンドレルインサートのランド長0.150インチ(3.81mm);外側リップのランド長0.50インチ(12.7mm);ダイギャップ0.015インチ(0.38mm)。
【0064】
押出パラメータ:
バレル温度:ゾーン1=355°F(179℃);ゾーン2=370°F(188℃);ゾーン3=375°F(191℃);アダプター=370°F(180℃);ダイ1=365°F(185℃);ダイ2=365°F(185℃)。トップニップ引取速度=18.0fpm(5.49m/分);ブロアー(エアリング)=40%;スクリュー速度=40RPM;インフレートフィルム厚=1〜2ミル(0.025〜0.051mm)。
【0065】
各フィルムの吹込操作前に、押出機をLDPE2でパージしてバレル及びスクリューを磨き上げた(清浄にした)。これに続き、各場合に、次の配合物を加工して試料を採取する前に、メルトフラクチャーの激しさがもとの対照材料と同じであるように未使用のLLDPE3に移行した。次に、各配合物を加工する前に、押出機を各マスターバッチで状態調節(充満)し、表3に示すように押出機及びダイをシリコーン及び燐添加剤でコーティングした。最後に、各配合物を30分間を要して押出し、代表的なインフレートフィルム試料を採取した。
【0066】
配合物についてなんの知識ももたない3人の人間によりフィルムの品質が求められた(すなわちブラインド実験)。メルトフラクチャーの程度を評価するのにそれぞれ2つの異なる手法を使用した。第1の組において、明光バックグラウンドを使用して代表的フィルム試料を見て、記録されたメルトフラクチャーを視覚的に評価した。第2の組において、コントラストを強める黒色バーが印刷された平らなバックグラウンド上に載せられた代表的フィルム試料の写真から、メルトフラクチャーの程度について評価した。上記評価の結果を、下記スキームに従って編集した:
1=メルトフラクチャーが非常に目立つ(未変性樹脂対照と実質的に同じ)
2=対照樹脂よりもメルトフラクチャーが幾分改良された
3=メルトフラクチャーが実質的になく、対照樹脂と較べてかなり改良された。上記の等級を各評価形態ごとに3人の試験者について合計し、6〜18の累積等級(cumulative ranking)とした。例えば、最もメルトフラクチャーが顕著であった試料は累積等級が3人×(1+1)=6であり、最も少ないメルトフラクチャーを有する試料は累積等級が3人×(3+3)=18であった。これらの累積等級は表3〜5に記載されている。
【0067】
例(比較例)14〜15
実施例7〜13の押出手順に従って、未使用のLLDPE3からインフレートフィルムを調製した(例14)。未使用のLLDPE3は、これらの組成物の対照として役立った。さらに、有機燐化合物を含まない比較のための系(例15)として、LLDPE3中の500ppmのPDMS1及び500ppmのPDMS2(各マスターバッチから)の分散体を調製した。
【0068】
例7〜15についてのインフレートフィルムの実験結果を表3にまとめた。この表には、各実験の間に使用したダイ圧力、剪断速度及び押出機モーター電流使用量も記録されている。この表から、本発明の組成物が対照樹脂(例14)及び概してシリコーンガムのみを含む系(例15)よりも欠陥の少ないフィルムを提供したことが分かる。幾つかの場合(実施例12及び13)で、フィルムの品質は非常に優れていた。さらに、実施例1、2及び6の結果から示唆されるように、未変性樹脂及びシリコーンガムのみによって変性された樹脂に対してかなり大幅に改良され、ダイ表面は無電解ニッケルコーティング法に起因して残留燐(すなわち、ダイが電解法によりめっきされたならば存在していたであろう又はダイが長時間使用されたならば生じたであろう残留燐)を含んでいなかった。
【0069】
【表3】

【0070】
例(比較例)16〜17
未使用のLLPDE3のみを使用して例7〜15の手順に従ってクロムめっきが施されたダイを通じて対照試料を押出した(例16)。さらに、シリコーン源としてMB5(MB5=75%のLDPE1中25%のPDMS1の分散体)を使用し、LLDPE3中522ppmのPDMS1だけの分散体を調製した(例17)。これを、クロムめっきが施されたダイを通じて押出し、そして表4に記載されているようにインフレートフィルムを評価した。
【0071】
【表4】

【0072】
表4から、PDMS1を樹脂に含めることによりメルトフラクチャーが実質的になくなることが分かる。従って、ダイ表面がクロムであった場合に有機燐化合物は必要でなかった。
【0073】
例(比較例)18〜19
ダイギャップが0.030インチ(0.762mm)の303型ステンレススチールダイを使用して例(比較例)16及び17の手順を繰り返した。
【0074】
【表5】

【0075】
またしても、ダイをステンレススチールから作製した場合に、実質的にメルトフラクチャーのないインフレートフィルムを得るのに有機燐化合物を含める必要はなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)100重量部の熱可塑性樹脂;
(B)0.01〜1重量部の数平均分子量が少なくとも10,000であるヒドロキシ官能性ジオルガノポリシロキサン;及び
(C)0.001〜1重量部の有機燐化合物;
を含む熱可塑性樹脂組成物をニッケルダイを通して押出すことを含む熱可塑性樹脂組成物の加工方法。
【請求項2】
前記熱可塑性樹脂がオレフィンポリマー、オレフィンコポリマー、オレフィンターポリマー及びそれらのブレンドからなる群から選ばれる請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記ジオルガノポリシロキサンが線状ヒドロキシ末端ポリジメチルシロキサンである請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記有機燐化合物が、
【化1】

(式中、R”はフェニル基及びヒドロカルビル置換フェニル基からなる群から独立に選ばれ、Rは炭素原子数1〜20のヒドロカルビル基から独立に選ばれ、xは1〜3の整数である)
からなる群から選ばれる式により表される請求項3記載の方法。
【請求項5】
前記有機燐化合物がトリフェニルホスフェート、tert−ブチルフェニルジフェニルホスフェート、トリフェニルホスフィンオキシド、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、トリスノニルフェニルホスファイト及びトリフェニルホスフィンからなる群から選ばれる請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記有機燐化合物が、
【化2】

(式中、Rは炭素原子数1〜20のヒドロカルビル基から独立に選ばれ、R’は炭素原子数1〜20のヒドロカルビル基であり、zは1〜3の整数である)
からなる群から選ばれる式により表される請求項3記載の方法。
【請求項7】
前記有機燐化合物がモノ(ジメチルビニルシリル)ビニルホスホネート、ビス(ジメチルビニルシリル)ビニルホスホネート及びそれらの混合物からなる群から選ばれる請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記有機燐化合物が式:
【化3】

(式中、R”はフェニル基及びヒドロカルビル置換フェニル基からなる群から独立に選ばれ、nは平均値が1〜3の値である)
により表される請求項3記載の方法。
【請求項9】
前記有機燐化合物が式:
【化4】

(式中、Phはフェニル基を表し、nは1である)
により表される請求項8記載の方法。
【請求項10】
前記ダイが電解被覆ニッケル及び無電解被覆ニッケルからなる群から選ばれる表面を有する請求項2記載の方法。
【請求項11】
(A)100重量部の熱可塑性樹脂;
(B)0.01〜1重量部の数平均分子量が少なくとも10,000であるヒドロキシ官能性ジオルガノポリシロキサン;及び
(C)0.001〜1重量部の有機燐化合物;
を含む組成物。
【請求項12】
前記熱可塑性樹脂がオレフィンポリマー、オレフィンコポリマー、オレフィンターポリマー及びそれらのブレンドからなる群から選ばれる請求項11記載の組成物。
【請求項13】
前記ジオルガノポリシロキサンが線状ヒドロキシ末端ポリジメチルシロキサンである請求項12記載の組成物。
【請求項14】
前記有機燐化合物が、
【化5】

(式中、R”はフェニル基及びヒドロカルビル置換フェニル基からなる群から独立に選ばれ、Rは炭素原子数1〜20のヒドロカルビル基から独立に選ばれ、xは1〜3の整数である)
からなる群から選ばれる式により表される請求項13記載の組成物。
【請求項15】
前記有機燐化合物がトリフェニルホスフェート、tert−ブチルフェニルジフェニルホスフェート、トリフェニルホスフィンオキシド、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、トリスノニルフェニルホスファイト及びトリフェニルホスフィンからなる群から選ばれる請求項14記載の組成物。
【請求項16】
前記有機燐化合物が、
【化6】

(式中、Rは炭素原子数1〜20のヒドロカルビル基から独立に選ばれ、R’は炭素原子数1〜20のヒドロカルビル基であり、zは1〜3の整数である)
からなる群から選ばれる式により表される請求項13記載の組成物。
【請求項17】
前記有機燐化合物がモノ(ジメチルビニルシリル)ビニルホスホネート、ビス(ジメチルビニルシリル)ビニルホスホネート及びそれらの混合物からなる群から選ばれる請求項16記載の組成物。
【請求項18】
前記有機燐化合物が式:
【化7】

(式中、R”はフェニル基及びヒドロカルビル置換フェニル基からなる群から独立に選ばれ、xは平均値が1〜3の値である)
により表される請求項13記載の組成物。
【請求項19】
前記有機燐化合物が式:
【化8】

(式中、Phはフェニル基を表し、nは1である)
により表される請求項18記載の組成物。

【公開番号】特開2010−89515(P2010−89515A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−2832(P2010−2832)
【出願日】平成22年1月8日(2010.1.8)
【分割の表示】特願2000−525489(P2000−525489)の分割
【原出願日】平成10年12月17日(1998.12.17)
【出願人】(590001418)ダウ コ−ニング コ−ポレ−ション (166)
【氏名又は名称原語表記】DOW CORNING CORPORATION
【Fターム(参考)】