説明

燃料電池発電システム

【課題】定格を超えた負荷変動に追従可能で、かつ寿命短縮を抑制した燃料電池発電システムを提供する。
【解決手段】制御部5には燃料電池3の発電上限電力として、定格上限電力である第1上限電力と、第1上限電力を上回る第2上限電力とが設定されている。制御部5は、燃料電池3へ要求される発電電力が、第1上限電力を上回る場合、発電上限電力を第2上限電力に変更するとともに、燃料電池3の耐一酸化炭素性を向上させる運転モードと、燃料処理機1が燃料電池3に供給する水素ガス中の一酸化炭素を低減させる運転モードとの少なくともいずれかを実施させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池発電システムに関し、特にその利便性を向上させる制御に関する。
【背景技術】
【0002】
固体高分子型燃料電池は、水素ガスを燃料とし、酸素を含む空気を酸化剤として利用する。固体高分子型燃料電池には、設計により定まる発電能力の限界があり、発電電力を無限に増やすことができない。そこで、発電能力を考慮して、発電電力の定格上限値を定め、それ以下の範囲でのみ燃料電池を運転するのが一般的である。
【0003】
また、燃料電池を発電システムとして家庭に設置する場合、メタン等の炭化水素を主体とする都市ガスといった燃料ガスを水蒸気と改質反応させ水素ガスを発生させる燃料処理機が用いられる。改質反応では、燃料ガス由来の二酸化炭素、一酸化炭素が発生する。一酸化炭素は燃料電池の燃料極の触媒を被毒し、発電効率を低下させるとともに燃料電池の寿命を低下させる。そのため燃料処理機は、一酸化炭素を低減する一酸化炭素除去部を有する。燃料ガスは一酸化炭素除去部によってさらに処理され、例えば、一酸化炭素濃度を10ppm程度まで低減してから用いられる。
【0004】
このような処理をしても燃料ガスの一酸化炭素による被毒の影響を生じる場合がある。例えば、燃料電池の発電量を定格上限値内で増大させると発電に必要な燃料ガスの絶対量が増えるため、一酸化炭素の絶対量が大きくなり、一酸化炭素による被毒の影響が大きくなる。したがって、従来は、燃料電池の発電量に応じて燃料ガスに酸素(空気)を添加して一酸化炭素の影響を低減している(例えば、特許文献1、2)。
【0005】
また燃料電池の発電量を急激に増加させると、やはり一酸化炭素による被毒の影響が大きくなる。発電量を急激に増加させるには、燃料処理機に送る燃料ガスの量を急速に増加させる必要があり、その結果、一酸化炭素除去部での一酸化炭素除去性が低下する。そこで、燃料電池で発電する電力の増加率にも一般的に定格増加率上限値が定められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−209547号公報
【特許文献2】特開2007−250294号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のように発電量の定格上限値を定めると、電力使用量がこの定格上限値を超えた場合、燃料電池は追従できない。そのため、燃料電池の電力で駆動される機器の使用が制限されたり、商用電力で補う必要を生じたりする。
【0008】
また燃料電池で発電する電力の増加率に上限値が定められていると、比較的消費電力の大きい機器を起動させた場合やいくつかの機器を一度に起動させた場合に、燃料電池は追従できない。このように電力使用量の上昇(負荷増加率)が早く、燃料電池で電力の定格増加率上限値を上回ると、発電電力が追いつかない場合がある。
【0009】
本発明は、上記従来の課題を解決するもので、一酸化炭素被毒による影響を抑制しつつ、燃料電池の電力供給不足の状態を改善する燃料電池発電システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
従来の課題を解決するために、本発明の燃料電池発電システムは、原料を改質して水素ガスを発生させる燃料処理機と、水素ガスを燃料として発電する燃料電池と、制御部とを有する。制御部には、燃料電池の発電上限電力として、定格上限電力である第1上限電力と、第1上限電力を上回る第2上限電力とが設定されている。制御部は、燃料電池へ要求される発電電力が、第1上限電力を上回る場合、発電上限電力を第2上限電力に変更する。この変更とともに制御部は、燃料電池の耐一酸化炭素性を向上させる運転モードと、燃料処理機が燃料電池に供給する水素ガス中の一酸化炭素を低減させる運転モードとの少なくともいずれかを実施させる。また本発明の燃料電池発電システムでは、制御部に燃料電池で発電する電力の増加率として、定格増加率上限値である第1増加率上限値と、第1増加率上限値を上回る第2増加率上限値とが設定されている。制御部は、燃料電池へ要求される発電電力の増加率が、第1増加率上限値を上回る場合、発電する電力の増加率上限値を第2増加率上限値に変更する。この変更とともに燃料電池の耐一酸化炭素性を向上させる運転モードと、燃料処理機から供給される水素ガス中の一酸化炭素を低減させる運転モードとの少なくともいずれかを実施させる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の燃料電池発電システムによれば、一時的に燃料電池の発電電力の定格上限値を上回るように発電できるので、電力使用量の一時的な増大に対応できる。また、一時的に燃料電池の電力増加率上限値を大きくできるので急速な負荷増加にも追従できる。その際、一酸化炭素による燃料極の被毒を最小限に抑えることができる。これらの構成によって、燃料電池発電システムの利便性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施の形態1による燃料電池発電システムのブロック図
【図2】本発明の実施の形態1による燃料電池発電システムの燃料処理機のブロック図
【図3】図2に示す燃料処理機の変成部から排出されるガス中の一酸化炭素濃度と反応温度との関係を示す模式図
【図4】本発明の実施の形態2による燃料電池発電システムのブロック図
【発明を実施するための形態】
【0013】
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1による燃料電池発電システムのブロック図、図2は同燃料電池発電システムの燃料処理機のブロック図である。図1に示すように、この燃料電池発電システムは、燃料処理機1と燃料電池3と制御部5と熱交換機7と貯湯槽9とを有する。燃料処理機1は水蒸気や空気を用いて都市ガス等の原料(原料ガス)を処理し、水素ガスを主体とする燃料ガスを発生する。すなわち燃料処理機1は原料を改質して水素ガスを発生させる。燃料電池3はこの水素ガスを燃料とし、空気を用いて発電する。本実施の形態において、燃料電池3は固体高分子の薄膜を電解質として用いた固体高分子型燃料電池である。
【0014】
水素ガスは燃料電池3の燃料極(図示せず)に供給され、燃料電池3内での発電に係る反応によって消費される。ただし燃料電池3は燃料ガス中の水素ガスを全て消費して発電に用いることはできないため、供給された水素ガスの内、約20%が二酸化炭素とともに排出ガスAとして排出される。この排ガスAは燃料処理機1で、図2に示す改質部25の加熱に利用される。
【0015】
一方、酸化剤である酸素を含む空気は燃料電池3の空気極(図示せず)に供給される。酸素は燃料電池3内での発電に係る反応によって燃料極に供給された水素ガスと反応して水になる。この水由来の水蒸気と、未反応の酸素や反応しない窒素等が排ガスBとして排出される。
【0016】
制御部5は燃料処理機1や燃料電池3等の動作を制御する。熱交換機7と燃料電池3との間では冷媒(例えば、水)が循環される。これにより燃料電池3の温度を適切に制御している。図示していないが、この冷媒の循環のためのポンプや流量弁が熱交換機7と燃料電池3との間に設けられている。制御部5はこのポンプや流量弁の動作も制御する。貯湯槽9は熱交換機7の熱によって加熱された水(湯)を貯める。この湯は暖房や給湯に利用される。燃料電池3で発電された電力はインバータ10を介して負荷11に供給される。
【0017】
次に、図2を参照しながら燃料処理機1の構成を説明する。燃料処理機1は脱硫部21と第1混合部23と改質部25と変成部27と選択酸化部29と第2混合部31とを有する。脱硫部21は原料ガスに含まれ、燃料電池3の触媒を被毒する硫黄化合物(例えば、硫黄系付臭成分)を除去する。第1混合部23は脱硫部21で脱硫した原料ガスと水蒸気とを所定の割合で混合する。混合後のガスは改質部25で650〜700℃を目安に加熱されて、(1)式の反応によってメタンが水素ガスと二酸化炭素になる。この反応は一般に改質反応と呼ばれる。しかしながらこの反応と並行して(2)式の反応が起き、同時に一酸化炭素が発生する。
【0018】
【化1】

【0019】
【化2】

【0020】
一酸化炭素は反応生成ガスの10〜15%含まれるのが一般的であり、燃料電池3の燃料極の触媒を被毒するため除去する必要がある。そのため、反応生成ガスは変成部27に送られ、水蒸気と一酸化炭素が160〜250℃で反応し、(3)式の反応によって水素ガスと二酸化炭素が生成する。この段階で一酸化炭素濃度は約0.5%まで低減される。(3)式は変成反応あるいはCOシフト反応と呼ばれる。
【0021】
【化3】

【0022】
この処理ガスはさらに選択酸化部29に送られ、空気中の酸素と150〜200℃で反応し、(4)式の反応によって二酸化炭素が生成する。このようにして一酸化炭素濃度は約10ppmまで低減される。(4)式は選択酸化反応と呼ばれる。なお、選択酸化部29には、一酸化炭素を酸化させる酸素量の当量を1としその2〜4倍となるように、改質部25に送られる原料ガスの量を基準にして予め設定された空気が送られる。
【0023】
【化4】

【0024】
さらに、一酸化炭素濃度が増加した場合に備えて、第2混合部31が設けられている。第2混合部31は選択酸化部29で処理されたガスに酸素を含む空気を混合する。これによって燃料ガス中の酸素濃度を増加させ、一酸化炭素による燃料電池3の燃料極触媒の被毒を抑制する。
【0025】
次に、制御部5による制御を説明する。制御部5には、燃料電池3の発電上限電力として、定格上限電力である第1上限電力と、第1上限電力を上回る第2上限電力とが設定されている。通常、制御部5は第1上限電力を用いて燃料電池3を運転している。すなわち、制御部5は燃料処理機1におけるガス処理量を制御して燃料電池3の発電電力が第1上限電力以下となるようにしている。
【0026】
この状態で燃料電池3へ要求される発電電力が、第1上限電力を上回る場合、制御部5は発電上限電力を第2上限電力に変更する。すなわち、第1上限電力を超えて燃料電池3を運転させるのが好ましい場合、制御部5は第2上限電力を上限として燃料電池3を運転させる。好ましい場合とは、例えば次のような場合が相当する。(A)供給する電力量を増加させることで、燃料電池発電システムから供給される電力を消費する機器を安定的に動作させることのできる場合、(B)供給する電力量を増加させないと電力会社から購入する電力量が契約電力量を超す場合、(C)電力会社から購入する電力量を制限するブレーカーが切れる場合。
【0027】
このように制御部5が第2上限電力を上限として燃料電池3を運転させ、実際に第1上限電力を超えると、燃料電池3の燃料極における一酸化炭素による触媒被毒が促進される。これは単純に燃料流量が増え、一酸化炭素の絶対量が増える以外に、(3)式に示す変成反応や(4)式に示す選択酸化反応が発熱反応であることによる。前述のように改質部25における反応温度は650〜700℃程度である。ガス処理量が多くなると変成部27や選択酸化部29に送られるガスが変成部27や選択酸化部29に運ぶ熱量が大きくなる。そのため、変成部27や選択酸化部29の温度が高くなる。その結果、平衡反応である変成反応((3)式)や選択酸化反応((4)式)において右側に進行しにくくなる。その結果、処理されたガスにおける一酸化炭素の濃度が高まる。
【0028】
そのため制御部5は、上記上限電力の切り替えとともに、燃料電池3の耐一酸化炭素性を向上させる運転モードと、燃料処理機1が燃料電池3に供給する水素ガス中の一酸化炭素を低減させる運転モードとの少なくともいずれかを実施させる。
【0029】
燃料電池3の耐一酸化炭素性を向上させる運転モードでは例えば、熱交換機7で放熱させる熱量を減少させて燃料電池3の温度を上げ、燃料電池3の耐一酸化炭素性を向上させる。例えば定格での運転温度を60℃程度とし、一時的に運転温度を80℃程度に上げる。そのために、流量弁を制御して熱交換機7との間で循環する冷媒の流量を減少させる。
【0030】
このように燃料電池3の温度を上げると、一酸化炭素が触媒に吸着しにくくなる。これにより燃料電池3の耐一酸化炭素性を向上させることができる。
【0031】
あるいは、第2混合部31での酸素の添加量を増加させ、燃料処理機1が燃料電池3に供給する水素ガス中の酸素濃度を増加させる。例えば、上限電力を第1上限電力で運転している状態で、第2混合部31は燃料ガスの0.6%程度の空気を添加している。そして上限電力を第2上限電力に切り替えると、第2混合部31は燃料ガスの3%程度の空気を添加する。この場合、触媒に吸着した一酸化炭素を混合した酸素で酸化させることができる。
【0032】
燃料処理機1が燃料電池3に供給する水素ガス中の一酸化炭素を低減させる運転モードでは、変成部27に供給する水蒸気流量や選択酸化部29に供給する空気の流量を増加させる。すなわち、燃料処理機1に供給する水蒸気流量と空気の流量の少なくとも一方を増加させる。このいずれかにより燃料処理機1から供給される水素ガス中の一酸化炭素を低減させる。この場合、変成部27、選択酸化部29における反応を促進させることができる。
【0033】
以上のように、燃料電池3の耐一酸化炭素性を向上させる運転モードや、燃料処理機1から供給される水素ガス中の一酸化炭素を低減させる運転モードは、第2上限電力を上限として燃料電池3を運転する間に制限する。
【0034】
なお、制御部5は、燃料電池3へ要求される発電電力を例えば以下のようにして検出する。制御部5はインバータ10の出力側の抵抗変化を検出し、抵抗が下がれば燃料電池3へ要求される発電電力が増加したと認識する。
【0035】
なお、前述のように、燃料電池3から排出される排ガスAは燃料処理機1の改質部25を加熱する燃料として燃料処理機1に供給される。発電量が増加し排ガスAに含まれる水素ガスの量が少なくなると、改質部25の温度が低下する。制御部5はこの温度低下を検知して燃料電池3での発電量が増加したことを検知することができる。そのため、図示しない温度検知部を改質部25に設け、その出力を制御部5に入力することが好ましい。
【0036】
なお図1では熱交換機7と貯湯槽9を設けているが、これらを設けず、単に燃料電池3を冷却水によって所定温度に冷却してもよい。この場合、冷却水の流量を少なくしたり、冷却水の温度を上げたりすることで燃料電池3の耐一酸化炭素性を向上させる運転モードを実現できる。
【0037】
次に、本実施の形態による燃料電池発電システムの他の制御について説明する。
【0038】
燃料電池3の発電量を急激に増加させた場合にも一酸化炭素による被毒の影響が大きくなるため、燃料電池で発電する電力の増加率にも一般的に定格増加率上限値が定められている。そのため、比較的消費電力の大きい機器を起動させた場合やいくつかの機器を一度に起動させた場合、燃料電池発電システムは追従できない。このように電力使用量の上昇(負荷増加率)が早く、燃料電池で電力の定格増加率上限値を上回り、発電電力が追いつかない場合がある。
【0039】
このように発電量を急激に増加させた場合に一酸化炭素による被毒の影響が大きくなる理由を、図3を参照しながら説明する。図3は、図2に示す燃料処理機の変成部27から排出されるガス中の一酸化炭素濃度と反応温度との関係を示す模式図である。
【0040】
例えば、750Wが定格発電電力である燃料電池3を想定する。各発電量に相当する量の燃料ガスを変成部27で処理する場合、変成部27から排出されるガス中の一酸化炭素濃度は、図3に示すように、ある反応温度で最低値となる。例えば250Wの場合、160℃、500Wの場合180℃、750Wの場合200℃でそれぞれ一酸化炭素濃度が最も小さくなる。これは、温度が低すぎると反応速度が追従せず、一方、温度が高すぎると平衡反応である(4)式の反応が右へ進まないためである。後者は、変成反応が発熱反応であることによる。
【0041】
燃料電池3の発電量をたとえば250Wから750Wへと急激に増加させると、160℃で運転されていた変成部27に、750Wに必要なガス量へ供給量を急激に増加させるよう要求される。しかしながらこの温度で750Wに相当するガスを変成部27で処理すると矢印で示すように、一酸化炭素濃度は大きくなる。変成反応後の一酸化炭素濃度が増加すると、選択酸化部29に送られる処理ガス中の一酸化炭素濃度が増加することになる。この一酸化炭素濃度の増加は、通常の250Wから750Wへの発電量増加時に想定している増加よりも大きくなり、選択酸化部29で一酸化炭素に対する酸素の割合が小さくなる。そのため、一酸化炭素の選択酸化性が低下し結果として、燃料電池3に送られる水素ガス中の一酸化炭素濃度が増加する。
【0042】
この課題に対し、以下のように制御することが好ましい。すなわち、制御部5に、燃料電池3で発電する電力の増加率上限値として、定格増加率上限値である第1増加率上限値と、第1増加率上限値を上回る第2増加率上限値とを予め設定する。そして制御部5は、燃料電池3へ要求される発電電力の増加率が、第1増加率上限値を上回る場合、発電する電力の増加率上限値を第2増加率上限値に変更する。この変更とともに制御部5は、燃料電池3の耐一酸化炭素性を向上させる運転モードと、燃料処理機1が燃料電池3に供給する水素ガス中の一酸化炭素を低減させる運転モードとの少なくともいずれかを実施させる。
【0043】
すなわち、電力の第1増加率上限値を超えて燃料電池3を運転させるのが好ましい場合、制御部5Aは第2増加率上限値を上限として燃料電池3を運転する。好ましい場合とは、燃料電池発電システムから供給される電力を消費する機器側での電力要求量が大きく増加側に変化し、第1増加率上限値ではその増加量に追従できない場合である。通常、第1増加率上限値は例えば1W/秒程度であるが、上記制御によって第2増加率上限値である2W/秒程度に増加率上限値を上げることができる。
【0044】
このように制御することで一時的に燃料電池の電力増加率上限値を大きくできるので急激な負荷増加率にも追従できる。その際、一酸化炭素による燃料極の被毒を最小限に抑えることができる。なおこの制御は電力上限値の切替制御と並存してもよく、また単独で実現してもよい。
【0045】
(実施の形態2)
図4は本発明の実施の形態2による燃料電池発電システムのブロック図である。なお実施の形態1と同様の構成をなすものには同じ符号を付しており、詳細な説明を省略する。また図2では図1における熱交換機7、貯湯槽9を図示していないが、図1と同様に設けてもよい。燃料処理機1の構成は図2を用いて説明した実施の形態1の構成と同様である。
【0046】
本実施の形態では制御部5に代わって制御部5Aが設けられるとともに、推定部41と記憶部42が設けられている。制御部5Aは実施の形態1で説明した制御部5と同様の機能を少なくとも有する。推定部41には燃料電池3で発電された電力の電流値と電圧値とが入力される。推定部41は、制御部5Aが発電上限電力を第1上限電力に設定した状態で、これらの値から求められる電流−電圧特性から燃料電池3の寿命を推定する。
【0047】
燃料電池3を同じ運転条件で動作させた場合、運転時間の経過に伴って燃料電池3の性能が低下し、電圧値が低下する。同じ運転条件とは、供給する水素ガス量、水素ガスの露点、動作温度、および燃料電池3から出力する電流値を同じにすることを意味する。寿命を予測する場合、電圧値の低下を予め測定/シミュレーションし、運転時間と電圧値低下をテーブル化する。そして寿命を予測したい時点での電圧値を測定する。電圧値と上述のテーブルから、測定した電圧値が、どの運転時間に相当するかを当てはめる。次に、寿命として設定している電圧値までの運転時間との差を計算する。このようにして燃料電池3の寿命を推定することができる。どの電圧値を燃料電池3の寿命と判断するかは個別機器で設定すればよい。例えば、電圧値の低下は発電効率の低下と同義なので、目標とする発電効率を下回る場合を燃料電池3の寿命としてもよい。あるいは、電圧が低下すると同じだけ発電させる場合、必要となる水素ガス量が多くなるので、燃料処理機1での水素ガス発生能力を考慮して、寿命を設定することもできる。
【0048】
また推定部41は制御部5Aによる燃料電池3の発電動作の変更に伴う燃料電池3の寿命の変化を推定する。すなわち、推定部41は発電上限電力を第2上限電力に変更したり、発電する電力の増加率を第2増加率上限値に変更したりしたことによる寿命への影響を寿命の変化として見積もる。例えば、運転条件の変更によって運転単位時間あたり寿命がどの程度短くなるかのデータを保持させておき、第1上限電力を超えて運転した時間や第1増加率上限値を超えて運転した時間を乗じて、寿命の短縮を見積もることができる。
【0049】
記憶部42は推定部41で推定した燃料電池3の寿命の値を保持している。推定部41は、推定した燃料電池3の寿命の値が変化したとき、記憶部42に保持された燃料電池3の寿命の値を更新する。
【0050】
例えば家庭用の燃料電池発電システムには、10年程度の寿命を保証することが必要である。そのため燃料電池3は、定格上限で運転しても10年の寿命を有するように設計されている。しかしながら上述のように定格を超えて運転した場合、一酸化炭素被毒によって寿命が多少短くなる。このように短くなった寿命の値を記憶部42に保持することで、例えば定格を超えた運転を制限することができる。これによって確実に10年程度の寿命を保証することができる。
【0051】
逆に、通常の運転において比較的軽負荷で使われることが多い場合、燃料電池3の寿命が10年をはるかに超える状況もありうる。このように寿命に余裕がある場合、制御部5Aは積極的に定格を超える運転を活用する。すなわち、制御部5Aは、予め設定され記憶部42に記憶された燃料電池3の保証寿命の値と、実際に推定された燃料電池3の寿命の値とを比較し、その比較結果に応じて燃料電池3の発電上限電力や電力の増加率上限値を変更する。このようにすれば、保証寿命を確保しつつ、負荷11の変動に柔軟に対応することができる。
【産業上の利用可能性】
【0052】
以上のように、本発明の燃料電池発電システムでは一時的に燃料電池の発電上限電力や発電電力の増加率上限値を、定格値を超えた水準に引き上げつつ、燃料電池の一酸化炭素耐性を向上させる、あるいは一酸化炭素の濃度を下げる。これによって寿命への影響を抑えつつ、利便性を向上することができる。本発明にかかる燃料電池発電システムは、特に家庭での電力を安定的に供給するシステムとして有用である。
【符号の説明】
【0053】
1 燃料処理機
3 燃料電池
5,5A 制御部
7 熱交換機
9 貯湯槽
10 インバータ
11 負荷
21 脱硫部
23 第1混合部
25 改質部
27 変成部
29 選択酸化部
31 第2混合部
41 推定部
42 記憶部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料を改質して水素ガスを発生させる燃料処理機と、
前記水素ガスを燃料として発電する燃料電池と、
制御部と、を備え、
前記制御部には、前記燃料電池の発電上限電力として、定格上限電力である第1上限電力と、前記第1上限電力を上回る第2上限電力とが設定され、
前記制御部は、前記燃料電池へ要求される発電電力が、前記第1上限電力を上回る場合、前記発電上限電力を第2上限電力に変更するとともに、前記燃料電池の耐一酸化炭素性を向上させる運転モードと、前記燃料処理機が前記燃料電池に供給する水素ガス中の一酸化炭素を低減させる運転モードとの少なくともいずれかを実施させる燃料電池発電システム。
【請求項2】
前記制御部は、前記燃料電池の耐一酸化炭素性を向上させる運転モードにおいて前記燃料電池の運転温度を上昇させる請求項1に記載の燃料電池発電システム。
【請求項3】
前記制御部は、前記燃料電池の耐一酸化炭素性を向上させる運転モードにおいて前記燃料処理機から供給される水素ガス中の酸素濃度を増加させる請求項1に記載の燃料電池発電システム。
【請求項4】
前記制御部は、前記燃料処理機が前記燃料電池に供給する水素ガス中の一酸化炭素を低減させる運転モードにおいて前記燃料処理機に供給する水蒸気流量と空気の流量の少なくとも一方を増加させる請求項1に記載の燃料電池発電システム。
【請求項5】
前記制御部が前記発電上限電力を前記第1上限電力に設定した状態で前記燃料電池の電流−電圧特性から前記燃料電池の寿命を推定するとともに、前記制御部が前記発電上限電力を前記第2発電上限電力に変更したことに伴って生じる前記燃料電池の寿命の変化を見積もる推定部をさらに備えた請求項1に記載の燃料電池発電システム。
【請求項6】
前記推定部で推定した前記燃料電池の寿命の値を保持する記憶部をさらに備え、
前記推定部は、推定した前記燃料電池の寿命の値が変化したとき、前記記憶部に保持された前記燃料電池の寿命の値を更新する請求項5に記載の燃料電池発電システム。
【請求項7】
予め設定された前記燃料電池の保証寿命の値を保持する記憶部をさらに備え、
前記制御部は、前記記憶部に記憶された前記燃料電池の保証寿命の値と前記燃料電池の寿命の値とを比較し、その比較結果に応じて前記発電上限電力を変更する請求項5に記載の燃料電池発電システム。
【請求項8】
前記制御部には、前記燃料電池で発電する電力の増加率上限値として、定格増加率上限値である第1増加率上限値と、前記第1増加率上限値を上回る第2増加率上限値とが設定され、
前記制御部は、前記燃料電池へ要求される発電電力の増加率が、前記第1増加率上限値を上回る場合、発電する電力の前記増加率上限値を前記第2増加率上限値に変更するとともに、前記燃料電池の耐一酸化炭素性を向上させる運転モードと、前記燃料処理機が前記燃料電池に供給する水素ガス中の一酸化炭素を低減させる運転モードとの少なくともいずれかを実施させる請求項1に記載の燃料電池発電システム。
【請求項9】
原料を改質して水素ガスを発生させる燃料処理機と、
前記水素ガスを燃料として発電する燃料電池と、
制御部と、を備え、
前記制御部には、前記燃料電池で発電する電力の増加率上限値として、定格増加率上限値である第1増加率上限値と、前記第1増加率上限値を上回る第2増加率上限値とが設定され、
前記制御部は、前記燃料電池へ要求される発電電力の増加率が、前記第1増加率上限値を上回る場合、発電する電力の前記増加率上限値を前記第2増加率上限値に変更するとともに、前記燃料電池の耐一酸化炭素性を向上させる運転モードと、前記燃料処理機が前記燃料電池に供給する水素ガス中の一酸化炭素を低減させる運転モードとの少なくともいずれかを実施させる燃料電池発電システム。
【請求項10】
前記制御部は、前記燃料電池の耐一酸化炭素性を向上させる運転モードにおいて、前記燃料電池の運転温度を上昇させる請求項9に記載の燃料電池発電システム。
【請求項11】
前記制御部は、前記燃料電池の耐一酸化炭素性を向上させる運転モードにおいて、前記燃料処理機から供給される水素ガス中の酸素濃度を増加させる請求項9に記載の燃料電池発電システム。
【請求項12】
前記制御部は、前記燃料処理機が前記燃料電池に供給する水素ガス中の一酸化炭素を低減させる運転モードにおいて、前記燃料処理機に供給する水蒸気流量と空気の流量の少なくとも一方を増加させる請求項9に記載の燃料電池発電システム。
【請求項13】
前記制御部が前記発電上限電力を前記第1上限電力に設定した状態で前記燃料電池の電流−電圧特性から前記燃料電池の寿命を推定するとともに、前記制御部が前記発電上限電力を前記第2発電上限電力に変更したことに伴って生じる前記燃料電池の寿命の変化を見積もる推定部をさらに備えた推定部をさらに備えた請求項9に記載の燃料電池発電システム。
【請求項14】
前記推定部で推定した前記燃料電池の寿命の値を保持する記憶部をさらに備え、
前記推定部は、推定した前記燃料電池の寿命の値が変化したとき、前記記憶部に保持された前記燃料電池の寿命の値を更新する請求項13に記載の燃料電池発電システム。
【請求項15】
予め設定された前記燃料電池の保証寿命の値を保持する記憶部をさらに備え、
前記制御部は、前記記憶部に記憶された前記燃料電池の保証寿命の値と前記燃料電池の寿命の値とを比較し、その比較結果に応じて前記発電上限電力を変更する請求項14に記載の燃料電池発電システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−181198(P2011−181198A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−41502(P2010−41502)
【出願日】平成22年2月26日(2010.2.26)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】