説明

燃料電池自動車

【課題】燃料電池の支持剛性を確保しつつ、車体の振動が燃料電池に伝達されるのを確実に防止できる燃料電池自動車を提供する。
【解決手段】水素と酸素の電気化学反応によって発電する燃料電池及びその補機類を収納する燃料電池システムボックスを搭載した燃料電池自動車において、前記燃料電池システムボックスの下壁26に車幅方向に延びる前側スタックフレーム31,後側スタックフレーム32を設け、これら前側スタックフレーム31,後側スタックフレーム32に燃料電池の両端部を固定すると共に、前後の前側スタックフレーム31,後側スタックフレーム32間に防振材を設けたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、燃料電池自動車とりわけ燃料電池等を収納する燃料電池システムボックスに防振対策を施した燃料電池自動車に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、燃料電池を搭載した燃料電池自動車が知られている。燃料電池を搭載するにあたっては、車体振動を考慮した様々な対策が提案されている。例えば、燃料電池に弾性のあるマウント部材を設け、このマウンド部材を介して燃料電池を収容ケースに設置するものが提案されている(特許文献1、2参照)。
【特許文献1】特開2002−367651号公報
【特許文献2】特開2003−297377号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来の燃料電池自動車にあっては、収容ケースに対してマウント部材を介して燃料電池を弾性的に支持することができる点で有利であるが、燃料電池の収容ケースに対する支持剛性を充分に確保できないという問題がある。また、マウント部材の配置位置等の設定が困難であるという問題がある。
【0004】
そこで、この発明は、燃料電池の支持剛性を確保しつつ、車体の振動が燃料電池に伝達されるのを確実に防止できる燃料電池自動車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、請求項1に記載した発明は、水素と酸素の電気化学反応によって発電する燃料電池(例えば、実施形態における燃料電池3)及びその補機類を収納する燃料電池システムボックス(例えば、実施形態における燃料電池システムボックス5)を搭載した燃料電池自動車において、前記燃料電池システムボックスの下面(例えば、実施形態における下壁26上面)に車幅方向に延びる骨格部材(例えば、実施形態における前側スタックフレーム31,後側スタックフレーム32)を前側と後側に設け、これら前側と後側の骨格部材に燃料電池の両端部を固定すると共に、前後の骨格部材間に防振材(例えば、実施形態における防振材44)を設けたことを特徴とする。
このように構成することで、前後の骨格部材により燃料電池を確実に燃料電池システムボックスに固定すると共に、防振材により燃料電池システムボックス下面の振動が燃料電池に伝達されるのを防止することができる。
【0006】
請求項2に記載した発明は、前記防振材を前記前後に設けた骨格部材に固定されたプレート(例えば、実施形態におけるサンドイッチパネル41)により覆うことを特徴とする。
このように構成することで、プレートを前後の骨格部材に取り付けることでプレートの面振動を抑制することが可能となる。
【発明の効果】
【0007】
請求項1に記載した発明によれば、前後の骨格部材により燃料電池を確実に燃料電池システムボックスに固定すると共に、防振材により燃料電池システムボックス下面の振動が燃料電池に伝達されるのを防止することができるため、燃料電池を安定して支持できると共に、燃料電池を保護でき静粛性を高めることができる効果がある。
【0008】
請求項2に記載した発明によれば、プレートを前後の骨格部材に取り付けることでプレートの面振動を抑制することが可能となる、静粛性を向上することができる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
次に、この発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1に示すように、燃料電池自動車1は水素と酸素との電気化学反応によって発電を行う燃料電池3を搭載したものであり、この発電により生じた電力でモータ2を駆動して走行する。燃料電池3はフロントフロア4の下面に取り付けられる燃料電池システムボックス5内に収容されていて、車体後部のリヤフロア6下に配置された水素タンク19,20から供給される水素ガスと、車体前部に設けたコンプレッサ8から供給される空気中の酸素により発電を行う。
【0010】
図2、図3に示すように、フロントフロア4の下面の左右両側にはハット型断面形状のメインフレーム9がフランジ部10により接合され、このメインフレーム9とフロントフロア4とで車体前後方向に車体骨格部11が形成されている。メインフレーム9の外側壁にはハット型断面形状で車幅方向に延びるアウトリガ12が3箇所に接合され、アウトリガ12の外側端はサイドシル13に接合されている。アウトリガ12はメインフレーム9と同様にフロントフロア4の下面に接合されている。そして、メインフレーム9の下壁14にボルト15及びナット16により燃料電池システムボックス5が締め付け固定されている。尚、図2中前後左右の矢印は各々車体の前後左右を示す。
【0011】
そして、前記メインフレーム9とサイドシル13とがサイドシル後端部を介して車体後部に前後方向に設けた左右のリヤフレーム17(図1参照)に連接されている。図1に示すようにこのリヤフレーム17に図示しないリヤサスペンションを備えたサブフレーム18が下側から取り付けられている。このサブフレーム18の前側と後側に水素タンク19,20が各々横向きに固定されている。
【0012】
図4〜図6に示すように、燃料電池3が収容される前記燃料電池システムボックス5は矩形で箱形のボックス本体21とこのボックス本体21を上部から覆う蓋22とで構成されている。
【0013】
ボックス本体21は前壁23、後壁24、両側壁25,25及び下壁(下面)26とで構成されたもので、前記側壁25の前部上縁と後部上縁には前記メインフレーム9への取付ブラケット27が取り付けられている。前記側壁25と下壁26との間には骨格部28を形成するサイドレインフォース29が取り付けられている。
前記ボックス本体21の下壁26には車幅方向に亘って各サイドレインフォース29間に前側スタックフレーム(骨格部材)31と後側スタックフレーム(骨格部材)32が接合されている。前側スタックフレーム31はボックス本体21の前端部からやや後側に、後側スタックフレーム32はボックス本体21の後端部からやや前側に各々取り付けられている。
【0014】
これら前側スタックフレーム31と後側スタックフレーム32はハット型断面形状に形成され、前側スタックフレーム31、後側スタックフレーム32の各周縁フランジ部34をボックス本体21の下壁26上面及び前記サイドレインフォース29に溶接接合してボックス本体21の下壁26上面に閉断面構造の骨格部35を形成している。
そして、前記前側スタックフレーム31と後側スタックフレーム32との間には左右2つに分割構成され電気的に直列に接続された燃料電池3,3がブラケット36を介して各々固定されている。このブラケット36は断面L字型に形成され、このブラケット36の下壁37が前記前側スタックフレーム31あるいは後側スタックフレーム32の上面にボルト38により固定され、前記ブラケット36の縦壁39が前記燃料電池3の前端縦壁あるいは後端縦壁にボルト38により固定されている。
【0015】
ここで、図6〜図8に示すように、前記前側スタックフレーム31と後側スタックフレーム32との間には、前記前側、後側スタックフレーム31,32の配置部位の下側、つまり各燃料電池3の下面に対応する各々の部位にボックス本体21の下壁26上面との間に空間部40を形成する左右一対のサンドイッチパネル(プレート)41が取り付けられている。このサンドイッチパネル41は、前側フランジ部42が前記前側スタックフレーム31の周縁フランジ部34の後縁に接合され、後側フランジ部43が前記後側スタックフレーム32の前縁に接合されており、このサンドイッチパネル41とボックス本体21の下壁26との間の空間部40には、例えば発泡ゴム材などからなる防振材44が充填されている。
ここで、前記サンドイッチパネル41の車幅方向中央部は前記ボックス本体21の下壁26に固定され、結果的に1つのサンドイッチパネルに2つの空間部40,40が形成され各空間部40内に防振材44が介装されることとなる。
【0016】
また、前側スタックフレーム31の前側にはボックス本体21の下壁26との間に空間部45を形成する前側カバー部材46が、後側スタックフレーム32の後側にはボックス本体21の下壁26との間に空間部47を形成する後側カバー部材48が各々取り付けられ、各空間部45,47にも発泡樹脂材などからなる防振材49が充填されている。尚、前側カバー部材46と後側カバー部材48とは前記サンドイッチパネル41の上面より高さが低くなっており、これら前側カバー部材46と後側カバー部材48の上部に燃料電池3の図示しない補機類が配置されている。
【0017】
上記実施形態によれば、前記燃料電池3は前記サイドレインフォース29、29に跨るようにして前記ボックス本体21の下壁26の車幅方向に設けた前側スタックフレーム31と後側スタックフレーム32とに支持されている。したがって、燃料電池3は前記サイドレインフォース29により形成された車体前後方向の骨格部28と、前側スタックフレーム31と後側スタックフレーム32とで形成された骨格部35とによって支持されることとなる。よって、燃料電池3を確実に燃料電池システムボックス5に安定して固定することができる。
【0018】
また、前記燃料電池3の下方には前側スタックフレーム31と後側スタックフレーム32とに跨るようにしてサンドイッチパネル41が接合され、サンドイッチパネル41とボックス本体21の下壁26との間には空間部40が形成され、この空間部40に防振材44が充填されている。よって、燃料電池3の下方に位置するボックス本体21の下壁26が振動しても、この振動は前記防振材44により吸収されるため、燃料電池3にこの振動が伝達されるのを防止できる。よって、燃料電池3を振動から保護できると共に車室内の静粛性を向上することができる。
【0019】
ここで、前記防振材44は前側スタックフレーム31と後側スタックフレーム32に固定されたサンドイッチパネル41により覆われているため、サンドイッチパネル41の支持剛性が高められ、サンドイッチパネル41の面振動をも抑えることができ、この点でも静粛性を向上することができる。
【0020】
そして、前記前側スタックフレーム31の前側には、前側カバー部材46とボックス本体21の下壁26との間に形成された空間部45に防振材49が充填され、後側スタックフレーム32の後側には、後側カバー部材48とボックス本体21の下壁26との間に形成された空間部47に防振材49が充填されている。そのため、この部分においてもボックス本体21の下壁26の面振動を確実に抑えることができ、その結果、車室内の静粛性をより一層向上できる。また、前側カバー部材46と後側カバー部材48の上に配置された補機類への振動伝達が防止されるので、これらを振動から保護できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】この発明の実施形態の燃料電池自動車の側面透視図である。
【図2】この発明の実施形態の要部平面説明図である。
【図3】図2のA−A線に沿う断面図である。
【図4】燃料電池システムボックスの分解斜視図である。
【図5】燃料電池を取り付けたボックス本体の平面図である。
【図6】ボックス本体の平面図である。
【図7】図6のB−B線に沿う断面図である。
【図8】図6のC−C線に沿う断面図である。
【符号の説明】
【0022】
3 燃料電池
5 燃料電池システムボックス
26 下壁(下面)
31 前側スタックフレーム(骨格部材)
32 後側スタックフレーム(骨格部材)
41 サンドイッチパネル(プレート)
44 防振材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素と酸素の電気化学反応によって発電する燃料電池及びその補機類を収納する燃料電池システムボックスを搭載した燃料電池自動車において、前記燃料電池システムボックスの下面に車幅方向に延びる骨格部材を前側と後側に設け、これら前側と後側の骨格部材に燃料電池の両端部を固定すると共に、前後の骨格部材間に防振材を設けたことを特徴とする燃料電池自動車。
【請求項2】
前記防振材を前記前後に設けた骨格部材に固定されたプレートにより覆うことを特徴とする請求項1記載の燃料電池自動車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−176105(P2006−176105A)
【公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−311435(P2005−311435)
【出願日】平成17年10月26日(2005.10.26)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】