説明

熱成形方法

最終的熱成形品がシート押出し加工流路(縦方向)と横方向に沿って示す収縮率に関して相対的に等方性である熱成形品を製造する方法。この製品の製造をプロピレンの重合をイソ特異的メタロセン触媒を用いて行うことで生じさせたイソタクティックポリプロピレンを用いて実施する。この重合体が示す溶融流れ速度は1−5グラム/10分の範囲内でありかつ溶融温度は160℃以下である。このポリプロピレンの押出し加工を行うことで少なくとも1方向に配向していて厚みが10−100ミルのシートを生じさせる。このシートを135−160℃の温度に加熱した後、熱成形を所望形態の鋳型と接触した状態で行うことで熱成形品を生じさせる。次に、この熱成形品を冷却した後、前記鋳型から取り出すことで最終的製品を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イソタクティックポリプロピレンから成形された熱成形品の製造、より詳細には、良好な寸法安定性を示すそのような熱成形品の製造に関する。
【背景技術】
【0002】
イソタクティックポリプロピレンの製造はプロピレンの重合を触媒、例えばチーグラー・ナッタ触媒またはイソ特異的(isospecific)メタロセン触媒などの存在下で起こさせることで実施可能である。イソタクティックポリプロピレンは成形品の製造で使用可能であり、その場合、そのポリプロピレンを加熱した後に1個以上のダイスまたはノズルに通して押出し加工して鋳型空洞部の中に入れることが行われるが、それは前記空洞部の中を縦方向(流れ方向と呼ぶ)と横もしくは側方向(時には交差流方向とも呼ぶ)の両方に移動する。イソタクティックポリプロピレンの構造は、連続プロピレン単量体単位が有する第三炭素原子に結合しているメチル基が重合体主鎖の同じ側に存在することで特徴づけられる。即ち、そのメチル基の全部が重合体鎖の上方もしくは下方に存在するとして特徴づけられる。イソタクティックポリプロピレンは下記の化学式:
【0003】
【化1】

【0004】
で例示可能である。立体規則的重合体、例えばイソタクティックおよびシンジオタクテックポリプロピレンなどはフィッシャー投影式で特徴づけ可能である。フィッシャー投影式を用いると、式(1)で示される如きイソタクティックポリプロピレンの立体化学配列は下記の如く記述される:
【0005】
【化2】

【0006】
その構造を記述する別の方法は、NMRを用いることによる方法である。イソタクティックペンタドを示すBoveyのNMR命名法は...mmmmm...[ここで、各「m」は「メソ」ダイアドを表す]である、即ちメチル基が重合体鎖面の同じ側に連続的に存在する。当該技術分野で公知のように、その鎖の構造がいくらかでも逸脱または反転すると当該重合体のイソタクティック度および結晶化度が低下する。エチレンとプロピレンのランダム共重合体の場合、その共重合体のエチレン含有量が比較的低いと、エチレンが重合体鎖全体に渡ってランダムに分布することで、エチレン単位は繰り返して存在するプロピレン単位の間に無作為に存在する。
【0007】
ポリプロピレンは様々な操作で成形品に成形可能であり、その場合、その重合体を加熱して所望形状に適合させた後に冷却を行うことで最終製品を得る。良く知られている2操
作は、射出成形および熱成形を伴う。
【0008】
射出成形操作の場合、溶融させた重合体を鋳型空洞部の中に導入する。その溶融状態の重合体を前記空洞部の中に所望の構成材が生じるに充分な時間保持する。その成形構成材を冷却した後に鋳型空洞部から取り出すに要する時間が射出成形操作の生産効率にとって重要な要因である。
【0009】
熱成形操作の場合、溶融させた重合体にシート押出し加工操作を受けさせた後、前記シートの熱成形を鋳型を用いて行うことで所望形状の熱成形品を得た後に前記製品を冷却しそして次にそれを前記鋳型から回収する。典型的な熱成形操作は、シート押出し加工を用いてシートロールを生じさせそして次にそれをロール供給連続熱成形装置で用いることで実施可能である。また、熱押出し加工装置と熱成形装置が1つの自動装置に一体化されている一体式インライン装置を用いて熱成形を実施することも可能である。熱成形操作後、その熱成形品を冷却しそして次に必要に応じてトリミングを行って最終製品を得た後、その製品を前記自動装置から回収する。
【0010】
射出成形による成形プラスチック構成材の製造では、鋳型の中で収縮が起こりそしてその後に硬化した構成材を前記鋳型から取り出す時に結果として初期成形品と最終的製品の間に体積差が生じる。鋳型の横(交差流)と縦(流)方向の寸法変化が比較的均一であるならば、そのような収縮特徴は等方性であると見なされる。横方向と縦方向の寸法変化の差が大きいと、そのような寸法変化は異方性または差別的であるとして特徴づけられる。射出成形部品全体に渡って収縮率が変動すると反りが引き起こされる(非特許文献1)。射出成形用途では、収縮の異方性が高いとしばしば反り問題が生じる。その特徴づけられる収縮が等方性であるか或は異方性であるかに拘わらず、成形品の寸法が正確な最終使用製品を得ようとするには、相対的収縮率を考慮に入れる必要がある。シート押出し加工に続く熱成形操作の場合にも同様な考慮が当てはまる可能性がある。この場合、シート押出し加工装置から熱成形装置に至る連続的線形押出し加工の方向が縦流れ方向であると見なすことができそしてシート押出し加工装置の流れ方向に交差する横方向が横方向であると見なすことができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】D Rosata、Injection Molding Handbook、Chapman & Hall、New York、1995
【発明の概要】
【0012】
本発明に従えば、最終的熱成形品がシート押出し加工流路(縦方向)と横方向に沿って示す収縮率に関して事実上相対的に等方性であると見なされる熱成形品を製造する方法が提供される。本発明の実施では、プロピレンの重合をイソ特異的メタロセン触媒の存在下で起こさせることで生じさせたイソタクティックポリプロピレンを準備する。そのポリプロピレンはホモ重合体または共重合体、特にエチレン含有量が低い、典型的には2.5重量%以下のエチレンプロピレン共重合体であってもよい。そのような重合体が示す溶融流れ速度は1−5グラム/10分の範囲内でありかつ溶融温度は160℃以下である。そのポリプロピレンを押出し加工してシートを生じさせるが、そのシートは少なくとも1方向(縦方向)に配向しておりかつそれの厚みは10−100ミル、より具体的には15−80ミルの範囲内である。そのシートを135−160℃、より具体的には140−150℃の範囲内の温度に加熱した後、熱成形をそれが所望形態の鋳型と接触した状態で行うことで熱成形品を生じさせる。次に、その熱成形品を冷却した後、前記鋳型から取り出すことで最終的製品を得る。
【0013】
本発明の1つの態様では、その最終的熱成形品を前記鋳型から取り出してから48時間後に前記熱成形品が横方向と縦方向に示す収縮率の差で測定して、前記熱成形品は熱成形から48時間後に少なくとも85%の均一収縮率を示す。本発明のさらなる面として、本熱成形品は、この製品を前記鋳型から取り出してから48時間後に示す収縮率の方がチーグラー・ナッタ触媒を用いて重合体の重合を行うことでイソタクティックポリプロピレンを生じさせた後に押出し加工および熱成形を前記メタロセン触媒を用いた重合体と同じ押出し加工および熱成形条件下で行うことで生じさせた相当する製品が示す収縮率よりも高い等方性を示すとして特徴づけられる。
【0014】
本発明のさらなる面として、前記イソタクティックポリプロピレンが示す溶融流れ速度は1.5−5グラム/10分の範囲内、より具体的には2−4グラム/10分の範囲内である。本発明の更に別の態様として、前記イソタクティックポリプロピレンが示す溶融温度は150−155℃の範囲内である。
【0015】
キシレンに溶解しない綿毛状重合体のパーセントとして測定した時のイソタクティック率(isotacity)が少なくとも98%、より詳細には99%のイソタクティックポリプロピレンを用いて本発明の別の態様を実施する。イソタクティックポリプロピレンの押出し加工を実施する前に、核形成剤、清澄剤およびこれらの混合物から成る群より選択した添加剤成分を当該重合体に混合してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、本発明の実施で使用可能なシート押出し加工装置の図式図である。
【図2】図2は、本発明の実施で使用可能なロール供給連続熱成形装置の図式図である。
【図3】図3は、本発明の実施で使用可能なインライン連続熱成形装置の図式図である。
【図4】図4は、プラグアシスト真空成形操作の図式図である。
【図5】図5は、本発明に従って熱成形した容器/蓋構造物を示す部分破壊側面図である。
【図6】図6は、本発明に従って成形可能な別の容器/蓋構造物を示す部分破壊側面図である。
【発明の詳細な説明】
【0017】
本発明は、適切なシート押出し加工装置および熱成形装置のいずれかを用いて実施可能である。これらの装置は押出し加工巻き取り装置の形態を取ってよく、そのような形態の場合、重合体のペレットをシートに変換した後、巻き取り装置に送ることでシートロールを生じさせる。そのロール状態のシートを巻き戻して熱成形装置に送ることで前記シートを熱成形部品に変化させる。図1および2に、当該重合体ペレットを押出し加工シートに変換した後に前記押出し加工シートをロール供給連続熱成形装置で部品に変換する装置を図式的に例示する。より詳細には、図1に示すように、そのシート成形装置にはホッパー10が含まれていて、それに通して重合体のペレットをスクリュー押出し加工装置12に供給するが、その装置12には加熱される外側シリンダー4が含まれていて、その中で押出し加工用スクリュー15が回転しかつ前記ホッパー10からペレット状重合体材料を取り込む。その押出し加工装置12には前記回転式スクリュー用の駆動装置17およびダイスセクション18が含まれていて、その中を通って溶融状態の重合体が押出されることで連続シートが生じる。そのシートをダイスから取り出し装置20に送り込むが、その取り出し装置20には、複数の冷却ロール21を含有して成る冷却ロールスタックが含まれている。その冷却ロールスタックを冷媒ポンプ輸送装置22で供給される冷媒で冷却する。
前記シートを前記冷却ロールスタックから引き抜きロールセクション24に通して取り出した後、そこから巻き取り装置セクション26に送ることで、シートロール27を生じさせる。図2に、巻き戻しスタンド30が含まれているロール供給連続熱成形装置を例示するが、シートロール32が前記巻き戻しスタンド30から巻き戻された後、そのシート34がオーブンセクション39を含有して成る熱成形装置36に送られ、そのオーブンセクション39の中で前記シートが加熱された後に成形セクション40に送られ、その中で等温成形(isothermoforming)操作を行う。成形セクション40には1個以上の鋳型および適合部材42が含まれていて、それらが協力して働くことで前記シート34から成形された物のウエブ44が生じる。その結果としてもたらされた熱成形品のウエブをトリムプレス48に送る。
【0018】
図3に、本発明の実施で使用可能な別の装置を例示する。図3には一体式のインライン連続熱成形装置を例示するが、この装置の場合には、中間的シートロール装置を用いるのではなく、重合体のペレットを最終的部品に直接変換する。図3に示すように、スクリュー押出し加工装置50(図1の装置12に相当)を作動させることでシートを生じさせて、それをダイス52に通して取り出した後、冷却ロールスタック54に送る。前記シートを前記冷却ロールスタンド54から集積装置56に送るが、この集積装置56は、前記ロールスタンド54と熱成形装置58を相互作用させる機能を果たす。その成形装置には、この上に記述した如きオーブンセクション60および成形セクション62が含まれていて、その成形セクション62の中で成形された部品が生じる。その熱成形部品をウエブ装置64で取り出した後にこの上に記述した如きトリムプレスに送り込む。
【0019】
図2または図3に示した如き成形セクションは、メス鋳型部材とこの鋳型部材の中に入り込む適合プラグ部材を典型的に伴う適切な種類のいずれであってもよい。プラグアシスト真空成形操作を伴う典型的な成形ステーションの操作を図4に図式的に例示するが、図4に示す連続操作段階をA、B、CおよびDと表示する。図4に示すように、成形セクションには鋳型部材70、プラグ部材72(これは形状的に前記鋳型部材の内側部分と適合する)および締め付け枠74が含まれている。鋳型70には気体用口76が備わっている。初期操作段階では、図4Aに示すように、締め付け枠とプラグ部材を鋳型部材から取り外した状態にしながら重合体材料78のシートを成形セクションに移送する。重合体シート78を適切な場所に位置させた後、締め付け枠74を移動させて前記鋳型と接触させることで前記シートを適切な場所に保持し、そして加圧気体を開口部76に通して前記鋳型の底に導入する。その結果として、図4Bに示すように、シート部材78の引き伸ばし前拡張がもたらされる。次の操作段階では、図4Cに示すように、前記鋳型部材の内部の排気を行うか或はそれを真空下に置き、そしてプラグ部材72を前記鋳型の中に入り込ませることで、前記シート部材を前記鋳型部材の適合内部内で下方に圧縮する。図4Dに示すように、その後、真空を前記鋳型部材の内部に口76に通してかけて前記シートを前記鋳型部材70の内部に適合させることで、所望形状の熱成形品を得る。この成形操作の最後に、前記締め付け枠を前記鋳型部材から外した後、熱成形品を含有するウエブを前記成形セクションから取り出す。図1−4に例示した熱成形装置は単に例示でありかつ本発明を実施する時に適切な如何なる熱成形装置も使用可能であると理解されるべきである。本発明を実施するための熱成形操作で使用可能な熱成形技術および装置のさらなる記述に関しては、Schleppの米国特許第6,926,513号およびYoungの米国特許第7,071,462号を参照のこと。
【0020】
当業者が理解するであろうように、プラグアシスト成形方法、例えば図4を参照して上述した方法などを用いて容器、例えば食品用容器などおよび前記容器用の閉鎖部材を製造することができる。そのような容器では当該容器とこれ用の蓋もしくは閉鎖部材の間の寸法一貫性が非常に重要であり得る。本発明は、非常に良好な寸法一貫性を示すそのような容器およびこれ用の閉鎖部材を成形する目的で使用可能である。
【0021】
本発明は、特に、寸法一貫性が非常に重要である食品用容器など用の蓋の成形で使用可能である。一例を容器の出し入れ開口部の上にかみ合うに適した閉鎖部材および前記閉鎖部材から伸びる縁部分を有する形態の漏れ防止熱成形蓋に見ることができる。その縁部分を前記容器の壁部分と接触させた状態で適応させて位置させる(例えば「スナップ式」作動の場合のように)。
【0022】
図5を参照して、容器、例えば図4に示した熱成形操作で成形可能な如き容器および関連した容器用蓋(これもまた熱成形で成形可能)を例示する。容器80には、横方向リム82の所で終結する壁81が含まれており、前記横方向リム82が前記容器の開口部83(これによって容器内部への出し入れを行うことができる)を取り巻いている。閉鎖蓋84(前記容器の直ぐ上に分解図で示す)には、前記出し入れ開口部の上にかみ合う閉鎖部材86が含まれている。その蓋には、更に、前記閉鎖部材86から伸びる縁部分88も含まれており、それは外側に伸びていて、下方に伸びるスナップ式リム90の所で終結する。図5に示すように、縁部分88は前記容器のリム82の上部にかみ合うことで、リム90がいわゆるスナップ式形態で前記容器の外側縁の上にスナップ式にかみ合う。寸法一貫性が重要である容器と蓋の形態の別の例を図6に示すが、図6は、閉鎖部材96を有する蓋95がかみ合う出し入れ開口部93を有する容器92の部分破壊側面図である。この場合の蓋構造物は、下方に伸びる縁部分98の所で終結していて、その縁部分98が前記容器の上方外側壁の上にかみ合う。
【0023】
本発明の実施で用いるイソタクティックプロピレン重合体は、プロピレンのホモ重合体またはプロピレンの共重合体であってもよい。共重合体を用いる場合、それはエチレンとプロピレンのランダム共重合体の形態を取ってもよく、それのエチレン含有量は典型的に2.5重量%以下であり、より具体的には、それのエチレン含有量は2重量%以下である。そのようなランダム共重合体に取り込ませるエチレンの量はより少なくてもよく、エチレン量は1重量%以下であってもよい。溶融温度はエチレン含有量にある程度依存し、エチレン含有量が約2重量%またはそれより若干高い共重合体の場合の約135℃からホモ重合体の場合の約155℃または160℃にさえ及ぶ範囲であり得る。より具体的な溶融温度は、ホモ重合体またはエチレン含有量が非常に低い共重合体の場合の約150−155℃である。
【0024】
本発明の実施で用いるイソタクティックプロピレン重合体の製造は、プロピレンの重合を共重合体の場合にはエチレンと一緒に適切なイソ特異的メタロセンのいずれか、例えば橋状ビスインデニル(またはテトラヒドロビスインデニル)配位子構造を持つように生じさせたメタロセンなどを用いて起こさせることで実施可能である。そのビスインデニル配位子構造は置換または非置換であってもよい。そのようなイソタクティックポリプロピレンを生じさせる目的で使用可能な具体的メタロセンはジ−メチルシリルビス(2−メチル,4−フェニル),ジルコニウムジクロライドであり、そしてアルキルアルモキサン、例えばメチルアルモキサンなどを含有して成る共触媒および捕捉剤、例えばトリエチルアルミニウム(TEAL)などを用いてもよい。そのようなイソタクティックポリプロピレンは更にイソタクティック度が少なくとも98%、より特別には少なくとも99%であることでも特徴づけられる。そのようなイソタクティック度の測定を重合反応槽から回収したままの重合体に含まれていて室温もしくは室温より若干高い温度のキシレンに不溶の綿毛状重合体の量を測定することで実施する。当該重合体が示す立体規則性に関して、そのような重合体は少なくとも99%のメソダイアドを示すと期待することができる。
【0025】
本発明で用いるイソタクティックポリプロピレンは、更に、溶融温度が155℃以下で溶融流れ速度が1−5グラム/10分の範囲内であることでも特徴づけられる。溶融流れ速度の測定をASTM D1238条件Lに従って行うが、その条件には、温度を230
℃にしそして荷重を2.16kgにすることが指定されており、その結果をグラム/10分で報告する。それはメルトインデックスMIとして識別可能である。本発明の実施で用いる重合体が示す溶融流れ速度のより具体的な特徴は、溶融流れ速度が1.5−5グラム/10分、より具体的には2−4グラム/10分の範囲内であると言った特徴である。この上に示した如き重合体が示す溶融温度は160℃以下、通常は155℃以下である。この温度は、チーグラー・ナッタ触媒を用いて製造された相当するイソタクティックポリプロピレンが示す溶融温度(示す溶融温度は160℃より高いであろう)よりかなり低い。より具体的には、本発明で用いるメタロセンが基になったイソタクティックポリプロピレンが示す溶融温度は150−155℃の範囲内である。
【0026】
本発明に従って製造した熱成形品は、熱成形品を成形セクションから取り出してから指定時間後に横方向と縦方向の収縮の差で測定して当該製品が熱成形から指定時間後に示す均一収縮率で特徴づけ可能である。元々の重合体シートを熱成形装置に送り込む時の押出し加工方向を基準にした縦流れ方向と横もしくは交差流方向に関して収縮値を測定する。縦方向は押出し加工セクション内で押出し加工シートがダイスから取り出される時のそれの流れ方向であると見なす。即ち、縦方向は、図2に示した種類のロール供給装置の場合には当該シートがシートロールから巻き戻される時にそれが熱成形装置の中を動く方向であるか或は図3に示した種類のインライン連続熱成形装置の場合にはそれが集積装置から取り出されてオーブンの中を移動する方向である。横方向は、当該シートがダイスに通して押出される方向と交差する方向であり、そして熱成形装置の中を移動することに関する横方向は、当該重合体シートが熱成形装置の中を移動する時にそれが流れる方向から90゜の方向である。
【0027】
熱成形から指定時間後の収縮率が均一であることは、その熱成形品が反りを起こす傾向に抵抗することを示している。縦方向と横方向両方の収縮率が同じであるならば、その製品の均一収縮率は100%であり、このことは反りが無いことを示している。縦方向および横方向の中の一方の収縮率ともう一方の方向の収縮率の差異が10%であるならば、そのような製品は均一収縮率が90%であるとして特徴づけられ、このことは、反りが僅かのみであることを示している。一方の方向の収縮率をもう一方の方向のそれと比較した時の差が20%であるならば、そのような製品は均一収縮率が80%であるとして特徴づけられるであろう。本発明では、横方向と縦方向の収縮の差で測定して熱成形から48時間後の均一収縮率の目標値を少なくとも85%にする。本発明のさらなる面では、熱成形品を熱成形ステーションから取り出してから48時間後の横方向と縦方向の収縮の差で測定して熱成形から48時間後の均一収縮率は少なくとも90%である。
【0028】
本発明で用いるメタロセン触媒使用イソタクティックポリプロピレンは、また、チーグラー・ナッタ触媒を用いてプロピレンをイソタクティック度および分子量が同じになるように重合させることで生じさせた相当するイソタクティック重合体と比較したイソタクティック特徴でも特徴づけ可能である。具体的には、本発明で用いるメタロセン触媒使用ポリプロピレンが熱成形品を取り出してから48時間後に示す収縮率は、チーグラー・ナッタ触媒を用いてプロピレンを重合させることで生じさせた後に押出し加工および熱成形を本発明に従ってメタロセンを用いて生じさせた熱成形品の製造で用いた条件と同じ条件下で行うことでもたらされたイソタクティックポリプロピレンが示すそれよりも等方性が高い。
【0029】
この上に示したように、本発明で用いるプロピレンホモ重合体またはエチレン−プロピレン共重合体の重合で使用可能なメタロセン触媒には、高いイソ特異性を示す機能を果たすことが知られている橋状ビスインデニルもしくはビステトラヒドロインデニルメタロセンが含まれる。そのようなメタロセンは置換もしくは非置換であってもよく、ラセミ型であるか或は少なくともラセミ型異性体含有量の方がメソ異性体含有量よりも実質的に高い
。そのようなビスインデニル(もしくはテトラヒドロインデニル)配位子は置換もしくは非置換であってもよく、特に適切なラセミ型ビスインデニル構造物は、インデニル基の4位がかさ高い置換基、例えばフェニルまたは第三ブチルなどで置換されておりかつ2位があまりかさ高くない置換基、例えばメチルまたはエチル基などで置換されている構造物である。イソタクティックポリプロピレンを製造しようとする時に使用可能な他のメタロセンには、左右対称(シクロペンタジエニル−フルオレニル配位子構造の中に通常存在するであろう)にならないようにシクロペンタジエニルとフルオレニル基のいずれかまたは両方が置換されている立体剛性シクロペンタジエニル−フルオレニル配位子構造物が含まれる。本発明の方法で用いるエチレンとプロピレンの共重合体を製造しようとする時に使用可能な他のメタロセン触媒には、ジグザグ形態のビスフルオレニル配位子構造物が組み込まれているメタロセンが含まれる。この場合、そのフルオレニル基(オクトヒドロフルオレニル基を包含)は橋状でありかつ2個のフルオレニル基の配位子構造を貫く橋状対称線の相対する側が独立して置換されていることで、左右対称ではないジグザグ形態になっている。上述した種類のメタロセン触媒を生じさせようとする時に用いられる遷移金属は一般に元素周期律表(新表記法)の4族または5族に属する金属である。特に適切な遷移金属はジルコニウム、ハフニウムおよびチタンである。イソタクティック重合体の製造に有効な橋状メタロセン触媒のさらなる記述に関しては、Ewen他の米国特許第6,262,199号およびReddyの米国特許第6,313,242号(これらの開示は全体が引用することによって本明細書に組み入れられる)が参考になる。
【0030】
本発明の具体的な態様を記述してきたが、それの修飾形が当業者に思い浮かぶ可能性がありそして添付請求項の範囲内に入る如きそのような修飾形の全部を保護することを意図することは理解されるであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イソタクティックプロピレン重合体から成形された熱成形品を製造する方法であって、
(a)プロピレンをイソ特異的メタロセン触媒の存在下で重合させることで生じさせた溶融流れ速度(MI)が1−5グラム/10分の範囲内で溶融温度が160℃以下のイソタクティックプロピレン重合体を準備し、
(b)前記ポリプロピレンを押出し加工することで少なくとも1方向に配向していて厚みが10−100ミルの範囲内のシートを生じさせ、
(c)前記シートを135−160℃の範囲内の温度に加熱しそして前記シートの熱成形を所望形態の鋳型を用いて行うことで前記熱成形品を生じさせ、
(d)前記熱成形品を冷却しそして前記熱成形品を前記鋳型から取り出す、
ことを含んで成る方法。
【請求項2】
前記熱成形品を取り出してから48時間後にそれが示す横方向と縦方向の収縮の差で測定して前記熱成形品が熱成形から48時間後に少なくとも85%の均一収縮率を示す請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記熱成形品を取り出してから48時間後に前記熱成形品が示す収縮率の方がプロピレンの重合をチーグラー・ナッタ触媒を用いて行うことで生じさせたイソタクティックポリプロピレンを用いそして押出し加工および熱成形を前記副段落(d)に示した熱成形品の押出し加工および熱成形条件と同じ条件下で行うことで成形された相当する製品が示す収縮率よりも等方性が高い請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記シートの厚みを15−80ミルの範囲内にする請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記イソタクティックポリプロピレンが示す溶融流れ速度が1.5−5.0グラム/10分の範囲内である請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記イソタクティックポリプロピレンが示す溶融流れ速度が2−4グラム/10分の範囲内である請求項5記載の方法。
【請求項7】
前記イソタクティックポリプロピレンが示す溶融温度が150−155℃の範囲内である請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記シートを140−150℃の範囲内の温度に加熱することで前記熱成形品を生じさせる請求項1記載の方法。
【請求項9】
前記イソタクティックプロピレン重合体が示すイソタクティック率が少なくとも98%である請求項1記載の方法。
【請求項10】
前記イソタクティックプロピレン重合体が示すイソタクティック率が少なくとも99%である請求項9記載の方法。
【請求項11】
更に、前記プロピレン重合体を副段落(b)で押出し加工する前に前記イソタクティックプロピレン重合体に核形成剤、清澄剤およびこれらの組み合わせから成る群より選択した添加剤成分を混合することも含んで成る請求項9記載の方法。
【請求項12】
前記熱成形品を取り出してから48時間後にそれが示す横方向と縦方向の収縮の差で測定して前記熱成形品が熱成形から48時間後に少なくとも85%の均一収縮率を示す請求項9記載の方法。
【請求項13】
前記熱成形品を取り出してから48時間後にそれが示す横方向と縦方向の収縮の差で測定して前記熱成形品が熱成形から48時間後に少なくとも90%の均一収縮率を示す請求項12記載の方法。
【請求項14】
前記熱成形品が、容器に取り付けるに適しかつ前記容器の出し入れ開口部の上にかみ合うに適した閉鎖部材および前記閉鎖部材から伸びていて前記容器の壁と接触した状態で位置させるに適した縁部分を含有して成る蓋構造物を構成している請求項9記載の方法。
【請求項15】
前記イソタクティックプロピレン重合体が示す溶融温度が150−155℃の範囲内である請求項14記載の方法。
【請求項16】
前記イソタクティックプロピレン重合体が示す溶融流れ速度が1.5−5.0グラム/10分の範囲内である請求項14記載の方法。
【請求項17】
前記イソタクティックプロピレン重合体が示す溶融流れ速度が2−4グラム/10分の範囲内である請求項14記載の方法。
【請求項18】
前記熱成形品を取り出してから48時間後に前記閉鎖部材が示す横方向と縦方向の収縮の差で測定して前記蓋構造物の前記閉鎖部材が熱成形から48時間後に少なくとも85%の均一収縮率を示す請求項14記載の方法。
【請求項19】
前記熱成形品を取り出してから48時間後に前記閉鎖部材が示す横方向と縦方向の収縮の差で測定して前記蓋構造物の前記閉鎖部材が熱成形から48時間後に少なくとも90%の均一収縮率を示す請求項18記載の方法。
【請求項20】
前記閉鎖部材を取り出してから48時間後に前記閉鎖部材が示す収縮率の方がプロピレンの重合をチーグラー・ナッタ触媒を用いて行うことで生じさせた相当するイソタクティックプロピレン重合体を用いそして押出し加工および熱成形を前記副段落(d)に示した閉鎖部材の押出し加工および熱成形条件と同じ条件下で行うことで成形された相当する閉鎖部材が示す収縮率よりも等方性が高い請求項14記載の方法。
【請求項21】
前記イソタクティックプロピレン重合体がプロピレンのホモ重合体である請求項1記載の方法。
【請求項22】
前記イソタクティックプロピレン重合体がエチレンとプロピレンの共重合体である請求項1記載の方法。
【請求項23】
前記エチレンとプロピレンの共重合体がエチレン含有量が2重量%以下のランダム共重合体である請求項22記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図4D】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2011−506141(P2011−506141A)
【公表日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−538174(P2010−538174)
【出願日】平成20年12月12日(2008.12.12)
【国際出願番号】PCT/US2008/086499
【国際公開番号】WO2009/076570
【国際公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【出願人】(391024559)フイナ・テクノロジー・インコーポレーテツド (98)
【氏名又は名称原語表記】FINA TECHNOLOGY, INCORPORATED
【Fターム(参考)】