説明

燃料電池システム

【課題】燃料電池の劣化を抑制しつつ、燃料電池システム全体での出力効率を向上することが可能な燃料電池システム。
【解決手段】FCシステム12では、負荷14、16の要求出力Psysが下限出力値lim1を上回り且つ上限出力値lim2を下回る場合、特定電圧値への固定及び負荷の要求出力への追従を続けて実行し、前記負荷14、16の要求出力が前記下限出力値を下回る又は前記上限出力値を上回る場合、前記特定電圧値への固定を続けて実行しつつ、FC出力Pfcが効率最高領域Rhieff内の値になるようにガス供給手段を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、燃料電池から負荷に対して電力供給を行う燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、燃料電池車両等に利用される燃料電池の劣化を抑制するために、酸化還元電位を回避して燃料電池を発電する燃料電池システムが提案されている(特許文献1)。特許文献1の燃料電池システムでは、システム要求電力Wreqが徐々に上がっていく場合であっても、燃料電池の出力電圧Vfcを酸化還元電位Voxptで一度制限し、制限した電圧に相当する電力をバッテリで補うように制御する。その後、アクセル開度が下がる等して燃料電池の発電が必要なくなったとしても、燃料電池の出力電圧を酸化還元電位以下で維持して発電を継続し、バッテリの残容量が所定値を超えるまで発電を継続する(要約)。
【0003】
また、システム全体での発電効率の向上を目指した燃料電池システムが開発されている(特許文献2)。特許文献2では、燃料電池での発電の無駄を削減し、燃料電池と2次電池を有するシステム全体としての効率向上を図っている(要約)。このため、特許文献2における燃料電池システム10は、アクセルペダルの踏込操作を介して運転者が要求する車両の駆動要求パワーの大きさにより、燃料電池20とその周辺装置を含む燃料電池機器群の運転・停止を定める。この駆動要求パワーが閾値パワーXps以下の低負荷領域の燃料電池発電運転で得られるものである場合には、燃料電池機器群を停止させ、2次電池30単独でその残存容量Qによりモータ32を回転させて、車両を駆動要求パワーで駆動する(要約)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−005038号公報
【特許文献2】特開2001−307758号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように、特許文献1の制御では、燃料電池の出力電圧を酸化還元電位以下に維持するが、酸化還元電位を回避し続けるためには、走行モータ等の負荷が要求する電力に対して、燃料電池の出力電力を大きくする必要がある。それらの場合、燃料電池の余剰電力をバッテリに充電することになる。このため、酸化還元電位を回避し続けるためには、バッテリの充放電の頻度が多くなる。バッテリの充放電の頻度が多くなると、充放電に伴う電力損失が大きくなり、燃料電池システム全体での出力効率が低下してしまう。なお、本発明者が確認したところでは、酸化還元反応が発生する電位は一定の幅が存在する。以下では、酸化還元反応が発生する電圧範囲を「酸化還元進行電圧範囲」という。
【0006】
また、特許文献2の制御では、燃料電池の発電効率が高い領域で発電を行っているが、通常、燃料電池の発電効率が高い領域では燃料電池の出力電圧が酸化還元進行電圧範囲内に存在してしまい、燃料電池の劣化が進行してしまう。
【0007】
この発明はこのような課題を考慮してなされたものであり、燃料電池の劣化を抑制しつつ、燃料電池システム全体での出力効率を向上することが可能な燃料電池システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明に係る燃料電池システムは、触媒を有し、前記触媒で酸素又は水素を反応させることで発電する燃料電池と、前記酸素及び前記水素の少なくとも一方を、前記燃料電池に供給するガス供給手段と、前記燃料電池の出力電圧を調整する電圧調整手段と、前記燃料電池の出力電力により駆動される負荷と、前記燃料電池から前記負荷へ供給される前記出力電力の余剰分を蓄電し、不足分を前記負荷へ供給する蓄電装置とを備えるものであって、更に、前記負荷の要求出力を検出すると共に、前記燃料電池、前記ガス供給手段及び前記電圧調整手段を制御する制御手段を有し、前記制御手段は、前記電圧調整手段を制御して前記燃料電池の出力電圧を酸化還元進行電圧範囲外の特定電圧値に固定させた状態で、前記ガス供給手段を制御して前記燃料電池に供給する前記酸素又は前記水素の濃度を前記負荷の要求出力に追従させるように変動させる電圧固定・出力可変制御を実行するものであり、前記燃料電池の通常発電状態において前記酸化還元進行電圧範囲に対応する前記燃料電池の出力範囲を酸化還元進行出力範囲と定義するとき、前記電圧固定・出力可変制御は、前記負荷の要求出力が前記酸化還元進行出力範囲内である場合に実行され、さらに、前記電圧固定・出力可変制御では、前記燃料電池の出力電圧を前記特定電圧値に固定しつつ前記酸素又は前記水素の濃度を変動させた場合に前記燃料電池システムの出力効率が最高となる前記燃料電池の出力領域である効率最高領域を挟んで定められる前記燃料電池の上限出力値と下限出力値とが設定され、前記負荷の要求出力が前記下限出力値を上回り且つ前記上限出力値を下回る場合、前記特定電圧値への固定及び前記負荷の要求出力への追従を続けて実行し、前記負荷の要求出力が前記下限出力値を下回る又は前記上限出力値を上回る場合、前記特定電圧値への固定を続けて実行しつつ、前記燃料電池の出力が前記効率最高領域内の値になるように前記ガス供給手段を制御することを特徴とする。
【0009】
この発明によれば、電圧固定・出力可変制御により燃料電池の劣化を抑制しつつ、電圧固定・出力可変制御中における燃料電池システム全体の発電効率を向上することが可能となる。
【0010】
すなわち、電圧固定・出力可変制御では、燃料電池の出力電圧を酸化還元進行電圧範囲外の特定電圧値に固定させるため、出力電圧が酸化還元進行電圧範囲内に入ることによる燃料電池の劣化を避けることができる。
【0011】
また、この発明によれば、負荷の要求出力が下限出力値を上回り且つ上限出力値を下回る場合、特定電圧値への固定及び負荷の要求出力への追従を続けて実行し、負荷の要求出力が下限出力値を下回る又は上限出力値を上回る場合、特定電圧値への固定を続けて実行しつつ、燃料電池の出力が効率最高領域内の値になるようにガス供給手段を制御する。このため、燃料電池の出力効率が過度に悪化する出力領域を下限出力値及び上限出力値により設定しておけば、出力効率が過度に悪化する領域に対応する負荷の要求出力があった場合には、むしろ高い出力効率で燃料電池を発電させ、その余剰分を蓄電装置に蓄電することが可能となる。その結果、燃料電池システム全体としての発電効率を高めることが可能となる。
【0012】
前記負荷の要求出力が前記下限出力値を下回る又は前記上限出力値を上回る場合、前記蓄電装置の残容量が目標値に近づくように、前記燃料電池の出力を前記ガス供給手段により調整してもよい。これにより、蓄電装置の残容量を良好に制御することが可能となる。
【0013】
前記燃料電池システムは、車両に搭載されるシステムとし、前記負荷の要求出力が前記下限出力値を下回り又は前記上限出力値を上回る場合、回生履歴に基づいて前記燃料電池の出力を前記ガス供給手段により調整してもよい。これにより、蓄電装置の残容量を良好に制御することが可能となる。
【発明の効果】
【0014】
この発明によれば、電圧固定・出力可変制御により燃料電池の劣化を抑制しつつ、電圧固定・出力可変制御中における燃料電池システム全体の発電効率を向上することが可能となる。
【0015】
すなわち、電圧固定・出力可変制御では、燃料電池の出力電圧を酸化還元進行電圧範囲外の特定電圧値に固定させるため、出力電圧が酸化還元進行電圧範囲内に入ることによる燃料電池の劣化を避けることができる。
【0016】
また、この発明によれば、負荷の要求出力が下限出力値を上回り且つ上限出力値を下回る場合、特定電圧値への固定及び負荷の要求出力への追従を続けて実行し、負荷の要求出力が下限出力値を下回る又は上限出力値を上回る場合、特定電圧値への固定を続けて実行しつつ、燃料電池の出力が効率最高領域内の値になるようにガス供給手段を制御する。このため、燃料電池の出力効率が過度に悪化する出力領域を下限出力値及び上限出力値により設定しておけば、出力効率が過度に悪化する領域に対応する負荷の要求出力があった場合には、むしろ高い出力効率で燃料電池を発電させ、その余剰分を蓄電装置に蓄電することが可能となる。その結果、燃料電池システム全体としての発電効率を高めることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】この発明の一実施形態に係る燃料電池システム(FCシステム)を搭載した燃料電池車両の概略全体構成図である。
【図2】前記燃料電池車両の電力系のブロック図である。
【図3】前記実施形態における燃料電池ユニットの概略構成図である。
【図4】前記実施形態におけるDC/DCコンバータの詳細を示す図である。
【図5】電子制御装置(ECU)における基本的な制御のフローチャートである。
【図6】システム負荷を計算するフローチャートである。
【図7】現在のモータ回転数とモータ予想消費電力との関係を示す図である。
【図8】燃料電池を構成する燃料電池セルの電位とセルの劣化量との関係の一例を示す図である。
【図9】燃料電池セルの電位の変動速度が異なる場合の酸化の進行と還元の進行の様子の例を示すサイクリックボルタンメトリ図である。
【図10】前記実施形態における複数の電力供給モードの説明図である。
【図11】前記ECUが、前記FCシステムのエネルギマネジメントを行うフローチャートである。
【図12】カソードストイキ比とセル電流との関係を示す図である。
【図13】第2モードのフローチャートである。
【図14】第2モードにおける目標FC電流と目標酸素濃度との関係を示す図である。
【図15】第2モードにおける目標酸素濃度及び目標FC電流と目標エアポンプ回転数及び目標ウォータポンプ回転数との関係を示す図である。
【図16】第2モードにおける目標酸素濃度及び目標FC電流と目標背圧弁開度との関係を示す図である。
【図17】第2モードにおける目標FC電流と空気流量との関係を示す図である。
【図18】第2モードにおける循環弁の開度と循環ガス流量との関係を示す図である。
【図19】第2モードにおいて目標FC電流を算出するフローチャートである。
【図20】第1モード及び第2モードそれぞれについてFC出力とFCユニットの出力効率との関係を示す図である。
【図21】第1モード及び第2モードそれぞれについてFC出力とFC自体の発電効率との関係を示す図である。
【図22】第2モードでFC出力に用いる下限値及び上限値の設定方法を説明する図である。
【図23】バッテリSOCと回生平均補正係数との関係を示す図である。
【図24】モータのトルク制御のフローチャートである。
【図25】前記実施形態及び比較例に係る各種制御を用いた場合のタイムチャートの例である。
【図26】前記実施形態に係る燃料電池車両の第1変形例の概略構成を示すブロック図である。
【図27】前記実施形態に係る燃料電池車両の第2変形例の概略構成を示すブロック図である。
【図28】前記実施形態に係る燃料電池車両の第3変形例の概略構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
1.全体的な構成の説明
[1−1.全体構成]
図1は、この発明の一実施形態に係る燃料電池システム12(以下「FCシステム12」という。)を搭載した燃料電池車両10(以下「FC車両10」又は「車両10」という。)の概略全体構成図である。図2は、FC車両10の電力系のブロック図である。図1及び図2に示すように、FC車両10は、FCシステム12に加え、走行用のモータ14と、インバータ16とを有する。
【0019】
FCシステム12は、燃料電池ユニット18(以下「FCユニット18」という。)と、高電圧バッテリ20(以下「バッテリ20」ともいう。)(蓄電装置)と、DC/DCコンバータ22と、電子制御装置24(以下「ECU24」という。)とを有する。
【0020】
[1−2.駆動系]
モータ14は、FCユニット18及びバッテリ20から供給される電力に基づいて駆動力を生成し、当該駆動力によりトランスミッション26を通じて車輪28を回転させる。また、モータ14は、回生を行うことで生成した電力(回生電力Preg)[W]をバッテリ20等に出力する(図2参照)。
【0021】
インバータ16は、3相ブリッジ型の構成とされて、直流/交流変換を行い、直流を3相の交流に変換してモータ14に供給する一方、回生動作に伴う交流/直流変換後の直流をDC/DCコンバータ22を通じてバッテリ20等に供給する。
【0022】
なお、モータ14とインバータ16を併せて負荷30という。負荷30には、後述するエアポンプ60、ウォータポンプ80、エアコンディショナ90等の構成要素を含めることもできる。
【0023】
[1−3.FC系]
(1−3−1.全体構成)
図3は、FCユニット18の概略構成図である。FCユニット18は、燃料電池スタック40(以下「FCスタック40」又は「FC40」という。)と、FCスタック40のアノードに対して水素(燃料ガス)を給排するアノード系と、FCスタック40のカソードに対して酸素を含む空気(酸化剤ガス)を給排するカソード系と、FCスタック40を冷却する冷却系と、セル電圧モニタ42とを備える。
【0024】
(1−3−2.FCスタック40)
FCスタック40は、例えば、固体高分子電解質膜をアノード電極とカソード電極とで両側から挟み込んで形成された燃料電池セル(以下「FCセル」という。)を積層した構造を有する。
【0025】
(1−3−3.アノード系)
アノード系は、水素タンク44、レギュレータ46、エゼクタ48及びパージ弁50を有する。水素タンク44は、燃料ガスとしての水素を収容するものであり、配管44a、レギュレータ46、配管46a、エゼクタ48及び配管48aを介して、アノード流路52の入口に接続されている。これにより、水素タンク44の水素は、配管44a等を介してアノード流路52に供給可能である。なお、配管44aには、遮断弁(図示せず)が設けられており、FCスタック40の発電の際、当該遮断弁は、ECU24により開とされる。
【0026】
レギュレータ46は、導入される水素の圧力を所定値に調整して排出する。すなわち、レギュレータ46は、配管46bを介して入力されるカソード側の空気の圧力(パイロット圧)に応じて、下流側の圧力(アノード側の水素の圧力)を制御する。従って、アノード側の水素の圧力は、カソード側の空気の圧力に連動し、後記するように、酸素濃度を変化させるべくエアポンプ60の回転数等を変化させると、アノード側の水素の圧力も変化する。
【0027】
エゼクタ48は、水素タンク44からの水素をノズルで噴射することで負圧を発生させ、この負圧によって配管48bのアノードオフガスを吸引する。
【0028】
アノード流路52の出口は、配管48bを介して、エゼクタ48の吸気口に接続されている。そして、アノード流路52から排出されたアノードオフガスは、配管48bを通って、エゼクタ48に再度導入されることでアノードオフガス(水素)が循環する。
【0029】
なお、アノードオフガスは、アノードにおける電極反応で消費されなかった水素及び水蒸気を含んでいる。また、配管48bには、アノードオフガスに含まれる水分{凝縮水(液体)、水蒸気(気体)}を分離・回収する気液分離器(図示せず)が設けられている。
【0030】
配管48bの一部は、配管50a、パージ弁50及び配管50bを介して、後記する配管64bに設けられた希釈ボックス54に接続されている。パージ弁50は、FCスタック40の発電が安定していないと判定された場合、ECU24からの指令に基づき所定時間、開となる。希釈ボックス54は、パージ弁50からのアノードオフガス中の水素を、カソードオフガスで希釈する。
【0031】
(1−3−4.カソード系)
カソード系は、エアポンプ60、加湿器62、背圧弁64、循環弁66、流量センサ68、70及び温度センサ72を有する。
【0032】
エアポンプ60は、外気(空気)を圧縮してカソード側に送り込むものであり、その吸気口は、配管60aを介して車外(外部)と連通している。エアポンプ60の吐出口は、配管60b、加湿器62及び配管62aを介して、カソード流路74の入口に接続されている。エアポンプ60がECU24の指令に従って作動すると、エアポンプ60は、配管60aを介して車外の空気を吸気して圧縮し、この圧縮された空気が配管60b等を通ってカソード流路74に圧送される。
【0033】
加湿器62は、水分透過性を有する複数の中空糸膜62eを備えている。そして、加湿器62は、中空糸膜62eを介して、カソード流路74に向かう空気とカソード流路74から排出された多湿のカソードオフガスとの間で水分交換させ、カソード流路74に向かう空気を加湿する。
【0034】
カソード流路74の出口側には、配管62b、加湿器62、配管64a、背圧弁64及び配管64bが配置されている。カソード流路74から排出されたカソードオフガス(酸化剤オフガス)は、配管62b等を通って、車外に排出される。
【0035】
背圧弁64は、例えば、バタフライ弁で構成され、その開度がECU24によって制御されることで、カソード流路74における空気の圧力を制御する。より具体的には、背圧弁64の開度が小さくなると、カソード流路74における空気の圧力が上昇し、体積流量当たりにおける酸素濃度(体積濃度)が高くなる。逆に、背圧弁64の開度が大きくなると、カソード流路74における空気の圧力が下降し、体積流量当たりにおける酸素濃度(体積濃度)が低くなる。
【0036】
配管64bは、配管66a、循環弁66及び配管66bを介して、エアポンプ60の上流側の配管60aに接続されている。これにより、排気ガス(カソードオフガス)の一部が、循環ガスとして、配管66a、循環弁66及び配管66bを通って、配管60aに供給され、車外からの新規空気に合流し、エアポンプ60に吸気される。
【0037】
循環弁66は、例えば、バタフライ弁で構成され、その開度がECU24によって制御されることで循環ガスの流量を制御する。
【0038】
流量センサ68は、配管60bに取り付けられ、カソード流路74に向かう空気の流量[g/s]を検出してECU24に出力する。流量センサ70は、配管66bに取り付けられ、配管60aに向かう循環ガスの流量Qc[g/s]を検出してECU24に出力する。
【0039】
温度センサ72は、配管64aに取り付けられ、カソードオフガスの温度を検出してECU24に出力する。ここで、循環ガスの温度は、カソードオフガスの温度と略等しいため、温度センサ72の検出するカソードオフガスの温度に基づいて、循環ガスの温度を検知することができる。
【0040】
(1−3−5.冷却系)
冷却系は、ウォータポンプ80及び図示しないラジエータ、ラジエータファン等を有する。ウォータポンプ80は、FC40内に冷却水(冷媒)を循環させることでFC40を冷却する。FC40を冷却して温度が上昇した冷却水は、前記ラジエータファンによる送風を受ける前記ラジエータで放熱される。
【0041】
(1−3−6.セル電圧モニタ42)
セル電圧モニタ42は、FCスタック40を構成する複数の単セル毎のセル電圧Vcellを検出する機器であり、モニタ本体と、モニタ本体と各単セルとを接続するワイヤハーネスとを備える。モニタ本体は、所定周期で全ての単セルをスキャニングし、各単セルのセル電圧Vcellを検出し、平均セル電圧及び最低セル電圧を算出する。そして、平均セル電圧及び最低セル電圧をECU24に出力する。
【0042】
(1−3−7.電力系)
図2に示すように、FC40からの電力(以下「FC電力Pfc」又は「FC出力Pfc」という。)は、インバータ16及びモータ14(力行時)とDC/DCコンバータ22及び高電圧バッテリ20(充電時)とに加え、前記エアポンプ60、前記ウォータポンプ80、前記エアコンディショナ90、ダウンバータ92(降圧型DC/DCコンバータ)、低電圧バッテリ94、アクセサリ96及びECU24に供給される。なお、図1に示すように、FCユニット18(FC40)とインバータ16及びDC/DCコンバータ22との間には、逆流防止ダイオード98が配置されている。また、FC40の発電電圧(以下「FC電圧Vfc」という。)は、電圧センサ100(図4)により検出され、FC40の発電電流(以下「FC電流Ifc」という。)は、電流センサ102により検出され、いずれもECU24に出力される。
【0043】
[1−4.高電圧バッテリ20]
バッテリ20は、複数のバッテリセルを含む蓄電装置(エネルギストレージ)であり、例えば、リチウムイオン2次電池、ニッケル水素二次電池又はキャパシタ等を利用することができる。本実施形態ではリチウムイオン2次電池を利用している。バッテリ20の出力電圧(以下「バッテリ電圧Vbat」という。)[V]は、電圧センサ104(図2)により検出され、バッテリ20の出力電流(以下「バッテリ電流Ibat」という。)[A]は、電流センサ106により検出され、それぞれECU24に出力される。ECU24は、バッテリ電圧Vbatとバッテリ電流Ibatとに基づいて、バッテリ20の残容量(以下「SOC」という。)[%]を算出する。
【0044】
[1−5.DC/DCコンバータ22]
DC/DCコンバータ22は、FCユニット18からのFC電力Pfcと、バッテリ20から供給された電力(以下「バッテリ電力Pbat」という。)[W]と、モータ14からの回生電力Pregとの供給先を制御する。
【0045】
図4には、本実施形態におけるDC/DCコンバータ22の詳細が示されている。図4に示すように、DC/DCコンバータ22は、一方がバッテリ20のある1次側1Sに接続され、他方が負荷30とFC40との接続点である2次側2Sに接続されている。
【0046】
DC/DCコンバータ22は、1次側1Sの電圧(1次電圧V1)[V]を2次側2Sの電圧(2次電圧V2)[V](V1≦V2)に昇圧すると共に、2次電圧V2を1次電圧V1に降圧する昇降圧型且つチョッパ型の電圧変換装置である。
【0047】
図4に示すように、DC/DCコンバータ22は、1次側1Sと2次側2Sとの間に配される相アームUAと、リアクトル110とから構成される。
【0048】
相アームUAは、上アーム素子(上アームスイッチング素子112と逆並列ダイオード114)と下アーム素子(下アームスイッチング素子116と逆並列ダイオード118)とで構成される。上アームスイッチング素子112と下アームスイッチング素子116には、それぞれ例えば、MOSFET又はIGBT等が採用される。
【0049】
リアクトル110は、相アームUAの中点(共通接続点)とバッテリ20の正極との間に挿入され、DC/DCコンバータ22により1次電圧V1と2次電圧V2との間で電圧を変換する際に、エネルギーを蓄積及び放出する作用を有する。
【0050】
上アームスイッチング素子112は、ECU24から出力されるゲート駆動信号(駆動電圧)UHのハイレベルによりオンにされ、下アームスイッチング素子116は、ゲートの駆動信号(駆動電圧)ULのハイレベルによりオンにされる。
【0051】
なお、ECU24は、1次側の平滑コンデンサ122に並列に設けられた電圧センサ120により1次電圧V1を検出し、電流センサ124により1次側の電流(1次電流I1)[A]を検出する。また、ECU24は、2次側の平滑コンデンサ128に並列に設けられた電圧センサ126により2次電圧V2を検出し、電流センサ130により2次側の電流(2次電流I2)[A]を検出する。
【0052】
[1−6.ECU24]
ECU24は、通信線140(図1等)を介して、モータ14、インバータ16、FCユニット18、バッテリ20及びDC/DCコンバータ22を制御する。当該制御に際しては、メモリ(ROM)に格納されたプログラムを実行し、また、セル電圧モニタ42、流量センサ68、70、温度センサ72、電圧センサ100、104、120、126、電流センサ102、106、124、130等の各種センサの検出値を用いる。
【0053】
ここでの各種センサには、上記センサに加え、開度センサ150及びモータ回転数センサ152(以下「回転数センサ152」という。)(図1)が含まれる。開度センサ150は、アクセルペダル154の開度θp[度]を検出する。回転数センサ152は、モータ14の回転数(以下「モータ回転数Nm」又は「回転数Nm」という。)[rpm]を検出する。ECU24は、回転数Nmを用いてFC車両10の車速V[km/h]を検出する。さらに、ECU24には、メインスイッチ156(以下「メインSW156」という。)が接続される。メインSW156は、FCユニット18及びバッテリ20からモータ14への電力供給の可否を切り替えるものであり、ユーザにより操作可能である。
【0054】
ECU24は、マイクロコンピュータを含み、必要に応じて、タイマ、A/D変換器、D/A変換器等の入出力インタフェースを有する。なお、ECU24は、1つのECUのみからなるのではなく、モータ14、FCユニット18、バッテリ20及びDC/DCコンバータ22毎の複数のECUから構成することもできる。
【0055】
ECU24は、FCスタック40の状態、バッテリ20の状態及びモータ14の状態の他、各種スイッチ及び各種センサからの入力(負荷要求)に基づき決定したFC車両10全体としてFCシステム12に要求される負荷から、FCスタック40が負担すべき負荷と、バッテリ20が負担すべき負荷と、回生電源(モータ14)が負担すべき負荷の配分(分担)を調停しながら決定し、モータ14、インバータ16、FCユニット18、バッテリ20及びDC/DCコンバータ22に指令を送出する。
【0056】
2.本実施形態の制御
次に、ECU24における制御について説明する。
【0057】
[2−1.基本制御]
図5には、ECU24における基本的な制御のフローチャートが示されている。ステップS1において、ECU24は、メインSW156がオンであるかどうかを判定する。メインSW156がオンでない場合(S1:NO)、ステップS1を繰り返す。メインSW156がオンである場合(S1:YES)、ステップS2に進む。ステップS2において、ECU24は、FCシステム12に要求される負荷(システム負荷Psys)[W]を計算する。
【0058】
ステップS3において、ECU24は、FCシステム12のエネルギマネジメントを行う。ここにいうエネルギマネジメントは、主として、FC40の発電量(FC電力Pfc)及びバッテリ20の出力(バッテリ電力Pbat)を算出する処理であり、FCスタック40の劣化を抑制しつつ、FCシステム12全体の出力を効率化することを企図している。
【0059】
ステップS4において、ECU24は、FCスタック40の周辺機器、すなわち、エアポンプ60、背圧弁64、循環弁66及びウォータポンプ80の制御(FC発電制御)を行う。ステップS5において、ECU24は、モータ14のトルク制御を行う。
【0060】
ステップS6において、ECU24は、メインSW156がオフであるかどうかを判定する。メインSW156がオフでない場合(S6:NO)、ステップS2に戻る。メインSW156がオフである場合(S6:YES)、今回の処理を終了する。
【0061】
[2−2.システム負荷Psysの計算]
図6には、システム負荷Psysを計算するフローチャートが示されている。ステップS11において、ECU24は、開度センサ150からアクセルペダル154の開度θpを読み込む。ステップS12において、ECU24は、回転数センサ152からモータ14の回転数Nmを読み込む。
【0062】
ステップS13において、ECU24は、開度θpと回転数Nmに基づいてモータ14の予想消費電力Pm[W]を算出する。具体的には、図7に示すマップにおいて、開度θp毎に回転数Nmと予想消費電力Pmの関係を記憶しておく。例えば、開度θpがθp1であるとき、特性160を用いる。同様に、開度θpがθp2、θp3、θp4、θp5、θp6であるとき、それぞれ特性162、164、166、168、170を用いる。そして、開度θpに基づいて回転数Nmと予想消費電力Pmとの関係を示す特性を特定した上で、回転数Nmに応じた予想消費電力Pmを特定する。
【0063】
ステップS14において、ECU24は、各補機から現在の動作状況を読み込む。ここでの補機には、例えば、エアポンプ60、ウォータポンプ80及びエアコンディショナ90を含む高電圧系の補機や、低電圧バッテリ94、アクセサリ96及びECU24を含む低電圧系の補機が含まれる。例えば、エアポンプ60及びウォータポンプ80であれば、回転数Nap、Nwp[rpm]を読み込む。エアコンディショナ90であれば、その出力設定を読み込む。
【0064】
ステップS15において、ECU24は、各補機の現在の動作状況に応じて補機の消費電力Pa[W]を算出する。ステップS16において、ECU24は、モータ14の予想消費電力Pmと補機の消費電力Paの和をFC車両10全体での予想消費電力(すなわち、システム負荷Psys)として算出する。
【0065】
[2−3.エネルギマネジメント]
上記のように、本実施形態におけるエネルギマネジメントでは、FCスタック40の劣化を抑制しつつ、FCシステム12全体の出力を効率化することを企図している。
【0066】
(2−3−1.前提事項)
図8は、FCスタック40を構成するFCセルの電位(セル電圧Vcell)[V]とセルの劣化量Dとの関係の一例を示している。すなわち、図8中の曲線180は、セル電圧Vcellと劣化量Dとの関係を示す。
【0067】
図8において、電位v1(例えば、0.5V)を下回る領域(以下「白金凝集増加領域R1」又は「凝集増加領域R1」という。)では、FCセルに含まれる白金(酸化白金)について還元反応が激しく進行し、白金が過度に凝集する。電位v1から電位v2(例えば、0.8V)までは、還元反応が安定的に進行する領域(以下「白金還元領域R2」又は「還元領域R2」という。)である。
【0068】
電位v2から電位v3(例えば、0.9V)までは、白金について酸化還元反応が進行する領域(以下「白金酸化還元進行領域R3」又は「酸化還元領域R3」という。)である。電位v3から電位v4(例えば、0.95V)までは、白金について酸化反応が安定的に進行する領域(以下「白金酸化安定領域R4」又は「酸化領域R4」という。)である。電位v4からOCV(開回路電圧)までは、セルに含まれるカーボンの酸化が進行する領域(以下「カーボン酸化領域R5」という。)である。
【0069】
上記のように、図8では、セル電圧Vcellが白金還元領域R2又は白金酸化安定領域R4にあれば、隣り合う領域と比較してFCセルの劣化の進行度合が小さい。一方、セル電圧Vcellが白金凝集増加領域R1、白金酸化還元進行領域R3、又はカーボン酸化領域R5にあれば、隣り合う領域と比較してFCセルの劣化の進行度合が大きい。
【0070】
なお、図8では、曲線180を一義的に定まるような表記としているが、実際は、単位時間当たりにおけるセル電圧Vcellの変動量(変動速度Acell)[V/sec]に応じて曲線180は変化する。
【0071】
図9には、変動速度Acellが異なる場合の酸化の進行と還元の進行の様子の例を示すサイクリックボルタンメトリ図である。図9において、曲線190は、変動速度Acellが高い場合を示し、曲線192は、変動速度Acellが低い場合を示す。図9からわかるように、変動速度Acellに応じて酸化又は還元の進行度合が異なるため、必ずしも各電位v1〜v4は一義的に特定されない。また、FCセルの個体差によっても各電位v1〜v4は変化し得る。このため、電位v1〜v4は、理論値、シミュレーション値又は実測値に誤差分を反映させたものとして設定することが好ましい。
【0072】
また、FCセルの電流−電圧(IV)特性は、一般的な燃料電池セルと同様、セル電圧Vcellが下がるほど、セル電流Icell[A]が増加する(図10参照)。加えて、FCスタック40の発電電圧(FC電圧Vfc)は、セル電圧VcellにFCスタック40内の直列接続数Nfcを乗算したものである。直列接続数Nfcは、FCスタック40内で直列に接続されるFCセルの数であり、以下、単に「セル数」ともいう。
【0073】
以上を踏まえ、本実施形態では、DC/DCコンバータ22が、電圧変換動作を行っている際、FCスタック40の目標電圧(目標FC電圧Vfctgt)[V]を、主として、白金還元領域R2内に設定しつつ、必要に応じて白金酸化安定領域R4内に設定する(具体例は、図10等を用いて説明する。)。このような目標FC電圧Vfctgtの切替えを行うことにより、FC電圧Vfcが、領域R1、R3、R5(特に、白金酸化還元進行領域R3)内にある時間を極力短縮し、FCスタック40の劣化を防止することができる。
【0074】
なお、上記の処理では、FCスタック40の供給電力(FC電力Pfc)と、システム負荷Psysが等しくならない場合が存在する。この点、FC電力Pfcがシステム負荷Psysを下回っている場合、その不足分は、バッテリ20から供給する。また、FC電力Pfcがシステム負荷Psysを上回っている場合、その余剰分は、バッテリ20に充電する。
【0075】
なお、図8では、電位v1〜v4を具体的な数値として特定したが、これは、後述する制御を行うためであり、当該数値は、あくまで制御の便宜を考慮して決定するものである。換言すると、曲線180からもわかるように、劣化量Dは連続的に変化するため、制御の仕様に応じて、電位v1〜v4は、適宜設定することができる。
【0076】
但し、白金還元領域R2は、曲線180の極小値(第1極小値Vlmi1)を含む。白金酸化還元進行領域R3では、曲線180の極大値(極大値Vlmx)を含む。白金酸化安定領域R4は、曲線180の別の極小値(第2極小値Vlmi2)を含む。
【0077】
(2−3−2.エネルギマネジメントで用いる電力供給制御及び電力供給モード)
図10は、本実施形態における複数の電力供給モードの説明図である。本実施形態では、エネルギマネジメントで用いる電力供給の制御方法(電力供給モード)として、3つの制御方法(電力供給モード)を用いる。すなわち、本実施形態では、エネルギマネジメントで用いる電力供給モード(動作モード)として、第1〜第3モードを切り替えて用いる。第1モードは、目標FC電圧Vfctgt及びFC電流Ifc(FC出力Pfc)がいずれも可変である電圧可変・電流可変制御(電圧可変・出力可変制御)である。第2モードは、目標FC電圧Vfctgtが一定でありFC電流Ifc(FC電力Pfc)が可変である電圧固定・電流可変制御(電圧固定・出力可変制御)である。第3モードは、目標FC電圧Vfctgtが一定でありFC電流Ifc(FC出力Pfc)が一定である電圧固定・電流固定制御(電圧固定・出力固定制御)である。
【0078】
第1モード(電圧可変・電流可変制御)は、主として、システム負荷Psysが相対的に高いときに用いられるものであり、目標酸素濃度Cotgtを固定(或いは、酸素を豊潤な状態に維持)した状態で、目標FC電圧Vfctgtを調整することによりFC電流Ifcを制御する。これにより、基本的に、FC電力Pfcによりシステム負荷Psysをまかなうことが可能となる。
【0079】
第2モード(電圧固定・電流可変制御)は、主として、システム負荷Psysが相対的に中くらいのときに用いられるものであり、目標セル電圧Vcelltgt(=目標FC電圧Vfctgt/セル数)を、酸化還元領域R3よりも低い電位以下で設定された基準電位{本実施形態では、電位v2(=0.8V)}に固定すると共に、目標酸素濃度Cotgtを基本的に可変とすることにより、FC電流Ifcを可変とする(但し、一部例外がある。)。これにより、基本的に、FC電力Pfcによりシステム負荷Psysをまかなうことが可能となる(詳細は後述する。)。FC電力Pfcの不足分は、バッテリ20からアシストする。
【0080】
第3モード(電圧固定・電流固定制御)は、主として、システム負荷Psysが相対的に低いときに用いられるものであり、目標セル電圧Vcelltgt(=目標FC電圧Vfctgt/セル数)を、酸化還元領域R3外の電位{本実施形態では、電位v3(=0.9V)}に固定し、FC電流Ifcを一定とする。FC電力Pfcの不足分は、バッテリ20からアシストし、FC電力Pfcの余剰分は、バッテリ20に充電する。
【0081】
(2−3−3.エネルギマネジメントの全体フロー)
図11には、ECU24が、FCシステム12のエネルギマネジメント(図5のS3)を行うフローチャートが示されている。ステップS21において、ECU24は、車両10が高負荷状態であるか否かを判定する。具体的には、ECU24は、ステップS2で計算したシステム負荷Psysが、高負荷を判定するための閾値P2以上であるか否かを判定する。ここにいう高負荷とは、例えば、酸素が豊潤な状態とし且つセル電圧Vcellを還元領域R2内の値にして(FC電圧Vfcを還元領域R2内の値×セル数にして)FC40を発電させた際に得られるFC電力Pfcが、システム負荷Psysと釣り合うような場合を意味する。
【0082】
システム負荷Psysが閾値P2以上である場合、車両10が高負荷状態であり、システム負荷Psysが閾値P2以上でない場合、車両10は高負荷状態ではない。なお、高負荷状態の判定は、その他の方法によって行ってもよい。例えば、車速Vが、高負荷を判定するための閾値THVh以下であるか否かにより高負荷状態を判定することもできる。或いは、車両10の加速度(車速Vの変化量)が、高負荷を判定するための閾値以下であるか否かにより高負荷状態を判定してもよい。
【0083】
車両10が高負荷状態である場合(S21:YES)、ステップS22において、ECU24は、第1モード(電圧可変・電流可変制御)を行う(詳細は後述する)。車両10が高負荷状態でない場合(S21:NO)、ステップS23に進む。
【0084】
ステップS23において、ECU24は、車両10が中負荷状態であるか否かを判定する。具体的には、ECU24は、ステップS2で計算したシステム負荷Psysが、中負荷を判定するための閾値P1以上であるか否かを判定する。ここにいう中負荷とは、例えば、酸素が豊潤な状態とし且つセル電圧Vcellを酸化還元領域R3内の値にして(FC電圧Vfcを還元領域R3内の値×セル数にして)FC40を発電させた際に得られるFC電力Pfcが、システム負荷Psysと釣り合うような場合を意味する。
【0085】
システム負荷Psysが閾値P1以上である場合、車両10が中負荷状態であり、システム負荷Psysが閾値P1以上でない場合、車両10は中負荷状態ではない。なお、中負荷状態の判定は、その他の方法によって行ってもよい。例えば、車速Vが、中負荷を判定するための閾値THVm以下であるか否かにより中負荷状態を判定することもできる。或いは、車両10の加速度(車速Vの変化量)が、中負荷を判定するための閾値以下であるか否かにより中負荷状態を判定してもよい。
【0086】
車両10が中負荷状態である場合(S23:YES)、ステップS24において、ECU24は、第2モード(電圧固定・電流可変制御)を行う(詳細は図13を参照して後述する)。車両10が中負荷状態でない場合(S23:NO)、ステップS25において、ECU24は、第3モード(電圧固定・電流固定制御)を行う(詳細は後述する)。
【0087】
(2−3−4.第1モード)
上記のように、第1モードは、主として、システム負荷Psysが相対的に高いときに用いられるものであり、目標酸素濃度Cotgtを固定(或いは、酸素を豊潤な状態に維持)した状態で、目標FC電圧Vfctgtを調整することによりFC電流Ifcを制御する。
【0088】
すなわち、図10に示すように、第1モードでは、FC40の電流−電圧特性(IV特性)が通常のもの(図10中、実線で表されるもの)を用いる。通常の燃料電池と同様、FC40のIV特性は、セル電圧Vcell(FC電圧Vfc)が低くなるほど、セル電流Icell(FC電流Ifc)が大きくなる。このため、第1モードでは、システム負荷Psysに応じて目標FC電流Ifctgtを算出し、さらに目標FC電流Ifctgtに対応する目標FC電圧Vfctgtを算出する。そして、FC電圧Vfcが目標FC電圧Vfctgtとなるように、ECU24は、DC/DCコンバータ22を制御する。すなわち、2次電圧V2が目標FC電圧Vfctgtとなるように1次電圧V1をDC/DCコンバータ22により昇圧することで、FC電圧Vfcを制御してFC電流Ifcを制御する。
【0089】
なお、酸素が豊潤な状態にあるとは、例えば、図12に示すように、カソードストイキ比を上昇させても、セル電流Icellが略一定となり、実質的に飽和した状態となる通常ストイキ比以上の領域における酸素を意味する。水素が豊潤であるという場合も、同様である。なお、カソードストイキ比とは、カソード流路74に供給するエアの流量/FC40の発電により消費されたエアの流量であり、カソード流路74における酸素濃度に近似する。また、カソードストイキ比の調整は、例えば、酸素濃度の制御により行う。
【0090】
以上のような第1モードによれば、システム負荷Psysが高負荷であっても、基本的にシステム負荷Psysの全てをFC電力Pfcによりまかなうことが可能となる。
【0091】
(2−3−5.第2モードの全体)
上記のように、第2モードは、主として、システム負荷Psysが中負荷のときに用いられるものであり、目標セル電圧Vcelltgt(=目標FC電圧Vfctgt/セル数)を、酸化還元領域R3よりも低い電位以下で設定された基準電位{本実施形態では、電位v2(=0.8V)}に固定すると共に、目標酸素濃度Cotgtを基本的に可変とすることにより、FC電流Ifcを可変とする。
【0092】
すなわち、図10に示すように、第2モードでは、セル電圧Vcellを一定に保った状態で目標酸素濃度Cotgtを下げていくことで酸素濃度Coを下げる。図12に示すように、カソードストイキ比(酸素濃度Co)が低下するとセル電流Icell(FC電流Ifc)も低下する。このため、セル電圧Vcellを一定に保った状態で目標酸素濃度Cotgtを増減させることで、セル電流Icell(FC電流Ifc)及びFC電力Pfcを制御することが可能となる。なお、FC電力Pfcの不足分は、バッテリ20からアシストする。
【0093】
図13には、第2モードのフローチャートが示されている。ステップS31において、ECU24は、DC/DCコンバータ22の昇圧率を調整することにより、酸化還元領域R3よりも低い電位以下で設定された基準電位{本実施形態では、電位v2(=0.8V)}に目標FC電圧Vfctgtを固定する。ステップS32において、ECU24は、システム負荷Psysに対応する目標FC電流Ifctgtを算出する(詳細は、図19等を参照して後述する。)。
【0094】
ステップS33において、ECU24は、目標FC電圧Vfctgtが基準電位であることを前提として、目標FC電流Ifctgtに対応する目標酸素濃度Cotgtを算出する(図10及び図14参照)。なお、図14は、FC電圧Vfcが基準電位であるときの目標FC電流Ifctgtと目標酸素濃度Cotgtとの関係を示す。
【0095】
ステップS34において、ECU24は、目標酸素濃度Cotgtに応じて各部への指令値を算出及び送信する。ここで算出される指令値には、エアポンプ60の回転数(以下「エアポンプ回転数Nap」又は「回転数Nap」という。)、ウォータポンプ80の回転数(以下「ウォータポンプ回転数Nwp」又は「回転数Nwp」という。)、背圧弁64の開度(以下「背圧弁開度θbp」又は「開度θbp」という。)及び循環弁66の開度(以下「循環弁開度θc」又は「開度θc」という。)が含まれる。
【0096】
すなわち、図15及び図16に示すように、目標酸素濃度Cotgtに応じて目標エアポンプ回転数Naptgt、目標ウォータポンプ回転数Nwptgt及び目標背圧弁開度θbptgtが設定される。また、循環弁66の目標開度θctgtは、初期値(例えば、循環ガスがゼロとなる開度)に設定される。
【0097】
ステップS35において、ECU24は、FC40による発電が安定しているか否かを判定する。当該判定として、ECU24は、セル電圧モニタ42から入力される最低セル電圧が、平均セル電圧から所定電圧を減算した電圧よりも低い場合{最低セル電圧<(平均セル電圧−所定電圧)}、FC40の発電が不安定であると判定する。なお、前記所定電圧は、例えば、実験値、シミュレーション値等を用いることができる。
【0098】
発電が安定している場合(S35:YES)、今回の処理を終える。発電が安定していない場合(S35:NO)、ステップS36において、ECU24は、流量センサ70を介して循環ガスの流量Qc[g/s]を監視しながら、循環弁66の開度θcを大きくし、流量Qcを1段階増加する(図17参照)。なお、図17では、循環弁66を全開とした場合、流量Qcが4段階目の増加となり、最大流量となる場合を例示している。
【0099】
但し、循環弁66の開度θcが増加すると、エアポンプ60に吸気される吸気ガスにおいて、循環ガスの割合が増加する。すなわち、吸気ガスについて、新規空気(車外から吸気される空気)と、循環ガスとの割合において、循環ガスの割合が増加するように変化する。従って、全単セルへの酸素の分配能力が向上する。ここで、循環ガス(カソードオフガス)の酸素濃度Coは、新規空気の酸素濃度Coに対して低い。このため、循環弁66の開度θcの制御前後において、エアポンプ60の回転数Nap及び背圧弁64の開度θbpが同一である場合、カソード流路74を通流するガスの酸素濃度Coが低下することになる。
【0100】
そこで、ステップS36では、ステップS33で算出した目標酸素濃度Cotgtが維持されるように、循環ガスの流量Qcの増加に連動して、エアポンプ60の回転数Napの増加及び背圧弁64の開度θbpの減少の少なくとも一方を実行することが好ましい。
【0101】
例えば、循環ガスの流量Qcを増加した場合、エアポンプ60の回転数Napを増加させ、新規空気の流量を増加することが好ましい。そして、このようにすれば、カソード流路74に向かうガス(新規空気と循環ガスとの混合ガス)全体の流量が増加するので、全単セルへの酸素の分配能力がさらに向上し、FC40の発電性能が回復し易くなる。
【0102】
このようにして、目標酸素濃度Cotgtを維持しつつ、循環ガスを新規空気に合流させるので、カソード流路74を通流するガスの体積流量[L/s]が増加する。これにより、目標酸素濃度Cotgtが維持されつつ体積流量の増加したガスが、FC40内で複雑に形成されたカソード流路74全体に行き渡り易くなる。従って、各単セルに前記ガスが同様に供給され易くなり、FC40の発電の不安定が解消され易くなる。また、MEA(膜電極接合体)の表面やカソード流路74を囲む壁面に付着する水滴(凝縮水等)も除去され易くなる。
【0103】
ステップS37において、ECU24は、流量センサ70を介して検出される循環ガスの流量Qcが上限値以上であるか否か判定する。判定基準となる上限値は、循環弁66の開度θcが全開となる値に設定される。
【0104】
この場合において、循環弁開度θcが同一であっても、エアポンプ60の回転数Napが増加すると、流量センサ70で検出される循環ガスの流量Qcが増加するので、前記上限値は、エアポンプ回転数Napに関連付けて、つまり、エアポンプ60の回転数Napが大きくなると、前記上限値が大きくなるように設定されることが好ましい。
【0105】
循環ガスの流量Qcが上限値以上でないと判定した場合(S37:NO)、ステップS35に戻る。循環ガスの流量Qcが上限値以上であると判定した場合(S37:YES)、ステップS38に進む。
【0106】
ここで、ステップS36、S37では、流量センサ70が直接検出する循環ガスの流量Qcに基づいて処理を実行したが、循環弁開度θcに基づいて処理を実行してもよい。すなわち、ステップS36において、循環弁開度θcを開方向に1段階(例えば30°)にて増加する構成とし、ステップS37において、循環弁66が全開である場合(S37:YES)、ステップS38に進む構成としてもよい。
【0107】
また、この場合において、循環弁66の開度θcと、循環ガスの温度と、図18のマップとに基づいて、循環ガスの流量Qc[g/s]を算出することもできる。図18に示すように、循環ガスの温度が高くなるにつれて、その密度が小さくなるので、流量Qc[g/s]が小さくなる関係となっている。
【0108】
ステップS38において、ECU24は、ステップS35と同様に、発電が安定しているか否かを判定する。発電が安定している場合(S38:YES)、今回の処理を終える。発電が安定していない場合(S38:NO)、ステップS39において、ECU24は、目標酸素濃度Cotgtを1段階増加させる(通常の濃度に近づける)。具体的には、エアポンプ60の回転数Napの増加及び背圧弁64の開度θbpの減少の少なくとも一方を1段階行う。
【0109】
ステップS40において、ECU24は、目標酸素濃度Cotgtが通常のIV特性における目標酸素濃度(通常酸素濃度Conml)以下であるか否かを判定する。目標酸素濃度Cotgtが通常酸素濃度Conml以下である場合(S40:YES)、ステップS38に戻る。目標酸素濃度Cotgtが通常酸素濃度Conml以下でない場合(S40:NO)、ステップS41において、ECU24は、FCユニット18を停止する。すなわち、ECU24は、FC40への水素及び空気の供給を停止し、FC40の発電を停止する。そして、ECU24は、図示しない警告ランプを点灯させ、運転者にFC40が異常であることを通知する。なお、ECU24は、バッテリ20からモータ14に電力を供給し、FC車両10の走行は継続させる。
【0110】
以上のような第2モードによれば、システム負荷Psysが中負荷である場合に、セル電圧Vcellを一定にした状態で、酸素濃度Co(カソードストイキ比)を調整することにより、基本的にシステム負荷Psysの全てをFC電力Pfcによりまかなうことが可能となる。
【0111】
(2−3−6.第2モードにおける目標FC電流Ifctgtの算出)
図19は、第2モードにおいて目標FC電流Ifctgtを算出するフローチャート(図13のS32の詳細)である。ステップS51において、ECU24は、第2モードにおいて相対的に高効率な発電が可能であるか否かを判定する。具体的には、システム負荷Psysが下限値lim1以上且つ上限値lim2以下であるか否かを判定する。下限値lim1及び上限値lim2については、図20を参照して説明する。
【0112】
図20は、第1モード及び第2モードそれぞれについてFC電力PfcとFCユニット18の出力効率E1、E2との関係を示す図である。
【0113】
第1モードの出力効率E1は、次の式(1)により求められる。
E1=(Pfcm1−Pap−Ppg)/Eh (1)
【0114】
上記式(1)において、Pfcm1は、所定量(単位量)の水素を用いた場合における通常ストイキ比でのFC電力Pfc(以下「第1モードFC電力Pfcm1」という。)[kW]である。Papは、前記所定量の水素を用いた場合におけるエアポンプ60の電力消費量(以下「エアポンプ消費量Pap」という。)[kW]である。Ppgは、前記所定量の水素を用いた場合におけるパージ弁50から排出される水素のエネルギー(以下「パージ消費量Ppg」という。)[kW]である。Ehは、前記所定量の水素が有するエネルギー(以下「水素エネルギーEh」という。)[kW]である。
【0115】
同様に、第2モードの出力効率E2は、次の式(2)により求められる。
E2=(Pfcm2−Pap−Ppg)/Eh (2)
【0116】
上記式(2)において、Pfcm2は、前記所定量の水素を用いた場合において酸素濃度Coを変化させた場合のFC電力Pfc(以下「第2モードFC電力Pfcm2」という。)[kW]である。エアポンプ消費量Pap、パージ消費量Ppg及び水素エネルギーEHは、式(1)と同じである。
【0117】
図20に示すように、FC電力Pfcがゼロに近い領域では、FC電力Pfcが増加すると、出力効率E1、E2のいずれも高くなり、その後、徐々に低くなる。これは、以下に述べるようなFC40自体の発電効率が影響している。
【0118】
図21は、第1モード及び第2モードそれぞれについてFC電力PfcとFC40自体の発電効率Efc1、Efc2[%]との関係を示す図である。第1モードの発電効率Efc1は、第1モードFC電力Pfcm1を水素エネルギーEhで割ったものである(Efc1=Pfcm1/Eh)。第2モードの発電効率Efc2は、第2モードFC電力Pfcm2を水素エネルギーEhで割ったものである(Efc2=Pfcm2/Eh)。
【0119】
図21に示すように、第1モードにおけるFC40自体での発電効率Efc1は、FC電力Pfcが大きくなるほど、低くなる。これは、第1モードではFC電圧Vfcを可変とするが、セル電圧Vcellが低いとき(すなわち、FC電力Pfcが高いとき)の方が、各FCセルの放熱量が高くなるためである。一方、第2モードにおけるFC40自体での発電効率Efc2は、FC電力Pfcによっては変化しない(図21では一定である。)。これは、第2モードではFC電圧Vfcを一定とするため、各FCセルの放熱量が一定になるためである。
【0120】
FC40自体の発電効率Efc1、Efc2は、上記のような特性を有するため、FCユニット18全体としては、図20の出力効率E1、E2のようになる。
【0121】
図20に示すように、FC電力Pfcが同一である場合、基本的に、第1モードの出力効率E1の方が第2モードの出力効率E2よりも高くなる。また、図20において、P1は、セル電圧Vcellが電位v3(=0.9V)である場合に対応するFC電力Pfcであり、P2は、セル電圧Vcellが電位v2(=0.8V)である場合に対応するFC電力Pfcである。
【0122】
上記のように、第1モードでは、FC電圧Vfc(セル電圧Vcell)を可変としてFC電流Ifc及びFC電力Pfcを制御する。このため、第1モードについては、FC電力P1からFC電力P2までの間は、セル電圧Vcellが電位v2と電位v3との間で変化した場合に対応する。一方、第2モードでは、FC電圧Vfc(セル電圧Vcell)を固定としつつ、目標酸素濃度Cotgtを可変とすることにより、FC電流Ifc及びFC電力Pfcを制御する。このため、第2モードについては、FC電力P1からFC電力P2までの間は、セル電圧Vcellが電位v2のまま一定(FC電圧Vfcが電位v2×セル数のまま一定)である。
【0123】
次に、下限値lim1及び上限値lim2について説明する。上記のように、下限値lim1及び上限値lim2は、第2モードで用いられるものであり、図20に示すように、出力効率E2における効率最高領域Rhieffを挟んで設定される。効率最高領域Rhieffは、最高値(以下「最高効率実現出力Phieff」又は「最高値Phieff」という。)及びその近傍の値を含む領域である。
【0124】
下限値lim1及び上限値lim2は、例えば、次のような方法により設定可能である。すなわち、図22に示すように、最高値Phieffに対応する出力効率E2から所定値ΔX%下がった値を実現するFC電力Pfcを下限値lim1及び上限値lim2とする。ここでの所定値ΔXは、例えば、車両10を実際に走行させながら、所定値Δを変化させ、燃費が最もよい値を選択することができる。なお、下限値lim1と上限値lim2を個別に設定することも可能である。
【0125】
図19に戻り、システム負荷Psysが下限値lim1以上且つ上限値lim2以下である場合(S51:YES)、ステップS52において、ECU24は、要求負荷としてのシステム負荷Psysをそのまま目標FC出力Pfctgtに設定する(Pfctgt←Psys)。
【0126】
システム負荷Psysが下限値lim1以上且つ上限値lim2以下でない場合(S51:NO)、第2モードにおいて相対的に効率的な発電を行うことができない(図20)。そこで、ステップS53において、ECU24は、最高効率実現出力Phieffを仮目標FC出力Pfctgt_tに設定する(Pfctgt_t←Phieff)。
【0127】
ステップS54において、ECU24は、回生平均電力Pregaveとバッテリ20のSOCとに応じて回生平均補正係数α(以下「係数α」ともいう。)を設定する。回生平均電力Pregaveは、所定期間(例えば、1分〜30分の間で設定された値)における回生電力Pregの移動平均[kW/min]であり、回生履歴を示す。係数αは、仮目標FC出力Pfctgt_tを回生電力の見込みに応じて補正するための係数である。
【0128】
図23は、バッテリ20のSOCと係数αの関係を回生平均電力Pregave毎に示す図である。図23において、実線で示す特性は、回生平均電力Pregaveが通常である場合のSOCと係数αの関係を示す特性であり、一点鎖線で示す特性は、回生平均電力Pregaveが通常より少ない場合のSOCと係数αの関係を示す特性であり、二点鎖線は、回生平均電力Pregaveが通常より多い場合のSOCと係数αの関係を示す特性である。また、基準値Srefは、SOCの目標値である。
【0129】
図23からわかるように、バッテリSOCが基準値Srefを上回っている状態において回生平均電力Pregaveが少ないときは、SOCが基準値Srefから離れても、係数αを1に近い値とする。一方、バッテリSOCが基準値Srefを上回っている状態において回生平均電力Pregaveが多いときは、SOCが基準値Srefから離れると、係数αを1から大きく遠ざける。このような係数αを仮目標FC出力Pfctgt_tに乗算することにより、SOCを基準値Sref又はその近傍に維持し易くなる。
【0130】
加えて、本実施形態では、係数αを1のまま変化させない領域(不感帯)を設ける。例えば、回生平均電力Pregaveが通常である場合、バッテリSOCがS1〜S2の間が不感帯である。
【0131】
係数αの選択に際しては、ECU24は、まず、回生平均電力Pregaveに応じてSOCと係数αの特性を選択する。次いで、SOCに応じて係数αを選択する。なお、回生平均電力Pregave、SOC及び係数αの関係は、例えば、実験値又はシミュレーション値を用いることができ、事前にECU24の記憶部(図示せず)に記憶しておく。
【0132】
図19に戻り、ステップS55において、ECU24は、仮目標FC出力Pfctgt_tに係数αを乗算して目標FC出力Pfctgtとする。
【0133】
ステップS52又はステップS55の後は、ステップS56において、ECU24は、目標FC出力Pfctgtに応じて目標FC電流Ifctgtを設定する。
【0134】
(2−3−7.第3モード)
上記のように、第3モードは、主として、システム負荷Psysが相対的に低いときに用いられるものであり、目標セル電圧Vcelltgt(=目標FC電圧Vfctgt/セル数)を、酸化還元領域R3外の電位{本実施形態では、電位v3(=0.9V)}に固定し、FC電流Ifcを一定とする。FC電力Pfcの不足分は、バッテリ20からアシストし、FC電力Pfcの余剰分は、バッテリ20に充電する。目標酸素濃度Cotgtは、通常酸素濃度Conmlに固定(或いは、酸素を豊潤な状態に維持)される。
【0135】
すなわち、図10に示すように、第3モードでは、FC40の電流−電圧特性(IV特性)が通常のもの(図10中、実線で表されるもの)とした状態で、セル電圧Vcellを電位v3に固定する(FC電圧Vfcを電位v3×セル数とする。)。FC40の電流−電圧特性(IV特性)が通常のものとするため、ECU24は、目標酸素濃度Cotgtとして通常酸素濃度Conmlを設定し、この目標酸素濃度Cotgtに応じてエアポンプ60の回転数Nap、ウォータポンプ80の回転数Nwp、背圧弁64の開度θbp及び循環弁66の開度θcを設定する。また、セル電圧Vcellを電位v3に固定するため、ECU24は、FC電圧Vfcが電位v3×セル数となるように、2次電圧V2をDC/DCコンバータ22により昇圧する。
【0136】
以上のような第3モードによれば、システム負荷Psysが低負荷である場合、システム負荷PsysをFC電力Pfcとバッテリ電力Pbatによりまかなうことが可能となる。
【0137】
[2−4.FC発電制御]
上記のように、FC発電制御(図5のS4)として、ECU24は、FCスタック40の周辺機器、すなわち、エアポンプ60、背圧弁64、循環弁66及びウォータポンプ80を制御する。具体的には、ECU24は、エネルギマネジメント(図5のS3)で算出したこれらの機器の指令値(例えば、図13のS34)を用いてこれらの機器を制御する。
【0138】
[2−5.モータ14のトルク制御]
図24には、モータ14のトルク制御のフローチャートが示されている。ステップS61において、ECU24は、回転数センサ152からモータ回転数Nmを読み込む。ステップS62において、ECU24は、開度センサ150からアクセルペダル154の開度θpを読み込む。
【0139】
ステップS63において、ECU24は、モータ回転数Nmと開度θpに基づいてモータ14の仮目標トルクTtgt_p[N・m]を算出する。具体的には、図示しない記憶手段に回転数Nmと開度θpと仮目標トルクTtgt_pを関連付けたマップを記憶しておき、当該マップと、回転数Nm及び開度θpとに基づいて仮目標トルクTtgt_pを算出する。
【0140】
ステップS64において、ECU24は、FCシステム12からモータ14に供給可能な電力の限界値(限界供給電力Ps_lim)[W]に等しいモータ14の限界出力(モータ限界出力Pm_lim)[W]を算出する。具体的には、限界供給電力Ps_lim及びモータ限界出力Pm_limは、FCスタック40からのFC電力Pfcとバッテリ20から供給可能な電力の限界値(限界出力Pbat_lim)[W]との和から補機の消費電力Paを引いたものである(Pm_lim=Ps_lim←Pfc+Pbat_lim−Pa)。
【0141】
ステップS65において、ECU24は、モータ14のトルク制限値Tlim[N・m]を算出する。具体的には、モータ限界出力Pm_limを車速Vで除したものをトルク制限値Tlimとする(Tlim←Pm_lim/V)。
【0142】
一方、ステップS64において、ECU24は、モータ14が回生中であると判定した場合には、限界供給回生電力Ps_reglimを算出する。限界供給回生電力Ps_reglimは、バッテリ20に充電可能な電力の限界値(限界充電Pbat_chglim)とFCスタック40からのFC電力Pfcとの和から補機の消費電力Paを引いたものである(Ps_reglim=Pbat_chglim+Pfc−Pa)。回生中である場合、ステップS65において、ECU24は、モータ14の回生トルク制限値Treglim[N・m]を算出する。具体的には、限界供給回生電力Ps_reglimを車速Vsで除したものをトルク制限値Tlimとする(Tlim←Ps_reglim/Vs)。
【0143】
ステップS66において、ECU24は、目標トルクTtgt[N・m]を算出する。具体的には、ECU24は、仮目標トルクTtgt_pに対してトルク制限値Tlimによる制限を加えたものを目標トルクTtgtとする。例えば、仮目標トルクTtgt_pがトルク制限値Tlim以下である場合(Ttgt_p≦Tlim)、仮目標トルクTtgt_pをそのまま目標トルクTtgtとする(Ttgt←Ttgt_p)。一方、仮目標トルクTtgt_pがトルク制限値Tlimを超える場合(Ttgt_p>Tlim)、トルク制限値Tlimを目標トルクTtgtとする(Ttgt←Tlim)。
【0144】
そして、算出した目標トルクTtgtを用いてモータ14を制御する。
【0145】
3.各種制御の例
図25には、本実施形態に係る各種制御と比較例に係る各種制御を用いた場合のタイムチャートの例が示されている。図25の「FC電流Ifc」、「カソードストイキ比」、「FCユニットの出力効率」については、実線で示されるものが本実施形態に係るものであり、破線で示されるものが比較例に係るものである。破線で示される比較例は、第1〜第3モード(但し、第2モードでは図19のステップS52、S56のみを用いたもの)と同様の制御(すなわち、第2モードにおいて下限値lim1及び上限値lim2を用いない制御)を用いる。
【0146】
時点t1から時点t2までは、システム負荷Psysが閾値P1未満であるため(図11のS23:NO)、本実施形態及び比較例のいずれにおいても、第3モードが選択される。時点t2から時点t4までは、システム負荷Psysが閾値P1以上閾値P2未満となるため(図11のS23:YES)、本実施形態及び比較例のいずれにおいても、第2モードが選択される。
【0147】
より具体的には、時点t2から時点t3までは、システム負荷Psysが下限値lim1以上且つ上限値lim2以下であるため(図19のS51:YES)、本実施形態及び比較例のいずれにおいても、システム負荷Psysがそのまま目標FC出力Pfctgtとされ(S52)、この目標FC出力Pfctgtに応じた目標FC電流Ifctgtが設定される(S56)。
【0148】
時点t3から時点t4までは、システム負荷Psysが下限値lim1未満であるため(図19のS51:NO)、本実施形態では、第2モードにおいて相対的に高効率の発電が行われる(S53〜S56)。一方、比較例では、相対的に低効率の発電が行われる(S52、S56)(図20参照)。
【0149】
時点t4から時点t5までは、システム負荷Psysが閾値P1未満であるため(図11のS23:NO)、本実施形態及び比較例のいずれにおいても、第3モードが選択される。時点t5以降は、システム負荷Psysが閾値P1以上閾値P2未満となるため(図11のS23:YES)、本実施形態及び比較例のいずれにおいても、第2モードが選択される。
【0150】
より具体的には、時点t5から時点t6まで及び時点t10から時点t11までは、システム負荷Psysが下限値lim1未満であるため(図19のS51:NO)、本実施形態では、第2モードにおいて相対的に高効率の発電が行われる一方(S53〜S56)、比較例では、相対的に低効率の発電が行われる(S52、S56)。
【0151】
時点t6から時点t7まで及び時点t8から時点t10までは、システム負荷Psysが下限値lim1以上且つ上限値lim2以下であるため(図19のS51:YES)、本実施形態及び比較例のいずれにおいても、システム負荷Psysがそのまま目標FC出力Pfctgtとされ(S52)、この目標FC出力Pfctgtに応じた目標FC電流Ifctgtが設定される(S56)。
【0152】
時点t7から時点t8までは、システム負荷Psysが上限値lim2を上回るため(図19のS51:NO)、本実施形態では、第2モードにおいて相対的に高効率の発電が行われる一方(S53〜S56)、比較例では、相対的に低効率の発電が行われる(S52、S56)。
【0153】
なお、時点t1から時点t9まではバッテリSOCが不感帯にあるため、回生平均補正係数αは1とされる。時点t9から時点t11まではバッテリSOCが不感帯から出るため、係数αは、回生平均電力Pregaveに応じて1とは異なる値とされる。
【0154】
4.本実施形態の効果
以上説明したように、本実施形態によれば、電圧固定・電流可変制御(第2モード)によりFC40の劣化を抑制しつつ、電圧固定・電流可変制御中におけるFCシステム12(FCユニット18)全体の出力効率を向上することが可能となる。
【0155】
すなわち、電圧固定・電流可変制御(第2モード)では、FC電圧Vfcを酸化還元領域R3外の特定電圧値(0.8V×セル数)に固定させるため、FC電圧Vfcが領域R3内に入ることによるFC40の劣化を避けることができる。
【0156】
また、本実施形態によれば、システム負荷Psysが下限値lim1以上且つ上限値lim2以下の場合、特定電圧値への固定及びシステム負荷Psysへの追従を続けて実行し、システム負荷Psysが下限値lim1を下回る又は上限値lim2を上回る場合、特定電圧値への固定を続けて実行しつつ、FC出力Pfcが効率最高領域Rhieff内の値(最高効率実現出力Phieff)になるようにエアポンプ60を制御する。このため、FCユニット18の出力効率E2が過度に悪化する出力領域を下限値lim1及び上限値lim2により設定しておけば、出力効率E2が過度に悪化する領域に対応するシステム負荷Psysがあった場合には、むしろ高い出力効率でFC40を発電させ、その余剰分をバッテリ20に充電することが可能となる。その結果、FCシステム12全体としての発電効率を高めることが可能となる。
【0157】
本実施形態において、システム負荷Psysが下限値をlim1を下回る又は上限値lim2を上回る場合、回生平均補正係数αにより補正した目標FC出力Pfctgtを用いて、バッテリSOCが基準値Srefに近づくように、FC出力Pfcをエアポンプ60により調整する。これにより、バッテリSOCを良好に制御することが可能となる。
【0158】
本実施形態において、FCシステム12は、車両10に搭載されるシステムであり、システム負荷Psysが下限値lim1を下回り又は上限値lim2を上回る場合、回生履歴としての平均回生電力Pregaveに基づいてFC出力Pfcをエアポンプ60により調整する。これにより、バッテリSOCを良好に制御することが可能となる。
【0159】
5.変形例
なお、この発明は、上記実施形態に限らず、この明細書の記載内容に基づき、種々の構成を採り得ることはもちろんである。例えば、以下の構成を採用することができる。
【0160】
[5−1.搭載対象]
上記実施形態では、FCシステム12をFC車両10に搭載したが、これに限らず、電圧固定・電流可変制御(電圧固定・出力可変制御)を適用可能な別の対象に搭載してもよい。例えば、FCシステム12を船舶や航空機等の移動体に用いることもできる。或いは、ロボットアーム、クレーン又はバランサ等の可動機構に適用することもできる。或いは、FCシステム12を家庭用電力システムに適用してもよい。
【0161】
[5−2.FCシステム12の構成]
上記実施形態では、FC40と高電圧バッテリ20を並列に配置し、バッテリ20の手前にDC/DCコンバータ22を配置する構成としたが、これに限らない。例えば、図26に示すように、FC40とバッテリ20を並列に配置し、昇圧式、降圧式又は昇降圧式のDC/DCコンバータ22をFC40の手前に配置する構成であってもよい。或いは、図27に示すように、FC40とバッテリ20を並列に配置し、FC40の手前に昇圧式、降圧式又は昇降圧式のDC/DCコンバータ22aを、バッテリ20の手前にDC/DCコンバータ22を配置する構成であってもよい。或いは、図28に示すように、FC40とバッテリ20を直列に配置し、バッテリ20とモータ14の間にDC/DCコンバータ22を配置する構成であってもよい。
【0162】
[5−3.ストイキ比]
上記実施形態では、ストイキ比を調整する手段又は方法として、目標酸素濃度Cotgtを調整するものを用いたが、これに限らず、目標水素濃度を調整することも可能である。また、目標濃度の代わりに、目標流量又は目標濃度と目標流量の両方を用いることもできる。
【0163】
上記実施形態では、酸素を含む空気を供給するエアポンプ60を備える構成を例示したが、これに代えて又は加えて、水素を供給する水素ポンプを備える構成としてもよい。
【0164】
[5−4.電力供給モード]
上記実施形態では、電力供給モードとして、第1〜第3モードを用いたが、少なくとも第2モードさえ用いれば、本発明を適用可能である。
【0165】
上記実施形態では、第2モードにおける目標FC電圧Vfctgtを電位v2(=0.8V)×セル数に設定したが、これに限らない。第2モードにおける目標FC電圧Vfctgtを、例えば、還元領域R2内又は酸化領域R4内のその他の電位に設定してもよい。
【0166】
上記実施形態では、第2モードにおいて酸素濃度Coを制御するために、循環弁開度θc、エアポンプ回転数Nap及び背圧弁開度θbpを可変としたが、酸素濃度Coを制御できるものであれば、これに限らない。例えば、エアポンプ回転数Napは一定とし、循環弁開度θcを可変とすることもできる。これにより、エアポンプ60の出力音が一定となるため、当該出力音が可変となることにより乗員に与える違和感を防止することが可能となる。
【0167】
上記実施形態では、下限値lim1と上限値lim2の両方を用いたが、いずれか一方のみを用いることもできる。
【0168】
上記実施形態では、システム負荷Psysが下限値lim1を下回り又は上限値lim2を上回る場合、最高効率実現出力Phieffを仮目標FC出力Pfctgt_tとしたが、最高効率実現領域RHieff内の値であれば別の値であってもよい。或いは、少なくとも下限値lim1と上限値lim2の間を仮目標FC出力Pfctgt_tとして設定することも可能である。例えば、システム負荷Psysが下限値lim1を下回る場合、下限値lim1を仮目標FC出力Pfctgt_tとすることも可能である。同様に、システム負荷Psysが上限値lim2を下回る場合、上限値lim2を仮目標FC出力Pfctgt_tとすることも可能である。
【0169】
上記実施形態では、回生平均補正係数αを用いたが、係数αを用いない構成も可能である。
【符号の説明】
【0170】
10…燃料電池車両 12…燃料電池システム
14…走行用のモータ(負荷) 16…インバータ(負荷)
20…高電圧バッテリ(蓄電装置)
22…DC/DCコンバータ(電圧調整手段)
24…ECU(制御手段) 40…燃料電池スタック
60…エアポンプ(ガス供給手段、負荷) 66…循環弁(ガス供給手段)
80…ウォータポンプ(負荷) 90…エアコンディショナ(負荷)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
触媒を有し、前記触媒で酸素又は水素を反応させることで発電する燃料電池と、
前記酸素及び前記水素の少なくとも一方を、前記燃料電池に供給するガス供給手段と、
前記燃料電池の出力電圧を調整する電圧調整手段と、
前記燃料電池の出力電力により駆動される負荷と、
前記燃料電池から前記負荷へ供給される前記出力電力の余剰分を蓄電し、不足分を前記負荷へ供給する蓄電装置と
を備える燃料電池システムであって、更に、
前記負荷の要求出力を検出すると共に、前記燃料電池、前記ガス供給手段及び前記電圧調整手段を制御する制御手段を有し、
前記制御手段は、前記電圧調整手段を制御して前記燃料電池の出力電圧を酸化還元進行電圧範囲外の特定電圧値に固定させた状態で、前記ガス供給手段を制御して前記燃料電池に供給する前記酸素又は前記水素の濃度を前記負荷の要求出力に追従させるように変動させる電圧固定・出力可変制御を実行するものであり、
前記燃料電池の通常発電状態において前記酸化還元進行電圧範囲に対応する前記燃料電池の出力範囲を酸化還元進行出力範囲と定義するとき、前記電圧固定・出力可変制御は、前記負荷の要求出力が前記酸化還元進行出力範囲内である場合に実行され、
さらに、前記電圧固定・出力可変制御では、
前記燃料電池の出力電圧を前記特定電圧値に固定しつつ前記酸素又は前記水素の濃度を変動させた場合に前記燃料電池システムの出力効率が最高となる前記燃料電池の出力領域である効率最高領域を挟んで定められる前記燃料電池の上限出力値と下限出力値とが設定され、
前記負荷の要求出力が前記下限出力値を上回り且つ前記上限出力値を下回る場合、前記特定電圧値への固定及び前記負荷の要求出力への追従を続けて実行し、
前記負荷の要求出力が前記下限出力値を下回る又は前記上限出力値を上回る場合、前記特定電圧値への固定を続けて実行しつつ、前記燃料電池の出力が前記効率最高領域内の値になるように前記ガス供給手段を制御する
ことを特徴とする燃料電池システム。
【請求項2】
請求項1記載の燃料電池システムにおいて、
前記負荷の要求出力が前記下限出力値を下回る又は前記上限出力値を上回る場合、前記蓄電装置の残容量が目標値に近づくように、前記燃料電池の出力を前記ガス供給手段により調整する
ことを特徴とする燃料電池システム。
【請求項3】
請求項1又は2記載の燃料電池システムにおいて、
前記燃料電池システムは、車両に搭載されるシステムであり、
前記負荷の要求出力が前記下限出力値を下回り又は前記上限出力値を上回る場合、回生履歴に基づいて前記燃料電池の出力を前記ガス供給手段により調整する
ことを特徴とする燃料電池システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【公開番号】特開2013−62085(P2013−62085A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−198647(P2011−198647)
【出願日】平成23年9月12日(2011.9.12)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】