説明

燃料噴射系統の燃料供給装置

【課題】蓄圧式燃料噴射装置に供給する燃料を効果的に冷却して燃料の温度を一定温度以下に確実に押えることができ、且つ冷却のための駆動動力も低減できるようにする。
【解決手段】フィードポンプ4と高圧ポンプ5を備えた燃料供給装置3によりコモンレール7とインジェクタ8を有する蓄圧式燃料噴射装置6に燃料を供給するようにしている燃料噴射系統の燃料供給装置であって、フィードポンプ4とコモンレール7との間に複数の高圧ポンプ5a,5b,5cを備え、各高圧ポンプ5a,5b,5cの前後に位置するように配置した燃料冷却装置15a,15b,15c,15dを介して各高圧ポンプ5a,5b,5cを直列に接続する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料噴射圧の高圧化に伴って温度が上昇する燃料噴射系統内の燃料の温度を一定値以下に保持するための燃料噴射系統の燃料供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、コモンレールとインジェクタを有する燃料噴射装置(蓄圧式燃料噴射装置)を採用したディーゼルエンジン等の内燃機関の燃料噴射系統においては、エンジン気筒での燃焼用空気との混合性を高めるために、燃料供給装置から蓄圧式燃料噴射装置に供給する燃料の高圧化が図られ、これによって燃料の温度上昇が著しくなっており、この燃料の温度上昇によりインジェクタ及び噴射ポンプ内の摺動部品等が熱的に厳しくなる場合が生じている。
【0003】
又、近年では、前記エンジンの燃料にバイオ燃料を用いることが行われており、このようなエンジンにおいては燃料噴射系統内の温度をバイオ燃料の変質温度以下に抑える必要がある。
【0004】
このような問題に対処するために従来の燃料噴射系統では、燃料タンクへの燃料の戻り流路に燃料クーラを設置して燃料温度の上昇を抑制することが行われていた。
【0005】
図2は従来における蓄圧式燃料噴射装置と燃料供給装置とからなる燃料噴射系統の一例を示すもので、燃料タンク1の燃料は燃料供給流路2を介して燃料供給装置3を構成するフィードポンプ4により吸い上げられ、高圧ポンプ5で昇圧された後、蓄圧式燃料噴射装置6を構成するコモンレール7に供給された後、インジェクタ8から噴射されるようになっている。前記コモンレール7及びインジェクタ8での余剰の燃料は戻り流路9により前記燃料タンク1に戻すようにしている。又、前記高圧ポンプ5に設けた調圧弁10からの余剰燃料は返送流路11によりスルーフィードバルブ12を介して前記戻し流路9からの燃料と合流して合流管13により燃料タンク1に戻すようにしている。尚、前記燃料供給装置3を構成する前記フィードポンプ4と高圧ポンプ5は独立して配置した場合を示しているが、フィードポンプ4と高圧ポンプ5は一体に組み立てられたものが多く用いられている。
【0006】
そして、図2の場合においては、前記合流管13に燃料冷却装置14を設置して燃料タンク1に戻る燃料の冷却を行うようにしている。
【0007】
上記燃料噴射系統では、燃料タンク1の燃料は燃料供給流路2を介してフィードポンプ4により吸い上げられて高圧ポンプ5で昇圧された後、蓄圧式燃料噴射装置6のコモンレール7に供給されてインジェクタ8からエンジンの気筒に噴射される。コモンレール7及びインジェクタ8の余剰の燃料は戻り流路9によって前記燃料タンク1に戻される。又、前記高圧ポンプ5に設けた調圧弁10からの余剰燃料も返送流路11により前記戻り流路9の燃料と合流して合流管13により燃料タンク1に戻される。
【0008】
この時、前記合流管13には燃料冷却装置14を設置しているので、燃料タンク1に戻される燃料の温度は燃料冷却装置14によって所定の温度に冷却することができる。
【0009】
従来において、噴射弁の後方の戻し管路に冷却装置を設けると共に、高圧制御弁の後方の戻し管路に冷却装置を設けた構成について技術開示した先行技術情報としては特許文献1がある。
【特許文献1】特表2001−516843号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、前記図2に示した従来の燃料噴射系統の燃料供給装置においては、前記コモンレール7及びインジェクタ8からの戻りの燃料と高圧ポンプ5に設けた調圧弁10からの余剰の燃料とを燃料タンク1に戻す合流管13に燃料冷却装置14を設置して、昇温した燃料を冷却するようにしているため、燃料噴射系統のいずれかの場所には燃料冷却装置14の出口温度よりも温度が高い部分が存在することになるが、燃料噴射系統での燃料の温度を評価することが難しいという問題を有していた。
【0011】
又、コモンレール7及びインジェクタ8からの戻りの燃料と高圧ポンプ5に設けた調圧弁10からの余剰の燃料とは合流管13で合流することで全体の温度が平坦化して低下することになるため、燃料冷却装置14による冷却効果は低くなり、よって燃料冷却装置14が大型化するという問題がある。更に、この時、前記コモンレール7及びインジェクタ8を備えるエンジンと、燃料タンク1との間には大きな距離を有する場合が多い(例えばバスの場合には10メートルにも及ぶ場合がある。)ため、合流管13によって燃料タンク1へ導かれる燃料は放熱により更に温度が低下するようになる。
【0012】
このため、燃料冷却装置14をインジェクタ8出口に設けることも考えられるが、この場合には部品が密集するシリンダヘッド内への設置となるために、配置が困難となりレイアウト性が悪いという問題を有していた。
【0013】
又、戻りの燃料の温度を燃料冷却装置14によって低下しても、前記したように燃料噴射系統には部分的に温度が高い部分が生じる問題があるため、エンジンの燃料にバイオ燃料を用いたような場合においては、例えばインジェクタの温度が所定温度よりも上昇し、これによってバイオ燃料の変質が発生するという問題を有していた。
【0014】
本発明は、上記実情に鑑みてなしたもので、蓄圧式燃料噴射装置に供給する燃料を効果的に冷却して燃料の温度を一定温度以下に確実に押えることができ、且つ冷却のための駆動動力も低減できるようにした燃料噴射系統の燃料供給装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、フィードポンプと高圧ポンプを備えた燃料供給装置によりコモンレールとインジェクタを有する蓄圧式燃料噴射装置に燃料を供給するようにしている燃料噴射系統の燃料供給装置であって、前記フィードポンプとコモンレールとの間に複数の高圧ポンプを備え、各高圧ポンプの前後に位置するように配置した燃料冷却装置を介して各高圧ポンプを直列に接続したことを特徴とする。
【0016】
而して、上記手段によれば、フィードポンプとコモンレールとの間に備えた複数の高圧ポンプが、各高圧ポンプの前後に位置するように配置した燃料冷却装置を介して直列に接続されているので、各高圧ポンプの入側の燃料冷却装置で冷却されて容積が減少した燃料が各高圧ポンプへ供給されて加圧されるようになる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、フィードポンプとコモンレールとの間に、複数の高圧ポンプの前後に位置するように燃料冷却装置を配置して各高圧ポンプを直列に接続したので、各高圧ポンプの入側の燃料冷却装置で冷却されて容積が減少した燃料が各高圧ポンプへ供給されて加圧されるため、各高圧ポンプにおいて効果的な加圧が行われるようになり、よって高い圧力に保持しても、各高圧ポンプを小型化できると共に、燃料の温度を一定温度以下に確実に冷却して蓄圧式燃料噴射装置に供給することができ、しかも各高圧ポンプの駆動動力を低減できるという優れた効果を奏し得る。
【0018】
更に、蓄圧式燃料噴射装置に供給する燃料の温度を確実に低減できるため、バイオ燃料を用いる場合においても、バイオ燃料が変質する問題を防止できる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照して説明する。
【0020】
図1は本発明を実施する形態の一例を示すもので、図1中、図2と同一のものには同一の符号を付して説明を省略し、本発明の特徴部分についてのみ以下で詳述する。
【0021】
図1に示す如く、燃料タンク1の燃料が燃料供給流路2によりフィードポンプ4と高圧ポンプ5を備えた燃料供給装置3に供給され、続いて、コモンレール7及びインジェクタ8を有する蓄圧式燃料噴射装置6に供給されるようにした燃料噴射系統において、フィードポンプ4とコモンレール7との間に、複数の高圧ポンプ5a,5b,5cを設け、且つ各高圧ポンプ5a,5b,5cの前後に位置するように燃料冷却装置15(図1では15a,15b,15c,15d)を配置し、1〜3段の燃料冷却装置15a,15b,15cからの燃料は高圧ポンプ5a,5b,5cの調圧弁5a’,5b’,5c’に供給するようにして各燃料冷却装置15a,15b,15c,15dと各高圧ポンプ5a,5b,5cとを直列に接続し、最終段の高圧ポンプ5cで加圧した燃料は最終段の燃料冷却装置15dで冷却した後前記コモンレール7に供給するようにしている。尚、図1では3つの高圧ポンプ5a,5b,5cを備え、且つ各高圧ポンプ5a,5b,5cの前後に位置するように4つの燃料冷却装置15a,15b,15c,15dを配置した例を示したが、2つの高圧ポンプ5a,5bと3つの燃料冷却装置15a,15b,15cを直列に接続配置するようにしてもよく、又、図1の3つの高圧ポンプ5a,5b,5cと4つの燃料冷却装置15a,15b,15c,15dよりも多い数の高圧ポンプと燃料冷却装置を組み合わせて直列に接続配置してもよい。
【0022】
更に、最終段の高圧ポンプ5cの調圧弁5c’からの余剰燃料は返送流路11により前記コモンレール7及びインジェクタ8からの余剰の燃料と合流管13で合流し、前記燃料タンク1に戻すようにしている。
【0023】
而して、上記図1の燃料噴射系統の燃料供給装置によれば、複数の高圧ポンプ5a,5b,5cの前後に位置するように燃料冷却装置15a,15b,15c,15dを配置して各高圧ポンプ5a,5b,5cを直列に接続したので、各高圧ポンプ5a,5b,5cの入側の燃料冷却装置15a,15b,15cで冷却して容積を減少させた燃料が各高圧ポンプ5a,5b,5cへ供給されて加圧されるため、各高圧ポンプ5a,5b,5cでは効果的な加圧が行われるようになるため、高い圧力に維持保持しても、各高圧ポンプ5a,5b,5cを小型化することができると共に、燃料の温度を一定温度以下に確実に冷却して蓄圧式燃料噴射装置6に供給することができ、しかも各高圧ポンプ5a,5b,5cよる駆動動力を低減することができる。
【0024】
更に、蓄圧式燃料噴射装置6に供給する燃料の温度を確実に低減できるため、バイオ燃料を用いる場合においても、バイオ燃料が変質する問題を防止することができる。
【0025】
なお、図1の燃料冷却装置15には、空冷式、水冷式等の種々の冷却方式のものが採用できること、その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明を実施する形態の一例を示す概略側面図である。
【図2】従来における蓄圧式燃料噴射装置と燃料供給装置とからなる燃料噴射系統の一例を示す概略側面図である。
【符号の説明】
【0027】
3 燃料供給装置
4 フィードポンプ
5 高圧ポンプ
5a,5b,5c 高圧ポンプ
6 蓄圧式燃料噴射装置
7 コモンレール
8 インジェクタ
15 (15a,15b,15c,15d) 燃料冷却装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィードポンプと高圧ポンプを備えた燃料供給装置によりコモンレールとインジェクタを有する蓄圧式燃料噴射装置に燃料を供給するようにしている燃料噴射系統の燃料供給装置であって、前記フィードポンプとコモンレールとの間に複数の高圧ポンプを備え、各高圧ポンプの前後に位置するように配置した燃料冷却装置を介して各高圧ポンプを直列に接続したことを特徴とする燃料噴射系統の燃料供給装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−90765(P2010−90765A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−260482(P2008−260482)
【出願日】平成20年10月7日(2008.10.7)
【出願人】(000005463)日野自動車株式会社 (1,484)
【Fターム(参考)】