説明

熱極、そのための締め付け構造および製造方法

シャンクと、先端とシャンクと先端との間の融合部であって先端内の熱の閉じ込めを改善するために抵抗勾配を与えるように構成された融合部と、を含む熱極を提供する。熱極はまた一体化冷却用ノズルを含んでもよい。シャンク、先端、融合部および一体化冷却用ノズルすべてが単一の工作物で形成されてもよい。熱極はまた、シャンクと一体化された小型取り付け台により形成されてもよい。小型取り付け台は、熱極を締め付け構造から効率的に交換するように、締め付け構造と結合されることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
[0001]本特許出願は2009年3月27日出願の米国特許出願第61/164,163号と2009年7月2日出願の米国特許出願第61/222,523号からの優先権を主張し、これを参照により本明細書に援用する。
【0002】
技術分野
[0002]本出願は一般的には熱の印加に使用される装置と部品に関し、具体的には熱極、および熱極を組み立て製造する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
背景
[0003]熱極は熱の局所印加に使用される装置であり、通常は半田付けおよび熱かしめ用途等で使用される。熱は熱極の先端の直接的抵抗加熱により生成される。「半田付けガン」が一般的な例である。
【0004】
[0004]熱極の主な利点は、非常に急速な温度変化(>1000℃/秒が可能)と、一般的には温度に対する正確な制御性である。また、抵抗素子は通常、加熱対象物と直接接触するので、効率的な伝熱が起こり、加熱対象物の急加熱が可能である。先端は小さな熱質量を有するので周囲に対する急速冷却もまた通常は可能である。強制空冷により超急速冷却を助けることもできる。
【0005】
[0005]一般的に使用されるいくつかの型の熱極が存在する。これらの熱極は主として、先端の形状と加熱対象物に対する電流フローの方向だけが異なる。図1に、例示的な熱極先端型を示す。図1Aは、2つのシャンク11に取り付けられたU字形箔である巻き上げ式先端10を示す。この場合、作業面は箔の平坦面である。図1Bは、箔が縁に取り付けられ作業面が底縁であるブレード式先端12を示す。図1Cは、巻き上げ式熱極と似ているが作業面を与える先端に突起15を有するペグ式先端14を示す。
【0006】
[0006]熱極は通常は、次の要素を含む。
・ 端子:電力が印加される電気接点
・ 取り付け台:熱極を他の構造に接続するための熱極の本体であって(取り付け台もまた通常は端子を含む)シャンクを支持する。
・ シャンク:先端を支持し、取り付け台と先端との間に置かれ、電流をここに流す。
・ 先端:熱の大部分が生成される高抵抗素子
・ 融合部:先端がシャンクに接合される領域
・ 作業面:加熱対象物に接する先端の部分
・ 熱電対:使用温度を決定するための装置であり、通常は先端に取り付けられる。
・ 熱電対コネクタ:温度データを伝達するために熱電対を電気回路に接続する。
【0007】
[0007]良好な加熱処理の重要な要素としては、十分な圧力と、加熱対象物に対する熱極の良好な平面性と、が含まれる。これらの要素は良好かつ一貫性のある伝熱と正確な温度制御とを保証する。めっきリードまたはリボンワイヤを半田付けするとき、平面性が半田板の厚さの半分より良いことが好ましい。
【0008】
[0008]熱極は通常、先端を銅シャンクに溶接することにより作製される。この溶接構造は次のような多くの欠陥を生じる可能性がある。取り付けと溶接のばらつきが変動装置抵抗をもたらし、溶接が貧弱なために不要な加熱を生じる。取り付けが貧弱であると、先端内の残留応力を生じ、応力亀裂により初期故障に至る。取り付けが貧弱であると、取り付け形状に対する作業面の貧弱な平面性を生じる。溶接困難材料からなる素子に応力がかかり、大きな熱影響域を生じ、および/または溶接部近傍の応力亀裂により望ましくないホットスポットと初期故障に至る不完全な溶接部を有する。および/または溶接処理自体に加えて組立を容易にするための特徴の追加により、追加の処理工程だけでなく余分な加工工程も加わる。
【0009】
[0009]さらに、一般的な折り畳み構成では、先端がL字形導体に接続されると、先端を通る対角線方向電流フローと、先端の作業面全体にわたって対角線方向に分散されたホットスポットとを生じ、不均一加熱を生じる可能性がある。
【0010】
[0010]さらに、公知の熱極における取り付けは通常は複雑である。熱極は通常、作業面と加熱対象物間の平面性制御を実現するために3つのデータム面により制約されなければならない。
【0011】
[0011]熱極寿命はまた、以下の多くの機構により制限される。反復熱および機械的応力による金属疲労、液体金属脆化、液体金属腐食、ガルバニ腐食、熱電対剥離、特に、チタン等の溶接が困難な先端材料との剥離、およびハンドリング、熱脆化、フラックス腐食および他の要素による熱電対ワイヤ破損。
【0012】
[0012]いくつかの供給業者は、溶接構造を除くために一体成型折り畳み式およびブレード式熱極を開発したが、これらの設計は通常、複雑な締め付け構造を有し、着脱可能ファスナと他の部品を含む。これらの構成はまた、通常、先端に応力と歪を与え、その寿命を短くする可能性がある。
【0013】
[0013]このため、従来の熱極における問題点の少なくともいくつかを克服することを目的とした改良熱極が必要とされる。
【発明の概要】
【0014】
概要
[0014]本明細書の一態様によると、シャンクと、先端と、シャンクと先端との間の融合部であって先端内の熱の閉じ込めを改善するために抵抗勾配を与えるように構成された融合部と、を含む熱極が提供される。
【0015】
[0015]特定の事例では、シャンクと先端は一体成型として形成される。シャンクと先端の形成は例えばワイヤEDM(wire electrical discharge machining)により形成されてもよい。
【0016】
[0016]別の特定の事例では、融合部は、先端における厚さより大きな厚さをシャンクにおいて有することにより先端内の熱の閉じ込めを改善するために抵抗勾配を与えるように構成される。
【0017】
[0017]別の特定の事例では、熱極は、冷却空気流を先端へ向けるようにシャンク内に一体化された冷却用ノズルをさらに含んでもよい。この場合、熱極はまた、シャンク内の冷却用ノズルに接続された冷却用ノズルコネクタであって熱極締め付け系上の整合コネクタに接続するように構成された冷却用ノズルコネクタを含んでよい。
【0018】
[0018]さらに別の事例では、熱極は、シャンクに隣接しシャンクから延びる取り付け台であってシャンクより大きな幅を有する取り付け台をさらに含んでもよい。
【0019】
[0019]さらに別の事例では、先端に電気バイアスをかけるためにガルバニリードを先端に設けてもよい。この先端のバイアスは先端の腐食を低減することを目的とする。
【0020】
[0020]さらに別の事例では、熱極は、作業面に近接近した先端に取り付けられた熱電対を含んでよい。この場合、熱電対は、先端に電気バイアスをかけるためにガルバニリードを含んでよい。
【0021】
[0021]本明細書の別の態様によると、熱極を締め付けるための締め具であって単一のアクチュエータで動作する締め具と、熱極の発熱体と接続するための一体化加熱接続部と、熱極の冷却素子と接続するための一体化冷却用接続部と、を含む熱極締め付け構造が提供される。
【0022】
[0022]本特許請求の範囲の締め付け構造の特定の事例では、加熱接続部は熱極へ電力接続を与えるために電極を含んでもよく、冷却用接続部は電極を分離し熱極に空気圧式接続を提供するように配置された中央空気圧式マニホールドを含んでもよく、締め付け構造は電極と中央空気圧式マニホールドを保持するために支持構造体をさらに含んでもよい。
【0023】
[0023]この特定の事例では、締め具は1つの固定顎板と可動顎板を含んでもよく、可動顎は単一アクチュエータの動作により移動するように構成されてもよい。この場合、支持構造体は、作業面上の先端の正確な配置のために、熱極の先端と締め付け構造との整合を維持するように適合されたデータム面を含んでよい。特に、固定顎板と可動顎板は、データム面に対する熱極の圧縮を確立するために丸い点接点を含んでもよい。
【0024】
[0024]本明細書の別の態様によると、工作物内に第1のプロフィールを機械加工する工程と、工作物内に第2のプロフィールを機械加工し、分離された半部分または端子およびシャンクを有する未完成熱極を切り離す工程と、端子およびシャンクの2つの半部分を互いに接着する工程と、熱電対を取り付ける工程と、を含む一体成型小型熱極の製造方法が提供される。
【0025】
[0025]特定の事例では、本方法は熱極をめっきする工程を含んでよい。この場合、熱極をめっきする工程は、導体材料によりシャンクにめっきすることと、保護物質等により先端をめっきすることと、を含んでよい。
【0026】
[0026]別の特定の事例では、本方法は、ハンドリングを容易にし処理中の機械的安定性を維持するためにキーパーバーを設け保持する工程を含んでよい。
【0027】
[0027]別の特定の事例では、熱電対を取り付ける工程は熱極の先端に熱電対をスエージ加工することを含んでよい。
【0028】
[0028]他の態様および特徴は、添付図面と併せて以下の特定の実施形態の説明を精査すると当業者には明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
実施形態について、例証としてのみ、添付図面を参照し以下に説明する。
【図1】例示的な熱極先端型を示す。
【図2】本明細書の一実施形態による熱極の正面図を示す。
【図3】図2の熱極の側面図を示す。
【図4】本明細書の別の実施形態による熱極の正面図を示す。
【図5】図4の熱極の側面図を示す。
【図6】本明細書の別の実施形態による熱極の正面図を示す。
【図7】図6の熱極の側面図を示す。
【図8】本明細書の一実施形態による熱極製造方法を説明するフローチャートである。
【図9】本明細書の一実施形態による熱極の締め付け構造の正面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0030】
詳細な説明
[0030]図2は、本明細書の一実施形態による改良折り畳み式プラグコンパチブル一体成型熱極(20)の正面図を示す。図3はその側面図を示す。
【0031】
[0031]熱極(20)は、シャンク(22)と、先端(24)と、シャンク(22)と先端(24)を結合する融合部(26)と、シャンク(22)を支持する取り付け台(28)と、を含む。図2と図3に示すように、取り付け台(28)はシャンク(22)から隣接してシャンク(22)から延び、シャンク(22)と一緒に形成されるが、別の構造体に容易に取り付け可能な形状である。融合部(26)は、先端(24)内の熱の閉じ込めを改善するように温度および抵抗の勾配を管理するための形状を有するように構成される。特に、融合部(26)は、先端材料と同じ厚さであるが、融合部(26)がシャンク(22)に接する点でより大きな厚さになるよう徐々に拡大する。一体化冷却用ノズル(36)は先端(24)に冷却空気流を流すように配置されてもよい。さらに、熱電対(38)は温度フィードバックを与えるように設けられてもよい。
【0032】
[0032]図2と図3の熱極(20)は単一の材料より形成されることが好ましい。これにより、形式および機能の再現性は改善し、溶接構造を回避することにより信頼性が増す。また、1つのツールによる単一のセットアップで限界特徴を機械加工することにより、寸法と公差は高精度なものへと改善される。場合によっては、機械加工は、例えばEDM機械加工を使用することにより1つのツールによる単一のセットアップで行われることができる。
【0033】
[0033]この実施形態では、熱極はまた、傾斜融合部を含む。本明細書の出願人らは、公知の熱極設計が通常は先端とシャンク間に突然の遷移を取り入れていることを確認した。この突然の遷移は溶接目的のために最も適切なものであり得るが、突然の遷移は電流分布と熱管理を最適化する能力を損なうと判断される。この状況では、貧弱な熱管理は熱が熱極のシャンク内に蓄積されることを許容し、その結果、高デューティサイクル反復操作において何らかのプロセス変動を生じる。一体成型構造を使用することにより適切な輪郭の融合部の生成が可能になる。
【0034】
[0034]この実施形態はまた、先端のより急速な冷却を可能にすることを目的とする一体化冷却用ノズルを含む。
【0035】
[0035]この実施形態はまた、ツーピースシャンクに溶接された先端である様々な市販熱極先端アセンブリとプラグコンパチブルであるように意図されている。特定の事例では、取り付け台は、長さが少なくとも1/2インチ(12.7mm)である1/64インチ(0.4mm)絶縁体により分離された2つの1/8インチ(3.18mm)矩形電極からなり、結局3.18×7.0×12.7mmの取り付け台となる。取り付け台は熱極を固定し加熱電流を流すように締め付けられる。この一体成型設計は、業界では一般的なツーリングとの互換性を与えるように意図されている。このツーリングは既存のツーリングを含むことができ、あるいは場合によっては、似ているが非標準の電極構造を含むことができる。
【0036】
[0036]一体成型構造と上記他の素子が折り畳み式、ブレード式およびペグ式熱極の構造に適用され得ることは理解されるであろう。上記折り畳み式は時に「改良折り畳み」呼ばれ得るが、これは先端が従来の配向に対し直角であるためである。従来の巻き上げ式と等価であるように意図された一体成型熱極実施形態は同様のやり方で作製されることができるが、何らかの追加の機械加工が必要となり得る(図4と図5と以下の説明を参照)。しかしながらこの手法は電流フローがそれほど均一に分散しないことがあるので余り好ましくないかもしれない。
【0037】
[0037]図4は、本明細書の一実施形態による従来型の巻き上げ式プラグコンパチブル一体成型熱極の正面図を示し、図5はその側面図を示す。類似の特徴に関しては図2と図3に関係する上記説明を参照する。図4と図5に示すように、この実施形態では、空気ノズル位置が変更されており、空気流に必要な経路を設けるためにシャンク22の追加機械加工を必要とし得る。
【0038】
[0038]従来型熱極の解析はまた、熱電対リードが通常は貧弱に支持されていることを明らかにした。通常、熱電対は熱極先端に直接取り付けられ、その結果、熱電対回路が先端により自身に導かれた同相電圧を経験する可能性があり、場合によっては不正確な温度読み取り値になる。これは、ソーラーモジュールを半田付けするとき特に重要であり、迷光に晒されると電圧を発生する。
【0039】
[0039]本実施例では、熱電対は熱極の先端に取り付けられる。好ましい位置は、通常は中間点(図2に示すように)の先端の内部、あるいは作業面に近接近した外側である。熱電対は、金属学的性質の整合性および/または先端材料に対する熱電対材料の熱膨張係数を改善するために、おそらく遷移金属(例えば、金属箔ディスクまたは薄い金属膜ディスク)を介在しスポット溶接により取り付けられてもよい。熱電対は機械加工された容器内にスエージ加工により取り付けられてもよい。スエージ加工は、十分に信頼できる溶接を形成することができない場合あるいは熱電対と先端間の電気的絶縁が望ましい場合の好ましい取り付け方法となり得る。例えば、熱極が、先端材料との溶接が困難な金属、あるいは(鉱物で)絶縁された熱電対との溶接が困難な金属で作られる場合。スエージ加工された熱電対は、温度測定の保持性能および/または精度を改善するために、伝熱化合物によりさらに被覆されてもよい。通常の熱電対型はE、J、またはKであり、型Jが一般的に使用されるが、酸性フラックスに晒されそうな場合はK型が好ましい。
【0040】
[0040]いくつかの実施形態では、電気防食ワイヤ(図示せず)がまた例えばスポット溶接またはスエージ加工により先端に取り付けられてもよい。この電気防食ワイヤが例えば3ワイヤ型(例えば、被覆または遮蔽された)である場合、これが代わりに熱電対内に取り込まれてもよい。この電気防食ワイヤは、先端材料と先端が直接接触する材料との間の腐食作用を制御し最小化するために使用することができる電気バイアスを、先端に印加するために使用してもよい。腐食作用の低減により熱極の寿命を改善することができる。
【0041】
[0041]図6は、一実施形態による改良折り畳み式小型一体成型熱極(20)の正面図を示し、図7はその側面図を示す。この実施形態では、熱極(20)は通常、市販の熱極とプラグコンパチブルではないが、本明細書でさらに詳しく説明されるようにより小型であるようにかつ改善された取り付け構造を提供するように設計される。
【0042】
[0042]図6に示すように、小型熱極(20)は、シャンク(22)、先端(24)、融合部(26)および取り付け台(28)を含む。取り付け台(28)はシャンク(22)に隣接しシャンク(22)から延び、シャンク(22)より大きな幅を有する。融合部(26)はシャンク(22)と先端(24)とを結合し、先端(24)内の熱の閉じ込めを改善するために温度および抵抗勾配を管理するように配置された幾何学的形状を有する。一体化冷却用ノズル(36)は冷却空気流を先端に向けるように配置される。空気圧式コネクタ(32)は一体化冷却用ノズル(36)に空気を供給するように配置されてもよい。
【0043】
[0043]シャンク(22)、先端(24)、融合部(26)および一体化冷却用ノズル(36)を一体成型で設けることができる。取り付け台(28)は、そのシャンク隣接端よりもその端子端部においてより広い幅を有することができる。取り付け台(28)の幅はシャンク隣接端から端子端部まで増加することができる。この場合、シャンク(22)と取り付け台(28)を実際は一体型シャンク取り付け台として設けられる。
【0044】
[0044]端子(30)は取り付け台(28)の端子端部に設けられる。空気圧式コネクタ(32)もまた取り付け台(28)の端子端部に設けられる。空気圧式コネクタ(32)はシール付き空気圧式ポートとして構成される。
【0045】
[0045]この型の熱極は、加熱(電気)および冷却(空気圧)接続の両方を取り入れてもよい改良締め付け構造(以下にさらに詳しく説明される)を使用するように設計され、交換を容易にし,かつ休止時間を最小化するために単一のファスナ/アクチュエータを使用してもよい。締め具は、従来の設計と比較して増加した表面積を提供するように意図されている。締め具はまた、改善された電気伝導率、改善された熱管理および改善された機械的データム面を提供するように意図されている。締め具は、熱極先端と加熱対象物間の平面性が確実に維持されるのを助けることを目的とした平らなデータム面を提供する。この実施形態では平面性は単一面により制御されるが、従来の熱極では3つの面が通常、平面性を与えるために整合されなければならない。
【0046】
[0046]図6と図7の小型熱極設計はまた、図2と図3の一体成型熱極設計を越えるさらなる改善を呈するように意図されている。特に、小さなアスペクト比は、熱極シャンク内の分散された抵抗加熱および熱蓄積という課題を著しく減らすことができる。これはまた、熱極を作製するために必要な材料の量を減らし、経費削減を可能にする。接触領域は増加され、これにより接触抵抗を減らし、過剰熱シンクとしても機能する接点内への伝熱を改善する。従来の熱極は、約3.18mm×12.7mmの寸法の接触領域、すなわち約40mmの固定接触面積を提供し、一方、本明細書の実施形態は6mm×12mmの最小接触領域すなわち72mmの面積を提供するように意図されているが、より大きな熱極に対してはこの面積を増加することができる。これらの熱極は締め具により取り付けられ、このためルーズファスナまたは他のハードウェアを必要としない。単一の固定型ファスナまたはアクチュエータは、迅速な交換を容易にする適所に熱極を締め付けるために使用されることができる。
【0047】
[0047]図8は、一体成型熱極を製造するための方法の例示的な実施形態を示すフローチャートである。
【0048】
[0048]この実施形態では、熱極は金属単体を機械加工することにより作製される。好ましい金属は、中程度の抵抗率、良好な機械的強度および良好な耐食性を兼ね備える。現在、好ましい金属としては、ASTMグレード1、2、3または4の工業用純Ti等の低抵抗グレードのチタンと、ASTMグレード12、15、17または9等の中程度の抵抗率を有するTi合金と、特に比較的小さな先端を有する熱極に使用され得る他のチタン合金と、ステンレス鋼、特に、ステンレス416、420、または430等のニッケルを含まないまたは無視できるほどのニッケル含有量と比較的高い炭素およびリン含有量の合金と、インコネルおよびタングステン鋼等の他の通常使用される金属と、を含む。
【0049】
[0049]工程102では、初期の熱極形状を形成するために、第1のプロフィール(通常、最も複雑なプロフィール)が単体の材料(工作物)内に機械加工される。機械加工は、例えばワイヤ放電加工(EDM)ツールにより行なわれてもよい。実際上、本方法は複数の熱極がこの段階で機械加工されるように事実上行われてもよい。特に、第1のプロフィールは複数の熱極を切り出すことができる半加工品上に形成されてもよく、例えばできるだけ多くのものをワイヤEDMツールの囲い内に収容することができる。
【0050】
[0050]特定の事例では、製造工程は好ましくはキーパーバーを使用することを取り入れてもよい。キーパーバーは、取り付けを改善しツール跡を防止するために製造中に工作物を保持し固定し、すべての製造作業が完了するまで限界寸法を保持し、場合によっては、製造コストを最小化するためにいくつかの/多くの熱極を1つのセットアップで1回で機械加工することができるように複数の工作物をグループで保持するために使用される。使用中に熱極を配置するためのデータム面としても機能する接触領域はこれらの表面間での最良の平行度を保証するために先端と同じ機械加工で形成されることができるような方法で、キーパーバーは工作物の本体に取り付けられることが好ましい。
【0051】
[0051]工程104では、熱極形状を完成するために第2のプロフィールが工作物上に機械加工される。複数の熱極が同時に機械加工される場合、個々の未完成熱極は切り離されてもよい。いずれにせよ、ハンドリングを容易にし、機械的安定性を維持するのを助けるためにキーパーバーを保持することが好ましい。
【0052】
[0052]工程106(任意選択)では、工作物がめっきされてもよい。例えば、先端、または先端およびシャンクは保護物質によりめっきされてもよい。別の例では、端子、または端子およびシャンクは導体材料によりめっきされてもよい。
【0053】
[0053]めっきは様々な部品、例えば、金プレート等の電極締め付け領域内の接触抵抗を低減する高導電性非酸化性金属、先端の耐食性増加および/または半田濡れ性低減のためのTiN、DLC等の防護壁など、に適用されてもよい。先端はまた、大気との反応を引き起こし母材の1つまたは複数の成分の酸化物または窒化物からなる層を生じる加熱または自己加熱を通じて形成される障壁層により保護されてもよい。
【0054】
[0054]工程108では、端子とシャンクの2つの半部分は、例えば高温エポキシ樹脂または他の好適な方法を使用して共に接着される。別の任意選択の要素である工程110では、2つの半部分はまた、補強のために共にピン留めされてもよい。
【0055】
[0055]同様に任意選択である工程112では、以下の追加の機械加工が行われてもよい。冷却用ノズル空気通路を設けること、熱電対取り付けまたは歪解放のための先端を用意すること、および/または部品に部品番号またはシリアル化情報をマーキングすること。
【0056】
[0056]工程114では、キーパーバーは工作物から切り離される。
【0057】
[0057]熱電対は工程116において取り付けられる。例えば、熱電対は、先端にスポット溶接またはスエージ加工されることができる。熱電対のリードは、高温テープ、スポット溶接金属タブまたはボルト締めワイヤ締め付け等の手段によるシャンクへの取り付けにより歪軽減されることができる。熱電対のリードは一定の長さに切り揃えられることができ、コネクタを取り付けることができる。上記のように電気防食リードは熱電対とは別にあるいはそれと一緒に取り付けられることができる。
【0058】
[0058]図6と図7に関して述べたように、冷却供給、例えば空気圧式空気冷却等への容易な接続を可能にするために冷却冶具を取り付けてもよい。
【0059】
[0059]本方法要素のいくつかは任意選択であってもよいし、あるいは変更されてもよいことが理解されるであろう。いくつかの方法要素は、製造対象の熱極の量等の様々な要素に応じて、上述されたものとは異なる順序で実行されてもよい。
【0060】
[0060]図9に、図6と図7に示すような熱極の例示的締め付け構造の正面図を示す。
【0061】
[0061]図9に示すように、この型の熱極(12)は、加熱(電気的)および冷却(空気圧式)接続の両方を取り入れ、交換を容易にしかつ休止時間を最小化するために単一のファスナ/アクチュエータを使用する締め付け構造を使用する。
【0062】
[0062]示された実施形態では、締め付けアセンブリまたは締め付け系は次の要素を含む。
i)電極(122):2つの電極を設けることができる。電極は、銅または別の高導電性金属であってよく、場合により、酸化を防止するための金メッキ接点表面を有する。電極は熱極への電力接続を提供する。これらの要素の表面はまた、プロセス安定性の改善のために過剰熱を急速に放散する放熱器を提供することができる。
ii)電極(122)を分離し、熱極を横断方向におよび回転に対して整合し続けるための何らかの誘導を提供するとともに、熱極への空気圧式接続を提供する中央空気圧式マニホールド(124)。
iii)締め付け構造の要素を保持しデータム面(128)による整合を維持する支持構造(126)。データム面(128)は、熱極が締め付けられると熱極先端と加熱対象物との間の平面性を与えるように意図されている。
iv)2つの顎板すなわち1つの固定顎板(130)および熱極の交換を可能にする1つの可動顎(132)。それぞれは、例えば、データム面接触領域上をほぼ中心とする圧縮力を設定することにより、安定して締め付けデータム面への熱極の圧縮を確立するために、丸い点接触を備えてもよい。
【0063】
[0063]この実施形態では、締め具は電気伝導率と熱管理を改善するために従来の設計と比較して増加された表面積を提供する。従来の熱極は、約3.18mm×12.7mmの寸法の接触領域、すなわち約40mmの固定接触面積を提供し、一方、本明細書の実施形態は6mm×12mmの接触領域すなわち72mmの面積を提供するように意図されているが、より大きな熱極に対してはこの面積を増加することができる。
【0064】
[0064]締め具はまた、熱極先端と加熱対象物との間の平面性が確実に維持されるのを助けることを目的とした平らなデータム面を提供する。
【0065】
[0065]図9に示すような取り付け構造は、以下の特徴のうちの1つまたは複数を提供するように意図されている。限界表面の数および関係する機械加工公差を減らすことにより、加熱対象物に対する先端の実現可能平面性を改善する。切り替えを簡略化し、交換時間を短縮する、空冷接続を簡略化する。一体化冷却用ノズルはまた、熱極間の冷却サイクルの再現性を改善し、電気的端子接触面積を増加させる。
【0066】
[0066]一般的に言えば、本明細書の実施形態は以下の要素または特徴のうちの1つまたは複数を含むように意図されている。
・ 一体型設計:先端をシャンクに溶接することにより生じる応力を減らす。
・ 融合部(26):先端内の熱の閉じ込めを改善するように設計された幾何学的形状により温度および抵抗勾配が管理される、シャンクと先端とを結合する熱極の一部。上述のように、従来の設計は通常、先端がシャンクに対し溶接または締め付けられる突然の遷移を取り込む。本明細書の一実施形態による一体成型設計では、この融合部または領域は、先端からシャンク内に伝導される熱量を最小化すると同時に先端自体内の抵抗加熱の大部分を含むように熱および抵抗勾配が変化する、フレアまたは他の幾何学的形状として設けることができる。
・ 一体化冷却用ノズル(36):冷却空気流を先端に向ける一体化要素。
・ 空気圧式コネクタ(32):冷却用ノズルに空気を供給する手段。
・ ボンディングリード(電気防食ワイヤ):電気防食を施すために先端を電気的に関係付ける任意選択の手段。
【0067】
[0067]本明細書に記載の小型熱極と締め付け構造については、従来の熱極装置を本明細書に記載の締め付け構造と小型熱極に使用できるように変換することのできる、小型熱極の締め付け構造を含むキットを提供し得ることが理解されるであろう。
【0068】
[0068]本明細書に記載の実施形態はまた、既存の手法を越える次の利点を提供するように意図されており、利点には部品数の最小化、製造工程の簡略化、低コスト、信頼性の改善、および迅速な交換によるサービス性の改善を含まれ得る。
【0069】
[0069]以上の説明では、説明の目的のために、本明細書に記載の実施形態を完全に理解できるように多くの詳細が記載された。しかしながらこれらの具体的な詳細はこれらの実施形態を実施するために必須ではないことは当業者に明らかであろう。
【0070】
[0070]上記実施形態は例とされることだけを目的としている。本出願の範囲から逸脱することなく当業者により、特定の実施形態に対し改造、変更および変形を行うことができる。
【図1A】

【図1B】

【図1C】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャンクと、
先端と、
前記シャンクと前記先端との間の融合部であって、前記先端内の熱の閉じ込めを改善するために抵抗勾配を与えるように構成された融合部と、を含む熱極。
【請求項2】
前記シャンクと前記先端は一体成型として形成される、請求項1に記載の熱極。
【請求項3】
前記融合部は、前記先端における厚さより大きな厚さを前記シャンクにおいて有することにより前記先端内の熱の閉じ込めを改善するために抵抗勾配を与えるように構成される、請求項1に記載の熱極。
【請求項4】
前記シャンク内に組み込まれた冷却用ノズルであって、冷却空気流を前記先端に向けるように構成された冷却用ノズルをさらに含む、請求項1に記載の熱極。
【請求項5】
前記シャンク内の前記冷却用ノズルと接続される冷却用ノズルコネクタであって、熱極締め付け系上の整合コネクタに接続するように構成された冷却用ノズルコネクタをさらに含む、請求項4に記載の熱極。
【請求項6】
前記シャンクに隣接し、前記シャンクから延びる取り付け台であって、前記シャンクより大きな幅を有する取り付け台をさらに含む、請求項1に記載の熱極。
【請求項7】
前記先端に電気バイアスをかけるためにガルバニリードを前記先端に設けた、請求項1に記載の熱極。
【請求項8】
作業面に近接近して前記先端に取り付けられた熱電対をさらに含む、請求項1に記載の熱極。
【請求項9】
前記熱電対は前記先端に電気バイアスをかけるためにガルバニリードをさらに含む、請求項8に記載の熱極。
【請求項10】
熱極を締め付けるための締め具であって、単一アクチュエータにより動作する締め具と、
前記熱極の発熱体に接続するための一体化加熱接続部と、
前記熱極の冷却素子に接続するための一体化冷却用接続部と、
を含む熱極締め付け構造。
【請求項11】
前記加熱接続部は前記熱極へ電力接続を与える電極を含み、
前記冷却用接続部は前記電極を分離し前記熱極に空気圧式接続を提供するように配置された中央空気圧式マニホールドを含み、
前記締め付け構造は前記電極と前記中央空気圧式マニホールドを保持する支持構造体をさらに含む、請求項10に記載の熱極締め付け構造。
【請求項12】
前記締め具は1つの固定顎板と可動顎板を含み、前記可動顎は前記単一アクチュエータの動作により移動するように構成された、請求項11に記載の熱極締め付け構造。
【請求項13】
前記支持構造体は、作業面上の前記先端の正確な配置のために、前記熱極の先端と前記締め付け構造との整合を維持するように適合されたデータム面を含む、請求項12に記載の熱極締め付け構造。
【請求項14】
前記固定顎板と前記可動顎板は前記データム面に対する前記熱極の圧縮を確立するために丸い点接点を含む、請求項13に記載の熱極締め付け構造。
【請求項15】
工作物内に第1のプロフィールを機械加工する工程と、
前記工作物内に第2のプロフィールを機械加工し、分離された半部分または端子およびシャンクを有する未完成熱極を切り離す工程と、
前記端子および前記シャンクの前記2つの半部分を互いに接着する工程と、
熱電対を取り付ける工程と、
を含む一体成型小型熱極の製造方法。
【請求項16】
前記熱極をめっきする工程をさらに含む、請求項15に記載の一体成型小型熱極の製造方法。
【請求項17】
前記熱極をめっきする工程は導体材料により前記シャンクをめっきすることを含む、請求項16に記載の一体成型小型熱極の製造方法。
【請求項18】
ハンドリングを容易にし、機械的安定性を維持するためにキーパーバーを設け保持する工程をさらに含む、請求項15に記載の一体成型小型熱極の製造方法。
【請求項19】
前記熱電対を取り付ける工程は前記熱極の先端に前記熱電対をスエージ加工することを含む、請求項15に記載の一体成型小型熱極の製造方法。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2012−521886(P2012−521886A)
【公表日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−501100(P2012−501100)
【出願日】平成22年3月29日(2010.3.29)
【国際出願番号】PCT/CA2010/000467
【国際公開番号】WO2010/108284
【国際公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(507028594)エーティーエス オートメーション ツーリング システムズ インコーポレイテッド (7)
【氏名又は名称原語表記】ATS AUTOMATION TOOLING SYSTEMS INC.
【Fターム(参考)】