説明

燃料噴射装置

【課題】燃料噴射弁とは別に潤滑油供給機構を設けることなく、第2ハウジングと第2ニードルとの間の摺動クリアランスに液体燃料を多く供給することで、液体燃料によるニードル摺動部の潤滑効果を向上させることのできる燃料噴射装置を提供する。
【解決手段】インジェクタ2の第2ニードル7の中心孔56に連通する複数の第2連通孔62の出口を、各第2ガイド52の摺動面で開口させることで、第2ノズルボディ6と第2ニードル7との摺動クリアランスに大量の液体燃料が導入される。一方、中心孔56から上流側流路65を通って摺動クリアランス内に導かれた圧縮エアが、中心孔56から連通孔62、63の出口側へ押し出された液体燃料を摺動クリアランス内に吸い出す効果が発生する。これにより、液体燃料によるニードル摺動部の潤滑効果が向上し、第2ノズルボディ6の内面に対する第2ニードル7の摺動抵抗を低減できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外部から供給された液体燃料を噴射する第1燃料噴射弁と、この第1燃料噴射弁から噴射された液体燃料と外部から供給されたエアとを混合した混合燃料を噴射する第2燃料噴射弁とを備えた燃料噴射装置(インジェクタ)に関するものである。
【背景技術】
【0002】
[従来の技術]
内燃機関(エンジン)に燃料を噴射供給する燃料噴射装置では、燃費向上およびエミッション低減を目的として、液体燃料を微粒化してインジェクタの噴射孔よりエンジンに噴射する技術が望まれる。
液体燃料の微粒化を達成するインジェクタとして、特許文献1に開示されたエアブラストインジェクタが知られている。このエアブラストインジェクタは、図7に示したように、燃料ポンプで加圧された液体燃料を噴射する第1燃料噴射弁101と、この第1燃料噴射弁101に直列配置されて、第1燃料噴射弁101の第1噴射孔から噴射された液体燃料と外部から供給された圧縮エアとの混合燃料をエンジンの燃焼室に噴射する第2燃料噴射弁102とを備え、エンジンのシリンダヘッドに固定されるカバー108に保持されている。
【0003】
第1燃料噴射弁101は、第1噴射孔を開閉する第1ニードルと、この第1ニードルを摺動自在に収容する第1ハウジングとを備えている。
第2燃料噴射弁102は、第2噴射孔103を開閉する傘状の弁部(バルブ104)を有する第2ニードル105と、この第2ニードル105を摺動自在に収容するノズルボディ106を含んで構成される第2ハウジング107とを備えている。
カバー108の内部には、第1燃料噴射弁101の燃料噴射部および第2燃料噴射弁102の導入部の周囲を取り囲むように形成される空間(蓄圧室)110が形成されている。カバー108には、エアポンプで加圧(圧縮)された圧縮エアを空間110の内部に導入するためのエア導入管111が接続されている。これにより、第1燃料噴射弁101の第1噴射孔から噴射された液体燃料と、エア導入管111から導入された圧縮エアとが、第2燃料噴射弁102の導入部に供給される。
【0004】
ここで、第2燃料噴射弁102の第2ニードル105の内側に形成される中心孔112は、第1燃料噴射弁側の端面で開口し、この開口側から奥側(底面側)まで軸線方向に真っ直ぐに延びる内側流路となっており、内部に液体燃料が供給される。この中心孔112の下流端は、連通孔113を介して燃料溜まり114に連通している。
また、第2燃料噴射弁102の第2ニードル105の外側に形成されるエア流路115は、第2ハウジング107の内面との間に形成される外側流路となっており、内部に圧縮エアが供給される。このエア流路115の下流端は、燃料溜まり114に連通している。 また、第1燃料噴射弁101の第1噴射孔から噴射された液体燃料が第2燃料噴射弁102の導入部に向かうように、第1燃料噴射弁101の燃料噴射部と第2燃料噴射弁102の導入部とが対向配置されている。
そして、第2燃料噴射弁102は、コイル116の磁力により可動コア117を移動させ、この可動コア117を介して第2ニードル105をその軸線方向に移動させてバルブ104を開弁するように構成されている。
また、ノズルボディ106の内部には、第2ニードル105の外面から径方向外側に突出した複数の鍔状ガイド121、122を摺動クリアランスを介して摺動自在に支持するガイド孔(摺動孔)123が形成されている。
【0005】
ここで、第1燃料噴射弁101の第1噴射孔から第2燃料噴射弁102の導入部に供給された液体燃料は、主に中心孔112を通って、中心孔112の下流端面から連通孔113を通って燃料溜まり114へ導かれる。
一方、第2燃料噴射弁102の導入部に供給された圧縮エアは、中心孔112、連通孔113を通って燃料溜まり114へ導かれるエアと、第2ニードル105の外側に形成されるエア流路115を通って燃料溜まり114へ導かれるエアとに分流する。
ここで、バルブ104が開弁して第2噴射孔103が開かれると、中心孔112に供給された圧縮エアが、中心孔112の内部に貯留されていた液体燃料を連通孔113を介して燃料溜まり114へ向けて押し出す作用が発生する。
一方、エア流路115に供給された圧縮エアが、中心孔112から連通孔113を介して燃料溜まり114へ押し出された液体燃料を、第2噴射孔103に向けて押し出す作用が発生する。
【0006】
[従来の技術の不具合]
ところで、従来のエアブラストインジェクタにおいては、図7に示したように、空間110から第2ニードル105の内部に形成される中心孔112に液体燃料を導入する際、周囲に飛散した液体燃料が、第2ニードル105の外面と第2ハウジング107の内面との間に形成されるエア流路115を通り、複数の鍔状ガイド121、122の周りに付着する可能性がある。
しかるに、第2ニードル105に設けられる複数の鍔状ガイド121、122の摺動面とノズルボディ106のガイド孔123の内面との間に形成される隙間(摺動クリアランス)が15μmと非常に狭く、エア流路115に流入した液体燃料が摺動クリアランスに侵入する確率が低い。これにより、複数の鍔状ガイド121、122の摺動面とガイド孔123の内面との摺動部(ニードル摺動部)に対する液体燃料の付着量が非常に少なくなるので、ニードル摺動部に浸入する液体燃料による潤滑効果が非常に低いものと考えられる。
したがって、ノズルボディ106に対する第2ニードル105の摺動抵抗が増加するので、第2ニードル105の複数の鍔状ガイド121、122の摺動面およびノズルボディ106のガイド孔123の内面が摩耗する。これにより、第2ニードル105とノズルボディ106との摺動に対する信頼性が低下するという問題が生じる。
【0007】
そこで、特許文献2には、ノズルボディのガイド孔の内面とニードルのガイドの摺動面との間の潤滑性の向上を目的として、エンジンのオイルギャラリー内の潤滑オイルを、ノズルボディのガイド孔とニードルのガイドとの摺動クリアランスのほぼ中央に設けられたオイル溜り溝に供給し、このオイル溜り溝に複数の縦溝を連通しているため、オイル溜り溝に供給された潤滑オイルを摺動クリアランス全体に拡散供給するようにした燃料噴射ノズルが開示されている。
ところが、特許文献2に開示された燃料噴射ノズルにおいては、この燃料噴射ノズルとは別に潤滑油供給機構が必要となるので、部品点数や組付工数の増加に伴って製品コストが上昇するという問題が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平10−325383号公報
【特許文献2】実開昭62−093165号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、第1、第2燃料噴射弁とは別に潤滑油供給機構を設けることなく、第2ハウジングと第2ニードルとの間の摺動クリアランス(ニードル摺動部)に液体燃料を多く供給することで、液体燃料によるニードル摺動部の潤滑効果を向上させることのできる燃料噴射装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に記載の発明(燃料噴射装置)は、外部から供給された液体燃料を噴射する第1噴射孔を有する第1燃料噴射弁と、この第1燃料噴射弁から噴射された液体燃料に外部から供給されたエアを混合した混合燃料を噴射する第2噴射孔を有する第2燃料噴射弁とを備えている。
第1燃料噴射弁の第1ニードルは、筒状の第1ハウジングの内部に往復移動可能に収容されている。
第2燃料噴射弁の第2ニードルは、筒状の第2ハウジングの内部に往復移動可能に収容されている。そして、第2ニードルは、前記第2ニードルの外面より径方向外側に突出した鍔状のガイドを有している。
【0011】
第2ハウジングには、摺動クリアランスを介して、第2ニードルのガイドの摺動面を往復摺動可能に案内するガイド孔が設けられている。
第2ニードルの内部には、第1燃料噴射弁から噴射された液体燃料と、外部から供給されたエアが導入される中心孔(第2ニードル内部流路)が設けられている。また、第2ニードルには、中心孔に連通する連通路が設けられている。
少なくとも第2ハウジングのガイド孔の内面と第2ニードルの外面との間には、第2噴射孔の開弁時に中心孔から供給されたエアが少なくとも摺動クリアランスを経て第2噴射孔へ向けて流通するエア流路(第2ニードル外側流路)が設けられている。
エア流路は、少なくとも上流側流路および下流側流路等により構成されている。上流側流路は、摺動クリアランスよりも上流側に形成されて、中心孔から供給されたエアを少なくとも摺動クリアランスへ導くエア流路である。また、下流側流路は、摺動クリアランスよりも下流側に形成されて、少なくとも摺動クリアランスから供給されたエアを第2噴射孔へ導くエア流路である。
【0012】
そして、第2ニードルに形成されて、中心孔に連通する連通路は、中心孔から供給されたエアを上流側流路へ導く第1連通孔、および中心孔から供給された液体燃料を摺動クリアランスへ導く第2連通孔を有している。そして、第2連通孔の入口は、中心孔の内面で開口し、また、第2連通孔の出口は、ガイドの摺動面で開口している。
ここで、第2燃料噴射弁の第2噴射孔が開かれると、外部から中心孔に供給された圧縮エアが、第1燃料噴射弁の第1噴射孔から噴射された中心孔内の液体燃料を第2連通孔、摺動クリアランス、下流側流路を通って第2噴射孔へ向けて押し出す効果が発生する。
一方、中心孔から第1連通孔、上流側流路を通って摺動クリアランス内に導かれた圧縮エアが、中心孔から第2連通孔を介して第2連通孔の出口側へ押し出された液体燃料を摺動クリアランス内に吸い出す効果が発生する。
この結果、エア流路を流れるエアと第2連通孔の出口より噴出する液体燃料との混合性を向上できるので、第2燃料噴射弁の第2噴射孔から噴射される燃料噴霧の微粒化を促進することができる。
【0013】
請求項1に記載の発明によれば、第2ハウジングのガイド孔の内面と第2ニードルのガイドの摺動面との間に形成される摺動クリアランス(ニードル摺動部)に大量の液体燃料を導入できるので、液体燃料によるニードル摺動部の潤滑効果を高めることができる。
これによって、第1、第2燃料噴射弁とは別に潤滑油供給機構を設けることなく、ニードル摺動部を効率良く潤滑することができる。
その結果、第2ハウジングに対する第2ニードルの摺動抵抗を低減できるので、第2ハウジングのガイド孔の内面と第2ニードルのガイドの摺動面との摩耗を低減することができる。したがって、第2ニードルの摺動に対する信頼性を向上することができる。
【0014】
請求項2に記載の発明によれば、中心孔とは、第1燃料噴射弁側の端面で開口し、この開口側から底面側まで軸線方向に延びる凹状の軸方向孔のことである。
この場合、第1燃料噴射弁の第1噴射孔から噴射された液体燃料は、第2ニードルの中心孔(凹状の軸方向孔)の開口側から導入されて、軸方向孔の奥側に貯留される。
請求項3に記載の発明によれば、中心孔の奥側(開口側に対して反対側)に、液体燃料を溜める貯留部を設けている。
この場合、第1燃料噴射弁の第1噴射孔から噴射された液体燃料は、第2ニードルの中心孔(凹状の軸方向孔)の奥側の貯留部に貯留される。
請求項4に記載の発明によれば、第2連通孔が、中心孔の貯留部と摺動クリアランスとを連通している。そして、第2連通孔の出口を、中心孔の貯留部の液体燃料を摺動クリアランスへ導く噴出ポートとして使用しても良い。
【0015】
ここで、第2燃料噴射弁の第2噴射孔が開かれると、中心孔(凹状の軸方向孔)の開口側から中心孔の内部に供給された圧縮エアが、軸方向孔の奥側の貯留部に貯留されていた液体燃料を第2連通孔を介して第2噴射孔側へ向けて押し出す効果が発生する。
一方、中心孔から第1連通孔、上流側流路を通って摺動クリアランス内に導かれた圧縮エアが、中心孔から第2連通孔を介して第2連通孔の出口側へ押し出された液体燃料を摺動クリアランス内に吸い出す効果が発生する。これにより、第2ハウジングのガイド孔の内面と第2ニードルのガイドの摺動面との間に形成される摺動クリアランス(ニードル摺動部)に液体燃料を多く供給することができるので、液体燃料によるニードル摺動部の潤滑効果が高まる。
この結果、エア流路を流れるエアと第2連通孔の出口より噴出する液体燃料との混合性を向上できるので、第2燃料噴射弁の第2噴射孔から噴射される燃料噴霧の微粒化を促進することができる。
【0016】
請求項5に記載の発明によれば、第2ニードルの鍔状のガイドが、第2ニードルの周方向に所定の間隔で形成された複数のガイドにより構成されている。そして、複数のガイドには、摺動クリアランスを介して、第2ハウジングのガイド孔の内面を往復摺動する摺動面がそれぞれ形成される。
請求項6に記載の発明によれば、複数のガイドのうちの隣設する2つのガイド間に、複数のガイドの各摺動面より第2ニードルの中心線側に凹んだ面取り部を設けている。そして、エア流路は、複数のガイドのうちの隣設する2つのガイド間に区画形成されて、上流側流路と下流側流路とを連通する中継流路(連通部)を有している。この場合、第2燃料噴射弁の第2噴射孔が開かれた際に、上流側流路から下流側流路へ向かうエアの流路抵抗(流通抵抗)を低減することができる。
請求項7に記載の発明によれば、第2ニードルに形成されて、中心孔に連通する連通路は、中心孔から供給されたエアを上流側流路へ導く第1連通孔、中心孔から供給された液体燃料を摺動クリアランスへ導く第2連通孔、および中心孔から供給された液体燃料を中継流路へ導く第3連通孔を有している。そして、第1連通孔の入口は、中心孔の内面で開口し、また、第1連通孔の出口は、第2ニードルの外面(摺動面以外の外面)で開口している。また、第2連通孔の入口は、中心孔の内面で開口し、また、第2連通孔の出口は、複数のガイドの各摺動面で開口している。また、第3連通孔の入口は、中心孔の内面で開口し、第3連通孔の出口は、面取り部の面取り面で開口している。
【0017】
請求項8に記載の発明によれば、複数のガイドのうちの隣設する2つのガイド間に、複数のガイドの各摺動面より第2ニードルの中心線側に凹んだ凹溝を設けている。そして、エア流路は、複数のガイドのうちの隣設する2つのガイド間に区画形成されて、上流側流路と下流側流路とを連通する中継流路(連通部)を有している。この場合、第2燃料噴射弁の第2噴射孔が開かれた際に、上流側流路から下流側流路へ向かうエアの流路抵抗(流通抵抗)を低減することができる。
請求項9に記載の発明によれば、第2ニードルに形成されて、中心孔に連通する連通路は、中心孔から供給されたエアを上流側流路へ導く第1連通孔、中心孔から供給された液体燃料を摺動クリアランスへ導く第2連通孔、および中心孔から供給された液体燃料を中継流路へ導く第3連通孔を有している。そして、第1連通孔の入口は、中心孔の内面で開口し、また、第1連通孔の出口は、第2ニードルの外面(摺動面以外の外面)で開口している。また、第2連通孔の入口は、中心孔の内面で開口し、また、第2連通孔の出口は、複数のガイドの各摺動面で開口している。また、第3連通孔の入口は、中心孔の内面で開口し、第3連通孔の出口は、凹溝の溝壁面で開口している。
【0018】
請求項10に記載の発明によれば、エア流路は、第2ニードルの外面より径方向外側に突出したガイドを第2ニードルの軸線方向と平行な方向に貫通すると共に、上流側流路と下流側流路とを連通する流路孔(連通部)を設けている。この場合、第2燃料噴射弁の第2噴射孔が開かれた際に、上流側流路から下流側流路へ向かうエアの流路抵抗(流通抵抗)を低減することができる。
請求項11に記載の発明によれば、第2ニードルに形成されて、中心孔に連通する連通路は、中心孔から供給されたエアを上流側流路へ導く第1連通孔、中心孔から供給された液体燃料を摺動クリアランスへ導く第2連通孔、および中心孔から供給された液体燃料を流路孔へ導く第3連通孔を有している。そして、第1連通孔の入口は、中心孔の内面で開口し、また、第1連通孔の出口は、第2ニードルの外面(摺動面以外の外面)で開口している。また、第2連通孔の入口は、中心孔の内面で開口し、また、第2連通孔の出口は、1つまたは複数のガイドの摺動面で開口している。また、第3連通孔の入口は、中心孔の内面で開口し、第3連通孔の出口は、流路孔の孔壁面で開口している。
【0019】
請求項12に記載の発明によれば、エア流路は、複数のガイドのうちの隣設する2つのガイド間に区画形成されて、上流側流路と下流側流路とを連通する中継流路(連通部)を有している。この場合、第2燃料噴射弁の第2噴射孔が開かれた際に、上流側流路から下流側流路へ向かうエアの流路抵抗(流通抵抗)を低減することができる。
請求項13に記載の発明によれば、第2ニードルに形成されて、中心孔に連通する連通路は、中心孔から供給されたエアを上流側流路へ導く第1連通孔、中心孔から供給された液体燃料を摺動クリアランスへ導く第2連通孔、および中心孔から供給された液体燃料を中継流路へ導く第3連通孔を有している。そして、第1連通孔の入口は、中心孔の内面で開口し、また、第1連通孔の出口は、第2ニードルの外面(摺動面以外の外面)で開口している。また、第2連通孔の入口は、中心孔の内面で開口し、また、第2連通孔の出口は、複数のガイドの各摺動面で開口している。また、第3連通孔の入口は、中心孔の内面で開口し、第3連通孔の出口は、中継流路の流路壁面で開口している。
【0020】
請求項7、9、11及び13に記載の発明によれば、第2燃料噴射弁の第2噴射孔が開かれると、外部から中心孔の内部に供給された圧縮エアが、第1燃料噴射弁の第1噴射孔から噴射された中心孔内の液体燃料を第2、第3連通孔を介して第2、第3噴射孔側へ向けて押し出す効果が発生する。
一方、中心孔から第1連通孔、上流側流路を通って摺動クリアランス内に導かれた圧縮エアが、中心孔から第2連通孔を介して摺動クリアランスへ押し出された液体燃料を吸い出す効果が発生する。これにより、第2ハウジングのガイド孔の内面と第2ニードルのガイドの摺動面との間に形成される摺動クリアランス(ニードル摺動部)に液体燃料を多く供給することができるので、液体燃料によるニードル摺動部の潤滑効果が高まる。
また、中心孔から第1連通孔、上流側流路を通って連通部(中継流路または流路孔)内に導かれた圧縮エアが、中心孔から第3連通孔を介して第3連通孔の出口側へ押し出された液体燃料を連通部(中継流路または流路孔)内に吸い出す効果が発生する。
この結果、エア流路を流れるエアと第2、第3連通孔の出口より噴出する液体燃料との混合性を向上できるので、第2燃料噴射弁の第2噴射孔から噴射される燃料噴霧の微粒化を促進することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】(a)はインジェクタ(第2燃料噴射弁)の主要部を示した断面図で、(b)は(a)のA−A断面図である(実施例1)。
【図2】エアブラストインジェクタ(燃料噴射装置)を示した断面図である(実施例1)。
【図3】第1燃料噴射弁における燃料の流れを示した説明図である(実施例1)。
【図4】(a)はインジェクタ(第2燃料噴射弁)におけるエアの流れを示した説明図で、(b)はインジェクタ(第1、第2燃料噴射弁)の各駆動信号を示したタイミングチャートである(実施例1)。
【図5】(a)はインジェクタ(第2燃料噴射弁)の主要部を示した断面図で、(b)は(a)のB−B断面図である(実施例2)。
【図6】(a)はインジェクタ(第2燃料噴射弁)の主要部を示した断面図で、(b)は(a)のC−C断面図である(実施例3)。
【図7】エアブラストインジェクタ(燃料噴射装置)の主要部を示した断面図である(従来の技術)。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態を、図面に基づいて詳細に説明する。
本発明は、別途潤滑油供給機構を設けることなく、液体燃料によるニードル摺動部の潤滑効果を向上させるという目的を、第2ニードルの中心孔に連通する第2連通孔の出口を、第2ニードルのガイドの摺動面で開口させて、第2ハウジングのガイド孔の内面と第2ニードルのガイドの摺動面との間に形成される摺動クリアランス(ニードル摺動部)に大量の液体燃料を導入することで実現した。
なお、以下の説明では、エアブラストインジェクタ(燃料噴射装置)の第2噴射孔が設けられる側を下と称して説明するが、内燃機関(エンジン)のシリンダヘッド等へのエアブラストインジェクタの実際の搭載方向を限定するものではない。
【実施例1】
【0023】
[実施例1の構成]
図1ないし図4は本発明の実施例1を示したもので、図1はインジェクタ(第2燃料噴射弁)の主要部を示した図で、図2はエアブラストインジェクタ(燃料噴射装置)を示した図である。
【0024】
本実施例の燃料噴射装置は、例えば自動車等の車両の走行用エンジンとして使用される内燃機関(エンジン)の気筒内に圧縮エアと液体燃料との混合燃料を噴射供給するエアブラストインジェクタとして使用されるものであって、重力方向の上方(図示上方)に配置される第1燃料噴射弁(以下インジェクタと言う)1と、このインジェクタよりも重力方向の下方(図示下方)に配置される第2燃料噴射弁(以下インジェクタと言う)2とを備えている。
このエアブラストインジェクタは、エンジンのシリンダヘッドに取り付けられて、圧縮エアと液体燃料との混合燃料を、直接気筒内に霧状に噴射する直接噴射タイプのインジェクタである。
【0025】
エンジンには、インジェクタ1の導入部に液体燃料を供給する燃料供給装置、およびインジェクタ2の導入部に圧縮エアを供給するエア供給装置が搭載されている。
燃料供給装置は、燃料タンクから吸入した液体燃料を加圧して吐出する燃料ポンプを備えている。この燃料ポンプは、モータを含む電動アクチュエータの駆動力により回転駆動される。あるいはエンジンのクランクシャフトの回転により回転駆動される。そして、燃料ポンプで加圧された液体燃料は、燃料供給配管を経てインジェクタ1の導入部へ供給される。また、燃料ポンプは、インジェクタ1に向けて吐出される液体燃料の圧力を、所定の燃料圧力に調圧するプレッシャレギュレータを備えている。
【0026】
エア供給装置は、外部から吸入した空気(外気)を加圧して吐出するエアポンプ(またはコンプレッサ)等の圧縮エア供給源を備えている。このエアポンプは、エンジンのクランクシャフトの回転により回転駆動される。あるいはモータを含む電動アクチュエータの駆動力により回転駆動される。また、そして、エアポンプで加圧して圧縮された圧縮エアは、エア導入管を経てインジェクタ2の導入部へ供給される。また、エアポンプは、インジェクタ2に向けて吐出される圧縮エアの圧力を、所定の空気圧力に調圧するプレッシャレギュレータを備えている。
【0027】
インジェクタ1は、内部に中空部(第1ノズル孔)が形成された中空円筒状の第1ノズルボディ3を有する第1ハウジングと、この第1ハウジングの内部(第1ノズルボディ3の第1ノズル孔)に往復移動可能に収容された第1ニードル4と、この第1ニードル4を開弁方向に駆動する第1アクチュエータと、第1ニードル4を閉弁方向に付勢する第1スプリング5とを備えている。
インジェクタ2は、内部に中空部(第2ノズル孔)が形成された中空円筒状の第2ノズルボディ6を有する第2ハウジングと、この第2ハウジングの内部(第2ノズルボディ6の第2ノズル孔)に往復移動可能に収容された有底円筒状の第2ニードル7と、この第2ニードル7を開弁方向に駆動する第2アクチュエータと、第2ニードル7を閉弁方向に付勢する第2スプリング8とを備えている。
【0028】
ここで、第1ハウジングは、第1ノズルボディ3の他に、第1ノズルボディ3の上部に接続される第1ロアボディ11、およびこの第1ロアボディ11の上部に接続される第1アッパーボディ12を備えている。
また、第2ハウジングは、第2ノズルボディ6の他に、第2ノズルボディ6の上部に接続される第2ロアボディ13、この第2ロアボディ13の上部に接続される第2アッパーボディ14、および第2ノズルボディ6の上部と第2ロアボディ13の下部とを締結固定するリテーニングナット15を備えている。
【0029】
インジェクタ1は、外部から供給された液体燃料をインジェクタ2の導入部へ噴射する第1燃料噴射弁(液体燃料噴射弁)である。
インジェクタ1の第1ロアボディ11および第1アッパーボディ12は、エンジンのシリンダヘッドに形成されるインジェクタ取付孔等に挿入固定されている。
第1アッパーボディ12の図示上端側で開口する開口部は、インジェクタ1内部に液体燃料を導入するための導入部(燃料導入口16)として機能する。インジェクタ1の燃料導入口16には、燃料ポンプで加圧された液体燃料が燃料供給管を介して供給される。そして、燃料導入口16に供給された液体燃料は、燃料フィルタ17を経てインジェクタ1内部の燃料流路孔18に流入する。この燃料流路孔18に流入した液体燃料は、後述する第1可動コアに形成される燃料流路孔19を通ってインジェクタ1内部の燃料流路孔20に流入する。
【0030】
第1ノズルボディ3の中心部には、第1ニードル4の軸線方向と平行な方向に真っ直ぐに延びる第1ガイド孔21が形成されている。この第1ガイド孔21は、摺動クリアランスを介して、第1ニードル4の第1ガイド22の摺動面をその軸線方向(第1ニードル4の往復移動方向)に摺動可能に案内する第1ノズル孔(摺動案内孔)である。ここで、摺動クリアランスとは、第1ガイド孔21の内面と第1ガイド22の摺動面との間に形成される微少な摺動隙間のことである。
【0031】
第1ノズルボディ3の第1ガイド孔21の下端には、第1ニードル4の第1シート部23が着座可能な円錐形状の第1弁座(第1バルブシート24)が設けられている。この第1バルブシート24の中心部には、第1噴射孔25が形成されている。
第1ガイド孔21は、第1ニードル4の外面との間に燃料流路26を形成する。この燃料流路26に流入した液体燃料は、隣設する2つの第1ガイド22間に区画形成される連通部27を通って燃料流路28に流入する。この燃料流路28に流入した液体燃料は、第1ニードル4が開弁した際に形成される燃料流路(流路クリアランス)を通って第1噴射孔25へ向かう。
【0032】
第1噴射孔25は、第1ノズルボディ3の先端部(燃料噴射部)からインジェクタ2内部へ向けて液体燃料を噴射するための噴孔流路である。この第1噴射孔25は、第1バルブシート24の中心部を軸線方向に貫通するように、つまりインジェクタ1内部と外部とを連通するように形成されている。
第1ノズルボディ3の下端には、インジェクタ2の導入部に差し込まれる細いチューブ(管)状の燃料ノズル29を有する円筒キャップが取り付けられている。燃料ノズル29の内部には、インジェクタ1の第1噴射孔25とインジェクタ2の導入部とを連通する中心孔30が形成されている。
【0033】
第1ニードル4は、その軸線方向の上方側から下方側へ真っ直ぐに延びる中実円柱状のシャフトである。この第1ニードル4の下方側には、第1ニードル4の外面より径方向(放射方向)外側に向けて突出した鍔状の第1ガイド22が複数形成されている。これらの第1ガイド22は、第1ノズルボディ3の第1ガイド孔21の内面に往復摺動自在に支持されている。また、複数の第1ガイド22は、第1ガイド孔21の内面と摺動する各摺動面が、第1ガイド孔21の内面(凹曲面)の曲率半径よりも僅かに小さい曲率半径の凸曲面形状に形成されている。
また、隣設する2つの第1ガイド22間には、複数の第1ガイド22よりも上流側の燃料流路26の液体燃料を、複数の第1ガイド22よりも下流側の燃料流路28へ流すための連通部(面取り部、凹溝)27が設けられている。
【0034】
そして、第1ニードル4の下端には、第1ガイド孔21の下端に設けられた第1バルブシート24に対して着座可能な第1シート部(当接部)23が設けられている。
本実施例の第1ニードル4の場合、第1ニードル4が閉弁方向(図示下方)へ移動して第1シート部23が第1バルブシート24に着座すると、第1ニードル4の外面と第1ガイド孔21の内面との間の燃料流路28と第1噴射孔25との連通状態が遮断される。また、第1ニードル4が開弁方向(図示上方)に移動して第1シート部23が第1バルブシート24から離脱すると、燃料流路28と第1噴射孔25とが連通する。これにより、第1噴射孔25から燃料ノズル29の中心孔30を通ってインジェクタ2内部への液体燃料の噴射が実施される。
【0035】
第1アクチュエータは、通電されると磁気吸引力を発生する第1コイル31を備え、磁力によって第1ニードル4を開弁方向(または閉弁方向)に駆動する電磁アクチュエータ(第1ニードル駆動部)を構成している。この第1アクチュエータは、電力の供給を受けると周囲に磁束を発生する第1コイル31、この第1コイル31の内周に配置されて第1ニードル4の上端に固定された第1可動コア(アーマチャ)32、およびこの第1可動コア32を上方へ磁気吸引するための磁路を形成する第1固定子等を有している。
【0036】
第1コイル31は、図示しない円筒ボビンの外周に複数回巻装されている。この第1コイル31には、電気絶縁性の第1モールド樹脂33によって被覆されて保護される一対のコイルリード線34が設けられている。また、これらのコイルリード線34には、外部接続端子(第1ターミナル)がそれぞれ接続される。本実施例では、一対の第1ターミナルと第1モールド樹脂33とによって、インジェクタ1の作動制御を行うECU(エンジン制御ユニット)と導電線を介して電気的な接続を行う第1コネクタが構成される。
【0037】
第1可動コア32は、第1ロアボディ11の第1摺動孔35の内面に往復摺動可能に支持されている。この第1可動コア32の中心部には、上下方向に貫通する貫通孔が形成さている。この貫通孔の内部には、第1ニードル4の上端が結合されている。これにより、第1ニードル4は、第1ロアボディ11の内部において軸線方向へ往復移動可能に収容される。
そして、第1可動コア32には、上端面と下端面とを連通するように上下方向に貫通する複数の燃料流路孔19が形成されている。複数の燃料流路孔19は、第1可動コア32よりも上側の燃料流路孔18に導入された液体燃料を、第1可動コア32よりも下側の燃料流路孔20へ導くように設けられている。なお、複数の燃料流路孔19は、第1ニードル4の軸線方向に対して傾斜して真っ直ぐに延びている。
【0038】
第1固定子は、第1コイル31の通電時に磁化されて第1可動コア32を吸引する第1磁気吸引部を有する円筒状の第1固定コア36、第1ロアボディ11と第1アッパーボディ12との間に挟み込まれて保持される円筒状の第1非磁性パイプ37、この第1非磁性パイプ37の下部において第1可動コア32と径方向の磁気の受け渡しを行う円筒状の第1磁性パイプ38、および第1コイル31の周囲を覆う円筒状の第1ヨーク39等により構成されている。
なお、第1可動コア32、第1磁性パイプ38、第1固定コア36および第1ヨーク39は、全て磁性材料(例えば鉄)によって形成されている。
【0039】
ここで、第1固定子は、第1ロアボディ11および第1アッパーボディ12の一部を利用したものであり、第1ロアボディ11の上部が第1磁性パイプ38として利用され、第1アッパーボディ12が第1固定コア36と第1ヨーク39の磁気結合を行う部材として利用されている。
第1固定コア36は、第1アッパーボディ12の内面に結合されている。この第1固定コア36の第1磁気吸引部は、第1可動コア32の上面との間にギャップを形成する。
第1非磁性パイプ37は、第1固定コア36と第1磁性パイプ38(第1ロアボディ11の一部)とが、第1可動コア32を介さずに直接的に磁気結合(磁路形成)するのを防止する。
【0040】
第1ヨーク39は、第1コイル31の外周を覆って、第1コイル31の周囲に磁路を形成する。この第1ヨーク39は、第1コイル31と共に第1モールド樹脂33により被覆されている。
本実施例の第1アクチュエータは、第1コイル31が通電されて第1コイル31の周囲に形成される磁束が、第1ヨーク39→第1アッパーボディ12および第1固定コア36→第1可動コア32→第1磁性パイプ38(第1ロアボディ11の一部)の経路で、再び第1ヨーク39に戻る。なお、磁束の流れ方向は逆であっても良い。
【0041】
第1スプリング5は、第1可動コア32の上端面と第1アッパーボディ12内部に固定された円筒状の第1ストッパ40との間で圧縮された状態で組み付けられて、第1可動コア32に対して、第1ニードル4を閉弁方向に付勢するスプリング荷重を発生する。すなわち、第1スプリング5は、第1ニードル4を下方へ押し付けて、第1ニードル4の第1シート部23を第1バルブシート24に押し付ける力(着座させる力:閉弁力)を発生する。本実施例では、コイルスプリングが使用されている。
ここで、第1ストッパ40は、第1アッパーボディ12の内周面に固定された第1固定コア36の内周面に圧入またはネジ込み等により固定されている。
【0042】
インジェクタ2は、インジェクタ1の下方に直列配置されている。このインジェクタ2の導入部には、インジェクタ1の第1噴射孔25から燃料ノズル29の中心孔30を通って液体燃料が供給される。また、インジェクタ2の導入部には、エアポンプで加圧された圧縮エアが、エア導入管を介して供給される。
そして、インジェクタ2は、エアポンプから供給された圧縮エアとインジェクタ1から噴射された液体燃料とを混合したエア混合燃料を、エンジンの気筒内に噴射させる第2燃料噴射弁(混合燃料噴射弁)である。
インジェクタ2の第2ロアボディ13および第2アッパーボディ14は、インジェクタ1と共に、エンジンのインジェクタ取付孔等に挿入固定されている。
第2ロアボディ13の下端には、第2スプリング8等を収容するスプリング収容孔41が形成されている。
第2アッパーボディ14は、第2ロアボディ13の上部に同一軸線上に配置されている。
【0043】
ここで、インジェクタ1の第1ロアボディ11を第2アッパーボディ14に固定する一例として、本実施例では、第1ロアボディ11の外周にフランジ部42を設け、第2アッパーボディ14の上面と、第2アッパーボディ14の上面に締結される取付プレート43との間でフランジ部42を挟み込むことで、インジェクタ1の第1ロアボディ11を第2アッパーボディ14に固定している。なお、インジェクタ1の固定手段は、適宜変更可能である。
また、第2アッパーボディ14の側面には、エアポンプで加圧された圧縮エアを内部に導くエア導入流路44が形成されている。このエア導入流路44は、エア導入管を介して、エアポンプの吐出口に接続している。そして、エア導入流路44から第2アッパーボディ14の内部空間45に流入した圧縮エアは、第2ニードル7の内部へ充填供給される。
【0044】
第2ノズルボディ6は、先端部がエンジンの気筒内に露出するように、エンジンのインジェクタ取付孔等に挿入配置されている。
第2ノズルボディ6の中心部には、第2ニードル7の軸線方向と平行な方向に真っ直ぐに延びる第2ガイド孔51が形成されている。この第2ガイド孔51は、摺動クリアランスを介して、第2ニードル7の第2ガイド52の摺動面をその軸線方向(第2ニードル7の往復移動方向)に摺動可能に案内する第2ノズル孔(摺動案内孔)である。ここで、摺動クリアランスとは、第2ガイド孔51の内面と第2ガイド52の摺動面との間に形成される微少な摺動隙間のことである。
【0045】
第2ノズルボディ6の第2ガイド孔51の下端には、第2ニードル7の第2シート部53が着座可能な円錐台形状の第2弁座(第2バルブシート54)が設けられている。この第2バルブシート54は、第2ニードル7の第2シート部53の外面との間に第2噴射孔55を形成する。
第2噴射孔55は、第2ノズルボディ6の先端部(燃料噴射部)からエンジンの気筒内へ向けて液体燃料と圧縮エアとの混合燃料を噴射するための噴孔流路である。この第2噴射孔55は、上述したように、第2ニードル7の開弁時に、第2ニードル7の第2シート部53の外面と第2バルブシート54の着座面との間に形成される。
【0046】
ここで、第2ニードル7の内部には、外部から液体燃料や圧縮エアが供給される中心孔56が区画形成されている。この中心孔56は、導入部57、流路部58および貯留部59等により構成されている。
また、第2ロアボディ13のスプリング収容孔41の内面と第2ニードル7の外面との間には、連通路(3つの第1〜第3連通孔61〜63のうちの第1連通孔61)を介して、中心孔56に連通する外周流路64が区画形成されている。また、第2ノズルボディ6の第2ガイド孔51の内面と第2ニードル7の外面との間には、外周流路64に連通する外周流路65〜67が区画形成されている。
そして、外周流路65に流入した圧縮エアは、外周流路66を通って外周流路67に流入する。また、外周流路65に流入した圧縮エアの一部は、第2ガイド孔51の内面と第2ガイド52の摺動面との間に形成される摺動クリアランス(第2ニードル摺動部)に流入する。
なお、第2ノズルボディ6の詳細は後述する。
【0047】
第2ニードル7は、その軸線方向の上方側から下方側へ真っ直ぐに延びる有底円筒状のシャフトである。この第2ニードル7の下方側には、図1に示したように、第2ニードル7の外面より径方向(放射方向)外側に向けて突出した鍔状の第2ガイド52が複数形成されている。これらの第2ガイド52は、第2ノズルボディ6の第2ガイド孔51の内面に往復摺動自在に支持されている。また、複数の第2ガイド52は、第2ガイド孔51の内面と摺動する各摺動面が、第2ガイド孔51の内面(凹曲面)の曲率半径よりも僅かに小さい曲率半径の凸曲面形状に形成されている。そして、複数の第2ガイド52の各摺動面は、第2ニードル7の軸線方向と平行な方向に所定の軸長さ分だけ延長されている。
また、複数の第2ガイド52は、第2ニードル7の周方向に所定の間隔(例えば等間隔)に設けられている。そして、隣設する2つの第2ガイド52間には、第2ニードル7の外面より径方向(放射方向)外側に向けて膨出するように突条部(面取り部)69が複数形成されている。複数の突条部69の外面には、外周面取りされた平面が形成されている。複数の突条部69の各平面は、第2ニードル7の軸線方向と平行な方向に所定の軸長さ分(第2ガイド52の摺動面よりも短い)だけ延長されている。
【0048】
また、隣設する2つの第2ガイド52間には、複数の第2ガイド52よりも上流側の外周流路65の圧縮エアを、複数の第2ガイド52よりも下流側の外周流路67へ流すための外周流路66が設けられている。この外周流路66は、摺動クリアランスよりも上流側のエア流路(外周流路64、65)と摺動クリアランスよりも下流側のエア流路(外周流路67)とを連通する連通部(中継流路)を構成している。
そして、第2ニードル7の下端には、第2ガイド孔51の下端に設けられた第2バルブシート54に対して着座可能な第2シート部(当接部、傘状の弁部、バルブ)53が設けられている。
本実施例の第2ニードル7の場合、第2ニードル7が閉弁方向(図示上方)へ移動して第2シート部53が第2バルブシート54に着座すると、第2ニードル7の外面と第2ガイド孔51の内面との間の外周流路67と第2噴射孔55との連通状態が遮断される。また、第2ニードル7が開弁方向(図示下方)に移動して第2シート部53が第2バルブシート54から離脱すると、外周流路67と第2噴射孔55とが連通する。これにより、第2噴射孔55からエンジンの気筒内への混合燃料の噴射が実施される。
【0049】
ここで、本実施例の第2ニードル7の内側(内部)には、内部に液体燃料と圧縮エアが供給される中心孔56が形成(穿設)されている。
中心孔56は、インジェクタ1の第1噴射孔25および燃料ノズル29の中心孔30と同一軸線上に設けられている。この中心孔56は、インジェクタ1の第1ノズルボディ3の先端面に対向配置される対向端面(第2ニードル7の上端面)で開口し、この開口側から奥側(底面側)まで軸線方向に真っ直ぐに延びる凹状の軸方向孔(凹部)である。
また、第2ノズルボディ6の内部において第2ニードル7の外側には、第2噴射孔55の開弁時に、中心孔56から供給された圧縮エアの一部が摺動クリアランスを通って第2噴射孔55へ向けて流通する円筒状のエア流路(外周流路64〜67)が形成されている。これらの外周流路64〜67は、第2ノズルボディ6の第2ガイド孔51の内面および第2ロアボディ13のスプリング収容孔41の内面と、第2ニードル7の外面との間に形成されて、摺動クリアランスに連通するエア流路を構成している。
【0050】
ここで、本実施例のインジェクタ1には、第1噴射孔25から中心孔56の内部に液体燃料を供給する手段として、第1噴射孔25から噴射された全ての液体燃料を積極的に中心孔56へ供給する燃料ノズル29が設けられている。この燃料ノズル29は、第1噴射孔25から中心孔56の内部まで延びる中空の細いパイプであって、燃料ノズル29の下端部が中心孔56の内部まで延びて配置されている。
そして、インジェクタ1から噴射された液体燃料は、燃料ノズル29内に形成される中心孔30を通って中心孔56に供給され、エア導入管から第2アッパーボディ14の内部空間45に供給された圧縮エアは、燃料ノズル29の外面と中心孔56の内面との間に形成される筒状通路を通って中心孔56に供給される。
【0051】
燃料ノズル29内に形成される中心孔30の流路断面積は、第1噴射孔25の流路断面積よりも大きく設けられる。
また、中心孔56と燃料ノズル29の軸線方向のオーバーラップ量は、インジェクタ1から噴射された燃料が、中心孔56の上端開口から外部へ吹きこぼれない長さを有することが望まれる。しかるに、オーバーラップ量を長く設定することで、筒状通路を通過する圧縮エアの通過抵抗が増すことになるため、中心孔56と燃料ノズル29の軸線方向のオーバーラップ量は、必要以上に長くしないように設定される。
【0052】
以上のように、第1噴射孔25から中心孔56の内部に液体燃料を供給する手段として、本実施例の燃料ノズル29を使用することにより、インジェクタ1から噴射される全ての液体燃料を、中心孔56を介して第2噴射孔55へ安定して導くことができ、インジェクタ1から噴射された全ての燃料が第2噴射孔55へ導かれるまでの時間と量が安定する。その結果、第2噴射孔55の開弁中に高い精度の混合燃料を噴射することができ、エンジンの気筒内への混合燃料の噴射精度を高めることができる。
なお、第2ニードル7の詳細は後述する。
【0053】
第2アクチュエータは、通電されると磁気吸引力を発生する第2コイル71を備え、磁力によって第2ニードル7を開弁方向(または閉弁方向)に駆動する電磁アクチュエータ(第2ニードル駆動部)を構成している。この第2アクチュエータは、電力の供給を受けると周囲に磁束を発生する第2コイル71、この第2コイル71の内周に配置されて第2ニードル7の上端に固定された第2可動コア(アーマチャ)72、この第2可動コア72を下方へ磁気吸引するための磁路を形成する第2固定子等を有している。
【0054】
第2コイル71は、図示しない円筒ボビンの外周に複数回巻装されている。この第2コイル71には、電気絶縁性の第2モールド樹脂73によって被覆されて保護される一対のコイルリード線74が設けられている。また、これらのコイルリード線74には、外部接続端子(第1ターミナル)がそれぞれ接続される。本実施例では、一対の第1ターミナルと第2モールド樹脂73とによって、インジェクタ2の作動制御を行うECUと導電線を介して電気的な接続を行う第2コネクタが構成される。
【0055】
第2可動コア72は、第2アッパーボディ14の第2摺動孔75の内面に往復摺動可能に支持されている。この第2可動コア72の中心部には、上下方向に貫通する貫通孔が形成さている。この貫通孔の内部には、第2ニードル7の上端が結合されている。これにより、第2ニードル7は、第2ロアボディ13および第2アッパーボディ14の内部において軸線方向へ往復移動可能に収容される。
なお、第2可動コア72には、その上端面と下端面とを連通するように、上下方向に貫通する燃料通路は形成されておらず、第2ニードル7の外周に何らかの要因で付着した液体燃料は、第2アッパーボディ14の第2摺動孔75の内面と第2可動コア72の外面との間に形成される摺動クリアランスを介して下方へ伝わることで下方のエア流路へ導かれる。
【0056】
第2固定子は、第2コイル71の通電時に磁化されて第2可動コア72を吸引する第2磁気吸引部76を有する円筒状の第2ロアボディ(第2固定コア)13と、第2ロアボディ13と第2アッパーボディ14の間に挟まれて保持される円筒状の第2非磁性パイプ77と、この第2非磁性パイプ77の上部において第2可動コア72と径方向の磁気の受け渡しを行う第2磁気受渡部78を有する円筒状の第2アッパーボディ(第2磁性パイプ)14と、第2コイル71の周囲を覆う円筒状の第2ヨーク79とを備えている。
なお、第2可動コア72、第2ロアボディ13、第2非磁性パイプ77、第2アッパーボディ14および第2ヨーク79は、全て磁性材料(例えば鉄)によって形成されている。
【0057】
ここで、第2固定子は、第2ロアボディ13および第2アッパーボディ14の一部を利用したものであり、第2ロアボディ13の上部が第2磁気吸引部76として利用され、第2アッパーボディ14の下部が第2磁気受渡部78として利用されている。
第2ロアボディ13の第2磁気吸引部76は、第2可動コア72の下面との間にギャップを形成する。本実施例の第2アクチュエータでは、第2コイル71が通電されると、第2磁気吸引部76に第2可動コア72が磁気吸引される。
第2非磁性パイプ77は、第2ロアボディ13の第2磁気吸引部76と第2アッパーボディ14の第2磁気受渡部78とが、第2可動コア72を介さずに直接的に磁気結合(磁路形成)するのを防止する。
【0058】
第2ヨーク79は、第2コイル71の外周を覆って、第2コイル71の周囲に磁路を形成する。この第2ヨーク79は、第2コイル71と共に第2モールド樹脂73により被覆されている。
本実施例の第2アクチュエータは、第2コイル71が通電されて第2コイル71の周囲に形成される磁束が、第2ヨーク79→第2ロアボディ13の第2磁気吸引部76→第2可動コア72→第2アッパーボディ14の第2磁気受渡部78の経路で、再び第2ヨーク79に戻る。なお、磁束の流れ方向は逆であっても良い。
【0059】
第2スプリング8は、第2ノズルボディ6の上端面と第2ニードル7の外面に取り付けられた第2バネストッパ80との間で圧縮された状態で組み付けられて、第2ニードル7に対し、第2ニードル7を閉弁方向に付勢するスプリング荷重を発生する。すなわち、第2スプリング8は、第2ニードル7を上方へ押し付けて、第2ニードル7の第2シート部53を第2バルブシート54に押し付ける力(着座させる力、閉弁力)を発生する。本実施例では、コイルスプリングが使用されている。
なお、第2バネストッパ80は、第2ニードル7の外面に取り付けられるクリップリング(Eリング、Cリング等)81によって支持されている。
【0060】
ここで、インジェクタ1の第1アクチュエータの第1コイル31およびインジェクタ2の第2アクチュエータの第2コイル71は、ECUによって通電制御されるように構成されている。
ECUには、制御処理や演算処理を行うCPU、制御プログラムまたは制御ロジックや各種データを保存する記憶装置(ROMやRAM等のメモリ)、タイマー等の機能を含んで構成される周知の構造のマイクロコンピュータが設けられている。
マイクロコンピュータには、エンジン情報を検出する各種センサから出力されたセンサ出力信号に基づいて、第1コイル31および第2コイル71への通電状態を制御するインジェクタ制御プログラムが搭載されている。
【0061】
このインジェクタ制御プログラムは、例えばエンジンの気筒内に供給される吸入空気の流量を測定する空気流量計(エアフロメータ)を含む各種センサからのセンサ出力信号、つまりエンジンの運転状態に応じた噴射形態、噴射タイミング、燃料噴射量の算出を行うと共に、算出された噴射形態、噴射タイミング、燃料噴射量が得られるように、第1コイル31および第2コイル71の通電制御を実施するものである。
具体的に、インジェクタ制御プログラムは、算出された燃料噴射量が得られるように第1コイル31の通電期間を制御すると共に、算出された噴射タイミングで燃料噴射が実施されるように第2コイル71の通電開始時期を制御する。すなわち、インジェクタ2において、インジェクタ1から噴射された液体燃料と共に圧縮エアを一緒に噴射するように、インジェクタ1、2の通電制御を行う。
【0062】
一例を示すと、図4(b)に示したように、先ず第1コイル31へインジェクタ1駆動信号を出力してインジェクタ1の第1噴射孔25からインジェクタ2の第2ニードル7の内部(中心孔56)へ液体燃料の供給を行い、続いて第2コイル71へインジェクタ2駆動信号を出力して液体燃料と圧縮エアとの混合燃料をインジェクタ2からエンジンの気筒内へ噴射させる。
なお、図4(b)は、一例を示すだけであって、図4(b)とは異なり、インジェクタ1とインジェクタ2とが同時に駆動されるオーバラップ期間があっても良いし、インジェクタ1とインジェクタ2とが同時に駆動開始されるものであっても良い。
【0063】
次に、本実施例のインジェクタ2、特に第2ノズルボディ6および第2ニードル7の詳細を図1ないし図4に基づいて説明する。
本実施例のインジェクタ2は、第2ニードル7の内側に形成される中心孔56と、第2ニードル7の外側に形成されるエア流路(外周流路64〜67)とを備えている。
中心孔56の上端は、インジェクタ1の第1噴射孔25と同一軸線上で開口している。この中心孔56の開口側には、第2アッパーボディ14の内部空間45に臨む導入部57が設けられている。この導入部57は、インジェクタ1の第1噴射孔25から噴射された液体燃料と、外部から供給された圧縮エアとを中心孔56の内部(流路部58、貯留部59)へ導く。また、中心孔56の中間部には、導入部57から供給された液体燃料と圧縮エアを下流側(底面側)へ導く流路部58が設けられている。また、中心孔56の奥側(開口側に対して反対側)には、内部に液体燃料を一時的に溜める貯留部59が設けられている。
【0064】
第2ニードル7には、インジェクタ1から噴射された液体燃料と外部から供給された圧縮エアとが供給される中心孔56と、この中心孔56とエア流路(外周流路64〜67)および摺動クリアランスとを連通する連通路(複数の第1〜第3連通孔61〜63)とが設けられている。
本実施例のインジェクタ2に設けられる連通路は、中心孔56から供給された圧縮エアを上流側流路(外周流路64、65)へ導く第1連通孔61、中心孔56から供給された液体燃料を摺動クリアランスへ導く第2連通孔62、および中心孔56から供給された液体燃料を外周流路66へ導く第3連通孔63を具備している。
【0065】
外周流路は、第2ノズルボディ6の第2ガイド孔51の内面および第2ロアボディ13のスプリング収容孔41の内面と第2ニードル7の外面との間に形成されている。また、外周流路は、摺動クリアランスよりも上流側に形成されて、中心孔56から複数の第1連通孔61を通って摺動クリアランスへ導く上流側流路(外周流路64、65)、および摺動クリアランスよりも下流側に形成されて、中心孔56から複数の第2連通孔62を通って供給された液体燃料と外周流路66と摺動クリアランスから供給された液体燃料と圧縮エアを第2噴射孔55側へ導く下流側流路(外周流路67)等を有してる。
【0066】
ここで、本実施例のインジェクタ2の第2ニードル7の外面に形成される複数の第2ガイド52および複数の突条部69は、径方向外側に突出して第2ノズルボディ6の第2ガイド孔51の内面との間に流路絞り部(ベンチュリー)を形成するベンチュリー形成部として機能する。
すなわち、複数の第2ガイド52の各摺動面は、第2ガイド孔51の内面との間に、上流側の外周流路65から摺動クリアランスを通って下流側の外周流路67へ向かう圧縮エアの流れを絞る流路絞り部である。また、複数の突条部69の各平面は、第2ガイド孔51の内面との間に、上流側の外周流路65から外周流路66を通って下流側の外周流路67へ向かう圧縮エアの流路を絞る流路絞り部である。
【0067】
そして、複数の第2ガイド52および複数の突条部69の上流側には、上流側の外周流路65から流路絞り部の最大絞り部である第2ガイド52の摺動面および突条部69の平面へ向かう圧縮エアの流路を徐々に縮径(縮小)する傾斜面が設けられている。また、複数の第2ガイド52および複数の突条部69の下流側には、第2ガイド52の摺動面および突条部69の平面で絞られた圧縮エアの流路を徐々に拡径(拡張)する傾斜面が設けられている。
ここで、第2ニードル7における第1連通孔61よりも下方には、図1および図2に示したように、中心孔56と摺動クリアランスおよび外周流路66とを連通する複数の第2、第3連通孔(燃料孔)62、63が設けられている。第2、第3連通孔62、63は、中心孔56の下端(底面近傍)の貯留部59から流路絞り部の最大絞り部である第2ガイド52の摺動面および突条部69の平面へ向かって放射状に複数形成されている。
【0068】
また、第2、第3連通孔62、63の孔径は、図1に示したように、第1連通孔61の孔径よりも小さく設定されている。この場合、中心孔56の貯留部59に溜まった液体燃料が、第2連通孔62または第3連通孔63から摺動クリアランスまたは外周流路66へ漏れ出すという不具合は発生しない。これにより、インジェクタ2からエンジンの気筒内への混合燃料の噴射開始前に、外周流路の下部(外周流路67等)に液体燃料が溜まるという不具合を解消でき、混合燃料の噴射開始初期に、外周流路の下部(外周流路67等)に溜まった液体燃料がまとまって第2噴射孔55からエンジンの気筒内へ噴射されるという不具合を防止できる。したがって、混合燃料の噴射開始初期における噴霧粒径が大きくなるという不具合を回避できる。
【0069】
ここで、第2アッパーボディ14の内部空間45に供給された圧縮エアを外周流路64、65等へ導く手段として、第2可動コア72に上下方向に貫通する流路孔を設けずに済むように、第2可動コア72の内側の中心孔56を、圧縮エアを外周流路64、65等へ導く手段として使用している。
すなわち、第2ニードル7には、第2可動コア72よりも下方に、中心孔56の流路部58と外周流路64、65とを連通する第1連通孔(第1横穴、径方向流路)61が設けられている。この第1連通孔61は、中心孔56の内部に供給された圧縮エアを分岐させて外周流路64、65等へ供給するエア分岐孔であり、圧縮エアは中心孔56の流路部58から第1連通孔61を通って外周流路64、65内に充填供給される。第1連通孔61は、中心孔56の中間の流路部58から第2ニードル7の外面(平面または凸曲面)へ向かって放射状に複数形成されている。
【0070】
なお、外周流路64、65等を流れる圧縮エアの流量が第1連通孔61で絞られないように、第1連通孔61の孔径寸法が大きく設定されている。
また、第1連通孔61の孔径寸法を大きく設定することで、エア流路(外周流路64〜66および摺動クリアランス等)を流れる圧縮エアの流量を増大させることが可能となる。これにより、流路絞り部を通過する圧縮エアの流速が速くなるので、外周流路を流れる圧縮エアが、中心孔56の液体燃料を第2、第3連通孔62、63を介して吸い出す効果を向上することができる。したがって、流路絞り部における液体燃料と圧縮エアとの混合性を向上させることができるので、全噴射期間において燃料噴霧の微粒化を促進させることができる。
【0071】
[実施例1の作用]
次に、本実施例のエアブラストインジェクタの作動を図1ないし図4に基づいて簡単に説明する。
【0072】
上述したインジェクタ1の構成によれば、インジェクタ1の導入部である燃料導入口16から導入された液体燃料は、燃料フィルタ17を通って第1アッパーボディ12内の燃料流路孔18に流入する。そして、燃料流路孔18に流入した液体燃料は、第1可動コア32内の燃料流路孔19、第1ロアボディ11内の燃料流路孔20を通って、第1ノズルボディ6の第1ガイド孔21の内面と第1ニードル4の外面との間に形成されるインジェクタ1の内部流路(燃料流路26、連通部27、燃料流路28)に到達する。
ここで、インジェクタ1の第1コイル31への通電が停止している場合、第1ニードル4は第1可動コア32と共に第1スプリング5の付勢力によって第1バルブシート24に押し付けられて、第1ニードル4の第1シート部23が第1バルブシート24に着座している。このとき、燃料流路26、28から第1噴射孔25への液体燃料の流通が遮断されるので、第1噴射孔25からの燃料噴射が実施されない。
【0073】
そして、ECUからインジェクタ1の第1コイル31へ駆動信号が印加されて、第1コイル31に電流が流れると、第1可動コア32および第1固定コア36に磁束が流れる。これにより、第1可動コア32と第1固定コア36の第1磁気吸引部との間に、第1可動コア32を第1固定コア36側(上方側)へ引き付ける力である磁気吸引力が発生する。 この磁気吸引力が第1スプリング5の付勢力を上回ると、第1可動コア32が第1ニードル4と共に第1固定コア36の第1磁気吸引部に向かって移動を開始する。
このように、第1ニードル4が第1磁気吸引部に向かって移動すると、第1ニードル4の第1シート部23が第1バルブシート24から離脱(離座)し、燃料流路26、28から第1噴射孔25への液体燃料の流通が許可される。これにより、第1噴射孔25から燃料噴射が実施される。
【0074】
そして、第1噴射孔25より噴射された燃料は、燃料ノズル29の中心孔30を通って、インジェクタ2の内部流路(第2ニードル7の内側流路)である中心孔56の内部に噴射供給される。すなわち、燃料ノズル29によって、インジェクタ1の噴射燃料がインジェクタ2の中心孔56の内部のみに注入される。そして、中心孔56の導入部57から導入された液体燃料は、中心孔56の流路部58を通って貯留部59に到達する。
ここで、本実施例の第2ニードル7は、第1連通孔61よりも下側における中心孔56の貯留部59の内容積(最大貯留量)が、1回の燃料噴射量(最大噴射量)よりも大きくなるように設定されている。つまりインジェクタ1から中心孔56の内部へ噴射供給された液体燃料を、第1連通孔61よりも下側の中心孔56の貯留部59で貯留できるようになっている。これにより、エンジンの気筒内への最大噴射時であっても、第1連通孔61から外周流路64、65へ液体燃料が溢れ出る不具合がなく、噴射開始初期に、外周流路64、65から溢れ出した液体燃料がまとまって第2噴射孔55からエンジンの気筒内に噴射されるという不具合はない。
【0075】
一方、エア供給管から第2アッパーボディ14の内部空間45に導入された圧縮エアは、燃料ノズル29の外面と中心孔56の内面との間に区画形成される筒状通路を通って中心孔56の内部に供給される。
そして、中心孔56の導入部57から導入された圧縮エアは、貯留部59に液体燃料が貯留されているため、流路部58、第1連通孔61を通って、第2ニードル7の外面と第2ロアボディ13のスプリング収容孔41の内面との間に区画形成される外周流路64に流入する。そして、外周流路64に流入した圧縮エアは、第2ノズルボディ6の第2ガイド孔51の内面と第2ニードル7の外面との間に区画形成される外周流路65に到達する。
【0076】
ここで、インジェクタ2の第2コイル71への通電が停止している場合、第2ニードル7は第2可動コア72と共に第2スプリング8の付勢力によって第2バルブシート54に押し付けられて、第2ニードル7の第2シート部53が第1バルブシート54に着座している。このとき、外周流路67から第2噴射孔55への液体燃料の流通が遮断されるので、第2噴射孔55からの燃料噴射が実施されない。
そして、ECUからインジェクタ2の第2コイル71へ駆動信号が印加されて、第2コイル71に電流が流れると、第2可動コア72および第2固定コアである第2ロアボディ13に磁束が流れる。これにより、第2可動コア72と第2ロアボディ13の第2磁気吸引部76との間に、第2可動コア72を第2磁気吸引部76側(下方側)へ引き付ける力である磁気吸引力が発生する。
【0077】
この磁気吸引力が第2スプリング8の付勢力を上回ると、第2可動コア72が第2ニードル7と共に第2ロアボディ13の第2磁気吸引部76に向かって移動を開始する。
このように、第2ニードル7が第2磁気吸引部76に向かって移動すると、第2ニードル7の第2シート部53が第2バルブシート54から離脱(離座)し、外周流路67から第2噴射孔55への液体燃料と圧縮エアの混合燃料の流通が許可される。これにより、第2噴射孔55から混合燃料の噴射が実施される。
このとき、第2噴射孔55が開かれると、外周流路64、65内に充填された圧縮エアが、外周流路66および摺動クリアランス、外周流路67、第2噴射孔55を通ってエンジンの気筒内に流れる。このため、外周流路66および摺動クリアランスには、複数の第2ガイド52の摺動面および複数の突条部69の平面により構成される流路絞り部の上流側の外周流路65から下流側の外周流路67を通って第2噴射孔55に向かう圧縮エアの流れが生じ、圧縮エアが流路絞り部で絞られる。
【0078】
このとき、流路絞り部を通過する圧縮エアは、流路絞り部によりエア流路(外周流路66、摺動クリアランス)が絞られているので、流速が増速される。流路絞り部を通過する際に流速が増速された圧縮エアは、流路絞り部の下流側の流路断面積が増加する領域において流路の拡径に伴う負圧化により圧力が急速に下がる。
これにより、第2ニードル7の下端側の貯留部59に貯留されていた液体燃料が、複数の第2、第3連通孔62、63を通って摺動クリアランスおよび外周流路66内に吸い出される。
そして、複数の第2、第3連通孔62、63の出口から吸い出された液体燃料は、流路絞り部を通過する圧縮エアによって連続的に分断されながら圧縮エアに混ざり合い、圧縮エアと共に、外周流路67、第2噴射孔55を通ってエンジンの気筒内へ噴射される。
このように、複数の第2、第3連通孔62、63の出口から吸い出された液体燃料が、圧縮エアに混ざり合った状態で第2噴射孔55から噴射されるため、インジェクタ2の噴射初期から噴霧粒径を微粒化することができる。
【0079】
インジェクタ2に供給された液体燃料の噴射が終了すると、ECUによって第2コイル71の通電が停止される。すると、第2可動コア72を第2磁気吸引部76側へ磁気吸引していた磁力が喪失する。その結果、第2スプリング8の付勢力により第2可動コア72と第2ニードル7が上昇を開始する。
そして、第2ニードル7が上昇して第2ニードル7の第2シート部53が第1バルブシート54に着座すると、外周流路67から第2噴射孔55への液体燃料の流通が遮断されるので、第2噴射孔55からの燃料噴射が停止される。
【0080】
[実施例1の効果]
以上のように、本実施例のエアブラストインジェクタを構成するインジェクタ1、2のうちのインジェクタ2の第2ニードル7には、第2ニードル7の中心部に形成される中心孔56と、第2ニードル7の外面と第2ノズルボディ6の第2ガイド孔51の内面および第2ロアボディ13のスプリング収容孔41の内面との間に区画形成されるエア流路(外周流路64〜67)とを連通する連通路(第1〜第3連通孔61〜63)が設けられている。
【0081】
第1連通孔61は、中心孔56の流路部58の周囲を周方向に取り囲む管壁部(第2ニードル7の中間壁部)を放射状に貫通するように複数形成されて、中心孔56の流路部58から外周流路64、65へ主に圧縮エアを導く連通流路である。この第1連通孔61の入口は、中心孔56の流路部58の内面(中心孔56の中間部)で開口し、また、第1連通孔61の出口は、第2ニードル7の中間部の外面で開口している。つまり第1連通孔61の出口は、圧縮エアを上流側流路(外周流路64、65)内に噴出する第1噴出口として機能する。
【0082】
第2連通孔62は、中心孔56の貯留部59の周囲を周方向に取り囲む管壁部(第2ニードル7の下端壁部)を放射状に貫通するように複数形成されて、中心孔56の貯留部59から摺動クリアランスへ主に液体燃料を導く連通流路である。この第2連通孔62の入口は、中心孔56の貯留部59の内面(中心孔56の底面近傍)で開口し、また、第2連通孔62の出口は、第2ニードル7に形成される各第2ガイド52の摺動面で開口している。つまり第2連通孔62の出口は、液体燃料を摺動クリアランス内および下流側流路(外周流路67)内に噴出する第2噴出口として機能する。
【0083】
第3連通孔63は、中心孔56の貯留部59の周囲を周方向に取り囲む管壁部(第2ニードル7の下端壁部)を放射状に貫通するように複数形成されて、中心孔56の貯留部59から外周流路66へ主に液体燃料を導く連通流路である。この第3連通孔63の入口は、中心孔56の貯留部59の内面(中心孔56の底面近傍)で開口している。また、第3連通孔63の出口は、突条部69の平面で開口している。つまり第3連通孔63の出口は、液体燃料を外周流路66内および下流側流路(外周流路67)内に噴出する第3噴出口として機能する。なお、第2、第3連通孔62、63は、中心孔56の周方向に等間隔で交互に設けられている。
【0084】
ここで、インジェクタ2の第2噴射孔55が開かれると、外部から中心孔56に供給された圧縮エアが、インジェクタ1の第1噴射孔25から噴射された中心孔56内の液体燃料を第2、第3連通孔62、63、摺動クリアランスおよび外周流路66、外周流路67を通って第2噴射孔55へ向けて押し出す効果が発生する。
一方、中心孔56の流路部58から第1連通孔61、外周流路64、65を通って摺動クリアランス内および外周流路66内に導かれた圧縮エアが、中心孔56の貯留部59から複数の第2、第3連通孔62、63を介して第2、第3連通孔62、63の出口側へ押し出された液体燃料を摺動クリアランス内および外周流路66内に吸い出す効果が発生する。
この結果、摺動クリアランス、外周流路66、外周流路67を流れる圧縮エアと複数の第2、第3連通孔62、63の出口より噴出する液体燃料との混合性を向上することができる。したがって、インジェクタ2の第2噴射孔55から噴射される燃料噴霧の微粒化を促進することができる。
【0085】
また、インジェクタ2の第2ニードル7の貯留部59に連通する複数の第2連通孔62の出口を、第2ニードル7の各第2ガイド52の摺動面で開口させることにより、インジェクタ2の第2ノズルボディ6の第2ガイド孔51の内面と第2ニードル7の各第2ガイド52の摺動面との間に形成される摺動クリアランス(第2ニードル摺動部)に大量の液体燃料を導入することができる。これにより、液体燃料による第2ニードル摺動部の潤滑効果を高めることができる。
これによって、エアブラストインジェクタを構成するインジェクタ1、2とは別に、ニードル摺動部に潤滑オイルを供給する潤滑油供給機構を設けることなく、第2ニードル摺動部を効率良く潤滑することができる。
【0086】
その結果、第2ノズルボディ6の第2ガイド孔51の内面に対する第2ニードル7の摺動抵抗を低減することができるので、第2ノズルボディ6の第2ガイド孔51の内面と第2ニードル7の各第2ガイド52の摺動面との摩耗を低減することができる。これにより、第2ニードル摺動部の耐摩耗性を向上することができる。また、液体燃料による摺動摩擦熱の冷却効果についても第2ニードル摺動部に付与される。これらにより、第2ニードル7の摺動に対する信頼性を向上することができる。
また、本実施例のインジェクタ2は、複数の第2ガイド52のうちの隣設する2つの第2ガイド52間に、上流側流路(外周流路64、65)と下流側流路(外周流路67)とを連通する外周流路66が区画形成されている。これにより、インジェクタ2の第2噴射孔55が開かれた際に、摺動クリアランスよりも上流側の外周流路64、65から摺動クリアランスよりも下流側の外周流路67へ向かう圧縮エアの流路抵抗(流通抵抗)を低減することができる。
【実施例2】
【0087】
図5は本発明の実施例2を示したもので、図5(a)、(b)はエアブラストインジェクタのインジェクタ2(第2燃料噴射弁)の主要部を示した図である。
【0088】
本実施例のインジェクタ2は、実施例1と同様に、第2ニードル7をその軸線方向に往復摺動自在に支持する第2ガイド孔51を有する第2ノズルボディ6と、第2ガイド孔51の内面を往復摺動する複数の第2ガイド52を有する第2ニードル7とを備えている。 複数の第2ガイド52は、第2ニードル7の外面より径方向外側に突出し、周方向の両側に平面状の側面(液体燃料や圧縮エアの流れ方向と平行な方向に対して直交する垂直面)を有している。
両側の側面間を繋ぐように設けられる摺動面(第2ガイド52の摺動面)は、第1ガイド孔21の内面(凹曲面)の曲率半径よりも僅かに小さい曲率半径の凸曲面形状に形成されている。複数の第2ガイド52の摺動面は、第1ガイド孔21の内面と摺動する。
そして、複数の第2ガイド52のうちの隣設する2つの第2ガイド52間には、複数の第2ガイド52の各摺動面より第2ニードル7の中心側(中心孔56の中心側)に凹んだ凹溝91が複数形成されている。これらの凹溝91は、第2ニードル7の断面円筒形状の径大部の外面を切り欠くことで形成される。
【0089】
また、第2ノズルボディ6の第2ガイド孔51の内面と第2ニードル7の外面との間には、第2噴射孔55の開弁時に中心孔56の流路部58から第1連通孔61を通って外周流路64、65内に供給された圧縮エアを外周流路67、第2噴射孔55へ向けて流通させるためのエア流路が区画形成されている。このエア流路には、摺動クリアランスよりも上流側の外周流路64、65と摺動クリアランスよりも下流側の外周流路67とを摺動クリアランスを迂回して連通する複数の外周流路(中継流路)66が設けられている。複数の外周流路66は、複数の第2ガイド52のうちの隣設する2つの第2ガイド52間に区画形成されている。これらの外周流路66は、第2ニードル7の周方向に所定の間隔(等間隔)で形成される扇状の断面を有している。
【0090】
ここで、第2ニードル7の中間部には、図2および図4(a)に示したように、中心孔56とエア流路(外周流路64、65)とを連通する第1連通孔61が設けられている。第1連通孔61は、中心孔56の流路部58から第2ニードル7の外面へ向かって放射状に複数形成されている。また、第2ニードル7における第1連通孔61よりも下方には、図5に示したように、中心孔56と摺動クリアランスおよび外周流路66とを連通する複数の第2、第3連通孔(燃料孔)62、63が設けられている。第2、第3連通孔62、63は、中心孔56の下端(底面近傍)の貯留部59から流路絞り部の最大絞り部である第2ガイド52の摺動面および凹溝91の溝壁面(溝底面)へ向かって放射状に複数形成されている。
【0091】
本実施例の第3連通孔63は、中心孔56の貯留部59の周囲を周方向に取り囲む管壁部(第2ニードル7の下端壁部)を放射状に貫通するように複数形成されて、中心孔56の貯留部59から外周流路66へ主に液体燃料を導く連通流路である。この第3連通孔63の入口は、中心孔56の貯留部59の内面(中心孔56の底面近傍)で開口している。また、第3連通孔63の出口は、凹溝91の溝底面で開口している。つまり第3連通孔63の出口は、液体燃料を外周流路66内および下流側流路(外周流路67)内に噴出する第3噴出口として機能する。なお、第2、第3連通孔62、63は、中心孔56の周方向に等間隔で交互に設けられている。
【0092】
以上のように、液体燃料を噴射するインジェクタ1と、液体燃料と圧縮エアとの混合燃料を噴射するインジェクタ2とを備えたエアブラストインジェクタにおいて、内部を液体燃料が流れる燃料孔である第2連通孔62の出口を、第2ノズルボディ6の第2ガイド孔51の内面と第2ニードル7の各第2ガイド52の摺動面との間に形成される摺動クリアランス(第2ニードル摺動部)で開口させることによって、エアブラストインジェクタを構成するインジェクタ1、2とは別に、ニードル摺動部に潤滑オイルを供給する潤滑油供給機構を設けることなく、第2ニードル摺動部を効率良く潤滑することができる。
【0093】
その結果、第2ノズルボディ6の第2ガイド孔51の内面に対する第2ニードル7の摺動抵抗を低減することができるので、第2ノズルボディ6の第2ガイド孔51の内面と第2ニードル7の各第2ガイド52の摺動面との摩耗を低減することができる。これにより、第2ニードル摺動部の耐摩耗性を向上することができる。また、液体燃料による摺動摩擦熱の冷却効果についても第2ニードル摺動部に付与される。これらにより、第2ニードル7の摺動に対する信頼性を向上することができる。
また、本実施例のインジェクタ2は、複数の第2ガイド52のうちの隣設する2つの第2ガイド52間に、上流側流路(外周流路64、65)と下流側流路(外周流路67)とを連通する外周流路66が区画形成されている。これにより、インジェクタ2の第2噴射孔55が開かれた際に、摺動クリアランスよりも上流側の外周流路64、65から摺動クリアランスよりも下流側の外周流路67へ向かう圧縮エアの流路抵抗(流通抵抗)を低減することができる。
【実施例3】
【0094】
図6は本発明の実施例3を示したもので、図6(a)、(b)はエアブラストインジェクタのインジェクタ2(第2燃料噴射弁)の主要部を示した図である。
【0095】
本実施例のインジェクタ2は、実施例1及び2と同様に、第2ニードル7をその軸線方向に往復摺動自在に支持する第2ガイド孔51を有する第2ノズルボディ6と、第2ガイド孔51の内面を往復摺動する第2ガイド52を有する第2ニードル7とを備えている。 第2ガイド52は、第2ニードル7の外面より径方向外側に突出した円筒形状の断面を有している。
また、第2ノズルボディ6の第2ガイド孔51の内面と第2ニードル7の外面との間には、第2噴射孔55の開弁時に中心孔56の流路部58から第1連通孔61を通って外周流路64、65内に供給された圧縮エアを外周流路67、第2噴射孔55へ向けて流通させるためのエア流路が区画形成されている。このエア流路には、摺動クリアランスよりも上流側の外周流路64、65と摺動クリアランスよりも下流側の外周流路67とを連通する複数の流路孔92が設けられている。複数の流路孔92は、円筒状の第2ガイド52を、第2ニードル7の軸線方向と平行な方向に貫通する貫通孔である。複数の流路孔92は、第2ガイド52の上流側の端面(傾斜面)から第2ガイド52の下流側の端面(傾斜面)まで第2ニードル7の軸線方向と平行な方向に真っ直ぐに延びている。
【0096】
ここで、第2ニードル7の中間部には、実施例1及び2と同様に、第1連通孔61が設けられている。
また、第2ニードル7における第1連通孔61よりも下方には、図6に示したように、中心孔56と摺動クリアランスおよび外周流路66とを連通する複数の燃料孔93が設けられている。燃料孔93は、中心孔56の下端(底面近傍)の貯留部59から複数の流路孔92を経て第2ガイド52の摺動面へ向かって放射状に複数形成されている。
本実施例の燃料孔93は、中心孔56の貯留部59の周囲を周方向に取り囲む管壁部(第2ニードル7の下端壁部)を放射状に貫通するように複数形成されて、中心孔56の貯留部59から流路孔92を経て摺動クリアランスへ主に液体燃料を導く第2連通孔としての機能と、中心孔56の貯留部59から流路孔92へ主に液体燃料を導く第3連通孔としての機能を合わせ持っている。
【0097】
この燃料孔93の入口は、中心孔56の貯留部59の内面(中心孔56の底面近傍)で開口している。また、燃料孔93の中間出口は、流路孔92の孔壁面で開口している。つまり燃料孔93の中間出口は、液体燃料を流路孔92内および下流側流路(外周流路67)内に噴出する第3噴出口として機能する。また、燃料孔93の中間入口は、流路孔92の孔壁面で開口している。また、燃料孔93の出口は、第2ガイド52の摺動面で開口している。つまり燃料孔93の出口は、液体燃料を摺動クリアランス内に噴出する第2噴出口として機能する。なお、燃料孔93は、中心孔56の周方向に等間隔で設けられている。
【0098】
以上のように、液体燃料を噴射するインジェクタ1と、液体燃料と圧縮エアとの混合燃料を噴射するインジェクタ2とを備えたエアブラストインジェクタにおいて、内部を液体燃料が流れる燃料孔93の出口を、第2ノズルボディ6の第2ガイド孔51の内面と第2ニードル7の第2ガイド52の摺動面との間に形成される摺動クリアランス(第2ニードル摺動部)で開口させることによって、エアブラストインジェクタを構成するインジェクタ1、2とは別に、ニードル摺動部に潤滑オイルを供給する潤滑油供給機構を設けることなく、第2ニードル摺動部を効率良く潤滑することができる。
【0099】
その結果、第2ノズルボディ6の第2ガイド孔51の内面に対する第2ニードル7の摺動抵抗を低減することができるので、第2ノズルボディ6の第2ガイド孔51の内面と第2ニードル7の第2ガイド52の摺動面との摩耗を低減することができる。これにより、第2ニードル摺動部の耐摩耗性を向上することができる。また、液体燃料による摺動摩擦熱の冷却効果についても第2ニードル摺動部に付与される。これらにより、第2ニードル7の摺動に対する信頼性を向上することができる。
また、本実施例のインジェクタ2は、燃料孔93と十字状に交差すると共に、第2ガイド52を貫通する流路孔92が形成されている。これにより、インジェクタ2の第2噴射孔55が開かれた際に、摺動クリアランスよりも上流側の外周流路64、65から摺動クリアランスよりも下流側の外周流路67へ向かう圧縮エアの流路抵抗(流通抵抗)を低減することができる。
【0100】
[変形例]
本実施例では、本発明の燃料噴射装置を、エンジンの気筒内(燃焼室内)に直接燃料を噴射供給する直接噴射方式のエアブラストインジェクタに適用しているが、本発明の燃料噴射装置を、エンジンの燃焼室に連通する吸気ポート内に燃料を噴射供給するエアブラストインジェクタに適用しても良い。
本実施例では、第1燃料噴射弁(インジェクタ1)の第1ニードル4を駆動する第1ニードル駆動手段として電磁アクチュエータ(第1アクチュエータ)を使用しているが、第1ニードル駆動手段としてピエゾアクチュエータ、電動アクチュエータ、流体圧作動式アクチュエータ等の他の第1アクチュエータを使用しても良い。
本実施例では、第2燃料噴射弁(インジェクタ2)の第2ニードル7を駆動する第2ニードル駆動手段として電磁アクチュエータ(第2アクチュエータ)を使用しているが、第2ニードル駆動手段としてピエゾアクチュエータ、電動アクチュエータ、流体圧作動式アクチュエータ等の他の第1アクチュエータを使用しても良い。
【符号の説明】
【0101】
1 インジェクタ(第1燃料噴射弁)
2 インジェクタ(第2燃料噴射弁)
3 第1ノズルボディ(第1ハウジング)
4 第1ニードル
6 第2ノズルボディ(第2ハウジング)
7 第2ニードル
11 第1ロアボディ(第1ハウジング)
12 第1アッパーボディ(第1ハウジング)
13 第2ロアボディ(第2ハウジング)
14 第2アッパーボディ(第2ハウジング)
25 第1噴射孔
51 第2ガイド孔
52 第2ガイド
53 第2シート部
54 第2バルブシート
55 第2噴射孔
56 中心孔
57 中心孔の導入部
58 中心孔の流路部
59 中心孔の貯留部
61 第1連通孔(連通路)
62 第2連通孔(連通路)
63 第3連通孔(連通路)
64 外周流路(エア流路、上流側流路)
65 外周流路(エア流路、上流側流路)
66 外周流路(エア流路、中継流路)
67 外周流路(エア流路、下流側流路)
69 突条部(面取り部)
91 凹溝
92 流路孔
93 燃料孔(第2、第3連通孔)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)外部から供給された液体燃料を噴射する第1噴射孔を有する筒状の第1ハウジング、
およびこの第1ハウジングの内部に往復移動可能に収容されて、前記第1噴射孔を開閉する第1ニードル
を具備した第1燃料噴射弁と、
(b)この第1燃料噴射弁から噴射された液体燃料に外部から供給されたエアを混合した混合燃料を噴射する第2噴射孔を有する筒状の第2ハウジング、
およびこの第2ハウジングの内部に往復移動可能に収容されて、前記第2噴射孔を開閉すると共に、内部に液体燃料とエアが供給される中心孔、およびこの中心孔に連通する連通路を有する有底筒状の第2ニードル
を具備した第2燃料噴射弁と
を備えた燃料噴射装置において、
前記第2ニードルは、前記第2ニードルの外面より径方向外側に突出した鍔状のガイドを具備し、
前記第2ハウジングは、摺動クリアランスを介して前記ガイドの摺動面を往復摺動可能に案内するガイド孔、および少なくとも前記ガイド孔の内面と前記第2ニードルの外面との間に形成されて、前記第2噴射孔の開弁時に前記中心孔から供給されたエアが少なくとも前記摺動クリアランスを経て前記第2噴射孔へ向けて流通するエア流路を具備し、
前記エア流路は、前記摺動クリアランスよりも上流側に形成されて、前記中心孔から供給されたエアを少なくとも前記摺動クリアランスへ導く上流側流路、および前記摺動クリアランスよりも下流側に形成されて、少なくとも前記摺動クリアランスを通過したエアを前記第2噴射孔へ導く下流側流路を具備し、
前記連通路は、前記中心孔から供給されたエアを前記上流側流路へ導く第1連通孔、および前記中心孔から供給された液体燃料を前記摺動クリアランスへ導く第2連通孔を具備し、前記第2連通孔の入口が前記中心孔の内面で開口し、前記第2連通孔の出口が前記ガイドの摺動面で開口していることを特徴とする燃料噴射装置。
【請求項2】
請求項1に記載の燃料噴射装置において、
前記中心孔とは、前記第1燃料噴射弁側の端面で開口し、この開口側から底面側まで軸線方向に延びる凹状の軸方向孔のことであることを特徴とする燃料噴射装置。
【請求項3】
請求項2に記載の燃料噴射装置において、
前記中心孔の奥側(開口側に対して反対側)には、液体燃料を溜める貯留部が設けられていることを特徴とする燃料噴射装置。
【請求項4】
請求項3に記載の燃料噴射装置において、
前記第2連通孔は、前記貯留部と前記摺動クリアランスとを連通しており、
前記第2連通孔の出口とは、前記貯留部の液体燃料を前記摺動クリアランスへ導く噴出ポートのことであることを特徴とする燃料噴射装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のうちのいずれか1つに記載の燃料噴射装置において、
前記ガイドは、前記第2ニードルの周方向に所定の間隔で形成された複数のガイドにより構成されていることを特徴とする燃料噴射装置。
【請求項6】
請求項5に記載の燃料噴射装置において、
前記複数のガイドのうちの隣設する2つのガイド間には、前記複数のガイドの各摺動面より前記第2ニードルの中心線側に凹んだ面取り部が設けられており、
前記エア流路は、前記複数のガイドのうちの隣設する2つのガイド間に区画形成されて、前記上流側流路と前記下流側流路とを連通する中継流路を具備していることを特徴とする燃料噴射装置。
【請求項7】
請求項6に記載の燃料噴射装置において、
前記連通路は、前記中心孔から供給された液体燃料を前記中継流路へ導く第3連通孔を有し、前記第3連通孔の入口が前記中心孔の内面で開口し、前記第3連通孔の出口が前記面取り部の外面で開口していることを特徴とする燃料噴射装置。
【請求項8】
請求項5に記載の燃料噴射装置において、
前記複数のガイドのうちの隣設する2つのガイド間には、前記複数のガイドの各摺動面より前記第2ニードルの中心線側に凹んだ凹溝が設けられており、
前記エア流路は、前記複数のガイドのうちの隣設する2つのガイド間に区画形成されて、前記上流側流路と前記下流側流路とを連通する中継流路を具備していることを特徴とする燃料噴射装置。
【請求項9】
請求項8に記載の燃料噴射装置において、
前記連通路は、前記中心孔から供給された液体燃料を前記中継流路へ導く第3連通孔を有し、前記第3連通孔の入口が前記中心孔の内面で開口し、前記第3連通孔の出口が前記凹溝の溝壁面で開口していることを特徴とする燃料噴射装置。
【請求項10】
請求項1ないし請求項9のうちのいずれか1つに記載の燃料噴射装置において、
前記エア流路は、前記ガイドを前記第2ニードルの軸線方向と平行な方向に貫通すると共に、前記上流側流路と前記下流側流路とを連通する流路孔を具備していることを特徴とする燃料噴射装置。
【請求項11】
請求項10に記載の燃料噴射装置において、
前記連通路は、前記中心孔から供給された液体燃料を前記流路孔へ導く第3連通孔を有し、前記第3連通孔の入口が前記中心孔の内面で開口し、前記第3連通孔の出口が前記流路孔の孔壁面で開口していることを特徴とする燃料噴射装置。
【請求項12】
請求項5に記載の燃料噴射装置において、
前記エア流路は、前記複数のガイドのうちの隣設する2つのガイド間に区画形成されて、前記上流側流路と前記下流側流路とを連通する中継流路を具備していることを特徴とする燃料噴射装置。
【請求項13】
請求項12に記載の燃料噴射装置において、
前記連通路は、前記中心孔から供給された液体燃料を前記中継流路へ導く第3連通孔を有し、前記第3連通孔の入口が前記中心孔の内面で開口し、前記第3連通孔の出口が前記中継流路の流路壁面で開口していることを特徴とする燃料噴射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−102696(P2012−102696A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−253624(P2010−253624)
【出願日】平成22年11月12日(2010.11.12)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】