説明

燃料電池システム

【課題】回生電力を得ることが可能な燃料電池システムにおいて、冷却系に悪影響を及ぼすことなく、余剰電力を確実に消費する。
【解決手段】燃料電池10の発電電力と回生電力発生手段11、12の回生電力との合計電力のうち負荷手段の消費電力を超える第1余剰電力を2次電池13に充電する。第1余剰電力のうち2次電池受入可能電力を越える電力を第2余剰電力とし、電気ヒータ51に供給される冷却水流量が第2余剰電力を電気ヒータ51で消費する際の発熱に対応する所定流量以上の場合に、第2余剰電力を電気ヒータ51で消費する。電気ヒータ51に供給される冷却水流量が所定流量未満の場合に、冷却水流量を増大させるとともに、2次電池受入可能電力を増大させて第2余剰電力を2次電池13に充電する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素と酸素との化学反応により電気エネルギーを発生させる燃料電池を備える燃料電池システムに関するもので、車両、船舶及びポータブル発電器等の移動体に適用して有効である。
【背景技術】
【0002】
燃料電池を駆動源とする燃料電池車両では、一般に減速時や降坂時に車両駆動用モータ等を用いて回生制動を行わせ、回生制動により得られる回生電力を2次電池(電力貯蔵装置)に蓄え、次の発進時や加速時に利用することで、車両燃費、車両加速性能を向上させることが行われている。
【0003】
しかしながら、降り坂が連続して続くような場合には、回生電力により2次電池が満充電状態になってしまい、駆動用モータからの回生電力を2次電池に蓄えることができなくなり、回生制動による制動力を得ることができなくなるという問題があった。このような場合、回生制動が利用できないために機械式のブレーキのみに依存することになり、さらには燃料電池車両では内燃機関車両などに比べてエンジンブレーキがない分だけ、機械式ブレーキの大型化やブレーキの操作頻度が上昇することに伴う運転者の負担増、乗車フィーリングの悪化といった問題があった。
【0004】
このため回生制動による余剰電力を処理するために、燃料電池の冷却水回路に電気ヒータを設け、2次電池への充電を優先しつつ、余剰電力を電気ヒータで消費させる燃料電池システムが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4341356号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1の構成では、電気ヒータで余剰電力を消費する際に、冷却水循環ポンプの応答遅れによって、電気ヒータの発熱に対して電気ヒータに流れる冷却水流量が充分ではない場合がある。このような場合には、電気ヒータで冷却水が沸騰したり過熱するおそれがある。
【0007】
本発明は上記問題点に鑑み、回生電力を得ることが可能な燃料電池システムにおいて、冷却系に悪影響を及ぼすことなく、余剰電力を確実に消費することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、水素と酸素とを電気化学反応させて電力を得る燃料電池(10)を備える移動体に搭載される燃料電池システムであって、
前記燃料電池(10)に供給される冷却水が循環する冷却水経路(40)と、前記冷却水経路(40)に冷却水を循環させる冷却水循環ポンプ(41、66)と、前記冷却水経路(40)に設けられ、前記冷却水の熱を大気に放出する放熱器(43)と、前記冷却水経路(40)において、前記燃料電池(10)の下流側かつ前記放熱器(43)の上流側に設けられ、前記冷却水を加熱する電気ヒータ(51)と、前記移動体の制動に伴って回生電力を発生する回生電力発生手段(11、12)と、前記燃料電池(10)および前記回生電力発生手段(11、12)と並列に接続された2次電池(13)と、前記燃料電池(10)、前記回生電力発生手段(11、12)あるいは前記2次電池(13)の少なくとも1つからの電力を消費可能な電気負荷(11、16)と、前記燃料電池(10)の発電電力と回生電力発生手段(11、12)の回生電力との合計電力のうち前記負荷手段(11、16)の消費電力を超える第1余剰電力を前記2次電池(13)に充電する第1余剰電力処理手段(100、S18、S19)と、前記第1余剰電力のうち前記2次電池(13)の受入可能電力を越える電力を第2余剰電力とし、前記電気ヒータ(51)に供給される冷却水流量が前記第2余剰電力を前記電気ヒータ(51)で消費する際に発生する熱に対応する所定流量以上の場合に、前記第2余剰電力を前記電気ヒータ(51)で消費する第2余剰電力処理手段(100、S35)と、前記電気ヒータ(51)に供給される冷却水流量が前記所定流量未満の場合に、前記冷却水循環ポンプ(41、66)による冷却水流量を増大させるとともに、前記2次電池(13)の受入可能電力を増大させて前記第2余剰電力を前記2次電池(13)に充電する暫定余剰電力処理手段(100、S27、S29)とを備えることを特徴としている。
【0009】
これにより、回生電力にて発生する余剰電力は優先的に2次電池(13)に蓄えられ、余剰電力が2次電池(13)に受け入れ可能な電力以上の場合は、電気ヒータ(51)で消費される。そして、余剰電力を消費する際の電気ヒータ(51)での発熱に対して冷却水流量が充分でない場合には、一時的に2次電池(13)の受入可能電力を増加させ、電気ヒータ(51)で消費する余剰電力を一時的に2次電池(13)に充電することで、冷却水流量が充分でない状態で電気ヒータ(51)で余剰電力を消費して冷却水が沸騰したり過熱されたりすることを防止できる。
【0010】
また、請求項2に記載の発明では、前記暫定余剰電力処理手段により前記2次電池(13)の受入可能電力を増大させて前記第2余剰電力を前記2次電池(13)に充電した後、前記電気ヒータ(51)に供給される冷却水流量が前記所定流量以上となった場合に、前記2次電池(13)の受入可能電力を増大前の値に戻す受入可能電力復帰手段(100、S33)を備えることを特徴としている。
【0011】
これにより、2次電池(13)の受入可能電力の増大は一時的なものとなり、2次電池(13)に与える影響を最小限に抑えることができる。
【0012】
また、請求項3に記載の発明では、前記暫定余剰電力処理手段により前記2次電池(13)の受入可能電力を増大させて前記第2余剰電力を前記2次電池(13)に充電した後、前記電気ヒータ(51)に供給される冷却水流量が前記所定流量以上となった場合に、前記電気ヒータ(53)の作動を開始させることを特徴としている。
【0013】
これにより、冷却水流量が充分な状態になってから電気ヒータ(51)で余剰電力を消費することができるので、冷却水が沸騰したり過熱されたりすることがない。
【0014】
また、請求項4に記載の発明では、前記移動体の制動を行う機械式ブレーキを備え、前記第2余剰電力のうち前記電気ヒータ(51)の消費電力を超える第3余剰電力に相当するエネルギを前記機械式ブレーキで消費することを特徴としている。
【0015】
これにより、機械式ブレーキの使用を最小限に抑えることができ、乗車フィーリングの悪化を極力抑えることができる。
【0016】
また、請求項5に記載の発明のように、冷却水と空調風を熱交換して空調風を加熱する暖房用熱交換器(56)を備え、前記冷却水循環ポンプは、前記燃料電池(10)に冷却水を供給する燃料電池用ポンプ(41)または前記暖房用熱交換器(56)に冷却水を供給する空調用ポンプ(66)の少なくとも一方を用いることができる。
【0017】
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】第1実施形態の燃料電池システムの全体構成を示す概念図である。
【図2】第1実施形態の車両空調装置の構成を示す概念図である。
【図3】ヒータコアの斜視図である。
【図4】第1実施形態の燃料電池システムでの発電電力の処理を示すフローチャートである。
【図5】図4のサブルーチンを示すフローチャートである。
【図6】(a)は冷却水必要流量と電気ヒータの消費電力の関係を示す特性図であり、(b)は電気ヒータ消費電力と冷却水循環ポンプ回転数の関係を示す特性図である。
【図7】第1実施形態の燃料電池システムにおける燃料電池冷却処理と車室内暖房処理を示すフローチャートである。
【図8】第2実施形態の燃料電池システムの概念図である。
【図9】第3実施形態の燃料電池システムの概念図である。
【図10】第4実施形態の燃料電池システムの概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態について図1〜図7に基づいて説明する。本第1実施形態は、本発明の燃料電池システムを燃料電池を電源として走行する電気自動車(燃料電池車両)に適用したものである。
【0020】
図1は、本第1実施形態の燃料電池システムの全体構成を示す概念図である。図1に示すように、本第1実施形態の燃料電池システムは、水素と酸素との電気化学反応を利用して電力を発生する燃料電池(FCスタック)10を備えている。燃料電池10は、車両走行用の電動モータ(負荷)11や2次電池13、その他補機16などの電気負荷に電力を供給するように構成されている。燃料電池10では、以下の水素と酸素の電気化学反応が起こり電気エネルギーが発生する。
【0021】
アノード(水素極):H2→2H++2e-
カソード(酸素極):2H++1/2O2+2e-→H2
全体の反応: H2+1/2O2→H2
本第1実施形態では燃料電池10として固体高分子型燃料電池を用いており、基本単位となるセルが複数積層されて構成されている。各セルは、電解質膜が一対の電極で挟まれた構成となっている。なお、本発明は燃料電池の種類を限定するものではなく、他の種類の燃料電池、例えばリン酸型燃料電池、溶融炭酸塩型燃料電池、固体電解質型燃料電池にも適用可能である。
【0022】
燃料電池10にて発生した直流電力は、インバータ12で交流電流に変換され走行用モータ11に供給される。これにより、モータ11は車輪駆動力を発生させ車両を走行させることができる。また、燃料電池10が発電した電力をDC/DCコンバータ14を介して、2次電池13に蓄えることができる。
【0023】
インバータ12は、燃料電池10や2次電池13から供給された直流電流を交流電流に変換して走行用モータ11に供給して、走行用モータ11を駆動している。本第1実施形態の電気自動車では、車両減速時や降坂時に走行用モータ11を発電機として作動させて発電を行うとともにブレーキ力を得る回生制動を行い、回生制動によって発電された回生電力はインバータ12を介して2次電池13に充電できるように構成されている。図示を省略しているが、本実施形態の電気自動車は機械式ブレーキを備えており、機械式ブレーキを使用した分だけ回生制動により発生する回生電力が小さくなる。なお、走行用モータ11およびインバータ12が本発明の回生電力発生手段に相当している。
【0024】
また、本第1実施形態の燃料電池システムでは、2次電池13が燃料電池10と電気的に並列接続されており、燃料電池10とともに2次電池13からもモータ11に電力を供給可能に構成されている。例えば、車両発進時や加速時などに大きな電力が必要な場合、燃料電池10からだけでなく2次電池13からも電力を取り出して走行用モータ11に供給することで対応することができる。2次電池13としては、例えば一般的なニッケル水素電池を用いることができる。
【0025】
DC/DCコンバータ14は、2次電池13と燃料電池10とが同じ電圧になるように電圧変換を行う。DC/DCコンバータ14は、外部からの制御信号によって双方向に電力を伝達することができる。
【0026】
燃料電池10とDC/DCコンバータ14の間には、ダイオード15が設けられている。このダイオード15により、燃料電池10に2次電池13からの電流および走行用モータ11、インバータ12で回生された電流が流れ込み、燃料電池10が破壊されるのを防いでいる。
【0027】
補機16は、燃料電池10に空気を供給する空気供給装置30、冷却水循環ポンプ用モータ42などであり、インバータ17を介して2次電池13と接続されている。なお、本明細書では、走行用モータ11と補機16を電気負荷ともいう。
【0028】
本第1実施形態の燃料電池システムでは、燃料電池10の発電電力と走行用モータ11による回生電力との合計から電気負荷11、16による消費電力を引いた差が第1余剰電力となり、第1余剰電力は2次電池13に充電される。また、この第1余剰電力から2次電池13の受入可能電力を引いた差が第2余剰電力となる。電気ヒータ51が燃料電池10およびインバータ12と並列に接続されており、電気ヒータ51に第2余剰電力を供給することができるように構成されている。
【0029】
燃料電池10には、水素供給装置20から水素供給経路21を介して水素が供給され、空気供給装置30から空気供給経路32を介して空気が供給されるように構成されている。
【0030】
水素供給装置20としては例えば水素吸蔵合金等の水素貯蔵材を内蔵して純水素を貯蔵する水素タンクを用いることができる。水素供給経路21には、シャットバルブ22および水素レギュレータ23が設けられている。燃料電池1に水素を供給する際には、シャットバルブ22を開き、水素レギュレータ23によって所望の圧力にした水素を燃料電池1に供給する。
【0031】
水素排出経路24からは、未反応水素ガス、蒸気(あるいは水)および空気極から固体高分子膜を通過して混入した窒素、酸素などが排出される。水素排出経路24には、シャットバルブ25が設けられており、燃料電池10の運転条件に応じて開閉される。
【0032】
空気供給装置30としては、例えばエアコンプレッサを用いることができる。エアコンプレッサ30は、コンプレッサ用モータ31にて駆動される。空気供給経路32には供給空気加湿用の加湿器33が設けられている。加湿器33は燃料電池10から排出される排気空気に含まれる水分を回収し、この水分を用いてエアコンプレッサ30の吐出後の空気を加湿する装置である。これにより、発電時における電気化学反応のために、燃料電池10内の固体高分子膜を水分を含んだ湿潤状態にしておくことができる。
【0033】
空気排出経路34からは、未反応空気、蒸気(あるいは水)および水素極から固体高分子膜を通過して混入した水素などが排出される。レギュレータ35は、空気排出経路34に設けられており、燃料電池10を効率的に運転するために、燃料電池10に供給される空気の圧力を調整している。
【0034】
燃料電池10は発電に伴い発熱を生じる。固体高分子型燃料電池では、膜の耐熱温度や効率の点から80℃前後で運転する必要がある。このため、燃料電池システムには、燃料電池10を冷却するための冷却システムが設けられている。
【0035】
冷却システムは、燃料電池10に冷却水を循環させる冷却水経路40、冷却水を圧送する冷却水循環ポンプ41、冷却水の放熱を行うラジエータ43等から構成されている。冷却水としては、低温時でも凍結しないようにエチレングリコールと水の混合溶液を用いている。なお、冷却水が本発明の熱媒体に相当し、冷却水経路40が本発明の熱媒体経路に相当し、ラジエータ43が本発明の放熱器に相当している。
【0036】
冷却水循環ポンプ41はポンプ用モータ42と機械的に接続されており、ポンプ用モータ42を回転させることにより冷却水循環ポンプ41を回転させて燃料電池10に冷却水を循環させることができる。冷却水循環ポンプ41の回転数を調整することで、冷却水経路40の冷却水流量を調整することができる。燃料電池10で発生した熱は、冷却水を介してラジエータ43で系外に排出される。
【0037】
冷却ファン44は冷却ファンモータ45と機械的に接続されており、冷却ファンモータ45を回転させることにより冷却ファン44を回転させてラジエータ43に送風し、ラジエータ43より熱を外気に放出させることができる。なお、ラジエータ43は車両走行時に走行風(ラム圧)を利用できる位置に搭載するのがのぞましい。
【0038】
サーモスタット46は、公知の技術であり冷却水温度が所定の値より大きい場合は、ラジエータ43側に冷却水が流れるようにし、逆に冷却水温度が所定の値より小さい場合はラジエータバイパス経路47に冷却水が流れるよう制御することで温度制御を行っている。
【0039】
このような冷却系によって、冷却水循環ポンプ41による流量制御、冷却ファン44による風量制御、サーモスタット46によるバイパス制御で冷却水の温度を調整し、燃料電池10の温度制御を行うことができる。
【0040】
また、本第1実施形態の構成では、冷却水が直接燃料電池10内部と接するため、冷却水の導電率が大きいと、漏電による感電や燃料電池システム効率の低下をまねく。このため、本第1実施形態では、冷却水経路40にイオン吸着用経路48を設け、イオン吸着用経路48にイオン交換樹脂(イオン吸着手段)49を配置している。
【0041】
イオン交換樹脂49は、各部品より冷却水に溶出したイオンを吸着し、冷却水の導電率上昇を抑えることができる。ちなみにイオン吸着装置49は、冷却水が流れる位置であれば、どこに設置してもよい。さらに、本第1実施形態では、導電率の小さい冷却水として、エチレングリコールと水の混合物を用いている。
【0042】
また、冷却水経路40における燃料電池10の出口近傍には、冷却水温度を検出する温度センサ50が設けられている。
【0043】
冷却水経路40における燃料電池10の下流側であってラジエータ43の上流側には、冷却水を加熱する電気ヒータ51が設けられている。上述のように電気ヒータ51には燃料電池システムの余剰電力が供給される。電気ヒータ51は、供給電力を調整することで出力(加熱温度)を調整できる。また、電気ヒータ51は、DC/DCコンバータ14などの電力変換器を介することなくインバータ12と直接接続されている。DC/DCコンバータ14を介して電気的に接続した場合、DC/DCコンバータ14が破壊したときに電気ヒータ51にて電力消費ができなくなり回生制動ができなくなる。このため、これらを電気的に直接接続することで燃料電池システムの信頼性を向上させることができる。
【0044】
冷却水として、エチレングリコール水溶液を用いた場合には、酸素存在下で熱分解温度以上になると分解してギ酸などの有機酸を生成する。これらの有機酸は、冷却水中でイオン化し冷却水の導電率を上昇させる。電気ヒータ51は冷却水と接する表面の温度がもっとも高くなるので、本第1実施形態では電気ヒータ51の冷却水と接する表面あるいは電気ヒータ51内部の冷却水と接する表面近傍に温度センサ52を設けている。
【0045】
本第1実施形態では、温度センサ52にて検出した温度に基づいて、冷却水が冷却水の熱分解温度以下になるように冷却水の温度制御を行う。この温度制御を開始する温度を、熱分解温度以下の熱分解速度が大きくなる温度に設定してもよい。電気ヒータ51による加熱温度を低下させるためには、電気ヒータ51に循環する冷却水流量を増加させるか、あるいは電気ヒータ51に供給する電力を低下させる。このような制御を行うことで、冷却水の熱分解によるイオンの発生を抑制しイオン交換樹脂49の寿命を長くすることができる。
【0046】
冷却水経路40には、冷却水を電気ヒータ51をバイパスさせるための電気ヒータバイパス経路53が設けられている。電気ヒータバイパス経路53は、電気ヒータ51の上流側で冷却水経路40から分岐し、電気ヒータ51の下流側で冷却水経路40に合流している。冷却水経路40と電気ヒータバイパス経路53との分岐点には、流量調整弁(電気ヒータバイパス流量調整手段)54が設けられている。本第1実施形態では、流量調整弁54としてロータリバルブを用いている。流量調整弁54により、電気ヒータ51側あるいは電気ヒータバイパス経路53側に流れる冷却水の割合をそれぞれ0〜100%の間で任意に調整することができる。
【0047】
冷却水経路40における電気ヒータ51の下流側であってラジエータ43の上流側には、室内暖房用ユニット55が設けられている。室内暖房用ユニット55は、ヒータコア(暖房用放熱器)56、室内暖房用ファン57、ファン用モータ58、暖房用放熱器バイパス経路59、オンオフ弁(暖房用放熱器バイパス流量調整手段)60を備えている。
【0048】
ヒータコア56は冷却水を熱源として、ヒータコア56を通過する空気を加熱するものである。室内暖房用ファン57は室内暖房用ファンモータ58と機械的に接続されており、室内暖房用ファンモータ58を回転させることにより室内暖房用ファン57を回転させてヒータコア56に送風する。
【0049】
図2は、車両用空調装置の構成を示す概念図である。図2に示すように、車室内空気あるいは車室外空気を室内暖房用ファン57によってヒータコア56に送り、ヒータコア56を通過後の空気を車室内に送風できるように、ヒータコア56および室内暖房用ファン57の周囲にはダクトが設置されている。
【0050】
図2に示すように、室内暖房用ファン13は室内空気あるいは室外空気のエバポレータ62に送られる。エバポレータ62は、内部で低圧低温の冷媒が蒸発することで空気の冷却を行うものである。ヒータコア56は、エバポレータ62の空気流れ下流側に設置されている。ヒータコア56には、エバポレータ62通過後の空気をヒータコア56を通過させるかどうかを制御するエアミックスドア63が設けられている。
【0051】
空気温度を低くして冷房したい場合には、エアミックスドア63を閉じてヒータコア56に空気が通過しないようにする。逆に空気温度を高くして暖房したい場合には、エアミックスドア63を開いてヒータコア56に空気が通過するようにする。除湿を行う場合には、エアミックスドア63を開いてエバポレータ62で冷却除湿した空気をヒータコア56で加熱し、室内に導入する。エアミックスドア63はオンオフ制御ではなく、必要な空気温度に応じ開度を調節できる。
【0052】
ここで、常にヒータコア56に温水が流れる構成とすると、例えば夏場で暖房の必要がないときにも、ヒータコア56から熱が放出され空調性能に悪影響を与えたり、室内冷房のためのエネルギーが余分に必要になり車両燃費を悪化させることになる。特にエネルギー回生時は、ヒータコア56の上流にある電気ヒータ51から大きな熱が冷却水に放出されるので、エアミックスドア63を閉じただけでは充分でなく、回生電力による熱が車室内に侵入することが考えられる。また、エアミックスドア63の設置のために大きなスペースを必要とする。そこで本第1実施形態では、オンオフ弁60およびバイパス経路59を設置することで上記の問題を回避している。
【0053】
図1に戻り、暖房用放熱器バイパス経路59は、ヒータコア56をバイパスするように冷却水経路40に設けられており、ヒータコア56の上流側で冷却水経路40から分岐し、ヒータコア56の下流側で冷却水経路40に合流している。
【0054】
オンオフ弁60は、冷却水経路40における暖房用放熱器バイパス経路59との分岐点の下流側であってヒータコア56の上流側に設けられている。オンオフ弁60は、外部からの制御で冷却水循環流路40を開閉可能な電気式の開閉弁であり、通常時(非通電時)は閉状態となっている。オンオフ弁60を開状態にすることで冷却水はヒータコア56に流れ、オンオフ弁60を閉状態にすることで冷却水は暖房用放熱器バイパス経路59に流れる。このような簡易な構成のオンオフ弁60を用いることで、システムを簡易な構成とすることができ、コスト低減を図ることができる。
【0055】
図3はヒータコア56の斜視図である。ヒータコア60はチューブとフィンで構成される熱交換器であり、チューブ内を冷却水が流れ、外部を空気が流れ熱交換を行うことができる。図3中の矢印は冷却水の流れを示している。また、図3に示すように、ヒータコア56、暖房用放熱器バイパス経路59、オンオフ弁60が一体的に構成されている。これらの構成要素56、59、60を一体化することで、車両への搭載性を向上させることができる。なお、これらの構成要素56、59、60のうち任意の2つの組合せを一体化した場合も車両への搭載性を向上させることができる。
【0056】
図1に戻り、本第1実施形態の燃料電池システムには、外気温を検出する外気温センサ61が設けられている。さらに燃料電池システムには、車両システムおよび各構成機器を制御する電子制御装置(ECU)100が設けられている。制御装置100は、各種入力信号に基づいて、燃料電池システムを構成する各種制御機器の作動を制御するもので、CPU、ROM、RAM、I/O等を備えた周知のマイクロコンピュータによって構成され、ROM等の記憶部に記憶された制御プログラムに従って各種演算等の処理を実行する。本発明の熱媒体温度調整手段は、ECU100により構成される。ECU100は、温度センサ52、61の検出温度に基づいて、電気ヒータ51に対する電力供給量の調整、冷却水流量の調整等を行い、冷却水温度を調整する。また、ECU100は、燃料電池10の発電電力および走行用モータ11による回生電力を、電気負荷11、16、2次電池13、電気ヒータ51に振り分け、余剰電力を消費するように構成されている。
【0057】
次に、本第1実施形態の燃料電池システムでの発電電力の処理について図4のフローチャートに基づいて説明する。
【0058】
まず、燃料電池10の発電電力Pfcを算出する(S10)。次に、ブレーキ踏力等から車両制動トルク指令値Taを算出し、車両制動トルク指令値Taから回生電力Pbを算出する(S11)。次に、電気負荷11、16の消費電力Pcを算出する(S12)。
【0059】
次に、燃料電池10の発電電力Pfcと回生電力Pbとの合計発電電力Pfc+Pbが電気負荷11、16の消費電力Pcを上回っているか否か(Pfc+Pb>Pcであるか否か)を判定する(S13)。この結果、Pfc+Pb>Pcでないと判定された場合には(S13:NO)、合計発電電力Pfc+Pbのすべてを電気負荷11、16で消費する(S14)。
【0060】
一方、Pfc+Pb>Pcであると判定された場合(S13:NO)、すなわち合計発電電力Pfc+Pbが電気負荷11、16の消費電力Pcを上回る場合には、合計電力Pfc+Pbから電気負荷11、16の消費電力Pcを引いた差である第1余剰電力(Pfc+Pb)−Pcが発生するので、電力Pcを電気負荷11、16で消費させ(S15)、2次電池13の受入可能電力Pb1を算出する(S16)。2次電池13の受入可能電力Pb1は、2次電池13の種類、2次電池13の温度、SOC(充電量)、SOC上限値(充電量の上限値)等に基づいて算出することができる。SOCは、満充電に対する残存容量(%)で示される。2次電池13のSOC上限値は、2次電池13の性能が低下するSOC限界値(例えば80%)より低く設定されており、本実施形態では満充電の70%(初期値)に設定している。
【0061】
次に、第1余剰電力(Pfc+Pb)−Pcが、2次電池13の受入可能電力Pb1を上回るか否か((Pfc+Pb)−Pc>Pb1であるか否か)を判定する(S17)。この結果、(Pfc+Pb)−Pc>Pb1でないと判定された場合には(S17:NO)、第1余剰電力(Pfc+Pb)−Pcを2次電池13に充電する(S18)。
【0062】
一方、(Pfc+Pb)−Pc>Pb1であると判定された場合(S17:YES)、すなわち第1余剰電力(Pfc+Pb)−Pcが2次電池13の受入可能電力Pb1を上回る場合には、第1余剰電力(Pfc+Pb)−Pcから2次電池13の受入可能電力Pb1を引いた差である第2余剰電力(Pfc+Pb)−(Pc+Pi1)が発生するので、電力Pi1を2次電池13に充電し(S19)、第2余剰電力を電気ヒータ51で消費させるための電気ヒータ制御処理を行う(S20)。なお、ECU100が実行するS18、S19の処理が本発明の第1余剰電力処理手段に相当している。
【0063】
ここで、電気ヒータ制御処理を図5のフローチャートに基づいて説明する。まず、電気ヒータ51の受入可能電力Phを算出する(S21)。電気ヒータ51の受入可能電力Phは、冷却水温度、ラジエータ43の容量、ヒータコア56の容量等に基づいて算出することができる。
【0064】
次に、第2余剰電力(Pfc+Pb)−(Pc+Pi1)が、電気ヒータ51の受入可能電力Phを上回るか否か((Pfc+Pb)−(Pc+Pi1)>Phであるか否か)判定する(S22)。この結果、(Pfc+Pb)−(Pc+Pi1)>Phでないと判定された場合(S22:NO)、すなわち第2余剰電力を電気ヒータ51で受入可能である場合には、電気ヒータ51で受入可能電力Phを消費する際の冷却水循環ポンプ41の必要回転数Rrを算出する(S23)。S23で算出する冷却水循環ポンプ41の必要回転数Rrは、電気ヒータ51で第2余剰電力(Pfc+Pb)−(Pc+Pi1)を消費する際に、冷却水温度が熱分解温度以下を維持するために必要な冷却水流量を確保するのに必要となる冷却水循環ポンプ41の回転数である。
【0065】
図6(a)は、冷却水必要流量と電気ヒータ51の消費電力の関係を示している。図6(a)に示すように、電気ヒータ51の消費電力が多くなるほど、電気ヒータ51の発熱量が大きくなるので、必要冷却水流量が増大する。また、冷却水温度が高いほど、沸騰や過熱しやすいので、電気ヒータ51の消費電力が同じであっても、冷却水必要流量が多くなる。
【0066】
次に、図5に戻り、冷却水循環ポンプ41の現在回転数Rpを取得する(S24)。そして、冷却水循環ポンプ41の現在回転数Rpが冷却水循環ポンプ41の必要回転数Rrを下回っているか否か(Rp<Rrであるか否か)を判定する(S25)。このS25の処理では、電気ヒータ51で第2余剰電力を消費した際の発熱に対して、電気ヒータ51に供給される冷却水流量が充分な量であるか否かが判定される。
【0067】
この結果、Rp<Rrであると判定された場合には(S25:YES)、電気ヒータ51で第2余剰電力を消費した際の発熱に対して冷却水流量が充分ではなく、電気ヒータ51を作動させた場合には、冷却水が沸騰したり過熱したりするおそれがある。このため、電気ヒータ51を作動させることなく、冷却水循環ポンプ41の回転数を上昇させる(S26)。これにより、電気ヒータ51に供給される冷却水流量を増大させることができる。
【0068】
図6(b)は、電気ヒータ51の消費電力と冷却水循環ポンプ41の回転数の関係を示している。図6(b)に示すように、t1の時点で電気ヒータ51の消費電力を増大させ、冷却水循環ポンプ41の回転数を増大させた場合には、電気ヒータ51の消費電力の変化に対して、冷却水循環ポンプ41の回転数の変化が遅れ、t2の時点で増大後の電気ヒータ51の消費電力に対応する回転数に到達する。そこで、本実施形態では、t1からt2に至るまでの間、電気ヒータ51で消費する電力(図6(b)の斜線で示す部分)を一時的に2次電池13に充電している。
【0069】
次に、図5に戻り、2次電池13のSOC上限値を初期値(70%)から所定値に増大させ、2次電池13の受入可能電力Pb2を算出する(S27)。ここで、増大後のSOC上限値である「所定値」は、初期値(70%)より大きく、かつ、上述のSOC限界値(80%)より小さい値として設定され、本実施形態では73%に設定している。SOC上限値増大は、冷却水循環ポンプ41の回転数の応答遅れ分の電力を吸収できればよく、SOC上限値を大幅に引き上げる必要はない。このため、SOC上限値増大による2次電池13の劣化に対する影響を小さくできる。
【0070】
次に、第2余剰電力(Pfc+Pb)−(Pc+Pi1)が、2次電池13の受入可能電力Pb2を上回るか否か((Pfc+Pb)−(Pc+Pi1)>Pi2であるか否か)判定する(S28)。この結果、(Pfc+Pb)−(Pc+Pi1)>Pi2でないと判定された場合(S28:NO)、すなわち第2余剰電力をSOC上限値変更後の2次電池13で受入可能である場合には、第2余剰電力(Pfc+Pb)−(Pc+Pi1)を2次電池13に充電し(S29)、S24の処理に戻る。その後、冷却水循環ポンプ41の現在回転数Rpが冷却水循環ポンプ41の必要回転数Rr以上となるまで(Rp≧Rrとなるまで)、すなわち、電気ヒータ51で第2余剰電力を消費した際の発熱に対して冷却水流量が充分な流量となるまで、S26〜S29の処理を繰り返し行う。なお、ECU100が実行するS27、S29の処理が本発明の暫定余剰電力処理手段に相当している。
【0071】
S28の判定処理で、(Pfc+Pb)−(Pc+Pi1)>Pi2であると判定された場合(S28:NO)、すなわち第2余剰電力をSOC上限値変更後の2次電池13で受入できない場合には、この第2余剰電力分は回生電力Pbを低く抑える必要があり、この第2余剰電力分だけ回生制動が効かなくなるので、第2余剰電力に相当するエネルギを機械式ブレーキで消費する(S30)。これにより、第2余剰電力に相当する回生電力の発生が押さえられる。その後、2次電池13のSOC上限値を初期値(70%)に設定する(S31)。
【0072】
次に、S25の判定処理で、Rp<Rrでないと判定された場合には(S25:NO)、電気ヒータ51で第2余剰電力を消費した際の発熱に対して冷却水流量が充分な流量であると判断できる。このため、2次電池13のSOC上限値が初期値(70%)であるか否かを判定する(S32)。この結果、SOC上限値が初期値(70%)である場合には(S32:YES)、S35の処理に移行し、第2余剰電力(Pfc+Pb)−(Pc+Pi1)で電気ヒータ51を作動させる(S35)。なお、ECU100が実行するS35の処理が本発明の第2余剰電力処理手段に相当している。
【0073】
一方、SOC上限値が初期値(70%)でない場合には(S32:NO)、S27の処理でSOC上限値が増大され、S29の処理で第2余剰電力(Pfc+Pb)−(Pc+Pi1)が2次電池13に充電されていると考えられる。このため、SOC上限値を初期値(70%)に設定し(S33)、2次電池13から第2余剰電力(Pfc+Pb)−(Pc+Pi1)を放電する(S34)。そして、第2余剰電力(Pfc+Pb)−(Pc+Pi1)で電気ヒータ51を作動させる(S35)。なお、ECU100が実行するS33の処理が本発明の受入可能電力復帰手段に相当している。
【0074】
次に、S23の判定処理で、(Pfc+Pb)−(Pc+Pi1)>Phであると判定された場合(S23:YES)、すなわち第2余剰電力を電気ヒータ51で受入できない場合には、冷却水循環ポンプ41の必要回転数Rrを算出する(S36)。S36で算出する冷却水循環ポンプ41の必要回転数Rrは、電気ヒータ51で受入可能電力Phを消費する際に、冷却水温度が熱分解温度以下を維持するために必要な冷却水流量を確保するのに必要となる冷却水循環ポンプ41の回転数である。
【0075】
次に、冷却水循環ポンプ41の現在回転数Rpを取得する(S37)。そして、冷却水循環ポンプ41の現在回転数Rpが冷却水循環ポンプ41の必要回転数Rrを下回っているか否か(Rp<Rrであるか否か)を判定する(S38)。
【0076】
この結果、Rp<Rrでないと判定された場合には(S38:NO)、電気ヒータ41を電力Phを消費する際の発熱に対して冷却水流量が充分であると判断できる。このため、Phで電気ヒータ51を作動させる(S39)。このとき、電気ヒータ51で吸収しきれなかった第3余剰電力(Pfc+Pb)−(Pc+Pi+Ph)が発生する。この第3余剰電力分は回生電力Pbを低く抑える必要があり、この第3余剰電力分だけ回生制動が効かなくなるので、機械式ブレーキで消費する(S40)。これにより、第3余剰電力に相当する回生電力の発生が押さえられる。
【0077】
一方、Rp<Rrであると判定された場合には(S38:YES)、電気ヒータ51で第2余剰電力を消費した際の発熱に対して冷却水流量が充分ではなく、電気ヒータ51を作動させた場合には、冷却水が沸騰したり過熱したりするおそれがある。このため、電気ヒータ51を作動させることなく、第2余剰電力分(Pfc+Pb)−(Pc+Pi)を機械式ブレーキで消費する(S41)。これにより、第2余剰電力に相当する回生電力の発生が押さえられる。
【0078】
次に、本第1実施形態の燃料電池システムにおける燃料電池冷却と車室内暖房について図7のフローチャートに基づいて説明する。
【0079】
まず、燃料電池10の発電電力Pfcと燃料電池10出口における冷却水温度Toutを検出する(S100)。次に、燃料電池10の冷却に必要とする冷却水流量Vfcを算出する(S101)。
【0080】
次に、余剰電力(上述した第2余剰電力)を電気ヒータ51で処理するか否かを判定する(S102)。この結果、余剰電力を電気ヒータ51で処理しないと判定された場合には(S102:NO)、車室内の暖房あるいは除湿がオンになっているか否かを判定する(S103)。この結果、車室内の暖房あるいは除湿がオンになっていないと判定された場合には(S103:NO)、流量調整弁54を電気ヒータバイパス経路53側に切り替え、すべての冷却水が電気ヒータバイパス経路53側に流れるようにし(S103)、必要回転数Rrで冷却水循環ポンプ41を作動させる(S105)。S105の処理では、冷却水流量がVfcとなる冷却水循環ポンプ41の回転数を必要回転数Rrとしている。燃料電池10を通過後の冷却水は、ラジエータ43あるいはラジエータバイパス経路47に流れることで温度が調整される。
【0081】
一方、S103の判定処理で、車室内の暖房あるいは除湿がオンになっていると判定された場合には(S103:YES)、オンオフ弁60を開状態とし(S106)、ヒータコア56での必要暖房能力から電気ヒータ51の要求電力Ph2を求め、要求ヒータ電力Ph2から電気ヒータ51の必要冷却水流量Vh2を算出する(S107)。
【0082】
次に、ヒータ必要冷却水流量Vh2が燃料電池必要冷却水流量Vfcを下回っているか否かを判定する(S108)。この結果、Vh2<Vfcでないと判定された場合には(S108:NO)、冷却水のすべてが電気ヒータ51側に流れるように流量調整弁54を切り替え(S109)、S111の処理に移行する。
【0083】
一方、Vh2<Vfcであると判定された場合には(S108:YES)、電気ヒータ51側の冷却水流量がVh2、電気ヒータバイパス通路53側の冷却水流量が(Vfc−Vh2)となるように流量調整弁54を切り替え(S110)、必要回転数Rrで冷却水循環ポンプ41を作動させる(S111)。S110に続いてS111の処理を行う場合には、冷却水流量がVfcとなる冷却水循環ポンプ41の回転数を必要回転数Rrとし、上述のS109に続いてS111の処理を行う場合には、冷却水流量がVh2となる冷却水循環ポンプ41の回転数を必要回転数Rrとする。そして、電気ヒータ51を電力Ph2で作動させる(S112)。所望の暖房性能が得られるように室内暖房用ファンモータ58の回転数を制御する。
【0084】
車両走行開始時には冷却水温度が低いので、このように電気ヒータ51にて補助的に冷却水を加熱することで暖房能力を向上させることができる。この場合、電気ヒータ51は燃料電池10あるいは2次電池13からの電力を用いて発電させる。
【0085】
上記S102において余剰電力を電気ヒータ51で処理すると判定された場合には、車室内の暖房あるいは除湿がオンになっているか否かを判定する(S113)。この結果、車室内の暖房あるいは除湿がオンになっていないと判定された場合には(S113:NO)、余剰電力を電気ヒータ51にて処理するヒータ処理電力Ph1から電気ヒータ51の必要冷却水流量Vh1を算出する(S114)。
【0086】
次に、ヒータ必要冷却水流量Vh1が燃料電池必要冷却水流量Vfcを下回っているか否かを判定する(S115)。この結果、Vh1<Vfcでないと判定された場合には(S115:NO)、冷却水のすべてが電気ヒータ51側に流れるように流量調整弁54を切り替え(S116)、S118の処理に移行する。
【0087】
一方、Vh1<Vfcであると判定された場合には(S115:YES)、電気ヒータ51側の冷却水流量がVh1、電気ヒータバイパス通路53側の冷却水流量が(Vfc−Vh1)となるように流量調整弁54を切り替え(S117)、必要回転数Rrで冷却水循環ポンプ41を作動させる(S118)。S117に続いてS118の処理を行う場合には、冷却水流量がVfcとなる冷却水循環ポンプ41の回転数を必要回転数Rrとし、上述のS116に続いてS118の処理を行う場合には、冷却水流量がVh1となる冷却水循環ポンプ41の回転数を必要回転数Rrとする。
【0088】
次に、冷却水循環ポンプ41の回転数が必要回転数Rrより小さいか否かを判定する(S119)。この結果、冷却水循環ポンプ41の回転数が必要回転数Rrより小さい場合には(S119:YES)、冷却水循環ポンプ41の回転数が必要回転数Rr以上となるまで待機する。そして、冷却水循環ポンプ41の回転数が必要回転数Rr以上となった場合には(S119:NO)、電気ヒータ51を電力Ph1で作動させる(S120)。余剰電力は電気ヒータ51にて熱に変換され、冷却水を介してラジエータ43で外気に排出される。
【0089】
上記S113で車室内の暖房あるいは除湿がオンになっていると判定された場合には、オンオフ弁60を開状態とし(S121)、ヒータ処理電力Ph1と要求ヒータ電力Ph2のうち大きい方の電力Ph3を用い、電気ヒータ51に流す冷却水流量Vh1を算出する(S122)。
【0090】
次に、ヒータ必要冷却水流量Vh1が燃料電池必要冷却水流量Vfcを下回っているか否かを判定する(S123)。この結果、Vh1<Vfcでないと判定された場合には(S123:NO)、冷却水のすべてが電気ヒータ51側に流れるように流量調整弁54を切り替え(S124)、S126の処理に移行する。
【0091】
一方、Vh1<Vfcであると判定された場合には(S123:YES)、電気ヒータ51側の冷却水流量がVh1、電気ヒータバイパス通路53側の冷却水流量が(Vfc−Vh1)となるように流量調整弁54を切り替え(S125)、必要回転数Rrで冷却水循環ポンプ41を作動させる(S126)。S125に続いてS126の処理を行う場合には、冷却水流量がVfcとなる冷却水循環ポンプ41の回転数を必要回転数Rrとし、上述のS124に続いてS126の処理を行う場合には、冷却水流量がVh1となる冷却水循環ポンプ41の回転数を必要回転数Rrとする。
【0092】
次に、冷却水循環ポンプ41の回転数が必要回転数Rrより小さいか否かを判定する(S127)。この結果、冷却水循環ポンプ41の回転数が必要回転数Rrより小さい場合には(S127:YES)、冷却水循環ポンプ41の回転数が必要回転数Rr以上となるまで待機する。そして、冷却水循環ポンプ41の回転数が必要回転数Rr以上となった場合には(S127:NO)、電気ヒータ51を電力Ph3で作動させる(S128)。余剰電力は電気ヒータ51にて熱に変換され、冷却水を介してラジエータ43で外気に排出される。
【0093】
以上説明した本実施形態の構成によれば、回生電力にて発生する余剰電力は優先的に2次電池13に蓄えられ、余剰電力が2次電池13に受け入れ可能な電力以上の場合は、電気ヒータ51で消費される。そして、電気ヒータ51で消費できない余剰電力分を機械式ブレーキで対応している。この結果、機械式ブレーキの使用頻度を低減でき、乗車フィーリングの悪化を防ぐことができる。
【0094】
また、余剰電力を消費する際の電気ヒータ51での発熱に対して冷却水流量が充分でない場合(冷却水循環ポンプ41の回転数が充分上昇していない場合)には、2次電池13のSOC上限値を増加させ、電気ヒータ51で消費する余剰電力を一時的に2次電池13に充電することで、冷却水流量が充分でない状態で電気ヒータ51で余剰電力を消費して冷却水が沸騰したり過熱されたりすることを防止できる。その後、余剰電力を消費する際の電気ヒータ51での発熱に対して冷却水流量が充分に増加したとき(冷却水循環ポンプ41の回転数が充分上昇したとき)に、電気ヒータ51を作動開始することで、電気ヒータ51で余剰電力を消費しても、冷却水が沸騰したり過熱されたりすることがない。
【0095】
また、本実施形態では、2次電池13のSOC上限値を増大させ、第2余剰電力を2次電池13に充電した後、冷却水循環ポンプ41の回転数が充分に上昇した(電気ヒータ51に供給される冷却水流量が充分な流量となった)ときに、2次電池13のSOC上限値を初期値に戻している。これにより、2次電池13のSOC上限値の増大(2次電池受入可能電力の増大)は一時的なものとなり、2次電池13の性能に与える影響を最小限に抑えることができる。
【0096】
なお、回生電力が発生するのは主に減速時や降坂時であり、この場合には燃料電池10は発電停止あるいは発電電力が小さくなっているため、燃料電池10の必要冷却能力も小さくなる。ラジエータ43は燃料電池10が最大出力時に充分に冷却が行えるように設計されるので、燃料電池10の発電量が小さい場合にはラジエータ43の能力が余っていることになり、そのときに電気ヒータ51で熱を発生させその熱をラジエータ43にて外気に放出すれば、ラジエータ43の体格を大きくする必要はなく、新たな放熱器を搭載する必要もない。
【0097】
また、冷却水を電気ヒータ51をバイパスさせることができる電気ヒータバイパス経路53を設け、電気ヒータ51に冷却水を流す必要がない場合には、冷却水が電気ヒータ51をバイパスできるように構成することで、冷却回路の圧力損失増加を抑制でき、冷却水循環ポンプ41の消費電力増加を回避できる。
【0098】
さらに、電気ヒータ51で発生した熱をヒータコア56を介して室内暖房に用いることで、回生制動で発生する余剰電力を有効に再利用することが可能となる。また、回生電力量は車重や減速度にもよるが、通常車室内の暖房必要能力よりも大きい。このため、電気ヒータ51の発熱時で室内暖房が必要ないときにヒータコア56に冷却水が流れると、室内暖房用ファン57は停止していてもヒータコア56表面から放熱し、車室内に影響を与える可能性がある。そこで、本第1実施形態では、暖房用放熱器バイパス経路59、オンオフ弁60を設けることでそのような悪影響を回避している。
【0099】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について図8に基づいて説明する。本第2実施形態は、上記第1実施形態と比較して、主に冷却水を燃料電池10には循環させないで、電気ヒータ51およびヒータコア56に循環させることが可能な冷却水閉ループを形成した点が異なる。以下、上記第1実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0100】
図8は、本第2実施形態の燃料電池システムの概略構成を示す概念図である。図8では、冷却系以外の構成要素の図示を省略している。
【0101】
図8に示すように、上記第1実施形態のサーモスタット46の代わりに、本第2実施形態では冷却水経路40とラジエータバイパス経路47との合流点に流量調整弁64を設けている。本実施形態では、この流量調整弁64を第2流量調整弁64とし、上述の流量調整弁54を第1流量調整弁54とする。また、冷却水経路40におけるラジエータ43の下流側に温度センサ65を設けている。
【0102】
第2流量調整弁64と温度センサ65の基本的な機能は、上記第1実施形態のサーモスタット46と同様である。すなわち、ラジエータ43通過後の冷却水温度を温度センサ65にて検出し、その温度検出値に基づいて所望の冷却水温度になるように、第2流量調整弁64を操作し、ラジエータ43あるいはバイパス経路47に流れる冷却水流量比を制御することができる。さらに本第2実施形態の第2流量調整弁64は上記機能に加え、冷却水経路40の上流側と下流側、バイパス経路47の全方向にシャットできるように構成されている。
【0103】
冷却水経路40における第1流量調整弁54の下流側であって電気ヒータ51の上流側に第2の冷却水循環ポンプ66が設けられている。この冷却水循環ポンプ66は、冷却水経路40と電気ヒータバイパス経路53によって形成される閉ループAのいずれの箇所に設けてもよい。本実施形態では、閉ループAに設けられる冷却水循環ポンプ66を第2冷却水循環ポンプ66とし、第1実施形態で説明した冷却水循環ポンプ41を第1冷却水循環ポンプ41とする。第2冷却水循環ポンプ66は、第1冷却水循環ポンプ41に比較して循環させる冷却水が少ないので、第1冷却水循環ポンプ41より小型のものを用いることができる。
【0104】
第1冷却水循環ポンプ41は、主に燃料電池10に冷却水を供給する燃料電池冷却用ポンプとして構成され、第2冷却水循環ポンプ66は、主にヒータコア56に冷却水を供給する空調用ポンプとして構成される。なお、上記第1実施形態で説明したS26の処理(図5参照)では、電気ヒータ51に供給される冷却水流量を増大させればよく、第1冷却水循環ポンプ41または第2冷却水循環ポンプ66の少なくとも一方を作動させることで行うことができる。
【0105】
本第2実施形態の第1流量調整弁54は、燃料電池10から流れてきた冷却水を電気ヒータ51側あるいは電気ヒータバイパス経路53側に0〜100%の範囲で分配する機能に加え、電気ヒータバイパス経路53から流れてくる冷却水を電気ヒータ51側に流す機能を有している。
【0106】
第2流量調整弁64を全方向に閉じ、第2冷却水循環ポンプ66を作動させることで、冷却水は冷却水経路40と電気ヒータバイパス経路53によって形成される閉ループAを循環する。この場合には、冷却水は燃料電池10には循環せず、電気ヒータ51およびヒータコア56に循環することとなる。
【0107】
このように、閉ループAは熱容量の大きい燃料電池10とは独立した暖房回路となるので、熱容量を小さくでき暖房の立ち上がり性能を向上できる。さらに燃料電池10や配管などからの放熱を減少できるので、熱損失を低減でき立ち上がり性能を向上できる。また、圧力損失の大きな燃料電池10を通過しない回路を形成できるので、燃料電池10が発電していないときに暖房のみを使用したいときは第2冷却水循環ポンプ66で冷却水を循環させることで、第1冷却水循環ポンプ66の消費動力を低減できる。
【0108】
本第2実施形態では、冷却水経路40における電気ヒータ51の直下に水素を燃料とする触媒燃焼式ヒータ67を設けている。例えば氷点下においては、燃料電池10が発電起動できなかったり、さらには2次電池13も電解液が凍結して電力が得られない場合がある。このため、本第2実施形態では、水素触媒ヒータ67を補助用ヒータとして電気ヒータ51と併設し、電気ヒータ51の電力が得られない場合の熱源として用いている。水素触媒ヒータ67を熱源として、室内暖房を行ったり、燃料電池10を暖機することができる。
【0109】
また、水素触媒ヒータ67の冷却水と接する表面あるいは水素触媒ヒータ67内部の冷却水と接する表面近傍に、電気ヒータ51と同様に温度センサ68を設けている。発熱するヒータ67表面において、冷却水の温度が高くなるので、ヒータ67表面近傍の温度を検出することで、冷却水が冷却水の熱分解温度以下になるように制御する。この制御は熱媒体温度調整手段としてのECU100により行われる。
【0110】
水素触媒ヒータ67の温度を低下させるためには、冷却水の流量を増加させるか、あるいは水素触媒ヒータ67に供給する水素量を減少させるか、あるいは供給空気量を増加させればよい。このような制御を行うことで、冷却水の熱分解によるイオンの発生を抑制しイオン交換樹脂の寿命を増加させることができる。
【0111】
また、補助用ヒータとして水素触媒ヒータ67を用いる理由は、燃料電池10の燃料である水素を用いることができ、かつ燃焼式ヒータに比べて作動温度が低い(600℃以下)からである。
【0112】
また、低温環境下では触媒の活性が低く、燃焼起動できなかったり、未燃水素が多く発生する。このため、水素触媒ヒータ67を電気ヒータ51の直下に設けることで、低温時に電気ヒータ51を作動させ冷却水を加熱し、触媒を活性温度以上に昇温させることができる。このとき、回生電力により余剰電力が発生していれば、余剰電力により電気ヒータ51を介して触媒を加熱することができることになる。
【0113】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について図9に基づいて説明する。本第3実施形態は、上記第2実施形態と比較して、電気ヒータバイパス経路53が設けられていない点が異なるものである。以下、上記第2実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0114】
図9は、本第3実施形態の燃料電池システムの概略構成を示す概念図である。図9では、冷却系以外の構成要素の図示を省略している。
【0115】
図9に示すように、本第3実施形態では、電気ヒータ51あるいは水素触媒ヒータ67をバイパスさせる電気ヒータバイパス経路53が存在しない。このため、冷却水を電気ヒータ51側あるいは電気ヒータバイパス経路53側に分配する第1流量調整弁54を設ける必要がなく、冷却水経路40の構成を簡素にできる。
【0116】
本第3実施形態では、車室内の暖房が必要なときは、オンオフ弁60を開状態とし、必要に応じて電気ヒータ51あるいは水素触媒ヒータ67を駆動し冷却水を加熱する。また、本第3実施形態でも、上記第1実施形態、第2実施形態と同様に回生電力を熱としてラジエータ43あるいはヒータコア56で消費することができる。
【0117】
さらに、本第3実施形態のシステム構成をさらに簡略化するためには、オンオフ弁60と暖房用放熱器バイパス経路59を廃止する構成としてもよい。
【0118】
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態について図10に基づいて説明する。本第4実施形態は、上記第2実施形態と比較して、電気ヒータ51を含む閉ループの構成が異なっている。以下、上記第1実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0119】
図10に示すように、本第4実施形態では、冷却水経路40に、冷却水を電気ヒータ51をバイパスさせるための第2の電気ヒータバイパス経路69が設けられている。本実施形態では、この電気ヒータバイパス経路69を第2電気ヒータバイパス経路69とし、上述の電気ヒータバイパス経路53を第1電気ヒータバイパス経路53としている。
【0120】
第2電気ヒータバイパス経路69は、冷却水経路40における第1の電気ヒータバイパス経路53との分岐点より下流側で分岐し、冷却水経路40における第1の電気ヒータバイパス経路53との合流点より上流側で合流する。また、本実施形態の流量調整弁54は、冷却水経路40と第2の電気ヒータバイパス経路69の分岐点に設けられている。
【0121】
このような構成によって、冷却水は冷却水経路40と第2電気ヒータバイパス経路69からなる第2の閉ループBを循環することができる。また、冷却水経路40と第1電気ヒータバイパス経路53によって、閉ループBとは独立して燃料電池10に冷却水を循環させることができる。
【0122】
(他の実施形態)
以上、本発明の実施例について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、各請求項に記載した範囲を逸脱しない限り、各請求項の記載文言に限定されず、当業者がそれらから容易に置き換えられる範囲にも及び、かつ、当業者が通常有する知識に基づく改良を適宜付加することができる。
【0123】
例えば、図1で示した例では1個のECU100を用いて各種制御を行っているが、機器毎にECUを設け、それぞれのECU同士で通信を行うように構成してもよい。
【0124】
また、図1に示したS25の判定処理では、冷却水循環ポンプ41の回転数から間接的に推定した電気ヒータ51の冷却水流量が第2余剰電力を電気ヒータ51で消費する際の発熱に対応しているか否かを判定したが、これに限らず、電気ヒータ51に供給される冷却水流量を直接測定し、測定した冷却水流量が第2余剰電力を電気ヒータ51で消費する際の発熱に対応しているか否かを判定するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0125】
10 燃料電池
11 走行用モータ(回生電力発生手段、電気負荷)
12 インバータ(回生電力発生手段)
13 2次電池
14 DC/DCコンバータ
16 補機(電気負荷)
40 冷却水経路(熱媒体経路)
41 冷却水循環ポンプ
43 ラジエータ(放熱器)
51 電気ヒータ
53 電気ヒータバイパス経路
54 流量制御弁
56 ヒータコア(暖房用放熱器)
59 暖房用放熱器バイパス経路
60 オンオフ弁
66 冷却水循環ポンプ
67 水素触媒ヒータ
100 電子制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素と酸素とを電気化学反応させて電力を得る燃料電池(10)を備える移動体に搭載される燃料電池システムであって、
前記燃料電池(10)に供給される冷却水が循環する冷却水経路(40)と、
前記冷却水経路(40)に冷却水を循環させる冷却水循環ポンプ(41、66)と、
前記冷却水経路(40)に設けられ、前記冷却水の熱を大気に放出する放熱器(43)と、
前記冷却水経路(40)において、前記燃料電池(10)の下流側かつ前記放熱器(43)の上流側に設けられ、前記冷却水を加熱する電気ヒータ(51)と、
前記移動体の制動に伴って回生電力を発生する回生電力発生手段(11、12)と、
前記燃料電池(10)および前記回生電力発生手段(11、12)と並列に接続された2次電池(13)と、
前記燃料電池(10)、前記回生電力発生手段(11、12)あるいは前記2次電池(13)の少なくとも1つからの電力を消費可能な電気負荷(11、16)と、
前記燃料電池(10)の発電電力と回生電力発生手段(11、12)の回生電力との合計電力のうち前記負荷手段(11、16)の消費電力を超える第1余剰電力を前記2次電池(13)に充電する第1余剰電力処理手段(100、S18、S19)と、
前記第1余剰電力のうち前記2次電池(13)の受入可能電力を越える電力を第2余剰電力とし、前記電気ヒータ(51)に供給される冷却水流量が前記第2余剰電力を前記電気ヒータ(51)で消費する際に発生する熱に対応する所定流量以上の場合に、前記第2余剰電力を前記電気ヒータ(51)で消費する第2余剰電力処理手段(100、S35)と、
前記電気ヒータ(51)に供給される冷却水流量が前記所定流量未満の場合に、前記冷却水循環ポンプ(41、66)による冷却水流量を増大させるとともに、前記2次電池(13)の受入可能電力を増大させて前記第2余剰電力を前記2次電池(13)に充電する暫定余剰電力処理手段(100、S27、S29)とを備えることを特徴とする燃料電池システム。
【請求項2】
前記暫定余剰電力処理手段により前記2次電池(13)の受入可能電力を増大させて前記第2余剰電力を前記2次電池(13)に充電した後、前記電気ヒータ(51)に供給される冷却水流量が前記所定流量以上となった場合に、前記2次電池(13)の受入可能電力を増大前の値に戻す受入可能電力復帰手段(100、S33)を備えることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項3】
前記暫定余剰電力処理手段により前記2次電池(13)の受入可能電力を増大させて前記第2余剰電力を前記2次電池(13)に充電した後、前記電気ヒータ(51)に供給される冷却水流量が前記所定流量以上となった場合に、前記電気ヒータ(53)の作動を開始させることを特徴とする請求項1または2に記載の燃料電池システム。
【請求項4】
前記移動体の制動を行う機械式ブレーキを備え、
前記第2余剰電力のうち前記電気ヒータ(51)の消費電力を超える第3余剰電力に相当するエネルギを前記機械式ブレーキで消費することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載の燃料電池システム。
【請求項5】
冷却水と空調風を熱交換して空調風を加熱する暖房用熱交換器(56)を備え、
前記冷却水循環ポンプは、前記燃料電池(10)に冷却水を供給する燃料電池用ポンプ(41)または前記暖房用熱交換器(56)に冷却水を供給する空調用ポンプ(66)の少なくとも一方であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1つに記載の燃料電池システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−195263(P2012−195263A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−60360(P2011−60360)
【出願日】平成23年3月18日(2011.3.18)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】