説明

燃料電池自動車用マフラ

【課題】より広い周波数帯域の排気音を低減することが可能な燃料電池自動車用マフラを提供する。
【解決手段】マフラ1は、マフラシェル2と吸音材とを備えている。吸音材は、マフラシェル2の内部に充填されている。エア流路4が、吸音材に囲まれてマフラシェル2内に形成されている。エア流路4は、燃料電池からの排気ガスを流してマフラシェル2の外部に排出する。エア流路4に沿った位置によって吸音材の共振周波数が異なっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池によって発電された電力を動力源とする車両に搭載されて、燃料電池からの排気ガスを外部に排出する燃料電池自動車用マフラに関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池が搭載された燃料電池自動車が知られている。燃料電池においては、燃料電池スタックのアノード側に供給される水素等の燃料ガスと、カソード側に供給される酸化ガスとが、電解質膜で電気化学反応することにより必要な電力が取り出される。また、燃料ガスと酸化ガスとの電気化学反応によって反応生成水が生成される。生成された反応生成水は、反応に使用されなかった燃料ガスや酸化ガスと共に、燃料電池の排気ガスとして、燃料電池に接続された排気通路から車外に排出される。このような排気通路においては、1kHz〜6kHz程度の周波数の排気音が生じることがある。例えば、燃料電池に供給される空気の流量や圧力を調整するための空気調圧弁が排気通路に設けられることがある。空気調圧弁内を通過する空気量、流速、圧力、弁体の開度等によっては、空気調圧弁に振動が生じて、気流音(排気音)が生じることがある。このような排気音を低減するために、燃料電池自動車の排気通路には、内部に吸音材(消音材)が充填されたマフラが搭載されることがある。
【0003】
例えば下記の特許文献1には、排気ガスを液相と気相とに分離して車外に排出することが可能なマフラが開示されている。特許文献1に記載のマフラは、内筒と外筒とを備えている。内筒は、排気ガスを液相と気相とに分離する。外筒には、内筒によって分離された液相を外部に排出する排液口と、騒音を低減するグラスウールとが設けられている。外筒の長手方向の軸線が水平方向に対して所定角度傾けられた状態で外筒が配置されており、最下部位近傍に排液口が設けられている。排気ガスから分離された液相が排液口に集められて外部に排出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−160187号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
燃料電池自動車においては、燃料電池スタックが車両の床下に搭載されることがある。燃料電池スタックが車両の床下に配置されると、マフラを車両に搭載するためのスペースが限られてしまう。このような状況下で、マフラには、上述した周波数帯域が広い排気音を低減することが求められている。周波数帯域が広い排気音を低減するために、サブマフラとメインマフラとを車両に搭載することが考えられる。しかしながら、マフラを車両に搭載するためのスペースが限られているため、サブマフラとメインマフラとを燃料電池自動車に搭載して周波数帯域が広い排気音を低減することは困難である。
【0006】
また、上記の特許文献1に記載のマフラでは、排気音の周波数については考慮されていないため、周波数帯域が広い排気音を低減することは困難である。
【0007】
本発明の目的は、より広い周波数帯域の排気音を低減することが可能な燃料電池自動車用マフラを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、燃料電池からの排気通路に設けられ、前記燃料電池からの排気ガスを排出する燃料電池自動車用マフラであって、排気音を吸音する吸音材が内部に充填されたマフラシェルと、前記吸音材に囲まれて前記マフラシェル内に形成され、前記燃料電池からの排気ガスを流して前記マフラシェルの外部に排出するエア流路と、を備え、前記エア流路に沿った位置によって前記吸音材の共振周波数が異なる、ことを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る燃料電池自動車用マフラであって、前記エア流路の長手方向の軸が車両上方から見て前記マフラシェルに対して斜めになるように、前記マフラシェル内に前記エア流路が形成されている、ことを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る燃料電池自動車用マフラであって、前記エア流路から前記マフラシェルの一方の内壁面までの距離が、前記エア流路の上流側から下流側にかけて長くなっており、前記エア流路から前記マフラシェルの前記一方の内壁面とは反対側の他方の内壁面までの距離が、前記エア流路の上流側から下流側にかけて短くなっている、ことを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る燃料電池自動車用マフラであって、前記エア流路の下流側が前記エア流路の上流側よりも車両の前方側に配置されるように、前記マフラシェル内に前記エア流路が形成されている、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によると、エア流路に沿った位置によって吸音材の共振周波数が異なるため、より広い周波数帯域の排気音を低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態に係る燃料電池自動車用マフラの外観を示す斜視図である。
【図2】本発明の実施形態に係る燃料電池自動車用マフラを上から見た平面図である。
【図3】本発明の実施形態に係る燃料電池自動車用マフラの断面図である。
【図4】エア流路からマフラシェルの内壁面までの距離と、減衰される排気音の周波数との関係を示すグラフである。
【図5】本実施形態に係る燃料電池自動車用マフラを燃料電池自動車に搭載した状態を上から見た平面図である。
【図6】変形例に係る燃料電池自動車用マフラを上から見た平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1から図4を参照して、本発明の実施形態に係る燃料電池自動車用マフラについて説明する。図1は、本発明の実施形態に係る燃料電池自動車用マフラの外観を示す斜視図である。図2は、本発明の実施形態に係る燃料電池自動車用マフラを上から見た平面図である。図3は、本発明の実施形態に係る燃料電池自動車用マフラの断面図である。図3(a)は図2のA−A断面図であり、図3(b)は図2のB−B断面図であり、図3(c)は図2のC−C断面図である。図4は、エア流路からマフラシェルの内壁面までの距離と、減衰される気流音の周波数との関係を示すグラフである。
【0015】
本実施形態に係る燃料電池自動車用マフラ1(以下、「マフラ1」と称する場合がある)は、燃料電池自動車の後方の床下に、ブランケット等によって吊り下げられて設置される。なお、図1において、X方向、Y方向、及びZ方向は互いに直交しており、Z方向は車両の上方を示している。一例として、マフラ1は、X方向とY方向とで規定される車両水平面に対して平行に設置される。
【0016】
図示しない燃料電池からは、反応に使用されなかった空気と燃料電池にて生成された水分(水蒸気)とを含む排気ガスが、所定の排気通路から排出される。マフラ1は、この排気通路の末端に設けられており、水分を含んだ排気ガスは、排気通路の上流側(図1に矢印Dで示す側)からマフラ1に流入する。マフラ1は、生成水等の水分を含む排気ガスを排出するときに発生する排気音(気流音)を吸音し、騒音を抑制する機能を有する。
【0017】
マフラ1は、マフラシェル2と、マフラシェル2の内部に充填された吸音材3とを含んで構成されている。マフラ1の上流側端面にはガス導入管20が設けられ、マフラ1の下流側端面にはガス排出管30が設けられる。
【0018】
ガス導入管20は、図示しない燃料電池から延びる図示しないパイプに接続されている。ガス導入管20は、燃料電池側のパイプと接続されて、燃料電池にて発生した排気ガスをマフラシェル2の内部に導入するためのパイプである。ガス排出管30は、マフラシェル2を通ってきた排気ガスを、車外に排出するためのパイプである。ガス排出管30の下流側端部は、排気ガスを車外に排出するための排気口となっている。
【0019】
燃料電池にて発生した排気ガスはガス導入管20によってマフラシェル2の内部に導入され、ガス排出管30によってマフラシェル2の外部に排出されるので、燃料電池の排気ガスは、マフラシェル2内を流れることになる。
【0020】
マフラシェル2は、楕円又は円形の断面形状を有する筒状容器である。本実施形態では一例として、図3に示すように、マフラシェル2は楕円の断面形状を有するものとして説明する。マフラシェル2は、例えば金属板を円筒状に成形し、その両端を側板でふさいだ形状を有し、両側板にそれぞれガス導入管20とガス排出管30とが取り付けられる。図2に示すように、例えば、マフラシェル2は、上流側から下流側に向かう長さ方向(X方向)の長さが一定であり、長さ方向に直交する幅方向(Y方向)の長さが一定である。
【0021】
吸音材3は、マフラシェル2の内部に配置される部材であり、排気ガスが流れるときの排気音(気流音)を吸音する機能を有する。吸音材3には、例えば不織布や発泡材を用いることができる。吸音材3は、マフラシェル2の内部の空間において、ガス導入管20とガス排出管30との間で排気が流れるエア流路4を形成するような形状を有する。すなわち、吸音材3は、マフラシェル2の一方の端面においてガス導入管20が接続される開口と、他方の端面においてガス排出管30が接続される開口との間を接続する箇所については、管状の空間を確保するように配置されていない。吸音材3が配置されていない管状の空間がエア流路4となる。換言すると、吸音材3はエア流路4の周囲に配置されており、エア流路4は吸音材3によって囲まれている。
【0022】
本実施形態に係るマフラ1においては、エア流路4に沿った位置(エア流路4の上流側から下流側の位置)によって吸音材3の共振周波数(固有振動数)が異なっている。エア流路4に沿った位置によって吸音材3の共振周波数を変えるために、一例として図2に示すように、X方向とY方向とで規定される車両水平面内において、エア流路4が、マフラシェル2に対して所定角度α傾けられた状態でマフラシェル2の内部に形成されている。例えば、車両上方(Z方向)から見たときに、エア流路4の軸方向(排気が流れる方向)がマフラシェル2に対して所定角度α傾くように、マフラシェル2内にエア流路4が形成されている。換言すると、マフラシェル2の上流側から下流側に向かう長さ方向に沿った軸(例えば、マフラシェル2の上流側から下流側に向かってマフラシェル2の中心を通る中心軸100)と、エア流路4の長手方向の軸110(排気ガスが流れる方向に沿った軸)とのなす角度が角度αとなるように、エア流路4がマフラシェル2内に形成されている。
【0023】
また、ガス導入管20は、エア流路4と同じ角度α傾けた状態でマフラシェル2の上流側端面に設けられ、ガス排出管30は、エア流路4と同じ角度α傾けた状態でマフラシェル2の下流側端面に設けられる。
【0024】
このようにエア流路4をマフラシェル2に対して傾けて形成することにより、吸音材3の断面の形状が、エア流路4に沿った位置(エア流路4の上流側から下流側の位置)によって変わることになる。具体的には図3(a)〜(c)に示すように、エア流路4の位置が、マフラ1の上流側から下流側の位置によって変わることになる。すなわち、エア流路4からマフラシェル2の内壁面2a、2bまでの距離が、マフラ1の上流側から下流側の位置によって変わることになる。吸音材3は、エア流路4が形成されるようにマフラシェル2の内部に充填されているため、吸音材3の横方向(Y方向)の長さが、マフラ1の上流側から下流側の位置によって変わることになる。
【0025】
図2及び図3を参照して、マフラ1の上流側、中央部、及び下流側のそれぞれの位置におけるエア流路4の位置について説明する。図3(a)は、マフラ1の上流側におけるマフラ1の断面図である。図3(b)は、マフラ1の中央部におけるマフラ1の断面図である。図3(c)は、マフラ1の下流側におけるマフラ1の断面図である。
【0026】
マフラ1の上流側においては、図2及び図3(a)に示すように、エア流路4からマフラシェル2の一方の内壁面2aまでの距離(長さL1)よりも、エア流路4からマフラシェル2の他方の内壁面2b(内壁面2aとは反対側の内壁面)までの距離(長さL2)の方が長くなる。すなわち、エア流路4とマフラシェル2の一方の内壁面2aとの間に充填された吸音材3の横方向(Y方向)の長さL1よりも、エア流路4とマフラシェル2の他方の内壁面2bとの間に充填された吸音材3の横方向(Y方向)の長さL2の方が長くなる。
【0027】
また、マフラ1の中央部においては、図2及び図3(b)に示すように、エア流路4からマフラシェル2の一方の内壁面2aまでの距離(長さL3)と、エア流路4からマフラシェル2の他方の内壁面2bまでの距離(長さL4)とが等しくなる。すなわち、エア流路4とマフラシェル2の一方の内壁面2aとの間に充填された吸音材3の横方向(Y方向)の長さL3と、エア流路4とマフラシェル2の他方の内壁面2bとの間に充填された吸音材3の横方向(Y方向)の長さL4とが等しくなる。
【0028】
また、マフラ1の下流側においては、図2及び図3(c)に示すように、エア流路4からマフラシェル2の一方の内壁面2aまでの距離(長さL5)よりも、エア流路4からマフラシェル2の他方の内壁面2bまでの距離(長さL6)の方が短くなる。すなわち、エア流路4とマフラシェル2の一方の内壁面2aとの間に充填された吸音材3の横方向(Y方向)の長さL5よりも、エア流路4とマフラシェル2の他方の内壁面2bとの間に充填された吸音材3の横方向(Y方向)の長さL6の方が短くなる。
【0029】
以上のように、本実施形態に係るマフラ1においては、エア流路4からマフラシェル2の一方の内壁面(例えば内壁面2a)までの距離が、マフラ1の上流側から下流側にかけて長くなっており、エア流路4からマフラシェル2の他方の内壁面(例えば内壁面2b)までの距離が、マフラ1の上流側から下流側にかけて短くなっている。
【0030】
図3(a)〜(c)に示す例では、マフラ1の上流側においては、エア流路4はマフラシェル2内部において比較的右側に配置されており、マフラ1の中央部においては、エア流路4はマフラシェル2内部の中央部に配置されており、マフラ1の下流側においては、エア流路4はマフラシェル2内部の比較的左側に配置されている。
【0031】
上記の構成を有するマフラ1による作用及び効果について説明する。図示しない燃料電池スタックから排出された排気ガスは、ガス導入管20によってマフラ1に導入される。ガス導入管20からマフラ1のエア流路4に排気ガスが導入されると、吸音材3に向けて音波が放射される。音波が吸音材3に入射すると吸音材3が振動し、吸音材3の共振周波数(固有振動数)と音波の周波数とが一致すると、気流音は吸音材3で共鳴することになる。吸音材3で共鳴が起きると、吸音材3が激しく振動し、振動エネルギーが熱エネルギーに変換されて減衰することになる。その結果、共鳴した排気音が低減される。
【0032】
吸音材3の共振周波数(固有振動数)は、吸音材3の長さに依存する。本実施形態に係るマフラ1では、吸音材3は、エア流路4を囲んでマフラシェル2の内部に充填されている。エア流路4に沿った位置(エア流路4の上流側から下流側の位置)によって、エア流路4からマフラシェル2の内壁面2a、2bまでの距離を変えているため、エア流路4に沿った位置によって、エア流路4とマフラシェル2の内壁面2a、2bとの間に充填されている吸音材3の横方向の長さが変わっている。そのことにより、例えば同じ材料の吸音材3を用いた場合であっても、エア流路4に沿った位置によって吸音材3の共振周波数を変えることができる。このようにエア流路4に沿った位置によって吸音材3の共振周波数が異なっているため、共鳴によって低減される排気音の周波数をエア流路4に沿った位置によって変えることができる。位置によって異なる周波数の排気音を低減することができるため、マフラ1によってより広い周波数帯域の排気音を低減することが可能となる。
【0033】
ここで、図4を参照して、吸音材3によって減衰される排気音(気流音)の周波数と、吸音材3の横方向(Y方向)の長さとの関係について説明する。図4において、横軸は、吸音材3によって減衰される排気音の周波数を示す。縦軸は、エア流路4とマフラシェル2の内壁面2a(又は内壁面2b)との間に充填されている吸音材3の横方向(Y方向)の長さを示す。一例として、吸音材3には同じ材料を用いているものとする。図4に示すように、吸音材3の横方向の長さが長いほど、低い周波数帯域の排気音を低減することでき、吸音材3の横方向の長さが短いほど、高い周波数帯域の排気音を低減することができる。
【0034】
図2に示すように、マフラ1の上流側においては、長さL1の吸音材3が高い周波数帯域の排気音を低減させ、長さL2の吸音材3が低い周波数帯域の排気音を低減させることができる。また、マフラ1の下流側においては、長さL5の吸音材が低い周波数帯域の排気音を低減させ、長さL6の吸音材3が高い周波数領域の排気音を低減させることができる。また、マフラ1の中央部においては、長さL3、L4の吸音材3が中程度の周波数帯域の排気音を低減させることができる。
【0035】
以上のように、マフラシェル2に対して所定角度α傾けた状態でエア流路4をマフラシェル2の内部に形成することにより、エア流路4に沿った位置によって、吸音材3によって減衰される排気音の周波数を変えることができるため、より広い周波数帯域の排気音を低減することが可能となる。本実施形態に係るマフラ1を用いることにより、サブマフラやメインマフラなどのように複数のマフラを用いなくても、より広い周波数帯域の排気音を低減することができる。その結果、車両におけるスペースを有効に活用することが可能となる。すなわち、本実施形態に係るマフラ1を用いることにより、燃料電池自動車にマフラを搭載するためのスペースが限られている状況下においても、より広い周波数帯域の排気音を低減することが可能となる。例えば、周波数が1kHz〜6kHz程度の排気音を低減することが可能となる。
【0036】
図3(a)〜(c)に示すように、エア流路4は、半円又は半楕円の断面形状を有することが好ましい。すなわち、エア流路4は、車両下方側の面が平坦であることが好ましい。エア流路4において車両下方側の面を平坦にすることにより、排気に含まれる水分が吸音材3に吸収され難くなるため、水分を吸収したことによる吸音材3の消音能力の低下を抑制することが可能となる。
【0037】
なお、従来技術のように、マフラシェルの長手方向の軸線を車両水平方向に対して所定角度傾けた状態でマフラシェルとエア流路とを配置した場合には、吸音材が水分を吸収してマフラシェルの最下部位に水分が集まりやすくなるため、吸音材の消音能力が低下するおそれがある。これに対して本実施形態に係るマフラ1においては、車両水平面内において、マフラシェル2に対して所定角度α傾けられた状態でエア流路4がマフラシェル2の内部に形成されている。すなわち、本実施形態に係るマフラ1においては、マフラシェル2及びエア流路4は、車両水平方向に対して傾いていないため、吸音材3内に水分が集まり難くなり、その結果、水分を吸収したことによる吸音材の消音能力の低下を抑制することが可能となる。
【0038】
次に、図5を参照して、本実施形態に係るマフラ1を燃料電池自動車に搭載した実施例について説明する。図5は、本実施形態に係る燃料電池自動車用マフラを燃料電池自動車に搭載した状態を上から見た平面図である。
【0039】
図5に示す例では、X方向が車両の左側方を示し、Y方向が車両の後方を示し、Z方向が車両の上方を示している。上述したように、マフラ1は、X方向とY方向とで規定される車両水平面に対して平行に設置されている。また、マフラシェル2の両端面の開口が車両の側方を向くように、マフラ1が車両に設置されている。すなわち、マフラ1においてガス導入管20とガス排出管30とが設置されている端面を車両の側方に向けた状態で、マフラ1を車両に設置する。図5に示す例では、マフラシェル2の上流側端面(ガス導入管20が設置されている端面)が車両の右側方に向けられ、マフラシェル2の下流側端面(ガス排出管30が設置されている端面)が車両の左側方に向けられた状態で、マフラ1が車両に設置されている。また、エア流路4の上流側がエア流路4の下流側よりも車両の後方側に配置されるように、マフラ1が車両に設置されている。
【0040】
燃料電池スタック40から排出された排気ガスは、ガス導入管20によって車両の後方側に流れていき、上流側からマフラ1のエア流路4に導入される。エア流路4はマフラシェル2に対して傾いており、エア流路4の上流側から下流側にかけて、エア流路4は車両の後方側から前方側に傾いた状態でマフラシェル2内に形成されている。従って、上流側からエア流路4に導入された排気ガスは、エア流路4に沿って車両の後方側から前方側に向かって下流側に流れる。排気ガスがエア流路4内を流れることにより、排気音(気流音)が低減される。
【0041】
以上のように本実施形態に係るマフラ1を車両に搭載すると、エア流路4の上流側は下流側よりも車両の後方側に配置されているため、ブレーキ時等のように車両が前方に傾いたときに、エア流路4の上流側が下流側よりも高い位置に配置されることになる。すなわち、車両が前方に傾くと、車両の後方側が前方側よりも高い位置に配置されることになるため、車両の後方側に配置された上流側の方が、車両の前方側に配置された下流側よりも高い位置に配置されることになる。エア流路4の上流側が下流側よりも高い位置に配置されるため、マフラ1の下流側(エア流路4の下流側)に一度流れた生成水が、マフラ1の下流側から上流側に逆流することを抑制することが可能となる。その結果、車両が前方に傾いたときに、マフラ1の下流側に一度流れた生成水が、燃料電池スタックに逆流することを抑制することが可能となる。このように本実施形態に係るマフラ1によると、周波数帯域が広い排気音を低減しつつ、生成水が燃料電池スタックに逆流することを抑制することが可能となる。
【0042】
次に、図6を参照して、変形例に係る燃料電池自動車用マフラについて説明する。図6は、変形例に係る燃料電池自動車用マフラを上から見た平面図である。
【0043】
本発明は、上述した実施形態に係るマフラ1に限定されるものではなく、エア流路に沿った位置によって吸音材の共振周波数(固有振動数)が異なっていれば、上述した実施形態に係るマフラ1と同じ効果を奏することができる。
【0044】
上述した実施形態では、マフラシェル2の横方向(Y方向)の長さが一定であるが、横方向の長さが上流側から下流側にかけて変わっていてもよい。この場合においても、エア流路からマフラシェルの内壁面までの距離を、マフラ1の上流側から下流側の位置によって変えることにより、上述した実施形態に係るマフラ1と同じ効果を奏することができる。
【0045】
図6(a)に変形例1に係るマフラ1Aを示し、図6(b)に変形例2に係るマフラ1Bを示す。まず、変形例1に係るマフラ1Aについて説明する。図6(a)に示すマフラ1Aのマフラシェル5は、上流側から下流側に向かって横方向(Y方向)の長さが長くなっている。すなわち、マフラシェル5は、車両上方から見て台形状の形状を有する。エア流路4は、マフラシェル5の上流側から下流側に向かう長さ方向に沿った軸(例えば、マフラシェル5の上流側から下流側に向かってマフラシェル5の中心を通る中心軸100)に沿って、マフラシェル5内の中心に形成されている。一例として、マフラシェル5の中心軸100と、エア流路4の長手方向の軸110(排気が流れる方向に沿った軸)とが一致している。
【0046】
このように台形状のマフラシェル5内の中心に中心軸100に沿ってエア流路4を形成することにより、エア流路4に沿った位置によってエア流路4からマフラシェル5の内壁面5a、5bまでの距離が変わることになる。吸音材3は、エア流路4が形成されるようにマフラシェル5の内部に充填されているため、エア流路4に沿った位置によって吸音材3の横方向(Y方向)の長さが変わることになる。
【0047】
例えばマフラ1Aの上流側においては、エア流路4からマフラシェル5の一方の内壁面5aまでの距離(長さL10)と、エア流路4からマフラシェル5の他方の内壁面5b(内壁面5aとは反対側の内壁面)までの距離(長さL10)とが等しくなる。また、マフラ1Aの中央部においても、エア流路4からマフラシェル5の一方の内壁面5aまでの距離(長さL11)と、エア流路4からマフラシェル5の他方の内壁面5bまでの距離(長さL11)とが等しくなる。また、マフラ1Aの下流側においても、エア流路4からマフラシェル5の内壁面5aまでの距離(長さL12)と、エア流路4からマフラシェル5の他方の内壁面5bまでの距離(長さL12)とが等しくなる。
【0048】
以上のように、エア流路4に沿った位置によってエア流路4からマフラシェル5の内壁面5a、5bまでの距離を変えることにより、例えば同じ材料の吸音材を用いた場合であっても、エア流路4に沿った位置によって吸音材の横方向(Y方向)の長さを変えて、吸音材3の共振周波数を変えることができる。そのことにより、位置によって異なる周波数の排気音を低減することができるため、マフラ1Aによってより広い周波数帯域の排気音を低減することが可能となる。
【0049】
次に、変形例2に係るマフラ1Bについて説明する。図6(b)に示すマフラ1Bのマフラシェル5は、変形例1に係るマフラシェル5と同じ形状を有する。変形例2においては、エア流路4は、マフラシェル5の中心軸100に対して平行に形成されているが、マフラシェル5の中心軸100から横方向(Y方向)にずれた位置に形成されている。図6(b)に示す例では、エア流路4は、マフラシェル5の中心軸100から右側にずれた位置に形成されている。
【0050】
このように台形状のマフラシェル5の中心軸100に沿ってエア流路4を形成することにより、エア流路4に沿った位置によってエア流路4からマフラシェル5の内壁面5a、5bまでの距離が変わることになる。例えばマフラ1Bの上流側においては、エア流路4からマフラシェル5の一方の内壁面5aまでの距離(長さL20)よりも、エア流路4からマフラシェル5の他方の内壁面5bまでの距離(長さL21)の方が長くなる。また、マフラ1Bの中央部においても、エア流路4からマフラシェル5の一方の内壁面5aまでの距離(長さL22)よりも、エア流路4からマフラシェル5の他方の内壁面5bまでの距離(長さL23)の方が長くなる。また、マフラ1Bの下流側においても、エア流路4からマフラシェル5の一方の内壁面5aまでの距離(長さL24)よりも、エア流路4からマフラシェル5の他方の内壁面5bまでの距離(長さL25)の方が長くなる。
【0051】
以上のように、エア流路4に沿った位置によってエア流路4からマフラシェル5の内壁面5a、5bまでの距離を変えることにより、例えば同じ材料の吸音材を用いた場合であっても、エア流路4に沿った位置によって吸音材の横方向(Y方向)の長さを変えて、吸音材3の共振周波数を変えることができる。そのことにより、位置によって異なる周波数の排気音を低減することができるため、より広い周波数帯域の排気音を低減することが可能となる。
【0052】
なお、マフラシェル5に代えて、上流側から下流側に向かって横方向(Y方向)の長さが短くなるマフラシェルを用いても、変形例に係るマフラ1A、1Bと同じ効果を奏することができる。
【0053】
また、別の変形例として、エア流路に沿った位置によって異なる材料の吸音材をマフラシェル2内に充填することにより、エア流路に沿った位置によって吸音材の共振周波数(固有振動数)を変えてもよい。例えばエア流路に沿った位置によって弾性率が異なる吸音材をマフラシェル内に充填することにより、エア流路に沿った位置によって吸音材の共振周波数(固有振動数)を変えてもよい。
【0054】
また、上述した実施形態及び変形例では、エア流路に沿った位置によって吸音材の共振周波数を連続的に変化させているが、吸音材の共振周波数を段階的に変化させてもよい。例えば、エア流路からマフラシェルの内壁面までの距離を、エア流路に沿った位置によって段階的に変えることにより、吸音材の共振周波数をエア流路に沿って段階的に変えてもよい。または、吸音材の材料をエア流路に沿った位置によって段階的に変えることにより、吸音材の共振周波数をエア流路に沿って段階的に変えてもよい。
【符号の説明】
【0055】
1,1A,1B マフラ、2,5 マフラシェル、2a,2b,5a,5b 内壁面、3 吸音材、4 エア流路、20 ガス導入管、30 ガス排出管、40 燃料電池スタック。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池からの排気通路に設けられ、前記燃料電池からの排気ガスを排出する燃料電池自動車用マフラであって、
排気音を吸音する吸音材が内部に充填されたマフラシェルと、
前記吸音材に囲まれて前記マフラシェル内に形成され、前記燃料電池からの排気ガスを流して前記マフラシェルの外部に排出するエア流路と、
を備え、
前記エア流路に沿った位置によって前記吸音材の共振周波数が異なる、
ことを特徴とする燃料電池自動車用マフラ。
【請求項2】
請求項1に記載の燃料電池自動車用マフラであって、
前記エア流路の長手方向の軸が車両上方から見て前記マフラシェルに対して斜めになるように、前記マフラシェル内に前記エア流路が形成されている、
ことを特徴とする燃料電池自動車用マフラ。
【請求項3】
請求項2に記載の燃料電池自動車用マフラであって、
前記エア流路から前記マフラシェルの一方の内壁面までの距離が、前記エア流路の上流側から下流側にかけて長くなっており、前記エア流路から前記マフラシェルの前記一方の内壁面とは反対側の他方の内壁面までの距離が、前記エア流路の上流側から下流側にかけて短くなっている、
ことを特徴とする燃料電池自動車用マフラ。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の燃料電池自動車用マフラであって、
前記エア流路の下流側が前記エア流路の上流側よりも車両の前方側に配置されるように、前記マフラシェル内に前記エア流路が形成されている、
ことを特徴とする燃料電池自動車用マフラ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−215103(P2012−215103A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−80375(P2011−80375)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】