説明

燃料電池システムの配置構造

【課題】車両走行時の水の浸入を防止または抑制する。
【解決手段】燃料ガスと酸化剤ガスとの間の電気化学反応により発電する燃料電池セルを複数積層させた燃料電池スタックを収容するスタックケース10と、該燃料電池スタックと電気的に接続される燃料電池用ハーネス12と、を備える。燃料電池用ハーネス12が、スタックケース10の、車両後方側に設けられ、その周縁部を被覆するグロメット16を有する開口14を介してスタックケース10から延出されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池システムの配置構造に関し、特に車両に搭載する燃料電池システムの配置構造に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料極に燃料ガスとしての水素を供給し、酸化剤極に酸化剤ガスとして空気を供給し、水素と空気中の酸素の電気化学反応によって発電すると共に酸化剤極に水を生成する燃料電池を電動車両などの車両に配置する燃料電池システムについて検討されている(例えば、特許文献1〜3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3870724号公報
【特許文献2】特開2005−317408号公報
【特許文献3】特許第4014152号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
燃料電池を複数積層させることにより所望の起電力を有する燃料電池スタックは通常、外部環境から保護するために絶縁性を有するスタックケースの内部に収容される。スタックケースを車両に搭載する際には、車室内の容積を確保するために、例えば床下など、車両外部に取り付ける対策が採られる場合がある。車両外部に取り付けられた燃料電池スタックから延出する複数のケーブルを束ねた燃料電池用ハーネスやスタックケースなどは通常、防錆性、防水性を有する部材により形成されている。しかしながら、例えばスタックケースからの燃料電池用ハーネスの取り出し部分など、その接続部分の防水対策について、必ずしも十分でない場合があり得た。
【0005】
本発明は、燃料電池スタックに電気的に接続された電気配線などの、特に接続部分への車両走行時の水の浸入を防止または抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の構成は以下のとおりである。
【0007】
(1)燃料ガスと酸化剤ガスとの間の電気化学反応により発電する燃料電池セルを複数積層させた燃料電池スタックを収容するスタックケースと、前記燃料電池スタックと電気的に接続される燃料電池用ハーネスと、を備え、前記燃料電池用ハーネスが、前記スタックケースの、車両後方側に設けられ、その周縁部を被覆するグロメットを有する開口を介して前記スタックケースから延出されている、燃料電池システムの配置構造。
【0008】
(2)上記(1)に記載の配置構造において、車両内部に配置されたメインハーネスをさらに備え、前記スタックケースが、車両の床下に配置されており、前記スタックケースから延出される燃料電池用ハーネスが、床面を貫通し、その周縁部を被覆するグロメットを有する貫通口に挿通されてなり、前記燃料電池用ハーネスが、車両内部に設けられた接続部材を介して前記メインハーネスと電気的に接続されている、燃料電池システムの配置構造。
【発明の効果】
【0009】
車両走行時の水の浸入に由来する不具合を回避または抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施の形態における燃料電池システムを有する車両の配置構造のうち、特にスタックケース内からの燃料電池用ハーネスの延出について説明するための図である。
【図2】本発明の実施の形態における燃料電池システムを有する車両の配置構造のうち、特に燃料電池用ハーネスとメインハーネスとの接続について説明するための図である。
【図3】スタックケース内からの燃料電池用ハーネスの延出の一例について説明するための図である。
【図4】燃料電池用ハーネスとメインハーネスとの接続の一例について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。
【0012】
図1は、本発明の実施の形態における燃料電池システムを有する車両の配置構造のうち、特にスタックケース内からの燃料電池用ハーネスの延出について説明するための図である。一方、図3は、従来の燃料電池システムにおいて、スタックケース内からの燃料電池用ハーネスの延出の一例について説明するための図である。
【0013】
図3において、燃料電池用ハーネス12はスタックケース10の上方に設けられた開口14から引き出されている。このため、スタックケース10の前方および/または上方からの被水時には、開口14およびその周縁部を被覆するグロメット16部分にその水圧の影響を大きく受けることになるため、車両の走行速度や被水する水量によっては、開口14からスタックケース10内に水が浸入する場合があり得た。
【0014】
これに対し、図1に示す燃料電池システムでは、燃料電池用ハーネス12を延出するための開口14は、スタックケース10の、矢示している車両進行方向30に対し、車両後方側に設けられている。このため、例えば車両の床下など、走行時に被水する可能性のある箇所にスタックケース10を配置した場合であっても、車両の前進時における、グロメット16部分が受ける水圧を低減することができ、開口14およびグロメット16部分のシール性を維持し、スタックケース10内への水の浸入を防止または抑制することが可能になる。なお、本実施の形態において、図1に示す開口14およびグロメット16部分への水の浸入をさらに防止または抑制するための保護部材(図示せず)を併用することも好適である。
【0015】
図2は、本発明の実施の形態における燃料電池システムを有する車両の配置構造のうち、特に燃料電池用ハーネスとメインハーネスとの接続について説明するための図である。一方、図4は、従来の燃料電池システムにおいて、燃料電池用ハーネスとメインハーネスとの接続の一例について説明するための図である。図2,4において、スタックケース10は、車両床面20の下方、つまり車両の床下部分に配置されている。
【0016】
また、開口14から引き出された燃料電池用ハーネス12は、車両の床下においてメインハーネス22とコネクタ32を介して電気的に接続されている。このため、スタックケース10の前方および/または上方からの被水時には、コネクタ32を構成する燃料電池側コネクタ18およびメインハーネス側コネクタ28の接続部分にその被水の影響を大きく受ける場合があり得、車両の走行速度や水量によっては、防水性を有するコネクタ32を適用する場合であっても、コネクタ32内部に水が浸入し、例えば通信系統の不具合などが生じ得た。
【0017】
これに対し、図2に示す燃料電池システムでは、燃料電池用ハーネス12が、車両床面20を貫通する貫通口24に挿通されることにより、メインハーネス側コネクタ28と接続するための燃料電池側コネクタ18は車両内部に配置されている。つまり、コネクタ32を構成する燃料電池側コネクタ18およびメインハーネス側コネクタ28はいずれも、車両内部に配置されることになる。また、例えば車両の床下など、車両外部が走行時に被水した場合であっても、コネクタ32が配置された車両内部への浸水はグロメット26により防止または抑制されている。このため、本実施の形態によれば、コネクタ32内部への水の浸入を防止または抑制することが可能になる。なお、本実施の形態において、図2に示すコネクタ32内部への水の浸入の可能性は著しく低減されているため、場合によっては防水性を考慮しない非防水性のコネクタを適用することも可能となり、コストの低減にも寄与しうる。
【産業上の利用可能性】
【0018】
本発明は、燃料電池システムを備える車両において好適に利用することが可能である。
【符号の説明】
【0019】
10 スタックケース、12 燃料電池用ハーネス、14 開口、16,26 グロメット、18 燃料電池側コネクタ、20 車両床面、22 メインハーネス、24 貫通口、28 メインハーネス側コネクタ、30 車両進行方向、32 コネクタ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料ガスと酸化剤ガスとの間の電気化学反応により発電する燃料電池セルを複数積層させた燃料電池スタックを収容するスタックケースと、
前記燃料電池スタックと電気的に接続される燃料電池用ハーネスと、
を備え、
前記燃料電池用ハーネスが、前記スタックケースの、車両後方側に設けられ、その周縁部を被覆するグロメットを有する開口を介して前記スタックケースから延出されていることを特徴とする燃料電池システムの配置構造。
【請求項2】
請求項1に記載の配置構造において、
車両内部に配置されたメインハーネスをさらに備え、
前記スタックケースが、車両の床下に配置されており、
前記スタックケースから延出される燃料電池用ハーネスが、床面を貫通し、その周縁部を被覆するグロメットを有する貫通口に挿通されてなり、
前記燃料電池用ハーネスが、車両内部に設けられた接続部材を介して前記メインハーネスと電気的に接続されていることを特徴とする燃料電池システムの配置構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−214992(P2010−214992A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−60664(P2009−60664)
【出願日】平成21年3月13日(2009.3.13)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】