説明

熱軟化放熱シート及びこれを用いた放熱シート

【課題】ゲル成分と軟化成分とフィラー成分を含む硬化物が、熱によって軟化し、発熱素子と放熱体との密着性がよく、熱的性能がよい熱軟化放熱シート及びこれを用いた放熱シートを提供する。
【解決手段】高分子ゲル(A)と、常温では固形ないしペースト状で加熱すると液体になる化合物(B)と、熱伝導性フィラー(C)とを含む組成物からなる放熱シート1であって、加熱によって軟化する。配合割合は、高分子ゲル(A)を100重量部としたとき、化合物(B)を5〜240重量部の範囲、熱伝導性フィラー(C)を100〜10000重量部の範囲とするのが好ましく、軟化温度は35〜105℃の範囲とするのが好ましい。放熱シート1の片面には取り扱い性をよくするため補強層2を設けてもよい。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、熱伝導性放熱シートに関するものである。さらに詳しくは、所定の温度で軟化する熱軟化放熱シート及びこれを用いた放熱シートに関する。
【0002】
【従来の技術】従来からコンピュータ(CPU)などに使用される半導体は使用中に発熱し、その熱のため電子部品の性能が低下することがある。そのため発熱するような電子部品には放熱体が取り付けられる。しかし、放熱体は金属であることが多いためCPU放熱部との密着がよくない。そこで発熱体と放熱体の間にゴム製の放熱シートを挿入して密着度を高める方法がとられている。
【0003】最近では特開平6−155517号公報にあるようにゴム硬度がかなり低いゲルタイプのものが使われるようになった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら最近のCPUなどの半導体の性能がよくなり発熱量もかなり増えてきていて、密着のよいゲルタイプの放熱シートでも熱対策が困難になってきており、グリースを使うケースが増えてきている。しかし、グリースは塗る作業が必要なため非常に取り扱い性が悪いという問題がある。
【0005】本発明は、前記従来の課題を解決するため、ゲル成分と軟化成分とフィラー成分を含む硬化物が、熱によって軟化し、発熱素子と放熱体との密着性がよく、熱的性能がよい熱軟化放熱シート及びこれを用いた放熱シートを提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】前記目的を達成するため、本発明の熱軟化放熱シートは、高分子ゲル(A)と、常温では固形ないしペースト状で加熱すると液体になる化合物(B)と、熱伝導性フィラー(C)とを含む組成物からなる放熱シートであって、加熱によって軟化することを特徴とする。
【0007】また本発明の放熱シートは、前記熱軟化放熱シートが熱伝導性ゴムシート、熱伝導性ゲルシート及び熱伝導性樹脂シートから選ばれる少なくとも一つの熱伝導性シートに積層されていることを特徴とする。
【0008】また本発明の別の放熱シートは、前記熱軟化放熱シートの内層にさらに基材が挿入されていることを特徴とする。
【0009】本発明においては、高分子ゲル(A)と、常温では固形ないしペースト状で加熱すると液体になる化合物(B)と、熱伝導性フィラー(C)を含む組成物の配合割合が、高分子ゲル(A)を100重量部としたとき、化合物(B)が5〜240重量部の範囲、熱伝導性フィラー(C)が100〜10000重量部の範囲が好ましく、さらに好ましくは化合物(B)が25〜100重量部の範囲、熱伝導性フィラー(C)が120〜5400重量部の範囲である。この範囲であるとゲル成分と軟化成分とフィラー成分を含む硬化物が、熱によって軟化し、発熱素子と放熱体との密着性がよく、効率的に熱を放散するシートとすることができる。
【0010】前記高分子ゲル(A)は、シリコーンゲル、アクリルゲル及びウレタンゲルから選ばれる少なくとも一つのゲルであることが好ましい。
【0011】また前記化合物Bは、液体になる温度(融点または軟化点)が30〜105℃の範囲であることが好ましい。また前記化合物Bは、融点30〜105℃の範囲のシリコーンオイル、融点30〜105℃の範囲のワックス、融点30〜80℃の範囲のα−オレフィンでから選ばれる少なくとも一つの物質であることが好ましい。
【0012】また前記熱伝導性フィラーCは、金属酸化物,窒化物,炭化物,金属粉,炭素繊維から選ばれる少なくとも一つであることが好ましい。
【0013】また前記放熱シートの軟化温度は、35〜105℃の範囲であることが好ましい。
【0014】また前記放熱シートの熱伝導率は、0.5〜40W/m・Kの範囲であることが好ましい。
【0015】また前記放熱シートの熱抵抗値は、0.005〜10℃・inch2/Wの範囲であることが好ましい。
【0016】また前記熱軟化放熱シートの少なくとも片面をゴム状に硬化させて薄膜補強層としたことが好ましい。
【0017】次に前記放熱シートにおいては、前記熱伝導性シートに基材が挿入されていることが好ましい。また前記基材は織布、編物、不織布、プラスチックフィルム及び金属箔から選ばれる少なくとも一つであることが好ましい。ここで熱伝導性シートとは、熱伝導率が0.5〜15W/m・Kの範囲のシートをいう。
【0018】また前記熱伝導性シートは、電磁波シールド性のある熱伝導性ゴム、熱伝導性ゲル及び熱伝導性樹脂から選ばれる少なくとも一つであることが好ましい。ここで電磁波シールドシートとは、電磁波吸収型あるいは電磁波反射型のゲル,ゴムまたは樹脂等のシートをいう。
【0019】
【発明の実施の形態】本発明の熱軟化放熱シートはシリコーンゲルに常温では固形ないしペースト状で熱が加わると液体になるシリコーンゲルと混合する物質を添加した系に熱伝導性フィラーを添加して作成した放熱シートで熱によって軟化する。また、アクリルまたはウレタンから誘導されるゲルに、常温では固形ないしペースト状で熱が加わると液体になる化合物に熱伝導性フィラーを添加して作成した放熱シートで熱によって軟化する。前記本発明の熱軟化シートの材質はアクリル,ウレタン,シリコーンなどがありそれらの誘導体も適宜使用してよい。耐熱性を考慮するとシリコーンを使用するのが好ましい。
【0020】添加する固形,ペースト状オイルはベースとなるゲル成分と混合する必要がある。完全に相溶するのが好ましいが、必ずしも完全に相溶しなくてもよい。シリコーンゲルをベース材料とする系に添加する物質はシリコーンオイルがよく、そのシリコーンオイルは常温で固形ないしペースト状であることが好ましい。固形ないしペースト状のシリコーンオイルの融点は30〜105℃であることが好ましい。シリコーンオイルはアミノ基,エポキシ基,カルボキシル基,水産基,ビニル基,メルカプト基,アルキル基などの官能基を導入したものあるがアルキル基変性シリコーンオイルが好ましい。アクリルポリマー,ウレタンポリマーから誘導されるゲルベース材料とする系に添加する物質の融点は30〜105℃のワックスであることが好ましい。ワックスにはパラフィンワックス,マイクロクリスタルワックス,低分子ポリエチレンワックス、高級アルコール,高級脂肪酸エステルなどがある。もちろん変性したワックスを使用してもよい。融点が20〜80℃の可塑剤,α−オレフィンはワックス代替としても可能である。
【0021】熱伝導性フィラーは窒化物,炭化物,金属酸化物があり一種または二種以上の混合物が好適に用いられる。
【0022】熱伝導性ゴム,熱伝導性ゲル,熱伝導性樹脂は、ゴム,ゲル,樹脂に熱伝導性フィラーを添加しコンパウンドにしたものでありこれをシート状などのさまざまな形に成形したものである。熱伝導性ゴム,熱伝導性ゲル,熱伝導性樹脂には取り扱い性をよくするため基材を入れてもよい。基材は織布,編物,不織布,プラスチックフィルム,金属箔から選ばれるのが好ましい。
【0023】熱伝導性ゴム,熱伝導性ゲル,熱伝導性樹脂には電磁波シールド効果を付与してもよい。電磁波シールド効果を付与するには金属粉またはフェライト粉末を50〜95重量%添加するのが好ましい。
【0024】また、本発明のシートの少なくとも片面に形成する薄膜補強層は、架橋密度を高くすることにより形成できる。例えば、放熱シートを構成する樹脂分を硬化させる架橋成分を放熱シート表面に多く存在させ硬度を硬くする。
【0025】本発明の熱軟化放熱シートは取り扱いは通常の熱伝導性シリコーンゲルと同じである。
【0026】熱伝導性シリコーンゲルであるため発熱素子と放熱体との密着性がよく熱抵抗値は低い。しかし、発熱素子から発生する熱によって軟化し発熱素子と放熱体の間隙を隙間なく埋めると同時に発熱素子と放熱体に狭持してあるため、圧力によって熱軟化放熱シート自体薄くなり、熱抵抗値はさらに低下する。
【0027】シリコーンゲルは白金触媒による付加型であることが好ましく、市販されているものでよい。この中でも粘度が150〜1500mPa・s,針入度が50以上(ASTM D1403 1/4コーン)であるものがさらに好ましい。シリコーンゲルに熱伝導性フィラーを添加したコンパウンドの粘度を低下させるため反応希釈剤を添加してもよい。反応希釈剤はベースゲルとなるポリマーの重合度が低いポリマー成分が好ましく用いられる。シリコーンゲルには可塑剤としてシリコーンオイルを添加してもよい。シリコーンオイルには変性シリコーンも含まれる。シリコーンゲルには難燃性を付与するため難燃剤を添加してもよい。難燃剤には金属水酸化物,金属酸化物,塩化白金酸,アルコール変性塩化白金酸,白金オレフィン錯体などから一種あるいは二種混合で選択される。シリコーンゲルには酸化防止剤を添加してもよい。酸化防止剤には金属酸化物,金属水酸化物があり具体的には酸化セリウム,水酸化セリウム,酸化鉄などがあり一種あるいは二種混合で選択される。
【0028】アクリルポリマーに導入される架橋点となる官能基は水酸基,カルボキシル基,エポキシ基,アミノ基,イソシアネート基などがあるがこれらのうち水酸基であることが好ましい。架橋剤は官能基の種類に応じて使い分ける。例としては官能基が水酸基である場合はイソシアネート基が選択される。ゲル化するには架橋密度を減らす必要がありこれは架橋点となる官能基の数を選らしたり架橋剤の添加量を減らしたりして硬度を調整する。
【0029】ウレタンゲルはポリイソシアネートと活性水素をもった化合物で構成される。ポリイソシアネートにはトリレンジイソシアネート,ジフェニルメタンジイソシアネート,ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート,ヘキサメチレンジイソシアネート,キシリレンイソシアネートなどがある。
【0030】活性水素をもった化合物にはポリエーテルポリオール,ポリエステルポリオール,アクリルポリオールが代表例であり具体的にはポリエチレングリコール,ポリオキシプロピレングリコール,ジエチレングリコール,ジプロピレングリコール,エポキシ樹脂,ひまし油などがある。ゲル化するには架橋密度を減らす必要があり、これは架橋点となる官能基の数を減らしたり架橋剤の添加量を減らすことにより硬度を調整できる。
【0031】アクリルゲル,ウレタンゲルに熱伝導性フィラーを添加したコンパウンドの粘度を低下させるため反応希釈剤を添加してもよい。反応希釈剤はベースゲルとなるポリマーの重合度が低いポリマー成分が好ましく用いられる。
【0032】アクリルゲル,ウレタンゲルには粘着付与剤を添加してもよく、粘着付与剤としてはロジン系及びロジン誘導体,テルペン系,石油樹脂系,スチレン系,フェノール系,クロマン・インデン系などがある。
【0033】アクリルゲル,ウレタンゲルには軟化剤,可塑剤を必要に応じて添加してもよい。これらには液体のポリブテン,ナフテン系オイルなどがある。
【0034】アクリルゲル,ウレタンゲルには酸化防止剤を添加してもよい。酸化防止剤にはフェノール系,燐系があり代表例として2,6−t−ブチル−4−メチルフェノール,トリスノニルフェニルホスファイトなどがあり、どれを用いてもよい。
【0035】アクリルゲル,ウレタンゲルには難燃性を付与するため難燃剤を添加してもよい。脱ハロゲンで難燃性を付与するためには、金属水酸化物,金属酸化物,硼素化合物,鉄化合物,燐系化合物,燐酸系化合物,シリコーンパウダーなどから一種あるいは二種混合で選択される。
【0036】アクリルゲル,ウレタンゲルにはその他、反応促進剤,発泡剤,耐電防止剤などを必要に応じて添加してもよい。
【0037】熱伝導性フィラーは金属酸化物,窒化物,炭化物,金属粉,炭素繊維などが挙げられる。金属酸化物には酸化アルミニウム,酸化亜鉛,酸化マグネシウム、窒化物には窒化珪素,窒化アルミニウム,窒化硼素、炭化物には炭化珪素,炭化硼素、金属粉には銀,銅,金,アルミニウム、炭素繊維にはピッチ系,ポリアクリロニトリル(PAN)系などがありこれらから一種または二種以上の混合物が好適に用いられる。
【0038】熱伝導性フィラーの形状は球状,鱗片状,フレーク状,繊維状,針状などがありどの形状を用いてもよい。また、添加する熱伝導フィラーの形状は一種類のみにする必要はなく二種以上の形状の混合物にしてもよい。
【0039】熱伝導性フィラーにはシランカップリング剤処理をしてもよい。カップリング剤としてはシランカップリング剤,チタンカップリング剤, アルミニウムカップリング剤などがありどれを用いてもよい。カップリング剤の好ましい配合量は熱伝導性フィラー100重量部に対して0.05〜2重量%である。
【0040】熱伝導性ゴムのベースゴムとしてはシリコーンゴム,アクリルゴム,ブチルゴムなどに熱伝導性フィラーを添加したものでありその熱伝導性フィラーは前記したものと同様である。熱伝導性ゲルはシリコーンゲル,アクリルゲル,ウレタンゲルなどに熱伝導性フィラーを添加したもの,熱伝導性樹脂はエポキシ樹脂,アクリル樹脂,ポリエチレン樹脂などに熱伝導性フィラーを添加したものである。これら熱伝導性ゴム層,ゲル層,樹脂層は積層される熱軟化シートより硬度が低いことが好ましい。
【0041】積層は熱伝導性ゴム,ゲル,樹脂の上に熱軟化シートの硬化前のコンパウンドをプレス成型,押し出し成形,カレンダー成形,ドクタープレート法でおこなうのがよく、いずれを用いてもよい。
【0042】基材の織布の材質は硝子繊維,アラミド繊維,ポリエステル繊維などがある。不織布には硝子、プラスチックフィルムにはポリエステル,ポリエチレン,ポリプロピレン,ポリイミド、金属箔にはアルミ箔,銅箔などがありどれを用いてもよい。
【0043】電磁波シールド効果を付与するため熱伝導性ゴム,ゲル,樹脂に添加する金属粉には銀,銅,アルミニウムなどがフェライト粉末には一般式M2+・Fe23(M=Fe,Mn,Co,Ni,Zn)で表せるソフトフェライトと一般式MO・6Fe23(M=Ba2+,Sr2+)などがある。
【0044】さらにシリカ,金属酸化物,プラスチックなどにメッキを施したものでもよい。形状は球状,鱗片状,フレーク状,繊維状,針状などがありどの形状を用いてもよい。また、添加するフィラーの形状は一種類のみにする必要はなく二種以上の形状の混合物にしてもよい。むろんフィラーにはカップリング処理してもよい。
【0045】図1は本発明の一実施態様の熱軟化シート1の概略断面図を示し、図2は本発明の一実施態様の熱軟化シート1に熱伝導性ゴム層,ゲル層,樹脂層等の補強層2を積層した概略断面図である。
【0046】
【実施例】以下実施例を用いて本発明をさらに具体的に説明する。
【0047】
【実施例1】シリコーンゲル100重量部(SE1885 東レ・ダウコーニング(株)製)に固形シリコーンオイル25重量部(KF910 信越化学工業(株)製)に酸化アルミニウム375重量部(AL30 昭和電工(株)製),鉄黒 6.25重量部添加して混練りしてコンパウンドにした。これを80℃、30分のプレス成型によって1mm厚みのシートを得た。
【0048】
【実施例2】ポリウレタン100重量部とポリウレタンの1%の硬化剤(KBKRT16日本エヌエスシー(株)製)にパラフィン25重量部(パラフィンワックス115 日本精蝋株式会社)に酸化アルミニウム125重量部(AL30 昭和電工(株)製),鉄黒 6.25量部添加して混練りしてコンパウンドにした。これを80℃、30分のプレス成型によって1mm厚みのシートを得た。
【0049】
【比較例1】シリコーンゲル100重量部(SE1885 東レ・ダウコーニング(株)製)に酸化アルミニウム300重量部(AL30 昭和電工(株)製),鉄黒 5重量部添加して混練りしてコンパウンドにした。これを80℃、30分のプレス成型によって1mm厚みのシートを得た。
【0050】
【比較例2】ポリウレタン100重量部とポリウレタンに対して1重量%の硬化剤(KBKRT16 日本エヌエスシー(株)製)に酸化アルミニウム100重量部(AL30 昭和電工(株)製),鉄黒 5重量部添加して混練りしてコンパウンドにした。これを80℃、30分のプレス成型によって1mm厚みのシートを得た。
【0051】これらの結果を以下に示す。
【0052】
【表1】


【0053】
【実施例3】熱伝導ゴム,ゲルに下記熱軟化ゲルを積層した例を説明する。
【0054】シリコーンゲル100重量部(SE1885 東レ・ダウコーニング(株)製)に固形シリコーンオイル25重量部(KF910 信越化学工業(株)製)に酸化アルミニウム500重量部(AL30 昭和電工(株)製),鉄黒 6.25重量部添加して混練りしてコンパウンドにした。これを80℃、30分のプレス成型によって1mm厚みのシートを得た。
【0055】
【実施例4】シリコーンゲル100重量部(SE1885 東レ・ダウコーニング(株)製)に固形シリコーンオイル25重量部(KF910 信越化学工業(株)製)に酸化アルミニウム500重量部(AL30 昭和電工(株)製),鉄黒 6.25重量部添加して混練りしてコンパウンドにした。これを80℃、30分のプレス成型によって1mm厚みのシートを得た。
【0056】
【比較例3】シリコーンゲル100重量部(SE1885 東レ・ダウコーニング(株)製)に固形シリコーンオイル25重量部(KF910 信越化学工業(株)製)に酸化アルミニウム500重量部(AL30 昭和電工(株)製),鉄黒 6.25重量部添加して混練りしてコンパウンドにした。これを80℃、30分のプレス成型によって1mm厚みのシートを得た。
【0057】これらの結果を以下に示す。
【0058】
【表2】


【0059】以上説明したとおり、本発明の実施例によれば、放熱シート自体が熱によって軟化し発熱素子や放熱体の密着度を高めることで接触熱抵抗値を低下させ、さらに放熱シート自体の熱伝導率も高いので半導体等のヒートシンクの放熱体として有用である。
【0060】
【発明の効果】以上説明したとおり、本発明の熱軟化放熱シートは、熱伝導率が同じでも熱抵抗値が低くなる。また、密着がよいゲルシートが発熱素子から発生する熱によって軟化するため、さらに密着がよくなり、厚みが薄くなるため熱抵抗値が低くなる。さらに熱伝導性ゴム,ゲル,樹脂に熱軟化シートを積層すると、取り扱い性が良好になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施態様の熱軟化シートの概略断面図
【図2】本発明の一実施態様の熱軟化シートに補強層を積層した概略断面図
【符号の説明】
1 熱軟化シート
2 補強層

【特許請求の範囲】
【請求項1】高分子ゲル(A)と、常温では固形ないしペースト状で加熱すると液体になる化合物(B)と、熱伝導性フィラー(C)とを含む組成物からなる放熱シートであって、加熱によって軟化することを特徴とする熱軟化放熱シート。
【請求項2】高分子ゲル(A)と、常温では固形ないしペースト状で加熱すると液体になる化合物(B)と、熱伝導性フィラー(C)を含む組成物の配合割合が、高分子ゲル(A)を100重量部としたとき、化合物(B)が5〜240重量部の範囲、熱伝導フィラー(C)が100〜10000重量部の範囲である請求項1に記載の熱軟化放熱シート。
【請求項3】高分子ゲル(A)がシリコーンゲル、アクリルゲル及びウレタンゲルから選ばれる少なくとも一つのゲルである請求項1または2に記載の熱軟化放熱シート。
【請求項4】化合物Bが液体になる温度(融点または軟化点)が30〜105℃の範囲である請求項1〜3のいずれかに記載の熱軟化放熱シート。
【請求項5】化合物Bが、融点30〜105℃の範囲のシリコーンオイル、融点30〜105℃の範囲のワックス、融点30〜80℃の範囲のα−オレフィンでから選ばれる少なくとも一つの物質である請求項1〜4のいずれかに記載の熱軟化放熱シート。
【請求項6】熱伝導性フィラーが金属酸化物,窒化物,炭化物,金属粉,炭素繊維から選ばれる少なくとも一つである請求項1〜5のいずれかに記載の熱軟化放熱シート。
【請求項7】放熱シートの軟化温度が35〜105℃の範囲である請求項1〜6のいずれかに記載の熱軟化放熱シート。
【請求項8】放熱シートの熱伝導率が0.5〜40W/m・Kの範囲である請求項1〜7のいずれかに記載の熱軟化放熱シート。
【請求項9】放熱シートの熱抵抗値が0.005〜10℃・inch2/Wの範囲である請求項1〜8のいずれかに記載の熱軟化放熱シート。
【請求項10】熱軟化放熱シートの少なくとも片面をゴム状に硬化させて薄膜補強層とした請求項1〜9のいずれかに記載の熱軟化放熱シート。
【請求項11】請求項1〜9のいずれかに記載の熱軟化放熱シートが、熱伝導性ゴムシート、熱伝導性ゲルシート及び熱伝導性樹脂シートから選ばれる少なくとも一つの熱伝導性シートに積層されていることを特徴とする放熱シート。
【請求項12】熱伝導性シートに基材が挿入されている請求項11に記載の放熱シート。
【請求項13】請求項1〜9のいずれかに記載の熱軟化放熱シートの内層にさらに基材が挿入されていることを特徴とする放熱シート。
【請求項14】基材が織布、編物、不織布、プラスチックフィルム及び金属箔から選ばれる少なくとも一つである請求項12または13に記載の放熱シート。
【請求項15】熱伝導性シートが、電磁波シールド性のある熱伝導性ゴム、熱伝導性ゲル及び熱伝導性樹脂から選ばれる少なくとも一つである請求項11または12に記載の放熱シート。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2002−234952(P2002−234952A)
【公開日】平成14年8月23日(2002.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2001−32883(P2001−32883)
【出願日】平成13年2月8日(2001.2.8)
【出願人】(000237422)富士高分子工業株式会社 (15)
【Fターム(参考)】