説明

熱弾性プローブを有する生物化学的センサ

入射電磁励起ビームに対する或る材料の熱弾性応答は、該材料の表面において存在する物理的状態に対して大いに感度を有する。プローブ材料を担持するプローブ構造は、生物化学的分子の分析及び調査におけるセンサとして用いられる。各プローブ構造は、電磁放射を一時的に変えることにより励起されるときに熱弾性応答を受けるように適合され、熱弾性応答の特性は、プローブ構造の表面に結合する材料の物理的特性の関数である。電磁励起手段は、励起応答を引き出すために、プローブ構造の選択された1つに電磁エネルギを向ける。検出手段は、プローブ構造への分子の結合から帰結するプローブ構造の励起応答における変化を決定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トランスデューサ・センサ・デバイスに関し、特に、分子構造の、例えば生化学の、分析に用いられ得るかかるデバイスのアレイに関する。
【背景技術】
【0002】
DNA塩基配列決定中に生じるもののような生物化学的分子構造の効率的な分析及び調査のために、実質的に同時に数百のまたはさらに数千もの分子プローブの使用を可能とする分析用ツールに対する強い需要がある。
【0003】
これを達成する1つの方法は、非常に多くの異なったプローブ分子を有するサブストレートを提供することであり、プローブ分子はサブストレートの表面にアレイで結合される。各プローブ分子は、分析下のサンプルにおける選択された目標分子と結合するよう適合される。サンプルには、まず、プローブ分子のアレイに露出させるもしくは接触させるのに先立って適切な蛍光性マーカが設けられる。アレイにサンプルを露出させた後、アレイ内の各異なったプローブ分子の場所及び身元が既知ならば、サンプルの分析は、それぞれのプローブ分子に結合されたサンプル分子の存在を蛍光が示すアレイ位置を識別するための共焦点顕微鏡を用いて可能である。
【0004】
代表的には、プローブ分子はオリゴヌクレオチドであり、分析下のサンプルは、DNA塩基配列である。このような蛍光性技術を用いれば、比較的高いプローブ密度が可能である。
【0005】
かかる技術の欠点は、プローブ・アレイへの露出後に蛍光の検出を許容するようサンプルが蛍光性マーカで予め処理されなければならないということである。さらなる欠点は、顕微鏡撮像システムが高価格であり、かつ、急速な分析に対して不便で有り得るということである。
【0006】
表面プラズモン共鳴(SPR)は、内部全反射の状態下で光インターフェイスにおける薄い金属膜に生じる光現象に基づいている。通常のSPRセンサは、単一の薄い金属層で被覆されたプリズム「デバイス」を用いる。金属層の外部表面に対する任意の化学吸着または金属層の外部表面上の運動抑制された抗体またはリガンドに対する任意の化学吸着は、フィルムの屈折率における界面変化をもたらす。光ビーム(光線)をプリズムに向けることによって、良く知られたSPR共鳴スペクトルを生成するよう、輝度及び角度の関数として反射された光を測定することが可能である。この概念の最近の伸展において(米国特許第6,373,577号)、薄い金属膜で被覆された平面導波素子は、SPRが別々に発生され得る素子の線形アレイとして組織化される。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、マーカの使用を必要とせず、SPRを含まず、そして低価格の設備を用いて容易に履行され得る、プローブの1つまたはプローブのアレイを用いてサンプルを分析するための改良されたシステム及び装置に向けられている。SPRとは対照的に、本発明は、薄い金属層のような熱応答性センサの小さい領域を一時的に照射する電磁放射の高いピーク電力ビームに基づいている。ビームの入射角は一定であり、そして電磁放射は適切なトランスデューサで検出され得る熱応答を誘起する。表面に対する化学吸着は、熱応答を変調し、このことは、次に、トランスデューサの電気的出力に影響を与える。
【0008】
一態様によれば、本発明は、プローブにおける変動を検出するための装置であって、
電磁放射を一時的に変えることにより励起されるときに熱弾性、熱電気または熱磁気の励起応答の1つまたは2つ以上を受けるように適合されたプローブであって、前記励起応答は、プローブ及び/または該プローブに結合する材料の物理的及び/または化学的特性の関数である、前記プローブと、
電磁放射源と、
プローブに電磁放射を向けるための手段と、
プローブの励起応答を決定するよう適合されたトランスデューサと、
を備えた装置を提供する。
【0009】
プローブは、通常、分離表面上、例えばサブストレートの表面上、に担持される複数のプローブ分子(プローブ材料)を含む。サブストレートは薄膜であるのが好ましい。しかしながら、プローブ材料が独力で適切な物理的特性を有する場合には、プローブは、そのような独力の材料であって良い。
【0010】
該装置は、例えばアレイの形態で複数のプローブを含むのが好ましい。各プローブは、他のプローブ上の材料とは異なるプローブ材料を備え得る。
【0011】
プローブ材料は、同じ分子の集まりから成っていても良く、また、異なった分子の混合から成っていても良い。
【0012】
プローブの表面は平面、例えば平板であって良いが、プローブの表面は曲面、例えば球の部分であっても良く、このような曲面の表面も、用語「板」の中に含まれる。
【0013】
熱励起応答は、熱電気、熱磁気または好ましくは熱弾性であり得る。
【0014】
好ましくは、電磁放射源は、電磁スペクトルの光部分における放射を発し、一層好ましくはレーザである。電磁放射源は、放射がプローブ材料に直接入射するように位置付けられるが、一層一般的には、放射がプローブ材料に入射する前に放射に対して透明なサブストレートを最初に通過するように位置付けられる。
【0015】
もう1つの態様によれば、本発明は、以下のものを備えたセンサ、すなわち、
サブストレートと、
電磁放射を一時的に変えることにより励起されるときに熱弾性、熱電気または熱磁気の励起応答の1つまたは2つ以上を受けるように適合された、サブストレートの表面上の1つまたは2つ以上のプローブであって、前記励起応答は、プローブ及び/または該プローブに結合する材料の物理的及び/または化学的特性の関数である、前記プローブと、
を備えたセンサを提供する。
【0016】
センサは、板の形態にあるのが好ましい。
【0017】
サブストレートは、電磁的に透明であるのが好ましく、そしてサブストレートは、トランスデューサとして動作しても良く、またはトランスデューサの部分であっても良い。サブストレートは、取扱いの容易性のために充分な強度を有するような厚さで、また所望量の電磁放射が通過するのを許容するような厚さのものでもあるのが便宜的である。便宜的な厚さは、概して0.2から1.0mmの範囲内である。
【0018】
好ましくは、センサは、
複数のプローブ、例えば以下で定義するような薄膜のプローブ構造を含み、プローブの各々は、電磁放射を一時的に変えることによりプローブが励起されるとき局所化された電気応答を受けるように適合され、かつそれに対応する電気出力応答を発生し、電気応答の特性は、プローブの及び/またはそれに結合する材料の物理的または化学的特性の関数であり、
そしてセンサは、電気応答を送信するためのトランスデューサを含む。
【0019】
異なったプローブ材料が異なったプローブに結合されるのが好ましい。プローブが別の表面に結合されるプローブ材料を含むとき、該表面は、それぞれのプローブ材料を受けて該プローブ材料が表面に付着するのを援助するために、例えばシリカの層、好ましくは薄い層を担持するのが好ましい。層は、例えば、約10nmの厚さであって良い。
【0020】
一態様において、本発明は、プローブの熱弾性、熱電気または熱磁気応答が、プローブの表面において存在する物理的及び/または化学的状態に対して大いに感度を有し得るという現象を用いている。事実、熱弾性(音響)応答特性は、実質的に、表面に結合される質量、表面こわさ、誘電定数、粘性、界面自由エネルギ及び他の一般的な表面特性の関数として変わり得るということが示された。
【0021】
本発明は、例えば、熱(例えば熱弾性)応答が質的または量的のいずれかで評価され得るサブストレートの表面上の1つまたは2つ以上の独立した場所(スポットまたはドット)を提供することにより、この現象を利用する。1つ以上の場所が関連する場合には、応答特性は、別々に評価され得る。場所は、プローブのアレイとして形成されるのが好ましく、アレイは、1平方センチメートルにつき100及び1,000,000間の場所の密度を有するのが好ましく、より好ましくは、1平方センチメートルにつき100及び100,000間の場所の密度であるのが好ましい。アレイにおける各場所は、事実上、独立してアドレス指定可能のプローブを提供する。各プローブは、電磁放射のビーム、例えばレーザ・ビームにより熱応答を発生するように励起され得る。
【0022】
電磁の、例えばレーザのビームの下で、プローブは、エネルギ、例えば光エネルギを吸収し、該エネルギは、ここでは熱弾性応答と称される振動または音響エネルギであって良い熱エネルギに変換される。パルス化されたレーザから導出される周期信号が、同期検出に基づく高性能検出回路とリンクさせるために、従って、高い信号対雑音比を提供するために理想的である。プローブのショート・ナノ(Short nano)またはサブ・ナノ(sub-nano)秒の加熱は、プローブにおける局所的な容積膨張を、その密度、熱膨張係数及び反射係数の関数として生成する。
【0023】
プローブが、分析されるべきサンプルから導出される1つまたは2つ以上の分子を、付着し、例えば化学的に不動にし、結合するかまたはそれに固定させる場合、局所化された容積膨張が、付着された分子により変調され、それにより、差動の熱弾性膨張を提供する。熱弾性応答におけるこの変調が、本発明において用いられる。
【0024】
この発明により、非常に小さいプローブが用いられ得、結果として、一層小さい量のサンプルをプローブに付着させることで、プローブの特性における比較的大きい変化がもたらされ、このように、高い程度の感度が提供される。
【0025】
さて、添付図面を参照して例に基づき本発明の実施形態を説明する。なお、添付図面において、同様の数字は同様の部品を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
図1を参照すると、サブストレートに結合した材料における空間的に局所的な変動を検出するためのトランスデューサ装置1が示されている。好ましくは、ガラスまたは類似の材料から形成されたサブストレート10は、便宜的に構成された配列でサブストレートの上面12に装着された1つまたは2つ以上の熱弾性感知薄膜構造11を有する。感知構造11の各々は、熱弾性薄膜構造の露出された上部表面に装着されたプローブ材料13を有する。薄膜構造は、以後、プローブ構造として言及される。
【0027】
好ましくは、プローブ構造11は、ほぼ10−6から10−5平方センチメートルの表面面積を有する任意の適切な形状のドットまたはスポットを備える。好適な実施形態において、プローブ材料は、特定のDNA断片と結合するよう適合されたオリゴヌクレオチドを備える。各プローブ構造、またはプローブ構造のグループは、それに結合された異なったオリゴヌクレオチドのプローブ材料を有する。
【0028】
本実施形態において、サブストレート(もしくは基板)10は、光学的に透明であり、その下には、光源14、例えば、Qスイッチレーザが位置付けられており、サブストレートの厚さを通してプローブ構造に励起信号を与える。光源と一緒に、プローブ構造から反射されたまたは戻された光放射における変調を検出するための光学検出システム15がある。励起及び検出システムは、アレイの走査を可能とするために、好ましくはサブストレートと実質的に平行な平面において、サブストレートに対して変位可能であり、また、任意選択的には互いに対して変位可能である。
【0029】
複数のフラグメント(もしくは断片)17、例えばバッファ溶液におけるDNA断片を含むサンプル16は、サブストレートの上面12と接触状態にされ、そこで、特定のフラグメント(もしくは断片)17が特定のプローブ材料13と結合する。特定のプローブ構造11のプローブ材料13とサンプル16、17との結合は、プローブ構造に誘起される熱弾性応答の特性に変化をもたらし、この変化は、励起及び検出システム14、15を用いて検出される。
【0030】
励起及び検出
さて、図2を参照して、励起及び検出システムの好適な配列を説明する。
レーザ源14は、ビーム・スプリッタ21に、適切な波長(例えば1056nm)の励起ビーム20を出力する。励起ビームの第1の部分20aは、サブストレート10にビーム・スプリッタ21によって送られ、第2の部分20bは、検出システム15に分散させられる。励起ビームの第1の部分20aは、サブストレート10上に入射し、サブストレートを貫通して伝えられ、そして選択されたプローブ構造11上に向けられる。
【0031】
連続した低出力のレーザ源22からの検出ビーム23も、ビーム・スプリッタ21に向けられる。検出ビームの第1の部分23aは、ビーム・スプリッタによってサブストレート10に向けて反射され、そこで、プローブ構造から反射されて、干渉ビーム23bとして検出システム15に屈折される。検出ビームの第2の部分23cは、干渉ビームとして直接検出システムに送られる。2つの検出ビーム経路23b及び23c間に干渉が生じ、この干渉は、検出システム15により検出される。検出ビーム23bは、全プローブ構造に渡る励起を検出することができるように、プローブ構造よりも幅広いのが好ましい。
【0032】
この例示的な実施形態において、プローブ構造11は、ほぼ10から500nm(より好ましくは10から100nm)の厚さで、ほぼ1から100μmの直径を有する金属膜を備えるのが好ましい。代替的には、個々のプローブ構造は、励起ビーム領域によって効果的に限定されるプローブ領域を有する連続フィルム内に限定され得る。
【0033】
プローブ構造は、必要な熱弾性特性を提供する任意の適切な金属または他の材料から形成され得、該材料はそれに対し適切な材料の結合を許容するか、または適切なプローブ材料の取り付けのために化学変更を許容する。化学的取り付けの容易さのためには金が好適であり、その熱弾性特性のためにはアルミニウムが好適である。他の適切な材料は、銀、チタニウム、銅、タングステン及び重合体材料を含む。
【0034】
励起ビーム20aの部分は、プローブ構造11によって吸収され、プローブ構造における熱弾性体積変化を生じる。この体積変化は、プローブ構造11の厚さ、面積または位置における変化の1つまたは2つ以上をもたらす。例えば、励起ビームは、金属の局所化された加熱によって駆動されるプローブ構造11における縦波を生成する。
【0035】
好適な配列においては、サブストレート(もしくは基板)上に落ちる励起ビームの出力密度は、3×1011W.m−2の程度のものであり、この出力密度は、約2%のプローブ構造上の最大ひずみをもたらし、すなわち、熱弾性フィルムの幅または厚さがこの量だけ増加する。一般的には、励起ビームの必要とされる最小の出力密度は、検出装置によって測定可能な最小の熱弾性応答に依存する。本実施形態において、励起ビームのこの最小の出力密度は、3×10W.m−2程度のものであろう。
【0036】
a.ビーム23bとしてプローブ構造11から反射されるビーム23aと、b.基準ビーム23cと、の結合から形成される干渉計は、励起ビームの短期間パルスの間で動作する。プローブ構造の大きさにおける熱弾性変化は、光ダイオード検出器15において、対応の振幅、位相及び位相角変動をもたらす。プローブ構造11の位置及び膨張は、それに結合するプローブ材料(及び/またはプローブ材料に取り付けられる任意のサンプル材料)の関数である。
【0037】
その結果は、光ダイオード15において測定された励起への応答の振幅、位相及び位相角が、プローブ構造13に結合された材料の量に直接関係するということである。同様に、プローブ構造におけるエネルギの任意の蓄積は、時間と共に減衰する振動共振、例えば音響共振をもたらし、該共振は、一応の結果に対して、図6に後で示すように、プローブ構造13に結合された材料の量に逆比例する。
【0038】
一般的な用語において、電磁励起、例えば、レーザ励起に起因するプローブ構造の熱弾性応答は、プローブ構造が光を反射する方法における変化をもたらす。熱応答における変化は、検出システム15によって検出され得るプローブ構造の表面に結合された材料の物理的及び/または化学的特性に対して生じる任意の変化の関数として生じるであろう。励起応答が、それに結合されたプローブ材料13と共にプローブ構造に対して最初に測定され(較正データ)、次に、サンプル16に対しプローブ材料が露出された後に再測定された(サンプル・データ)ならば、プローブ構造の表面に結合する材料(例えば、任意の断片17)の物理的及び/または化学的特性に対する何らかの変化が、熱応答における変化の大きさによって、例えば量的に、示されるであろう。ある分析目的のためには、質的応答が充分であり得る。
【0039】
サンプル16のためのデータは、較正データとサンプル・データとの間の差によって取得される。高速アナログ・デジタル変換器(例えば、デジタル化オシロスコープのような過渡応答記録器25)は、利用可能なソフトウエアによる分析のために、この情報を一連のデジタル波形に変換する。サンプルにおける既知の断片(部分)とプローブ構造上の既知のプローブ材料との相互作用からデータを記録及び記憶することは、未知の組成のサンプルにおけるかかる断片の急速な識別を可能とする。例えばオシロスコープのような広帯域波形取得システムの長所は、時間領域信号がその初期の動作からその最終のリラクゼーションまでの励起の全記録であるということである。より少ない詳細放出応答が必要とされる場合、例えば、形態において簡単でありかつ高周波成分を必要としないロックイン増幅器のような低周波同期方法を用いることが可能である。
【0040】
当業者は、熱弾性応答が幾つかの方法で測定され得るということを認識するであろう。
【0041】
レーザ14の励起エネルギは、単一パルス(例えば質的データだけが必要とされる場合)、または一連のパルス(例えば量的データが必要とされる場合)の形態であって良い。各パルスごとに、励起パルスの立ち上がりエッジに対するプローブ構造の誘起されたストレス応答が、受信された信号から分析され得、かつオシロスコープ(図示せず)上にディスプレイされ得る。
【0042】
代替的には、励起レーザのQスイッチ・レートが、高められた信号対雑音比を提供するために、ロックイン増幅器を同期させるよう用いられ得る。
【0043】
さて、図3を参照して、プローブ構造、励起システム及び検出システムの代替的実施形態を説明する。この配列においては、各プローブ構造30は、誘電的で光学的に透明なサブスレート31の上面上の、電気的に導通の熱弾性材料の連続した薄膜32に形成される。薄膜32は、圧電トランスデューサの上部電極を提供し得る。光学的に透明なサブストレートは、石英であるのが好ましい。
【0044】
好適な配列において、サブストレート31の下部表面上に形成される下部電極34は、励起ビーム20のためのプローブ構造30へのアクセスを提供する、光学的に開口された新規な電極である。新規な(エントラントな)電極は、接地面を提供するよう適切な電気的に導通する材料の膜を備え、それにより外部の電磁干渉を減少する。従って、プローブ構造30のサイズは、励起ビーム20の寸法によって効果的に決定され得る。新規な電極が、例えば、インジウム/錫酸化物組成のような光学的に透明で電気的に導通する材料から形成される場合には、開口は形成される必要がない。
【0045】
この例における電磁励起ビーム20は、Qスイッチレーザ14によって発生される光ビーム(光線)を含み、そして1.0〜100μmの程度の幅であるのが好ましい。プローブ構造30は、ビームの強度及び場所に応じて、その熱弾性容積変化による光励起ビームの入射に応答する。このことは、プローブ構造30に振動応答(例えば、音響応答)を生成し、該振動応答は、隣接の圧電性サブストレート31における動作を誘起して、それにより、信号電流35を生成する。
【0046】
その結果は、プローブ30に誘起された振動がサブストレート31に結合されるということである。広範囲の周波数が、高周波電流として発生される。
【0047】
この実施形態においては、レーザ励起に起因するプローブ構造30の熱弾性応答が、プローブ構造の電子特性の変調に帰結する、例えば、それは熱弾性励起応答を駆動するであろうということが理解されるであろう。この熱弾性応答における変化は、光学的ベースの検出システムではなく、むしろ電気的ベースの検出システムによって検出され得る、プローブ構造の表面に結合する材料の物理的及び/または化学的特性に対して生じる任意の変化の関数として生じるであろう。
【0048】
プローブ構造における音響波の、従って、誘起された信号電流の周波数及び振幅は、プローブ構造30の表面に結合された材料33の物理的及び/または化学的特性の関数である。従って、もしプローブ構造30の表面に結合された材料33の質量または他の物理的及び/または化学的特性が変化したならば、電流35の振幅及び周波数の結果の変化が観察される。以下に説明するように、このことは、オシロスコープ上でモニタされ得る。図6Aは、励起レーザ・ビームがプローブ構造に衝突したときの初期応答を含む熱弾性応答信号を示す。図6Bは、プローブ構造における蓄積された音響エネルギの減衰を示し、図6Cは、刺激された種々の周波数成分を示す受信された熱弾性応答信号のフーリエ変換である。
【0049】
プローブ構造に結合された材料の物理的及び/または化学的特性に対して生じる変化は、検出システム15によって検出され得る。もし、励起応答が、最初に、プローブ構造に結合されたプローブ材料33を有するプローブ構造に対して測定され、そして次に、プローブ材料をサンプル16に露出した後に再度測定されるならば、プローブ構造の表面に結合する材料の物理的及び/または化学的特性に対する任意の変化が、例えば、励起応答における変化の大きさによって量的に示されるであろう。
【0050】
さて、図4を参照して、プローブ構造、励起システム及び検出システムの代替的な実施形態を説明する。図3の配列と同様に、この実施形態もまた励起ビームに対する電気応答を発生する。この配列において、プローブ構造40は、薄い光学的に透明なサブストレート10上に形成される。プローブ構造は、サブストレート上に形成された電極40a、その上に形成されたトランスダクション膜40b及び上部の粘着被覆40cを備える層化された構造であり、被覆40cは、プローブ材料44のそれへの結合を容易にするようなものである。
【0051】
この例における(そして他の幾つかの例における)光励起ビーム20、20aは、代替的には、14aで示される、サブストレートの上部から向けられても良い。励起ビーム20、20aは、プローブ構造40上に向けられ、そしてトランスダクション膜40bの結果の熱弾性、熱電気及び熱電磁応答が、電極40aを介して検出可能な電気出力を発生する。
【0052】
プローブ構造によって出力される赤外線放射は、ピロ電気膜(焦電性膜)であるトランスダクション膜40bによって検出され得る。プローブ構造による音響放出は、電極40a、例えば、金属膜電極によって検出され得る。熱磁気励起応答の場合、トランスダクション膜40bは、プローブ構造からの磁界放出に応じてその抵抗を変える磁気抵抗層であって良い。
【0053】
図2のシステムと同様に、プローブ構造の赤外、音響、磁気または電荷放出応答は、プローブ構造の表面に結合する材料の物理的及び/または化学的特性の関数として変化する。プローブ構造の表面に結合される質量が増加するならば、変化された、通常はより大きい、放出応答が観察される。
【0054】
好適な実施形態において、トランスデューサ素子は、そこからの信号電流の直接の電気ピックアップを提供する。代替的な実施形態においては、信号ピックアップは、例えば、電磁誘導により遠隔的であって良い。例えば、圧電トランスデューサが、既知の原理に従って適切なアンテナにより遠隔的に検出され得る電磁信号を提供することができる。
【0055】
代替的には、電荷放出は、その屈折率を変えて既知の技術に従って光信号として検出可能であろう適切なトランスダクション膜の電気光学効果(Kerr,PockelsまたはFaraday)によって検出されることができる。
【0056】
図5Aから図5Dを参照して、励起及び検出システムの4つの代替的な配列を説明する。
【0057】
図5Aは、デジタル・オシロスコープ検出システムを示す。これは、プローブ構造における正確な寸法的または位置的変化を追跡することができるので、図2のプローブ構造のための好適なシステムである。励起ビーム20は、いずれかの単一放出を生成するか、または良く知られた技術に従って例えば10から200kHzまでの幾つかの周波数で自己変調されるQスイッチレーザ14を用いて発生される。
【0058】
検出(干渉)ビーム23bは、光ダイオード52、前置増幅器53及びデジタル化オシロスコープ54を含む光検出システム15に向けられ、デジタル化オシロスコープ54は、Qスイッチレーザに隣接してビーム・スプリッタ60によってそれに光学的に結合される光検出器61によってトリガされる。
【0059】
励起ビーム20は、数kHz、例えば、10から200kHzまでの信号によって変調され得る。プローブ構造11は、パルス化された励起ビーム20に露出され、そして、例えば、約0.1%及び10%の間だけ、容積的に増加する。このことは、光経路における変化、例えば、干渉、及びビーム領域における変化に起因して検出ビーム23bにおける位相及び輝度の変化をもたらす。ビーム領域における変化は、プローブ構造のサイズにおける変化の結果として生じる。代表的には、プローブ構造11における横方向移動の加速度は、検出ビーム23bにおける輝度変化から検出可能であり、プローブ構造に結合された材料の質量変化に対応する。好適な実施形態においては、10−14から10−10までの範囲における質量変化が検出可能であり得る。さらに、プローブ構造の境界における反射は、代表的には、20MHz及び200MHz間の周波数並びに10及び10−1間の減衰定数を有する特性共振減衰をもたらす。プローブ構造11に結合された材料の任意の変化は、減衰の形態を変える。
【0060】
デジタル化オシロスコープは、その結果を、サブストレート上の異なったプローブ構造からの多くの励起応答を迅速に評価するために、適切な自動化されたデジタル記憶及び処理システム(図示せず)と通信し得る。
【0061】
図5Bは、これもまた図2のプローブ構造に適したロックイン増幅器検出システム58を示す。ほとんどの構成要素は、図5Aを参照して説明したものと同様であり、共通の参照数字によって示されているが、ノイズを減少するよう動作するデジタル・フィルタ62が追加されている。しかしながら、この場合、Qスイッチレーザ14の反復出力は、10から200kHzの基準信号として用いられる。フィルタ周波数は、検出信号の信号対ノイズ比を最適にするために、プローブ構造の適切な音響放出に選択される。応答周波数は、代表的には、1から2000MHzの範囲内にあり、断片17がプローブ構造11上に吸着されるとき10%の最大値だけ偏向される。
【0062】
図5Cは、出力信号電流35から熱弾性応答を直接検出するための図3のプローブ構造に特に適合されたオシロスコープ検出システム36を示す。このシステムにおいて、Qスイッチレーザ14は、オシロスコープ36のためのトリガ信号を(光検出器61において)生成する。プローブ構造30の電気検出信号(出力信号35)は、前置増幅器53を介してオシロスコープに与えられる。パルス化されたレーザ14によって生成される出力信号のフーリエ変換が、断片17の一層詳細な特性を決定するために用いられる。
【0063】
プローブ材料13上への断片17の吸着の後、周波数及び時間減衰における変化が観察され得、そしてこれらの変化は、プローブ構造上に吸着される断片17、従って、サンプル16を評価するために用いられ得る。
【0064】
図5Dは、デジタル・フィルタ62を用いて背景ノイズから電気放出信号35を実質的にフィルタリングする代替的な同期検出システムを示す。これは、不所望の周波数範囲からノイズを除去し、そして一層高い利得増幅を許容する。該システムは、トランスデューサからの放出信号35を統一的に一体化し、外来信号をゼロに平均化する。
【0065】
図5A、5B、5C及び5Dの全ての実施形態において、代表的な信号電圧出力は、10μVから100μVとの範囲にあり、そして例えば10−14から10−10gのプローブ構造の質量変化を検出するための充分な感度を提供する。
【0066】
オシロスコープによって電極から受信される電気検出信号の例が図6に示されている。図6Aは、パルス化された励起ビームに対するプローブ構造の励起応答を示す。70で示された傾斜は、プローブ構造の熱弾性加速度の測定を提供する。図6Bは、単一パルス励起に対するプローブ構造の励起応答を示す。減衰プロフィール71は、プローブ構造によって蓄積されかつ放出される熱弾性エネルギの測定を提供する。図6Cは、プローブ構造の励起応答の周波数スペクトル64を示す。
【0067】
サッカロース溶液に露出する前後のプローブ構造の熱弾性応答における変化(振動)の例示的特性応答が、図7Aに示されている。
【0068】
タンパク結合の効果が図7Bに示されており、ポリヌクレオチドのハイブリッド形成法(混成化)の効果が図7Cに示されている。
【0069】
図7に示された結果は、石英もしくは水晶サブストレート上の100nmのアルミニウム熱弾性層を用いて25℃において得られた。サッカロースは、蒸留水に溶解され、そしてタンパク質及びDNA溶液は、pH6.2におけるPBSに溶解された。図7B及び図7Cにおいて、Protein A及びPoly Cがプローブ材料として用いられている。
【0070】
上部の曲線は時間領域応答であり、下部の曲線は周波数領域応答である。応答における相当の変化がこれらの界面反応に続いて観察される。
【0071】
サンプルの繰出し
プローブ構造へのサンプルの塗布は、幾つかの異なった方法で達成され得る。DNA分析のためには、DNAサンプルが全血から抽出され得る。DNAの分離は、セルを接触電極に搬送する誘電泳動フィールド(dielectrophoretic field)によって行なわれる。1から10MHzのAC信号源が、搬送力を提供するために接触電極に印加される。このことは、セルを分離するためにサンプルを遠心処理する必要性を除去する。セルが電極にある場合、電圧パルスが印加されてセルを崩壊し、隔膜を突破してセルの内容物を放出する。切取り酵素がゲノムDNA鎖を切断するために用いられて、連鎖可能の長さ(sequenceable lengths)を、プローブ構造上のオリゴヌクレオチドの長さに類似させる。DNAのアニーリング温度以上の温度が、二本鎖を分離するために用いられて、分析のために一本鎖を提供する。プローブ構造11のアレイへのサンプルの露出は、小さいアレイ面積に対しては特に、単一のステップで生じ得る。また、例えば、各プローブ構造上にサンプルをピペットで移すことにより、複数ステップの露出も意図されている。
【0072】
結合化学作用
核酸のようなプローブ材料13、33、44が、種々の適切な化学作用を用いて音響トランスデューサ・アレイのプローブ構造11に結合され得、以下が、その化学作用の可能性の完全ではないリストである。結合化学作用は、それらの好適なサブストレート型に対して示される。
【0073】
1. アビジンまたはストレプトアビジンが金の表面に吸着され得、その後、不可逆的に結合するビオチン成分で標識化されるオリゴヌクレオチドが吸着される。
【0074】
2. アミノ機能化されたオリゴマー(3’及び5’)が、グルタルアルデヒドを用いたガラスまたはシリコンのシラン処理された表面に結合され得る。
【0075】
3. アリキル・チオール類がオリゴヌクレオチド及びDNAに結合され得る。これらのチオール類は、次に、順序付けられた単一層被膜として金の表面上に結合する。
【0076】
4. 結晶シリコンのカルボキシル属性を与えられた表面が、ポリリジン及び異種二元機能のクロスリンカー(heterobifunctional cross−linker)の静電的な吸着によって、チオール属性を与えられたDNAに結合するであろう。
【0077】
5. アルデヒド属性を与えられたDNAオリゴヌクレオチドが、ガラス、金及びシリコン表面上のデキストラン・アクリルアミド共重合体層に結合され得る。
【0078】
6. アミノプロピルトリエトキシシラン(aminopropyltriethoxysilane(APTES))のようなアルコキシシラン(Alkoxysilanes)が、アミノ基をカルボン酸成分に変更するよう無水コハク酸で処理される安定架橋膜を形成するために用いられる。アミノ酸連結された核酸が、次に、カルボジイミド・カプリングを介して結合するであろう。
【0079】
7. 3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン(3−mercaptopropyltrimethoxysilane(MPS))が、チオール属性を与えられたDNAを結合させるために用いられる。
【0080】
8. グリシドキシプロピルートリエトキシシラン(Glycidoxypropyl−triethoxysilane(GOPS))も、核酸とプローブ構造またはサブストレートの表面との間の一層大きい距離でチオール属性を与えられたDNAを結合させるであろう。
【0081】
9. DNA/核酸も、プローブ構造表面に直接結合させるためにシランに接合され得る。
【0082】
10. チオールは、DNAを金の表面に、そしてシランをシリカ表面に結合させる。
【0083】
上述の技術及び装置は、分析装置の価格低減及び複雑さの低減について相当の長所を提供する。良く知られた薄膜リソグラフィ(平板印刷)またはロボット・スポッティング技術が、特に回転可能なディスク上に、プローブ構造の高密度アレイを形成するために用いられ得る。現存のコンパクト・ディスクの読取り/書込み技術が、回転するサブストレートに対してレーザを位置付けるためのレーザ・ベースの励起システム及びディスク・アクセス機構を提供するために用いられ得る。このようなシステムにおいて、軸と相対的にディスクを回転させるために駆動手段が提供され、そしてインデクシング手段が、前記軸と相対的な電磁励起及び検出システムの位置を、代表的には半径方向に変える。
【0084】
結果として、分析装置は、レーザ音響トランスデューサの性質のおかげで重量において単に数キログラムであり、充分に携帯可能に作られ得る。分析装置は、非熟練の人員による使用のために設計されたほとんどまたは完全に自動装置として作られ得、そして複雑な科学的手順を必要としない。このことは非常に信頼性の高い分析を提供する。蛍光技術と違って、使用のために(例えば、光が無いまたは音がしない等の)特別の環境を必要とせず、当該装置は、塵埃及び光の混入に対して応答しないで実質的にノイズの無いものであることが分かった。プローブ構造に結合される材料だけが検出される。
【0085】
サブストレート上に形成されるプローブ構造のトランスデューサは、DNA鎖間結合及び一塩基対の差異の検出を可能とするのに充分な感度であることが分かった。使用される音響周波数は、感度をさらに高めるために調節され得る。
【0086】
プローブ構造のトランスデューサ素子は、アレイを限定するために、半導体工業において良く知られた写真平板パターン技術での蒸着またはスパッタリングにより、任意の適切な材料、特に、金、銀、アルミニウム、銅またはタングステンから形成され得る。
【0087】
サブストレートは、任意の適切な材料、例えば、ソーダガラス、BK7ガラス、ホウケイ酸ガラス、サファイア、石英ガラス(vitreosil)、結晶石英、もしくはポリスチレン、ポリカーボネートまたはポリエチレンのようなプラスチック材料から形成され得る。
【0088】
ここに説明したシステムの幾つかの応用は、大分子/小分子相互作用、大分子/大分子相互作用、気体/固定相互作用、遺伝子型決定、DNA塩基配列決定及びセル表現分析にある。
【0089】
当業者なら、以上説明されなかった他の実施形態も特許請求の範囲内にあることを認識するであろう。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】本発明の原理を示す概略図である。
【図2】レーザをベースにした励起システム及び光検出システムを用いた本発明の第1の実施形態を示す概略図である。
【図3】レーザをベースにした励起システム及び圧電検出システムを用いた本発明のさらなる実施形態を示す概略図である。
【図4】レーザをベースにした励起システム及び薄膜トランスデューサ検出システムを用いた本発明のさらに別の実施形態を示す概略図である。
【図5A】時間及び周波数の双方の領域における検出を示す1つ目の励起及び検出システムを示す概略図である。
【図5B】時間及び周波数の双方の領域における検出を示す2つ目の励起及び検出システムを示す概略図である。
【図5C】時間及び周波数の双方の領域における検出を示す3つ目の励起及び検出システムを示す概略図である。
【図5D】時間及び周波数の双方の領域における検出を示す4つ目の励起及び検出システムを示す概略図である。
【図6A】図5Cの励起及び検出システムを用いた代表的な熱弾性応答波形を示す図である。
【図6B】図5Cの励起及び検出システムを用いた代表的な熱弾性応答波形を示す図である。
【図6C】図5Cの励起及び検出システムを用いた代表的な熱弾性応答波形を示す図である。
【図7A】図5Cのシステムの反応に対する応答を示す図である。
【図7B】図5Cのシステムの反応に対する応答を示す図である。
【図7C】図5Cのシステムの反応に対する応答を示す図である。
【符号の説明】
【0091】
10 サブストレート
11 プローブ構造
13 プローブ材料
14 レーザ源
15 検出システム
16 サンプル
17 任意の断片
20 励起ビーム
21 ビーム・スプリッタ
22 低出力のレーザ源
23 検出ビーム
25 過渡応答記録器
30 プローブ構造
31 サブスレート
32 薄膜
33 プローブ材料
34 下部電極
40 プローブ構造
40a 電極
40b トランスダクション膜
40c 粘着被覆
44 プローブ材料





【特許請求の範囲】
【請求項1】
プローブにおける変動を検出するための装置であって、
電磁放射を一時的に変えることにより励起されるときに熱弾性、熱電気または熱磁気の励起応答の1つまたは2つ以上を受けるように適合されたプローブであって、前記励起応答は、プローブ及び/または該プローブに結合する材料の物理的及び/または化学的特性の関数である、前記プローブと、
電磁放射源と、
プローブに電磁放射を向けるための手段と、
プローブの励起応答を決定するよう適合されたトランスデューサと、
を備えた装置。
【請求項2】
各プローブは、プローブ材料が結合されるサブストレート表面を有するプローブ構造を含む請求項1に記載の装置。
【請求項3】
サブストレートは、好ましくは薄膜である請求項2に記載の装置。
【請求項4】
複数のプローブをさらに備える請求項1に記載の装置。
【請求項5】
複数のプローブは、アレイで形成される請求項4に記載の装置。
【請求項6】
各プローブは、他のプローブ上の材料とは異なるプローブ材料を備える請求項4または5に記載の装置。
【請求項7】
プローブ材料は、一種類の分子を備える請求項2に記載の装置。
【請求項8】
プローブ材料は、異なった分子の混合を含む請求項2に記載の装置。
【請求項9】
プローブの表面は平面である請求項1に記載の装置。
【請求項10】
プローブの表面は曲面である請求項1に記載の装置。
【請求項11】
電磁放射源は、電磁スペクトルの光部分における放射を発する請求項1に記載の装置。
【請求項12】
電磁放射源は、レーザである請求項1または11に記載の装置。
【請求項13】
電磁放射源は、放射がプローブ材料に直接入射するように位置付けられる請求項1に記載の装置。
【請求項14】
電磁放射源は、放射がプローブ材料に入射する前に放射に対して透明なサブストレートを最初に通過するように位置付けられる請求項1に記載の装置。
【請求項15】
サブストレートと、
電磁放射を一時的に変えることにより励起されるときに熱弾性、熱電気または熱磁気の励起応答の1つまたは2つ以上を受けるように適合された、サブストレートの表面上の1つまたは2つ以上のプローブであって、前記励起応答は、プローブ及び/または該プローブに結合する材料の物理的及び/または化学的特性の関数である、前記プローブと、
を備えたセンサ。
【請求項16】
板の形態にある請求項15に記載のセンサ。
【請求項17】
サブストレートは、電磁的に透明である請求項15に記載のセンサ。
【請求項18】
サブストレートは、トランスデューサとして動作する、またはトランスデューサの部分である請求項15に記載のセンサ。
【請求項19】
サブストレートは、取扱いの容易性のために充分な強度を有するような厚さで、また所望量の電磁放射が通過するのを許容するような厚さのものでもある請求項15に記載のセンサ。
【請求項20】
サブストレートは、0.2から1.0mmの範囲内の厚さを有する請求項19に記載のセンサ。
【請求項21】
さらに複数のプローブを含み、プローブの各々は、電磁放射を一時的に変えることによりプローブが励起されるとき局所化された電気応答を受けるように適合され、かつそれに対応する電気出力応答を発生し、電気応答の特性は、プローブの及び/またはそれに結合する材料の物理的及び/または化学的特性の関数であり、
そして電気応答を送信するためのトランスデューサを含む請求項15に記載のセンサ。
【請求項22】
異なったプローブ材料が異なったプローブに結合される請求項21に記載のセンサ。
【請求項23】
平板の表面に結合する材料における空間的に局所化された変化を検出するためのトランスデューサ装置であって、
サブストレートと、
該サブストレートの表面上の複数の薄膜プローブ構造であって、各プローブ構造は、電磁放射を一時的に変えることにより励起されるときに局所化された熱弾性、熱電気または熱磁気の励起応答の1つまたは2つ以上を受けるように適合され、前記励起応答の特性は、プローブ構造の表面に結合する材料の物理的及び/または化学的特性の関数である、前記プローブ構造と、
励起応答を誘発させるためにプローブ構造の選択された1つに電磁エネルギを向けるための電磁励起手段と、
プローブ構造の励起応答を決定するための検出手段と、
を備えたトランスデューサ装置。
【請求項24】
電磁励起手段は、前記電磁放射を一時的に変えることを、光スペクトルにおいて発する請求項23に記載の装置。
【請求項25】
サブストレートは、光学的に透明な媒体から形成され、電磁励起手段は、前記電磁エネルギをサブストレートを介してプローブ構造の下部表面に向けるよう適合された請求項24に記載の装置。
【請求項26】
プローブ構造は、各々、前記電磁放射を吸収するように適合され、それにより、該構造内の容積変化の形態で熱弾性励起応答を発生し、検出手段は、前記プローブ構造における前記容積変化を検出するための手段を含む請求項25に記載の装置。
【請求項27】
プローブ構造は、各々、薄膜金属スポットを含む請求項26に記載の装置。
【請求項28】
検出手段は、選択されたプローブ構造からの反射された電磁エネルギを受けるための手段を含む請求項26に記載の装置。
【請求項29】
プローブ構造は、各々、前記電磁放射を吸収するように適合され、それにより、該構造の横方向変位の形態で熱弾性応答を発生し、検出手段は、プローブ構造の前記横方向変位を検出するための手段を含む請求項25に記載の装置。
【請求項30】
プローブ構造は、各々、薄膜の誘電材料スポットを含む請求項29に記載の装置。
【請求項31】
プローブ構造は、該プローブ構造の熱弾性応答を表す電気出力信号を発生するためのトランスデューサ素子を含む請求項23に記載の装置。
【請求項32】
プローブ構造は、前記電磁放射を一時的に変えることに対して熱電気励起応答を提供するよう適合されたトランスデューサ素子を含み、検出手段は、前記熱電気励起応答を検出するための手段を含む請求項23に記載の装置。
【請求項33】
プローブ構造は、前記電磁放射を一時的に変えることに対して熱磁気励起応答を提供するよう適合されたトランスデューサ素子を含み、検出手段は、前記熱磁気励起応答を検出するための手段を含む請求項23に記載の装置。
【請求項34】
電磁励起手段は、プローブ構造の選択された1つを、パルス波もしくは連続波の電磁放射で照射するよう適合されたレーザを含む請求項23乃至33のいずれかに記載の装置。
【請求項35】
検出手段は、光源からの基準ビーム及びプローブ構造から反射された干渉ビームを受けるための光干渉計を備える請求項23に記載の装置。
【請求項36】
検出手段は、プローブ構造から受信された熱弾性応答信号における振幅及び位相変動を決定するための過渡応答記録器またはデジタル化オシロスコープを含む請求項23に記載の装置。
【請求項37】
電磁励起手段及び検出手段は、選択されたプローブ構造の共振周波数における変化を検出するための手段を含む請求項23に記載の装置。
【請求項38】
各プローブ構造は、サブストレートの下部表面に接地面を提供するよう適合された新規な電極を含む請求項23に記載の装置。
【請求項39】
プローブ構造の露出された表面に結合される分子プローブ材料をさらに含む請求項23に記載の装置。
【請求項40】
サブストレートはディスクを含み、そして
軸と相対的に前記ディスクを回転させるための駆動手段と、
前記軸と相対的に前記検出手段及び前記電磁励起手段の位置を変えるためのインデクシング手段と、
をさらに含む請求項23に記載の装置。
【請求項41】
光学的に透明なサブストレートと、
該サブストレートの表面上の複数の薄膜プローブ構造であって、各プローブ構造は、電磁放射を一時的に変えることにより励起されるときに局所化された熱弾性、熱電気または熱磁気の励起応答の1つまたは2つ以上を受けるように適合され、前記励起応答の特性は、プローブ構造の表面に結合する材料の物理的及び/または化学的特性の関数である、前記プローブ構造と、
を備えるセンサ・プレート。
【請求項42】
複数のプローブ構造の露出された表面にそれぞれ結合された複数の異なった分子のプローブ材料をさらに含む請求項41に記載のセンサ・プレート。
【請求項43】
サブストレートは、シリカを含む請求項41または42に記載のセンサ・プレート。
【請求項44】
プローブ構造は、各々、薄膜の金属スポットを含む請求項41または42に記載のセンサ・プレート。
【請求項45】
プローブ構造は、各々、薄膜の誘電スポットを含む請求項41または42に記載のセンサ・プレート。
【請求項46】
各プローブ構造は、該プローブ構造の熱弾性応答を表す電気出力信号を発生するためのトランスデューサ素子をさらに含む請求項41に記載のセンサ・プレート。
【請求項47】
各プローブ構造は、前記電磁放射を一時的に変えることに対する熱電気励起応答を提供するよう適合されたトランスデューサ素子を含む請求項41に記載のセンサ・プレート。
【請求項48】
検出器に熱電気励起応答を送信するための電極をさらに含む請求項25に記載のセンサ・プレート。
【請求項49】
サブストレートと、
該サブストレートの表面上の複数の薄膜のプローブ構造と、
を備え、各プローブ構造は、電磁放射を一時的に変えてそれに対応する電気出力応答を発生することによりプローブ構造が励起されるとき局所化された熱電気または熱磁気の励起応答の1つまたは2つ以上を受けるように適合されたトランスダクション膜を含み、発生される電気出力応答の特性は、プローブ構造の表面に結合する材料の物理的及び/または化学的特性の関数であり、そして
電気出力応答を送信するための電極を備えるセンサ・プレート。
【請求項50】
サブストレートの第2の面上の前記隣接表面の複数にそれぞれ結合される複数の異なった分子プローブ材料をさらに備える請求項49に記載のセンサ・プレート。
【請求項51】
プローブ構造は、該プローブ構造の表面に結合するそれぞれのプローブ材料を受けるためのトランスダクション膜に渡る不活性化層をさらに含む請求項49に記載のセンサ・プレート。
【請求項52】
サブストレートは、シリカを含む請求項49乃至51のいずれかに記載のセンサ・プレート。
【請求項53】
プローブ構造は、磁気材料を含む請求項49乃至51のいずれかに記載のセンサ・プレート。
【請求項54】
プローブ構造は、円形ディスク・サブストレート上に一連の概して円形またはらせん状のアレイで配列される請求項41に記載のセンサ・プレート。
【請求項55】
請求項23乃至40のいずれかに記載のトランスデューサ装置を用いる方法であって、
複数のプローブ構造にそれぞれ結合される複数のプローブ材料を提供する段階と、
プローブ構造の表面に材料を結合するのを許容するようサンプル材料にプローブ構造を露出させる段階と、
プローブ構造に電磁エネルギを向けるよう電磁励起手段を用いる段階と、
サンプル材料に露出させて及び露出させずに励起応答を比較することにより、各プローブ構造の励起応答における変化を検出する段階と、
を含む方法。
【請求項56】
添付図面を参照して実質的にここに説明したプレートの表面に結合した材料における空間的に局所化された変動を検出するための音響トランスデューサ装置。
【請求項57】
添付図面を参照して実質的にここに説明した音響センサ・プレート。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図5D】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【公表番号】特表2006−500558(P2006−500558A)
【公表日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−537336(P2004−537336)
【出願日】平成15年9月22日(2003.9.22)
【国際出願番号】PCT/GB2003/004153
【国際公開番号】WO2004/027396
【国際公開日】平成16年4月1日(2004.4.1)
【出願人】(305048152)ソノプティクス・(ユーケー)・リミテッド (1)
【Fターム(参考)】