説明

熱可塑性樹脂組成物および積層成形体

【課題】軟質性および層間接着性に優れる熱可塑性樹脂組成物および該熱可塑性樹脂組成物を含む層を有する積層成形体を提供すること。
【解決手段】α,β−不飽和カルボン酸エステルおよびビニルエステルよりなる群から選ばれた少なくとも一種の化合物並びにエチレンおよびα−オレフィンよりなる群から選ばれた少なくとも一種の化合物の共重合体(A)65〜90重量%と、エチレン−α−オレフィン共重合体(B)9〜34重量%と、石油樹脂(C)1〜20重量%とを含有することを特徴とする熱可塑性樹脂組成物(ただし、(A)、(B)および(C)の総量を100重量%とする。)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は熱可塑性樹脂組成物および積層成形体に関するものである。さらに詳細には、熱可塑性樹脂組成物および該熱可塑性樹脂組成物を含有する層を有する積層成形体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリカーボネート系樹脂、アクリロニトリル−スチレン(AS)系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂等の高剛性の熱可塑性樹脂は、自動車の内外装材、家電製品、OA機器、住宅建材、日用品、文具品、スポーツ用品などに幅広く使用されている。
【0003】
近年、前記の高剛性の熱可塑性樹脂からなる成形品の表面に柔軟性やグリップ性を付与することが要望されている。例えば、グリップ部分にはソフトな感触や外観などが求められ、オレフィン系熱可塑性エラストマー等が積層されたポリカーボネート系樹脂やポリプロピレン樹脂等の高剛性の熱可塑性樹脂が用いられている。
【0004】
例えば、特許文献1には、樹脂に対する熱融着性を向上させるために、エチレンと(メタ)アクリレートとの共重合体に、エチレン−α−オレフィン共重合体および/または水添ブロック共重合体(ビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロックと共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックからなるブロック共重合体を水素添加した水添ブロック共重合体)が配合されたオレフィン系エラストマーを用いることが記載されている。
【0005】
また、特許文献2には、硬質(極性)支持体に対してより強力に接着させるために、少なくとも2つの重合モノビニル芳香族化合物からなる樹脂末端ブロックと重合共役ジエンからなるエラストマー中央ブロックを有する水素化されたエラストマーブロックコポリマー、可塑剤、オレフィン−アクリレートポリマーおよびポリオレフィンを含む熱可塑性エラストマー組成物を用いることが記載されている。
【0006】
さらに、特許文献3には、極性値の高い熱可塑性樹脂に積層し熱接着させるために、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体ゴム(EPDM)およびポリプロピレンを150〜230℃で混練し、次いで、架橋剤(有機化酸化物)および架橋助剤を添加して混練して製造されるJIS−A硬度が50〜95度のオレフィン系熱可塑性エラストマーに、特定のモノマーとしてメチルメタクリレートを含むエチレン系共重合体を添加して混練し製造される熱接着性熱可塑性エラストマーを用いることが記載されている。
【0007】
【特許文献1】特許第2801134号公報
【特許文献2】特開平10−130453号公報
【特許文献3】特開平11−80448号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、上記の公報等に記載されている熱接着性熱可塑性エラストマーを含有する層を、ポリカーボネート系、アクリロニトリル−スチレン(AS)系、ポリオレフィン系、ポリアミド系樹脂等の高剛性の熱可塑性樹脂を含有する層とからなる積層成形体に用いた場合、軟質性および層間接着性は、必ずしも充分ではないことがあり、熱可塑性エラストマーを含有する層と、高剛性の熱可塑性樹脂を含有する層とからなる積層成形体の軟質性および層間接着性については、さらなる改良が求められていた。
【0009】
かかる状況の下、本発明の目的は、軟質性および層間接着性に優れる熱可塑性樹脂組成物および該熱可塑性樹脂組成物を含む層を有する積層成形体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者等は、鋭意検討の結果、以下の<1>および<2>に記載の手段により上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は、
<1> α,β−不飽和カルボン酸エステルおよびビニルエステルよりなる群から選ばれた少なくとも一種の化合物並びにエチレンおよびα−オレフィンよりなる群から選ばれた少なくとも一種の化合物の共重合体(A)65〜90重量%と、エチレン−α−オレフィン共重合体(B)9〜34重量%と、石油樹脂(C)1〜20重量%とを含有することを特徴とする熱可塑性樹脂組成物(ただし、(A)、(B)および(C)の総量を100重量%とする。)、
<2> ポリカーボネート系樹脂を含有する層と、<1>に記載の熱可塑性樹脂組成物を含有する層とを有することを特徴とする積層成形体。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、軟質性および層間接着性に優れる熱可塑性樹脂組成物および該熱可塑性樹脂組成物を含む層を有する積層成形体を提供することができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、α,β−不飽和カルボン酸エステルおよびビニルエステルよりなる群から選ばれた少なくとも一種の化合物並びにエチレンおよびα−オレフィンよりなる群から選ばれた少なくとも一種の化合物との共重合体(A)65〜90重量%と、エチレン−α−オレフィン共重合体(B)9〜34重量%と、石油樹脂(C)1〜20重量%とを含有することを特徴とする(ただし、(A)、(B)および(C)の総量を100重量%とする。)。
【0013】
本発明で用いられる共重合体(A)(以下、成分(A)ともいう。)は、α,β−不飽和カルボン酸エステルおよびビニルエステルよりなる群から選ばれた少なくとも一種の化合物並びにエチレンおよびα−オレフィンよりなる群から選ばれた少なくとも一種の化合物との共重合体である。即ち、下記の(a−1)と(a−2)を重合して得られるオレフィン共重合体である。
(a−1)エチレンおよびα−オレフィンよりなる群から選ばれた少なくとも一種の化合物
(a−2)α、β−不飽和カルボン酸エステルおよびビニルエステルよりなる群から選ばれた少なくとも一種の化合物
【0014】
成分(A)に用いられるα−オレフィンとしては、例えば、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、ビニルシクロヘキサン、スチレン等が挙げられる。(a−1)として、好ましくはエチレンである。
【0015】
成分(A)で用いられる化合物(a−2)のうち、α、β−不飽和カルボン酸エステルとしては、炭素数が3〜8のアルキル基を有するα、β−不飽和カルボン酸アルキルエステルが挙げられ、具体例としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸−n−プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸−n−ブチル、アクリル酸−tert−ブチル、アクリル酸イソブチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸−n−プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸−n−ブチル、メタクリル酸−tert−ブチル、メタクリル酸イソブチル等が挙げられる。
【0016】
また、成分(A)に用いられる化合物(a−2)のうち、ビニルエステルとしては、炭素数2〜8のカルボン酸から誘導されるビニルエステル等が挙げられ、具体例としては、酢酸ビニル、酪酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル等が挙げられる。
成分(A)に用いられる化合物(a−2)として、好ましくは、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、メタクリル酸メチルが例示できる。
【0017】
本発明で用いられるオレフィン共重合体(成分(A))に含有される化合物(a−1)に由来するモノマー単位の含有量は85重量%以下であることが好ましく、化合物(a−2)に由来するモノマー単位の含有量は15重量%以上であることが好ましい。ただし、共重合体(A)(成分(A))の全重量を100重量%とする。
化合物(a−1)に由来する構造単位の含有量が85重量%以下の場合(すなわち化合物(a−2)に由来する構造単位の含有量の全量が15重量%以上の場合)、良好な軟質性が得られると共に、ポリカーボネート系樹脂、AS系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂等との接着性が良好であるので好ましい。
化合物(a−1)に由来するモノマー単位の含有量として、より好ましくは50重量%以上80重量%以下であり、化合物(a−2)に由来するモノマー単位の含有量として、より好ましくは20重量%以上50重量%以下である。
【0018】
本発明で用いられるエチレン−α−オレフィン共重合体(以下、成分(B)ともいう。)について詳述する。
成分(B)は、エチレンに由来するモノマー単位(b−1)および炭素数が3以上のα−オレフィン単位に由来するモノマー単位(b−2)からなる。炭素数が3以上のα−オレフィンに由来するモノマー単位(b−2)としては、例えば、プロピレン、1−ブテン、2−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−オクタデセンなどのα−オレフィンから誘導されるモノマー単位が挙げられる。これらの中でも、炭素数が3以上12以下のα−オレフィンに由来するモノマー単位であることが好ましい。これらのモノマー単位は、単独で含有されていても良く、2種以上が含有されていても良い。
【0019】
成分(B)であるエチレン−α−オレフィン共重合体(オレフィン系エラストマー)としては、例えば、エチレン−プロピレンランダム共重合体、エチレン−ブテンランダム共重合体、エチレン−ヘキセンランダム共重合体、エチレン−オクテンランダム共重合体、エチレン−デセンランダム共重合体、エチレン−4−メチルペンテンランダム共重合体等が挙げられる。これらの中でも、成分(B)として好ましくは、エチレン−ブテンランダム共重合体、エチレン−ヘキセンランダム共重合体、エチレン−オクテンランダム共重合体が挙げられる。
【0020】
本発明で用いられるエチレン−α−オレフィン共重合体(オレフィン系エラストマー、成分(B))の密度は0.87〜0.91g/cm3(なお、「0.87〜0.91g/cm3」とは、「0.87g/cm3以上0.91g/cm3以下」を意味する。本発明において、以下同様。)であることが好ましい。成分(B)の密度が0.87g/cm3以上であると、成形品表面の外観が良好であるので好ましく、密度が0.91g/cm3以下であると、良好な軟質性が得られるので好ましい。即ち、成分(B)の密度が上記範囲内であると、外観および軟質性に優れた成形品を得ることができるので好ましい。
本発明で用いられるエチレン−α−オレフィン共重合体(オレフィン系エラストマー、成分(B))のメルトインデックス(測定条件 温度:190℃、荷重21.2N)は5〜30g/10分であることが好ましい。エチレン−α−オレフィン共重合体(成分(B))のメルトインデックスが5g/10分以上であると、成形品表面の外観が良好であるので好ましい。また、30g/10分以下であると、良好な接着性が得られるので好ましい。即ち、成分(B)のメルトインデックスが上記範囲内であると、接着性に優れた成形品が得られるので好ましい。
【0021】
本発明で用いられる石油樹脂(成分(C))は、石油系不飽和炭化水素を直接原料として、重合反応により得られる炭化水素樹脂であり、低分子量の熱可塑性ポリマーである。石油樹脂として、例えば、分解石油留分から得られる石油樹脂、テルペン樹脂などが挙げられる。
ここで、分解石油留分から得られる石油樹脂とは、不飽和のC5留分(ピペリレン、イソプレンなど)およびC9留分(スチレン同族体並びにインデン同族体など)を原料とする共重合体である。これらの石油樹脂としては、軟化点約70℃以上180℃以下のものが市販されており、容易に入手できる。好ましい分解石油留分から得られる石油樹脂は、ビニルトルエン、インデン、α−メチルスチレンなどを主成分とする芳香族系石油樹脂である。
テルペン樹脂は、α−ピネン、β−ピネン、リモネンなどのテルペン炭化水素を原料とした重合体であり、それらを水素添加したものも市販されている。これらのテルペン樹脂樹脂には、フェノールやカルボン酸化合物で変性したものも含まれる。
石油樹脂として好ましくは、テルペン樹脂であり、より好ましくはフェノールやカルボン酸化合物で変性したテルペン樹脂である。
【0022】
本発明で用いられる石油樹脂(成分(C))は、樹脂中の不飽和結合の80%以上が水素添加されていることが好ましい。石油樹脂中の不飽和結合の80%以上が水素添加されていると、加工時の着色が生じないので好ましい。
【0023】
本発明で用いられるオレフィン共重合体(成分(A))、エチレン−α−オレフィン共重合体(オレフィン系エラストマー、成分(B))および石油樹脂(成分(C))からなる熱可塑性樹脂組成物の製造方法としては、上記の成分(A)、成分(B)および成分(C)を混合し、混練する方法が挙げられる。
混練に用いられる装置としては、一軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、熱ロール等が挙げられる。混練の温度は、好ましくは100〜300℃であり、混練の時間は、好ましくは1〜20分である。
また、上記の成分(A)、成分(B)および成分(C)の混練は同時に行っても良く、分割して行っても良い。例えば、上記の成分(A)、成分(B)および成分(C)を、1段階目で成分(A)の半量と成分(B)の全量とを混練し、次いで、1段階目の混練物に成分(A)の残りと成分(C)とを加え混練するように、分割して混練を行っても良い。分割して混練する場合、混練の順序や成分(A)、成分(B)および成分(C)の分配は任意に選択することができ、必要に応じて、適宜決定される。
【0024】
また、本発明で用いられる成分(A)、成分(B)および成分(C)からなる熱可塑性樹脂組成物には、必要に応じて、他の熱可塑性樹脂、酸化防止剤、紫外線吸収剤、顔料、帯電防止剤、銅害防止剤、難燃剤、中和剤、発泡剤、可塑剤、造核剤、気泡防止剤、架橋剤、滑剤等を配合しても良い。
なお、他の熱可塑性樹脂、酸化防止剤、紫外線吸収剤、顔料、帯電防止剤等の他の成分の配合量の合計は、本発明の熱可塑性樹脂組成物100重量部に対して0〜30重量部であることが好ましく、0〜20重量部であることがより好ましく、0〜10重量部であることがさらに好ましい。他の成分の配合量が上記範囲内であると、ポリカーボネート系樹脂、アクリロニトリル−スチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂およびポリアミド系樹脂等との接着性が良好であるので好ましい。
【0025】
本発明の積層成形体は、成分(A)、成分(B)および成分(C)からなる熱可塑性樹脂組成物を含む層(以下、「層I」ともいう。)と、ポリカーボネート系樹脂、アクリロニトリル−スチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂およびポリアミド系樹脂よりなる群から選択された少なくとも1つの樹脂を含有する層(以下、「層II」ともいう。)とを有することを特徴とする。
本発明の積層成形体は、層Iと、層IIとが直接接触して積層されていることが好ましい。本発明の熱可塑性樹脂組成物は、層IIとの接着性が良好であるので好ましい。
また、層IIは、ポリカーボネート系樹脂、アクリロニトリル−スチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂およびポリアミド樹脂よりなる群から選択された樹脂を1つ含有する層であることがより好ましい。また、層IIとしてより好ましくは、ポリカーボネート系樹脂、アクリロ−ニトリル−スチレン系樹脂またはポリオレフィン系樹脂であり、さらに好ましくはポリカーボネート系樹脂である。本発明の熱可塑性樹脂組成物は、ポリカーボネート系樹脂との接着性が特に良好であるので好ましい。
【0026】
本発明の積層成形体に用いられるポリカーボネート系樹脂としては、芳香族ジヒドロキシ化合物とホスゲンとを反応させることによって製造される芳香族ポリカーボネート系樹脂、芳香族ジヒドロキシ化合物と少量のポリヒドロキシ化合物とホスゲンとを反応させることによって製造される芳香族ポリカーボネート系樹脂、芳香族ジヒドロキシ化合物を炭酸ジエステルでエステル交換反応して製造される芳香族ポリカーボネート系樹脂、または、芳香族ジヒドロキシ化合物と少量のポリヒドロキシ化合物を炭酸ジエステルでエステル交換反応して製造される芳香族ポリカーボネート系樹脂が例示できる。
本発明の積層成形体に用いられるポリカーボネート系樹脂は、分岐している芳香族ポリカーボネート系樹脂であっても良く、分岐していない芳香族ポリカーボネート系樹脂であっても良い。分岐している芳香族ポリカーボネート系樹脂の製造においては、分岐剤としての三官能化合物や分子量調節剤を用いることができる。
【0027】
ポリカーボネート系樹脂に用いられる芳香族ジヒドロキシ化合物としては、例えば、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(慣用名:ビスフェノールA)、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3、5−ジメチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3、5−ジブロモフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−p−イソプロピルベンゼン、ハイドロキノン、レゾルシノール、4,4’−ジヒドロキシフェニル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン等が挙げられ、好ましくはビスフェノールAである。
【0028】
分岐している芳香族ポリカーボネート系樹脂は、前記の芳香族ジヒドロキシ化合物に、ポリヒドロキシ化合物、3,3−ビス(4−ヒドロキシアリール)オキシインドール(慣用名:イサチン(ビスフェノールA))、5−クロロイサチン、5,7−ジクロルイサチン、5−ブロモイサチン等を前記の芳香族ジヒドロキシ化合物の0.1〜2モル%加え、製造される。
【0029】
ポリヒドロキシ化合物としては、例えば、フロログルシン、4,6−ジメチル−2,4,6−トリ(4−ヒドロキシフェニル)ヘプチン、2,4,6−ジメチル−2,4,6−トリ(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン、2,6−ジメチル−2,4,6−トリ(4−ヒドロキシフェニル)ヘプテン、3,2,6−ジメチル−2,4,6−トリ(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン、1,3,5−トリ(4−ヒドロキシフェニル)ベンゼン、1,1,1−トリ(4−ヒドロキシフェニル)エタン等が例示される。
【0030】
ポリカーボネート系樹脂の分子量を調節するために用いられる分子量調節剤としては、一価芳香族ヒドロキシ化合物が挙げられ、例えば、m−メチルフェノール、p−メチルフェノール、m−プロピルフェノール、p−プロピルフェノール、p−ブロモフェノール、p−第3級−ブチルフェノール、p−長鎖アルキル置換フェノール等が挙げられる。
【0031】
ポリカーボネート系樹脂として用いられる芳香族ポリカーボネート系樹脂としては、例えば、特開昭63−30524号公報、特開昭56−55328号公報、特公昭55−414号公報、特公昭60−25049号公報、特公平3−49930号公報等に記載されている芳香族ポリカーボネート系樹脂が挙げられる。好ましくは、ビス(4−ヒドロキシフェニル)アルカン系化合物を主原料として製造される芳香族ポリカーボネート系樹脂、少なくとも2種の芳香族ジヒドロキシ化合物を併用して製造される芳香族ポリカーボネート系樹脂、3価のフェノール系化合物を少量併用して製造される分岐しているポリカーボネート系樹脂であり、より好ましくは、ビスフェノールAを主原料として製造される芳香族ポリカーボネート系樹脂である。また、芳香族ポリカーボネート系樹脂は単独で用いても良く、2種以上をを併用しても良い。
【0032】
本発明の積層成形体に用いられるアクリロニトリル−スチレン系樹脂(AS系樹脂ともいう。)は、アクリロニトリルに由来する単量体単位とスチレンに由来する単量体単位とがランダムに共重合したものである。
アクリロニトリルに由来する単量体単位の含有量は、好ましくは2〜50重量%(すなわち、スチレンに由来する単量体単位の含有量は、好ましくは98〜50重量%)であり、より好ましくは20〜30重量%(すなわち、スチレンに由来する単量体単位の含有量は、好ましくは80〜70重量%)である(ただし、アクリロニトリル−スチレン系樹脂に含有される単量体単位の合計を100重量%とする)。
【0033】
また、アクリロニトリル−スチレン系樹脂としては、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂(ABS樹脂)やアクリロニトリル−EPゴム−スチレン樹脂(AES樹脂)等も挙げられる。ABS樹脂としては、例えば、アクリロニトリル−スチレン系樹脂にオレフィン系ゴム(例えば、ポリブタジエンゴム)を40重量%以下程度にグラフト重合した樹脂が挙げられる。また、AES樹脂としては、例えば、アクリロニトリル−スチレン系樹脂にエチレン−プロピレン共重合体ゴム(例えば、EPゴム)を40重量%以下程度グラフト重合した樹脂が挙げられる。
【0034】
AS系樹脂の分子量は、目的に応じて定めれば良く、温度230℃および荷重21.2Nの条件で測定したメルトフローレート(MFR)で表わした場合、好ましくは0.01〜400g/10分であり、より好ましくは0.1〜60g/10分である。
【0035】
AS系樹脂の製造方法としては、例えば、溶融反応法、溶液法、エマルジョン法およびオートクレーブ法によって製造する方法が挙げられる。
【0036】
本発明の積層成形体に用いられるポリオレフィン系樹脂とは、エチレン、α−オレフィンや環状オレフィン等のオレフィン類の単独重合体または共重合体である。α−オレフィンとしては、例えば、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、3−メチル−1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセン等が挙げられる。環状オレフィンとしては、例えば、特開平2−115248号公報に記載の環状オレフィン(シクロヘキセン類、エチレン性不飽和基を有する橋かけ環状炭化水素)が挙げられる。
【0037】
また、本発明の積層成形体に用いられるポリオレフィン系樹脂としては、上記のオレフィン類と15重量%未満の他の不飽和単量体を共重合した共重合体も挙げられる。そして、上記のオレフィン類の単独重合体、上記のオレフィン類の共重合体、または、上記のオレフィン類と少量の他の不飽和単量体を共重合した共重合体を酸化やスルホン化して得られる変性物も挙げられる。
【0038】
上記の他の不飽和単量体としては、例えば、不飽和有機酸またはその誘導体、ビニルエステル、芳香族ビニル化合物、ビニルシラン、非共役ジエン等が挙げられる。
不飽和有機酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸等が挙げられ、不飽和有機酸の誘導体としては、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、無水マレイン酸、アリールマレイン酸イミド、アルキルマレイン酸イミド等が挙げられ、ビニルエステルとしては、酢酸ビニル、酪酸ビニル等が挙げられ、芳香族ビニル化合物としては、スチレン、メチルスチレン等が挙げられ、ビニルシランとしては、ビニルトリメチルメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン等が挙げられ、非共役ジエンとしては、ジシクロペンタジエン、4−エチリデン−2−ノルボルネン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエン等が挙げられる。
【0039】
ポリオレフィン系樹脂として、好ましくは、エチレン、プロピレン、1−ブテン、3−メチル−1−ブテンおよび4−メチル−1−ペンテンの単独重合体、または、エチレン、プロピレン、1−ブテン、3−メチル−1−ブテンおよび4−メチル−1−ペンテンから選ばれる少なくとも一種のオレフィンを、50重量%以上含有する共重合体であり、より好ましくはプロピレン系重合体であり、さらに好ましくはプロピレン単独重合体、プロピレン−エチレンブロック共重合体、プロピレン−エチレンランダム共重合体、または、これらの混合物である。
【0040】
ポリオレフィン系樹脂の分子量は、温度230℃および荷重21.2Nの条件で測定したメルトフローレート(MFR)で表わした場合、好ましくは0.01〜400g/10分であり、より好ましくは0.1〜60g/10分である。
【0041】
ポリオレフィン系樹脂の製造方法としては、公知の重合によって製造する方法や変性によって製造する方法が挙げられる。例えば、米国特許第4900706号公報や米国特許第4820775号公報等に記載の方法が挙げられる。また、市販品を、適宜選んで使用しても良い。
【0042】
本発明の積層成形体に用いられるポリアミド系樹脂とは、ラクタムまたはアミノカルボン酸を縮重合して製造されるポリアミド樹脂、ラクタムを縮重合させることによって製造されるポリアミド樹脂、炭素数4〜12の飽和脂肪族ジカルボン酸と、等モル量の炭素数2〜12の脂肪族ジアミンとを縮重合させることによって製造されるポリアミド樹脂から選ばれた少なくとも一種のポリアミド樹脂である。
【0043】
炭素数4〜12の飽和脂肪族ジカルボン酸としては、アジピン酸、ピメリン酸、アゼライン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸等が挙げられ、炭素数2〜12の脂肪族ジアミンとしては、ヘキサメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン等が挙げられる。
【0044】
炭素数4〜12の飽和脂肪族ジカルボン酸と、等モル量の炭素数2〜12個を含む脂肪族ジアミンとを縮重合させることによって製造されるポリアミド樹脂の製造において、所望に応じて、脂肪族ジアミンを過剰に用いることによって、ポリアミド樹脂に含有されるカルボキシル末端基よりアミン末端基が過剰になるように調整することができ、また、過剰の二塩基性酸を用いることによって、ポリアミド樹脂に含有されるアミン末端基よりカルボキシル基末端基が過剰になるよう調整することもできる。
【0045】
そして、本発明の積層成形体に用いられるポリアミド系樹脂としては、飽和脂肪族ジカルボン酸の誘導体(例えば、エステルや酸塩化物等)と、脂肪族ジアミンの誘導体(例えば、アミン塩等)とから製造されるポリアミド樹脂も挙げられる。
【0046】
炭素数4〜12の飽和脂肪族ジカルボン酸と、等モル量の炭素数2〜12個を含む脂肪族ジアミンとを縮重合させることによって製造されるポリアミド樹脂の例としては、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン66)、ポリヘキサメチレンアゼラミド(ナイロン69)、ポリヘキサメチレンセバサミド(ナイロン610)、ポリヘキサメチレンドデカノアミド(ナイロン612)、ポリ−ビス−(p−アミノシクロヘキシル)メタンドデカノアミド、ポリテトラメチレンアジパミド(ナイロン46)等が挙げられる。これらのナイロンを単独で用いても良く、少なくとも2種を、任意の割合で混合して用いても良い。
【0047】
ラクタムを縮重合させることによって製造されるポリアミド樹脂の例としては、ポリカプロラクタム(ナイロン6)、ポリウンデカノラクタム(ナイロン11)、ポリラウリルラクタム(ナイロン12)、ポリ(ヘキサメチレンアジパミド−co−カプロラクタム)(ナイロン6/66)等が挙げられる。これらのナイロンを単独で用いても良く、少なくとも2種を、任意の割合で混合して用いても良い。
【0048】
本発明の積層成形体に用いられるポリアミド系樹脂として、好ましくは、ナイロン46、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン11、ナイロン12であり、より好ましくは、ナイロン6、ナイロン66、またはナイロン6とナイロン66とを任意の比率で混合した混合物である。
また、本発明の積層成形体に用いられるポリアミド系樹脂として、好ましくは、末端官能基としてアミン末端を多く含有するポリアミド樹脂、末端官能基としてカルボキシル末端を多く含有するポリアミド樹脂、アミン末端とカルボキシル末端を多く含有するポリアミド樹脂、または、これらのポリアミド樹脂を任意の比率で混合した混合物が挙げられる。
【0049】
また、本発明の積層成形体に用いられるポリアミド系樹脂としては、芳香族成分を含有する芳香族ポリアミド樹脂も挙げられ、例えば、ポリヘキサメチレンイソフタルアミド(ナイロン6I)等が挙げられる。上記の芳香族成分としては、芳香族アミノ酸や芳香族ジカルボン酸等が挙げられ、例えば、パラアミノメチル安息香酸、パラアミノエチル安息香酸、テレフタル酸、イソフタル酸等が挙げられる。
また、上記の芳香族ポリアミド樹脂は、上記の芳香族成分を主要な構成成分として、溶融重合によって製造されるポリアミド樹脂である。
【0050】
上記の芳香族ポリアミド樹脂には、必要に応じて、その他の構成成分としてジアミンを含有させても良く、例えば、ヘキサメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、メタキシリレンジアミン、パラキシリレンジアミン、ビス(p−アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(p−アミノシクロヘキシル)プロパン、ビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)メタン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン等が挙げられる。
また、ジアミンの代わりにイソシアネート類を用いても良く、例えば、4,4'−ジフェニルメタンジイソシアネートやトリレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0051】
また、本発明の積層成形体に用いられるポリアミド系樹脂には、必要に応じて、共重合成分を含有させても良く、共重合成分としては、ラクタムから誘導される化合物(例えば、ε−カプロラクタムやω−ラウロラクタム等)、炭素4〜12個のω−アミノ酸から誘導される化合物(例えば、11−アミノウンデカン酸や12−アミノドデカン酸等)、炭素4〜12個の脂肪族ジカルボン酸から誘導される化合物、炭素2〜12個の脂肪族ジアミンから誘導される化合物(例えば、前記の各種ジアミンと等モルのアジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸等から得られる塩等)が挙げられる。
【0052】
また、本発明の積層成形体に用いられるポリアミド系樹脂は結晶性のポリアミド樹脂であっても良く、非晶性のポリアミド樹脂であっても良く、前記の結晶性のポリアミド樹脂と非晶性のポリアミド樹脂を任意の割合で混合した混合物であっても良い。
【0053】
本発明の積層成形体は、上記の成分(A)、成分(B)、および成分(C)からなる熱可塑性樹脂組成物を含有する層Iと、ポリカーボネート系樹脂、アクリロニトリル−スチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂よりなる群から選択された少なくとも1つの樹脂を含有する層IIとを有する積層成形体である。
本発明において、上述の通り、層Iと層IIが直接積層された積層成形体であることが好ましい。
【0054】
本発明の積層成形体(層I+層II)の全体の厚みに対する層Iの厚みの比率(層Iの厚み/積層成形体の厚み)は、積層成形体の強度を高めるという観点や、積層成形体の表面のクッション性や柔軟性を高めるという観点から、好ましくは0.01〜0.6である。
【0055】
また、本発明の積層成形体は、使用目的に応じて、その他の層を有する積層成形体であっても良く、積層成形体の表面のクッション性や柔軟性を高めるという観点から、好ましくは層Iを最外層に有する積層成形体である。
【0056】
本発明の積層成形体の製造方法としては、例えば、多層押出成形、多層ブロー成形、多層プレス成形、多色射出成形、インサート射出成形等の貼合成形法によって、層Iと層IIとを積層する方法が挙げられ、好ましくは多層押出成形やインサート射出成形である。
【0057】
本発明の積層成形体の用途としては、例えば、はさみ、ドライバー、歯ブラシ、スキーストック、ボールペン、シャープペンシル等の握り部のグリップ部分や、手すり、パイプ、柱等の建築・土木用途、アニマルガード、ルーフレール、スポイラー等の自動車用途等が挙げられ、グリップ性、軟質性および基材との接着性が求められる用途に用いられる。
本発明の積層成形体は、グリップ部分として好適に使用することができ、特に上記筆記具等の握り部のグリップ部分に好適に使用できる。
【0058】
本発明で用いられる上記の成分(A)、成分(B)、および成分(C)を溶融混練して得られる熱可塑性樹脂組成物や、ポリカーボネート系樹脂、AS系樹脂、ポリオレフィン系樹脂およびポリアミド系樹脂からなる群から選ばれた少なくとも一種の熱可塑性樹脂には、必要に応じて、上記の樹脂組成物または樹脂を混練する時、または本発明の積層成形体を成形する時に、慣用の添加剤(例えば、顔料、染料や補強剤(炭素繊維等))、充填剤、耐熱剤、耐候剤、滑剤、離型剤、結晶核剤、可塑剤、流動性改良剤、帯電防止剤、安定剤(例えば、熱安定剤、酸化防止剤、光安定剤や重合禁止剤)等を添加しても良い。
【実施例】
【0059】
以下、実施例および比較例に基づいて本発明をさらに詳しく説明する。
【0060】
以下に実施例および比較例で使用した樹脂(略号の意味)を示した。
(1)α,β−不飽和カルボン酸エステルおよびビニルエステルよりなる群から選ばれた少なくとも一種の化合物並びにエチレンおよびα−オレフィンよりなる群から選ばれた少なくとも一種の化合物との共重合体(本発明の成分(A)に該当する。)
A1:エチレン−メチルメタアクリレート共重合体
(a−1)エチレン単位 含有量75重量%
(a−2)メタクリル酸メチル 含有量25重量%
【0061】
(2)エチレン−α−オレフィン共重合体(本発明において、成分(B)に該当する。)
OE1:エチレン−ブテンランダム共重合体
メルトフローレート(MFR)(測定条件:ASTM−D1238、温度190℃、荷重21.2N)20g/10分、密度0.905g/cm3、ショアーA硬度92であるエチレン−ブテンランダム共重合体。
【0062】
(3)石油樹脂(本発明において、成分(C)に該当する。)
C1:テルペンフェノール共重合体(軟化点100℃、OH価240mg/g)商標名YP902 ヤスハラケミカル(株)製
C2:テルペンフェノール共重合体(軟化点125℃、OH価120mg/g)商標名G125 ヤスハラケミカル(株)製
C3:芳香族変性テルペン重合体(軟化点125℃)商標名TO125 ヤスハラケミカル(株)製
【0063】
【表1】

【0064】
(4)層IIとして用いた熱可塑性樹脂
PC1:ポリカーボネート樹脂、商標:カリバー301−10 住友ダウ(株)製
【0065】
次に実施例および比較例における物性値等の評価方法を以下に示した。
<Iとして用いられる熱可塑性樹脂組成物の流動性>
ASTM−D1238に準拠し、230℃、21.2N荷重でのメルトフローレート(MFR)を測定した。MFRの値が大きいほど、流動性が良好であることを示す。
【0066】
<接着性>
まず、層IIとして用いるポリカーボネート樹脂を熱プレス成形し、縦150mm×横150mm×厚み2mmのシートを作成した。作成したシートをそれぞれ幅12.5mmに切削した。切削した試験片を射出成形機(住友重機械工業(株)製、サイキャップ110/50)に取り付けた金型(幅12.7mm×長さ150mm×厚み3.2mm)中にそれぞれ挿入し、ペレット状の層Iとして用いられる熱可塑性樹脂組成物を成形(成形条件:シリンダー温度230℃、金型温度30℃)し、接着性評価用試験片を得た。
試料の180度剥離試験を剥離速度200mm/分で行い、得られたチャートより応力(N)を求め、試料の幅で除した値を接着強度(N/cm)とした。接着強度の値が大きいほど接着性が良好であることを示す。
【0067】
<硬度(ショアーAスケール)>
JIS−K7215に準拠して測定した。すなわち、表2に示した配合で得られた熱可塑性樹脂組成物のペレットを熱プレス成形(200℃)し、厚み3mm、縦150mm×横150mmのシートを作成した。得られたプレスシートを縦50mm×横50mmに切削する。切削したシートを2枚重ねて厚みを6mmとし、上島製作所製スプリング式硬度計を用いて測定を行った。値が小さいものほど柔らかく柔軟性に富むことを示す。
【0068】
<層Iのグリップ感>
層Iのグリップ感の評価は以下のように行った。射出成形機(住友重機械工業(株)製、サイキャップ110/50)に取り付けた金型(幅12.7mm×長さ150mm×厚み0.8mm)中に、溶融させた層Iとして用いられる熱可塑性樹脂組成物を単独で成形(成形条件:シリンダー温度230℃、金型温度30℃)した。一定時間放置し溶融樹脂を固化させた後、金型を開放して成形体を取り出した。
グリップ感(軟質性)は、上記の方法で得られた成形品(幅12.7mm×長さ150mm×厚み0.8mm)を固定し、成形品表面を指で一定方向になぞった際の指への抵抗感(手触り)を判定した。判定基準は、パネリスト5名による官能評価とした。指への抵抗感があり手触りが良好な場合を○とし、抵抗感がなく滑る場合を×とし、○が4名〜5名の場合をグリップ感良好(○)、○が0〜3名の場合をグリップ感不良(×)とした。
【0069】
[実施例1]
表2に示した配合割合(重量部)の各成分を、シリンダー温度200℃、スクリュー回転数80rpmに設定した連続二軸混練機((株)東洋精機製作所製2D25S)のホッパーから投入した後、これらの成分を溶融混練してペレット状の層Iとして用いられる熱可塑性樹脂組成物を得た。得られたペレットを40℃のオーブンで2時間乾燥した。得られたペレットを用いて、流動性、硬度、接着性を評価した。結果を表2に示した。
【0070】
[実施例2〜3]および[比較例1]
実施例1と同様にして、表2に示した配合割合(重量部)のペレット状の層Iとして用いられる熱可塑性樹脂組成物を得た。評価結果を表2に示した。
【0071】
【表2】

【0072】
本発明の要件を充足する実施例1〜3は、軟質性(硬度およびグリップ感)および層間接着性に優れる積層成形体であった。
これに対して、石油樹脂を使用していない比較例1はグリップ感が不良であった。
【0073】
また、実施例2において、ポリカーボネート系樹脂の代わりにアクリロニトリル−スチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂またはポリアミド樹脂を使用して同様に積層成形体を作製すれば、同様に良好な軟質性および層間接着性を得ることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
α,β−不飽和カルボン酸エステルおよびビニルエステルよりなる群から選ばれた少なくとも一種の化合物並びにエチレンおよびα−オレフィンよりなる群から選ばれた少なくとも一種の化合物の共重合体(A)65〜90重量%と、
エチレン−α−オレフィン共重合体(B)9〜34重量%と、
石油樹脂(C)1〜20重量%と
を含有することを特徴とする熱可塑性樹脂組成物(ただし、(A)、(B)および(C)の総量を100重量%とする。)。
【請求項2】
ポリカーボネート系樹脂を含有する層と、請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物を含有する層とを有することを特徴とする積層成形体。

【公開番号】特開2008−280392(P2008−280392A)
【公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−124238(P2007−124238)
【出願日】平成19年5月9日(2007.5.9)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】