説明

燃料電池の局所電流測定装置、燃料電池診断装置

【課題】簡素な構成で、かつ、高い精度で燃料電池の局所電流を測定可能な局所電流測定装置、および簡素な構成で、かつ、高い精度で燃料電池の作動状態を診断可能な燃料電池診断装置を提供する。
【解決手段】セル21の積層方向から見たときに、一部が燃料電池20の外部に露出するとともに、残余の部位がセル21の内部で燃料ガス側出口部近傍を含む領域(局所)を囲むように配置された水素側磁性材コア51、並びに、残余の部位がセル21の内部で酸化剤ガス側出口部近傍を含む領域(局所)を囲むように配置された空気側磁性材コア52を配置する。さらに、水素側磁性材コア51および空気側磁性材コア52のうち燃料電池20の外部に露出した部位で、各磁性材コア51、52に形成される磁界の強度を検出する磁気センサ54a、54bにより、各磁性材コア51、52に囲まれた領域を流れる局所電流を検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気エネルギを出力するセルを複数枚積層した燃料電池の局所を流れる電流を測定する局所電流測定装置、および燃料電池診断装置に関するもので、燃料ガス不足状態、酸化剤ガス不足状態あるいはドライアップ状態といった燃料電池の作動状態の検知に用いて好適である。
【背景技術】
【0002】
従来、燃料ガス(水素)と酸化剤ガス(酸素)との電気化学反応を利用して電気エネルギを出力するセルを複数枚積層することによって構成された燃料電池が知られている。
【0003】
この種の燃料電池では、一部のセルが、燃料ガス不足状態、酸化剤ガス不足状態あるいはセル内が乾燥したドライアップ状態になってしまうと、当該セルが電気エネルギを出力できなくなってしまうだけでなく、当該セルが電気抵抗となって燃料電池全体としての発電量を著しく低下させてしまう。
【0004】
これに対して、特許文献1には、燃料電池の局所を流れる局所電流を磁気センサにて検出する電流測定装置を用いて、燃料ガス不足状態、酸化剤ガス不足状態あるいはドライアップ状態といった燃料電池の作動状態を検知する手段が開示されている。
【0005】
具体的には、特許文献1の局所電流測定装置は、積層されたセル間に配置される板状の導電体に溝を形成し、この溝に囲まれるように配置されてセルの局所部位に接触する柱状部、および、この柱状部の周囲に発生した磁界の強さを測定する磁気センサを有して構成されている。
【0006】
また、特許文献2には、発電中の燃料電池の外部に、燃料電池によって生じる磁界の密度を測定する複数の磁界密度測定用のセンサを配置し、これらのセンサの測定値を用いて燃料電池内の電流密度分布を決定する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−123162号公報
【特許文献2】特表2004−500689号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述の特許文献1に記載されているように、燃料電池の局所電流を測定することで、燃料電池の作動状態を検知することが可能となる。しかしながら、特許文献1の局所電流測定装置では、積層されたセル間に配置される導電体の内部、すなわち燃料電池の内部に柱状部および磁気センサを設ける必要があり、磁気センサの出力信号を取り出すための電気配線が複雑化しやすい。
【0009】
また、特許文献2の方法を用いて、燃料電池内の電流密度分布を決定し、燃料電池内のどの部位の電流密度が相対的に低くなっているかを判断すれば、局所電流を測定することと同様に、燃料電池の作動状態を検知することができる。
【0010】
しかしながら、複数枚のセルを積層して構成された燃料電池において、一部のセルが燃料ガス不足状態、酸化剤ガス不足状態あるいはドライアップ状態になったとしても、燃料電池の外部における磁界変化の差は極めて小さい。このため、燃料電池の作動状態を誤検知してしまうおそれがある。例えば、車両に搭載される燃料電池では他の車載機器の作動によって生じる磁界の影響を受けやすく、特許文献2の方法では燃料電池の作動状態を誤検知しやすい。
【0011】
上記点に鑑み、本発明は、簡素な構成で、かつ、高い精度で燃料電池の局所電流を測定可能な局所電流測定装置を提供することを第1の目的とし、簡素な構成で、かつ、高い精度で燃料電池の作動状態を診断可能な燃料電池診断装置を提供することを第2の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記第1の目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、酸化剤ガスと燃料ガスとを電気化学反応させて発電するセル(21)を複数枚積層した燃料電池(20)の局所を流れる電流を測定する局所電流測定装置であって、
セル(21)の積層方向から見たときに、少なくとも一部がセル(21)と重合するとともに、セル(21)の所定領域を囲むように配置された磁性材料からなる磁性材コア(51、52)と、磁性材コア(51、52)に形成される磁界の強さを検出する磁界強度検出手段(54a、54b)とを備え、磁性材コア(51、52)の一部は燃料電池(20)の外部に露出しており、磁界強度検出手段(54a、54b)は、磁性材コア(51、52)のうち燃料電池(20)の外部に露出した部位を通過する磁束により磁界の強さを検出することを特徴とする。
【0013】
これによれば、磁性材コア(51、52)によって囲まれた所定領域に電流が流れると、その電流に対応する磁界が磁性材コア(51、52)に発生する。従って、発生した磁界の強さを検出する磁界強度検出手段(54a、54b)の検出値から、所定領域、すなわち燃料電池(20)の局所を流れる電流を測定することができる。
【0014】
この際、磁界強度検出手段(54a、54b)が、磁性材コア(51、52)のうち燃料電池(20)の外部に露出した部位を通過する磁束により磁界の強さを検出するので、磁界強度検出手段(54a、54b)を燃料電池(20)の外部に配置して、その出力を容易に取り出すことができる。従って、磁界強度検出手段(54a、54b)を積層されたセル(21)間に配置する場合に対して、局所電流測定装置の構成を簡素な構成とすることができる。
【0015】
さらに、セル(21)の積層方向から見たときに、磁性材コア(51、52)の少なくとも一部がセル(21)と重合するように配置されているので、磁性材コア(51、52)の全体がセル(21)の外部に配置されている場合に対して、磁性材コア(51、52)に形成される磁界が強くなる。従って、高い精度で燃料電池の局所電流を測定することができる。
【0016】
その結果、簡素な構成で、かつ、高い精度で燃料電池(20)の局所電流を測定可能な局所電流測定装置を提供することができる。なお、本請求項における「所定領域を囲む」とは、所定領域の全周囲を囲むことのみを意味するものではなく、所定領域の一部を囲む意味も含むものである。
【0017】
さらに、上記特徴を有する燃料電池の局所電流測定装置において、所定領域として、燃料ガス不足状態となった際に電流が変化する領域や酸化剤ガス不足状態となった際に電流が変化する領域等を選定しておくことで、燃料電池の作動状態を簡素な構成で、かつ、高い精度で検知することが可能となる。
【0018】
具体的には、請求項2に記載の発明のように、請求項1に記載の燃料電池の局所電流測定装置において、所定領域は、セル(21)から燃料ガスを流出させる燃料ガス側出口部近傍を含む領域であり、磁性材コアとして、燃料ガス側出口部近傍を含む領域を囲むように配置される燃料ガス側磁性材コア(51)が設けられていることを特徴とする。
【0019】
燃料ガス側出口部近傍の領域では、燃料ガス不足状態となった際に局所電流が低下する。従って、所定領域を燃料ガス側出口部近傍を含む領域とすることで、燃料電池(20)が燃料ガス不足状態となっていることを検知することができる。
【0020】
さらに、請求項3に記載の発明のように、請求項1または2に記載の燃料電池の局所電流測定装置において、所定領域は、セル(21)から酸化剤ガスを流出させる酸化剤ガス側出口部近傍を含む領域であり、磁性材コアとして、酸化剤ガス側出口部近傍を含む領域を囲むように配置される酸化剤ガス側磁性材コア(52)が設けられていてもよい。
【0021】
酸化剤ガス側出口部近傍の領域では、酸化剤ガス不足状態となった際に局所電流が低下する。従って、所定領域を酸化剤ガス側出口部近傍を含む領域とすることで、燃料電池(20)が酸化剤ガス不足状態となっていることを検知することができる。
【0022】
請求項4に記載の発明では、請求項1ないし3のいずれか1つに記載の燃料電池の局所電流測定装置において、磁性材コア(51、52)は、積層方向から見たときにコの字状に形成されているとともに、コの字状の開放端側の2つの先端部(51a、51b、52a、52b)が燃料電池(20)の外部に露出しており、さらに、2つの先端部(51a…52b)同士を磁気的に接続して、2つの先端部(51a…52b)のうち一方の先端部(51a…52b)と他方の先端部(51a…52b)との間の磁束を通過させる磁性材料からなる集磁コア(53a、53b)を備え、磁界強度検出手段(54a、54b)は、集磁コア(53a、53b)にて磁界の強さを検出することを特徴とする。
【0023】
これによれば、2つの先端部(51a…52b)同士を磁気的に接続する集磁コア(53a、53b)を任意の形状とすることができ、磁界強度検出手段(54a、54b)の出力をより一層容易に取り出すことができる。
【0024】
請求項5に記載の発明では、請求項4に記載の燃料電池の局所電流測定装置において、磁性材コア(51、52)は、複数設けられており、集磁コア(53a、53b)は、複数の磁性材コア(51、52)における一方の先端部(51a…52b)と他方の先端部(51a…52b)との間を通過する磁束を集合させて通過させることを特徴とする。
【0025】
これによれば、集磁コア(53a、53b)が、複数の磁性材コア(51、52)における2つの先端部(51a…52b)間の磁束を集合させて通過させるので、1つの磁性材コア(51、52)における2つの先端部(51a…52b)間の磁束のみを通過させる場合に対して、集磁コア(53a、53b)を通過する磁束量を増加させることができる。従って、より一層高い精度で燃料電池(20)の局所電流を測定することができる。
【0026】
具体的に、請求項6に記載の発明のように、請求項5に記載の燃料電池の局所電流測定装置において、集磁コア(53a、53b)は、積層方向に延びて、複数の磁性材コア(51、52)の一方の先端部(51a…52b)同士を磁気的に接続する第1帯状部(531a、531b)、積層方向に延びて、複数の磁性材コア(51、52)の他方の先端部(51a…52b)同士を磁気的に接続する第2帯状部(532a、532b)、および、第1帯状部(531a、531b)と第2帯状部(532a、532b)とを磁気的に接続する第3帯状部(533a、533b)を有し、第3帯状部(533a、533b)の積層方向の幅寸法(W)は、第1帯状部(531a、531b)の積層方向の長さ寸法(L1)および第2帯状部(532a、532b)の前記積層方向の長さ寸法(L2)よりも短いことを特徴とする。
【0027】
これによれば、第3帯状部(533a、533b)の積層方向の幅寸法(W)が、第1帯状部(531a、531b)および第2帯状部(532a、532b)の積層方向の長さ寸法(L1、L2)よりも短くなっているので、第3帯状部(533a、533b)を通過する磁束量を増加させることができる。
【0028】
さらに、請求項7に記載の発明のように、請求項6に記載の燃料電池の局所電流測定装置において、第3帯状部(533a、533b)は複数設けられていてもよい。これによれば、第3帯状部(533a、533b)を通過する磁束を適切に複数に分配して、第3帯状部(533a、533b)にて磁気飽和が生じてしまうことを回避できる。
【0029】
請求項8に記載の発明では、請求項4ないし7のいずれか1つに記載の燃料電池の局所電流測定装置において、磁性材コア(51、52)と集磁コア(53a、53b)とは、電気的に絶縁されていることを特徴とする。これにより、燃料電池(20)全体として流れる電流が集磁コア(53a、53b)にて短絡してしまうことを防止できる。
【0030】
請求項9に記載の発明では、請求項1ないし3のいずれか1つに記載の燃料電池の局所電流測定装置において、磁性材コア(51、52)は、セル(21)の積層方向から見たときに環状に形成されていることを特徴とする。
【0031】
これによれば、磁界強度検出手段(54a、54b)が、磁性材コア(51、52)のうち燃料電池(20)の外部に露出した部位にて、直接、磁性材コア(51、52)に形成される磁界の強さを検出することができる。
【0032】
また、上記第2の目的を達成するため、請求項10に記載の発明では、酸化剤ガスと燃料ガスとを電気化学反応させて発電するセル(21)を複数枚積層した燃料電池(20)の作動状態を診断する燃料電池診断装置であって、磁界の強さを検出する磁界強度検出手段(66)と、セル(21)の積層方向から見たときに、少なくとも一部がセル(21)と重合するとともに、セル(21)から燃料ガスを流出させる燃料ガス側出口部近傍を含む第1の領域を囲むように配置された磁性材料からなる燃料ガス側磁性材コア(61)と、セル(21)の積層方向から見たときに、少なくとも一部がセル(21)と重合するとともに、セル(21)から酸化剤ガスを流出させる酸化剤ガス側出口部近傍を含む第2の領域を囲むように配置された磁性材料からなる酸化剤ガス側磁性材コア(62)と、燃料ガス側磁性材コア(61)と酸化剤ガス側磁性材コア(62)との間の磁束を通過させる磁性材料からなる連結コア(63)と、磁界強度検出手段(66)の検出値に基づいて燃料電池(20)の作動状態を診断する診断手段(40b)と、を備え、連結コア(63)は、燃料ガス側磁性材コア(61)からの磁束の向きと、酸化剤ガス側磁性材コア(62)からの磁束の向きとが互いに逆方向となるように、燃料ガス側磁性材コア(61)および酸化剤ガス側磁性材コア(62)それぞれに磁気的に接続されており、磁界強度検出手段(66)は、連結コア(63)に配置されて連結コア(63)を通過する磁束により連結コア(63)における磁界の強さを検出することを特徴とする。
【0033】
これによると、連結コア(63)では、燃料ガス側磁性材コア(61)からの磁束の向きと酸化剤ガス側磁性材コア(62)からの磁束の向きとが逆方向となるので、連結コア(63)では、各磁性材コア(61、62)からの磁束が互いに打ち消し合うように作用する。
【0034】
ここで、燃料電池(20)における一部のセル(21)が燃料ガス不足状態、または酸化剤ガス不足状態となると、燃料ガス側磁性材コア(61)に生ずる磁界の強さと酸化剤ガス側磁性材コア(62)に生ずる磁界の強さに偏りが生ずる。この場合、連結コア(63)では、各磁性材コア(61、62)からの磁束が打ち消されず、各磁性材コア(61、62)の差分量となる磁束が通過する。
【0035】
このため、連結コア(63)における磁界の強さを磁界強度検出手段(66)にて検出することで、燃料ガス側磁性材コア(61)に生ずる磁界の強さと酸化剤ガス側磁性材コア(62)に生ずる磁界の強さの偏りを検出することができ、磁界強度検出手段(66)の検出値に基づいて、燃料ガス不足状態または酸化剤ガス不足状態といった燃料電池(20)の作動状態の診断を行うことが可能となる。
【0036】
この際、磁界強度検出手段(66)では、連結コア(63)における磁界の強さを検出することで、燃料ガス側磁性材コア(61)に生ずる磁界の強さと酸化剤ガス側磁性材コア(62)の強さの偏りを検出することができるので、各磁性材コア(61、62)に対応して複数の磁界強度検出手段を設ける必要がない。従って、燃料電池診断装置の構成を簡素な構成とすることができる。
【0037】
さらに、セル(21)の積層方向から見たときに、磁性材コア(61、62)の少なくとも一部がセル(21)と重合するように配置されているので、各磁性材コア(61、62)の全体がセル(21)の外部に配置されている場合に対して、各磁性材コア(61、62)に形成される磁界が強くなる。従って、高い精度で燃料電池の作動状態を診断することができる。
【0038】
その結果、簡素な構成で、かつ、高い精度で燃料電池(20)の作動状態を診断可能な燃料電池診断装置を提供することができる。
【0039】
また、請求項11に記載の発明では、請求項10に記載の燃料電池診断装置において、燃料ガス側磁性材コア(61)および酸化剤ガス側磁性材コア(62)それぞれは、積層方向から見たときに、一部が燃料電池(20)の外部に露出しており、連結コア(63)は、燃料ガス側磁性材コア(61)および酸化剤ガス側磁性材コア(62)のうち、燃料電池(20)の外部に露出した部位同士を磁気的に接続して構成されていることを特徴とする。
【0040】
これによると、磁界強度検出手段(66)では、各磁性材コア(61、62)のうち、燃料電池(20)の外部に露出した部位同士を接続する連結コア(63)を通過する磁束により磁界の強さを検出するので、磁界強度検出手段(66)を燃料電池(20)の外部に配置して、その出力を容易に取り出すことが可能となる。従って、磁界強度検出手段(66)を積層されたセル(21)間に配置する場合に比べて、燃料電池診断装置の構成を簡素な構成とすることができる。
【0041】
また、請求項12に記載の発明では、請求項11に記載の燃料電池診断装置において、燃料ガス側磁性材コア(61)および酸化剤ガス側磁性材コア(62)それぞれは、複数枚のセル(21)に配置されており、積層方向に延びて、複数の燃料ガス側磁性材コア(61)それぞれを磁気的に接続して、複数の燃料ガス側磁性材コア(61)を通過する磁束を集合させて通過させる燃料ガス側集磁コア(64)と、積層方向に延びて、複数の酸化剤ガス側磁性材コア(62)それぞれを磁気的に接続して、複数の酸化剤ガス側磁性材コア(62)を通過する磁束を集合させて通過させる酸化剤ガス側集磁コア(65)と、を備え、連結コア(63)は、燃料ガス側集磁コア(64)および酸化剤ガス側集磁コア(65)を介して、燃料ガス側磁性材コア(61)および酸化剤ガス側磁性材コア(62)のうち、燃料電池(20)の外部に露出した部位同士を磁気的に接続して構成されていることを特徴とする。
【0042】
これによると、燃料ガス側集磁コア(64)が複数の燃料ガス側磁性材コア(61)間の磁束を集合させて通過させるとともに、酸化剤ガス側集磁コア(65)が複数の酸化剤ガス側磁性材コア(62)間の磁束を集合させて通過させるので、連結コア(63)を通過する磁束量を増加させることができる。従って、より一層高い精度で燃料電池(20)の作動状態を診断することが可能となる。
【0043】
また、請求項13に記載の発明では、請求項12に記載の燃料電池診断装置において、燃料ガス側磁性材コア(61)と燃料ガス側集磁コア(64)とは、電気的に絶縁されており、酸化剤ガス側磁性材コア(62)と酸化剤ガス側集磁コア(65)とは、電気的に絶縁されていることを特徴とする。これにより、燃料電池(20)全体として流れる電流が各集磁コア(64、65)によって短絡してしまうことを防止することができる。
【0044】
また、請求項14に記載の発明のように、請求項10ないし13のいずれか1つに記載の燃料電池診断装置において、診断手段(40b)では、磁界強度検出手段(66)の検出値に基づいて、燃料ガス側磁性材コア(61)および酸化剤ガス側磁性材コア(62)における磁界の強さの大小を判定し、燃料ガス側磁性材コア(61)における磁界の強さが酸化剤ガス側磁性材コア(62)における磁界の強さよりも所定の第1基準値を超えて小さいと判定した場合に、燃料ガスが不足している状態と診断し、酸化剤ガス側磁性材コア(62)における磁界の強さが燃料ガス側磁性材コア(61)における磁界の強さよりも所定の第2基準値を超えて小さいと判定した場合に、酸化剤ガスが不足している状態と診断するようにしてもよい。
【0045】
なお、この欄および特許請求の範囲で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】第1実施形態の局所電流測定装置を適用した燃料電池の全体構成図である。
【図2】第1実施形態の局所電流測定装置の要部を拡大した斜視図である。
【図3】第1実施形態のセル21の積層方向断面図である。
【図4】図2のA部拡大図である。
【図5】第1実施形態の制御装置における制御処理を示すフローチャートである。
【図6】第2実施形態の局所電流測定装置の要部を拡大した斜視図である。
【図7】第3実施形態の局所電流測定装置の要部を拡大した斜視図である。
【図8】第4実施形態の燃料電池診断装置を適用した燃料電池の全体構成図である。
【図9】第4実施形態の燃料電池診断装置の要部を拡大した斜視図である。
【図10】図9のB部拡大図である。
【図11】第4実施形態の燃料電池診断装置を積層方向から見た正面図である。
【図12】第4実施形態の制御装置における制御処理を示すフローチャートである。
【図13】第5実施形態の燃料電池診断装置を積層方向から見た正面図である。
【図14】第6実施形態の燃料電池診断装置の要部を拡大した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0047】
(第1実施形態)
図1〜図5により、本発明に係る局所電流測定装置10の実施形態を説明する。図1は、本実施形態の局所電流測定装置10を適用した燃料電池20の模式的な全体構成図である。さらに、図1には、局所電流測定装置10および燃料電池20の電気的接続関係も図示している。まず、燃料電池20は、電気自動車の一種である燃料電池車両に搭載されており、車両走行用の電動モータ、二次電池、車両用各種補機類等の電気負荷30に電力を供給する。
【0048】
この燃料電池20は、燃料ガス(水素)と酸化剤ガス(空気中の酸素)との電気化学反応を利用して電気エネルギを出力するもので、基本単位となる平板状の燃料電池セル21(以下、単にセル21と記載する。)が複数枚積層されて構成されている。これらの複数枚のセル21は、電気的に直列に接続されている。なお、本実施形態では、燃料電池20として固体高分子電解質型燃料電池を採用している。
【0049】
また、直列に接続された複数枚のセル21の両端側、すなわち燃料電池20全体としてのセル21の積層方向両端部には、燃料電池20から出力された電気エネルギを取り出すための一対の集電板21aが配置されている。そして、この集電板21aに各種電気負荷30が接続されている。
【0050】
さらに、集電板21aには、燃料電池20全体として出力される電圧を検出する電圧センサ31、および、燃料電池20全体として出力される電流を検出する電流センサ32が接続されている。電圧センサ31および電流センサ32の検出信号は、後述する制御装置40に入力される。これらの電圧センサ31および電流センサ32は、本実施形態の局所電流測定装置10を構成するものである。
【0051】
一対の集電板21aの一方には、水素入口、水素出口、空気入口、空気出口、並びに、燃料電池20を冷却する冷却水の流入口および流出口(いずれも図示せず。)が設けられている。なお、冷却水は、燃料電池20の内部を流れており、燃料電池20の発電効率が一定以上となるように、発電中の燃料電池20の温度を所定温度(本実施形態では、80℃程度)に維持している。
【0052】
また、各セル21の間には、磁性材料(本実施形態では、パーマロイ)からなる磁性材コア51、52が配置されている。これらの各磁性材コア51、52は、本実施形態の局所電流測定装置10を構成するものである。
【0053】
次に、図2〜4を用いて、セル21の詳細構成および磁性材コア51、52のセル21に対する配置態様等を説明する。なお、図2は、燃料電池20および局所電流測定装置10の要部を拡大した斜視図であり、図3は、燃料電池20のセル21の積層方向断面図であり、図4は、図2のA部をセル21の積層方向から見た拡大図である。
【0054】
まず、セル21の詳細構成を説明する。図3に示すように、セル21は、膜電極接合体(MEA:Membrane Electrode assembly)22および膜電極接合体22を両側から挟み込む一対のセパレータ23を有して構成されている。
【0055】
膜電極接合体22は、固体高分子膜からなる電解質膜221、電解質膜221の水素極側の面に密着して配置されたアノード側触媒層222a、電解質膜221の空気極側の面に密着して配置されたカソード側触媒層222b、アノード側触媒層222aの外側に配置されたアノード側拡散層223a、および、カソード側触媒層222bの外側に配置されたカソード側拡散層223bによって形成されている。
【0056】
より詳細には、各触媒層222a、222bは、カーボン担体に電気化学反応を促進する触媒(白金等)を担持させたカーボン担持白金触媒等で形成され、各拡散層(GDL:Gas Diffusion Layer)223a、223bは、導電体でかつ液体水分保持性能を有するカーボンクロス等で形成されている。
【0057】
セパレータ23は、膜電極接合体22に電気的に接触した状態で、各セル21同士を区画するとともに、各セル21における空気流れ、水素流れ、および、冷却水の流れを分離するものである。セパレータ23は、導電性に優れ、非磁性の金属(例えば、銅、チタン)にて、セル21の積層方向から見たときに略矩形状に形成されている。
【0058】
本実施形態では、セパレータ23として、アノード側拡散層223aの外側に配置される水素極側セパレータ23a、および、カソード側拡散層223bの外側に配置される空気極側セパレータ23bが設けられている。
【0059】
アノード側拡散層223aの外側面と水素極側セパレータ23aの内側面との間には水素が流れる水素流路231が形成されており、カソード側拡散層223bの外側面と空気極側セパレータ23bの内側面との間には空気が流れる空気流路232が形成されている。また、図3に示すように、水素流路231における水素の流れ方向と空気流路232における空気の流れ方向は互いに対向している。
【0060】
さらに、水素極側セパレータ23aの外側面には、溝部が形成されている。この溝部によって、セル21が積層された際に、隣接するセル21の水素極側セパレータ23aと空気極側セパレータ23bとの間に、冷却水が流れる冷却水流路233が形成されている。
【0061】
もちろん、溝部を空気極側セパレータ23bの外側面に形成して冷却水流路233を形成してもよいし、溝部を水素極側セパレータ23aと空気極側セパレータ23bとの双方の外側面に形成して冷却水流路233を形成してもよい。
【0062】
また、図2に示すように、各セル21のセパレータ23には、水素流路231に水素を流入させる水素入口穴211a、発電時に消費されなかった未反応の余剰水素および水素流路231に浸み出た生成水を水素流路231から流出させる水素出口穴211bが形成されている。水素入口穴211aおよび水素出口穴211bは、各セル21の表裏を貫通するように設けられている。
【0063】
従って、各セル21が積層されると、水素入口穴211aは各セル21内の水素流路231へ水素を分配する分配空間となる水素用の分配マニホールドを形成し、水素出口穴211bは各セル21から流出した余剰水素および生成水を集合させる集合空間となる水素用の集合マニホールドを形成する。
【0064】
さらに、各セル21のセパレータ23には、空気流路232に空気を流入させる空気入口穴212a、発電時に消費されなかった酸素および窒素等を含む余剰空気および生成水を空気流路232から流出させる空気出口穴212b、並びに、冷却水流路233に冷却水を流入させる冷却水流入穴213a、冷却水流路233から冷却水を流出させる冷却水流出穴213bが形成されている。
【0065】
これらの空気入口穴212a、空気出口穴212b、冷却水流入穴213a、冷却水流出穴213bについても、各セル21の表裏を貫通するように設けられている。従って、各セル21が積層されると、水素入口穴211aおよび水素出口穴211bと同様に、それぞれ空気用の分配マニホールド、空気用の集合マニホールド、冷却水用の分配マニホールド、冷却水用の集合マニホールドを形成する。
【0066】
次に、磁性材コア51、52のセル21に対する配置態様等を説明する。本実施形態では、磁性材コア51、52として、燃料ガス側磁性材コア(水素側磁性材コア)51および酸化剤ガス側磁性材コア(空気側磁性材コア)52の2種類が設けられている。双方の磁性材コア51、52は、いずれもセル21の積層方向から見たときに略コの字形状の板状部材で形成されている。
【0067】
前述の如く、双方の磁性材コア51、52は、いずれも各セル21の間に配置されている。より具体的には、図2に示すように、セル21の積層方向から見たときに、双方の磁性材コア51、52は、コの字状の開放端側の2つの先端部51a、51b、52a、52bが燃料電池20の外部に露出した状態で、残余の部位がセル21と重合するように各セル21の間の冷却水流路233内に配置されている。
【0068】
さらに、セル21の積層方向から見たときに、双方の磁性材コア51、52のセル21と重合する部分は、それぞれコの字状の三辺でセル21の所定領域を囲むように配置されている。換言すると、双方の磁性材コア51、52は、所定領域の一部を三方向から囲むように配置されている。
【0069】
双方の磁性材コア51、52のうち、水素側磁性材コア51については、所定領域としてセル21から水素を流出させる燃料ガス側出口部近傍を含む領域(水素出口穴211bに近接する領域)を囲んでおり、空気側磁性材コア52については、所定領域としてセル21から空気を流出させる酸化剤ガス側出口部近傍を含む領域(空気出口穴212bに近接する領域)を囲んでいる。
【0070】
なお、前述の如く、本実施形態では、水素流路231における水素の流れ方向と空気流路232における空気の流れ方向とを互いに対向させることにより、セル21の積層方向から見たときに、燃料ガス側出口部近傍を含む領域および酸化剤ガス側出口部近傍を含む領域が互いに重合しないように配置している。
【0071】
さらに、水素側磁性材コア51のうち燃料電池20の外部に露出しているコの字状の開放端側の2つの先端部51a、51bは、一方の先端部51aと他方の先端部51bとの間の磁束を通過させる水素側集磁コア53aによって磁気的に接続されている。水素側集磁コア53aは、磁性材コア51、52と同じ材質の磁性材料にて形成されている。
【0072】
具体的には、水素側集磁コア53aは、セル21の積層方向に延びて、複数の水素側磁性材コア51の一方の先端部51a同士を磁気的に接続する第1帯状部531a、セル21の積層方向に延びて、複数の水素側磁性材コア51の他方の先端部51b同士を磁気的に接続する第2帯状部532a、および、第1帯状部531aと第2帯状部532aとを磁気的に接続する連結する第3帯状部533aを有している。
【0073】
この第3帯状部533aにおけるセル21の積層方向の幅寸法Wは、第1帯状部531aにおけるセル21の積層方向の長さ寸法L1および第2帯状部532aにおけるセル21の積層方向の長さ寸法L2よりも短く形成されている。本実施形態では、具体的に、第3帯状部533aの幅寸法Wを、1つのセル21の積層方向の幅寸法と同等以下としている。
【0074】
つまり、水素側集磁コア53aは、セル21の積層方向に垂直な方向から見たときに、略Hの字形状の板状部材で形成されている。従って、水素側集磁コア53aでは、複数の水素側磁性材コア51の一方の先端部51aと他方の先端部51bとの間の磁束を、第3帯状部533aに集合させて通過させることができる。
【0075】
そこで、本実施形態では、燃料電池20の外部に配置される水素側集磁コア53aの第3帯状部533aに、磁界強度検出手段としての水素側磁気センサ54aを配置している。この水素側磁気センサ54aは、燃料電池20の発電中に、水素側磁性材コア51に形成される磁界の強さを検出するものである。
【0076】
本実施形態では、具体的に、水素側磁気センサ54aとしてホール素子を採用しており、水素側磁性材コア51の一方の先端部51aと他方の先端部51bとの間を通過する磁束により水素側磁性材コア51に形成される磁界の強さを検出している。なお、この水素側磁気センサ54aの検出信号は、制御装置40に入力される。
【0077】
また、図4に示すように、複数の水素側磁性材コア51と水素側集磁コア53aとの間には、樹脂フィルム55aが介在しており、水素側磁性材コア51と水素側集磁コア53aは、電気的に絶縁されている。
【0078】
一方、空気側磁性材コア52のうち燃料電池20の外部に露出しているコの字状の開放端側の2つの先端部52a、52bについても、水素側磁性材コア51と全く同様に構成された、空気側集磁コア53bによって磁気的に接続されている。従って、空気側集磁コア53bも、水素側集磁コア53aと同様に、第1帯状部531b、第2帯状部532b、第3帯状部533bを有し、略Hの字状に形成されている。
【0079】
さらに、空気側集磁コア53bの第3帯状部533bにも、磁界強度検出手段としての空気側磁気センサ54bを配置している。この空気側磁気センサ54bは、水素側磁気センサ54aと同様の構成であり、燃料電池20の発電中に、空気側磁性材コア52に形成される磁界の強さを検出するものである。
【0080】
また、図4に示すように、複数の空気側磁性材コア52と空気側集磁コア53bとの間にも、樹脂フィルム55bが介在しており、空気側磁性材コア52と空気側集磁コア53bは、電気的に絶縁されている。
【0081】
次に、本実施形態の電気制御部について説明する。制御装置40は、CPU、ROMおよびRAM等を含む周知のマイクロコンピュータとその周辺回路から構成され、そのROM内に記憶された空調制御プログラムに基づいて各種演算、処理を行い、出力側に接続される各種制御機器の作動を制御するとともに、燃料電池20の局所電流を測定して、燃料電池20の作動状態を検知する。
【0082】
出力側に接続される各種制御機器としては、燃料電池20の作動状態を表示する表示パネル41、燃料電池20へ供給される水素流量を調整する水素流量調整手段、燃料電池20へ供給される空気流量を調整する空気流量調整手段、および、燃料電池20へ供給される空気の加湿量を調整する加湿量調整手段を構成する各種アクチュエータ(いずれも図示せず)等がある。
【0083】
もちろん、水素流量調整手段、空気流量調整手段および加湿量調整手段として、いずれも電気的に制御されるものを採用する必要はなく、純機械的機構によって構成される調整手段を採用してもよい。さらに、このように純機械的機構によって構成される調整手段については、制御装置40の出力側へ接続する必要もない。
【0084】
制御装置40は、上述した出力側に接続される各種制御機器を制御する制御手段および燃料電池20の局所電流を測定する局所電流測定用の制御手段が一体に構成されたものであるが、本実施形態では、特に、局所電流測定用の制御手段を構成するハードウェアおよびソフトウェアを測定用制御手段40aとする。もちろん、測定用制御手段40aを制御装置40に対して別体で構成してもよい。
【0085】
従って、本実施形態の局所電流測定装置10は、電圧センサ31、電流センサ32、水素側磁性材コア51、空気側磁性材コア52、水素側集磁コア53a、空気側集磁コア53b、水素側磁気センサ54a、空気側磁気センサ54bおよび測定用制御手段40a等から構成されることになる。
【0086】
次に、上記構成における本実施形態の燃料電池20および局所電流測定装置10の作動について説明する。
【0087】
制御装置40が、水素流量調整用アクチュエータ、空気流量調整用アクチュエータおよび加湿量調整用アクチュエータの作動を制御して、燃料電池20に水素および空気が供給されると、各セル21では、以下に示すように、水素と酸素とを電気化学反応させて、電気エネルギを出力する。
【0088】
(負極側)H→2H+2e
(正極側)2H+1/2O+2e→H
そして、燃料電池20から出力された電気エネルギは、集電板21aから各種電気負荷30へ供給される。
【0089】
この際、制御装置40では、各種電気負荷30に要求される電力を出力できるように、水素流量調整手段、空気流量調整手段および加湿量調整手段を構成する各種アクチュエータの作動を制御する。
【0090】
さらに、制御装置40では、電圧センサ31、電流センサ32、水素側磁気センサ54a、空気側磁気センサ54bから出力された検出信号に基づいて、燃料電池20の局所電流を測定するとともに、燃料電池20の燃料ガス不足状態、酸化剤ガス不足状態あるいはドライアップ状態といった作動状態を検知する。そして、検知した燃料電池20の作動状態に応じて表示パネル41に作動状態を表示する。
【0091】
ここで、発電中(運転中)の燃料電池20を流れる電流は、全体としてセル21の積層方向に沿って流れる。その一方で、セル21の積層方向から見たときに、セル21の各部位を流れる電流の大きさが異なっている。つまり、セル21の積層方向から見たとき、セル21を流れる電流には電流密度分布が生じている。このため、この電流によって燃料電池20の外部および内部に磁界が形成される。
【0092】
より詳細には、全体としてセル21の積層方向に沿って流れる電流は、燃料電池20の外部に磁界を形成し、セル21の所定領域(局所)を流れる電流は、燃料電池20の内部となる当該所定領域の周囲に、当該所定領域を流れる電流に応じた磁界を形成する。従って、所定領域の周囲に形成される磁界の強さを検出することで、当該所定領域(局所)を流れる局所電流を測定することができる。
【0093】
前述の如く、本実施形態では、水素側磁性材コア51によって、所定領域としての燃料ガス側出口部近傍を含む領域(水素出口穴211bに近接する領域)を囲んでいる。従って、燃料ガス側出口部近傍を含む領域を流れる電流に応じて形成される磁界によって、水素側磁性材コア51の内部に磁束が通過する。
【0094】
そして、複数の水素側磁性材コア51を通過する磁束を、水素側集磁コア53aの第3帯状部533aに集合させて、水素側磁気センサ54aにて検出している。これにより、複数の水素側集磁コア53aに形成される磁界の強さを検出することができる。さらに、制御装置40が、水素側磁気センサ54aの検出値を演算処理することで、燃料ガス側出口部近傍を含む領域を流れる局所電流を測定することができる。
【0095】
また、本実施形態では、空気側磁性材コア52によって、所定領域としての酸化剤ガス側出口部近傍を含む領域(空気出口穴212bに近接する領域)を囲んでいる。従って、酸化剤ガス側出口部近傍を含む領域を流れる電流に応じて形成される磁界によって、空気側磁性材コア52の内部に磁束が通過する。
【0096】
そして、複数の空気側磁性材コア52を通過する磁束を、空気側集磁コア53bの第3帯状部533bに集合させて、空気側磁気センサ54bにて検出している。これにより、複数の空気側集磁コア53bに形成される磁界の強さを検出することができる。さらに、制御装置40が、空気側磁気センサ54bの検出値を演算処理することで、酸化剤ガス側出口部近傍を含む領域を流れる局所電流を測定することができる。
【0097】
そこで、本実施形態では、図5のフローチャートに示すように、測定した各局所電流を用いて、燃料電池20の作動状態の検知している。なお、図5のフローチャートは、制御装置40が、燃料電池20に発電させて電気エネルギを出力させるために実行するメインルーチンのサブルーチンとして所定の制御周期毎に実行される。
【0098】
まず、ステップS1では、電圧センサ31、電流センサ32、水素側磁気センサ54a、空気側磁気センサ54bの検出信号を読み込む。続くステップS2では、燃料電池20全体としての内部抵抗Rが、予め定めた基準内部抵抗KR以上になっているか否かを判定する。なお、燃料電池20全体としての内部抵抗Rは、電圧センサ31の検出信号および電流センサ32の検出信号に基づいて算出される。
【0099】
ここで、燃料電池20では、セル21内が乾燥したドライアップ状態となると、膜電極接合体22の電解質膜221の抵抗が増大するため、燃料電池20全体の内部抵抗Rが増大してしまう。従って、燃料電池20の内部抵抗Rの大きさによって、燃料電池20がドライアップ状態となっているか否かを判定することができる。
【0100】
そこで、本実施形態では、ステップS2にて、R≧KRとなっているときは、ドライアップ状態となっているものとして、ステップS3へ進む。ステップS3では、ドライアップ状態であることを表示パネル41に表示してステップS4へ進む。一方、R≧KRとなっていないときは、ドライアップ状態になっていないものとして、ステップS4へ進む。
【0101】
ステップS4では、水素側磁性材コア51によって囲まれた燃料ガス側出口部近傍を含む領域の水素側局所電流AHが、基準水素側局所電流KAHより低くなっているか否かを判定する。なお、水素側局所電流AHは、水素側磁気センサ54aの検出信号に基づいて算出される。
【0102】
ここで、燃料電池20に供給される水素流量が不足した状態になると、水素流路231へ流入した水素が、水素流路231入口側から出口側へ至るまでに消費されてしまい、燃料ガス側出口部近傍を含む領域の水素側局所電流AHが低下してしまう。従って、水素側局所電流AHの大きさによって、燃料電池20が燃料ガス不足状態となっているか否かを判定することができる。
【0103】
そこで、本実施形態では、ステップS4にて、AH<KAHとなっているときは、燃料ガス不足状態となっているものとして、ステップS5へ進む。ステップS5では、燃料ガス不足状態であることを表示パネル41に表示してステップS6へ進む。一方、AH<KAHとなっていないときは、燃料ガス不足状態になっていないものとして、ステップS6へ進む。
【0104】
ステップS6では、空気側磁性材コア52によって囲まれた酸化剤ガス側出口部近傍を含む領域の空気側局所電流AAirが、基準水素側局所電流KAAirより低くなっているか否かを判定する。なお、空気側局所電流AAirは、空気側磁気センサ54bの検出信号に基づいて算出される。
【0105】
ここで、空気流路232内に過剰な生成水が発生すると、空気流路232を流通する空気流れによって生成水を空気出口穴212bから排出することができなくなってしまう。この際、排出できなかった生成水は、空気流路232の出口側、すなわち酸化剤ガス側出口部近傍を含む領域に滞留してしまう。
【0106】
このため、酸化剤ガス側出口部近傍を含む領域に空気中の酸素を供給することができなくなって、酸化剤ガス側出口部近傍を含む領域の空気側局所電流AAirが低下してしまう。従って、空気側局所電流AAirの大きさによって、燃料電池20が酸化剤ガス不足状態となっているか否かを判定することができる。
【0107】
さらに、空気流量調整手段によって空気流路232内に充分な流量の空気が供給されているにも関わらず、酸化剤ガス不足状態となっていると判定された際には、空気流路232に生成水が滞留して酸化剤ガス不足状態となっているフラッディング状態であると判定することもできる。
【0108】
そこで、本実施形態では、ステップS6にて、AAir<KAAirとなっているときは、酸化剤ガス不足状態となっているものとして、ステップS7へ進む。ステップS7では、酸化剤ガス不足状態であることを表示パネル41に表示してメインルーチンへ戻る。一方、AAir<KAAirとなっていないときは、酸化剤ガス不足状態になっていないものとして、メインルーチンへ戻る。
【0109】
本実施形態の局所電流測定装置10は、以上の如く作動するので、水素側磁気センサ54aの検出値から、水素側磁性材コア51によって囲まれた燃料ガス側出口部近傍を含む領域の水素側局所電流AHを測定することができる。同様に、空気側磁気センサ54bの検出値から、空気側磁性材コア52によって囲まれた酸化剤ガス側出口部近傍を含む領域の空気側局所電流AAirを測定することができる。
【0110】
この際、水素側磁気センサ54aおよび空気側磁気センサ54bが、それぞれ水素側磁性材コア51および空気側磁性材コア52のうち燃料電池20の外部に露出した部位を通過する磁束により磁界の強さを検出するので、水素側磁気センサ54aおよび空気側磁気センサ54bを燃料電池20の外部に配置して、その出力(検出信号)を配線等を複雑化させることなく容易に取り出すことができる。
【0111】
しかも、水素側磁気センサ54aおよび空気側磁気センサ54bが、燃料電池20の外部に配置された水素側集磁コア53aおよび空気側集磁コア53bにて磁界の強さを検出している。従って、水素側集磁コア53aおよび空気側集磁コア53bを任意の形状とすることで、水素側磁気センサ54aおよび空気側磁気センサ54bの出力(検出信号)を、より一層容易に取り出すことができる。
【0112】
さらに、本実施形態では、セル21の積層方向から見たときに、水素側磁性材コア51および空気側磁性材コア52の少なくとも一部がセル21と重合するように配置されているので、水素側磁性材コア51および空気側磁性材コア52の全体がセル21の外部に配置されている場合に対して、水素側磁性材コア51および空気側磁性材コア52に形成される磁界を強くすることができる。
【0113】
従って、水素側磁気センサ54aが、燃料ガス側出口部近傍を含む領域の周囲に発生する磁界の強さを精度良く検出でき、空気側磁気センサ54bが、酸化剤ガス側出口部近傍を含む領域の周囲に発生する磁界の強さを精度良く検出できる。その結果、水素側磁気センサ54aの検出値から水素側局所電流AHを精度良く測定することができ、空気側磁気センサ54bの検出値から空気側局所電流AAirを精度良く測定することができる。
【0114】
しかも、水素側集磁コア53aおよび空気側集磁コア53bでは、それぞれ複数の水素側磁性材コア51および空気側磁性材コア52を通過する磁束を集合させて通過させている。具体的には、それぞれの集磁コア53a、53bの第1帯状部531a、531bおよび第2帯状部532a、532bの積層方向の長さ寸法L1、L2よりも、第3帯状部533a、533bの幅Wを短くすることで、磁束を集合させて通過させている。
【0115】
従って、水素側集磁コア53aおよび空気側集磁コア53bを通過する磁束量を増加させることができ、水素側磁気センサ54aおよび空気側磁気センサ54bが、より一層高い精度で磁界の強さを検出することができる。その結果、本実施形態の燃料電池20の局所電流測定装置によれば、簡素な構成で、かつ、高い精度で燃料電池20の局所電流を測定することができる。
【0116】
さらに、これらの局所電流から、燃料電池20の燃料ガス不足状態、酸化剤ガス不足状態あるいはドライアップ状態といった作動状態を高い精度で検知できる。このように磁気センサ54a、54bを用いて燃料電池20の作動状態を高い精度で検知できることは、車両に搭載される燃料電池20のように、他の車載機器の作動によって燃料電池20の周囲に強い磁界が生じうる環境に燃料電池20を適用した際に極めて有効である。
【0117】
(第2実施形態)
本実施形態では、図6に示すように、第1実施形態に対して、セル21の積層枚数を増加させ、水素側集磁コア53aおよび空気側集磁コア53bの形状を変更した例を説明する。なお、図6は、本実施形態における燃料電池20および局所電流測定装置10の要部を拡大した斜視図であり、第1実施形態の図2に対応する図面である。また、図6では、第1実施形態と同一もしくは均等部分には同一の符号を付している。
【0118】
具体的には、本実施形態では、セル21の積層枚数を第1実施形態の3倍程度としている。さらに、水素側集磁コア53aおよび空気側集磁コア53bの第3帯状部533a、533bを複数個(具体的には3個)設けている。つまり、水素側集磁コア53aおよび空気側集磁コア53bは、セル21の積層方向に垂直な方向から見たときに、梯子状の板状部材で形成されている。
【0119】
なお、これらの複数の第3帯状部533a、533bの積層方向の幅寸法Wを合計した値は、第1実施形態と同様に、第1、第2帯状部531a、532a、531b、532bよりも短い。
【0120】
また、それぞれの第3帯状部533a、533bには、第1実施形態と同様の水素側磁気センサ54aおよび空気側磁気センサ54bが1個配置されている。従って、本実施形態の水素側磁気センサ54aおよび空気側磁気センサ54bは、それぞれ合計3つ配置されている。その他の構成および作動は第1実施形態と同様である。
【0121】
本実施形態では、第3帯状部533a、533bを複数(具体的には3つ)の箇所に設けているので、第3帯状部533a、533bを通過する磁束を複数に分配して、第3帯状部533a、533bにて磁気飽和が生じてしまうことを回避できる。
【0122】
従って、水素側磁気センサ54aおよび空気側磁気センサ54bが所定領域(燃料ガス側出口部近傍を含む領域および酸化剤ガス側出口部近傍を含む領域)の周囲に形成される磁界(水素側局所電流AHおよび空気側局所電流AAir)の変化を精度良く測定できる。その結果、第1実施形態と同様に簡素な構成で、かつ、高い精度で燃料電池20の局所電流を測定することができる。
【0123】
ところで、第1実施形態の図2では、セル21が6枚積層された燃料電池20を図示しており、図6では、セル21が18枚積層された燃料電池20を図示しているが、セル21の積層枚数は、これに限定されるものではない。特に、車両に適用される燃料電池20では、400枚程度のセル21を積層して燃料電池20全体として高電圧の電力を出力する必要がある。
【0124】
本発明者らの検討によれば、第3帯状部533a、533bおよびこれらに配置される水素側磁気センサ54aおよび空気側磁気センサ54bは、積層枚数10枚に対して1つ設け、かつ、第3帯状部533a、533bの幅寸法Wを、1つのセル21の積層方向の幅寸法と同等とすれば、高い精度で燃料電池20の局所電流を測定でき、さらに、高い精度で燃料電池20の作動状態を検知できることが判っている。
【0125】
(第3実施形態)
上述の実施形態では、略コの字形状に形成された磁性材コア51、52を採用した例を説明したが、本実施形態では、図7に示すように、セル21の積層方向から見たときに環状に形成された水素側磁性材コア51および空気側磁性材コア52を採用している。なお、図7は、本実施形態における燃料電池20および局所電流測定装置10の要部を拡大した斜視図であり、第1実施形態の図2に対応する図面である。
【0126】
具体的には、本実施形態の水素側磁性材コア51および空気側磁性材コア52は、セル21の積層方向から見たときに、略口の字状の板状部材で形成されており、その口の字状の一辺が燃料電池20の外部に露出した状態で、残余の部位がセル21と重合するように各セル21の間に配置されている。なお、水素側磁性材コア51および空気側磁性材コア52が囲む所定領域は、第1実施形態と同様である。
【0127】
また、それぞれの水素側磁性材コア51および空気側磁性材コア52のうち、燃料電池20の外部に露出した部位には、第1実施形態と同様の水素側磁気センサ54aおよび空気側磁気センサ54bが1個配置されている。従って、本実施形態では、第1、2実施形態の集磁コア53a、53bは廃止されている。
【0128】
さらに、本実施形態の水素側磁気センサ54aおよび空気側磁気センサ54bは、それぞれ水素側磁性材コア51および空気側磁性材コア52と同数設けられている。その他の構成および作動は第1実施形態と同様である。従って、本実施形態の局所電流測定装置10においても、第1実施形態と同様に簡素な構成で、かつ、高い精度で燃料電池20の局所電流を測定することができる。
【0129】
しかも、本実施形態では、集磁コア53a、53bを廃止できるとともに、水素側磁性材コア51および空気側磁性材コア52のうち、燃料電池20の外部に露出した部位にて、直接、水素側磁性材コア51および空気側磁性材コア52に形成される磁界の強さを検出することができるので、より一層、局所電流測定装置10を簡素な構成とすることができる。
【0130】
(第4実施形態)
図8〜図12により、本発明に係る燃料電池診断装置60の実施形態を説明する。図8は、本実施形態の燃料電池診断装置60を適用した燃料電池20の模式的な全体構成図であり、第1実施形態の図1に対応する図面である。なお、本実施形態では、上述した第1〜第3実施形態と同等または均等な部分について同一の符号を付し、その説明を省略または簡略化して説明する。
【0131】
本実施形態の燃料電池診断装置60は、図8に示すように、各セル21の間に配置される磁性材からなる磁性材コア61、62、電圧センサ31、電流センサ32、制御装置40(燃料電池診断手段40b)等を備えて構成される。
【0132】
まず、本実施形態の磁性材コア61、62のセル21に対する配置等を図9、図10に基づいて説明する。図9は、本実施形態の燃料電池診断装置60の要部を拡大した斜視図であり、図10は、図9のB部拡大図である。
【0133】
図9に示すように、本実施形態では、磁性材コア61、62として、燃料ガス側磁性材コア(水素側磁性材コア)61および酸化剤ガス側磁性材コア(空気側磁性材コア)62の2種類が設けられている。水素側磁性材コア61は、セル21から水素を流出させる燃料ガス側出口部近傍を含む第1の領域(水素出口穴211bに近接する領域)を囲むように配置されている。また、空気側磁性材コア62は、セル21から空気を流出させる酸化剤ガス側出口部近傍を含む第2の領域(空気出口穴212bに近接する領域)を囲むように配置されている。
【0134】
双方の磁性材コア61、62は、いずれもセル21の積層方向から見たときに略コの字形状の板状部材で形成されている。そして、セル21の積層方向から見たときに、双方の磁性材コア61、62は、コの字状の開放端側の2つの先端部61a、61b、62a、62bが燃料電池20の外部に露出した状態で、残余の部位がセル21と重合するように各セル21の間の冷却水流路233内に配置されている。
【0135】
そして、水素側磁性材コア61のセル21と重合する部分は、セル21の積層方向から見たときに、コの字状の三辺でセル21の第1の領域を囲むように配置されている。また、空気側磁性材コア62のセル21と重合する部分は、セル21の積層方向から見たときに、コの字状の三辺でセル21の第2の領域を囲むように配置されている。なお、本実施形態では、第1実施形態と同様に、セル21の積層方向から見たときに、第1の領域(燃料ガス側出口部近傍を含む領域)および第2の領域(酸化剤ガス側出口部近傍を含む領域)が互いに重合しないように双方の磁性材コア61、62を配置している。
【0136】
具体的には、水素側磁性材コア61は、コの字状の開放端側の2つの先端部61a、61bのうち、セル21の縁に沿って延びる縁側先端部61aが、セル21の中央側に位置する中央側先端部61bよりも、燃料電池20の外側に延在している。換言すれば、中央側先端部61bは、縁側先端部61aよりも短い長さとなっている。
【0137】
同様に、空気側磁性材コア62は、コの字状の開放端側の2つの先端部62a、62bのうち、セル21の縁部に沿って延びる縁側先端部62bが、セル21の中央側に位置する中央側先端部62aよりも、燃料電池20の外側に延在している。換言すれば、中央側先端部62aは、縁側先端部62bよりも短い長さとなっている。
【0138】
さらに、複数のセル21に配置された水素側磁性材コア61は、その縁側先端部61a同士が第1水素側集磁部64aを介して磁気的に接続されるとともに、その中央側先端部61b同士が第2水素側集磁部64bを介して磁気的に接続されている。
【0139】
本実施形態の第1水素側集磁部64aおよび第2水素側集磁部64bは、セル21の積層方向に延び、複数の水素側磁性材コア61同士を磁気的に接続して、複数の水素側磁性材コア61を通過する磁束を集合させて通過させる燃料ガス側集磁コア(水素側集磁コア)64を構成している。なお、第1水素側集磁部64aおよび第2水素側集磁部64bそれぞれは、各磁性材コア61、62と同じ材質の磁性材料にて形成されている。
【0140】
一方、複数のセル21に配置された空気側磁性材コア62は、その中央側先端部62a同士が第1空気側集磁部65aを介して磁気的に接続されるとともに、その縁側先端部62b同士が第2空気側集磁部65bを介して磁気的に接続されている。
【0141】
本実施形態の第1空気側集磁部65aおよび第2空気側集磁部65bは、セル21の積層方向に延び、複数の空気側磁性材コア62同士を磁気的に接続して、複数の空気側磁性材コア62を通過する磁束を集合させて通過させる酸化剤ガス側集磁コア(空気側集磁コア)65を構成している。なお、第1空気側集磁部65aおよび第2空気側集磁部65bそれぞれは、各磁性材コア61、62と同じ材質の磁性材料にて形成されている。
【0142】
また、水素側磁性材コア61および空気側磁性材コア62の各中央側先端部61b、62aは、第2水素側集磁部64bおよび第1空気側集磁部65aを介して、連結コア63に磁気的に接続されている。一方、水素側磁性材コア61および空気側磁性材コア62の各縁側先端部61a、62bは、第1水素側集磁部64aおよび第2空気側集磁部65bを介して、連結コア63に磁気的に接続されている。
【0143】
この連結コア63は、第2水素側集磁部64bおよび第1空気側集磁部65a同士を磁気的に接続する第1連結部63aと、第1水素側集磁部64aおよび第2空気側集磁部65b同士を磁気的に接続する第2連結部63bとを有して構成されている。
【0144】
第1連結部63aおよび第2連結部63bは、それぞれT字状に形成されており、セル21の積層方向から見たときに、後述する磁気センサ66を介して略H字状となるように磁気的に接続されている。
【0145】
そして、第1連結部63aおよび第2連結部63bとの間には、磁界強度検出手段としての磁気センサ66が配置されている。この磁気センサ66は、燃料電池20の発電中に、連結コア63の第1連結部63aと第2連結部63bとの間に形成される磁界の強さを検出するものである。本実施形態では、磁気センサ66としてホール素子を採用している。なお、本実施形態の磁気センサ66は、第1連結部63aから第2連結部63bへと通過する磁束を正として出力するように構成されている。
【0146】
ここで、燃料電池20の発電によってセル21の積層方向に電流が流れた際に、水素側磁性材コア61および空気側磁性材コア62を通過する磁束について、図11に基づいて説明する。図11は、燃料電池診断装置60を積層方向から見た正面図である。
【0147】
図11に示すように、セル21の積層方向(紙面手前側から奥側に向かう方向)に電流が流れると、水素側磁性材コア61を図11に示す一点鎖線上を矢印の方向に磁界強度φ1の磁束が通過する。また、セル21の積層方向(紙面手前側から奥側に向かう方向)に電流が流れると、空気側磁性材コア62を図11に示す二点鎖線上を矢印の方向に磁界強度φ2の磁束が通過する。
【0148】
この際、連結コア63における磁気センサ66が配置された部位(第1連結部63aと第2連結部63bとの間)では、第1連結部63aを介して、水素側磁性材コア61からの磁束が通過すると共に、第2連結部63bを介して、空気側磁性材コア62からの磁束が通過する。すなわち、連結コア63は、水素側磁性材コア61側からの磁束の向きと、空気側磁性材コア62側からの磁束の向きとが逆方向となるように接続されている。
【0149】
このため、連結コア63では、水素側磁性材コア61からの磁束と空気側磁性材コア62からの磁束が互いに打ち消し合うように作用する。従って、磁気センサ66では、水素側磁性材コア61側の磁界の強さと空気側磁性材コア62側の磁界の強さとの偏りΔφ(=φ1−φ2)を検出することとなる。
【0150】
また、図10に示すように、複数の空気側磁性材コア62(中央側先端部62a)と第1空気側集磁部65aとの間、および複数の空気側磁性材コア62(縁側先端部62b)と第2空気側集磁部65bとの間には、樹脂フィルム67が介在しており、空気側磁性材コア62と各空気側集磁部65a、65bは、電気的に絶縁されている。同様に、複数の水素側磁性材コア61(縁側先端部61a)と第1水素側集磁部64aとの間、および複数の水素側磁性材コア61(中央側先端部61b)と第2水素側集磁部64bとの間には、樹脂フィルム67が介在しており、水素側磁性材コア61と各水素側集磁部64a、64bは、電気的に絶縁されている。
【0151】
これにより、各磁性材コア61、62と各集磁部64a、64b、65a、65bとを直接接続しても、各磁性材コア61、62間で電力がショート(短絡)してしまうことを防止できる。なお、各磁性材コア61、62と各集磁コア64、65との間に、樹脂フィルム67以外に空隙等を設けることで、各磁性材コア61、62間の短絡を防止してもよい。
【0152】
次に、本実施形態の制御装置40は、出力側に接続される各種制御機器を制御すると共に、磁気センサ66から出力された出力信号(検出値)に基づいて、燃料電池20の作動状態を診断する。本実施形態の制御装置40は、各種制御機器を制御する制御手段、および燃料電池20の作動状態を診断する診断手段が一体に構成されたものであるが、本実施形態では、特に、燃料電池20の作動状態を診断する診断手段を構成するハードウェアおよびソフトウェアを燃料電池診断手段40bとする(図8参照)。もちろん、燃料電池診断手段40bを制御装置40に対して別体で構成してもよい。
【0153】
従って、本実施形態の燃料電池診断装置60は、電圧センサ31、電流センサ32、水素側磁性材コア61、空気側磁性材コア62、連結コア63、水素側集磁コア64、空気側集磁コア65、磁気センサ66および燃料電池診断手段40b等から構成されることになる。
【0154】
次に、上記構成における本実施形態の燃料電池診断装置60の作動について図12に基づいて説明する。図12は、本実施形態の制御装置40(燃料電池診断手段40b)における制御処理を示すフローチャートである。なお、図12のフローチャートは、制御装置40が、燃料電池20に発電させて電気エネルギを出力させるために実行するメインルーチンのサブルーチンとして所定の制御周期毎に実行される。
【0155】
まず、ステップS11では、電圧センサ31、電流センサ32、磁気センサ66の検出信号を読み込む。
【0156】
続くステップS12では、燃料電池20全体としての内部抵抗Rが、予め定めた基準内部抵抗KR以上になっているか否かを判定する。なお、燃料電池20全体としての内部抵抗Rは、第1実施形態と同様に、電圧センサ31の検出信号および電流センサ32の検出信号に基づいて算出される。
【0157】
そして、ステップS12にて、R≧KRとなっているときは、ドライアップ状態となっているものとして、ステップS13へ進む。ステップS13では、ドライアップ状態であることを表示パネル41に表示してステップS14へ進む。一方、R≧KRとなっていないときは、ドライアップ状態になっていないものとして、ステップS14へ進む。
【0158】
ステップS14では、磁気センサ66の検出値Δφが、予め設定された第1基準値φHoよりも小さいか否かを判定する。なお、第1基準値φHoは、例えば、燃料電池20に供給される水素(燃料ガス)の流量を強制的に減少させ、燃料電池20の作動状態を燃料ガス不足状態とし、その際に検出された磁気センサ66の検出値に基づいて決定すればよい。
【0159】
ここで、燃料電池20に供給される水素流量が不足した燃料ガス不足状態となると、燃料ガス側出口部近傍を含む領域の水素側局所電流AHが低下してしまう。これに伴って、水素側磁性材コア61に生ずる磁界の強さと空気側磁性材コア62に生ずる磁界の強さに偏りが生ずる。つまり、水素側磁性材コア61に生ずる磁界の強さφ1が小さくなり、磁気センサ66の検出値Δφ(=φ1−φ2)が低下する。従って、磁気センサ66の検出値Δφの大小によって、燃料電池20が燃料ガス不足状態となっているか否かを判定することができる。
【0160】
そこで、本実施形態では、ステップS14にて、Δφ<φHoとなっているとき、すなわち、水素側磁性材コア61における磁界の強さが空気側磁性材コア62における磁界の強さよりも第1基準値φHoを越えて小さいときは、燃料ガス不足状態となっているものとして、ステップS15へ進む。ステップS15では、燃料ガス不足状態であることを表示パネル41に表示してメインルーチンへ戻る。一方、Δφ<φHoとなっていないときは、燃料ガス不足状態になっていないものとして、ステップS16へ進む。
【0161】
ステップS16では、磁気センサ66の検出値Δφが、予め設定された第2基準値φAoよりも大きいか否かを判定する。なお、第2基準値φAoは、例えば、燃料電池20に供給される空気(酸化剤ガス)の流量を強制的に減少させ、燃料電池20の作動状態を酸化剤ガス不足状態とし、その際に検出された磁気センサ66の検出値に基づいて決定すればよい。
【0162】
ここで、燃料電池20に供給される空気流量が不足した酸化剤ガス不足状態となると、酸化剤ガス側出口部近傍を含む領域の空気側局所電流AAirが低下してしまう。これに伴って、空気側磁性材コア62に生ずる磁界の強さφ2が小さくなり、磁気センサ66の検出値Δφ(=φ1−φ2)が増大する。従って、磁気センサ66の検出値Δφの大小によって、燃料電池20が酸化剤ガス不足状態となっているか否かを判定することができる。
【0163】
そこで、本実施形態では、ステップS16にて、Δφ>φAoとなっているときは、酸化剤ガス不足状態となっているものとして、ステップS17へ進む。ステップS17では、酸化剤ガス不足状態であることを表示パネル41に表示してメインルーチンへ戻る。一方、Δφ>φAoとなっていないときは、酸化剤ガス不足状態になっていないものとして、メインルーチンへ戻る。
【0164】
以上説明した本実施形態の燃料電池診断装置60では、水素側磁性材コア61からの磁束の向きと空気側磁性材コア62からの磁束の向きとが逆方向となるように、水素側磁性材コア61と空気側磁性材コア62とを連結コア63にて磁気的に接続している。このため、連結コア63では、水素側磁性材コア61からの磁束と空気側磁性材コア62からの磁束が互いに打ち消し合うように作用する。従って、連結コア63における磁界の強さを検出する磁気センサ66にて検出することで、水素側磁性材コア61における磁界の強さと空気側磁性材コア62における磁界の強さとの偏りを検出することができる。
【0165】
そして、燃料電池20における一部のセル21が燃料ガス不足状態、または酸化剤ガス不足状態となると、水素側磁性材コア61に生ずる磁界の強さと空気側磁性材コア62に生ずる磁界の強さに偏りが生ずるので、磁気センサ66の検出値に基づいて、燃料ガス不足状態または酸化剤ガス不足状態といった燃料電池20の作動状態の診断を行うこと可能となる。
【0166】
この際、磁気センサ66では、連結コア63における磁界の強さを検出することで、各磁性材コア61、62に生ずる磁界の強さの偏りを検出することができるので、各磁性材コア61、62に対応して複数の磁気センサを設ける必要がない。従って、燃料電池診断装置60の構成を簡素な構成とすることができる。
【0167】
さらに、本実施形態の磁気センサ66は、各磁性材コア61、62のうち、燃料電池20の外部に露出した部位同士を接続する連結コア63を通過する磁束により磁界の強さを検出するので、磁気センサ66を燃料電池20の外部に配置して、その出力を容易に取り出すことが可能となる。従って、磁気センサ66を積層されたセル21間に配置する場合に比べて、燃料電池診断装置60の構成をより一層簡素な構成とすることができる。
【0168】
また、本実施形態では、セル21の積層方向から見たときに、各磁性材コア61、62の少なくとも一部がセル21と重合するように配置されているので、各磁性材コア61、62の全体がセル21の外部に配置されている場合に対して、各磁性材コア61、62に形成される磁界が強くなる。従って、高い精度で燃料電池20の作動状態を診断することができる。
【0169】
さらに、本実施形態では、各集磁コア64、65が各磁性材コア61、62間の磁束を集合させて通過させるので、連結コア63を通過する磁束量を増加させることができるので、より一層高い精度で燃料電池20の作動状態を診断することが可能となる。
【0170】
その結果、本実施形態の燃料電池20の燃料電池診断装置60によれば、簡素な構成で、かつ、高い精度で燃料電池20の作動状態の診断を行うことができる。
【0171】
なお、本実施形態では、磁気センサ66を、第1連結部63aから第2連結部63bへと通過する磁束を正として出力するように構成しているが、第2連結部63bから第1連結部63aへと通過する磁束を正として出力するように構成してもよい。
【0172】
この場合には、磁気センサ66での検出値Δφが空気側磁性材コア62側の磁界の強さφ2から水素側磁性材コア61側の磁界の強さφ1を減算した値となる(Δφ=φ2−φ1)。このため、ステップ14での判定処理では、磁気センサ66の検出値Δφが、第1基準値φHoよりも大きいか否かを判定し、Δφ>φHoである場合に、燃料ガス不足状態となっているものとして、ステップS15へ進むようにすればよい。また、ステップ16での判定処理では、磁気センサ66の検出値Δφが、第2基準値φAoよりも小さいか否かを判定し、Δφ<φAoである場合に、酸化剤ガス不足状態となっているものとして、ステップS17へ進むようにすればよい。
【0173】
(第5実施形態)
上述の第4実施形態では、水素側集磁コア64および空気側集磁コア65を用いて、複数の各磁性材コア61、62を通過する磁束を集合させる構成を採用した例を説明したが、これに限定されない。すなわち、水素側集磁コア64および空気側集磁コア65を用いることなく、各磁性材コア61、62それぞれに連結コア63を磁気的に接続し、当該連結コア63における磁界の強さを磁気センサ66で検出するようにしてもよい。
【0174】
これによれば、水素側集磁コア64および空気側集磁コア65といった構成が不要となるので、燃料電池診断装置60の部品点数を削減して、燃料電池診断装置60を簡素な構成とすることが可能となる。
【0175】
さらに、この場合、水素側集磁コア64および空気側集磁コア65といった構成が不要となるので、図13に示すように、水素側磁性材コア61および空気側磁性材コア62の中央側先端部61b、62aをセル21の積層方向から見た場合にセル21と重合させ、水素側磁性材コア61および空気側磁性材コア62の縁側先端部61a、62bを燃料電池20の外部に露出させる構成としてもよい。なお、図13は、本実施形態における燃料電池診断装置60を積層方向から見た正面図であり、第4実施形態の図11に対応する図面である。
【0176】
これによれば、水素側磁性材コア61および空気側磁性材コア62の中央側先端部61b、62aが燃料電池20の外部に露出しないので、燃料電池診断装置60の体格の小型化を図ることが可能となる。
【0177】
(第6実施形態)
上述の第4実施形態では、水素側集磁コア64bと空気側集磁コア65aと連結コア63の第1連結部63aとを別体で構成し、水素側集磁コア64aと空気側集磁コア65bと連結コア63の第2連結部63bとを別体で構成したものを採用した例を説明したがこれに限定されない。すなわち、水素側集磁コア64bと空気側集磁コア65aと連結コア63の第1連結部63aとを一体に構成すると共に、水素側集磁コア64aと空気側集磁コア65bと連結コア63の第2連結部63bとを一体に構成してもよい。
【0178】
例えば、第4実施形態において、連結コア63の第1連結部63aおよび第2連結部63bにおける各集磁コア64、65と接続する両端部を積層方向に延在させ、延在させた部位を、図14に示すように、各磁性材コア61、62の先端部61a、61b、62a、62bに磁気的に接続する構成としてもよい。この場合、連結コア63の第1連結部63aおよび第2連結部63bそれぞれは、セル21の積層方向から見たときにT字形状、セル21の積層方向に直交する方向から見たときに略H字形状に形成される。なお、図14は、本実施形態の燃料電池診断装置60の要部を拡大した斜視図であり、第4実施形態の図9に対応する図面である。
【0179】
(他の実施形態)
本発明は上述の実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、以下のように種々変形可能である。
【0180】
(1)上述の実施形態では、隣接配置されるセル21間の全てに磁性材コア51、52、61、62を配置しているが、磁性材コア51、52、61、62の配置はこれに限定されない。隣接配置されるセル21間のうち、所定の数のセル21間毎に磁性材コア51、52、61、62を配置してもよい。
【0181】
また、上述の第1〜第3実施形態では、磁性材コアとして、水素側磁性材コア51および空気側磁性材コア52の2種類を設けているが、磁性材コアはこれに限定されない。つまり、水素側磁性材コア51および空気側磁性材コア52のいずれか一方のみを設けてもよい。さらに、燃料電池20の作動状態の変化に応じて、局所電流が変化する領域を囲むように配置される別の磁性材コアを設けてもよい。
【0182】
(2)上述の実施形態では、セル21の積層方向から見たときに、略コの字状や略口の字状の磁性材コア51、52、61、62を採用した例を説明したが、磁性材コア51、52、61、62の形状はこれに限定されない。つまり、上述の実施形態のように直線状の部位で所定領域を囲む必要はなく、曲線状の部位で所定領域を囲んでもよい。
【0183】
従って、磁性材コア51、52、61、62の開放端側の2つの先端部を燃料電池20の外部に露出させる場合は、セル21の積層方向から見たときに、Cの字形状やVの字形状としてもよい。また、第1〜第3実施形態において、磁性材コア51、52を環状に形成する場合は、セル21の積層方向から見たときに、円形状、楕円形状等としてもよい。
【0184】
(3)上述の実施形態では、磁界強度検出手段としてホール素子からなる磁気センサ54a、54b、66を採用した例を説明したが、磁気センサ54a、54b、66として他の形式の磁気センサを採用してもよい。例えば、磁界強度検出手段として、MI素子、AMR素子、MR素子、フラックスゲート等を採用してもよい。
【0185】
(4)上述の実施形態では、パーマロイで形成された磁性材コア51、52、61、62、集磁コア53a、53b、64、65、連結コア63を採用した例を説明したが、磁性材コア51、52、61、62、集磁コア53a、53b、64、65、連結コア63として珪素鋼、アモルファス、ミューメタル、パーメンジュール等を採用してもよい。
【0186】
(5)上述の第1、第2実施形態では、磁性材コア51、52と集磁コア53a、53bとの間に、絶縁部材である樹脂フィルム55a、55bを介在させることによって、各磁性材コア51、52同士を電気的に絶縁して、各磁性材コア51、52間でセル21から出力された電力が短絡(ショート)してしまうことを防止しているが、もちろん、樹脂フィルム55a、55b以外の絶縁物を介在させてもよい。
【0187】
さらに、磁性材コア51、52と隣接配置されるセル21との間に樹脂フィルムのような絶縁物を介在させてもよい。これによれば、磁性材コア51、52と集磁コア53a、53bとを直接接続しても、各磁性材コア51、52間で電力がショートしてしまうことを防止できる。
【0188】
(6)上述の実施形態では、制御装置40が、燃料電池20の燃料ガス不足状態、酸化剤ガス不足状態あるいはドライアップ状態といった作動状態を検知すると、これを表示パネル41に表示させているが、もちろん他の制御を行ってもよい。
【0189】
例えば、燃料ガス不足状態を検知した場合は、制御装置40が燃料ガスの供給量を増加させ、酸化剤ガス不足状態を検知した場合は、制御装置40が酸化剤ガスの供給量を増加させ、さらに、ドライアップ状態を検知した場合は、制御装置40が加湿量を増加させるように各種アクチュエータの作動を制御してもよい。
【0190】
(7)上述の実施形態では、車両に搭載された燃料電池20に本発明を適用した例を説明したが、本発明の適用はこれに限定されない。例えば、船舶や飛行機等の移動体に搭載される燃料電池に適用してもよいし、定置型発電装置に搭載された燃料電池に適用してもよい。
【0191】
(8)上述の実施形態では、燃料電池20として固体高分子電解質型燃料電池(PEMFC)を採用した例を説明したが、本発明の適用はこれに限定されない。例えば、燃料電池20として、リン酸型燃料電池(PAFC)、固体酸化物型燃料電池(SOFC)、アルカリ型燃料電池(AFC)等を用いてもよい。
【符号の説明】
【0192】
10 局所電流測定装置
20 燃料電池
21 セル
40b 燃料電池診断手段(診断手段)
51 水素側磁性材コア
51a、51b 先端部
52 空気側磁性材コア
52a、52b 先端部
53a 水素側集磁コア
53b 空気側集磁コア
531a、531b 第1帯状部
532a、532b 第2帯状部
533a、533b 第3帯状部
54a 水素側磁気センサ
54b 空気側磁気センサ
60 燃料電池診断装置
61 水素側磁性材コア(燃料ガス側磁性材コア)
62 空気側磁性材コア(酸化剤ガス側磁性材コア)
63 連結コア
64 水素側集磁コア(燃料ガス側集磁コア)
65 空気側集磁コア(酸化剤ガス側集磁コア)
66 磁気センサ(磁界強度検出手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化剤ガスと燃料ガスとを電気化学反応させて発電するセル(21)を複数枚積層した燃料電池(20)の局所を流れる電流を測定する局所電流測定装置であって、
前記セル(21)の積層方向から見たときに、少なくとも一部が前記セル(21)と重合するとともに、前記セル(21)の所定領域を囲むように配置された磁性材料からなる磁性材コア(51、52)と、
前記磁性材コア(51、52)に形成される磁界の強さを検出する磁界強度検出手段(54a、54b)とを備え、
前記磁性材コア(51、52)の一部は前記燃料電池(20)の外部に露出しており、
前記磁界強度検出手段(54a、54b)は、前記磁性材コア(51、52)のうち前記燃料電池(20)の外部に露出した部位を通過する磁束により前記磁界の強さを検出することを特徴とする燃料電池の局所電流測定装置。
【請求項2】
前記所定領域は、前記セル(21)から前記燃料ガスを流出させる燃料ガス側出口部近傍を含む領域であり、
前記磁性材コアとして、前記燃料ガス側出口部近傍を含む領域を囲むように配置される燃料ガス側磁性材コア(51)が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池の局所電流測定装置。
【請求項3】
前記所定領域は、前記セル(21)から前記酸化剤ガスを流出させる酸化剤ガス側出口部近傍を含む領域であり、
前記磁性材コアとして、前記酸化剤ガス側出口部近傍を含む領域を囲むように配置される酸化剤ガス側磁性材コア(52)が設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の燃料電池の局所電流測定装置。
【請求項4】
前記磁性材コア(51、52)は、前記積層方向から見たときにコの字状に形成されているとともに、前記コの字状の開放端側の2つの先端部(51a、51b、52a、52b)が前記燃料電池(20)の外部に露出しており、
さらに、前記2つの先端部(51a…52b)同士を磁気的に接続して、前記2つの先端部(51a…52b)のうち一方の先端部(51a…52b)と他方の先端部(51a…52b)との間の磁束を通過させる磁性材料からなる集磁コア(53a、53b)を備え、
前記磁界強度検出手段(54a、54b)は、前記集磁コア(53a、53b)に配置されて前記磁界の強さを検出することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載の燃料電池の局所電流測定装置。
【請求項5】
前記磁性材コア(51、52)は、複数設けられており、
前記集磁コア(53a、53b)は、複数の前記磁性材コア(51、52)における前記一方の先端部(51a…52b)と前記他方の先端部(51a…52b)との間を通過する磁束を集合させて通過させることを特徴とする請求項4に記載の燃料電池の局所電流測定装置。
【請求項6】
前記集磁コア(53a、53b)は、
前記積層方向に延びて、複数の前記磁性材コア(51、52)の前記一方の先端部(51a…52b)同士を磁気的に接続する第1帯状部(531a、531b)、
前記積層方向に延びて、複数の前記磁性材コア(51、52)の前記他方の先端部(51a…52b)同士を磁気的に接続する第2帯状部(532a、532b)、
および、前記第1帯状部(531a、531b)と前記第2帯状部(532a、532b)とを磁気的に接続する第3帯状部(533a、533b)を有し、
前記第3帯状部(533a、533b)の前記積層方向の幅寸法(W)は、前記第1帯状部(531a、531b)の前記積層方向の長さ寸法(L1)および前記第2帯状部(532a、532b)の前記積層方向の長さ寸法(L2)よりも短いことを特徴とする請求項5に記載の燃料電池の局所電流測定装置。
【請求項7】
前記第3帯状部(533a、533b)は複数設けられていることを特徴とする請求項6に記載の燃料電池の局所電流測定装置。
【請求項8】
前記磁性材コア(51、52)と前記集磁コア(53a、53b)とは、電気的に絶縁されていることを特徴とする請求項4ないし7のいずれか1つに記載の燃料電池の局所電流測定装置。
【請求項9】
前記磁性材コア(51、52)は、前記セル(21)の積層方向から見たときに環状に形成されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載の燃料電池の局所電流測定装置。
【請求項10】
酸化剤ガスと燃料ガスとを電気化学反応させて発電するセル(21)を複数枚積層した燃料電池(20)の作動状態を診断する燃料電池診断装置であって、
前記磁界の強さを検出する磁界強度検出手段(66)と、
前記セル(21)の積層方向から見たときに、少なくとも一部が前記セル(21)と重合するとともに、前記セル(21)から前記燃料ガスを流出させる燃料ガス側出口部近傍を含む第1の領域を囲むように配置された磁性材料からなる燃料ガス側磁性材コア(61)と、
前記セル(21)の積層方向から見たときに、少なくとも一部が前記セル(21)と重合するとともに、前記セル(21)から前記酸化剤ガスを流出させる酸化剤ガス側出口部近傍を含む第2の領域を囲むように配置された磁性材料からなる酸化剤ガス側磁性材コア(62)と、
前記燃料ガス側磁性材コア(61)と前記酸化剤ガス側磁性材コア(62)との間の磁束を通過させる磁性材料からなる連結コア(63)と、
前記磁界強度検出手段(66)の検出値に基づいて前記燃料電池(20)の作動状態を診断する診断手段(40b)と、を備え、
前記連結コア(63)は、前記燃料ガス側磁性材コア(61)からの磁束の向きと、前記酸化剤ガス側磁性材コア(62)からの磁束の向きとが互いに逆方向となるように、前記燃料ガス側磁性材コア(61)および前記酸化剤ガス側磁性材コア(62)それぞれに磁気的に接続されており、
前記磁界強度検出手段(66)は、前記連結コア(63)に配置されて前記連結コア(63)を通過する磁束により前記連結コア(63)における前記磁界の強さを検出することを特徴とする燃料電池診断装置。
【請求項11】
前記燃料ガス側磁性材コア(61)および前記酸化剤ガス側磁性材コア(62)それぞれは、前記積層方向から見たときに、一部が前記燃料電池(20)の外部に露出しており、
前記連結コア(63)は、前記燃料ガス側磁性材コア(61)および前記酸化剤ガス側磁性材コア(62)のうち、前記燃料電池(20)の外部に露出した部位同士を磁気的に接続して構成されていることを特徴とする請求項10に記載の燃料電池診断装置。
【請求項12】
前記燃料ガス側磁性材コア(61)および前記酸化剤ガス側磁性材コア(62)それぞれは、複数枚の前記セル(21)に配置されており、
前記積層方向に延びて、複数の前記燃料ガス側磁性材コア(61)それぞれを磁気的に接続して、前記複数の燃料ガス側磁性材コア(61)を通過する磁束を集合させて通過させる燃料ガス側集磁コア(64)と、
前記積層方向に延びて、複数の前記酸化剤ガス側磁性材コア(62)それぞれを磁気的に接続して、前記複数の酸化剤ガス側磁性材コア(62)を通過する磁束を集合させて通過させる酸化剤ガス側集磁コア(65)と、を備え、
前記連結コア(63)は、前記燃料ガス側集磁コア(64)および前記酸化剤ガス側集磁コア(65)を介して、前記燃料ガス側磁性材コア(61)および前記酸化剤ガス側磁性材コア(62)のうち、前記燃料電池(20)の外部に露出した部位同士を磁気的に接続して構成されていることを特徴とする請求項11に記載の燃料電池診断装置。
【請求項13】
前記燃料ガス側磁性材コア(61)と前記燃料ガス側集磁コア(64)とは、電気的に絶縁されており、
前記酸化剤ガス側磁性材コア(62)と前記酸化剤ガス側集磁コア(65)とは、電気的に絶縁されていることを特徴とする請求項12に記載の燃料電池診断装置。
【請求項14】
前記診断手段(40b)は、
前記磁界強度検出手段(66)の検出値に基づいて、前記燃料ガス側磁性材コア(61)および前記酸化剤ガス側磁性材コア(62)における前記磁界の強さの大小を判定し、
前記燃料ガス側磁性材コア(61)における前記磁界の強さが前記酸化剤ガス側磁性材コア(62)における前記磁界の強さよりも所定の第1基準値を超えて小さいと判定した場合に、前記燃料ガスが不足している状態と診断し、
前記酸化剤ガス側磁性材コア(62)における前記磁界の強さが前記燃料ガス側磁性材コア(61)における前記磁界の強さよりも所定の第2基準値を超えて小さいと判定した場合に、前記酸化剤ガスが不足している状態と診断することを特徴とする請求項10ないし13のいずれか1つに記載の燃料電池診断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−187432(P2011−187432A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−186357(P2010−186357)
【出願日】平成22年8月23日(2010.8.23)
【出願人】(000004695)株式会社日本自動車部品総合研究所 (1,981)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】