説明

燃料遮断弁

【課題】本発明は、簡単な構成で成形性に優れた燃料遮断弁を提供すること。
【解決手段】燃料遮断弁10は、ケーシング20と、50とを備えている。フロート機構50は、外側フロート部52と、内側フロート部62とから構成されている。外側フロート部52は、上部に形成された貫通孔54aを介して弁室30Sに接続されるフロート室52Sを有する円筒状の外側フロート本体53と、外側フロート本体53の上部に設けられ外側接続通路32aを開閉する外側弁部とを有する。内側フロート部62は、フロート室52Sに昇降可能に収納された内側フロート本体63と、内側フロート本体63の上部に設けられ貫通孔54aを通じて内側接続通路33aを開閉する内側弁部とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料タンクの上部に装着され、燃料タンク内の燃料液位に応じて上記燃料タンク内と外部通路とを連通遮断する燃料遮断弁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の燃料遮断弁として、複数のフロートを異なった燃料液位で昇降させることにより、給油の停止や、車両の傾斜時に燃料が外部へ流出するのを規制する構成が知られている(特許文献1,2)。これらの燃料遮断弁は、仕切壁で区画されかつ並んで配置した複数の弁室を有するケーシングと、弁室のそれぞれに収納されたフロートとを備え、フロートをそれぞれの弁室に入り込んだ燃料の液位に応じて昇降させる構成である。
【0003】
しかし、従来の燃料遮断弁では、仕切壁で区画された弁室にフロートを設置しているために、ケーシングが大きくなったり、複雑な形状となったり、非対称になったりして成形性も悪く生産性が劣るという問題があった。
【0004】
【特許文献1】特開2004−364491
【特許文献2】特開平11−229984
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記従来の技術の問題点を解決することを踏まえ、簡単な構成で成形性に優れた燃料遮断弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0007】
[適用例1]
適用例1は、 燃料タンクの上部に装着され、該燃料タンク内の燃料液位に応じて上記燃料タンク内と外部通路とを連通遮断する燃料遮断弁において、
上記燃料タンク内に連通する弁室と、該弁室と上記外部通路とをそれぞれ接続する外側接続通路および内側接続通路と、上記弁室内に燃料を導入する連通孔と、該連通孔より上方に配置された通気孔とを有するケーシングと、
上記弁室に収納され、燃料液位に応じて昇降することで、上記外側接続通路を閉じる外側フロート部および上記内側接続通路を開閉する内側フロート部を有するフロート機構と、
を備え、
上記外側フロート部は、上部に形成された貫通孔を介して上記弁室に接続されるフロート室を有する円筒状の外側フロート本体と、該外側フロート本体の上部に設けられ上記外側接続通路を開閉する外側弁部とを有し、
上記内側フロート部は、上記フロート室に昇降可能に収納された内側フロート本体と、該内側フロート本体の上部に設けられ上記貫通孔を通じて上記内側接続通路を開閉する内側弁部とを有すること、
を特徴とする。
【0008】
適用例1において、燃料遮断弁を用いた燃料タンクに燃料が供給され、第1液位に達すると、燃料が弁室内に流入して、外側フロート部または内側フロート部のいずれか一方が上昇して、いずれかのフロート部に対応する外側接続通路または内側接続通路を閉じる。この閉弁状態では、弁室と外部通路との通路面積が減少してタンク内圧が上昇する。タンク内圧の上昇によりインレットパイプ内の液面が上昇して、給油ガンの給油を停止するオートストップを働かせる。さらに、燃料液位が第2液位に達すると、外側フロート部または内側フロート部の他方が上昇して、該上昇したフロート部に対応した外側接続通路または内側接続通路のいずれかを閉じる。これにより、燃料タンク内が外部通路に対して密閉され、外部への燃料の流出を防止することができる。
【0009】
適用例1によれば、内側フロート部が外側フロート部のフロート室に収納されて、該外側フロート部のスペースを有効に利用しているから、小型に構成することができる。しかも、ケーシングは、大きい方の外側フロート部を収納する弁室を形成すればよく、複数のフロートに対応した弁室を形成する必要がないので、その構成が簡単になる。また、外側フロート部を円柱形状にした場合には、ケーシングも単一の円筒形状にでき、従来の技術で説明したような、複数の弁室で複数の円筒を組み合わせた複雑な形状とする必要がなく、金型加工、成形性、部品の設計が容易になる。
【0010】
また、外側フロート本体は、その上部に貫通孔を備え、貫通孔を通じて、内側フロート部の内側弁部が内側接続通路を開閉するように内側フロート部が昇降するから、両フロート部を同軸上に配置した簡単な構成とすることができる。
【0011】
[適用例2]
適用例2において、上記外側接続通路は、上記内側接続通路より通路面積が大きく、上記外側フロート部は、上記燃料タンク内の燃料液位が第1液位に達したときに上記外側接続通路を閉じ、上記内側フロート部は、燃料タンク内の燃料液位が上記第1液位より高い第2液位に達したときに上記内側接続通路を閉じるように構成したものである。この構成により、外側フロート部が給油時におけるオートストップを動作させ、また、内側フロート部が車両の傾斜時などの外部への燃料の流出を防止するように動作させることができる。
【0012】
また、外側接続通路および内側接続通路は、ケーシングを有底のカップ形状に形成した場合には、その天井壁部にそれぞれ形成することができる。この構成により、従来の技術で説明したような複数に区画された複数の弁室に対応した接続通路をそれぞれ設ける必要がない。こうした接続通路の好適な構成として、内側接続通路を軸心に配置した円形状に、外側接続通路を、上記内側接続通路を囲むように所定幅の円弧状とすることができる。
【0013】
[適用例3]
適用例3は、上記ケーシングは、円筒状のケーシング本体と、該ケーシング本体の下部の開口の一部を閉じる底部材とを備え、上記底部材は、上記外側フロート本体と内側フロート本体との間に介在しているガイド部を備えている構成である。この構成により、ガイド部が外側フロート部および内側フロート部の昇降方向をガイドすることにより、それらの傾きを低減することができる。
【0014】
[適用例4]
適用例4は、上記外側フロート部が上記外側接続通路を閉じかつ上記内側フロート部が上記内側接続通路を開いているときに、上記外側フロート本体は、該外側フロート本体の外側のスペースと上記フロート室とを連通する通気孔を備えている構成をとることができる。この構成により、低い燃料液位で閉じられたフロート部が接続通路を閉じた状態にて、狭い通路面積に絞る構成を容易に実現することができる。
【0015】
他の適用例として、上記外側接続通路は、上記内側接続通路より通路面積が小さく、上記内側フロート部は、燃料タンク内の燃料液位が第1液位に達したときに上記内側接続通路を閉じ、上記外側フロート部は、燃料タンク内の燃料液位が上記第1液位より高い第2液位に達したときに上記外側接続通路を閉じるように構成することができる。この構成により、内側フロート部が給油時におけるオートストップを動作させ、また、外側フロート部が車両の傾斜時などの外部への燃料の流出を防止するように動作させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
A.第1実施例
(1) 燃料遮断弁10の概略構成
図1は本発明の第1実施例にかかる自動車の燃料タンクFTの上部に取り付けられる燃料遮断弁10を示す断面図である。図1において、燃料遮断弁10は、金属から形成された燃料タンクFT内にブラケットBKなどを介して燃料タンクFT内に取り付けられた、いわゆるインタンク式のタイプであり、給油時に燃料液位が第1液位FL1に達したときに燃料がキャニスタへ流出するのを規制するとともにオートストップを機能させる満タン規制弁として作用するとともに、車両の傾斜時などに燃料液位が第2液位FL2に達したときに燃料の流出を防止するロールオーバー弁として作用するものである。燃料遮断弁10は、ケーシング20と、フロート機構50と、スプリング70,72とを主要な構成として備えている。以下、燃料遮断弁10の各部の構成について説明する。
【0017】
(2) 燃料遮断弁10の各部の構成
(2)−1 ケーシング20
図2は燃料遮断弁10を分解した断面図、図3は燃料遮断弁10を分解するとともに各構成部品を一部破断した斜視図である。ケーシング20は、ケーシング本体30と、底部材35と、蓋体40とを備え、ケーシング本体30と底部材35とにより囲まれたスペースが弁室30Sになっており、この弁室30Sにスプリング70,72に支持されたフロート機構50が収納されている。
【0018】
ケーシング本体30は、天井壁部31と側壁部34とにより囲まれたカップ形状であり、下部を開口30aとしている。天井壁部31の周辺部には、下方に向けて突設された外側通路形成突部32が形成されている。外側通路形成突部32は、所定の幅の円弧形状であり、2カ所形成されている。外側通路形成突部32には、弁室30Sに接続する外側接続通路32aが外側通路形成突部32の外周をやや小さい相似形とした形状にそれぞれ貫通形成されている。このように外側通路形成突部32は、外側接続通路32aの全周縁部を囲むように突設されることで、外側接続通路32aの弁室30S側を外側シール部32bとしている。また、天井壁部31の中央部には、下方に向けて円筒状に突設された内側通路形成突部33が形成されている。内側通路形成突部33には、弁室30Sに接続する内側接続通路33aが貫通形成されている。内側接続通路33aの弁室30S側は、内側シール部33bになっている。
側壁部34には、弁室30Sを燃料タンクFT内に接続するための通気孔34aが形成されている。通気孔34aは、第1液位FL1(図1)より上方に配置された透孔であり、周方向に4箇所、90゜の間隔で配置されている。また、側壁部34の下部には、底部材35を装着するための係合凹所34bが形成されている。
【0019】
底部材35は、ケーシング本体30の開口30aの一部を閉じるとともに、弁室30S内のフロート機構50を昇降可能に支持する部材である。底部材35は、ケーシング本体30の下部に装着される外側底板36と、外側底板36から上方に形成されたガイド部37と、ガイド部37の途中に形成された内側底板38とを備えている。外側底板36には、ケーシング本体30の係合凹所34bに係合する係合爪36aが形成されており、係合爪36aが係合凹所34bに係合することで、底部材35をケーシング本体30に組み付けている。外側底板36の上面には、スプリング70の下端を支持するスプリング支持部36cが形成されている。また、外側底板36には、連通孔36bが貫通形成されている。連通孔36bは、外側底板36の中心から所定距離離れた位置に複数形成されている。
ガイド部37は、外側底板36から上方へ弁室30S内に円筒形状に突設されることで、弁室30Sを図1に示すように外弁室30Saと内弁室30Sbとに分けている。外弁室30Saおよび内弁室30Sbは、上部開口37bおよびガイド部37に形成された連通孔37aを通じて連通している。
内側底板38には、円板形状であり、その上面に、スプリング72の下端を支持するスプリング支持部38aが形成されている。また、内側底板38には、連通孔38bが形成されている。連通孔38bは、スプリング支持部38aを囲むように複数形成されている。
【0020】
蓋体40は、蓋本体41と、蓋本体41の中央から側方へ突出した管体部42と、蓋本体41の外周に形成されたフランジ43とを備え、これらを一体に形成している。管体部42には、管通路42aが形成されており、この管通路42aの一端は、外側接続通路32aおよび内側接続通路33aを通じて弁室30Sに接続され、他端はキャニスタ(図示省略)側に接続される。フランジ43の下部には、ケーシング本体30の上端を溶着する溶着部43aが形成されている。
【0021】
(2)−2 フロート機構50
フロート機構50は、外側フロート部52と、外側フロート部52の内側に配置された内側フロート部62とを備えている。外側フロート部52は、外側フロート本体53と、外側フロート本体53の上部に装着した外側シート部材56(外側弁部)を備えている。外側フロート本体53は、上壁54および円筒状の側壁55からカップ形状に形成されており、その内側スペースが下方に開放したフロート室52Sになっている。上壁54の中央部には、貫通孔54aが形成され、また、その外周部には、フロート室52Sと弁室30Sとを連通する通気孔54bが形成されている。側壁55の外周部には、ガイド突条55aが上下方向にリブ状に形成されている。ガイド突条55aは、ケーシング本体30の内壁に摺動可能になっている。
【0022】
外側シート部材56は、貫通孔54aの周縁部に取り付けられる取付部56aと、取付部56aの上部に円板状に形成され外側シール部32bに着離するシート部56bとを備え、ゴム材料により一体成形されている。外側シート部材56は、取付部56aが貫通孔54aに嵌合することにより、外側フロート本体53に組み付けられており、シート部56bが外側シール部32bに着座したときに弾性変形してシール性を高めている。
【0023】
内側フロート部62は、内側フロート本体63と、内側フロート本体63の上部に装着した内側シート部材66(内側弁部)とを備えている。内側フロート本体63は、上壁64および円筒状の側壁65からカップ形状に形成されており、その内側スペースが下方に開放したフロート室62Sになっている。上壁64の中央部には、内側シート部材66を取り付けるための弁取付穴64aが形成されている。
【0024】
内側シート部材66は、弁取付穴64aに取り付けられる棒状の取付部66aと、取付部66aの上部から円板状に形成され内側シール部33bに着離するシート部66bとを備え、ゴム材料により一体成形されている。内側シート部材66は、取付部66aが弁取付穴64aに挿入嵌合することにより、内側フロート本体63に組み付けられており、シート部66bが内側シール部33bに着座したときに弾性変形してシール性を高めている。
【0025】
(3) 燃料遮断弁10の動作
(3)−1 給油時の動作
図1に示すように、給油により燃料タンクFT内に燃料が供給されると、燃料タンクFT内の燃料液位の上昇につれて燃料タンクFT内の上部に溜まっていた燃料蒸気は、通気孔34aなど、弁室30S、外側接続通路32aおよび内側接続通路33a、管通路42aを通じて、キャニスタ側へ逃がされる。そして、図4に示すように、燃料タンクFT内の燃料液位がケーシング20の下端を越えると、燃料が連通孔36bを通じて弁室30Sのうち外弁室30Sa内に流入し、さらに第1液位FL1を越えると、外側フロート部52の浮力およびスプリング70の荷重による上方への力と、外側フロート部52の自重による下方への力との釣り合いによって、前者が後者を上回ると外側フロート部52が上昇して、外側シート部材56が外側シール部32bに着座して外側接続通路32aを閉じる。このとき、燃料タンクFTが外部に接続されている通路は、通気孔34a、通気孔54b、弁室30S、フロート室52S、内側接続通路33aだけであり、しかも内側接続通路33aの通路面積が小さいから、タンク内圧が上昇して、インレットパイプ内に燃料が溜まる。そして、給油ガンに燃料が触れると、オートストップを働かせ、追加給油を防止する。これにより、燃料タンクへの給油の際等に、燃料タンクから燃料蒸気を逃がすとともに燃料が燃料タンク外へ流出するのを防止することができる。
【0026】
一方、燃料タンクFT内の燃料が消費されて、燃料液位が低下すると、弁室30S内の燃料液位が低下して、外側フロート部52は、その浮力を減少して下降する。そして、外側フロート部52の下降により、外側シート部材56が外側シール部32bから離れて、外側接続通路32aが開かれる。
【0027】
(3)−2 車両の傾斜時などの動作
図5に示すように、車両の傾斜などにより、燃料タンクFTへの燃料液位が第2液位FL2に達すると、弁室30S内の燃料により、上述したように外側フロート部52を浮上させ、さらに、内側フロート部62を浮上させる。内側フロート部62の浮上により、内側シート部材66が内側接続通路33aを密閉することにより、燃料タンクFTから外部への燃料の流出を防止する。
【0028】
(4) 実施例の作用・効果
上記実施例の構成により、以下の作用・効果を奏する。
(4)−1 内側フロート部62が外側フロート部52のフロート室52Sに収納されて、該外側フロート部52のスペースを有効に利用しているから、小型に構成することができる。
【0029】
(4)−2 ケーシング20は、大きい方の外側フロート部52を収納する弁室30Sを形成すればよく、複数のフロートに対応した弁室を形成する必要がないので、その構成が簡単になる。
【0030】
(4)−3 外側フロート部52が円柱形状であり、ケーシング20も単一の円筒形状であるから、複数の弁室で複数の円筒を組み合わせた複雑な形状とする必要がなく、金型加工、成形性、部品の設計が容易になる。
【0031】
(4)−4 外側フロート本体53は、その上部に貫通孔54aを備え、貫通孔54aを通じて、内側フロート部62の内側弁部が内側接続通路33aを開閉するように内側フロート部62が昇降するから、両フロート部を同軸上に配置した簡単な構成とすることができる。
【0032】
(4)−5 外側接続通路32aおよび内側接続通路33aは、ケーシング20を有底のカップ形状であり、その天井壁部31にそれぞれ形成しているから、複数に区画された複数の弁室に対応した接続通路をそれぞれ設ける必要がない。
【0033】
(4)−6 底部材35のガイド部37は、外側フロート部52および内側フロート部62の昇降方向をガイドすることにより、それらの傾きを低減することができる。
【0034】
(4)−7 外側フロート部52に形成した通気孔54bは、外側フロート部52が外側接続通路32aを閉じかつ内側フロート部62が上記内側接続通路33aを開いているときに、外側フロート本体53の外側のスペースと上記フロート室52Sとを連通するから、狭い通路面積に絞る構成を容易に実現することができる。
【0035】
B.第2実施例
図6は第2実施例にかかる燃料遮断弁10Bを示す断面図である。本実施例は、弁室30BSと燃料タンクFTの圧力差に応じて、弁室30BSに燃料を導入して、フロート機構50Bを作動させる構成に特徴を有する。すなわち、ケーシング本体30Bの側壁部34Bには、通気孔34Baの下方に連通孔34Bcが形成されている。また、通気孔34Baは、第1実施例の通気孔34aと比べて通路面積が小さく形成されている。本実施例の構成により、燃料液位が連通孔34Bcの上端に達して連通孔34Bcを塞ぐと、タンク内圧と弁室30BSとの圧力差により、連通孔36Bbを通じて弁室30BSの外弁室30BSaに燃料が吸い込まれ、外側フロート部52Bが上昇して外側接続通路32Baを閉じる。これにより、タンク内圧が上昇してオートストップが作動する。そして、通気孔34Baから気体が導入されて弁室30BS内の燃料液位の低下により、外側フロート部52Bが一旦下降する。そして、追加給油により、燃料液位が徐々に上昇しつつ外弁室30BSaに燃料が入って、燃料液位が第3液位FL3に達すると、外側フロート部52Bが外側接続通路32Baを閉じ、それ以上の給油を停止する。このように本実施例では、第1液位FL1を越えてから、追加給油を許容している。
【0036】
C.第3実施例
図7は第3実施例にかかる燃料遮断弁10Cを示す断面図である。本実施例は、フロート機構50Cを構成する外側フロート部52Cの閉弁動作により、外部への液漏れを低減した構成に特徴を有する。すなわち、ケーシング本体30Cの側壁部34Cに形成された通気孔34Caは、第1実施例の通気孔34aより通路面積が狭く、しかも、図8に示すように、外側フロート部52Cの上昇位置にて外側フロート部52Cの上部が通気孔34Caに対向するように形成されている。この構成により、外側フロート部52Cが上昇して外側接続通路32Caを閉じると、通気孔34Caの通路面積が狭くなり、燃料タンクFTから外部への液漏れを低減する。
【0037】
D.第4実施例
図9は第4実施例にかかる燃料遮断弁10Dを示す断面図である。本実施例は、外側フロート部52Dと内側フロート部62Dとの昇降する燃料液位を逆にした構成に特徴を有する。すなわち、燃料遮断弁10Dは、ケーシング20Dと、フロート機構50Dとを備えている。ケーシング20Dの底部材35は、外側底板36Dと、外側底板36Dの下方まで延設された円筒状のガイド部37Dと、ガイド部37Dの下部に形成された内側底板38Dとを備えている。ガイド部37Dは、内弁室30DSbを外弁室30DSaより下方まで配置して、低い燃料液位で燃料を内弁室30DSb内に導入するように形成されている。また、天井壁部31Dに形成された内側接続通路33Daは、外側接続通路32Daより大きい通路面積を有している。この構成により、内側フロート部62Dが第1液位FL1にて浮上し、外側フロート部52Dが第1液位FL1より高い第2液位FL2で浮上して、外側接続通路32Daおよび内側接続通路33Daをそれぞれ閉じる。このように、フロート機構50Dを構成する外側フロート部52Dと内側フロート部62Dの昇降する順序が逆にしても同様な作用効果を奏する。
【0038】
E.他の実施例または変形例
この発明は上記実施例に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0039】
(1) 図10は図1の変形例にかかる燃料遮断弁10Eの要部を示す断面図である。本実施例は、タンク内圧を調節する圧力調整弁を備えたことを特徴とする。圧力調整弁80Eは、天井壁部31Eの中央部に形成された弁収納部82Eと、ボール弁86Eと、スプリング87Eを備えている。弁収納部82Eは、内側接続通路33Eaを形成する下壁82Eaと、円筒状の側壁82Ebと、押さえ部材82Ecとにより収納室82ESを形成している。押さえ部材82Ecには、収納室82ESを管通路42Eaに接続する切欠き82Edが形成されている。上記圧力調整弁80Eの構成において、スプリング87Eの付勢力を受けているボール弁86Eに、内側接続通路33Eaからその付勢力を上回る圧力が加わると、ボール弁86Eが内側接続通路33Eaを開いて、タンク内圧を所定値以下に維持する。なお、圧力調整弁は、上述した他の実施例にも適用することができ、また、本実施例では、ボール弁を用いたが、これに限らず、ポペット弁やスプール弁のいずれかの構成であってもよい。
【0040】
(2) 図11は図1の他の変形例にかかる燃料遮断弁10Fの要部を示す断面図である。本実施例は、内側接続通路33Faの内側シール部33Fbを天井壁部31Fより上方に配置した構成に特徴を有する。すなわち、天井壁部31Fには、内側通路形成突部33Fが上方に向けて円筒状に突設されている。内側通路形成突部33Fの上壁には、内側接続通路33Faが貫通形成されている。一方、内側フロート部62Fは、内側フロート本体63Fの上部中央に、先端部が円錐形状とした内側弁部66Fが突設されている。本実施例の構成において、内側フロート部62Fの上昇により内側弁部66Fが内側シール部33Fbに着座すると、内側接続通路33Faを閉じる。本実施例では、内側シール部33Fbが天井壁部31Fより上方に設置されているので、内側接続通路33Faを通じて外部へ燃料の漏れを低減している。また、本実施例の内側フロート部62Fによると、内側弁部66Fが内側フロート本体63Fと一体に形成されているので、ゴム材料から形成された弁体を用いる必要がなく、部品点数を減らすことができる。
【0041】
(3) 上記実施例では、外側フロート部と内側フロート部との間に底部材の仕切部を介在させたが、これに限らず、内側フロート部を外側フロート部のフロート室の壁面でガイドする構成としてもよい。
【0042】
(4) 上記実施例では、燃料遮断弁を燃料タンク内に取り付けるインタンク式について説明したが、これに限らず、燃料遮断弁を燃料タンクのタンク上壁に装着しかつタンク上壁に設けた取付穴に燃料遮断弁の下部を挿入するタイプにも適用することができる。また、燃料タンクは、鉄製の燃料タンクにブラケットを介して取り付ける燃料遮断弁について説明したが、これに限らず、ポリエチレンを含む複合材料により形成した各種の燃料タンクに適用することができる。この構成によれば、ケーシングを燃料タンクに熱溶着することによりブラケットを用いることなく、燃料タンクに装着することができるから、部品点数を減らすことができる。
【0043】
(5) 上記実施例において、外側通路形成突部32は、円弧状の外側接続通路32aの全周縁部を囲む外側シール部32bとするように形成したが、これに限らず、外側接続通路32aの内側縁および外側縁に沿いかつ同心円の環状突起で形成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の第1実施例にかかる自動車の燃料タンクの上部に取り付けられる燃料遮断弁を示す断面図である。
【図2】燃料遮断弁を分解した断面図である。
【図3】燃料遮断弁を分解するとともに各構成部品を一部破断した斜視図である。
【図4】燃料遮断弁の動作を説明する説明図である。
【図5】図4に続く動作を説明する説明図である。
【図6】第2実施例にかかる燃料遮断弁を示す断面図である。
【図7】第3実施例にかかる燃料遮断弁を示す断面図である。
【図8】図7に続く動作を説明する説明図である。
【図9】第4実施例にかかる燃料遮断弁を示す断面図である。
【図10】図1の変形例にかかる燃料遮断弁の要部を示す断面図である。
【図11】図1の他の変形例にかかる燃料遮断弁の要部を示す断面図である。
【符号の説明】
【0045】
10…燃料遮断弁
10B…燃料遮断弁
10C…燃料遮断弁
10D…燃料遮断弁
10E…燃料遮断弁
10F…燃料遮断弁
20…ケーシング
20D…ケーシング
30…ケーシング本体
30B…ケーシング本体
30BS…弁室
30BSa…外弁室
30C…ケーシング本体
30DSa…外弁室
30DSb…内弁室
30S…弁室
30Sa…外弁室
30Sb…内弁室
30a…開口
31…天井壁部
31D…天井壁部
31E…天井壁部
31F…天井壁部
32…外側通路形成突部
32Ba…外側接続通路
32Ca…外側接続通路
32Da…外側接続通路
32Fa…外側接続通路
32a…外側接続通路
32b…外側シール部
33…内側通路形成突部
33Da…内側接続通路
33Ea…内側接続通路
33F…内側通路形成突部
33Fa…内側接続通路
33Fb…内側シール部
33a…内側接続通路
33b…内側シール部
34…側壁部
34B…側壁部
34Ba…通気孔
34Bc…連通孔
34C…側壁部
34Ca…通気孔
34a…通気孔
34b…係合凹所
35…底部材
36…外側底板
36Bb…連通孔
36D…外側底板
36a…係合爪
36b…連通孔
36c…スプリング支持部
37…ガイド部
37D…ガイド部
37a…連通孔
37b…上部開口
38…内側底板
38D…内側底板
38a…スプリング支持部
38b…連通孔
40…蓋体
41…蓋本体
42…管体部
42Ea…管通路
42a…管通路
43…フランジ
43a…溶着部
50…フロート機構
50B…フロート機構
50C…フロート機構
50D…フロート機構
52…外側フロート部
52B…外側フロート部
52C…外側フロート部
52D…外側フロート部
52S…フロート室
53…外側フロート本体
54…上壁
54a…貫通孔
54b…通気孔
55…側壁
55a…ガイド突条
56…外側シート部材
56a…取付部
56b…シート部
62…内側フロート部
62D…内側フロート部
62F…内側フロート部
62S…フロート室
63…内側フロート本体
63F…内側フロート本体
64…上壁
64a…弁取付穴
65…側壁
66…内側シート部材
66F…内側弁部
66a…取付部
66b…シート部
70,72…スプリング
80E…圧力調整弁
82E…弁収納部
82ES…収納室
82Ea…下壁
82Eb…側壁
82Ec…押さえ部材
82Ed…切欠き
86E…ボール弁
87E…スプリング
BK…ブラケット
FT…燃料タンク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料タンク(FT)の上部に装着され、該燃料タンク(FT)内の燃料液位に応じて上記燃料タンク(FT)内と外部通路とを連通遮断する燃料遮断弁において、
上記燃料タンク(FT)内に連通する弁室(30S)と、該弁室(30S)と上記外部通路とをそれぞれ接続する外側接続通路(32a)および内側接続通路(33a)と、上記弁室(30S)内に燃料を導入する連通孔(36b)と、該連通孔(36b)より上方に配置された通気孔(34a)とを有するケーシング(20)と、
上記弁室(30S)に収納され、燃料液位に応じて昇降することで、上記外側接続通路(32a)を閉じる外側フロート部(52)および上記内側接続通路(33a)を開閉する内側フロート部(62)を有するフロート機構(50)と、
を備え、
上記外側フロート部(52)は、上部に形成された貫通孔(54a)を介して上記弁室(30S)に接続されるフロート室(52S)を有する円筒状の外側フロート本体(53)と、該外側フロート本体(53)の上部に設けられ上記外側接続通路(32a)を開閉する外側弁部とを有し、
上記内側フロート部(62)は、上記フロート室(52S)に昇降可能に収納された内側フロート本体(63)と、該内側フロート本体(63)の上部に設けられ上記貫通孔(54a)を通じて上記内側接続通路(33a)を開閉する内側弁部とを有すること、
を特徴とする燃料遮断弁。
【請求項2】
請求項1に記載の燃料遮断弁において、
上記外側接続通路(32a)は、上記内側接続通路(33a)より通路面積が大きく、
上記外側フロート部(52)は、上記燃料タンク(FT)内の燃料液位が第1液位(FL1)に達したときに上記外側接続通路(32a)を閉じ、
上記内側フロート部(62)は、燃料タンク(FT)内の燃料液位が上記第1液位(FL1)より高い第2液位(FL2)に達したときに上記内側接続通路(33a)を閉じるように構成した燃料遮断弁。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の燃料遮断弁において、
上記外側接続通路(32a)は、上記内側接続通路(33a)を囲むように所定幅の円弧状に形成されている燃料遮断弁。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の燃料遮断弁において、
上記ケーシング(20)は、円筒状のケーシング本体(30)と、該ケーシング本体(30)の下部の開口(30a)の一部を閉じる底部材(35)とを備え、上記底部材(35)は、上記外側フロート本体(53)と内側フロート本体(63)との間に介在しているガイド部(37)を備えている燃料遮断弁。
【請求項5】
請求項4に記載の燃料遮断弁において、
上記底部材(35)は、上記内側フロート部(62)を外側フロート部(52)より高い位置に保持する内側底板(38)を備えている燃料遮断弁。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の燃料遮断弁において、
上記外側フロート部(52)が上記外側接続通路(32a)を閉じかつ上記内側フロート部(62)が上記内側接続通路(33a)を開いているときに、上記外側フロート本体(53)は、該外側フロート本体(53)の外側のスペースと上記フロート室(52S)とを連通する通気孔(54b)を備えている燃料遮断弁。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の燃料遮断弁において、
上記連通孔(34Bc)が上記燃料タンク(FT)の燃料で塞がれたときに、上記タンク内圧と上記弁室(30S)の圧力との圧力差により上記燃料を弁室(30S)に導入して上記外側フロート部(52)を上昇させるように上記通気孔(34a)の通路面積を形成した燃料遮断弁。
【請求項8】
請求項1ないし請求項7のいずれかに記載の燃料遮断弁において、
上記通気孔(34Ca)は、上記外側フロート部(52C)が上昇したときに、上記外側フロート部(52C)の上部に対向して通気抵抗が高くなるように構成されている燃料遮断弁。
【請求項9】
請求項1に記載の燃料遮断弁において、
上記外側接続通路(32Da)は、上記内側接続通路(33Da)より通路面積が小さく、
上記内側フロート部(62D)は、上記燃料タンク(FT)内の燃料液位が第1液位(FL1)に達したときに上記内側接続通路(33Da)を閉じ、
上記外側フロート部(52D)は、上記燃料タンク(FT)内の燃料液位が上記第1液位(FL1)より高い第2液位(FL2)に達したときに上記外側接続通路(32Da)を閉じるように構成した燃料遮断弁。
【請求項10】
請求項1ないし請求項9のいずれかに記載の燃料遮断弁において、
上記内側接続通路(33Ea)には、タンク内圧を調節する圧力調整弁が設けられている燃料遮断弁。
【請求項11】
請求項1ないし請求項10のいずれかに記載の燃料遮断弁において、
上記内側弁部(66F)は、上方に向けた円錐状であり、上記内側接続通路(33Fa)は、上記外側接続通路(32Fa)より上方に配置されている燃料遮断弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−202703(P2009−202703A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−46079(P2008−46079)
【出願日】平成20年2月27日(2008.2.27)
【出願人】(000241463)豊田合成株式会社 (3,467)
【Fターム(参考)】