説明

燃料電池システム

【課題】Ni系触媒を用いた場合であっても、改質反応を適正に制御できる燃料電池システムを提供する。
【解決手段】オートサーマルリフォーミング触媒は、ペロブスカイト型酸化物LaAlOにSrを置換して得られるLa1−xSrAlO(x=0.05〜0.3)からなる担体に、0.05〜20質量%のNiを担持してなり、改質器2は、燃料ガス及び酸素含有ガスを供給されると共に加熱されることによって部分酸化改質反応を行い、水を供給されることによってオートサーマルリフォーミング反応を行い、酸素含有ガスの供給を停止されることによって水蒸気改質反応を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
炭化水素化合物類などの有機化合物を改質して合成ガスや水素に転換する技術としては、水蒸気改質法、部分酸化法、オートサーマルリフォーミング法などの方法が知られている。この内、水蒸気改質法は既に多くの技術が実用化されているが、比較的大きな吸熱を伴う反応であるため、熱交換器など熱の供給システムの負荷が大きく、起動に時間がかかる等の問題がある。一方、部分酸化法は水蒸気改質法と反対に起動時間は非常に短いが酸化に伴う発熱が大きいためその制御が難しく、また、すすの発生抑制などの課題を有している。これらに対し、酸化反応と水蒸気改質反応を組み合せたオートサーマルリフォーミング法は燃料の一部を酸化しながら、この時発生する熱で水蒸気改質を進行させることで反応熱のバランスを取る方法であり、比較的立ち上げ時間も短く制御も容易であるため、近年燃料電池用の水素製造方法として注目されている。
【0003】
このようなオートサーマルリフォーミング法に用いられる触媒として、従来より、Rh/γ−AlOなどのように、γ−アルミナに貴金属を担持した触媒が知られている(例えば、特許文献1参照)。しかし、このような高価な貴金属を用いた場合、触媒のコストが上がってしまい経済的に不利となる。近年の燃料電池の利用の普及に伴い、触媒のコストを下げることが求められている。従って、Rhのような貴金属に代えて安価なNiを用いることが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−336702号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、Rhに置き換えてγ−アルミナにNiを担持したNi/γ−AlOからなる触媒を用いた場合、酸化処理によってNiが酸化してしまい、水蒸気改質活性を失ってしまうという問題がある。このような触媒をオートサーマルリフォーミング触媒として用いた場合、部分酸化改質反応の段階で改質器中の多くの触媒のNiが酸化してしまい、水蒸気改質反応の段階で改質反応に寄与する触媒が少なくなってしまう。従って、Ni/γ−AlOからなる触媒を用いた場合、十分な改質反応が行われず、オートサーマルリフォーミング式の燃料電池システムとして十分に性能を発揮できないという問題がある。あるいは、十分な改質反応を行わせるためには、Niが酸化されることなく水蒸気改質反応に寄与できる触媒を確保すべく、改質器内の触媒の量を増やす必要が生じてしまう。触媒の量を増やした場合は、改質器が大きくなり、コストが上がり、また、改質器内の加熱に時間がかかることにより燃料電池システムの起動が遅くなるという問題が生じる。
【0006】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、Ni系触媒を用いた場合であっても、十分に性能を確保することのできる燃料電池システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
ここで、本発明の発明者らは、鋭意研究の結果、ペロブスカイト型酸化物LaAlOにSrを置換して得られるLa1−xSrAlO(x=0.05〜0.3)からなる担体に、0.05〜20質量%のNiを担持してなる触媒を用いた場合、Niの酸化を抑制できることを見出した。また、このような触媒を用いることで、オートサーマルリフォーミング式の燃料電池システムの性能を十分に確保できることを見出した。
【0008】
そこで、本発明に係る燃料電池システムは、燃料ガスを一酸化炭素及び水素を含む改質ガスに変換するオートサーマルリフォーミング触媒を有する改質器と、改質ガスを用いて発電する燃料電池と、を備える燃料電池システムであって、オートサーマルリフォーミング触媒は、ペロブスカイト型酸化物LaAlOにSrを置換して得られるLa1−xSrAlO(x=0.05〜0.3)からなる担体に、0.05〜20質量%のNiを担持してなり、改質器は、燃料ガス及び酸素含有ガスを供給されると共に加熱されることによって部分酸化改質反応を行い、水を供給されることによってオートサーマルリフォーミング反応を行い、酸素含有ガスの供給を停止されることによって水蒸気改質反応を行うことを特徴とする。
【0009】
本発明に係る燃料電池システムでは、Ni系であるにも関わらず酸化を抑制することができるオートサーマルフォーミング触媒を用いている。従って、改質器において部分酸化改質反応が行われる段階でも、改質器中のオートサーマルリフォーミング触媒のNiが酸化することにより水蒸気改質活性を失ってしまうことを防止できる。例えばNi/γ−AlOからなるオートサーマルリフォーミング触媒を用いた場合、部分酸化改質反応でNiが酸化することにより水蒸気改質反応に寄与できないオートサーマルリフォーミング触媒が存在する一方、本発明に係るオートサーマルリフォーミング触媒(「Ni担持ペロブスカイト型オートサーマルリフォーミング触媒」ということもある)を用いた場合は、部分酸化改質反応でのNiの酸化が抑制されることで改質器内の略全領域にわたるオートサーマルリフォーミング触媒が水蒸気改質反応に寄与することができる。これによって、安価なNiを含むオートサーマルリフォーミング触媒を用いても、オートサーマルリフォーミング式の燃料電池システムとして十分な性能を発揮することができる。また、改質器内の略全領域にわたるオートサーマルリフォーミング触媒が水蒸気改質反応に寄与できるため、Niが酸化し易いNi/γ−AlOからなるオートサーマルリフォーミング触媒を用いる場合に比して、改質器内の触媒量を少なくすることができる。これによって、改質器の小型化を図ることが可能となり、コストを安くすることができる。また、触媒量を少なくすることで、改質器内の加熱を短時間で行うこともできる。また、オートサーマルリフォーミング式の燃料電池システムでは、改質器自体の内部で熱のやり取り(例えば、部分酸化改質反応によって発生した熱により、改質器自身が加熱される)が行われるが、触媒量を少なくすることでこのような熱のやり取りが行われ易くなる。従って、燃料電池システムを早く起動することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、Ni系触媒を用いた場合であっても、十分に性能を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態に係る燃料電池システムを示す概略ブロック図である。
【図2】本発明の燃料電池システム1におけるシステム起動方法を示すフローチャートである。
【図3】Ni/γ−AlOからなるオートサーマルリフォーミング触媒が充填された反応器と、本実施形態に係るオートサーマルリフォーミング触媒が充填された反応器における反応を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、以下の説明では、同一又は相当要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0013】
<システム構成>
図1は、本発明の一実施形態に係る燃料電池システムを示す概略ブロック図である。図1に示すように、本実施形態に係る燃料電池システム1は、改質器2と、燃料電池3と、供給部4と、温度センサ5,6と、制御部7と、を備えている。本実施形態に係る燃料電池システム1は、システムの起動時において、改質器2にて部分酸化改質(POX:Partial Oxdation)、オートサーマルリフォーミング(ATR:Auto Thermal Reforming)を行い、水蒸気改質(SR:Steam Reforming)へ移行して燃料電池3にて発電を行うものである。
【0014】
改質器2は、供給部4から供給される燃料ガスを一酸化炭素及び水素を含む改質ガスに変換し、当該改質ガスを燃料電池3へ供給するものである。改質器2は、燃料ガスを改質ガスに変換するNi担持ペロブスカイト型オートサーマルリフォーミング触媒が充填された反応器を備えている。本実施形態に係るオートサーマルリフォーミング触媒は、部分酸化改質の段階においても触媒中のNiの酸化を抑制することができ、反応器の略全領域において水蒸気改質を行うことを可能とするものである。当該オートサーマルリフォーミング触媒の詳細な説明は後述する。
【0015】
改質器2に供給される燃料ガスは炭化水素化合物類からなり、炭素数4以下の炭化水素化合物を70容量%以上含有することが好ましく、80容量%以上含有することがより好ましく、85容量%以上含有することがより好ましく、90容量%以上含有することがより好ましい。炭素数4以下の炭化水素化合物とは、具体的には、メタン、エタン、プロパン、ブタンなどの飽和脂肪族炭化水素、エチレン、プロピレン、ブテンなどの不飽和脂肪族炭化水素が挙げられ、入手性の面でメタンを好ましく挙げることができる。本発明に係る燃料ガスは、炭素数4以下の炭化水素化合物が70容量%以上含有すれば特に限定されるものではないが、窒素ガス、炭酸ガス等を含んでいても良い。本発明に係る燃料ガスは、好ましくは炭素数4以下の炭化水素化合物を70容量%以上含有するものであり、例えば、天然ガス、LPGなど工業的に安価に入手できる材料を挙げることができる。
【0016】
燃料電池3は、改質器2から供給される改質ガスを用いて発電を行うものである。本実施形態に係る燃料電池システム1においては、燃料電池3として固体酸化物型燃料電池(SOFC: Solid Oxide Fuel Cell)が用いられる。燃料電池3のアノードには改質器2からの改質ガスが供給され、カソードには酸素含有ガスが供給される。酸素含有ガスとしては、空気や酸素ガスなどの酸素を含有するガスを用いることができるが、取り扱いの容易性より、空気を用いることが好ましい。燃料電池3は、アノードより排出される燃焼可能なガスをイグナイタなどで着火して燃焼させることによって、改質器2に熱HTを供給することができる。例えば、燃料電池3は、アノードオフガスを燃焼させることで改質器2を加熱することができる。また、起動時においては、燃料電池3は、改質器2を介して供給部4より供給された燃料ガス及び空気を排出すると共にイグナイタなどで着火し、燃焼させることで改質器2を加熱することができる。
【0017】
供給部4は、燃料ガスを改質器2に供給するものである。また、供給部4は、燃料ガスに酸素含有ガス、または水、あるいはその両方を混合させて供給することができる。供給部4は、所定のタイミングで、酸素含有ガス及び水の供給を開始・停止することができる。酸素含有ガスは、カソードに供給されるものと同じく、空気や酸素ガスを用いることができる。
【0018】
温度センサ5は、改質器2の所定の位置(改質器入口温度や改質器出口温度など)における温度を取得するものである。温度センサ6は、燃料電池3の所定の位置における温度を取得するものである。温度センサ5は、改質器2に対して複数の位置に設けることができ、温度センサ6は、燃料電池3に対して複数の位置に設けることができる。温度センサ5,6は、取得した温度を制御部7へ出力する。
【0019】
制御部7は、燃料電池システム1全体の制御を行う機能を有しており、例えば電子制御を行うデバイス(例えばCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、および入出力インターフェイスを含んで構成されたデバイス)によって構成されている。制御部7は、供給部4、温度センサ5,6、その他図示されないセンサや補機と電気的に接続されており、信号の入出力を行う。制御部7は、供給部4へ制御信号を出力することで、燃料ガス、酸素含有ガス、水の供給・停止を制御する。
【0020】
<システム起動方法>
図2は、燃料電池システム1におけるシステム起動方法を示すフローチャートである。図2に示すように、システム起動時においては、制御部7は、供給部4へ制御信号を出力することにより、改質器2を介して燃料電池3へ燃料ガス及び空気を供給する(ステップS100)。このとき、燃料電池3から排出される燃料ガス及び空気をイグナイタなどで着火し、燃焼を開始させる(ステップS110)。当該燃焼によって改質器2に熱(HT)が供給され、加熱される。改質器の温度が200℃程度となることにより、改質器2は、オートサーマルリフォーミング触媒において、部分酸化改質反応を開始する(ステップS120)。このとき、改質器2の反応器中は酸化雰囲気となるが、本実施形態に係るNi担持ペロブスカイト型オートサーマルリフォーミング触媒を用いた場合は、Niの酸化は抑制される。また、部分酸化改質反応は発熱反応であるため、改質器2は自己の発する熱によっても加熱される。
【0021】
制御部7は、温度センサ5からの出力結果に基づいて改質器2の入口温度を監視し、改質器2の入口温度が第1の閾値以上となったことを検知する(ステップS130)。これによって、制御部7は、水が凝縮しない温度にまで系内の温度が上がったことを検知する。第1の閾値は、改質器2がオートサーマルリフォーミング反応を起こすことができる温度に設定され、例えば300℃に設定される。改質器2の入口温度が第1の閾値以上となると、制御部7は、供給部4へ制御信号を出力することにより、改質器2へ水を供給し、これによって改質器2がオートサーマルリフォーミング反応を開始する(ステップS140)。
【0022】
制御部7は、温度センサ5からの出力結果に基づいて改質器2の入口温度を監視し、改質器2の入口温度が第2の閾値以上となったことを検知する(ステップS150)。第2の閾値は、改質器2が水蒸気改質反応を起こすことができる温度に設定され、例えば500℃に設定される。改質器2の入口温度が第2の閾値以上となると、制御部7は、供給部4へ制御信号を出力することにより、改質器2への空気の供給を停止し、これによって改質器2が水蒸気改質反応へ移行する(ステップS160)。その後、燃料電池3の温度が600℃以上となると、燃料電池3にて発電が開始される(ステップS170)。以上によって、図2に示すシステム起動の処理は終了し、それ以降は、改質器2が水蒸気改質反応によって改質ガスを燃料電池3へ供給し続ける。
【0023】
なお、上述のシステム起動方法は一例を示すものであり、部分酸化改質反応、オートサーマルリフォーミング反応、水蒸気改質反応の順で改質反応を起こすものであれば、具体的な手順は適宜変更することが可能である。例えば、第1の閾値や第2の閾値に係る温度は適宜変更することができる。また、改質器入口温度以外の部分における温度を考慮してもよい。
【0024】
<オートサーマルリフォーミング触媒>
本発明のオートサーマルリフォーミング触媒は、ペロブスカイト型酸化物LaAlOにSrを置換して得られるLa1−XSrAlO(x=0.05〜0.3)で示される化合物(以下、Sr置換ペロブスカイト型酸化物ともいう。)からなる触媒担体に活性金属としてNiを担持してなるものである。また該触媒担体はアルミナ担体にSr置換ペロブスカイト型酸化物を担持した形態であってもよい。
【0025】
ペロブスカイト型酸化物とは、ABOの化学組成で示されるペロブスカイト型構造を有する酸化物(A:希土類元素やアルカリ土類金属元素、B:遷移金属元素)であり、本発明においては、LaAlOのAサイトにSrを置換して得られるLa1−XSrAlOで示される化合物を触媒担体として用いる。ここで、Srの置換率(x)は0.05〜0.3であることが好ましく、特に0.2〜0.3であることが好ましい。xが0.4以上になると、ペロブスカイト型の構造が崩れてしまい、Sr置換の効果が失われるため好ましくない。またxが0.05未満の場合には、炭化水素化合物類の転化率が不十分となる。
【0026】
本発明において用いられるペロブスカイト型酸化物は公知の方法で製造することができ特に限定されるものではない。またLaAlOのAサイトにSrを置換する方法についても特に限定されるものではなく、固相反応法、加水分解法、ゾル−ゲル法、水熱法、噴霧熱分解法等の公知の方法を採用して上記した組成を有する酸化物を合成すればよい。例えば、上記組成式に含まれる金属元素を含む化合物(例えば、酸化物、炭酸塩、有機物など)を出発原料として用い、目的とする酸化物と同様の金属元素比となるように混合し、焼成することによって合成することができる。
【0027】
また、アルミナ担体にSr置換ペロブスカイト型酸化物を担持した触媒担体を得る場合は、アルミナ担体に上記した所定の組成を有する金属の硝酸塩溶液を含浸し、焼成することによって合成することができる。
【0028】
本発明において、La1−XSrAlOを調製する方法としてゾル−ゲル法による一例を以下に例示する。まず、所定の組成割合のLa(NO・6HO、Sr(NO、Al(NO・9HO、クエン酸、エチレングリコール、純水を混合してよく攪拌した後、過熱して水分を除去する。次に、300℃〜500℃程度で約1〜5時間程度保持して硝酸塩を分解させた後、700〜900℃程度で5〜20時間程度保持してクエン酸、エチレングリコールを燃焼除去することによりLa1−XSrAlOを得ることができる。
【0029】
本発明においては、活性金属を担持する前に触媒担体を空気や酸素雰囲気下で焼成処理することができる。このときの焼成温度としては、通常500〜1500℃、好ましくは700〜1200℃が望ましい。また、触媒担体の機械的強度を高めることを目的として、触媒担体に少量のバインダー、例えばシリカ、セメント等を添加することもできる。
【0030】
本発明のオートサーマルリフォーミング触媒は、上記Sr置換ペロブスカイト型酸化物担体に活性金属を担持することにより得られる。活性金属としては、高活性、耐コーキング性、耐酸化性を示すことから安価なニッケルが用いられる。
【0031】
活性金属の触媒担体への担持方法は、特に限定されるものではなく、公知の方法を適用することにより容易に行うことができる。例えば、含浸法、沈着法、共沈法、混練法、イオン交換法、ポアフィリング法等が挙げられ、特に含浸法が望ましい。触媒を製造する際の活性金属の出発物質は、前記の担持法により異なり、適宜選択することができるが、通常、活性金属の塩化物や硝酸塩が用いられる。例えば、含浸法を適用する場合、活性金属の塩の溶液(通常は水溶液)を調製し、前記の触媒担体に含浸させたのち、乾燥、必要に応じ焼成する方法を例示することができる。焼成は、通常、空気や窒素雰囲気下などで行われ、温度は、当該塩の分解温度以上であれば特に限定されないが、通常、200〜800℃、好ましくは300〜600℃程度が望ましい。また処理時間は温度との兼ね合いによるが、通常1〜30時間、好ましくは5〜20時間程度である。本発明においては、通常、活性金属を触媒担体に担持したのち、還元雰囲気(通常は水素雰囲気)で400〜1000℃、好ましくは400〜700℃で還元処理することによりオートサーマルリフォーミング触媒を調製することが好ましく採用される。
【0032】
本発明の触媒中の活性金属であるNiの含有量は金属量として、好ましくは0.05〜20質量%、より好ましくは0.1〜10質量%である(なお、ここでの「質量%」は、触媒全体を100質量%とした値である)。活性金属の含有量が20質量%より多い場合には金属の凝集が多くなるため表面に出る活性金属の割合が減少する傾向があるという点で不利となり、0.05質量%より少ない場合には高い活性を示すことが難しくなるため多量の担持触媒が必要となり反応器が大型化する傾向があるという点で不利となる。
【0033】
また、本発明のオートサーマルリフォーミング触媒の形状についても特に限定されるものではなく、オートサーマルリフォーミング触媒を使用する形態により適宜選択することができる。例えば、ペレット状、顆粒状、ハニカム状、スポンジ状等などの任意の形状が採用される。
【0034】
<作用・効果>
本実施形態に係る燃料電池システム1では、Ni系であるにも関わらず酸化を抑制することができるNi担持ペロブスカイト型オートサーマルリフォーミング触媒を用いている。従って、改質器2において部分酸化改質反応が行われる段階でも、改質器2中のオートサーマルリフォーミング触媒のNiが酸化することにより水蒸気改質活性を失ってしまうことを防止できる。
【0035】
図3を参照して、Ni/γ−AlOからなるオートサーマルリフォーミング触媒を用いた場合と、本実施形態に係るNi担持ペロブスカイト型オートサーマルリフォーミング触媒を用いた場合における改質器2の反応器での反応について説明する。図3において上側に示す反応器RE1には、Ni/γ−AlOからなるオートサーマルリフォーミング触媒が充填されている。下側に示す反応器RE2には、本実施形態に係るNi担持ペロブスカイト型オートサーマルリフォーミング触媒が充填されている。反応器RE1では、部分酸化改質反応(POX)の段階において、反応器内における上流側の領域Aのオートサーマルリフォーミング触媒が部分酸化改質反応に寄与する。このとき、部分酸化改質反応によって領域Aにおけるオートサーマルリフォーミング触媒のNiが酸化することによって、水蒸気改質活性を失う。従って、反応器RE1では、Niが酸化していない領域Bにおけるオートサーマルリフォーミング触媒のみが水蒸気改質反応(SR)を行い、領域Aにおけるオートサーマルリフォーミング触媒は水蒸気改質反応に寄与することができない。このように、Ni/γ−AlOからなるオートサーマルリフォーミング触媒を用いた反応器RE1においては、十分な改質反応が行われず、オートサーマルリフォーミング式の燃料電池システムとして十分に性能を発揮できない可能性がある。あるいは、十分な改質反応を行わせるため、Niが酸化されることなく水蒸気改質反応に寄与できるオートサーマルリフォーミング触媒を確保すべく、領域Bにおける触媒の量を増やす必要が生じてしまう。触媒の量を増やした場合は、改質器が大きくなり、コストが上がり、また、改質器内の加熱に時間がかかることにより燃料電池システムの起動が遅くなる。
【0036】
一方、反応器RE2では、部分酸化改質反応の段階においても、上流側の領域Aのオートサーマルリフォーミング触媒のNiの酸化が抑制されることで完全には酸化せず、水蒸気改質活性を失わない。従って、反応器RE2では、領域Bにおけるオートサーマルリフォーミング触媒のみならず、領域Aにおけるオートサーマルリフォーミング触媒も水蒸気改質反応に寄与することができる。すなわち、反応器RE2の略全領域にわたるオートサーマルリフォーミング触媒が水蒸気改質反応に寄与できる。これによって、安価なNiを含むオートサーマルリフォーミング触媒を用いても、オートサーマルリフォーミング式の燃料電池システムとして十分な性能を発揮することができる。また、改質器の反応器RE2内の略全領域にわたるオートサーマルリフォーミング触媒が水蒸気改質反応に寄与できるため、反応器RE1を用いる場合に比して、触媒量を少なくすることができる。これによって、改質器の小型化を図ることが可能となり、コストを安くすることができる。また、触媒量を少なくすることで、改質器内の加熱を短時間で行うこともできる。また、オートサーマルリフォーミング式の燃料電池システム1では、改質器2自体の内部で熱のやり取りが行われる。例えば、部分酸化改質反応によって領域Aのオートサーマルリフォーミング触媒が熱を発し、当該熱によって領域Bのオートサーマルリフォーミング触媒が加熱される。本実施形態によれば、触媒量を少なくすることでこのような熱のやり取りが行われ易くなる。従って、燃料電池システム1を早く起動することができる。
【実施例】
【0037】
以下、本発明について、実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0038】
<実施例1>
(1)触媒担体の調製
La(NO・6HO、Sr(NO、Al(NO・9HO、クエン酸、エチレングリコール、純水を混合してよく攪拌した後、加熱して水分を除去した。次に、400℃で2時間保持して硝酸塩を分解させた後、800℃で10時間保持してクエン酸、エチレングリコールを燃焼除去することによりxが0.3のLa1−xSrAlOを調製した。
(2)触媒の調製
次に、担体をニッケル含有率が10mass%となるよう硝酸ニッケル水溶液に浸漬し、水分を蒸発させた後、120℃にて3時間乾燥させた。さらに、500℃にて10時間焼成した。次いでこれを加圧成形した後、粉砕して篩い分けし、約1〜2mmの顆粒状のオートサーマルリフォーミング触媒を得た。さらにこのオートサーマルリフォーミング触媒を水素流通下で500℃で3時間還元処理し、オートサーマルリフォーミング触媒を得た。
(3)酸化処理
オートサーマルリフォーミング触媒を空気流通下、600℃にて1時間加熱することによって、酸化処理を行った。
(4)水蒸気改質反応
酸化処理前のオートサーマルリフォーミング触媒を用いて、プロパンを原料として、以下の条件下に水蒸気改質反応を行った。また、(3)の酸化処理後のオートサーマルリフォーミング触媒を用いて、同様の条件にて水蒸気改質反応を行った。反応開始より75時間後のプロパン転化率(%)は、表1に示す結果となった。更に、(3)の酸化処理後のオートサーマルリフォーミング触媒について、反応開始より3時間後におけるコーク堆積量は、表2に示す結果となった。
触媒量:25mg
W/F:1.7gh/mol
反応温度:400℃
スチーム/カーボン比:2.0
【0039】
<比較例1>
触媒担体としてγ−アルミナを用い、ニッケルを10mass%担持したオートサーマルリフォーミング触媒を用いる以外は、実施例1と同様にして水蒸気改質反応を行った。その結果を表1及び表2に示す。
【0040】
表1から理解されるように、比較例1に係るオートサーマルリフォーミング触媒は、酸化処理前においては水蒸気改質活性を有しているが、酸化処理後においては水蒸気改質活性を失っている。このことより、図2に示す例では、反応器RE1のうち、部分酸化改質反応に寄与した領域Aにおけるオートサーマルリフォーミング触媒は水蒸気改質活性を失い、水蒸気改質反応に寄与できないことが確認される。一方、実施例1に係るオートサーマルリフォーミング触媒は、酸化処理前に比してプロパンの転化率に若干の低下があるものの、Niの酸化が抑制されることによって、酸化処理後においても水蒸気改質活性を失っていないことが理解される。このことより、図2に示す例では、反応器RE1のうち、部分酸化改質反応に寄与した領域Aにおけるオートサーマルリフォーミング触媒は水蒸気改質活性を失わず、水蒸気改質反応に寄与できることが確認される。
【0041】
また、表1の酸化処理前におけるプロパン転化率を比較しても、実施例1に係るオートサーマルリフォーミング触媒は、比較例1に係るオートサーマルリフォーミング触媒よりも耐酸化性に優れるのみならず、プロパン転化率においても優れることが理解される。更に、表2から理解されるように、実施例1に係るオートサーマルリフォーミング触媒は、比較例1に係るオートサーマルリフォーミング触媒よりもコーク堆積量が少ないことが理解される。
【0042】
【表1】

【0043】
【表2】

【符号の説明】
【0044】
1…燃料電池システム、2…改質器、3…燃料電池、4…供給部、5,6…温度センサ、7…制御部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料ガスを一酸化炭素及び水素を含む改質ガスに変換するオートサーマルリフォーミング触媒を有する改質器と、
前記改質ガスを用いて発電する燃料電池と、を備える燃料電池システムであって、
前記オートサーマルリフォーミング触媒は、ペロブスカイト型酸化物LaAlOにSrを置換して得られるLa1−xSrAlO(x=0.05〜0.3)からなる担体に、0.05〜20質量%のNiを担持してなり、
前記改質器は、
前記燃料ガス及び酸素含有ガスを供給されると共に加熱されることによって部分酸化改質反応を行い、
水を供給されることによってオートサーマルリフォーミング反応を行い、
前記酸素含有ガスの供給を停止されることによって水蒸気改質反応を行うことを特徴とする燃料電池システム。
【請求項2】
前記燃料ガスが炭素数4以下の炭化水素化合物を70容量%以上含有することを特徴とする、請求項1記載の燃料電池システム。
【請求項3】
前記燃料ガスが天然ガス、LPGから選ばれることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の燃料電池システム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−74197(P2012−74197A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−217170(P2010−217170)
【出願日】平成22年9月28日(2010.9.28)
【出願人】(000004444)JX日鉱日石エネルギー株式会社 (1,898)
【Fターム(参考)】