説明

燃料電池用過給機

【課題】 高速回転での使用に有利でしかも耐久性に優れている燃料電池用過給機を提供する。
【解決手段】 燃料電池用過給機6は、ケーシング11内に設けられた遠心圧縮機12と、圧縮機12の回転軸13を支持する軸受装置14とを備えている。軸受装置14は、回転軸13に同心状に設けられて回転軸13を径方向から支持する1対のラジアルフォイル軸受21,22と、回転軸13に軸方向から対向させられて回転軸13を軸方向から支持するアキシアル磁気軸受23とを備えている。アキシアル磁気軸受23は、回転軸13に設けられたフランジ部32を介して対向するアキシアル電磁石24および永久磁石25を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、水素および酸素からエネルギーを生成する燃料電池装置の酸素供給側に設置されて圧縮空気を燃料電池に供給する燃料電池用過給機に関し、特に、燃料電池車への搭載に適した燃料電池用過給機に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池を搭載して走行する燃料電池車は、そのプロトタイプが既に製造されており、特許文献1には、燃料電池車の燃料電池に圧縮空気を供給するための過給機に適するものとして、スクロール型圧縮機を備えたものが提案されている。
【特許文献1】特開2002−70762号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
燃料電池車で使用される燃料電池装置においては、その小型化、コスト低減および軽量化などが重要な課題となっており、過給機に対しても、より一層の小型化が求められている。
【0004】
そこで、容積形圧縮機の1種である上記特許文献1のスクロール型圧縮機に代えて、圧縮変動がなくかつ小型化が可能な非容積形の遠心圧縮機を使用することが考えられるが、遠心圧縮機では、インペラに作用する軸方向力の変動が大きいため、その軸受装置の耐久性の確保が課題となる。また、燃料電池車では、アイドリング時の低速回転と通常走行時の高速回転とが連続で繰り返されることから、過給機に対し、さらに、高速回転での使用に有利なことおよび耐久性に優れていることが要求されている。
【0005】
この発明の目的は、上記実情に鑑み、遠心圧縮機を使用することで小型化を図るとともに、その際に課題となるインペラの回転に伴う軸方向力の変動を吸収することにより、高速回転での使用に有利でしかも耐久性に優れている燃料電池用過給機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明による燃料電池用過給機は、燃料電池に空気を圧縮して供給する燃料電池用過給機であって、ケーシング内に設けられた遠心圧縮機と、圧縮機の回転軸を支持する軸受装置とを備えており、軸受装置は、回転軸に同心状に設けられて回転軸を径方向から支持する1対のラジアルフォイル軸受と、回転軸に軸方向から対向させられて回転軸を軸方向から支持する制御型アキシアル磁気軸受とを備えていることを特徴とするものである。
【0007】
ラジアルフォイル軸受は、例えば、回転軸に径方向から対向する軸受面を持つ可撓性の軸受フォイルと、軸受フォイルを支持する弾性体と、軸受フォイルおよび弾性体を回転軸との間に保持する外輪とを備えているものとされる。
【0008】
制御型アキシアル磁気軸受は、1対のアキシアル電磁石間に作用する力を制御するものとされることがあり、一方が永久磁石とされて、アキシアル電磁石および永久磁石間に作用する力を制御するものとされることがある。
【0009】
上記軸受装置によると、ラジアル方向の支持はラジアルフォイル軸受が受け持ち、回転軸の回転時に周囲の空気が軸受フォイルと回転軸との間に引き込まれて圧力(動圧)を発生することにより、非接触で回転軸が保持される。また、アキシアル方向の支持はアキシアル磁気軸受が受け持ち、アキシアル電磁石の電磁石コイルに流される電流が制御されることにより、非接触で回転軸が保持される。
【0010】
遠心圧縮機は、回転軸をモータで高速回転させることにより、回転軸の一端に設けられたインペラに軸方向から空気を流入させ、圧縮空気を径方向に流出させるものであることから、回転軸には、アキシアル方向の大きな力が作用する。したがって、アキシアル方向の支持をアキシアルフォイル軸受で行った場合には、軸受の剛性が不足する可能性がある。これに対し、アキシアル方向の支持をアキシアル磁気軸受で行うことにより、負荷容量が増大するとともに、アキシアル方向の力の変動に応じて制御電流を変化させることにより、回転負荷変動に対してもアキシアル方向の非接触支持が確保される。
【0011】
アキシアル磁気軸受は、回転軸に設けられたフランジ部を介して対向するアキシアル電磁石および永久磁石を有していることが好ましい。この場合、アキシアル電磁石は、その吸引力が回転によって生じるアキシアル方向の力の向きと逆になるように配置される。このようにすると、通常1対のアキシアル電磁石を有しているアキシアル磁気軸受に比べて、軸方向の長さを短くすることができ、これにより、回転軸の固有振動数が増大して高速回転が可能となるとともに、より小型化および軽量化することができる。
【0012】
永久磁石と対をなすアキシアル電磁石は、いずれか一方のラジアルフォイル軸受に一体化されていることが好ましい。このようにすると、軸方向の長さをさらに短くすることができ、より一層小型化することができる。アキシアル電磁石がラジアルフォイル軸受に一体化された軸受は、回転軸に径方向から対向する軸受面を持つ可撓性の軸受フォイルと、軸受フォイルを回転軸との間に保持しかつ一端面に環状の凹所が形成された外輪と、外輪の凹所に嵌め入れられかつケーシングに設けられた永久磁石にフランジ部を介して対向する電磁石コイルとを備えているものとされる。
【0013】
この場合、電磁石ヨークは、ラジアルフォイル軸受の外輪とは別の部材であってもよいが、ラジアルフォイル軸受の外輪が磁性体製とされて、アキシアル電磁石の電磁石ヨークを兼ねるものとされることが好ましい。
【0014】
また、アキシアル磁気軸受は、回転軸に設けられたフランジ部を介して対向する1対のアキシアル電磁石を有しており、ケーシングのフランジ部のアキシアル電磁石対向面に、アキシアル電磁石からフランジ部に作用する吸引力がラジアル方向吸引力を有しているようにするラジアル方向吸引力発生部が形成されていることがある。このようにするには、例えば、フランジ部の前後両面に、小径の環状溝と大径の環状溝とが設けられることにより、大径の環状溝の径方向内方に、電磁石から吸引力を受ける内側吸引部が形成され、大径の環状溝の径方向外方に、電磁石から吸引力を受ける外側吸引部が形成されているようにすればよい。これらの内側吸引部および外側吸引部には、回転軸が偏心した場合、偏心状態となった回転軸を同心状態へ戻すラジアル方向の吸引力が作用し、これにより、ラジアルフォイル軸受の浮上回転数を低下させて耐久性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0015】
この発明の燃料電池用過給機によると、回転軸が径方向からラジアルフォイル軸受(動圧ガス軸受)に支持されているとともに、軸方向から制御型アキシアル磁気軸受に支持されているので、高速回転による軸受の疲労寿命の低下が抑えられ、また、潤滑のためのオイルを循環させるための機能が不要となるので、過給機の小型化が図られる。さらに、遠心圧縮機のインペラの回転によって発生するアキシアル方向の荷重が制御型アキシアル磁気軸受で受けられることによって、負荷容量(アキシアル剛性)が上がり、回転の安定性が向上し、ラジアルフォイル軸受の耐久性にも有利なものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
この発明の実施の形態を、以下図面を参照して説明する。以下の説明において、図2の右を前、左を後というものとする。
【0017】
図1は、この発明による燃料電池用過給機が使用される車載用の燃料電池装置を示すもので、燃料電池装置(1)は、燃料電池スタック(2)と、燃料電池スタック(2)から供給される電力を制御する電力制御装置(3)と、燃料電池スタック(2)に水素を供給する高圧水素タンク(4)および水素ポンプ(5)と、燃料電池スタック(2)に圧縮空気を供給する過給機(6)と、過給機(6)で得られた圧縮空気を加湿する加湿器(7)と、燃料電池スタック(2)および電力制御装置(3)を冷却する冷却装置(8)とを備えており、燃料電池スタック(2)で得られた電気エネルギーによって自動車を走行させるための電動機(9)が駆動されている。
【0018】
図2は、この発明による燃料電池用過給機の第1実施形態の概略構成を示すもので、燃料電池用過給機(6)は、ケーシング(11)内に設けられた遠心圧縮機(12)と、圧縮機(12)の回転軸(13)を支持する軸受装置(14)とを備えている。
【0019】
遠心圧縮機(12)は、非容積形の圧縮機で、前後方向の水平軸上に配置された略円筒状の密閉ケーシング(11)の内側で水平軸状の回転軸(13)が回転する。
【0020】
ケーシング(11)は、前側の回転軸支持部(11a)と、後側の気体流通部(11b)とから構成されている。
【0021】
回転軸(13)は、段付軸状をなし、回転軸支持部(11a)内の空間内に配置されている。回転軸(13)の後端には、気体流通部内(11b)の空間内に位置するインペラ(13a)が固定されている。
【0022】
回転軸支持部(11a)の内周に、回転軸(13)を高速回転させるビルトイン型電動機(20)、回転軸(13)を径方向から支持する前後1対のラジアルフォイル軸受(21)(22)、および回転軸(13)をアキシアル方向(前後方向)から支持する1組の制御型アキシアル磁気軸受(23)が設けられている。
【0023】
電動機(20)は、回転軸支持部(11a)側に設けられたステータ(20a)および回転軸(13)側に設けられたロータ(20b)から構成されている。
【0024】
軸受装置(14)は、前後ラジアルフォイル軸受(21)(22)およびアキシアル磁気軸受(23)によって構成されている。
【0025】
気体流通部(11b)内の空間の後端に気体流入路(11c)が設けられている。回転軸(13)が回転することにより、インペラ(13a)が回転し、インペラ(13a)の回転により、空気が、気体流入路(11c)から気体流通部(11b)内の空間(11d)に流入し、同空間(11d)内で圧縮され、同空間(11d)に通じる気体流出路(図示略)を通って排出される。
【0026】
段付き状の回転軸(13)は、電動機(20)のロータ(20b)が軸方向中間部分に設けられている大径部(31)と、大径部(31)の前後方向外側に連なる前側および後側の小径部(32)(33)と、前側小径部(32)の軸方向中間部分に設けられたフランジ部(34)とからなる。インペラ(13a)は、後側小径部(33)の後端部に取り付けられており、各ラジアルフォイル軸受(21)(22)は、大径部(31)の両端部分に設けられている。
【0027】
図3に示すように、各ラジアルフォイル軸受(21)(22)は、回転軸大径部(31)の径方向外側に軸受隙間(44)を隔てて配置される可撓性を有するトップフォイル(軸受フォイル)(41)と、このトップフォイル(41)の径方向外側に配置されるバンプフォイル(弾性体)(42)と、このバンプフォイル(42)の径方向外側に配置される外輪(43)とからなる。
【0028】
トップフォイル(41)は、帯状ステンレス鋼板製で、帯状ステンレス鋼板をその長手方向の両端が隣接するようにロール加工で周方向の重なりがない円筒形に成形した後、この円筒形に成形された鋼板の一端部の軸方向の両端部を径方向に切り起こして先端を屈曲させて形成されている。切り起こされた部分以外の円筒部(41a)がトップフォイルの主部になっており、切り起こされた部分(41b)がトップフォイル(41)の係合部になっている。
【0029】
バンプフォイル(42)は、ステンレス鋼製の波形板材を円筒形に成形した円筒部(42a)と、円筒部(42a)の一端に連なり円筒部(42a)の径方向外側に位置する係合部(42b)とからなる。
【0030】
外輪(43)の内周面には、略径方向に延びる係合溝(43a)が形成されている。そして、バンプフォイル(42)の円筒部(42a)が外輪(43)の内周面に沿うように配置されて、その係合部(42b)が外輪(43)の係合溝(43a)に係合させられることにより、バンプフォイル(42)が外輪(43)に取り付けられ、このバンプフォイル(42)と回転軸大径部(31)との間にトップフォイル(41)の円筒部(41a)が介在させられるとともに、その係合部(41b)が外輪(43)の係合溝(43a)に係合させられることにより、トップフォイル(41)が外輪(43)に取り付けられている。
【0031】
ラジアルフォイル軸受(21)(22)は、トップフォイル(41)が帯状ステンレス鋼板をその長手方向の両端が隣接するようにロール加工で周方向の重なりがない円筒形に成形されているので、曲率半径が一定で真円度が高いものとなっていることから、回転軸(13)の支持性能が高くかつ回転軸(13)の浮上特性も良好なものとなっている。
【0032】
アキシアル磁気軸受(23)は、回転軸(13)のフランジ部(34)を介して対向するようにケーシング(11)の回転軸支持部(11a)に設けられたアキシアル電磁石(24)および永久磁石(25)を有している。アキシアル電磁石(24)は、ヨーク(24a)およびコイル(24b)からなる。回転によりインペラ(13a)に作用する力の方向は、後向き(図2の左向き)であり、これに対応して、永久磁石(25)は、フランジ部(34)の後側に配置され、アキシアル電磁石(24)は、その吸引力が回転によって生じるアキシアル方向の力の向きと逆になるようにフランジ部(34)の前側に配置されている。
【0033】
ケーシング(11)の回転軸支持部(11a)の前壁後面には、回転軸(13)のアキシアル方向の位置を検出するアキシアル位置センサ(26)が設けられている。そして、この位置センサ(26)で検出された回転軸(13)の位置に基づいて、アキシアル磁気軸受(23)の電磁石コイル(24b)に流される電流が制御されている。コイル(24b)に流される電流は、回転によりインペラ(13a)に作用する力および永久磁石(25)の吸引力に釣り合う吸引力がアキシアル電磁石(24)に生成されるように制御され、これにより、回転軸(13)は、アキシアル方向の所定位置に非接触支持される。
【0034】
なお、図示省略するが、ラジアルフォイル軸受(21)(22)は、上記のものに限られるものではなく、ラジアルフォイル軸受は、回転軸に対向する軸受面を持つ複数の可撓性フォイル片からなる軸受フォイルと、軸受フォイルを回転軸との間に保持する外輪とを備えているものであってもよい。
【0035】
上記第1実施形態の燃料電池用過給機(6)によると、回転軸(13)のラジアル方向の支持は、ラジアルフォイル軸受(21)(22)が受け持っており、回転軸(13)は、回転時には、各フォイル軸受(21)(22)で発生する動圧によって非接触でラジアル方向に支持される。また、回転軸(13)のアキシアル方向の支持は、アキシアル磁気軸受(23)が受け持っており、インペラ(13a)に作用するアキシアル方向の力が変動した場合には、これに見合った吸引力がアキシアル電磁石(24)に生成される。これにより、回転軸(13)は、回転負荷変動の影響を受けずに、安定的に非接触支持され、そのスムーズな回転が保証されるとともに、耐久性(寿命)も優れたものとなる。
【0036】
図4は、この発明による燃料電池用過給機の第2実施形態の概略構成を示している。この燃料電池用過給機(6)は、アキシアル磁気軸受(55)のアキシアル電磁石(56)が一方のラジアルフォイル軸受(51)に一体化されている点において、アキシアル電磁石(24)がラジアルフィル軸受(21)(22)と別体で設けられている第1実施形態と相違している。以下の説明において、第1実施形態と同じ構成には同じ符号を付しその説明を省略する。
【0037】
図4において、後側のラジアルフォイル軸受(51)がアキシアル電磁石一体化軸受とされている。回転軸(13)のフランジ部(52)は、回転軸(13)の大径部(31)後端部に設けられている。アキシアル電磁石(56)が一体化されたラジアルフォイル軸受(51)は、回転軸(13)に径方向から対向する軸受面を持つ可撓性のトップフォイル(41)と、トップフォイル(41)を支持するバンプフォイル(42)と、トップフォイル(41)およびバンプフォイル(42)を回転軸(13)との間に保持する外輪(53)と、外輪(53)の後端面に形成された環状凹所(54)に嵌め入れられた電磁石コイル(56a)とを備えている。外輪(53)の環状凹所(54)は、回転軸(13)のフランジ部(52)に臨まされるように設けられている。外輪(53)は、磁性体製であり、アキシアル電磁石(56)の電磁石ヨークを兼ねている。外輪(53)にフランジ部(52)を介して対向するように、ケーシング(11)の回転軸支持部(11a)の後壁に永久磁石(57)が設けられている。こうして、後側のラジアルフォイル軸受(51)の外輪(53)とその環状凹所(54)に嵌め入れられた電磁石コイル(56a)とによってアキシアル電磁石(56)が形成され、このアキシアル電磁石(56)とこれに対向する永久磁石(57)とによってアキシアル磁気軸受(55)が形成されている。
【0038】
この第2実施形態の燃料電池用過給機(6)によると、回転軸(13)のラジアル方向の支持は、ラジアルフォイル軸受(21)(51)が受け持っており、回転軸(13)は、回転時には、各フォイル軸受(21)(51)で発生する動圧によって非接触でラジアル方向に支持される。また、回転軸(13)のアキシアル方向の支持は、アキシアル磁気軸受(55)が受け持っており、インペラ(13a)に作用するアキシアル方向の力が変動した場合には、これに見合った吸引力がアキシアル電磁石(56)に生成される。これにより、回転軸(13)は、回転負荷変動の影響を受けずに、安定的に非接触支持され、そのスムーズな回転が保証されるとともに、耐久性(寿命)も優れたものとなる。そして、この第2実施形態のものでは、アキシアル磁気軸受(55)のアキシアル電磁石(56)が後側のラジアルフォイル軸受(51)に一体化されていることにより、第1実施形態のものに比べて、アキシアル電磁石の軸方向長さ分だけ軸方向の長さが短くなっており、固有振動数が増大して高速回転が可能となるとともに、より小型化された燃料電池用過給機(6)が得られている。
【0039】
なお、後側のラジアルフォイル軸受(51)に代えて、前側のラジアルフォイル軸受(21)をアキシアル磁気軸受一体化軸受とすることも可能であり、この場合には、回転軸(13)のフランジ部(52)は、回転軸(13)前部のロータ(20b)近傍に配置され、図4に示したのと同様に、このフランジ部の後側に永久磁石(57)が、前側にアキシアル電磁石(56)が配置される。
【0040】
上記実施形態において、1組の制御型アキシアル磁気軸受(23)(55)を構成する磁石(24)(25)(56)(57)については、一方が電磁石(24)(56)で他方が永久磁石(25)(57)とされているが、両方を電磁石とすることもできる。
【0041】
図5は、この発明による燃料電池用過給機の第3実施形態の概略構成を示している。この燃料電池用過給機(6)は、1組の制御型アキシアル磁気軸受(61)を構成する磁石の両方ともが電磁石(63)(64)とされるとともに、フランジ部(62)の形状が変更されてラジアル方向吸引力発生部(65)が形成されている点において、第1実施形態と相違している。以下の説明において、第1実施形態と同じ構成には同じ符号を付しその説明を省略する。
【0042】
図5において、1対のアキシアル電磁石(63)(64)が回転軸(13)のフランジ部(62)を介して対向するようにケーシング(11)の回転軸支持部(11a)に設けられている。フランジ部(62)の前後両面には、小径の環状溝(66)と大径の環状溝(67)とが設けられており、これにより、大径の環状溝(67)の径方向内方に、対応するアキシアル電磁石(63)(64)から吸引力を受ける内側吸引部(68)が形成され、大径の環状溝(67)の径方向外方に、対応するアキシアル電磁石(63)(64)から吸引力を受ける外側吸引部(69)が形成されている。大径の環状溝(67)は、アキシアル電磁石(63)(64)の電磁石コイル(63b)(64b)に軸方向からちょうど対向するように設けられており、内側吸引部(68)および外側吸引部(69)は、回転軸(13)の同心状態が確保された状態では、電磁石ヨーク(63a)(64a)に対向して、それぞれアキシアル方向だけの力を受けている。回転軸(13)が偏心すると、アキシアル電磁石(63)(64)と各吸引部(68)(69)との間には、ラジアル方向の力が発生し、このラジアル方向の力は、偏心状態となった回転軸(13)を同心状態へ戻す方向に作用する。こうして、内側吸引部(68)と外側吸引部(69)とは、アキシアル電磁石(63)(64)からフランジ部(62)に作用する吸引力がラジアル方向吸引力を有しているようにするラジアル方向吸引力発生部(65)を構成している。
【0043】
なお、図示省略するが、アキシアル電磁石(63)(64)と各吸引部(68)(69)とは、相対的に径方向外方または径方向内方にずらすように設けられてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】図1は、この発明による燃料電池用過給機が使用される燃料電池装置を示すブロック図である。
【図2】図2は、この発明による燃料電池用過給機の第1実施形態を模式的に示す縦断面図である。
【図3】図3は、この発明による燃料電池用過給機で使用されているラジアルフォイル軸受を示す横断面図である。
【図4】図4は、この発明による燃料電池用過給機の第2実施形態を模式的に示す縦断面図である。
【図5】図5は、この発明による燃料電池用過給機の第3実施形態を模式的に示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0045】
(2) 燃料電池
(6) 燃料電池用過給機
(11) ケーシング
(12) 圧縮機
(13) 回転軸
(14) 軸受装置
(21)(22) ラジアルフォイル軸受
(23) 制御型アキシアル磁気軸受
(24) アキシアル電磁石
(25) 永久磁石
(34) フランジ部
(51) ラジアルフォイル軸受
(52) フランジ部
(55) アキシアル磁気軸受
(56) アキシアル電磁石
(57) 永久磁石
(61) アキシアル磁気軸受
(62) フランジ部
(63)(64) アキシアル電磁石
(65) ラジアル方向吸引力発生部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池に空気を圧縮して供給する燃料電池用過給機であって、ケーシング内に設けられた遠心圧縮機と、圧縮機の回転軸を支持する軸受装置とを備えており、軸受装置は、回転軸に同心状に設けられて回転軸を径方向から支持する1対のラジアルフォイル軸受と、回転軸に軸方向から対向させられて回転軸を軸方向から支持する制御型アキシアル磁気軸受とを備えていることを特徴とする燃料電池用過給機。
【請求項2】
アキシアル磁気軸受は、回転軸に設けられたフランジ部を介して対向するアキシアル電磁石および永久磁石を有している請求項1の燃料電池用過給機。
【請求項3】
アキシアル電磁石は、いずれか一方のラジアルフォイル軸受に一体化されており、一体化された軸受は、回転軸に径方向から対向する軸受面を持つ可撓性の軸受フォイルと、軸受フォイルを回転軸との間に保持しかつ一端面に環状の凹所が形成された外輪と、外輪の凹所に嵌め入れられかつケーシングに設けられた永久磁石にフランジ部を介して対向する電磁石コイルとを備えている請求項2の燃料電池用過給機。
【請求項4】
アキシアル磁気軸受は、回転軸に設けられたフランジ部を介して対向する1対のアキシアル電磁石を有しており、ケーシングのフランジ部のアキシアル電磁石対向面に、アキシアル電磁石からフランジ部に作用する吸引力がラジアル方向吸引力を有しているようにするラジアル方向吸引力発生部が形成されている請求項1の燃料電池用過給機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−192116(P2007−192116A)
【公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−11066(P2006−11066)
【出願日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【出願人】(000001247)株式会社ジェイテクト (7,053)
【Fターム(参考)】