説明

熱可塑性樹脂製積層フィルム、およびこのフィルム製の包装袋

【課題】
滑り性、開口性、透明性、衛生面などに優れ、食品用、医療用の包装袋の原料として好適な、インフレーション法によって製造された熱可塑性樹脂製積層フィルム、およびこのフィルムを原料として製造される包装袋を提供する。
【解決手段】
第1発明では、熱可塑性樹脂を少なくとも2層以上積層された積層フィルムであって、最外層を構成する熱可塑性樹脂(A)に配合される微細粒状の滑剤(C)の配合量が、0.01〜5.0重量%であり、微細粒状の滑剤(C)の平均粒子径(d(C))と最外層を構成する熱可塑性樹脂(A)の厚さ(d(A))との比{(d(C))/(d(A))}が、1.0〜4.0であり、かつ、インフレーション法によって製造された、熱可塑性樹脂製積層フィルムを提供し、第2発明では、第1発明に係る熱可塑性樹脂製積層フィルムを原料として、製造された包装袋を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性樹脂製積層フィルム、およびこのフィルム製の包装袋に関する。詳しくは、包装袋として使用した場合の滑り性、開口性、透明性などに優れ、かつ、包装袋に収納する物品が液状物であっても、包装袋を構成する層に配合された成分が収納した物品に溶け出したり、離脱したりすることがなく衛生性にも優れた、インフレーション法によって製造された熱可塑性樹脂製積層フィルム、およびこのフィルムから製造された包装袋に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、熱可塑性樹脂製フィルムから製造された包装袋は、食品用や医療用など種々の用途に幅広く使用されている。これらの用途の中でも、食品用や医療用の包装袋は、滑り性(複数枚積み重ねた包装袋から1枚の包装袋を取り出す際の取り出しやすさ)、開口性(包装袋に物品を収納する際の開口部の開けやすさ)、衛生性、ガスバリア性、透明性、柔軟性、耐熱性、耐ピンホール性など種々の特性を備える必要がある。これらの特性を備えるフィルムとするために、異なる特性を発揮する複数の樹脂を積層した多層フィルムが提案され、実用化されている。これら積層フィルムは、主としてインフレーション法によって製造される。
【0003】
しかし、インフレーション法は、環状ダイから複数の樹脂が押出された円筒状のフィルムを扁平にし、ロール状に巻回して積層フィルムを製造する方法であるので、ロール状に巻回した積層フィルムは、巻回する際の圧力やロール自体の重量によって、フィルムの接触面同士が相互に付着する(ブロッキング)を起こすことがある。そのため、(1)ロール状に巻回した積層フィルムを巻き戻して包装袋を製造する際に巻き戻し難い、(2)製造した包装袋を複数枚積み重ねて保管、輸送した後に使用する場合には、複数枚積み重ねた包装袋から1枚の包装袋を取り出し難い、(3)包装袋に物品を収納する際に開口部が開け難いことがあるので、開口部を開けるための特殊な開口装置を必要とする、などの欠点があった。
【0004】
このような欠点を解消して、インフレーション法で製造した積層フィルムの開口性を向上させる手法として、特許文献1には、原料樹脂のポリエチレンに、特定のエチレン系重合体を配合する手法が記載されている。しかし、原料樹脂、製造条件などが限定されるので、実用性、汎用性に乏しいという欠点があった。
【0005】
また、インフレーション法で製造した積層フィルムの開口性を向上させる別の手法として、熱可塑性系樹脂に脂肪酸アミドなどの有機化合物系滑剤(アンチブロッキング剤)を配合する手法が知られている。しかし、包装袋にして使用した場合には、収納した物品と接触する最内層に液状の滑剤が配合されていると、滑剤が収納した物品(特に液状物の場合)に溶け出したり、離脱したりするおそれがあり、食品用や医療用などには適さない。
【0006】
さらに、特許文献2には、積層フィルムにおいて、一方の表面層に微粒子からなるアンチブロッキング剤を配合する手法が記載されている。しかし、本発明者らの実験によれば、実施例に記載の積層フィルムは、対向する最内層の界面で剥がし難く、開口性が優れているとはいえなかった。このため、滑り性、開口性、透明性、衛生性などのいずれの特性にも優れたインフレーション法による積層フィルムが望まれていた。
【特許文献1】特開平11−90981号公報
【特許文献2】特開2006−15605号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者らは、上記実情に鑑み、上記諸欠点を解消したインフレーション法による熱可塑性樹脂製積層フィルム、およびこのフィルム製の包装袋を提供すべく、鋭意検討した結果完成するに至ったものである。すなわち、本発明の目的は、次のとおりである。
1.滑り性、開口性、透明性、衛生面などに優れ、食品用、医療用の包装袋の原料として好適な、インフレーション法によって製造された熱可塑性樹脂製積層フィルムを提供すること。
2.滑り性、開口性、透明性、衛生面などに優れ、食品用、医療用の包装袋として好適な、上記熱可塑性樹脂製積層フィルムを原料として製造される包装袋を提供すること。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明では、上記課題を解決するため、第1発明では、熱可塑性樹脂を少なくとも2層以上積層された積層フィルムであって、最外層を構成する熱可塑性樹脂(A)に配合される微細粒状の滑剤(C)の配合量が、0.01〜5.0重量%であり、微細粒状の滑剤(C)の平均粒子径(d(C))と最外層を構成する熱可塑性樹脂(A)の厚さ(d(A))との比{(d(C))/(d(A))}が、1.0〜4.0であり、かつ、インフレーション法によって製造されたものであることを特徴とする、熱可塑性樹脂製積層フィルムを提供する。
【0009】
第2発明では、上記第1発明に係る熱可塑性樹脂製積層フィルムを原料として、製造されたものであることを特徴とする包装袋を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、以下に詳細に説明するとおりであり、次のような特別に有利な効果を奏し、その産業上の利用価値は極めて大である。
1.本発明に係る熱可塑性樹脂製積層フィルムは、最外層を構成する熱可塑性樹脂層(A)に微細粒状の滑剤(C)が配合されているので、積層フィルムをロール状に巻回したまま放置しても、フィルムの接触面{(A)層}同士が相互に付着し難いので、ロール状に巻回した積層フィルムを巻き戻して包装袋を製造する際に、巻き戻し難いなどの欠点がなく、作業性に優れている。
2.本発明に係る熱可塑性樹脂製積層フィルムは、最外層を構成する熱可塑性樹脂層(A)の厚さ(d(A))より、微細粒状の滑剤(C)の平均粒子径(d(C))の方が大きくされており、ロール状に巻回することにより生じる巻取圧力によって、この微細粒状の滑剤(C)に起因する最外層を構成する熱可塑性樹脂層(A)の凹凸が、最内層を構成する熱可塑性樹脂層(B)の表面にも凹凸が現れるので、対向する最内層を構成する熱可塑性樹脂層(B)の界面で剥がしやすく、優れた開口性を発揮する。
3.本発明に係る熱可塑性樹脂製積層フィルム製の包装袋は、複数枚積み重ねたりしても、包装袋同士で付着せず、1枚の包装袋を容易に取り出すことができる。
4.本発明に係る熱可塑性樹脂製積層フィルム製の包装袋は、最外層を構成する熱可塑性樹脂層(A)のみに微細粒状の滑剤(C)が配合されるので、微細粒状の滑剤(C)が充填した物品(液体)に溶け出したり、離脱したりすることがなく、優れた衛生面を発揮する。
5.本発明に係る熱可塑性樹脂製積層フィルム製の包装袋は、透明性、衛生面に優れているので、食品用、医療用の包装袋として好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明に係る熱可塑性樹脂製積層フィルムは、熱可塑性樹脂を少なくとも2層以上積層された多層フィルムからなり、最外層が熱可塑性樹脂層(A){以下、最外層(A)とする}、最内層が熱可塑性樹脂層(B){以下、最内層(B)とする}で構成され、かつ、最外層(A)に微細粒状の滑剤(C)が配合されていることを必須とする。本発明において、熱可塑性樹脂フィルムを2層以上積層させることを必須としているのは、微細粒状の滑剤(C)を最外層(A)に配合することによって、包装袋として使用したときに、包装袋同士の付着がなく、微細粒状の滑剤(C)が包装袋に収納した物品(特に液状物)に溶出して生じる、収納した物品(特に食品、医薬、医療用品)の汚染の問題が起きにくくするためである。また、最外層(A)と最内層(B)の樹脂を異なるものにして、各層の機能を変えられるという特徴を有する。例えば、最内層(B)をシーラント層とすることにより、インフレーション法によって製造されたフィルムを、ヒートシールすることにより包装袋を製造できるという特徴も有する。
【0012】
本発明に係る積層フィルムを構成する最外層(A)および最内層(B)に使用される熱可塑性樹脂は、インフレーション法によってフィルムを製造することができ、かつ、従来から知られている熱可塑性樹脂であれば特に制限はない。このような熱可塑性樹脂としては、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、熱可塑性エラストマーなどが挙げられる。
【0013】
本発明に使用されるポリエステル系樹脂としては、ブチレンテレフタレート繰り返し単位を主成分とするポリエステル樹脂であって、多価アルコール成分として1,4−ブタンジオール、および必要により1,4−ブタンジオール以外の多価アルコールを、多価カルボン酸成分としてテレフタル酸、またはそのエステル形成性誘導体、さらには必要によりテレフタル酸以外の多価カルボン酸、またはそのエステル形成性誘導体を使用し、得られるブチレンテレフタレート単位を主たる繰り返し単位とするポリエステル樹脂である。繰り返し単位を主成分とは、ブチレンテレフタレート単位が、全多価カルボン酸−多価アルコール単位中の50モル%以上であることを意味する。上記範囲で好ましいのは60モル%以上であり、さらに好ましい範囲は70モル%以上であり、特に好ましい範囲は80モル%以上である。
【0014】
ポリエステル系樹脂の製造に使用されるテレフタル酸以外の多価カルボン酸成分としては、芳香族多価カルボン酸、脂肪族多価カルボン酸、脂環族多価カルボン酸、または上記多価カルボン酸のエステル形成性誘導体などが挙げられる。芳香族多価カルボン酸としては、2,6−ナフタレンジカルボン酸、イソフタル酸、フタル酸、トリメシン酸、トリメリット酸などが挙げられ、脂肪族多価カルボン酸としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸などが挙げられ、脂環族多価カルボン酸としては、シクロヘキサンジカルボン酸などが挙げられる。また、上記多価カルボン酸のエステル形成性誘導体としては、テレフタル酸ジメチルなどの低級アルキルエステル類などが挙げられる。これらの多価カルボン酸成分は、単独でも2種類以上を混合した混合物であってもよい。
【0015】
一方、1,4−ブタンジオール以外の多価アルコール成分としては、脂肪酸多価アルコール、脂環族多価アルコール、芳香族多価アルコール、ポリアルキレングリコールなどが挙げられる。脂肪酸多価アルコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなどが挙げられ、脂環族多価アルコールとしては、1,4−シクロヘキサンジメタノールなどが挙げられ、芳香族多価アルコールとしては、ビスフェノールA、ビスフェノールZなどが挙げられ、ポリアルキレングリコールとしては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリテトラメチレンオキシドグリコールなどが挙げられる。これらの多価アルコール成分は、単独でも2種類以上を混合した混合物であってもよい。
【0016】
ポリエステル系樹脂は、溶融重合法など従来より知られている方法によって製造することができ、エステル化反応および/または重縮合化反応において、触媒と反応助剤を使用することができる。触媒としては、通常、チタン化合物が使用され、例えば、チタンアルコラート、チタンフェノラート、無機チタン化合物などが挙げられる。チタンアルコラートとしては、テトラメチルチタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラブチルチタネートなどが挙げられ、チタンフェノラートとしては、テトラフェニルチタネートなどが挙げられ、無機チタン化合物としては、酸化チタン、四塩化チタンなどが挙げられる。反応助剤としては、スズ化合物、マグネシウム化合物、カルシウム化合物、アンチモン化合物、ゲルマニウム化合物、マンガン化合物、亜鉛化合物、ジルコニウム化合物、コバルト化合物、リン酸化合物、ナトリウム化合物などが挙げられる。
【0017】
ポリエステル系樹脂は、本発明の目的を損なわない範囲で、末端カルボキシル基濃度、融点、触媒量などの異なる他のポリエステル系樹脂を混合した混合物であってもよい。他のポリエステル系樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリナフタレンテレフタレート(PEN)、ポリ(1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート)(PCT)、液晶性ポリエステル、ポリピバロラクトン、ポリ(ε−カプロラクトン)、これらの共重合体、およびこれらの主要構成成分のモノマーの一部をイソフタル酸、ダイマー酸、ポリテトラメチレングリコールなどのポリアルキレングリコール、ビスフェノールなどの異種モノマーによって置換し、共重合させたものなどが挙げられる。
【0018】
上記ポリエステル系樹脂は、その固有粘度が0.7〜2.0dl/gの範囲とするのが好ましい。固有粘度が0.7dl/g未満であると、積層フィルムの機械強度が低下し、2.0dl/gを超えると、ダイからの押出し量が減少し引き取り速度が低下するため、いずれも好ましくない。上記固有粘度のより好ましい範囲は、0.8〜1.8dl/gであり、さらに好ましいのは1.0〜1.6dl/gである。なお、本発明において固有粘度とは、フェノールと1,1,2,2−テトラクロロエタンとの混合溶媒(重量比1:1、温度30℃)を用いて測定した溶液粘度から算出される値である。
【0019】
本発明で使用されるポリアミド系樹脂としては、(1)3員環以上のラクタム、(2)重合可能なω−アミノ酸、および(3)ジアミンとジカルボン酸などの重縮合によって得られるポリアミド類が挙げられる。(1)3員環以上のラクタムとしては、ε−カプロラクタム、アミノカプロン酸、エナントラクタム、α−ピロリドン、α−ピペリドンなどが挙げられ、(2)重合可能なω−アミノ酸としては、6−アミノヘキサン酸、7−アミノヘプタン酸、11−アミノウンデカン酸、9−アミノノナン酸などが挙げられ、(3)ジアミンとしては、ヘキサメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、メタキシリレンジアミン、パラキシリレンジアミンなどが挙げられ、ジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカン二塩基酸、グルタール酸などが挙げられ、いずれも複数の原料を使用することにより得られる共重合体であってもよい。上記原料から得られるポリアミド系樹脂としては、ポリアミド(PA)4、6、7、8、11、12、6・6、6・10、6・11、6・12、MXD6、6T、6/6・6、6/12、6/6T、6I/6T、9Tなどが挙げられる。なお、ここで「・」はモノマー成分の組合せを意味し、「/」共重合体を意味する。
【0020】
ポリアミド系樹脂は、溶融重合法など従来より知られている方法によって製造することができ、その分子量に特に制限はないが、相対粘度で2.5〜6.5の範囲が好ましい。相対粘度が2.5未満であると、ドローダウンが大きく、積層フィルムの成形が困難になるおそれがあり、相対粘度が6.5を超えると、生産性が著しく低下するのでいずれも好ましくない。相対粘度は上記範囲の中でも3.0〜6.0の範囲が好ましい。なお、本発明において相対粘度とは、JIS K6810に準拠し、1gのポリアミド系樹脂を98%濃度の硫酸100ミリリットルに溶解し、25℃で測定したときの値である。
【0021】
本発明で使用されるポリオレフィン系樹脂としては、従来から知られている方法による重合反応、または変性反応などにより得られるものでよく、具体的には、高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−メタクリレート共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−メタクリル酸エチル共重合体、アイオノマー樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体けん化物(EVOH)、変性ポリオレフィン樹脂(APO)、線状低密度ポリエチレン(L−LDPE)などが挙げられる。ポリオレフィン系樹脂のメルトフローレイト(MFR)は、0.01〜250g/10分の範囲が好ましい。なお、本発明においてメルトフローレイト(MFR)とは、JIS K6922に準拠して測定した値である。
【0022】
本発明で使用されるポリカーボネート系樹脂としては、種々のジヒドロキシアリール化合物とホスゲンとの反応によって得られるもの(ホスゲン法)、またはジヒドロキシアリール化合物とジフェニルカーボネートとのエステル交換反応によって得られるもの(エステル交換法)が挙げられる。代表的なポリカーボネート系樹脂は、2,2’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンとホスゲンとの反応により得られるポリカーボネートである。ポリカーボネート系樹脂の重量平均分子量は15,000〜35,000の範囲が好ましい。本発明で使用される熱可塑性エラストマーとしては、スチレン系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマー、エステル系熱可塑性エラストマー、アミド系熱可塑性エラストマー、オレフィン/ジエン系熱可塑性エラストマーなどが挙げられる。
【0023】
上記熱可塑性樹脂は、単独でも2種類以上の混合物であってもよい。最外層(A)と最内層(B)の熱可塑性樹脂は同じであってもよいが、異なる熱可塑性樹脂を使用すると、各層で発揮する機能が異なるものとし、高機能化することができるので好ましい。上記熱可塑性樹脂のうち好ましいのは、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂であり、とりわけ最外層(A)として好ましいのは、透明性、耐熱性、ガスバリア性に優れたポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリブチレンテレフタレート−ポリテトラメチレングリコール共重合体(S−PBT)、およびポリアミド6(PA6)である。
【0024】
本発明に使用される微細粒状の滑剤(C)は、積層フィルムの表面に適度な凹凸を付与し、滑り性(耐ブロッキング性)や、包装袋にしたときの開口性を発揮させるように機能する。微細粒状の滑剤(C)は、有機微粒子または無機微粒子から選ばれる。有機微粒子としては、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリアミド、ポリエステル、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル、エポキシ樹脂、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニルなどの単独重合体、およびこれら樹脂の共重合体などの微粒子が挙げられる。これら有機微粒子は、架橋剤によって架橋させたもの(架橋ポリマー微粒子)でもよい。無機微粒子としては、タルク、カオリン、シリカ、炭酸カルシウム、ガラス粉末、酸化カルシウム、ゼオライト、非晶性アルミノシリケート、酸化チタン、アルミナ、硫酸バリウム、硫酸アルミニウム、水酸化マグネシウムなどが挙げられる。これらの微粒子は、単独でも2種類以上を混合した混合物であってもよい。微細粒状の滑剤(C)として好ましいのは、微粒子の強度や積層フィルムにしたときの透明性などを勘案すると、ポリアクリル酸エステルまたはポリメタクリル酸エステルの微粒子、およびこれらの架橋ポリマー微粒子であり、中でも特に好ましいのは、架橋したポリメチルメタクリレート微粒子である。
【0025】
微細粒状の滑剤(C)の平均粒子径(d(C))は、本発明に係る積層フィルムが実質未延伸で製造、使用されることから、後述する最外層(A)の厚さ(d(A))を勘案して、3〜25μmの範囲で選ぶのが好ましい。上記範囲でより好ましいのは5〜20μm、さらに好ましいのは7〜15μmである。なお、微細粒状の滑剤(C)の平均粒子径(d(C))の算出方法は、次のとおりである。まず、環状ダイから最外層(A)樹脂のみを吐出させ、溶融樹脂を少量採取した後、採取した樹脂を室温まで冷却し、HFIP(ヘキサフルオロイソプロパノール)によって樹脂を溶解させた。ついで、この溶液をガラス板上にキャストし、溶媒を風乾によって除去した後、走査型電子顕微鏡(SEM)によって微細粒状の滑剤(C)の粒子径を200個測定し、その平均値を平均粒子径(d(C))とした。
【0026】
微細粒状の滑剤(C)の配合量は、最外層(A)に対し0.01〜5.0重量%の範囲で選ぶものとする。微細粒状の滑剤(C)の配合量が0.01重量%未満では、本発明に係る熱可塑性樹脂製積層フィルムの表面に、適度な凹凸を付与することができないので、積層フィルムの滑り性や包装袋にしたときの開口性などが劣り、一方、5.0重量%を超えると、積層フィルムの透明性が劣ったり、微細粒状の滑剤(C)が最外層(A)から離脱したり、微細粒状の滑剤(C)が最外層(A)の表面で粉吹き(ブリーディング)するおそれがあり、いずれも好ましくない。上記範囲で好ましいのは0.03〜4.0重量%であり、中でも特に好ましいは0.05〜3.0重量%である。
【0027】
本発明ではさらに、微細粒状の滑剤(C)の配合量が上記範囲であって、かつ、微細粒状の滑剤(C)の平均粒子径(d(C))と最外層(A)の厚さ(d(A))との比{(d(C))/(d(A))}を1.0〜4.0の範囲とする。{(d(C))/(d(A))}が1.0未満であると、微細粒状の滑剤(C)が最外層(A)の中に埋まり、積層フィルムの表面に適度な凹凸を付与することができないので、積層フィルムの滑り性や包装袋にしたときの開口性などが劣り、4.0を超えると、微細粒状の滑剤(C)が最外層(A)から離脱するおそれがあり、衛生性を損なうので好ましくない。上記範囲で好ましいのは、1.1〜3.0であり、さらに好ましいのは、1.2〜2.5である。
【0028】
本発明に係る熱可塑性樹脂製積層フィルムは、その後ヒートシールして包装袋にする場合には、最内層(B)にシーラント層を設けることが好ましい。シーラント層とは、積層フィルムを包装袋に加工する際に、ヒートシールするのに適した熱可塑性樹脂製の層である。例えば、円筒状の積層フィルムに製膜された場合、または円筒状に製膜された積層フィルムを切り開いてシート状した場合でも、2つのシーラント層を対向させてヒートシールすればよい。シーラント層形成用に使用される熱可塑性樹脂は、LDPE樹脂および/またはL−LDPE樹脂からなる。LDPE樹脂は、密度が0.910〜0.925g/cmであり、エチレンを高圧法によって重合して得られる重合体を意味する。L−LDPE樹脂は、密度が0.918〜0.940g/cmであるエチレン・α−オレフィン系共重合体を意味し、α−オレフィンとしては、ブテン−1、ペンテン−1、4−メチルブテン−1、ヘキセン−1、4−メチルペンテン−1、ヘプテン−1、オクテン−1、デセン−1、ウンデセン−1、ドデセン−1などが挙げられる。共重合されるα−オレフィンの含有量は、0.5〜10モル%の範囲内から選ばれる。シーラント層の厚さは、30μm以上が好ましい。なお、本発明において、開口性をより向上させるために、最内層(B)にも前記したような微細粒状の滑剤(C)を少量添加することを妨げない。ただし、この少量の範囲は、最内層(B)から包装袋収納物への微細粒状の滑剤(C)の溶出が、ほとんど問題にならない程度であることを上限とする。
【0029】
本発明に係る熱可塑性樹脂製積層フィルムは、必要に応じて、最外層(A)と最内層(B)との間に、中間層を設けることができる。中間層形成用に使用される熱可塑性樹脂としては、ガスバリア性に優れたPA6などのポリアミド樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(EVOH)などが挙げられる。
【0030】
本発明に係る熱可塑性樹脂製積層フィルムは、最外層(A)と最内層(B)との間、さらにはこれらのいずれかの層と、必要に応じて設けられる上記中間層との界面のそれぞれに、上記層間の密着性を向上させるため、前記熱可塑性樹脂からなる接着剤層を設けることができる。接着剤層に使用される熱可塑性樹脂として好ましいのは、変性ポリオレフィン樹脂(APO)である。APOは、エチレンおよび/またはプロピレンを主成分とするポリオレフィン樹脂に、α,β−不飽和カルボン酸またはその誘導体を共重合および/またはグラフト重合させて製造される樹脂である。
【0031】
前記の最外層(A)、最内層(B)、中間層、接着剤層に使用される熱可塑性樹脂には、本発明の目的および効果を損なわない範囲で、各種樹脂添加剤(D)を配合することができる。配合できる各種樹脂添加剤(D)としては、酸化防止剤、熱安定剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、顔料、染料などが挙げられる。ただし、最内層(B)は包装袋としたときに収納した物品と接するので、最内層(B)に配合する樹脂添加剤(D)は、最内層(B)の表面に粉吹き(ブリーディング)やブリードアウトしないものを選択する必要がある。
【0032】
次に、本発明に係る熱可塑性樹脂製積層フィルムを製造する方法について説明する。本発明に係る熱可塑性樹脂製積層フィルムは、インフレーション法により製造されることを必須する。インフレーション法は、従来から知られている方法でよく、例えば、2台の押出機で溶融させた最外層(A)、最内層(B)を構成する前記熱可塑性樹脂を、共押出用の環状ダイに導いて環状のダイリップから溶融樹脂を円筒状に押出し、膨張させて、冷却装置で冷却固化し、案内板に導き、さらにニップロールで扁平にし、ロール状に巻回することによってチューブ状のフィルムが得られ、一端または両端を切り開くと、2層の積層フィルムが得られる。また、中間層や接着剤層を設ける場合には、押出機を増設し、環状ダイを交換し、上記と同様の手順によって、3層以上の積層フィルムが得られる。上記冷却装置で冷却固化する方法として、(1)水に接触させて冷却する水冷法、(2)空気によって冷却する空冷法、の2種類があり、得られる積層フィルムの透明性などを勘案すると、水冷法が好ましい。なお、インフレーション法により得られる積層フィルムは、実質的に未延伸フィルムであるので、JIS
K6734に準拠して測定した加熱収縮率が、押出方向(MD)および押出方向に対して直角方向(TD)ともに、10%以下のものが好ましい。
【0033】
積層フィルムの各層の厚さは、最外層(A)が1〜100μm、最内層(B)が10〜200μmが好ましい。積層フィルム全体の厚さは、10〜300μm、かつ、最外層(A)の厚さ(d(A))の50倍以下が好ましい。50倍を超えると、最内層(B)の表面に凹凸が現れないので、対向する最内層(B)同士が相互に付着(ブロッキング)しやすく、包装袋としたときに開口性が劣り好ましくない。より好ましいのは30倍以下であり、さらに好ましいのは20倍以下である。中間層および接着剤層の厚さは、本発明の目的および効果を損なわない限り制限されないが、1〜100μmが好ましく、より好ましいのは2〜50μm、さらに好ましいのは3〜25μmである。なお、積層フィルムの最外層(A)などの厚さは、例えば、積層フィルムの断片を切断し、走査型電子顕微鏡を用いて断片を2000倍に拡大した写真を撮影し、撮影された最外層(A)部分などの断片(厚さ)をJIS1級ノギスで測定することによって、算出できる。
【0034】
本発明に係る熱可塑性樹脂製積層フィルムでは、最外層(A)の表面における動摩擦係数は0.40以下が好ましい。本発明における動摩擦係数とは、ASTM−D1894に準拠して測定した値である。動摩擦係数が0.40を超えると、滑り性が劣り、対向する最外層(A)の界面で滑り難くなるので、包装袋に加工するときや、包装袋に印刷するときに支障が生じて好ましくない。より好ましいのは0.35以下であり、さらに好ましいのは0.30以下である。
【0035】
本発明の第2発明に係る包装袋は、本発明に係る熱可塑性樹脂製積層フィルムから、従来から知られている方法によって製造することができる。例えば、ロール状にされた積層フィルムを巻き戻し、所定の大きさで押出方向に対して直角方向(TD)に切断し、一方の開口部を押出方向に対して直角方向(TD)に沿って最内層(B)同士を、(1)ヒートシールする方法、(2)接着剤を用いて貼付する方法、などによって包装袋を製造できる。開口している他方は、切断されたまま、または、包装袋の使用目的に応じて、切断面に凹凸を付与したり、チャックのようなシール部材を取り付けたりすることができる。
【実施例】
【0036】
以下、実施例により本発明を詳しく説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。原料としては、以下の特性を有する市販されているものを使用し、熱可塑性樹脂製積層フィルム、およびこのフィルム製の包装袋の評価項目は、以下のとおりである。
【0037】
<原料>
本発明においてMFRとは、JIS K6922に準拠して測定した値であり、融点とは、JIS K7121に準拠して測定した値である。
(1)S−PBT:テトラメチレングリコール(数平均分子量1000)が含有量10重量%、固有粘度が1.15、融点が219℃のポリブチレンテレフタレートである。
(2)PA6:相対粘度4.5がポリアミド6(三菱エンジニアリングプラスチックス社製、商品名:ポリアミド6押出グレード1030J)である。
(3)L−LDPE:MFRが1.1(g/10分)、融点が124℃の線状低密度ポリエチレン樹脂(日本ポリエチレン社製、商品名:UF230)である。
(4)APO(1):MFRが1.0(g/10分)、密度が0.90(g/cm)、融点が119℃の無水マレイン酸変性LLDPE(三菱化学社製、商品名:M512VF)である。
(5)APO(2):MFRが0.8(g/10分)、密度が0.92(g/cm)、融点が122℃の無水マレイン酸変性LLDPE(三菱化学社製、商品名:M132B)である。
【0038】
(6)PMMA粒子(a):平均粒子径(d(C))が13μmの架橋したポリメチルメタクリレート微粒子(日本触媒社製、商品名:エポスターMA1013)である。
(7)PMMA粒子(b):平均粒子径(d(C))が10μmの架橋したポリメチルメタクリレート微粒子(日本触媒社製、商品名:エポスターMA1010)である。
(8)PMMA粒子(c):平均粒子径(d(C))が6μmの架橋したポリメチルメタクリレート微粒子(日本触媒社製、商品名:エポスターMA1006)である。
(9)PMMA粒子(d):平均粒子径(d(C))が2.5μmの架橋したポリメチルメタクリレート微粒子(日本触媒社製、商品名:エポスターMA1002)である。
(10)ゼオライト:平均粒子径(d(C))が7μmのゼオライト(水澤化学社製、商品名:シルトンJB70)である。
(11)タルク:平均粒子径(d(C))が2.8μmのタルク(林化成社製、商品名:ミクロンホワイト5000)である。
(12)EA:エルカ酸アミド(日本化成社製、商品名:ダイヤミッドL200)である。
【0039】
<評価項目>
(1)滑り性:実施例、比較例で得られた円筒状の積層フィルムを、ロール状のまま温度23℃、湿度65%の室内に3日放置した後、積層フィルムを巻き戻し、巻芯部付近から所定の大きさに切断した1枚の積層フィルムを作成し、試験片とした。この試験片につき、ASTM−D1894に準拠した摩擦測定機(東洋精機社製、型式:TR型)を使用して、最外層(A)における動摩擦係数を測定した。この値が小さいほど滑り性に優れていることを意味し、0.35以下であると滑り性に優れていると判定でき、0.30以下であると特に優れていると判定できる。
【0040】
(2)開口性:実施例、比較例で得られた円筒状の積層フィルムを、ロール状のまま温度23℃、湿度65%の室内に3日放置した後、積層フィルムを巻き戻し、巻芯部付近で押出方向の長さが約0.3mに切断し、ついで、対向する最内層(B)の界面で剥がれないようにしつつ、平面形状が図1に記載の寸法に打ち抜き、対向する最内層(B)同士が接触している2枚1組の試験片を作成した。なお、A’はAと同一の大きさ、形状、位置で、円筒状のフィルムから切断した際に、Aに対向する部分に形成される部分であるので、通常正面図では見えないが、わかりやすくするために、A’として図に示してある。この試験片につき、図1に記載の押出方向に突起した試験片のA、A´部位を、引張試験機(オリエンテック社製、型式:RTC−1210A)の上下2つのチャックで保持し、引張速度300mm/分の条件で、2枚1組の試験片が剥がされるときのロードセルから検出される負荷を測定した(単位:N)。この値が小さいほど開口性に優れていることを意味し、0.3N以下であると開口性に優れていることを判定でき、0.01N以下であると特に優れていると判定できる。
【0041】
(3)透明性:実施例、比較例で得られた円筒状の積層フィルムを切断し、所定の大きさにした1枚の積層フィルムを作成し、試験片とした。この試験片につき、JIS K7105に準拠した全自動ヘーズメーター(東京電色技術センター社製、型式:TB−H3DPK)を使用してヘーズを測定した(単位:%)。この値が小さいほど透明性に優れていることを意味し、6.0%以下であると透明性に優れていると判定でき、5.0%以下であると特に優れていると判定できる。
【0042】
(4)衛生性:実施例、比較例で得られた円筒状の積層フィルムを約1.0m巻き戻して、押出し方向と直角方向にのみ切断し、切断した部分に沿って10mm幅のヒートシールを施し、包装袋を製造した。この包装袋に、エタノールと純水との混合液{混合比:90/10(重量%)}を3リットル充填した。温度23℃、湿度65%の室内に30日放置した後、前記混合液を蒸発・濃縮させ、包装袋の蒸発残留物を精秤した(単位:mg)。蒸発残留物の重量が少ないほど、滑剤(架橋したポリメチルメタクリレート微粒子、エルカ酸アミド)が包装袋に充填した上記混合液に溶出または離脱していないので、衛生性が優れていることを意味し、1.0mg未満であると衛生性に優れていると判定できる。
【0043】
(5)総合評価:上記(1)〜(4)に記載した項目を対象にして、全ての項目で優れており、かつ、2項目以上特に優れていると判定したものを「◎」、全ての項目で優れていると判定したものを「○」、それ以外は「×」と評価した。
【0044】
[製造方法]
<実施例1、実施例3、比較例1〜比較例5、比較例7>
最外層(A)用としてS−PBTを、微細粒状の滑剤(C)としてPMMAまたはタルクを、表1または表2に記載した割合で秤量し、リボンブレンダーによって均一に混合してドライブレンド物を得た。得られたドライブレンド物を、二軸押出機(日本製鋼所社製、型式:TEX30HBT、スクリュウ構成:ステンレス合金製)を使用し、吐出量を15kB/時、スクリュウ回転数を200rpm、シリンダー温度を270℃に設定した条件で、溶融混練してペレットを得た。ついで、最外層(A)用として上記ペレット、接着剤層(1)用としてAPO(1)ペレット、および最内層(B)用としてL−LDPEペレットを準備した3種3層環状ダイが装着された水冷式インフレーション成形機(住友重機械モダン社製)に、3台の押出機(池貝鉄工社製、スクリュー径:40mmφ、L/D:28)を連結し、各押出機のホッパーに上記ペレットを投入し、押出樹脂温度を260℃、水冷温度を28℃、巻取り速度を10m/分、冷却水量を15リットル/分の条件で、各層の厚さを表1または表2に記載した厚さとし、折径150mmの円筒状の3層積層フィルムを製造し、得られた積層フィルムを直径3インチの紙管に巻き取った。得られた円筒状の3層積層フィルムにつき、前記評価項目についての評価を行い、得られた結果を表1および表2に記載した。
【0045】
<実施例2>
実施例1に記載の例において、最外層(A)としてPA6を、接着剤層(1)としてAPO(2)を使用したほかは、実施例1におけると同様の手順で円筒状の3層積層フィルムを製造した。これらの得られた円筒状の3層積層フィルムにつき同様の評価を行い、得られた結果を表1に記載した。
【0046】
<実施例4〜実施例5、比較例6>
実施例1で使用した3種のペレット、中間層としてPA6のペレット、および接着剤層(2)としてAPO(2)のペレットを、5台に増設した実施例1におけると同一型式の押出機のホッパーに投入し、5種5層環状ダイが装着された水冷式インフレーション成形機(住友重機械モダン社製)に5台の押出機を連結し、各押出機のホッパーに上記ペレットを投入し、実施例1におけると同様の手順で、円筒状の5層積層フィルムを製造した。これらの得られた円筒状の5層積層フィルムにつき同様の評価を行い、得られた結果を表1および表2に記載した。
【0047】
<実施例6>
実施例4に記載の例において、微細粒状の滑剤(C)としてゼオライトを使用したほかは、実施例4におけると同様の手順で円筒状の5層積層フィルムを製造した。これらの得られた円筒状の5層積層フィルムにつき同様の評価を行い、得られた結果を表1に記載した。
【0048】
<比較例8>
実施例1に記載の例において、微細粒状の滑剤(C)として有機化合物系滑剤であるEAを使用したほかは、実施例1におけると同様の手順で円筒状の3層積層フィルムを製造した。これらの得られた円筒状の3層積層フィルムにつき同様の評価を行い、得られた結果を表2に記載した。
【0049】
<比較例9>
L−LDPEに対しEAを1500ppm秤量し、これらをリボンブレンダーによって均一に混合してドライブレンド物を得た。得られたドライブレンド物を、二軸押出機(日本製鋼所社製、型式:TEX30HBT、スクリュウ構成:ステンレス合金製)を使用し、吐出量を15kB/時、スクリュウ回転数を200rpm、シリンダー温度を270℃に設定した条件で、溶融混練しペレットを得た。このペレットを最内層(B)に使用したほかは、実施例1におけると同様の手順で、円筒状の3層積層フィルムを製造した。この得られた円筒状の3層積層フィルムにつき評価を行い、得られた結果を表2に記載した。
【0050】
【表1】

【0051】
【表2】

【0052】
上記表1および表2より、次のことが明らかとなる。
(1)微細粒状の滑剤(C)の配合量および{(d(C))/(d(A))}が、いずれも請求項1で規定する要件を満たす熱可塑性樹脂製積層フィルムは、滑り性、開口性、透明性、および衛生性のいずれにも優れている(実施例1〜実施例6参照)。
(2)これに対して、微細粒状の滑剤(C)が配合されていない熱可塑性樹脂製積層フィルムは、滑り性、開口性に劣っているので、包装袋製造用原料としては適さない(比較例1参照)。
(3)微細粒状の滑剤(C)が配合されていても、配合量が0.01重量%未満の熱可塑性樹脂製積層フィルムは、滑り性、開口性に劣っているので、包装袋製造用原料としては適さない(比較例2参照)
(4)微細粒状の滑剤(C)が配合されていても、配合量が5.0重量%を超えた熱可塑性樹脂製積層フィルムは、滑り性および開口性が劣るので、包装袋製造用原料としては適さない(比較例3参照)。
(5)微細粒状の滑剤(C)が請求項1に規定する範囲で配合されていても、{(d(C))/(d(A))}が1未満の熱可塑性樹脂製積層フィルムは、滑り性、開口性などに劣っているので、包装袋製造用原料としては適さない(比較例4〜比較例6参照)。
(6)微細粒状の滑剤(C)が配合されていても、{(d(C))/(d(A))}が4を超える熱可塑性樹脂製積層フィルムは、衛生面が著しく劣るので、食品用、医療用包装袋の製造用原料には適さない(比較例7参照)。
(7)微細粒状の滑剤(C)の代わりに、従来から知られている有機化合物系滑剤(エルカ酸アミド)が最外層(A)に配合されていても、開口性が著しく劣るので、包装袋製造用原料には適さない(比較例8参照)。
(8)微細粒状の滑剤(C)の代わりに、有機化合物系滑剤(エルカ酸アミド)が最内層(B)に配合されていても、滑り性や開口性が著しく劣るので、食品用、医療用包装袋の製造用原料には適さない(比較例9参照)。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明に係る熱可塑性樹脂製積層フィルムは、滑り性、開口性などに優れているので、包装袋製造用原料として好適である。また、本発明の第2発明に係る熱可塑性樹脂製積層フィルム製の包装袋は、滑り性、開口性のほかに、透明性、衛生性にも優れているので、包装袋の外側から収納した物品の有無を容易に確認でき、包装袋の成分が収納した物品(特に液状物)に溶け出さないので、食品用、医療用の包装袋として好適である。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明に係る熱可塑性樹脂製積層フィルムにつき、開口性の評価試験で使用した試験片の平面図である。
【符号の説明】
【0055】
A、A’:引張試験機のチャックで保持される突起

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂を少なくとも2層以上積層された積層フィルムであって、最外層を構成する熱可塑性樹脂(A)に配合される微細粒状の滑剤(C)の配合量が、0.01〜5.0重量%であり、微細粒状の滑剤(C)の平均粒子径(d(C))と最外層を構成する熱可塑性樹脂(A)の厚さ(d(A))との比{(d(C))/(d(A))}が、1.0〜4.0であり、かつ、インフレーション法によって製造されたものであることを特徴とする、熱可塑性樹脂製積層フィルム。
【請求項2】
微細粒状の滑剤(C)の平均粒子径(d(C))が7〜15μmである、請求項1に記載の熱可塑性樹脂製積層フィルム。
【請求項3】
微細粒状の滑剤(C)が、架橋したポリメチルメタクリレート微粒子である、請求項1または請求項2に記載の熱可塑性樹脂製積層フィルム。
【請求項4】
最内層に、シーラント層が設けられてなる、請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂製積層フィルム。
【請求項5】
熱可塑性樹脂製積層フィルムが、水冷インフレーション法によって製造されたものである、請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂製積層フィルム。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂製積層フィルムを原料として、製造されたものであることを特徴とする包装袋。

【図1】
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【公開番号】特開2007−307708(P2007−307708A)
【公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−135920(P2006−135920)
【出願日】平成18年5月16日(2006.5.16)
【出願人】(594137579)三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社 (609)
【出願人】(591200575)四国化工株式会社 (16)
【Fターム(参考)】