説明

燃料電池装置

【課題】ポンプにより改質器に水を間欠的に供給する際に生じる水蒸気の圧力変動による問題を解決して安定的にオートサーマル改質反応(ATR)を行うことができる燃料電池装置を提供する。
【解決手段】燃料電池装置は、起動時に、改質器内で部分酸化改質反応(POX)を行わせ、次に、改質器内でオートサーマル改質反応(ATR)を行わせ、次に、改質器内で水蒸気改質反応(SR)を行わせる制御手段を有し、水供給手段は、パルス制御により間欠的に極少量の水を改質器に供給するポンプを備え、制御手段は、各センサの出力に基づいて、燃料、改質用空気、水の目標供給量をそれぞれ供給できるように燃料供給手段、改質用空気供給手段及び水供給手段をそれぞれ制御し、制御手段は、さらに、ATRの領域では、少なくともポンプによる水の供給後の所定期間の間、燃料供給手段による燃料の供給量の変更を抑制する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池装置に係わり、特に、改質器により燃料を改質し、この改質された燃料と空気により燃料電池が発電を行う燃料電池装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、次世代エネルギーとして、燃料(水素ガス)と空気とを用いて発電して電力を得ることができる燃料電池と、この燃料電池を稼働するための補機類とを備えた燃料電池装置が種々提案されている。
【0003】
燃料電池の発電に必要な燃料(水素ガス)の生成方法の一つとして水蒸気改質法が知られており、例えば、特許文献1には、水蒸気改質を行うために、改質器に水(純水)を供給するための水供給手段として、貯水タンクに貯留された水を水供給管を介して水ポンプにより改質器へ供給するようにしたものが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−53209号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、詳細は後述するが、燃料電池装置の起動時には、先ず、改質器内に燃料と改質用空気を供給され、着火により、燃料が改質用空気により燃焼する部分酸化改質反応(POX)が行われ、次に、改質器内に、燃料、改質用空気、及び、水(純水)が供給され、部分酸化改質反応(POX)と後述する水蒸気改質反応(SR)とが併用されたオートサーマル改質反応(ATR)が進行し、その後、改質器内に燃料ガスと水(純水)が供給され、水蒸気改質反応(SR)が行われる。
【0006】
燃料電池装置においては、オートサーマル改質反応(ATR)及び水蒸気改質反応(SR)を行う際、改質器に水(純水)を供給する必要があるが、特に、水の供給量が非常に少ないATRの領域においては、毎分数ミリリットルという非常に微量な水を連続的に供給する必要がある。このような極微量な水を正確に安定的に供給するためには特殊なポンプを使用しなければならない。
【0007】
しかしながら、このような極微量な水を連続的に供給することができる特殊なポンプは、燃料電池装置のような比較的高温の環境下では使用が難しく、さらに、構造が複雑で値段も高価であることから、実際上の適用は困難な状況となっている。
【0008】
そこで、本発明者らは、鋭意研究を行うことにより、この極少量の水を供給するために、パルスポンプを用いて、パルス制御により間欠的に水を噴射して供給することを見出した。この方法によって、水の供給を間欠的にしたため、高温環境下でも使用でき、また構造が簡単で安価なポンプの使用が可能となり、更に、制御も簡易なパルス制御が可能となったものである。
【0009】
ところが、ATR領域において、水蒸気改質を行うためには、水を蒸発させる必要があるが、この水が気化する際に体積の増大によって改質器内の圧力が上がってしまう。そのため、水の供給が間欠的(断続的)で且つ少量であるため、水の供給時に短時間で水が蒸発して圧力が上昇し、その後すぐに反対に圧力がさがるという圧力変動が生じてしまう。このため、改質器内の圧力の上昇時には燃料ガスが改質器内に供給され難くなるために、圧力上昇時に燃料の供給量が目標値よりも少なくなる状態を燃料供給量検出センサが検出し、その直後に、燃料が不足していると判断して燃料を追加供給する増量制御が行われる。しかし、実際には圧力が次の瞬間に低下するために燃料は供給されやすい状態になってしまうので、上述した不足分の燃料増加が本来必要ないにもかかわらず供給されてしまい、結果的に、燃料ガスの過剰供給になってしまうという問題が発生した。このように、パルスポンプを用いて、パルス制御により間欠的に水を噴射して供給する場合には、ATR領域において、安定した燃料ガスの供給及び安定したオートサーマル改質反応が行えないという問題がある。
【0010】
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、ポンプにより改質器に水を間欠的に供給する際に生じる水蒸気の圧力変動による問題を解決して安定的にオートサーマル改質反応(ATR)を行うことができる燃料電池装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するために、本発明は、改質器により燃料を改質し、この改質された燃料と空気により燃料電池が発電を行う燃料電池装置であって、改質器に燃料を供給する燃料供給手段と、改質器に空気を供給する改質用空気供給手段と、純水を生成しこの純水を改質器に供給する水供給手段と、燃料供給手段による燃料供給量を検出する燃料供給量検出センサと、改質用空気供給手段による空気供給量を検出する空気供給量検出センサと、水供給手段による水供給量を検出する水供給量検出センサと、起動時に、燃料及び空気を供給して改質器内で部分酸化改質反応(POX)を行わせ、次に、燃料、空気、水を供給して改質器内でオートサーマル改質反応(ATR)を行わせ、次に、燃料及び水を供給して改質器内で水蒸気改質反応(SR)を行わせ、さらに、燃料供給手段による燃料供給量、改質用空気供給手段による空気供給量、及び、水供給手段による水供給量を制御する制御手段と、を有し、水供給手段は、パルス制御により間欠的に極少量の水を改質器に供給するポンプを備え、制御手段は、燃料供給量検出センサ、空気供給量検出センサ及び水供給量検出センサのそれぞれの出力に基づいて、目標燃料供給量、目標空気供給量及び水の目標供給量をそれぞれ供給できるように燃料供給手段、改質用空気供給手段及び水供給手段をそれぞれ制御し、制御手段は、さらに、ATRの領域では、少なくともポンプによる水の供給後の所定期間の間、燃料供給手段による燃料の供給量の変更を抑制することを特徴としている。
このように構成された本発明においては、先ず、ポンプを使用してパルス制御により間欠的に水を改質器に供給するようにしているので、高温環境下でも使用でき、また構造が簡単で安価なポンプの採用が可能となり、更に制御も簡易なパルス制御が可能となる。また、ATRの領域では、少なくともポンプによる水の供給後の所定期間の間、燃料供給手段による燃料の供給量の変更を抑制するようにしたので、上述した水の供給の直後に生じる燃料の過剰供給を防止することができ、その結果、構造が簡単で安価なポンプによる間欠制御であっても、ATRの領域において、安定した燃料供給、及び安定したオートサーマル改質反応が可能となる。
【0012】
本発明において、好ましくは、制御手段は、ポンプによる水の供給後の所定期間の間、燃料供給手段による燃料の供給を規制する。
このように構成された本発明においては、ポンプによる水の供給後の所定期間の間、燃料供給手段による燃料の供給が規制されるようにしたので、間欠的に水を改質器内に供給することにより生じる圧力変動に追従して燃料が過剰に供給されることを確実に防止できる。
【0013】
本発明において、好ましくは、制御手段は、ATRの領域では、燃料供給手段の制御ゲインを、POXの領域及びSRの領域よりも、低下させる。
このように構成された本発明においては、ATRの領域で、燃料供給手段の制御ゲインを起動時の他の領域に比べ最も低下させたので、極微量な水の供給が必要なATRの領域であっても間欠的に水を改質器内に供給することにより生じる圧力変動に起因した燃料の過剰供給や制御ハンチングを確実に防止することができる。
【0014】
本発明において、好ましくは、ATRの領域では、改質用空気供給手段による空気の供給量、及び、水供給手段による水の供給量を、それぞれ変更せずに一定量にした。
上述した燃料供給手段の制御ゲインを低下させたことにより、燃料供給量検出センサに基づいて燃料供給量を正確な状態に維持する制御能力が低下し、その結果制御遅れに起因した制御不良になることが考えられる。本発明においては、ATRの領域で、燃料供給量の制御に影響を与える空気の供給量及び水の供給量をそれぞれ変更せずに一定量に保持させて、燃料供給量の変更が積極的に生じないようにして、燃料供給手段の制御ゲインを低下させたことによる上述した制御不良の発生を確実に防止することができる。
【0015】
本発明において、好ましくは、ATRの領域は、水の供給量が少ないオートサーマル改質反応1(ATR1)の領域と、このATR1の後に運転され、ATR1より水の供給量が多いオートサーマル改質反応2(ATR2)の領域を有し、制御手段は、POXからATR1への移行時、及び、ATR1からATR2への移行時に、少なくとも水の目標供給量を変更するものであって、POXからATR1への移行時はATR1からATR2の移行時よりも水の目標供給量への単位時間当たりの変更量を小さくした。
本発明においては、ATRの領域で燃料供給手段の制御ゲインを低下させたことにより、特に水の少ないATR1では変動が大きくなるためPOXからATR1への移行時の目標燃料供給量の変更の際に燃料供給の追従遅れが発生して過剰な燃料な供給が行われる恐れがあるが、POXからATR1への水の目標供給量への単位時間当たりの変更量(目標値変更ゲイン)を小さくしたので、燃料供給手段の制御ゲインの低下に伴う目標燃料供給量への追従遅れを確実に防止することができ、制御を安定させることができる。
【0016】
本発明において、好ましくは、制御手段は、ATR1からATR2への移行時、及び、ATR2からSRへの移行時に、ぞれぞれ、燃料、空気、及び、水のそれぞれの目標供給量を変更すると共に、ATR1からATR2への移行時及びATR2からSRへの移行時に、それぞれ、燃料、空気、水の目標供給量への単位時間当たりの変更量を小さくし、且つ、それらの目標供給量への単位時間当たりの変更量を、ATR1からATR2の移行時の方が、ATR2からSRへの移行時よりも小さくなるようにした。
ATR1からATR2への移行時よりもATR2からSRへの移行時の方が、水が多く供給され、それにより、水が供給される間欠タイミングが密となり、改質器内の圧力変動が緩和されて圧力が高い状態で安定してくるので、圧力変動に伴う燃料の過剰供給の問題も緩和することができる。このため、本発明においては、燃料供給手段の制御ゲインの低下させると共に、目標供給量への単位時間当たりの変更量(目標値変更ゲイン)を、ATR1からATR2への移行時の方が、ATR2からりSRへの移行時の方よりも小さくするようにしたので、圧力変動に伴って発生する燃料の過剰供給やハンチング発生の問題と、目標燃料供給量に対する追従遅れの問題を高いレベルで上手にバランスさせて解決することが可能となる。
【0017】
本発明において、好ましくは、ATRの領域は、水の供給量が少ないオートサーマル改質反応1(ATR1)の領域と、このATR1の後に運転され、水の供給量がATR1より多いオートサーマル改質反応2(ATR2)の領域を有し、制御手段は、ATR1の領域及びATR2の領域での燃料供給手段の制御ゲインを、上記POXの領域又はSRの領域よりも低下させ、さらに、ATR2領域での燃料供給手段の制御ゲインの低下量をATR1の領域の制御ゲインの低下量よりも小さくした。
ATR2の領域の方がATR1の領域よりも水が多く供給され、それにより、水が供給される間欠タイミングが密となり、圧力が高い状態で安定してくるので、圧力変動に伴う燃料の過剰供給も緩和することができる。このため、本発明においては、ATR2領域での燃料供給手段の制御ゲイン低下量を、ATR1の領域のそれよりも小さくすることにより、燃料の過剰供給の抑制と目標燃料値への追従性能の低下を抑制して追従遅れの緩和を同時に図ることができる。
【0018】
本発明において、好ましくは、制御手段は、ATRの領域及びSRの領域での燃料供給手段の制御ゲインを、POXの領域よりも低下させるとともに、SRの領域における燃料供給手段の制御ゲインの低下量をATR領域の制御ゲインの低下量よりも小さくした。
SR領域の方がATR領域よりも水が多く供給され、それにより、水が供給される間欠タイミングが密となり、圧力が高い状態で安定してくるので、圧力変動に起因した燃料の過剰供給も緩和することができる。このため、本発明においては、SR領域における燃料供給手段の制御ゲインの低下量を、ATR領域の制御ゲインの低下量をより小さくすることにより、圧力変動に伴う燃料の過剰供給の抑制を図ると同時に、目標燃料供給量への追従遅れの緩和という相反する課題を高いレベルで両立することができる。
【0019】
本発明において、好ましくは、制御手段は、ATRの領域では、改質用空気供給手段の制御のゲインをPOXの領域よりも低下させる。
このように構成された本発明においては、ATRの領域で、燃料供給手段の制御ゲインと同様に、改質用空気供給手段の制御ゲインを低下させたので、間欠的に水を改質器内に供給することにより生じる圧力変動に起因した空気の過剰供給を防止することができる。
【0020】
本発明において、好ましくは、制御手段は、ATRの領域では、燃料供給手段の制御ゲインの低下量を改質用空気供給手段の制御ゲインの低下量よりも大きくする。
このように構成された本発明においては、間欠的な水供給に伴って発生する改質起内の圧力変動によって、燃料の供給量とともに改質器内に供給される改質用空気の供給量も変動してしまう。このため、本発明においては、改質器用空気供給手段の制御ゲインも低下させたため、過剰空気の供給、及び、制御ゲインハンチングの発生を一層確実に防止できる。また、改質器用空気の供給量は燃料の供給量と比べて非常に多いので、水が蒸発することにより生じる圧力変動の影響を、改質空気の方が燃料よりも受け難い。このため、本発明においては、改質器用空気供給手段の制御ゲインの低下量を燃料供給手段の制御ゲインの低下量よりも小さくしているので、無用に目標改質用空気供給量に対して追従遅れが発生することを確実に防止することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の燃料電池装置によれば、ポンプにより改質器に水を間欠的に供給する際に生じる水蒸気の圧力変動による問題を解決して安定的にオートサーマル改質反応(ATR)を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施形態による燃料電池装置を示す全体構成図である。
【図2】本発明の一実施形態による燃料電池装置の燃料電池モジュールを示す正面断面図である。
【図3】図2のIII-III線に沿って断面図である。
【図4】本発明の一実施形態による燃料電池装置の燃料電池セルユニットを示す部分断面図である。
【図5】本発明の一実施形態による燃料電池装置の燃料電池セルスタックを示す斜視図である。
【図6】本発明の一実施形態による燃料電池装置を示すブロック図である。
【図7】本発明の一実施形態による燃料電池装置の起動時の動作を示すタイムチャートである。
【図8】本発明の実施形態の変形例による燃料電池装置の起動時の動作を示すタイムチャートである。
【図9】本発明の一実施形態による燃料電池装置の水供給装置を示す概略図である。
【図10】本発明の一実施形態による燃料電池装置における燃料、水、及び改質用空気の供給量を制御するための制御内容を示すフローチャートである。
【図11】本発明の一実施形態によるATRの領域における改質器内の状態等を示すタイムチャートである。
【図12】本発明の他の実施形態による燃料電池装置における燃料、水、及び改質用空気の供給量を制御するための制御内容を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
次に、添付図面を参照して、本発明の実施形態による固体電解質型燃料電池(以下「SOFC」又は「燃料電池装置」と言う。)を説明する。
図1は、本発明の一実施形態によるSOFCを示す全体構成図である。この図1に示すように、本発明の一実施形態によるSOFC1は、燃料電池モジュール2と、補機ユニット4を備えている。
【0024】
燃料電池モジュール2は、ハウジング6を備え、このハウジング6内部には、断熱材(図示せず但し断熱材は必須の構成ではなく、なくても良いものである。)を介して密封空間8が形成されている。なお、断熱材は設けないようにしても良い。この密閉空間8の下方部分である発電室10には、燃料ガスと酸化剤(空気)とにより発電反応を行う燃料電池セル集合体12が配置されている。この燃料電池セル集合体12は、10個の燃料電池セルスタック14(図5参照)を備え、この燃料電池セルスタック14は、16本の燃料電池セルユニット16(図4参照)から構成されている。このように、燃料電池セル集合体12は、160本の燃料電池セルユニット16を有し、これらの燃料電池セルユニット16の全てが直列接続されている。
【0025】
燃料電池モジュール2の密封空間8の上述した発電室10の上方には、燃焼室18が形成され、この燃焼室18で、発電反応に使用されなかった残余の燃料ガスと残余の酸化剤(空気)とが燃焼し、排気ガスを生成するようになっている。
また、この燃焼室18の上方には、燃料ガスを改質する改質器20が配置され、上述した残余ガスの燃焼熱によって改質器20を改質反応が可能な温度となるように加熱している。さらに、この改質器20の上方には、燃焼熱を受けて空気を加熱するための空気用熱交換器22が配置されている。
【0026】
次に、補機ユニット4は、水道等の水供給源24からの水を貯水してフィルターにより純水とする純水タンク26と、この貯水タンクから供給される水の流量を調整する水流量調整ユニット28(モータで駆動される「水ポンプ」等)を備えている。また、補機ユニット4は、都市ガス等の燃料供給源30から供給された燃料ガスを遮断するガス遮断弁32と、燃料ガスから硫黄を除去するための脱硫器36と、燃料ガスの流量を調整する燃料流量調整ユニット38(モータで駆動される「燃料ポンプ」等)を備えている。さらに、補機ユニット4は、空気供給源40から供給される酸化剤である空気を遮断する電磁弁42と、空気の流量を調整する改質用空気流量調整ユニット44(モータで駆動される「空気ブロア」等)及び発電用空気流量調整ユニット45(モータで駆動される「空気ブロア」等)と、改質器20に供給される改質用空気を加熱する第1ヒータ46と、発電室に供給される発電用空気を加熱する第2ヒータ48とを備えている。これらの第1ヒータ46と第2ヒータ48は、起動時の昇温を効率よく行うために設けられているが、省略しても良い。
【0027】
次に、燃料電池モジュール2には、排気ガスが供給される温水製造装置50が接続されている。この温水製造装置50には、水供給源24から水道水が供給され、この水道水が排気ガスの熱により温水となり、図示しない外部の給湯器の貯湯タンクへ供給されるようになっている。
また、燃料電池モジュール2には、燃料ガスの供給量等を制御するための制御ボックス52が取り付けられている。
さらに、燃料電池モジュール2には、燃料電池モジュールにより発電された電力を外部に供給するための電力取出部(電力変換部)であるインバータ54が接続されている。
【0028】
次に、図2及び図3により、本発明の実施形態によるSOFCの燃料電池モジュールの内部構造を説明する。図2は、本発明の一実施形態によるSOFCの燃料電池モジュールを示す側面断面図であり、図3は、図2のIII-III線に沿って断面図である。
図2及び図3に示すように、燃料電池モジュール2のハウジング6内の密閉空間8には、上述したように、下方から順に、燃料電池セル集合体12、改質器20、空気用熱交換器22が配置されている。
【0029】
改質器20は、その上流端側に純水を導入するための純水導入管60と改質される燃料ガスと改質用空気を導入するための被改質ガス導入管62が取り付けられ、また、改質器20の内部には、上流側から順に、蒸発部20aと改質部20bを形成され、改質部20bには改質触媒が充填されている。この改質器20に導入された水蒸気(純水)が混合された燃料ガス及び空気は、改質器20内に充填された改質触媒により改質される。改質触媒としては、アルミナの球体表面にニッケルを付与したものや、アルミナの球体表面にルテニウムを付与したものが適宜用いられる。
【0030】
この改質器20の下流端側には、燃料ガス供給管64が接続され、この燃料ガス供給管64は、下方に延び、さらに、燃料電池セル集合体12の下方に形成されたマニホールド66内で水平に延びている。燃料ガス供給管64の水平部64aの下方面には、複数の燃料供給孔64bが形成されており、この燃料供給孔64bから、改質された燃料ガスがマニホールド66内に供給される。
【0031】
このマニホールド66の上方には、上述した燃料電池セルスタック14を支持するための貫通孔を備えた下支持板68が取り付けられており、マニホールド66内の燃料ガスが、燃料電池セルユニット16内に供給される。
【0032】
次に、改質器20の上方には、空気用熱交換器22が設けられている。この空気用熱交換器22は、上流側に空気集約室70、下流側に2つの空気分配室72を備え、これらの空気集約室70と空気分配室72は、6個の空気流路管74により接続されている。ここで、図3に示すように、3個の空気流路管74が一組(74a,74b,74c,74d,74e,74f)となっており、空気集約室70内の空気が各組の空気流路管74からそれぞれの空気分配室72へ流入する。
【0033】
空気用熱交換器22の6個の空気流路管74内を流れる空気は、燃焼室18で燃焼して上昇する排気ガスにより予熱される。
空気分配室72のそれぞれには、空気導入管76が接続され、この空気導入管76は、下方に延び、その下端側が、発電室10の下方空間に連通し、発電室10に余熱された空気を導入する。
【0034】
次に、マニホールド66の下方には、排気ガス室78が形成されている。また、図3に示すように、ハウジング6の長手方向に沿った面である前面6aと後面6bの内側には、上下方向に延びる排気ガス通路80が形成され、この排気ガス通路80の上端側は、空気用熱交換器22が配置された空間と連通し、下端側は、排気ガス室78と連通している。また、排気ガス室78の下面のほぼ中央には、排気ガス排出管82が接続され、この排気ガス排出管82の下流端は、図1に示す上述した温水製造装置50に接続されている。
図2に示すように、燃料ガスと空気との燃焼を開始するための点火装置83が、燃焼室18に設けられている。
【0035】
次に図4により燃料電池セルユニット16について説明する。図4は、本発明の一実施形態によるSOFCの燃料電池セルユニットを示す部分断面図である。
図4に示すように、燃料電池セルユニット16は、燃料電池セル84と、この燃料電池セル84の上下方向端部にそれぞれ接続された内側電極端子86とを備えている。
燃料電池セル84は、上下方向に延びる管状構造体であり、内部に燃料ガス流路88を形成する円筒形の内側電極層90と、円筒形の外側電極層92と、内側電極層90と外側電極層92との間にある電解質層94とを備えている。この内側電極層90は、燃料ガスが通過する燃料極であり、(−)極となり、一方、外側電極層92は、空気と接触する空気極であり、(+)極となっている。
【0036】
燃料電池セル16の上端側と下端側に取り付けられた内側電極端子86は、同一構造であるため、ここでは、上端側に取り付けられた内側電極端子86について具体的に説明する。内側電極層90の上部90aは、電解質層94と外側電極層92に対して露出された外周面90bと上端面90cとを備えている。内側電極端子86は、導電性のシール材96を介して内側電極層90の外周面90bと接続され、さらに、内側電極層90の上端面90cとは直接接触することにより、内側電極層90と電気的に接続されている。内側電極端子86の中心部には、内側電極層90の燃料ガス流路88と連通する燃料ガス流路98が形成されている。
【0037】
内側電極層90は、例えば、Niと、CaやY、Sc等の希土類元素から選ばれる少なくとも一種をドープしたジルコニアとの混合体、Niと、希土類元素から選ばれる少なくとも一種をドープしたセリアとの混合体、Niと、Sr、Mg、Co、Fe、Cuから選ばれる少なくとも一種をドープしたランタンガレードとの混合体、の少なくとも一種から形成される。
【0038】
電解質層94は、例えば、Y、Sc等の希土類元素から選ばれる少なくとも一種をドープしたジルコニア、希土類元素から選ばれる少なくとも一種をドープしたセリア、Sr、Mgから選ばれる少なくとも一種をドープしたランタンガレート、の少なくとも一種から形成される。
【0039】
外側電極層92は、例えば、Sr、Caから選ばれた少なくとも一種をドープしたランタンマンガナイト、Sr、Co、Ni、Cuから選ばれた少なくとも一種をドープしたランタンフェライト、Sr、Fe、Ni、Cuから選ばれた少なくとも一種をドープしたランタンコバルタイト、銀、などの少なくとも一種から形成される。
【0040】
次に図5により燃料電池セルスタック14について説明する。図5は、本発明の一実施形態によるSOFCの燃料電池セルスタックを示す斜視図である。
図5に示すように、燃料電池セルスタック14は、16本の燃料電池セルユニット16を備え、これらの燃料電池セルユニット16の下端側及び上端側が、それぞれ、セラミック製の下支持板68及び上支持板100により支持されている。これらの下支持板68及び上支持板100には、内側電極端子86が貫通可能な貫通穴68a及び100aがそれぞれ形成されている。
【0041】
さらに、燃料電池セルユニット16には、集電体102及び外部端子104が取り付けられている。この集電体102は、燃料極である内側電極層90に取り付けられた内側電極端子86と電気的に接続される燃料極用接続部102aと、空気極である外側電極層92の外周面全体と電気的に接続される空気極用接続部102bとにより一体的に形成されている。空気極用接続部102bは、外側電極層92の表面を上下方向に延びる鉛直部102cと、この鉛直部102cから外側電極層92の表面に沿って水平方向に延びる多数の水平部102dとから形成されている。また、燃料極用接続部102aは、空気極用接続部102bの鉛直部102cから燃料電池セルユニット16の上下方向に位置する内側電極端子86に向って斜め上方又は斜め下方に向って直線的に延びている。
【0042】
さらに、燃料電池セルスタック14の端(図5では左端の奥側及び手前側)に位置する2個の燃料電池セルユニット16の上側端及び下側端の内側電極端子86には、それぞれ外部端子104が接続されている。これらの外部端子104は、隣接する燃料電池セルスタック14の端にある燃料電池セルユニット16の外部端子104(図示せず)に接続され、上述したように、160本の燃料電池セルユニット16の全てが直列接続されるようになっている。
【0043】
次に図6により本実施形態によるSOFCに取り付けられたセンサ類等について説明する。図6は、本発明の一実施形態によるSOFCを示すブロック図である。
図6に示すように、燃料電池装置1は、制御部110を備え、この制御部110には、使用者が操作するための「ON」や「OFF」等の操作ボタンを備えた操作装置112、発電出力値(ワット数)等の種々のデータを表示するための表示装置114、及び、異常状態のとき等に警報(ワーニング)を発する報知装置116が接続されている。なお、この報知装置116は、遠隔地にある管理センタに接続され、この管理センタに異常状態を通知するようなものであっても良い。
【0044】
次に、制御部110には、以下に説明する種々のセンサからの信号が入力されるようになっている。
先ず、可燃ガス検出センサ120は、ガス漏れを検知するためのもので、燃料電池モジュール2及び補機ユニット4に取り付けられている。
CO検出センサ122は、本来排気ガス通路80等を経て外部に排出される排気ガス中のCOが、燃料電池モジュール2及び補機ユニット4を覆う外部ハウジング(図示せず)へ漏れたかどうかを検知するためのものである。
貯湯状態検出センサ124は、図示しない給湯器におけるお湯の温度や水量を検知するためのものである。
【0045】
電力状態検出センサ126は、インバータ54及び分電盤(図示せず)の電流及び電圧等を検知するためのものである。
発電用空気流量検出センサ128は、発電室10に供給される発電用空気の流量を検出するためのものである。
改質用空気流量センサ130は、改質器20に供給される改質用空気の流量を検出するためのものである。
燃料流量センサ132は、改質器20に供給される燃料ガスの流量を検出するためのものである。
【0046】
水流量センサ134は、改質器20に供給される純水(水蒸気)の流量を検出するためのものである。
水位センサ136は、純水タンク26の水位を検出するためのものである。
圧力センサ138は、改質器20の外部の上流側の圧力を検出するためのものである。
排気温度センサ140は、温水製造装置50に流入する排気ガスの温度を検出するためのものである。
【0047】
発電室温度センサ142は、図3に示すように、燃料電池セル集合体12の近傍の前面側と背面側に設けられ、燃料電池セルスタック14の近傍の温度を検出して、燃料電池セルスタック14(即ち燃料電池セル84自体)の温度を推定するためのものである。
燃焼室温度センサ144は、燃焼室18の温度を検出するためのものである。
排気ガス室温度センサ146は、排気ガス室78の排気ガスの温度を検出するためのものである。
改質器温度センサ148は、改質器20の温度を検出するためのものであり、改質器20の入口温度と出口温度から改質器20の温度を算出する。
外気温度センサ150は、固体電解質型燃料電池(SOFC)が屋外に配置された場合、外気の温度を検出するためのものである。また、外気の湿度等を測定するセンサを設けるようにしても良い。
【0048】
これらのセンサ類からの信号は、制御部110に送られ、制御部110は、これらの信号によるデータに基づき、水流量調整ユニット28、燃料流量調整ユニット38、改質用空気流量調整ユニット44、発電用空気流量調整ユニット45に、制御信号を送り、これらのユニットにおける各流量を制御するようになっている。
また、制御ユニット110は、インバータ54に、制御信号を送り、電力供給量を制御するようになっている。
【0049】
次に図7により本実施形態によるSOFCによる起動時の動作を説明する。図7は、本発明の一実施形態によるSOFCの起動時の動作を示すタイムチャートである。
先ず、本実施形態によるSOFCによる起動時の概要を説明する。SOFCは、起動時において、燃料ガスを着火する燃焼運転、部分酸化改質反応(POX)、オートサーマル改質反応(ATR)、水蒸気改質反応(SR)を経て、発電運転に以降する。
【0050】
ここで、部分酸化改質反応(POX)の領域においては、改質器20に燃料ガスと改質用空気が供給され、改質器20において、式(1)に示す部分酸化改質反応POXが進行する。この部分酸化改質反応POXは、発熱反応であるので、起動性が良好となる。
【0051】
mn+xO2 → aCO2+bCO+cH2 (1)
【0052】
次に、オートサーマル改質反応ATRは、上述した部分酸化改質反応POXと後述する水蒸気改質反応SRとが併用された領域であり、水の供給量が少ないオートサーマル改質反応ATR1と、このATR1の後に運転され、ATR1より水の供給量が多いオートサーマル改質反応ATR2とを有する。これらのATR1とATR2の領域では、改質器20に、燃料ガス、改質用空気、及び、水が供給され、改質器20において、式(2)に示すオートサーマル改質反応ATR(ATR1,ATR2)が進行する。このオートサーマル改質反応ATRは、熱的に内部バランスが取れるので、改質器20内では熱的に自立した状態で反応が進行する。
mn+xO2+yH2O → aCO2+bCO+cH2 (2)
【0053】
次に、水蒸気改質反応SRは、燃料ガス及び水の供給量が多い水蒸気改質反応SR1と、このSR1の後に運転され、S1より燃料ガス及び水の供給量が少ない水蒸気改質反応SR2とを有する。これらのSR1とSR2の領域では、改質器20に、燃料ガスと水が供給され(改質用空気の供給は停止される)、改質器20において、式(3)に示す水蒸気改質反応SR(SR1,SR2)が進行する。この水蒸気改質反応SRは吸熱反応であるので、燃焼室18からの燃焼熱と熱バランスをとりながら反応が進行する。
mn+xH2O → aCO2+bCO+cH2 (3)
【0054】
次に、図7により、上述した燃焼運転、部分酸化改質反応(POX)、オートサーマル改質反応(ATR)、水蒸気改質反応(SR)の各領域における、燃料ガス、改質用空気、水の供給について、詳細に説明する。
図7の時刻t0において、固体電解質型燃料電池1を起動すると、改質用空気供給手段である改質用空気流量調整ユニット44及び発電用空気供給手段である発電用空気流量調整ユニット45により、改質用空気及び発電用空気を燃料電池モジュール2に供給する。なお、本実施形態においては、時刻t0において供給が開始される改質用空気の供給量は10L/min、発電用空気の供給量は100L/minである。
【0055】
次に、時刻t1において、燃料供給手段である燃料流量調整ユニット38により、改質器20への燃料ガスの供給を開始する。各燃料電池セルユニット16内に送り込まれた燃料及び改質用空気は、各燃料電池セルユニット16の上端から夫々流出する。なお、本実施形態においては、時刻t1において供給が開始される燃料ガスの供給量は6L/minに設定されている。
【0056】
さらに、時刻t2において、点火装置83により、燃料電池セルユニット16から流出した燃料が着火される。これにより、燃焼室18内で燃料が燃焼され、その上方に配置された改質器20が加熱されると共に、燃焼室18、発電室10、及びその中に配置された燃料電池セルスタック14の温度も上昇する(図7の時刻t2〜t3)。改質器20が加熱されることにより、改質器20の温度が300゜C程度まで上昇すると、改質器20内においては、部分酸化改質反応(POX)が発生する(図7の時刻t3)。部分酸化改質反応は発熱反応であるため、改質器20は、部分酸化改質反応の発生により、その反応熱によっても加熱されるようになる。
【0057】
さらに温度が上昇し、改質器20の温度が350゜Cに達すると、燃料供給量を減少させると共に、改質用空気供給量を増加させる(図7の時刻t4)。これにより、燃料供給量は5L/minに変更され、改質用空気供給量は18L/minに変更される(POX1領域)。これらの供給量は、部分酸化改質反応を発生させるために適正な供給量である。即ち、部分酸化改質反応が発生し始める初期の温度領域においては、供給する燃料を多くすることにより、燃料に確実に着火される状態を形成すると共に、その供給量を維持して着火を安定させる(POX1領域)。さらに、安定して着火され、温度が上昇した後には、部分酸化改質反応を生成するために必要にして十分な燃料供給量として、燃料の浪費を抑えている(POX2領域)。
【0058】
次に、図7の時刻t5において、改質器20の温度が600゜C以上、且つ、燃料電池セルユニット16の温度が250゜C以上になると、改質用空気供給量を減少させると共に、水供給手段である水流量調整ユニット28により、水の供給を開始させる。これにより、改質用空気供給量は8L/minに変更され、水供給量は2cc/minにされる(ATR1領域)。改質器20内に水(水蒸気)が導入されることにより、改質器20内で水蒸気改質反応も発生するようになる。即ちATR1領域態においては、部分酸化改質反応と水蒸気改質反応が混在したオートサーマル改質(ATR)が発生するようになる。
【0059】
さらに、図7の時刻t6において、改質器20の温度が600゜C以上、且つ、燃料電池セルユニット16の温度が400゜C以上になると、燃料供給量を減少させる。また、改質用空気供給量を減少させると共に、水の供給量を増加させる。これにより、燃料供給量は4L/minに変更され、改質用空気供給量は4L/minに変更され、水供給量は3cc/minにされる(ATR2領域)。改質用空気供給量が減少され、水供給量が増加されることにより、改質器20内においては、部分酸化改質反応の割合が減少し、水蒸気改質反応の割合が増加する。
【0060】
次に、図7の時刻t7において、改質器20の温度が650゜C以上、且つ、燃料電池セルユニット16の温度が600゜C以上になると、改質用空気の供給を停止する。また、燃料供給量を減少させると共に、水の供給量を増加させる。これにより、燃料供給量は3L/minに変更され、水供給量は8cc/minに変更される(SR1領域)。改質用空気の供給が停止されることにより、改質器20内においては、部分酸化改質反応は発生しなくなり、水蒸気改質反応(SR)のみとなる。
【0061】
さらに、図7の時刻t8において、改質器20の温度が650゜C以上、且つ、燃料電池セルユニット16の温度が700゜C以上になると、燃料供給量を減少させると共に、水の供給量も減少させる。また、発電用空気の供給量も減少させる。これにより、燃料供給量は発電待機燃料供給量である2.3L/minに変更され、水供給量は6.3cc/minに変更され、発電用空気供給量は80L/minに変更される(SR2領域)。
【0062】
この後、燃料電池モジュール2からインバータ54に電力を出力させ、発電を開始する(図7の時刻t9)。発電開始後の燃料供給量、発電用空気供給量、及び水供給量は、要求電力に応じて決定され、供給される。
【0063】
次に、図8により、本実施形態の変形例によるSOFCによる起動時の動作を説明する。図8は、本発明の実施形態の変形例によるSOFCの起動時の動作を示すタイムチャートである。
この図8に示すように、この本実施形態の変形例においては、オートサーマル改質反応(ATR)は、ART1とATR2と言う2つの領域を有さず、このATR領域において、発電用空気、燃料、水、改質用空気のぞれぞれの供給量が変化せず一定量が改質器20に供給されるようになっている。
また、水蒸気改質反応(SR)も、SR1とSR2と言う2つの領域を有さず、このSR領域において、発電用空気、燃料、水のぞれぞれの供給量が変化せず一定量が改質器20に供給されるようになっている。
【0064】
次に、図9により、本実施形態による水供給装置(水流量調整ユニット28)について詳細に説明する。図8は、本発明の一実施形態によるSOFCの水供給装置を示す概略図である。
図9に示すように、水供給装置(水流量調整ユニット28)は、水道水を一時的に貯蔵する水タンク152と、水を供給するポンプ154と、この供給された水を浄化して純水を生成するためのRO膜(逆浸透膜)156と、生成された純水を一時的に貯蔵する純水タンク26と、この純水を燃料電池モジュール2の改質器20にパルス制御により間欠的に供給するパルスポンプ160とを備えている。また、水及び純水が凍結するのを防止するための、熱交換器162やヒーター164も備えている。
【0065】
次に、図10により、本実施形態による、POX領域、ATR(ATR1,ATR2)領域、SR(SR1,SR2)領域、及び、発電領域における、燃料、水、及び改質用空気の供給量の制御内容を説明する。図10は、本発明の一実施形態による燃料電池装置における燃料、水、及び改質用空気の供給量を制御するための制御内容を示すフローチャートである。図10において、Sは各ステップを示している。
【0066】
先ず、燃料電池装置の起動時に、S1において、POX領域か否かを判定する。上述したように、改質器20の温度が300℃以上であれば、POX領域であると判定する。POX領域であれば、S2に進み、POX領域における制御ゲインを設定する。燃料については、燃料供給手段である燃料流量調整ユニット38の制御ゲインτaを基準の制御ゲインτa1と同じ値に設定する(τa=τa1)。改質用空気ついては、改質用空気供給手段である改質用空気流量調整ユニット44の制御ゲインτbを基準の制御ゲインτb1と同じ値に設定する(τb=τb1)。なお、POX領域では改質器20に水は供給されない。なお、制御ゲインを変更しているが、制御の補正量そのものは変更せず従前の値そのもの引き継いでいるものであり、制御ゲインの低下によって変動を抑制して滑らかに出力が変化するように構成されているものである。
【0067】
次に、S2において、POX領域でないと判定されたときは、S3に進み、ATR領域か否かを判定する。上述したように、改質器20の温度が600℃以上、且つ、燃料電池セルユニット16の温度(=発電室温度)が250℃以上であれば、ATR領域であると判定し、S4に進む。S4において、改質器20の温度が600℃以上で、且つ、燃料電池セルユニット16の温度(=発電室温度)が250℃以上400℃以下であれば、ATR1領域であるので、S5に進む。
【0068】
S5において、ATR1領域における制御ゲインを設定する。即ち、燃料については、燃料供給手段である燃料流量調整ユニット38の制御ゲインτaを基準の制御ゲインτa1よりも低下させた小さな値に設定する(τa=τa1×0.6)。改質用空気ついても、同様に、改質用空気供給手段である改質用空気流量調整ユニット44の制御ゲインτbを基準の制御ゲインτb1よりも低下させた小さな値に設定する(τb=τb1×0.9)。さらに、水についても、同様に、水供給手段である水流量調整ユニット28の制御ゲインτcを基準の制御ゲインτc1よりも低下させた小さな値に設定する(τc=τc1×0.8)。このように、ATR1領域では、水供給に伴う圧力変動の要因に基づく過剰燃料の供給等の影響を抑えるように燃料の制御ゲインが低下され、それと対応できるように燃料の制御ゲイン以外のゲインも低下されており、最も影響の大きい燃料の制御ゲインτaの低下量が改質空気及び水の制御ゲインの低下量よりも大きくなるように設定されている。
【0069】
次に、S4において、ATR1領域であるか否かを判定する。改質器20の温度が600℃以上、且つ、燃料電池セルユニット16の温度(=発電室温度)が400℃以上であれば、ATR1領域ではなくATR2領域であるので、S6に進む。
【0070】
S6において、ATR2領域における制御ゲインを設定する。即ち、燃料については、燃料供給手段である燃料流量調整ユニット38の制御ゲインτaを基準の制御ゲインτa1よりも低下させた小さな値に設定する(τa=τa1×0.7)。改質用空気ついても、同様に、改質用空気供給手段である改質用空気流量調整ユニット44の制御ゲインτbを基準の制御ゲインτb1よりも低下させた小さな値に設定する(τb=τb1×0.9)。さらに、水についても、同様に、水供給手段である水流量調整ユニット28の制御ゲインτcを基準の制御ゲインτc1よりも低下させた小さな値に設定する(τc=τc1×0.9)。このように、ATR2領域では、燃料の制御ゲインの低下量が改質空気及び水の制御ゲインの低下量よりも大きく設定されている。また、ATR2領域の燃料の制御ゲイン及び水ゲインの低下量をATR1領域の燃料の制御ゲインの低下量よりも緩和するように小さくしている。これは水の供給量の増加とともに圧力変動の要因が緩和されることに対応させたものである。
【0071】
次に、S3において、ATR領域ではないと判定されたときには、S7に進み、SR領域であるか否かを判定する。上述したように、改質器20の温度が650℃以上、且つ、燃料電池セルユニット16の温度(=発電室温度)が600℃以上の場合には、SR領域であるので、S8に進み、SR1とSR2の領域の制御ゲインを設定する。燃料については、燃料供給手段である燃料流量調整ユニット38の制御ゲインτaを基準の制御ゲインτa1よりも低下させた小さな値に設定する(τa=τa1×0.9)。水については、水供給手段である水流量調整ユニット28の制御ゲインτcを基準の制御ゲインτc1と同じ値に設定する(τc=τc1)。なお、SR1及びSR2の領域においては、改質用空気は供給しない。
【0072】
次に、S7において、SR領域ではないと判定された場合には、発電運転領域であるので、S9に進む。S9においては、燃料については、燃料供給手段である燃料流量調整ユニット38の制御ゲインτaを基準の制御ゲインτa1と同じ値に設定する(τa=τa1)。水についても、同様に、水供給手段である水流量調整ユニット28の制御ゲインτcを基準の制御ゲインτc1と同じ値に設定する(τc=τc1)。
【0073】
次に、S11に進み、燃料流量調整ユニット38、改質用空気流量調整ユニット44、及び、水流量調整ユニット28を、それぞれ、設定した制御ゲインで、燃料、改質用空気、及び、水を、改質器20に供給する。
【0074】
次に、再び、図7を参照して、本実施形態によるPOX領域からATR領域への移行時、ATR領域からSR領域への移行時等における、燃料、改質用空気、及び、水の供給量(目標供給量)の変更量について説明する。
【0075】
先ず、燃料の供給量(目標供給量)は、ART1からATR2への移行時(図7の時刻t6)、及び、ATR2からSR1への移行時(図7の時刻t7)において、それぞれ、目標供給量まで低減されるように変更される。ART1からATR2への移行時における、燃料の目標供給量への単位時間あたりの変更量(目標値変更ゲイン)は、ATR2からSR1への移行時よりも、小さい値となっている。具体的には、図7において、Aで示される単位時間あたりの変更量は、Bで示される単位時間あたりの変更量よりも小さい値(傾きが緩い)となっている。
【0076】
次に、水の供給量(目標供給量)は、先ず、POXからATR1への移行時(図7の時刻t5)、及び、ATR1からATR2(図7の時刻t6)への移行時において、それぞれ、目標供給量まで増加されるようになっている。ATR1からATR2への移行時における、水の目標供給量への単位時間あたりの変更量(目標値変更ゲイン)は、POXからATR1への移行時よりも、小さい値となっている。具体的には、図7において、Dで示される単位時間あたりの変更量は、Cで示される単位時間あたりの変更量よりも小さい値(傾きが緩い)となっている。
【0077】
さらに、水の供給量(目標供給量)は、ATR2からSR1への移行時(図7の時刻t7)において、目標供給量まで増加されるように変更される。ART1からATR2への移行時における、水の目標供給量への単位時間あたりの変更量(目標値変更ゲイン)は、ATR2からSR1への移行時よりも、小さい値となっている。具体的には、図7において、Dで示される単位時間あたりの変更量は、Eで示される単位時間あたりの変更量よりも小さい値(傾きが緩い)となっている。
【0078】
次に、改質用空気の供給量(目標供給量)は、ART1からATR2への移行時(図7の時刻t6)、及び、ATR2からSR1への移行時(図7の時刻t7)において、それぞれ、目標供給量まで低減されるように変更される。ART1からATR2への移行時における、燃料の目標供給量への単位時間あたりの変更量(目標値変更ゲイン)は、ATR2からSR1への移行時よりも、小さい値となっている。具体的には、図7において、Fで示される単位時間あたりの変更量は、Gで示される単位時間あたりの変更量よりも小さい値(傾きが緩い)となっている。
【0079】
次に、図7乃至図11を参照して、上述した本実施形態による燃料電池装置の作用(動作)を説明する。図11は、本発明の一実施形態によるATRの領域における改質器内の状態等を示すタイムチャートである。
先ず、従来、水の供給量が非常に少ないATRの領域においては、毎分数ミリリットルという極微量な水を正確に安定的に供給するために高価な特殊なポンプを使用しなければならないたが、本実施形態においては、図10に示したように、従来の高価な特殊なポンプの代わりにパルスポンプ160を使用してパルス制御により間欠的に水を改質器20に供給するようにしているので、構造が簡単で安価なポンプの採用が可能となり、更に制御も簡易なパルス制御が可能となる。
【0080】
次に、本実施形態においては、図10に示したように、ART1及びATR2の領域において、燃料供給手段である燃料流量調整ユニット38の制御ゲインτaを基準の制御ゲインτa1よりも低下させた小さな値(τa=τa1×0.6及びτa=τa1×0.7)に設定している。このためATR領域においては、改質器20内に燃料を供給するとき、燃料の供給量は、目標供給量に対して追従遅れが生じる。
【0081】
図11により、このときのATR(ATR1及びATR2)の領域における改質器内の状態を図11により説明する。
先ず、水の供給については、水供給手段である水流量調整ユニット28のパルスポンプ160により、パルス状の水供給制御信号に基づき、間欠的に極少量の水が改質器20内へ供給される。この水が改質器内で水蒸気となるので、水が供給された直後に、改質器20内の圧力が上昇する。この改質器内の圧力上昇により、燃料が改質器20内に供給され難くなる。このため、図11において、燃料供給量(比較例:基準の制御ゲイン使用)として示すように、圧力上昇時に燃料の供給量が目標値よりも少なくなる状態を燃料供給量検出センサが検出し、その直後に、燃料が不足していると判断して燃料を追加供給する増量制御が行われる。しかし、実際には圧力が次の瞬間に低下するために燃料は供給されやすい状態になってしまうので、不足分の燃料増加が本来必要ないにもかかわらず供給されてしまい、結果的に、燃料ガスの過剰供給になってしまう。
【0082】
このような燃料供給量の比較例として示した燃料の過剰供給を防止するため、本実施形態においては、図11において、燃料供給量(本実施形態)として示すように、ATRの領域では、燃料供給手段である燃料流量調整ユニット38の制御ゲインを低下させて、目標供給量に対して追従遅れが生じるようにしたので、上述した水供給直後に生じる改質器内の圧力上昇に起因する燃料の過剰供給を防止することができる。
このように、本実施形態によれば、パルスポンプ160による改質器への水の供給の後(所定期間の間)、燃料の供給量の変化を制御ゲインを低下させることにより抑制するようにしたので、上述した水の供給の直後に生じる燃料の過剰供給を防止することができ、その結果、構造が簡単で安価なポンプによる間欠制御であっても、ATRの領域において、安定した燃料供給、及び安定したオートサーマル改質反応が可能となる。
【0083】
次に、本実施形態においては、図10に示したように、ATR(ATR1及びATR2)の領域では、燃料供給手段である燃料流量調整ユニット38の制御ゲイン(τa=τa1×0.6及びτa=τa1×0.7)を、POXの領域(τa=τa1)及びSRの領域(τa=τa1)よりも、低下させている。この結果、本実施形態によれば、ATRの領域で、燃料供給手段(燃料流量調整ユニット38)の制御ゲインを起動時の他の領域であるPOX領域及びSR領域に比べ最も低下させたので、極微量な水の供給が必要なATRの領域であっても、間欠的に水を改質器20内に供給することにより生じる圧力変動に起因した燃料の過剰供給や制御ハンチングを確実に防止することができる。
【0084】
次に、上述したように、ATR領域において、燃料供給手段(燃料流量調整ユニット38)の制御ゲインを他の領域よりも低下させたことにより、燃料流量センサ132に基づいて燃料供給量を正確な状態に維持する制御能力が低下し、その結果制御遅れに起因した制御不良になることが考えられる。しかしながら、本実施形態においては、図8に示したように、ATR領域では、改質用空気供給手段である改質用空気流量調整ユニット44による空気の供給量、及び、水供給手段である水流量調整ユニット28による水の供給量を、それぞれ変更せずに一定量にしている。この結果、本実施形態においては、ATRの領域で、燃料供給量の制御に影響を与える空気の供給量及び水の供給量をそれぞれ変更せずに一定量に保持させて、燃料供給量の変更が積極的に生じないようにして、燃料供給手段(燃料流量調整ユニット38)の制御ゲインを低下させたことによる制御不良の発生を確実に防止することができる。
【0085】
なお、本実施形態においては、図7に示すように、ATR1及びATR2のぞれぞれの領域において、同様に、改質用空気供給手段である改質用空気流量調整ユニット44による空気の供給量、及び、水供給手段である水流量調整ユニット28による水の供給量を、それぞれ変更せずに一定量にしている。これにより、同様な効果を得ることができる。
【0086】
次に、図7に示すように、本実施形態においては、POXからATR1への移行時(図7の時刻t5)、及び、ATR1からATR2への移行時(図7のt6)に、水の目標供給量を変更し、このとき、POXからATR1への移行時はATR1からATR2の移行時よりも水の目標供給量への単位時間当たりの変更量を小さくした。この結果、本実施形態においては、ATRの領域で燃料供給手段(燃料流量調整ユニット38)の制御ゲインを低下させたことにより、特にPOXからATR1への移行時の目標燃料供給量の変更の際に燃料供給の追従遅れが発生する恐れがあるが、POXからATR1への水の目標供給量への単位時間当たりの変更量(目標値変更ゲイン)を小さくしたので、燃料供給手段(燃料流量調整ユニット38)の制御ゲインの低下に伴う目標燃料供給量への追従遅れを確実に防止することができる。
【0087】
次に、図7に示すように、本実施形態においては、ATR1からATR2(図7の時刻t6)への移行時、及び、ATR2からSRへの移行時(図7の時刻t7)に、ぞれぞれ、燃料、空気、及び、水のそれぞれの目標供給量を変更すると共に、ATR1からATR2への移行時及びATR2からSRへの移行時に、それぞれ、燃料、空気、水の目標供給量への単位時間当たりの変更量を小さくし、且つ、それらの目標供給量への単位時間当たりの変更量を、ATR1からATR2の移行時の方が、ATR2からSRへの移行時よりも小さくなるようにしている。
ここで、図7に示すように、ATR1からATR2への移行時よりもATR2からSRへの移行時の方が、水が多く供給され、それにより、水が供給される間欠タイミングが密となり、改質器20内の圧力変動が緩和されて圧力が高い状態で安定してくるので、圧力変動に伴う燃料の過剰供給の問題も緩和することができる。このため、本実施形態においては、燃料供給手段(燃料流量調整ユニット38)の制御ゲインの低下させると共に、目標供給量への単位時間当たりの変更量(目標値変更ゲイン)を、ATR1からATR2への移行時の方が、ATR2からりSRへの移行時の方よりも小さくするようにしたので、圧力変動に伴って発生する燃料の過剰供給やハンチング発生の問題と、目標燃料供給量に対する追従遅れの問題を高いレベルで上手にバランスさせて解決することが可能となる。
【0088】
次に、図10に示すように、本実施形態においては、ATR2領域での燃料供給手段(燃料流量調整ユニット38)の制御ゲインの低下量をATR1の領域の制御ゲインの低下量よりも小さくしている。ここで、図7に示すように、ATR2の領域の方がATR1の領域よりも水が多く供給され、それにより、水が供給される間欠タイミングが密となり、圧力が高い状態で安定してくるので、圧力変動に伴う燃料の過剰供給も緩和することができる。このため、本実施形態においては、ATR2領域での燃料供給手段(燃料流量調整ユニット38)の制御ゲイン低下量を、ATR1の領域のそれよりも小さくすることにより、燃料の過剰供給の抑制と目標燃料値への追従性能の低下を抑制して追従遅れの緩和を同時に図ることができる。
【0089】
次に、図10に示すように、本実施形態においては、ATRの領域及びSRの領域での燃料供給手段(燃料流量調整ユニット38)の制御ゲインを、POXの領域よりも低下させるとともに、SRの領域における燃料供給手段の制御ゲインの低下量をATR領域の制御ゲインの低下量よりも小さくしている。ここで、図7に示すように、SR領域の方がATR領域よりも水が多く供給され、それにより、水が供給される間欠タイミングが密となり、圧力が高い状態で安定してくるので、圧力変動に起因した燃料の過剰供給も緩和することができる。このため、本実施形態においては、SR領域における燃料供給手段(燃料流量調整ユニット38)の制御ゲインの低下量を、ATR領域の制御ゲインの低下量をより小さくすることにより、圧力変動に伴う燃料の過剰供給の抑制を図ると同時に、目標燃料供給量への追従遅れの緩和という相反する課題を高いレベルで両立することができる。
【0090】
次に、図10に示すように、本実施形態においては、ATRの領域では、改質用空気供給手段(改質用空気流量調整ユニット38)の制御のゲインを、POXの領域よりも、低下させている。ここで、ATRの領域で、燃料供給手段(燃料流量調整ユニット38)の制御ゲインと同様に、改質用空気供給手段(改質用空気流量調整ユニット38)の制御ゲインを低下させたので、間欠的に水を改質器内に供給することにより生じる圧力変動に起因した空気の過剰供給を防止することができる。
【0091】
次に、図10に示すように、ATRの領域では、燃料供給手段(燃料流量調整ユニット38)の制御ゲインの低下量を改質用空気供給手段(改質用空気流量調整ユニット44)の制御ゲインの低下量よりも大きくしている。ここで、間欠的な水供給に伴って発生する改質起内の圧力変動によって、燃料の供給量とともに改質器内に供給される改質用空気の供給量も変動してしまう。このため、本実施形態においては、改質器用空気供給手段(改質用空気流量調整ユニット44)の制御ゲインも低下させたため、過剰空気の供給、及び、制御ゲインハンチングの発生を一層確実に防止できる。また、改質器用空気の供給量は燃料の供給量と比べて非常に多いので、水が蒸発することにより生じる圧力変動の影響を、改質空気の方が燃料よりも受け難い。このため、本実施形態においては、改質器用空気供給手段(改質用空気流量調整ユニット44)の制御ゲインの低下量を燃料供給手段(燃料流量調整ユニット38)の制御ゲインの低下量よりも小さくしているので、無用に目標改質用空気供給量に対して追従遅れが発生することを確実に防止することができる。
【0092】
次に、図12により、本発明の他の実施形態による燃料電池装置を説明する。図12は、本発明の他の実施形態による燃料電池装置における燃料、水、及び改質用空気の供給量を制御するための制御内容を示すフローチャートである。図12において、Sは各ステップを示す。
図12に示すように、S21において、水蒸気改質期間か否かを判定する。ここで、水蒸気改質期間は、上述したATR(ATR1とATR2を含む)領域及びSR領域である。水蒸気改質期間の場合には、S22に進み、改質器内へのパルスポンプ160による間欠的な水供給が開始されたか否かを判定する。
【0093】
水供給が開始された場合には、S23に進み、燃料及び改質空気の供給を後述する所定期間である規制時間T0 だけ規制する。具体的には、規制時間T0 だけ燃料及び改質空気の供給量の制御値を保持する(固定値とする)ことにより、燃料の過剰供給を防止するようにしている。次に、S24に進み、規制時間T0 経過したか否かを判定する。経過していれば、S25に進み、燃料及び改質空気の供給規制を解除する。
なお、この他の実施形態においては、規制時間T0 において、燃料及び改質空気の両方の供給を規制したが、燃料の供給のみを規制するようにしても良い。
【0094】
上述した本発明の他の実施形態においては、パルスポンプによる水の供給後の所定期間である規制時間T0 の間、燃料供給手段(燃料流量調整ユニット38)による燃料の供給及び改質空気供給手段(改質空気流量調整ユニット44)を規制するようにしたので、パルスポンプ160間欠的に水を改質器20内に供給することにより生じる圧力変動に起因した燃料の過剰供給を確実に防止することができる。また、燃料供給手段(燃料流量調整ユニット38)による燃料の供給のみを規制した場合も同様な効果を奏することができる。
【符号の説明】
【0095】
1 固体電解質型燃料電池
2 燃料電池モジュール
4 補機ユニット
10 発電室
12 燃料電池セル集合体
14 燃料電池セルスタック
16 燃料電池セルユニット
18 燃焼室
20 改質器
22 空気用熱交換器
24 水供給源
26 純水タンク
28 水流量調整ユニット
30 燃料供給源
38 燃料流量調整ユニット
40 空気供給源
44 改質用空気流量調整ユニット
52 制御ボックス
83 点火装置
84 燃料電池セル
130 改質用空気流量センサ
132 燃料流量センサ
134 水流量センサ
138 圧力センサ
142 発電室温度センサ
144 燃焼室温度センサ
148 改質器温度センサ
152 水タンク
154 ポンプ
156 RO膜(逆浸透膜)
160 パルスポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
改質器により燃料を改質し、この改質された燃料と空気により燃料電池が発電を行う燃料電池装置であって、
改質器に燃料を供給する燃料供給手段と、
改質器に空気を供給する改質用空気供給手段と、
純水を生成しこの純水を改質器に供給する水供給手段と、
上記燃料供給手段による燃料供給量を検出する燃料供給量検出センサと、
上記改質用空気供給手段による空気供給量を検出する空気供給量検出センサと、
上記水供給手段による水供給量を検出する水供給量検出センサと、
起動時に、燃料及び空気を供給して改質器内で部分酸化改質反応(POX)を行わせ、次に、燃料、空気、水を供給して改質器内でオートサーマル改質反応(ATR)を行わせ、次に、燃料及び水を供給して改質器内で水蒸気改質反応(SR)を行わせ、さらに、上記燃料供給手段による燃料供給量、改質用空気供給手段による空気供給量、及び、水供給手段による水供給量を制御する制御手段と、を有し、
上記水供給手段は、パルス制御により間欠的に極少量の水を改質器に供給するポンプを備え、
上記制御手段は、上記燃料供給量検出センサ、空気供給量検出センサ及び水供給量検出センサのそれぞれの出力に基づいて、目標燃料供給量、目標空気供給量及び水の目標供給量をそれぞれ供給できるように上記燃料供給手段、改質用空気供給手段及び水供給手段をそれぞれ制御し、
上記制御手段は、さらに、上記ATRの領域では、少なくとも上記ポンプによる水の供給後の所定期間の間、上記燃料供給手段による燃料の供給量の変更を抑制することを特徴とする燃料電池装置。
【請求項2】
上記制御手段は、上記ポンプによる水の供給後の所定期間の間、上記燃料供給手段による燃料の供給を規制する請求項1に記載の燃料電池装置。
【請求項3】
上記制御手段は、上記ATRの領域では、上記燃料供給手段の制御ゲインを、上記POXの領域及び上記SRの領域よりも、低下させる請求項1に記載の燃料電池装置。
【請求項4】
上記制御手段は、上記ATRの領域では、上記改質用空気供給手段による空気の供給量、及び、水供給手段による水の供給量を、それぞれ変更せずに一定量にした請求項3に記載の燃料電池装置。
【請求項5】
上記ATRの領域は、水の供給量が少ないオートサーマル改質反応1(ATR1)の領域と、このATR1の後に運転され、ATR1より水の供給量が多いオートサーマル改質反応2(ATR2)の領域を有し、
上記制御手段は、POXからATR1への移行時、及び、ATR1からATR2への移行時に、少なくとも水の目標供給量を変更するものであって、ATR1からATR2への移行時はPOXからATR1の移行時よりも水の目標供給量への単位時間当たりの変更量を小さくした請求項3に記載の燃料電池装置。
【請求項6】
上記制御手段は、ATR1からATR2への移行時、及び、ATR2からSRへの移行時に、ぞれぞれ、燃料、空気、及び、水のそれぞれの目標供給量を変更すると共に、ATR1からATR2への移行時及びATR2からSRへの移行時に、それぞれ、燃料、空気、水の目標供給量への単位時間当たりの変更量を小さくし、且つ、それらの目標供給量への単位時間当たりの変更量を、ATR1からATR2の移行時の方が、ATR2からSRへの移行時よりも小さくなるようにした請求項5に記載の燃料電池装置。
【請求項7】
上記ATRの領域は、水の供給量が少ないオートサーマル改質反応1(ATR1)の領域と、このATR1の後に運転され、水の供給量がATR1より多いオートサーマル改質反応2(ATR
2)の領域を有し、
上記制御手段は、ATR1の領域及びATR2の領域での燃料供給手段の制御ゲインを、上記POXの領域又はSRの領域よりも低下させ、さらに、ATR2領域での燃料供給手段の制御ゲインの低下量をATR1の領域の制御ゲインの低下量よりも小さくした請求項3に記載の燃料電池装置。
【請求項8】
上記制御手段は、上記ATRの領域及び上記SRの領域での燃料供給手段の制御ゲインを、上記POXの領域よりも低下させるとともに、前記SRの領域における燃料供給手段の制御ゲインの低下量をATR領域の制御ゲインの低下量よりも小さくした請求項3に記載の燃料電池装置。
【請求項9】
上記制御手段は、上記ATRの領域では、上記改質用空気供給手段の制御のゲインを上記POXの領域よりも低下させる請求項3に記載の燃料電池装置。
【請求項10】
上記制御手段は、上記ATRの領域では、上記燃料供給手段の制御ゲインの低下量を上記改質用空気供給手段の制御ゲインの低下量よりも大きくする請求項9に記載の燃料電池装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−277846(P2010−277846A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−129166(P2009−129166)
【出願日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】