説明

燃料電池と空調の協調冷却システム

【課題】燃料電池と空調の協調冷却システムにおいて、同種の機能を有する要素である複数の冷媒ポンプについても協調的な制御を行うことである。
【解決手段】燃料電池と空調の協調冷却システムにおいて、三方弁が連結状態にある(S10)ものとし、AC冷媒ポンプが駆動され(S12)、ついでFC冷媒ポンプが駆動される(S14)。ここまでは、2つのポンプの駆動の間に制限条件がなく、したがって、2つのポンプの吐出流量の合算量は、FC冷媒ポンプの回転数であるWP1回転数が0のときにはAC冷媒ポンプの一定吐出流量で、WP1回転数の上昇に応じて、その量が増加する。次に、WP1回転数が予め定めた閾値回転数N1以上か否かが判断される(S16)。WP1回転数がN1以上になると、AC冷媒ポンプの駆動が停止される(S18)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は燃料電池と空調の協調冷却システムに係り、特に、燃料電池冷却系と空調冷却系との間で冷媒を共通化して協調制御を行う燃料電池と空調の協調冷却システムに関する。
【背景技術】
【0002】
環境に与える影響が少ないことから、車両に燃料電池の搭載が行われている。燃料電池は、例えば燃料電池スタックのアノード側に水素等の燃料ガスを供給し、カソード側に酸素を含む酸化ガス、例えば空気を供給し、電解質膜を通しての反応によって必要な電力を取り出す。この反応のために燃料電池は発熱し、その冷却のために燃料電池スタック内に冷却水等の冷媒を流し、これをラジエータ等で冷却することが行われる。また燃料電池の起動時に低温であると、燃料電池を暖めるために、ヒータ等で冷媒を適当な温度に加熱することが行われる。このように、燃料電池スタックに冷媒を流し、その温度を調整することが行われる。
【0003】
また、燃料電池スタックのカソード側に供給される酸化ガスを適当な圧力とするためにエアーコンプレッサ(ACP)等のガス圧縮器が用いられる。このACPも作動に応じて発熱するので、インタクーラと呼ばれる熱交換器で冷却される。さらに、車両には、その車室内の空調のための熱交換器が設けられる。このように、車両には目的と対象の相違する様々な熱交換器が設けられているので、これらの相互利用は検討に値する。
【0004】
例えば、特許文献1には、燃料電池の冷却水を用いた車両用暖房装置において、この暖められた冷却水を利用するヒートコアと、燃焼式ヒータとを用い、冷却水温度によって、三方弁等を制御して冷却水ルートを変更することが開示されている。ここでは、冷却水温度が低いときは三方弁を閉じて、燃料電池の冷却水ルートと、燃焼式ヒータを含む冷却水ルートとを遮断し、それぞれを独立とする。一方、冷却水温度が高くなると、三方弁を開いて、燃料電池の冷却水の一部をヒートコアに供給し、これを車室内の暖房に利用する。
【0005】
【特許文献1】特開2002−127734号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のように、三方弁の開閉によって冷却水ルートを変更し、燃料電池によって暖められた冷却水の熱をヒートコアによって車室内の暖房に利用して、燃料電池冷却系と空調系との調和的な協調制御が行われる。この場合に、燃料電池冷却系と空調系とで、例えば、冷却水循環用ポンプ等のように、同種の機能を有する要素がそれぞれの冷却ルートに配置されることがある。これらの同種の機能を有する要素も、協調的な制御を行うことができれば、消費電力の低減、燃費の向上等を図ることができる。
【0007】
本発明の目的は、同種の機能を有する要素についても協調的な制御を行うことができる燃料電池と空調の協調冷却システムを提供することである。他の目的は、燃料電池系用の冷却水ポンプと空調系用の冷却水ポンプとの協調的な制御を行うことができる燃料電池と空調の協調冷却システムを提供することである。以下の手段は、これらの目的の少なくとも1つに貢献する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る燃料電池と空調の協調冷却システムは、燃料電池冷却系と空調冷却系との間で冷媒を共通化して協調制御を行う協調冷却システムであって、燃料電池本体であるFCスタックとFCラジエータとの間をFC冷媒ポンプによってFC側冷媒を循環させるFC循環流路と、空調用ヒートポンプであるACヒートポンプとAC側冷媒との間で熱交換を行うAC熱交換器と、AC熱交換器を配置するAC熱交換流路と、熱交換流路の両端を接続する接続流路と、AC冷媒ポンプとを有し、AC側冷媒を循環させるAC循環流路と、FC循環流路と、AC循環流路との間に設けられる制御弁であって、FC循環流路とAC循環流路とを遮断する遮断状態と、AC循環流路の接続流路の少なくとも一方端を開放しAC熱交換流路をFC循環流路に並列に連結してFC側冷媒とAC側冷媒とを共通化する連結状態との間を切り換える制御弁と、制御弁が連結状態となるときに、FC冷媒ポンプの駆動とAC冷媒ポンプの駆動を協調的に制御するポンプ協調制御部と、を備え、ポンプ協調制御部は、FC冷媒ポンプの駆動をAC冷媒ポンプの駆動より優先的に実行させると共に、双方の駆動によってAC冷媒流量が必要流量に達するときにAC冷媒ポンプの駆動を停止することを特徴とする。
【0009】
また、ポンプ協調制御部は、FC冷媒ポンプの回転数に応じ、AC冷媒ポンプを駆動状態から停止状態に切り換えることが好ましい。
【0010】
また、本発明に係る燃料電池と空調の協調冷却システムにおいて、AC冷媒ポンプは、一定回転数で冷媒を流すポンプであることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
上記構成により、燃料電池と空調の協調冷却システムは、制御弁が連結状態となるときに、FC冷媒ポンプの駆動をAC冷媒ポンプの駆動より優先的に実行させると共に、双方の駆動によってAC冷媒流量が必要流量に達するときにAC冷媒ポンプの駆動を停止する。これにより、燃料電池系用のFC冷媒ポンプと空調系用のAC冷媒ポンプとの協調的な制御を行うことができ、燃費の向上等を図ることができる。
【0012】
また、FC冷媒ポンプの回転数に応じ、AC冷媒ポンプを駆動状態から停止状態に切り換えるので、FC冷媒ポンプとAC冷媒ポンプとの協調的な制御を行うことができ、燃費の向上等を図ることができる。
【0013】
また、AC冷媒ポンプは、一定回転数で冷媒を流すポンプであるので、例えば、FC冷媒ポンプの回転数が低くて冷媒を流す能力が低いときは、AC冷媒ポンプとFC冷媒ポンプを併用し、FC冷媒ポンプの回転数が上昇し冷媒を流す能力が高くなり必要冷媒流量を流せるようになればAC冷媒ポンプの駆動を停止する等のように、FC冷媒ポンプとAC冷媒ポンプの特性にあわせて協調的なポンプ制御を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に図面を用いて本発明に係る実施の形態につき詳細に説明する。以下では、燃料電池と空調の協調冷却システムに用いられる共通化冷媒として、冷却水を用いるものとして説明するが、冷却水以外の流体冷媒であってもよい。また、燃料電池スタック側の冷却系にエアコンプレッサ(ACP)に関して協調的な冷却を行うものとしたが、ACPに関する協調的な冷却を含まない構成とすることもできる。また、空調側の冷却系に、共通化冷媒と空調用ヒートポンプとの間で熱交換するAC熱交換器と、ヒートコアとが配置されるものとして説明するが、これら以外の要素を空調側冷却系に含む構成とすることもできる。例えば、補助ヒータ等を空調側冷却系に含むものとしてもよい。
【実施例1】
【0015】
燃料電池と空調の協調冷却システムは、燃料電池の運転システムに適用される冷却システムであるので、最初に燃料電池の運転システムの構成を説明し、その後に、燃料電池と空調の協調冷却システムを述べる。
【0016】
図1は燃料電池と空調の協調冷却システムが適用される燃料電池運転システム10の構成図である。燃料電池運転システム10は、運転システム本体部20と、運転システム本体部20の各要素をシステム全体として制御する制御部70とを含んで構成されている。
【0017】
運転システム本体部20は、燃料電池セルが複数積層されて燃料電池スタック22と呼ばれる燃料電池本体及び、燃料電池スタック22のアノード側に配置される水素ガス供給のための各要素と、カソード側に配置される空気供給のための各要素を含んで構成される。
【0018】
燃料電池スタック22は、電解質膜の両側に触媒電極層を配置したMEA(Membrane Electrode Assembly)の両外側にセパレータを配置して挟持した単電池を複数個組み合わせて積層したものである。燃料電池スタック22は、アノード側に水素等の燃料ガスを供給し、カソード側に酸素を含む酸化ガス、例えば空気を供給し、電解質膜を通しての電池化学反応によって発電し、必要な電力を取り出す機能を有する。なお、発電された電力は、FC発電電力検出部68によって検出され、検出された発電電力のデータは、制御部70に伝送される。
【0019】
アノード側の水素ガス源24は、燃料ガスとしての水素を供給するタンクである。水素ガス源24に接続されるレギュレータ26は、水素ガス源24からのガスを適当な圧力と流量に調整する機能を有する。レギュレータ26の出力口に設けられる圧力計28は、供給水素圧力を検出する測定器である。レギュレータ26の出力口は燃料電池スタック22のアノード側入口に接続され、適当な圧力と流量に調整された燃料ガスが燃料電池スタック22に供給される。
【0020】
燃料電池スタック22のアノード側出口に接続される分流器32は、アノード側出口からの排出ガスの不純物ガス濃度が高まってきたときに、排気バルブ34を通して希釈器64に流すためのものである。このときの排気ガスは、窒素の他に反応生成物の水も含む水素ガスである。また、分流器32の後でさらにアノード側入口との間に設けられる循環昇圧器30は、アノード側出口から戻ってくるガスの水素分圧を高めて再びアノード側入口に戻し再利用する機能を有する水素ポンプである。
【0021】
カソード側の酸化ガス源40は、実際には大気を用いることができる。酸化ガス源40である大気はフィルタ42を通してからカソード側に供給される。フィルタ42の後に設けられる流量計44は、酸化ガス源40からの全供給流量を検出するフローメータである。また、フィルタ42の後に設けられる酸化ガス温度計46は、酸化ガス源40からのガスの温度を検出する機能を有する。
【0022】
エアコンプレッサ(ACP)48は、モータ50によって酸化ガスを容積圧縮してその圧力を高める気体昇圧機である。またACP48は、制御部70の制御の下で、その回転速度(毎分当りの回転数)を可変して、所定量の酸化ガスを提供する機能を有する。すなわち、酸化ガスの所要流量が大きいときは、モータ50の回転速度を上げ、逆に酸化ガスの所要流量が小さいときは、モータ50の回転速度を下げる。ACP消費電力検出部52は、ACP48の消費電力、具体的にはモータ50の消費電力を検出する機能を有する測定器である。モータ50は、回転速度を上げると消費電力が大きくなり、回転速度を下げると消費電力が小さくなるので、消費電力は、モータの回転速度、あるいは酸化ガス流量に密接に関連する。
【0023】
加湿器54は、酸化ガスを適度に湿らせ、燃料電池スタック22での燃料電池反応を効率よく行わせる機能を有するものである。加湿器54により適度に湿らせられた酸化ガスは、燃料電池スタック22のカソード側入口に供給され、カソード側出口から排気される。このときに、排気とともに反応生成物である水も排出される。燃料電池スタック22は反応により高温になるので、排出される水は水蒸気となっており、この水蒸気が加湿器54に供給され、酸化ガスを適度に湿らせる。このように、加湿器54は、酸化ガスに水蒸気の水分を適当に与える機能を有するもので、いわゆる中空糸を用いたガス交換器を用いることができる。
【0024】
ここで、上記の酸化ガス源40と、燃料電池スタック22のカソード側入口とを接続する流路のことを入口側流路と呼ぶことができる。これに対応して、燃料電池スタック22のカソード側出口から排気側へ接続される流路を出口側流路と呼ぶことができる。酸化ガスの経路である酸化ガス経路66は、酸化ガス源40から加湿器54を経由して入口側流路より燃料電池スタック22の内部に入り、出口側流路から加湿器54を経由して外気へと延びる。
【0025】
出口側流路のカソード側出口に設けられる圧力計56は、カソード側出口のガス圧を検出する機能を有する。また出口側流路に設けられる調圧弁60は、背圧弁とも呼ばれるが、カソード側出口のガス圧を調整し、燃料電池スタック22への酸化ガスの流量を調整する機能を有する弁で、例えばバタフライ弁のように流路の実効開口を調整できる弁を用いることができる。調圧弁60の出力口は、上記の加湿器54に接続されるので、調圧弁60を出たガスは加湿器54に水蒸気を供給した後、再び戻って、希釈器64に入り、その後外部に排出される。
【0026】
希釈器64は、アノード側の排気バルブ34からの水素混じりの排水、及び、カソード側の水蒸気混じりでさらにMEAを通して漏れてくる水素混じりの排気を集め、適当な水素濃度として外部に排出するためのバッファ容器である。
【0027】
制御部70は、運転システム本体部20の上記の各要素をシステム全体として制御するもので、いわゆる燃料電池CPUと呼ばれることがある。例えば、制御部70は、要求発電量と、FC発電電力検出部68から伝送される発電電力のデータとに基づいて、ACP48の回転数制御を行い、また、調圧弁60の制御を行う機能を有する。なお、制御部70は、後述の協調冷却制御部150の機能を併せ持つことができる。これらの機能はソフトウェアで実現でき、具体的には、対応する燃料電池運転プログラム等を実行することで実現できる。これらの機能の一部をハードウェアで実現することもできる。
【0028】
このような燃料電池運転システム10において、燃料電池スタック22は燃料ガスと酸化ガスとの間の反応により発熱する。また、ACP48もその運転に伴い、モータ50等が発熱する。さらに、燃料電池スタック22のカソード側に供給される酸化ガスの温度は適当であることが好ましい。
【0029】
また、燃料電池運転システム10が車両に搭載されるときは、車室内の空調のために空調システムが設けられるが、例えば車室内が冷え切っているときなど、燃料電池スタック22の廃熱が利用できるならば、それを用いて車室内を短時間で適度な温度にすることが望まれる。一方、燃料電池スタック22の起動時において、低温の燃料電池スタック22を空調システムの要素を用いて暖機できれば、燃料電池スタック22の早期の稼動が可能になる。
【0030】
このように、燃料電池運転システム10を構成する要素と、空調システムを構成する要素との間で、その冷却等について協調的に制御を行うことで、燃料電池の運転と空調運転とを全体として効率的なものとすることができる。そのために燃料電池と空調の協調冷却システムが設けられる。
【0031】
なお、以下において、燃料電池スタックをラジエータで冷却する冷却流路を主冷却流路とし、主冷却流路に並列に冷媒を分流する冷却流路を分流冷却流路として説明する。主冷却流路と分流冷却流路を流れる冷媒は、水を主成分とするものである。そして、分流冷却流路に設けられる熱交換器として、ACP48の冷却用のものと、車室内空調に用いられるものとを説明する。
【0032】
ACP48の冷却用のものは、ラジエータを第1の熱交換器と考えて、第2熱交換器と呼ぶことにする。この場合の第2熱交換器は、従来ACP48を独立して冷却するためのインタクーラを、分流された冷媒で熱交換することにして、冷却システムとして統合を図った形態となっているが、もちろん、インタクーラを従来通り独立の冷却系のままとし、第2熱交換器を他の要素の冷却に用いるものとしてもよい。
【0033】
車室内空調に用いられるものは、分流された冷媒の熱をブロワからの送風との間で熱交換を行うものと、空調システムの冷媒ガスと分流冷却流路の冷媒との間で熱交換を行うものとを用いるが、これらを区別し、前者をヒートコア、後者をAC熱交換器と呼ぶことにする。なお、ACとは、Air Conditionerの頭文字を用いたもので、空調系を指す。
【0034】
また、空調システムは、冷媒ガスの圧縮と膨張のサイクルを行って冷暖房を行ういわゆるヒートポンプを用いる。例えば冷房を行うときは、コンプレッサによって冷媒ガスを圧縮し、高温化して室外熱交換器で送風と熱交換し、膨張弁で低温化して室内熱交換器で送風と熱交換して冷風を室内に送り込む。なお、暖房を行うときはその逆に、圧縮して高温化した冷媒ガスを室内熱交換器で送風と熱交換して温風を室内に送り込む。以下では、ヒートポンプを冷房に用い、室内熱交換器は送風と熱交換して冷風を車室内に送り込むものとする。そして、室外熱交換器と直列にAC熱交換器を配置し、高温化した冷媒ガスをAC熱交換器に流す構成をとる。このように、ヒートポンプ式の空調システムには、室内熱交換器と室外熱交換器とが用いられるが、これらは、主冷却流路または分流冷却流路に用いられる冷媒である冷却水と熱交換するものではない。AC熱交換器は、空調システムの冷媒ガスと、分流冷却流路に用いられる冷媒である冷却水と熱交換するもので、室内熱交換器、室外熱交換器とは別に設けられる。
【0035】
図2は、燃料電池と空調の協調冷却システム80の構成を示す図である。燃料電池と空調の協調冷却システム80は、協調冷却システム本体部82と、協調冷却制御部150とを含んで構成される。ここで、図2は、車両用燃料電池システムについて、協調冷却のための要素を抜き出して示したもので、図1で説明した燃料電池運転システム10と、この燃料電池と空調の協調冷却システムとは、あいまって、1つの車両用燃料電池システムを構成するものである。したがって、図2の協調冷却システム本体部82は、図1の運転システム本体部20と共に、車両用燃料電池システムにおけるシステム本体部を構成するものである。また、上記のように、協調冷却制御部150は、図1で説明した制御部70の一部として構成されることができる。
【0036】
図2に示されるように、協調冷却システム本体部82は、燃料電池運転システム10におけるカソード側の冷却システムと、空調システム130とを含んで構成される。もちろん、場合によっては、アノード側の冷却システムを含むものとしてもよい。なお、協調冷却システム本体部82を構成するものではないが、空調された空気が供給される対象として、車室内8が図2に示されている。
【0037】
図2において、燃料電池運転システム10の要素としては、燃料電池スタック22と、カソード側の要素として、ACP48、モータ50、加湿器54、酸化ガス経路66が示されている。酸化ガス経路66は細い線で示され、これに対して、冷媒の流れる流路が太い線で示してある。
【0038】
冷媒の流れる流路は、大別して、燃料電池スタック22とラジエータ100との間で冷媒を循環させる燃料電池側循環流路と、空調システム130に関連して空調のために冷媒を循環させる空調側循環流路とに分けることができる。ここで、両者を区別して、前者をFC循環流路、後者をAC循環流路と呼ぶことにする。FCは、Fuel Cellの頭文字をとったもので、燃料電池系を指す。協調冷却においては、燃料電池スタック22の運転状況、空調システム130の運転状況等に応じ、FC循環流路とAC循環流路との間を遮断し、あるいは両者を連結することが行われる。両者を遮断するときは、冷媒はそれぞれの循環流路を相互に独立して流れることになる。したがって、FC循環流路とAC循環流路を流れる冷媒は物質的には同じものであるが、温度、流量、流速等が異なることがあるので、両者を区別し、FC循環流路を流れる冷媒をFC側冷媒、AC循環流路を流れる冷媒をAC側冷媒と呼ぶことができる。
【0039】
別の見方をすると、協調冷却システム本体部82は、冷媒の流れる流路として、主冷却流路84が設けられ、さらに、この主冷却流路84に並列に配置され、同じ冷媒を分流する分流冷却流路86、90が設けられる。分流冷却流路86は、ACP48のためのものであり、分流冷却流路90は、空調のためのものである。ここで、主冷却流路84と、ACP48のための分流冷却流路86とは、FC循環流路を構成する。空調のための分流冷却流路90は、AC循環流路を構成する。
【0040】
冷媒としては、水を主体としたLLC(Long Life Coolant)等を用いることができる。以下では、空調システム130の冷媒ガスと区別するため、LLC等を用いる冷媒を、単に冷却水と呼ぶことにする。
【0041】
主冷却流路84には、ファン102を備えるラジエータ100と、加熱用のヒータ104と、ヒータ104に冷却水を適当に分流するための三方弁106と、FC側冷媒である冷却水を循環させるためのFC冷媒ポンプ(WP1)108が配置される。主冷却流路84を流れる冷却水は、ラジエータ100と燃料電池スタック22との間で循環し、温度が上昇した燃料電池スタック22の熱を冷却水によって運び出し、ラジエータ100で冷却し、再び燃料電池スタック22に戻す機能を有する。
【0042】
FC冷媒ポンプ108としては、冷却水を流すのに適した流体ポンプを用いることができる。たとえば、回転数に応じて吐出流量が増加する流体ポンプを用いて、回転数制御によって、FC循環流路を流れる冷却水の流量、または流速を変更するものとすることができる。これによって、燃料電池スタック22の運転状況に合わせ、FC冷却水の流速を変更し、燃料電池スタック22とラジエータ100との間の冷却水循環の頻度を変更することができる。このようにして、FC冷媒ポンプ108の回転数制御により、FC冷却水の温度を燃料電池スタック22の運転に適した温度に維持することができる。
【0043】
主冷却流路84の燃料電池スタック22の出口側には、FC側冷媒の温度である冷却水温度を検出するためのFC冷媒温度検出手段として、FC冷却水温度計112が設けられる。FC冷却水温度計112の検出データは、協調冷却制御部150に伝送される。
【0044】
なお、加湿器54は、上記のように燃料電池スタック22のカソード側に酸化ガスを供給するガス入口及びガス出口に対し並列に配置されるが、主冷却流路84の冷却水は加湿器54を通らない。すなわち、加湿器54は、主冷却流路84の冷却水によっては冷却されない。もっとも、加湿器54に冷却が必要な場合等において、主冷却流路84を加湿器54の中を通過させ、主冷却流路84の冷却水によって加湿器との間で熱交換を行うものとしてもよい。
【0045】
ACP48のための分流冷却流路86は、主冷却流路84に並列に配置される。そして、主冷却流路84の冷却水が燃料電池スタック22からラジエータ100に向かって戻される排出側流路から冷却水が取り入れられ、主冷却流路84の冷却水がラジエータ100から燃料電池スタック22に向かって流れる供給側流路に分流された冷却水が戻される。分流冷却流路86は、ACP48のモータ50側から第2熱交換器110に入り、そこで、ACP48から加湿器54及び燃料電池スタック22に供給される圧縮酸化ガスが流れる酸化ガス経路66に対しても熱交換を行い、その後主冷却流路84に戻される。したがって、第2熱交換器110は、酸化ガスの温度を調整する機能を有する。従来、この機能は、インタクーラと呼ばれる独立の冷却系で実行されているが、図2の構成では、この従来のインタクーラの機能を、ラジエータ100から燃料電池スタック22に至る冷却系と冷却水を共通化して統合する形態となっている。
【0046】
ここでFC冷媒ポンプ108は、主冷却流路84の供給側流路に設けられ、分流冷却流路86の冷却水戻し分流位置の下流側に設けられる。図2に即して述べれば、第2熱交換器110は、ラジエータ100の下流側であってFC冷媒ポンプ108の上流側から冷却水が取り入れられる。つまり、FC冷媒ポンプ108の上流側において冷却水が流れるものとして、ラジエータ100と第2熱交換器110があり、FC冷媒ポンプ108の下流側において冷却水が流れるものとして燃料電池スタック22がある。
【0047】
したがって、この構成で、仮に空調のための分流冷却流路90を分離するものとすれば、(ラジエータ100を流れる冷却水量)+(第2熱交換器110を流れる冷却水量)=冷却水総量=(燃料電池スタック22を流れる冷却水量)となるので、燃料電池スタック22にかなり多くの冷却水量を供給できる。これにより、燃料電池スタック22の温度が高すぎるときは迅速にその熱をラジエータ100側に運び出すことができる。また、(ラジエータ100を流れる冷却水量)と(第2熱交換器110を流れる冷却水量)との比率も、これらの流路抵抗の比率等で定めることができ、あるいは、分流比率を制御する制御弁を用いて、これらを流れる冷却水量を定め、ラジエータ100と、第2熱交換器110とを協調的に作動させることができる。
【0048】
また、分流冷却流路86が主冷却流路84と並列に設けられるので、第2熱交換器110から排出される冷却水の温度と、燃料電池スタック22から排出される冷却水の温度との差を少なくすることができる。前者は、加湿器54の酸化ガス入口側の酸化ガス温度を規定し、後者は、加湿器54の酸化ガス出口の温度を規定するので、これにより、加湿器54のガス入口両端の温度差を少なくすることができ、中空糸構造のものを用いる場合でも両端温度差による損傷を抑制することができる。
【0049】
図2の協調冷却システム本体部82においては、ACP48のための分流冷却流路86に加えてさらに、空調のための分流冷却流路90が設けられている。空調のための分流冷却流路90には、上記のようにAC循環流路を構成するものであるが、その経路の中に2つの熱交換器と、AC側冷媒を循環させるAC冷媒ポンプ(WP2)126とを含む。2つの熱交換器の1つは、ヒートコア120であり、他の1つはAC熱交換器124である。そして、AC循環流路である分流冷却流路90は、この2つの熱交換器が配置される流路と、その流路の両端を接続する流路とから構成される。前者をAC熱交換流路94とよび、後者を接続流路92と呼ぶことにする。
【0050】
AC冷媒ポンプ126は、AC冷却水を流すためのポンプであり、適当な流体ポンプを用いることができる。AC循環流路を流れる冷却水の流量は、FC循環流路を流れる冷却水の流量より少なくて済むことが一般的なので、AC冷媒ポンプ126は、FC冷媒ポンプ108に比較し、小型の流体ポンプを用いることができる。小型の流体ポンプは、回転数を固定として、吐出流量を変更できない型式が多いが、そのような一定流量型の流体ポンプでも十分に用いることができる。もちろん、場合によって、回転数可変で吐出流量を変更できる形式の流体ポンプを用いるものとしてもよい。
【0051】
AC熱交換流路94の両端はそれぞれ接続流路92に接続されるが、その2つの接続点と、FC循環流路との間は、それぞれ分岐流路85と、延長流路91とで接続される。そして、AC熱交換流路94と接続流路92と、FC循環流路からの分岐流路85の3つの流路が集まる接続点に、三方弁96が設けられる。なお、図2の例では、AC熱交換流路94と接続流路92と、FC循環流路への延長流路91の3つの流路が集まる接続点には三方弁が設けられていないが、場合によっては、ここにも三方弁を設けることができる。
三方弁96の作用については後述する。
【0052】
ヒートコア120は、AC側冷媒である冷却水を流す管路部材で、その外側をブロワ122からの送風を流すことで、AC側冷媒と送風との間で熱交換を行うものである。例えば、AC側冷媒が暖かいときは、ブロワ122からの送風を暖め、これを車室内8に供給することで、車室内の暖房をすることができる。このように、ヒートコア120は温水の熱を利用して空調を行うもので、いわば、温水ヒータである。
【0053】
AC熱交換器124は、空調システム130の冷媒ガスとAC側冷媒である冷却水との間で熱交換を行うものである。空調システム130は、上記のように、炭酸ガス等の冷媒ガスの圧縮と蒸発のサイクルを行うヒートポンプ式のもので、膨張して低温化した冷媒ガスを用いて室内熱交換器138において室内空気との熱交換が行われ冷風が車室内に送り込まれ、一方で圧縮され高温化された冷媒ガスの廃熱が室外熱交換器134によって室外に放出される。図2では、空調システム130の構成要素として、冷媒ガスの圧縮を行うコンプレッサ(CP)132、室外熱交換器134、冷媒ガスを膨張させる膨張弁(EV)136、室内熱交換器138、室外熱交換器134における廃熱を外気に放出するためのファン140が示されている。そして、冷房要求があるとき、冷媒ガスは、コンプレッサ132とAC熱交換器124と室外熱交換器134と膨張弁136と室内熱交換器138とを結ぶ循環経路の中を循環する。AC熱交換器124の内部には、この空調システム130のガス冷媒と、冷却水とが流れるので、ガス冷媒と冷却水との間で熱交換を行うことができる。例えば熱いガス冷媒の熱を冷却水に与え、冷却水を暖めることができる。
【0054】
空調システム130に加えて、ヒートコア120とAC熱交換器124とを利用する空調は次のように行うことができる。ユーザ等から冷房要求があるときは、コンプレッサ132を駆動する。そして圧縮された冷媒ガスを膨張弁136で膨張させて低温化し、室内熱交換器138においてブロワ122からの送風と熱交換し、送風の熱を奪って冷風とし、車室内8に送り込む。ユーザ等から暖房要求があるときは、燃料電池スタック22によって暖められ主冷却流路84から分流してきた温水をヒートコア120に流し、ブロワ122からの送風を暖めて温風とし、車室内に送り込む。このとき、AC熱交換器124でも熱い冷媒ガスと冷却水との間で熱交換が行われ、冷却水が暖められるので、より、効果的に温風とすることができる。ユーザ等からドライ送風の要求があるときは、コンプレッサ132の駆動による室内熱交換器138における冷風と、ヒートコア120からの温風とを断続的に車室内に送込む。このように、燃料電池スタック22の廃熱、空調システム130の廃熱を利用し、電力を用いるヒータを設けることなく、冷房、暖房、ドライ送風を行うことができる。
【0055】
なお、図2で示すように、ブロワ122は、ヒートコア120の送風用と、空調システム130の室内熱交換器138の送風用とを兼ねることができる。ヒートコア120の温風と、室内熱交換器138の冷風とが干渉することを避けるために、ブロワ122の送風の向きを変更する機構を設けることができる、送風の向きの変更機構は、例えば、ヒートコア120のみを経由して車室内に送風する場合、室内熱交換器138のみを経由して車室内に送風する場合、ヒートコア120と室内熱交換器138の双方を経由して車室内に送風する場合、の間で切換を行うものとすることができる。また、ヒートコア120を経由せずに送風する場合に、ヒートコア120を経由した送風を車室外に放出するようにすることもできる。このような送風の向きの変更機構は、例えば、送風流路を変更する弁、あるいは送風壁の移動機構等を用いることができる。
【0056】
また、空調システム130の室外熱交換器134のためのファン140は、FC循環流路のためのラジエータ100に用いられるファン102と兼用するものとすることができる。あるいは、ファン140とファン102とを同じ領域に並べ、共にラジエータ100と室外熱交換器134とを送風するものとすることができる。この配置をとるときは、燃料電池スタック22の運転状況、空調システム130の運転状況に応じて、送風量を加減することができる。例えば、ファン102、ファン140を共に駆動して、送風量を最大にし、またはいずれか一方を駆動して送風量を少なくして燃費を向上させ、また、車両が走行中で、走行風を利用することができる場合に、いずれのファンも駆動を停止するものとすることができる。
【0057】
三方弁96は、協調冷却制御部150の制御の下で、その接続の仕方が変更される制御弁である。上記のように、三方弁96は、AC熱交換流路94の一方端と、接続流路92の一方端と、主冷却流路84から分岐した分岐流路85と、3つの流路が集まる合流点に設けられる。三方弁96の接続の制御は、燃料電池スタック22の運転状況、空調システム130の運転状況等に基づき、次の2つの状態を切り換えることで行われる。
【0058】
1つは、FC循環流路の主冷却流路84と、AC循環流路である分流冷却流路90とを遮断する遮断状態である。もう1つは、AC循環流路の接続流路92を開放し、AC熱交換流路94をFC循環流路に並列に連結してFC側冷媒とAC側冷媒とを共通化する連結状態である。具体的には、三方弁96の流れる向きを、接続流路92とAC熱交換流路94とを接続し、分岐流路85とは接続しないようにするときが遮断状態である。また、AC熱交換流路94と分岐流路85とを接続し、接続流路92を接続しないようにするときが連結状態である。
【0059】
図3に遮断状態、図4に連結状態の様子を示す。遮断状態においては、燃料電池スタック22側の冷却水が循環するFC循環流路と、空調側の冷却水が循環するAC循環流路との間が完全に遮断され、FC循環流路とAC循環流路とが完全に分離される。FC循環流路には、燃料電池スタック22とラジエータ100との間をFC冷媒ポンプ108によって、FC側冷媒である冷却水が循環する。そして、ACP48のための分流冷却流路86が、主冷却流路84に並列に設けられる。AC循環流路は、三方弁96によって接続流路92とAC熱交換流路94とが接続され、ヒートコア120とAC熱交換器124とを通って、AC側冷媒である冷却水がAC冷媒ポンプ126によって循環する。
【0060】
図4に示されるように、連結状態においては、FC循環流路にAC循環流路が並列に連結される。すなわち、FC循環流路の主冷却流路84において、ラジエータ100の上流側であって、燃料電池スタック22の下流側、FC冷却水温度計112の下流側のところから分岐流路85が分岐し、三方弁96によって、AC熱交換流路94の一端側と分岐流路85とが接続され、接続流路92が分離される。AC熱交換流路94の他端側は、延びて、FC循環流路の主冷却流路84に接続する延長流路91となる。延長流路91は、FC循環流路の主冷却流路84において、ラジエータ100の下流側、FC冷媒ポンプ108の下流側であって、燃料電池スタック22の上流側に接続される。したがって、連結状態においては、FC循環流路から取り入れられた冷却水が、分岐流路85、AC熱交換流路94、延長流路91を通って、AC冷媒ポンプ126、ヒートコア120、AC熱交換器124を流れながら、再びFC循環流路に戻される。
【0061】
この連結状態における構成では、(ラジエータ100を流れる冷媒量)+(第2熱交換器110を流れる冷媒量)=冷媒総量=(燃料電池スタック22を流れる冷媒量)+(ヒートコア120、AC熱交換器124を流れる冷媒量)となるので、燃料電池スタック22に適当な冷媒量を供給しながら、空調のために冷媒を供給できる。
【0062】
すなわち、この構成により、燃料電池スタック22の運転によって暖められラジエータ100によって適当な温度に維持されて循環している冷媒である冷却水を空調のために供給できる。なお、燃料電池スタック22が十分暖まっていないときには、三方弁96を遮断状態にすることで、冷たい冷媒を空調側のAC循環流路に送り込まないようにできる。
【0063】
このように、燃料電池スタック22のためのFC循環流路と、車室空調のためのAC循環流路とについて冷媒を共通化し、燃料電池スタック22の温度と車室内温度とに応じて三方弁96の開閉を制御することで、燃料電池スタック22の冷却系と、車室空調系とを、協調的制御の下で統合することができる。
【0064】
再び図2に戻り、協調冷却制御部150は、協調冷却システム本体部82の上記の各要素をシステム全体として制御するものである。かかる協調冷却制御部150はコンピュータで構成でき、上記のように、図1で説明した制御部70の機能と共に、燃料電池CPUのような1つのコンピュータとして構成できる。
【0065】
協調冷却制御部150は、燃料電池スタック22の運転状況及び空調システム130の運転状況に応じて、燃料電池側の冷却水の循環と空調側の冷却水の循環とを、協調的に制御する機能を有する。特にここでは、協調冷却制御部150は、燃料電池スタック22の運転状況、空調システム130の運転状況に応じて、制御弁である三方弁96について、遮断状態と連結状態との間の切換制御を実行する遮断・連結切換モジュール152と、FC冷媒ポンプ108とAC冷媒ポンプ126の協調的な制御を行うポンプ協調制御モジュール154とを含んで構成される。これらの機能はソフトウェアで実現でき、具体的には、対応する燃料電池と空調の協調冷却プログラム等を実行することで実現できる。これらの機能の一部をハードウェアで実現することもできる。
【0066】
上記構成の燃料電池と空調の協調冷却システム80の作用につき、特に、ポンプ協調制御モジュール154の機能について、図5から図7を用いて説明する。なお、以下では、図1から図4における符号を用いて説明する。図5は、ポンプ協調制御を行わないときの各ポンプの動作を示す図、図6は、ポンプ協調制御の手順を示すフローチャート、図7は、ポンプ協調制御を行うときの各ポンプの動作特性を示す図である。
【0067】
図5は、縦軸に空調系におけるAC冷却水流量QACをとり、横軸にFC冷媒ポンプ(WP1)108の回転数であるWP1回転数をとって、FC冷媒ポンプ108とAC冷媒ポンプ126の吐出流量の関係を示す図である。ここでは、FC冷媒ポンプ108は回転数可変型で、回転数に比例して吐出流量が増加するものを用い、AC冷媒ポンプ126は回転数固定型で、一定吐出流量を有するものを用いるものとする。そこで、FC冷媒ポンプ108の吐出流量特性160は、WP1回転数に比例する流量となり、AC冷媒ポンプ126の吐出流量特性162は、WP1回転数に関らず一定流量となる。したがって、各ポンプの間で協調制御を行わないときは、2つのポンプの吐出流量の合算量164が、AC冷却水流量QACとなる。合算量164は、図5に示されるように、WP1回転数が0のときでも、AC冷媒ポンプ126の一定吐出流量を確保し、WP1回転数の上昇に応じて、その量が増加する。
【0068】
図6は、ポンプ協調制御の手順を示すフローチャートである。これらの手順は、燃料電池と空調の協調冷却プログラムにおけるポンプ協調制御の各処理手順に対応し、協調冷却制御部150のポンプ協調制御モジュール154によって実行される。ここでは、制御弁である三方弁96が連結状態にある(S10)ものとし、AC冷媒ポンプ126が駆動され(S12)、ついでFC冷媒ポンプ108が駆動される(S14)。ここまでは、2つのポンプの駆動の間に制限条件がなく、したがって、2つのポンプの吐出流量の合算量は、図5で説明したように、WP1回転数が0のときにはAC冷媒ポンプ126の一定吐出流量で、WP1回転数の上昇に応じて、その量が増加する。
【0069】
次に、WP1回転数が予め定めた閾値回転数N1以上か否かが判断される(S16)。N1未満の場合は、S16の監視が続行され、WP1回転数がN1以上になると、AC冷媒ポンプ(WP2)126の駆動が停止される(S18)。
【0070】
ここで、閾値回転数N1は、FC冷媒ポンプ18の吐出流量のみでAC循環流路のAC冷媒流量としての必要量Q0を満たすことができるWP1回転数に設定される。そのようにすることで、FC冷媒ポンプ108とAC冷媒ポンプ126の双方の駆動によってAC冷媒流量が必要量Q0に達するときに、AC冷媒ポンプ126の駆動を停止し、FC冷媒ポンプ108の駆動のみとすることが可能になる。
【0071】
その様子を図7に示す。図7の縦軸、横軸は図5で説明したものと同じである。ポンプの協調制御の下では、FC冷媒ポンプ108は駆動が継続されるので、その吐出流量特性160は、図5で説明したものと同じで、WP1回転数に比例して吐出流量が増加する。そして、その吐出流量が、AC冷媒ポンプ126の一定量の吐出流量と同じになるWP1回転数が閾値回転数N1とすることができる。すなわち、AC冷媒ポンプ126の一定吐出流量は、WP1が0のときでも、つまり、FC冷媒ポンプ108が駆動していないときでも、AC循環流路のAC冷媒流量としての必要量Q0を満たしているので、その必要量Q0を満たすWP1回転数を閾値回転数N1とできることになるからである。なお、AC冷媒ポンプ126の一定吐出流量が必要量Q0をと異なるときは、必要量Q0に対応するWP1回転数をN1とすることができる。
【0072】
そして、AC冷媒ポンプ126の吐出流量特性170は、FC冷媒ポンプ108のWP1回転数がN1に到達するまでは駆動が継続され、それ以後は、駆動が停止される。したがって、FC冷媒ポンプ108とAC冷媒ポンプ126による合算量172は、AC冷却水流量QACは、図7に示されるように、WP1回転数がN1のところで一旦、AC循環流路のAC冷媒流量としての必要量Q0に低減され、その後再び増加する。
【0073】
図5と比較して分かるように、ポンプ協調制御の下では、FC冷媒ポンプ108の駆動の実行が、AC冷媒ポンプ126の駆動の実行よりも優先される。そして、FC冷媒ポンプ108とAC冷媒ポンプ126の双方の駆動によってAC冷媒流量が必要量Q0に達するときに、AC冷媒ポンプ126の駆動が停止される。これによって、AC冷媒ポンプ126のむだな駆動を省略でき、消費電力を低減し、燃費を向上させることができる。
【実施例2】
【0074】
燃料電池と空調の協調冷却システムにおいては、冷媒循環用ポンプの他にも、同様な機能の要素が燃料電池側と空調側に配置されている。例えば、空調システム130の室外熱交換器134のためのファン140と、FC循環流路のためのラジエータ100に用いられるファン102と、同種の機能を有する。そこで、これらについても協調制御を行うことで、消費電力を低減し、燃費を向上させることができる。なお、以下では、図1から図4の符号を用いて説明する。
【0075】
すなわち、ファン140とファン102とを同じ領域に並べ、共にラジエータ100と室外熱交換器134とを送風するものとすることができる。この配置をとるときは、燃料電池スタック22の運転状況、空調システム130の運転状況に応じて、2つのファン140,102の間で協調的に制御を行うことができる。例えば、ファン102、ファン140を共に駆動して、送風量を最大にすることができる。また、燃料電池スタック22を運転しない場合のように、送風量が少なくて済む場合には、いずれか一方を駆動し、他方の駆動を停止する。これによって、むだなファンの駆動を省略でき、消費電力を低減し、燃費を向上させることができる。なお、車両が走行中で、その走行送風がラジエータ100等の冷却に十分であるときは、双方のファン102,140の駆動を停止することとすれば、さらにむだなファンの駆動を省略でき、消費電力を低減し、燃費を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明に係る実施の形態における燃料電池と空調の協調冷却システムが適用される燃料電池運転システムの構成図である。
【図2】本発明に係る実施の形態において、燃料電池と空調の協調冷却システムの構成を示す図である。
【図3】本発明に係る実施の形態において、三方弁が遮断状態のときの協調冷却システム本体部の様子を示す図である。
【図4】本発明に係る実施の形態において、三方弁が連結状態のときの協調冷却システム本体部の様子を示す図である。
【図5】本発明に係る実施の形態において、ポンプ協調制御を行わない場合の各ポンプの吐出流量特性等を説明する図である。
【図6】本発明に係る実施の形態において、ポンプ協調制御の手順を示すフローチャートである。
【図7】本発明に係る実施の形態において、ポンプ協調制御を行う場合の各ポンプの吐出流量特性等を説明する図である。
【符号の説明】
【0077】
8 車室内、10 燃料電池運転システム、20 運転システム本体部、22 燃料電池スタック、24 水素ガス源、26 レギュレータ、28 圧力計、30 循環昇圧器、32 分流器、34 排気バルブ、40 酸化ガス源、42 フィルタ、44 流量計、46 酸化ガス温度計、48 ACP、50 モータ、52 ACP消費電力検出部、54 加湿器、56 圧力計、60 調圧弁、64 希釈器、66 酸化ガス経路、68 FC発電電力検出部、70 制御部、80 協調冷却システム、82 協調冷却システム本体部、84 主冷却流路、85 分岐流路、86,90 分流冷却流路、91 延長流路、92 接続流路、94 AC熱交換流路、96,106 三方弁、100 ラジエータ、102,140 ファン、104 ヒータ、106 三方弁、108 FC冷媒ポンプ、110 第2熱交換器、112 FC冷却水温度計、120 ヒートコア、122 ブロワ、124 AC熱交換器、126 AC冷媒ポンプ、130 空調システム、132 コンプレッサ、134 室外熱交換器、136 膨張弁、138 室内熱交換器、150 協調冷却制御部、152 遮断・連結切換モジュール、154 ポンプ協調制御モジュール、160 FC冷媒ポンプの吐出流量特性、162,170 AC冷媒ポンプの吐出流量特性、164,172 合算量。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池冷却系と空調冷却系との間で冷媒を共通化して協調制御を行う協調冷却システムであって、
燃料電池本体であるFCスタックとFCラジエータとの間をFC冷媒ポンプによってFC側冷媒を循環させるFC循環流路と、
空調用ヒートポンプであるACヒートポンプとAC側冷媒との間で熱交換を行うAC熱交換器と、AC熱交換器を配置するAC熱交換流路と、熱交換流路の両端を接続する接続流路と、AC冷媒ポンプとを有し、AC側冷媒を循環させるAC循環流路と、
FC循環流路と、AC循環流路との間に設けられる制御弁であって、FC循環流路とAC循環流路とを遮断する遮断状態と、AC循環流路の接続流路の少なくとも一方端を開放しAC熱交換流路をFC循環流路に並列に連結してFC側冷媒とAC側冷媒とを共通化する連結状態との間を切り換える制御弁と、
制御弁が連結状態となるときに、FC冷媒ポンプの駆動とAC冷媒ポンプの駆動を協調的に制御するポンプ協調制御部と、
を備え、
ポンプ協調制御部は、FC冷媒ポンプの駆動をAC冷媒ポンプの駆動より優先的に実行させると共に、双方の駆動によってAC冷媒流量が必要流量に達するときにAC冷媒ポンプの駆動を停止することを特徴とする燃料電池と空調の協調制御システム。
【請求項2】
請求項1に記載の燃料電池と空調の協調制御システムにおいて、
ポンプ協調制御部は、FC冷媒ポンプの回転数に応じ、AC冷媒ポンプを駆動状態から停止状態に切り換えることを特徴とする燃料電池と空調の協調制御システム。
【請求項3】
請求項1に記載の燃料電池と空調の協調制御システムにおいて、
AC冷媒ポンプは、一定回転数で冷媒を流すポンプであることを特徴とする燃料電池と空調の協調制御システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−126911(P2008−126911A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−316490(P2006−316490)
【出願日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】