説明

燻蒸ガス濃度測定方法およびその方法を用いた燻蒸ガス濃度測定装置

【課題】燻蒸庫内における殺菌・殺虫用ガスの濃度測定を経時的にかつ正確に行う。
【解決手段】燻蒸ガスを燻蒸庫C内に入れた後,先ず赤外線式ガスセンサ70にて燻蒸庫内における殺菌・殺虫用ガスの濃度を測定して第1測定値を得,次いで,接触燃焼式ガスセンサDSにて燻蒸庫内における殺菌・殺虫用ガスの濃度を測定して第2測定値を得るとともに,第1測定値を第2測定値で割った補正値を得,その後,経時的に,接触燃焼式ガスセンサDSにて燻蒸庫内における殺菌・殺虫用ガスの濃度を間欠的に繰り返し測定し,その測定値に前記補正値を乗じた値を,燻蒸庫内におけるガス濃度値として間欠的に繰り返し得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,燻蒸ガス濃度測定方法およびその方法を用いた燻蒸ガス濃度測定装置に関するものである。より詳しくは,燻蒸庫(燻蒸室)内に燻蒸対象物(例えば文化財,美術品等)を収納し,燻蒸ガスを燻蒸庫内に入れて燻蒸対象物を燻蒸する際に,燻蒸庫内における燻蒸ガスの濃度を経時的に測定するための燻蒸ガス濃度測定方法およびその方法を用いた装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来,文化財等の燻蒸に使用される燻蒸ガスは臭化メチルと酸化エチレンとの混合ガス(商品名「エキボン」)が主流であった。この従来の燻蒸ガス(エキボン)は臭化メチル,酸化エチレン共に殺菌・殺虫能力を有しているため,従来は,燻蒸庫内に投入する「エキボン」の総量を測定することで滅菌(殺菌・殺虫)能力の程度を把握することができた。
このため,従来は,光干渉計式ガス濃度計を用いて前記混合ガス(商品名「エキボン」)の濃度を測定すれば,燻蒸庫内における滅菌(殺菌・殺虫)能力の程度を把握することができた。
【0003】
ところが近年,オゾンホール対策として上記「エキボン」に含まれている臭化メチルの使用が制限されたことから,文化財等の燻蒸には,エキボン以外の数種類のガスが使用されるようになってきた。
酸化エチレンと希釈用ガスであるHFC134a(R134a)との混合ガス(商品名「エキヒューム」)はそれら文化財燻蒸ガスの代表例であり,現在,多くの博物館や美術館で使用されている。
【0004】
ところで,上述したように酸化エチレンは殺菌・殺虫能力を有しているが,上記「エキヒューム」に含まれているHFC134a(化学式:CH2FCF3)は殺菌・殺虫能力を有していない。
また,「エキヒューム」の酸化エチレンとHFC134aとの濃度比は1:2.5でHFC134aの方が多い。さらに,燻蒸時,酸化エチレンは燻蒸対象物に吸着されるがHFC134aは殆ど吸着されない。このため,燻蒸庫内においては,経時的かつ相対的に,殺菌・殺虫能力を有していないHFC134aの濃度が濃くなる。
したがって,光干渉計式ガス濃度計を用いて上記「エキヒューム」の濃度測定(総量測定)を行っても(仮に経時的に行ったとしても),燻蒸庫内の滅菌(殺菌・殺虫)能力の程度を把握することはできない。
【0005】
このため,上記「エキヒューム」を用いて燻蒸を行う場合において燻蒸庫内の滅菌(殺菌・殺虫)能力の程度を把握するためには,燻蒸庫内空間における,HFC134a共存下での酸化エチレン濃度を測定する必要が生じる。
「エキヒューム」を用いて文化財等の燻蒸を行う上での酸化エチレン濃度は,燻蒸初期時で1.5〜2.0%,24時間後で1%以上が必要とされる。
一方,「エキヒューム」に含まれる酸化エチレンは可燃性ガスであるから,接触燃焼式(触媒燃焼式)センサで爆発下限界濃度(3%)迄の濃度測定が可能である。
そこで現在,接触燃焼式センサを有する検知部を用いて,燻蒸時における燻蒸庫内空間の酸化エチレン濃度を経時的に計測するということが行われている。
【0006】
図8は,接触燃焼式センサを用いた検知部による濃度測定の原理を説明する原理図である。
同図に示すように,検知部10には,可燃性ガスの酸化反応に対して高い触媒活性を持つ白金やパラジウムからなり,定電流にて比較的低温度に熱せられるガス検知素子(接触燃焼式センサ)DSが組み込まれている。被検気体中の可燃性ガスは,このガス検知素子に触れると触媒作用によって燃焼(触媒燃焼)し,燃焼によって生じた熱がガス検知素子DSの電気抵抗を増大させる。電気抵抗の増大量は被検ガス中の可燃性ガスの濃度に比例するので,電気回路中のメーターMにより濃度を表示することができる(例えば特許文献1,0007〜0009段落参照)。
なお,電気回路中のCSは,ガスの接触燃焼以外の温度変化および圧力変動による測定誤差を補償するための,不感処理を施した温度補償素子であり,検知素子と同一構成の素子をガラスで被覆した構成となっている。
文化財等の燻蒸は,通常,燻蒸庫内を負圧に維持した状態で行われることから,上記のような圧力変動に対応した検知部を用いることが望ましい。
【0007】
現在,一般的に,燻蒸時における燻蒸庫内空間の酸化エチレン濃度の経時的計測は,以上のような検知部を用いて連続的に(例えば24時間燻蒸する場合には24時間連続して)行っている。
現在,実用に供される上記検知部10のガス検知素子(接触燃焼式センサ)の主成分はパラジウムである。
一方,文化財等の燻蒸に用いられる「エキヒューム」に共存するHFC134aの化学式はCH2FCF3であることから,そのF成分(フッ素)が触媒毒として前記ガス検知素子の触媒(主成分パラジウム)の機能を低下させる。
【0008】
現在一般に行われている燻蒸庫内酸化エチレン濃度の測定では,燻蒸中,連続的に測定がなされるので,ガス検知素子が測定ガスである燻蒸ガスに連続して略常時接触する(暴露される)。このため,ガス検知素子の感度が経時的に低下し,正確な濃度測定を行うことができなくなるという問題が生じている。
上述したように,「エキヒューム」の酸化エチレンとHFC134aとの濃度比は1:2.5でHFC134aの方が多く,また,燻蒸時,酸化エチレンが燻蒸対象物に吸着されるのに対してHFC134aは殆ど吸着されないことで経時的かつ相対的にHFC134aの濃度が濃くなり,さらにまた,燻蒸中に追加投薬がなされることがあると,同様の理由でHFC134aの濃度が更に濃くなることから触媒毒作用が加速されて,酸化エチレン濃度の正確な測定がより一層困難になる。
【0009】
そこで本件出願人は,特許文献2に見られるように,燻蒸庫内可燃性ガス(酸化エチレン)濃度の測定を経時的にかつ正確に行うことを目的として,間欠的に所定時間のみ接触燃焼式センサへ燻蒸ガスを導入し,当該燻蒸ガス中の可燃性ガスの濃度を測定した後,接触燃焼式ガスセンサへ燻蒸ガスを含ないエアを導入して当該センサ回りの燻蒸ガス(したがって触媒毒)を掃気するようにした燻蒸ガス濃度測定装置をすでに提案し,実施している。
このような装置によれば,接触燃焼式センサが燻蒸ガスに接触する(暴露される)時間を短くし,それによって接触燃焼式センサの感度低下を抑制して,燻蒸庫内可燃性ガス濃度の測定を経時的にかつ従来に比べて正確に行うことが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2005−321216号公報
【特許文献2】特開2007−256131号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上述したように,特許文献2記載の装置によれば,接触燃焼式センサが燻蒸ガスに接触する時間を短くすることで,接触燃焼式センサの感度低下を抑制することが可能になった。
しかしながら,この装置であっても,長期間運用する(燻蒸作業を何度も行う)と,やはり接触燃焼式センサの感度が次第に低下してくるという課題は依然として残っている。
本発明の目的は,上記課題を解決し,燻蒸庫内における殺菌・殺虫用ガスの濃度測定を経時的にかつより正確に行うことができる燻蒸ガス濃度測定方法およびその方法を用いた燻蒸ガス濃度測定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために本発明の燻蒸ガス濃度測定方法は,燻蒸庫内に燻蒸対象物を収納し,殺菌・殺虫性および可燃性ならびに赤外線吸収性を有する殺菌・殺虫用ガスと,この殺菌・殺虫用ガスよりも弱い赤外線吸収性を有しかつ触媒毒として作用する希釈用ガスと,を含む燻蒸ガスを燻蒸庫内に入れて燻蒸対象物を燻蒸するに際し,
燻蒸ガスを燻蒸庫内に入れた後,先ず赤外線式ガスセンサにて燻蒸庫内における前記殺菌・殺虫用ガスの濃度を測定して第1測定値を得,次いで,接触燃焼式ガスセンサにて燻蒸庫内における前記殺菌・殺虫用ガスの濃度を測定して第2測定値を得るとともに,前記第1測定値を第2測定値で割った補正値を得,その後,経時的に,前記接触燃焼式ガスセンサにて燻蒸庫内における前記殺菌・殺虫用ガスの濃度を間欠的に繰り返し測定し,その測定値に前記補正値を乗じた値を,燻蒸庫内におけるガス濃度値として間欠的に繰り返し得ることを特徴とする。
この燻蒸ガス濃度測定方法によれば,次のような作用効果が得られる。
殺菌・殺虫用ガスと希釈用ガスとの混合ガスである燻蒸ガスを用いて燻蒸作業を行う過程において,殺菌・殺虫用ガスの希釈用ガスに対する相対濃度は,燻蒸過程の初期段階においては高いが,燻蒸が進むにつれて,殺菌・殺虫用ガスは燻蒸対象に吸収されてゆくから,殺菌・殺虫用ガスの希釈用ガスに対する相対濃度は次第に低くなって行く。
本発明において用いる殺菌・殺虫用ガスは,希釈用ガスに比べて赤外線吸収性が強い(赤外線吸収度合いが高い)から,燻蒸ガス中の殺菌・殺虫用ガスの濃度は,赤外線式ガスセンサによって測定することが可能である。赤外線式ガスセンサは,ガス感度の安定性および再現性に優れており,殺菌・殺虫用ガスの希釈用ガスに対する相対濃度が高いとき,殺菌・殺虫用ガスの濃度を正確に測定することが可能である。しかし,上記相対濃度が低くなると,燻蒸ガス中の殺菌・殺虫用ガスの濃度を赤外線式ガスセンサで正確に測定することは困難になる。
一方,接触燃焼式ガスセンサは,可燃性ガスに対してはその濃度に比例した信号を出力する。本発明において用いる殺菌・殺虫用ガスは可燃性ガスであるから,接触燃焼式ガスセンサは,本発明において用いる殺菌・殺虫用ガスに対しては,その濃度に比例した信号を出力する。しかし,本発明において用いる燻蒸ガスは触媒毒として作用する希釈用ガスを含んでいるので,測定時間が総体的に長くなる(燻蒸作業を何度も行う)につれて,接触燃焼式ガスセンサの感度は次第に低下してゆく。
この発明では,燻蒸ガスを燻蒸庫内に入れた後,先ず赤外線式ガスセンサにて燻蒸庫内における殺菌・殺虫用ガスの濃度を測定して第1測定値を得るから,殺菌・殺虫用ガスの希釈用ガスに対する相対濃度が高い初期段階において,赤外線式ガスセンサにて正確に第1測定値を得ることができる。赤外線式ガスセンサは,ガス感度の安定性および再現性に優れているから,燻蒸作業を長期に亘って何度行ったとしても,第1測定値は,その度ごとに正確に得ることができる。
次いで,この発明では,接触燃焼式ガスセンサにて燻蒸庫内における前記殺菌・殺虫用ガスの濃度を測定して第2測定値を得るとともに,前記第1測定値を第2測定値で割った補正値を得るが,このとき,接触燃焼式ガスセンサの感度が仮に低下していたとしても,上記第1測定値は正確に得られているから,補正値自体は正確に得ることができる。
その後,この発明では,経時的に,接触燃焼式ガスセンサにて燻蒸庫内における殺菌・殺虫用ガスの濃度を間欠的に繰り返し測定し,その測定値に前記補正値を乗じた値を,燻蒸庫内におけるガス濃度値として間欠的に繰り返し得るから,仮に,接触燃焼式ガスセンサの感度が長期運用により低下していたとしても,燻蒸庫内における殺菌・殺虫用ガスの濃度を経時的に正確に測定することが可能となる。
上記の補正は,燻蒸作業が行われる度になされるから,長期に亘って,正確なガス濃度測定を行うことが可能となる。
望ましくは,前記赤外線式ガスセンサによる測定は,燻蒸庫内空間の上下方向において2以上の箇所で行い,それらの測定値が一致したとき,該測定値を前記第1測定値とする。
このようにすると,第1測定値を,より正確に得ることができ,したがって,より正確な補正値を得ることができる。
また望ましくは,前記第2測定値自体に関しても,前記補正値を乗じて,燻蒸庫内におけるガス濃度値を得る。
このようにすると,接触燃焼式ガスセンサによる初回の測定値である前記第2測定値を,前記補正値を得るためだけでなく,接触燃焼式ガスセンサに基づく初回のガス濃度値を得るのに利用できる。
また上記目的を達成するために本発明の燻蒸ガス濃度測定装置は,請求項1記載の燻蒸ガス濃度測定方法を用いたガス濃度測定装置であって,
燻蒸庫内の燻蒸ガスを赤外線式ガスセンサに導入して燻蒸ガス中の殺菌・殺虫用ガスの濃度を測定して前記第1測定値を得る第1測定手段と,
燻蒸庫内の燻蒸ガスを接触燃焼式ガスセンサに導入して燻蒸ガス中の殺菌・殺虫用ガスの濃度を測定して前記第2測定値を得る第2測定手段と,
前記第1測定値を前記第2測定値で割って前記補正値を得るとともに,その補正値を記憶し,その後の前記第2測定手段による測定値に前記補正値を乗じた値を,燻蒸庫内におけるガス濃度値として得る制御部と,
を備えていることを特徴とする。
この燻蒸ガス濃度測定装置によれば,請求項1記載の燻蒸ガス濃度測定方法による作用効果と同様な作用効果が得られる。
望ましくは,前記赤外線式ガスセンサに燻蒸庫内の燻蒸ガスを導入する導入経路と,前記接触燃焼式ガスセンサに燻蒸庫内の燻蒸ガスを導入する導入経路とを,共通の導入経路で構成する。
このように構成すると,前記補正値をより正確に得ることができる。
仮に,赤外線式ガスセンサに燻蒸庫内の燻蒸ガスを導入する導入経路と,接触燃焼式ガスセンサに燻蒸庫内の燻蒸ガスを導入する導入経路とを,個別に構成したとすると,赤外線式ガスセンサに導入される燻蒸ガスの状態と,接触燃焼式ガスセンサに導入される燻蒸ガスの状態との間に大きな差異が生じるおそれが生じ,前記補正値を正確に得ることができなくなるおそれが大きくなる。
これに対し,赤外線式ガスセンサに燻蒸庫内の燻蒸ガスを導入する導入経路と,接触燃焼式ガスセンサに燻蒸庫内の燻蒸ガスを導入する導入経路とを共通の導入経路で構成すると,赤外線式ガスセンサに導入される燻蒸ガスの状態と,接触燃焼式ガスセンサに導入される燻蒸ガスの状態との間に大きな差異が生じないか生じたとしてもその差異は著しく小さくなる。したがって,前記補正値をより正確に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】燻蒸装置全体を示す図。
【図2】本発明に係る燻蒸ガス濃度測定装置の一実施の形態を示す配管及び回路図。
【図3】赤外線式ガスセンサによるガス濃度の測定原理を示す図。
【図4】赤外線式ガスセンサの回路図。
【図5】検知部および増幅回路の具体例を示す図。
【図6】測定シーケンスを示すフローチャート。
【図7】測定シーケンスを示すフローチャート。
【図8】接触燃焼式センサを用いた検知部による濃度測定の原理を説明する原理図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下,本発明に係る燻蒸ガス濃度測定方法およびその方法を用いた燻蒸ガス濃度測定装置の実施の形態について図面を参照して説明する。主として燻蒸ガス濃度測定装置について説明することで燻蒸ガス濃度測定方法についての説明ともする。
先ず,図1を参照して燻蒸装置およびその装置を用いた燻蒸作業の一例について説明し,次いで,燻蒸ガス濃度測定装置について説明する。
【0015】
図1は燻蒸庫Cを含む燻蒸装置全体を示す図である。
図1に示す燻蒸装置100は,燻蒸庫C内の温度を一定に保つための温度調整装置101と,燻蒸庫C内を負圧状態に保つための減圧装置102と,燻蒸ガスが充填されている燻蒸ガス容器103と,この燻蒸ガス容器103に配管121,燻蒸ガス元弁122,投薬速度調整弁123を介して接続されている気化器104と,燻蒸ガス容器103の重さを秤量する秤量器105と,気化器104からの燻蒸ガスを投薬弁124を介して燻蒸庫C内に供給するための配管125と,燻蒸庫C内のガス濃度を定期的に確認・記録するための燻蒸ガス濃度測定装置1と,庫内残留ガスを吸着装置107に送る排気装置106と,上記温度調整装置101,減圧装置102,気化器104,排気装置106,および投薬弁124の作動を制御する燻蒸制御盤110と,燻蒸庫C内の温度を測定するための温度計111と,燻蒸庫C内の気圧を測定するための圧力計112とを有している。温度計111,圧力計112はそれぞれ燻蒸制御盤110に接続されている。
【0016】
燻蒸作業は,次のような投薬工程,燻蒸工程,および排気工程からなる。
投薬工程:
(1)燻蒸対象物(例えば文化財や美術品)Bを燻蒸庫Cに収納し,密閉する。
(2)燻蒸庫C内の温度を一定にする。
この工程は,温度計111の測定値に基づいて燻蒸制御盤110が温度調整装置101を制御することによって行われる。
(3)気化器104を一定温度に加温する
この工程は,気化器104に内蔵された図示しない温度センサの測定値に基づいて燻蒸制御盤110が気化器104を制御することによって行われる。
(4)燻蒸ガス容器103の重さを秤量器105で秤量する。
(5)燻蒸庫C内を適量減圧する。
この工程は,圧力計112の測定値に基づいて燻蒸制御盤110が減圧装置102を制御することによって行われる。
(6)投薬弁124,燻蒸ガス元弁122を開ける。
この作業は作業員によってなされる。投薬弁124は電磁弁であり,燻蒸制御盤110が備える図示しないスイッチを作業員が操作することで行われる。
(7)秤量器105を観測しながら投薬速度調整弁123にて燻蒸ガスを適量,適時間,気化器104に送る。
この作業は作業員によってなされる。この作業によって,燻蒸ガス容器103から適量の燻蒸ガスGが,気化器104および配管125を経て燻蒸庫C内に供給(投薬)される。
例えば,燻蒸庫Cの容積が10立方メートル=10000リットルであり,燻蒸ガスとして上述した「エキヒューム」を用いる場合,「エキヒューム」の有効滅菌剤は酸化エチレンであるから,燻蒸初期において酸化エチレンの濃度を例えば1.5%とするには,「エキヒューム」の投薬量は1964gとする。
なお,参考のために説明すると,この場合の上記投薬量は次のようにして算出することができる。
酸化エチレンの分子量は44であり,酸化エチレン44gが気化すると,22.4リットルの容積になる。
この容積の,燻蒸庫Cの容積=10000リットルに対する割合は,
22.4/10000=0.224%であるから,酸化エチレンの濃度を1.5%とするための倍率は1.5/0.224=6.696倍となる。
そのときの酸化エチレン質量は6.696×44=294.624gであり,「エキヒューム」中の酸化エチレン割合は15wt%であるから,
「エキヒューム投薬量」は294.624/0.15=1964g
となる。
(8)燻蒸ガス元弁122,投薬弁124を閉じる。
(9)後に詳しく説明するように,燻蒸ガス濃度測定装置1にて燻蒸ガスGが適量投薬されたことを確認する。
後述する上中下の測定結果が均等且つ所要の濃度に達していることを確認することで投薬工程が完了する。
【0017】
燻蒸工程:
(10)後に詳しく説明するように,燻蒸ガス濃度測定装置1にて燻蒸庫C内のガス濃度を定期的に確認・記録する。
【0018】
排気工程:
(11)排気装置106にて庫内残留ガスを吸着装置107に送る。
この作業は,燻蒸制御盤110が備える図示しない排気装置106作動用のスイッチを作業員が操作することで行われる。
(12)後述する燻蒸ガス濃度測定装置1にて庫内残留ガス濃度が所定値以下になっていることを確認することで排気行程が終了し,燻蒸作業の全工程が完了する。。
【0019】
図2は本発明に係る燻蒸ガス濃度測定方法を用いた燻蒸ガス濃度測定装置の一実施の形態を示す配管及び回路図である。
この燻蒸ガス濃度測定装置1は,上述したように,燻蒸庫C内に燻蒸対象物Bを収納し,殺菌・殺虫性および可燃性ならびに赤外線吸収性を有する殺菌・殺虫用ガスと,この殺菌・殺虫用ガスよりも弱い赤外線吸収性を有しかつ触媒毒として作用する希釈用ガスと,を含む燻蒸ガスGを燻蒸庫C内に入れて燻蒸対象物Bを燻蒸する際に,燻蒸庫C内における燻蒸ガスG中の殺菌・殺虫用ガスの濃度を経時的に測定するためのガス濃度測定装置である。
この実施の形態では,殺菌・殺虫用ガスとして酸化エチレンを,希釈用ガスとしてHFC134aを有する「エキヒューム」を燻蒸ガスGとして用いている。
【0020】
図2に示すように,燻蒸ガス濃度測定装置1は,燻蒸庫C内の燻蒸ガスGを赤外線式ガスセンサ70に導入して燻蒸ガスG中の殺菌・殺虫用ガスの濃度を測定して第1測定値を得る第1測定手段M1と,
燻蒸庫C内の燻蒸ガスGを接触燃焼式ガスセンサDSに導入して燻蒸ガスG中の殺菌・殺虫用ガスの濃度を測定して第2測定値を得る第2測定手段M2と,
前記第1測定値を前記第2測定値で割って補正値を得るとともに,その補正値を記憶し,その後の前記第2測定手段M2による測定値に前記補正値を乗じた値を,燻蒸庫C内におけるガス濃度値として得る制御部60と,
を備えている。
【0021】
第1測定手段M1は,赤外線式ガスセンサ70と,この赤外線式ガスセンサ70に燻蒸庫C内の燻蒸ガスGを導入する燻蒸ガス導入管20およびこの燻蒸ガス導入管20に介装された燻蒸ガス用電磁弁(SV1〜SV3)と,赤外線式ガスセンサ70へ,燻蒸ガスGを含ないエアAを導入するエア導入管30およびこのエア導入管30に介装されたエア用電磁弁(SV4−1)と,を有している。
【0022】
図3は赤外線式ガスセンサ70によるガス濃度の測定原理を示す図である。
赤外線式ガスセンサ70は,測定セル71,赤外線源72,検出ガスに対応したガス検出側帯域フィルタ73f,ガス検出側センサ73s,参照側帯域フィルタ74f,参照側センサ74s,およびこれらセンサの信号を増幅してガス濃度信号(測定信号)として出力する増幅器75とを備えている。
赤外線源72から放射された赤外線は,被検ガスにて吸収された波長以外が帯域フィルタで除去された後にガス検出側センサ73sに到達する。
上記吸収の度合いがガス濃度に比例することから,濃度を知ることができる。
すなわち,赤外線式ガスセンサ70は,赤外線がガスによって吸収される度合いがガス濃度に比例することを利用してガス濃度を測定するセンサである。
【0023】
殺菌・殺虫用ガスと希釈用ガスとの混合ガス中の殺菌・殺虫用ガスの濃度を赤外線式ガスセンサ70で測定するためには,測定対象である殺菌・殺虫用ガスの赤外線吸収度合い(赤外線吸収性)が希釈用ガスによる赤外線吸収度合いに比べて高い必要がある。この実施の形態で用いる酸化エチレンによる赤外線吸収度合い(赤外線吸収性)はHFC134aによる赤外線吸収度合いに比べて数倍高いので,燻蒸ガスG中の酸化エチレン濃度を赤外線式ガスセンサ70で測定することが可能である。
図2に示す赤外線式ガスセンサ70にて得られたガス濃度信号(IR Gas sig)は制御部60へ送出される。
なお,図4に赤外線式ガスセンサ70の具体的な回路図の一例を示す。
【0024】
図2に示すように,第2測定手段M2は,燻蒸ガスG中の可燃性ガスである酸化エチレンと接触して触媒燃焼を生じさせる触媒を有し,触媒燃焼による燃焼熱で電気抵抗値が変動する接触燃焼式ガスセンサDSと,この接触燃焼式ガスセンサDSの電気抵抗値の変動量を電気量に変換する電気回路とを有する検知部10と,
燻蒸庫C内の燻蒸ガスGを接触燃焼式ガスセンサDSへ導入する燻蒸ガス導入管20およびこの燻蒸ガス導入管20に介装された燻蒸ガス用電磁弁(SV1〜SV3)と,
接触燃焼式ガスセンサDSへ,燻蒸ガスGを含ないエアAを導入するエア導入管30およびこのエア導入管30に介装されたエア用電磁弁(SV4−1)と,を有している。
【0025】
接触燃焼式センサDSは,図8を参照して先に説明したセンサ(パラジウムを主成分としたセンサ)で構成されている。また,検知部10は図8を参照して先に説明した原理に即した電気回路を有している。
11は検知部10からのセンサ出力を増幅するための増幅回路である。
【0026】
図5に上記検知部10および増幅回路11の具体例を示す。
図5に示すように,この実施の形態では,ガスの接触燃焼以外の温度変化および圧力変動による測定誤差(すなわち燻蒸庫C内の温度変化および圧力変動による測定誤差)を補償すべく,温度補償素子CSに対しても,接触燃焼式ガスセンサDSに対してと同様に,燻蒸ガスGまたはエアAを導入する。
【0027】
この実施の形態における文化財等の燻蒸は,燻蒸庫C内を負圧に維持した状態で行われることから,上記のような圧力変動に対応した検知部10を用いる。
図5において,DS1は接触燃焼式ガスセンサDSが収納され,燻蒸ガスGまたはエアAが導入されるガスチャンバ,CS1は温度補償素子CSが収納され,燻蒸ガスGまたはエアAが導入されるガスチャンバである。
これらチャンバDS1,CS1は連通路12で連通している。チャンバDS1の入り口に燻蒸ガス導入管20(エア導入管30でもある)が赤外線式ガスセンサ70および連通管20bを介して接続され,チャンバCS1の出口に後述する排気管51(図2参照)が接続される。
接触燃焼式ガスセンサDSを備えた検知部10にて得られたガス濃度信号(CC Gas sig)は制御部60へ送出される。
【0028】
図2に示すように,燻蒸ガス導入管20は,その一端が赤外線式ガスセンサ70に接続され,さらに赤外線式ガスセンサ70から連通管20bを介して接触燃焼式ガスセンサDSに接続されている。燻蒸ガス導入管20の他端は,3本の採気管21,22,23に分岐されて燻蒸庫Cに接続されている。
採気管21は燻蒸庫Cの上部に接続されて燻蒸ガスの上部採気口21aを形成し,採気管22は燻蒸庫Cの中程に接続されて燻蒸ガスの中部採気口22aを形成し,採気管23は燻蒸庫Cの下部に接続されて燻蒸ガスの下部採気口23aを形成している。
採気管21,22,23には,ぞれぞれ,前述した燻蒸ガス用電磁弁SV1〜SV3と,エアフィルタ24と,手動操作バルブ25とが介装されている。3つの手動操作バルブ25は,燻蒸ガス濃度測定開始時に全て手動で開けられる。
【0029】
エア導入管30は,その一部が上記燻蒸ガス導入管20と共通の管で構成されていて一端が赤外線式ガスセンサ70に接続され,さらに赤外線式ガスセンサ70から連通管20bを介して接触燃焼式ガスセンサDSに接続されている。エア導入管30の他端は,エアフィルタ31を介して大気に開放されている。エア導入管30には前述したエア用電磁弁SV4−1が介装されている。
【0030】
燻蒸ガス導入管20およびエア導入管30の共通管部分にはポンプPと第1切換弁(三方電磁弁)SV5とが介装されている。
以上から分かるように,赤外線式ガスセンサ70に燻蒸庫C内の燻蒸ガスGを導入する導入経路と,接触燃焼式ガスセンサDSに燻蒸庫C内の燻蒸ガスGを導入する導入経路とは,共通の導入経路で構成されている。
【0031】
第1切換弁SV5にはバイパス管50が接続されている。第1切換弁SV5は,通常,バイパス管50側に切り替わっている(図中「NO」参照)。
接触燃焼式ガスセンサDSの他端には,排気管51が接続され,この排気管51と上記バイパス管50とが,合流部52で合流し,その合流管53の先端に第2切換弁(三方電磁弁)SV4−2が設けられている。
【0032】
第2切換弁SV4−2には,赤外線式ガスセンサ70を通過し,接触燃焼式ガスセンサDSに接触した後の燻蒸ガスGを燻蒸庫C内へ戻すための燻蒸ガス戻し管54が接続されている。燻蒸ガス戻し管54には手動操作バルブ55が設けられている。この手動操作バルブ55は,燻蒸ガス濃度測定時に手動で開けられる。第2切換弁SV4−2は,通常,燻蒸ガス戻し管54側を閉じている(図中「NC」参照)。この第2切換弁SV4−2は,後述するように,エア排気手段を構成する。
なお,排気管51には,上記バイパス管50との合流部52と接触燃焼式ガスセンサDSの間において,逆止弁56が設けられている。
【0033】
制御部60は,少なくとも赤外線式ガスセンサ70にて得られた第1測定値と検知部10にて得られた第2測定値を記憶する記憶手段(RAM)80と,第1測定値を第2測定値で割って補正値を得ることができる演算手段とを有している。その補正値は記憶手段80に記憶される。演算手段は,第2測定手段M2による測定値に前記補正値を乗じた値を得ることができる演算手段である。
【0034】
制御部60は,上記第1測定値を得るための制御モードである投薬モードと,上記第2測定値を得るとともに,第1測定値を第2測定値で割った補正値を得,その後,経時的に,接触燃焼式ガスセンサDSにて燻蒸庫C内における殺菌・殺虫用ガスの濃度を間欠的に繰り返し測定し,その測定値に前記補正値を乗じた値を,燻蒸庫内におけるガス濃度値として間欠的に繰り返し得るための制御モードである燻蒸モードとを備えており,これら投薬モードと燻蒸モードとを切り替えるモード切替スイッチ90を有している。各モードによる制御については後述する。
【0035】
制御部60は,燻蒸ガス用電磁弁(SV1〜SV3)とエア用電磁弁(SV4−1)とを後述するように,間欠的に作動させて,所定時間のみ赤外線式ガスセンサ70および接触燃焼式ガスセンサDSへ燻蒸ガスGを導入させて当該燻蒸ガスG中の殺菌・殺虫用ガスの濃度を測定させ,また,赤外線式ガスセンサ70および接触燃焼式ガスセンサDSへエアAを導入させてこれらセンサ回りの燻蒸ガスGを掃気させる,という動作を間欠的に繰り返し実行させる。なお,40はその制御用中継基板である。
また,この実施の形態では,制御部60は,測定結果等を表示するための表示部とプリンタを備えている。
【0036】
上記電磁弁SV1〜SV3,SV4−1,第1切換弁SV5,第2切換弁SV4−2,およびポンプPは,それぞれ制御部60に電気的に接続されており,その作動が制御部60によって後述するように制御される。
前述した赤外線式ガスセンサ70,および増幅回路11は制御部60に接続されており,赤外線式ガスセンサ70および増幅回路11からの出力信号(ガス濃度信号)は,制御部60が備えるA/D変換器にてそれぞれA/D変換され,所定の演算処理がなされて表示部に濃度測定結果としてデジタル表示される。なお,測定結果はプリンタにてプリントアウトすることが可能である。
【0037】
制御部60は,タイマ機能を備えており,このタイマ機構によって,この測定装置のユーザーが測定待機時間を設定することができるようになっている。制御部60は,ユーザーによって設定された上記測定待機時間に基づき,上記電磁弁SV1〜SV3,SV4−1,第1切換弁SV5,第2切換弁SV4−2,およびポンプPを後述のように作動させて燻蒸庫C内の酸化エチレン濃度を経時的に測定させる。なお,測定動作を行う際には,前述したように,手動操作バルブ25,55は予め開いておく。また,前述したように,第1切換弁SV5は,通常,バイパス管50側に切り替わっており,第2切換弁SV4−2は,通常,燻蒸ガス戻し管54側を閉じている。
制御部60は,上述したような演算および制御を可能とする演算・制御プログラムが格納されたマイクロコントローラで構成されている。
【0038】
以下,前述した燻蒸作業における各工程と対応させて,制御部60による測定シーケンスについて説明する。
図6および図7は制御部60による測定シーケンスを示すフローチャートである。
図6は投薬モードによるシーケンスを示しており,図7は燻蒸モードによるシーケンスを示している。なお,図7に示す燻蒸モードにおけるシーケンスは,制御部60が備えるタイマーにより,60分おきに燻蒸ガスGの測定動作を3分間行うように設定された場合を示している。
【0039】
燻蒸作業の前述した投薬工程を行う際に,当該投薬工程における上記(1)〜(8)の作業を行った後,すなわち燻蒸ガス元弁122,投薬弁124を閉じた後,(9)の作業すなわち,燻蒸ガス濃度測定装置1にて燻蒸ガスGが適量投薬されたことの確認作業を行うべく,モード切替スイッチ90を投薬モードに設定し,燻蒸ガス濃度測定装置1を作動させる。これにより,制御部60は,図6に示す下記シーケンスを実行する。
【0040】
(1)ステップST1で測定がスタートし,ステップST2〜7で採気管21,22,23内のガス置換を以下のようにして行う。
(2)ステップST2で,ポンプPを作動させるとともに,採気管21(CH.1)の電磁弁SV1をON(開)し,かつ,第2切換弁SV4−2を燻蒸ガス戻し管54側に切り替えて,58秒間,採気管21を通じて燻蒸庫C内の燻蒸ガスGを第1切換弁SV5まで吸引する。
この際,前述したように,第1切換弁SV5はバイパス管50側に切り替わっており,第2切換弁SV4−2は燻蒸ガス戻し管54側に切り替わっているので,採気管21を通じて吸引された燻蒸ガスGは,赤外線式ガスセンサ70および接触燃焼式ガスセンサDSへ導入されることなく,バイパス管50,第2切換弁SV4−2,および燻蒸ガス戻し管54を経て燻蒸庫C内へ戻される。
(3)ステップST3で,採気管21(CH.1)の電磁弁SV1をOFF(閉)するとともに,ポンプPを停止させる(これらの動作に2秒間かかる)。
【0041】
(4)ステップST4で,ポンプPを作動させるとともに,採気管22(CH.2)の電磁弁SV2をON(開)し,58秒間,採気管22を通じて燻蒸庫C内の燻蒸ガスGを第1切換弁SV5まで吸引する。
この際,前述したと同様,第1切換弁SV5はバイパス管50側に切り替わっており,第2切換弁SV4−2は燻蒸ガス戻し管54側に切り替わっているので,採気管22を通じて吸引された燻蒸ガスGは,赤外線式ガスセンサ70および接触燃焼式ガスセンサDSへ導入されることなく,バイパス管50,第2切換弁SV4−2,および燻蒸ガス戻し管54を経て燻蒸庫C内へ戻される。
(5)ステップST5で,採気管22(CH.2)の電磁弁SV2をOFF(閉)するとともに,ポンプPを停止させる(これらの動作に2秒間かかる)。
【0042】
(6)ステップST6で,ポンプPを作動させるとともに,採気管23(CH.3)の電磁弁SV3をON(開)し,58秒間採気管23を通じて燻蒸庫C内の燻蒸ガスGを第1切換弁SV5まで吸引する。
この際,前述したと同様,採気管23を通じて吸引された燻蒸ガスGは,バイパス管50,第2切換弁SV4−2,および燻蒸ガス戻し管54を経て燻蒸庫C内へ戻される。
(7)ステップST7で,採気管23(CH.3)の電磁弁SV3をOFF(閉)するとともに,ポンプPを停止させる(これらの動作に2秒間かかる)。
【0043】
以上のようなステップST2〜ST7の動作により,採気管21,22,23内のガスが,燻蒸ガスGで満たされる。なお,このステップST2〜ST7においては,燻蒸ガスGは第1切換弁SV5までは導入されるが,赤外線式ガスセンサ70および接触燃焼式ガスセンサDSへ導入されることなく燻蒸庫C内へ戻されるので,燻蒸ガスG中の酸化エチレン濃度の測定は行われない。
【0044】
ステップST8以降で測定動作を行わせる。
この実施の形態では,先ずステップST8〜ST17で,赤外線式ガスセンサ70にて燻蒸庫C内における殺菌・殺虫用ガスの濃度を測定して第1測定値を得,次いで図7に示すステップST20〜ST37で,接触燃焼式ガスセンサDSにて燻蒸庫C内における殺菌・殺虫用ガスの濃度を測定して第2測定値を得るとともに,第1測定値を第2測定値で割った補正値を得,その後,経時的に,接触燃焼式ガスセンサDSにて燻蒸庫C内における殺菌・殺虫用ガスの濃度を間欠的に繰り返し測定し,その測定値に補正値を乗じた値を,燻蒸庫C内におけるガス濃度値として間欠的に繰り返し得る。
【0045】
(8)ステップST8で,第1測定値を得るための測定動作を開始するが,先ず,ゼロ調整を行う。すなわち,ポンプPを作動させるとともに,エア用電磁弁SV4−1をON(開)し,かつ,第1切換弁SV5を赤外線式ガスセンサ70および接触燃焼式ガスセンサDS側に,第2換弁SV4−2をエア排気側(図2中「NO」参照)に切り替えて,38秒間エアを赤外線式ガスセンサ70および接触燃焼式ガスセンサDSへ導入する。赤外線式ガスセンサ70および接触燃焼式ガスセンサDSへ導入されたエアは,赤外線式ガスセンサ70の測定セル71を通過し連通管20bを経て接触燃焼式ガスセンサDSに接触した後,排気管51,合流管53,および第2切換弁SV4−2を経て大気中へ排出される。
ゼロ調整は,制御部60が,このエア導入中において,赤外線式ガスセンサ70の出力が安定した時点で,測定値をゼロに設定する(すなわち測定値をリセットする)ことにより行われる。
上記ゼロ調整後(すなわち38秒経過後)エア用電磁弁SV4−1を閉じる。
【0046】
(9)上記エア用電磁弁SV4−1を閉じるとともに,ステップST9で,採気管21(CH.1)の電磁弁SV1をON(開)し,かつ,第2切換弁SV4−2を燻蒸ガス戻し管54側に切り替えて,20秒間,採気管21を通じて燻蒸庫C内の燻蒸ガスGを赤外線式ガスセンサ70および接触燃焼式ガスセンサDSへ導入して燻蒸ガスG中の殺菌・殺虫用ガス(酸化エチレン)の濃度の測定を赤外線式ガスセンサ70にて行う。これによって,燻蒸庫C内の上部における酸化エチレン濃度が測定される。
なお,接触燃焼式ガスセンサDSにも燻蒸ガスGは導入されるが,第1測定値が得られるまでは(ステップST19までは),接触燃焼式ガスセンサDSによる測定は行わない(モード切替スイッチ90が投薬モードになっているとき,接触燃焼式ガスセンサDSの信号は制御部60において無視される)。
酸化エチレンの濃度測定は,制御部60が,この燻蒸ガスGの導入中において,赤外線式ガスセンサ70の出力が安定した時点で,ガス濃度計算を行い,その結果を記憶手段80に記憶させるとともに表示部(60)に表示させることにより行われる。
なお,赤外線式ガスセンサ70および接触燃焼式ガスセンサDSへ導入された燻蒸ガスGは,接触燃焼式ガスセンサDSに接触した後,排気管51,合流管53,第2切換弁SV4−2,および燻蒸ガス戻し管54を経て燻蒸庫C内(燻蒸庫Cの上部)へ戻される。
上記濃度測定後(電磁弁SV1をONしてから20秒経過後),採気管21(CH.1)の電磁弁SV1を閉じる(OFFする)。
(10)上記電磁弁SV1を閉じるとともに,ステップST10で,ポンプPを2秒間停止させる。
【0047】
(11)ステップST11でポンプPを作動させるとともに,ステップST8同様,エア用電磁弁SV4−1をON(開)し,かつ,第2換弁SV4−2をエア排気側(図2中「NO」参照)に切り替えて,38秒間エアを赤外線式ガスセンサ70へ導入し,ゼロ調整を行った後,エア用電磁弁SV4−1を閉じる。なお,赤外線式ガスセンサ70へ導入されたエアは,排気管51,合流管53,および第2切換弁SV4−2を経て大気中へ排出される。
【0048】
(12)上記エア用電磁弁SV4−1を閉じるとともに,ステップST12で,採気管22(CH.2)の電磁弁SV2をON(開)し,かつ,第2切換弁SV4−2を燻蒸ガス戻し管54側に切り替えて,20秒間採気管22を通じて燻蒸庫C内の燻蒸ガスGを赤外線式ガスセンサ70へ導入して燻蒸ガスG中の酸化エチレン濃度の測定,記憶,表示を先と同様に行う。これによって,燻蒸庫C内の中程における酸化エチレン濃度が測定される。
なお,赤外線式ガスセンサ70へ導入された燻蒸ガスGは,先と同様,燻蒸庫C内へ戻される。
上記濃度測定後(電磁弁SV2をONしてから20秒経過後),採気管22(CH.2)の電磁弁SV2を閉じる(OFFする)。
(13)上記電磁弁SV2を閉じるとともに,ステップST13で,ポンプPを2秒間停止させる。
【0049】
(14)ステップST14でポンプPを作動させるとともに,ステップST8同様,エア用電磁弁SV4−1をON(開)し,かつ,第2換弁SV4−2をエア排気側(図2中「NO」参照)に切り替えて,38秒間エアを赤外線式ガスセンサ70へ導入し,ゼロ調整を行った後,エア用電磁弁SV4−1を閉じる。なお,赤外線式ガスセンサ70へ導入されたエアは,先と同様,大気中へ排出される。
【0050】
(15)上記エア用電磁弁SV4−1を閉じるとともに,ステップST15で,採気管23(CH.3)の電磁弁SV3をON(開)し,かつ,第2切換弁SV4−2を燻蒸ガス戻し管54側に切り替えて,20秒間,採気管23を通じて燻蒸庫C内の燻蒸ガスGを赤外線式ガスセンサ70へ導入して燻蒸ガスG中の酸化エチレン濃度の測定,記憶,表示を先と同様に行う。これによって,燻蒸庫C内の下部における酸化エチレン濃度が測定される。なお,赤外線式ガスセンサ70へ導入された燻蒸ガスGは,先と同様燻蒸庫C内へ戻される。
上記濃度測定後(電磁弁SV3をONしてから20秒経過後),採気管23(CH.3)の電磁弁SV3を閉じる(OFFする)。
(16)上記電磁弁SV3を閉じるとともに,ステップST16で,ポンプPを2秒間停止させる。
【0051】
(17)以上のステップST8〜ST16で第1測定値に関する1回(1サイクル)の測定動作が終了する。ステップST17では,上記ステップ9,12,15にて得られ記憶されていた測定値,すなわち,燻蒸庫Cにおける上部(CH.1),中部(CH.2),下部(CH.3)の測定値を比較し,それらの測定値が均等であるか否かを判断する。また,その測定値が所定値(この場合1.5%)に達しているか否かを判断する。
CH.1〜3の測定値が均等でないかあるいは所定値に達していない場合には,上記ステップST8〜17を繰り返す。
CH.1〜3の測定値が均等で(測定値が一致し)かつ所定値に達している場合には,図7に示すステップST18以降の燻蒸モードに進む。燻蒸モードへの切替は,モード切替スイッチ90を切り替えることによってなされる。ステップST17における判断およびモード切替スイッチ90の切替動作は,作業者(人手)によって行うこともできるし,制御部60が行うようにすることもできる。
なお,「測定値が一致(均等)」であるか否かは,測定精度との関係で適宜決定することができる。例えば本発明を実施する上で,また赤外線式ガスセンサ70および接触燃焼式ガスセンサDSの測定精度との関係で0.1%レベルでの一致が望ましい(求められる,あるいはそれで十分である)のであればそのように決定すればよいし,0.01%レベルでの一致が望ましい(求められる,あるいはそれで十分である)のであればそのように決定すればよい。
【0052】
(18)モード切替スイッチ90が燻蒸モードに切り替えられることで,ステップST18で燻蒸モードに入る。
(19)ステップST19では,上記ステップST17においてCH.1〜3の測定値が均等で(測定値が一致し)かつ所定値に達していると判断された際の,その測定値を第1測定値として記憶手段80に記憶させる。この実施の形態では,CH.1の測定値を第1測定値として記憶させるが,CH.1〜3の測定値は一致しているから,CH.2またはCH.3の測定値を第1測定値として記憶させることもできる。
【0053】
(20)ステップST20で,燻蒸庫C内におけるガス濃度値(酸化エチレン濃度値)を経時的に得るための測定動作を開始するが,先ず,ゼロ調整を行う。すなわち,ポンプPを作動させるとともに,エア用電磁弁SV4−1をON(開)し,かつ,第1切換弁SV5を赤外線式ガスセンサ70および接触燃焼式ガスセンサDS側に,第2換弁SV4−2をエア排気側(図2中「NO」参照)に切り替えて,38秒間エアを接触燃焼式ガスセンサDSへ導入する。接触燃焼式ガスセンサDSへ導入されたエアは,接触燃焼式ガスセンサDSに接触した後,排気管51,合流管53,および第2切換弁SV4−2を経て大気中へ排出される。
ゼロ調整は,制御部60が,このエア導入中において,接触燃焼式ガスセンサDSの出力が安定した時点で,測定値をゼロに設定する(すなわち測定値をリセットする)ことにより行われる。
上記ゼロ調整後(すなわち38秒経過後)エア用電磁弁SV4−1を閉じる。
【0054】
(21’)上記エア用電磁弁SV4−1を閉じるとともに,ステップST21’で,採気管21(CH.1)の電磁弁SV1をON(開)し,かつ,第2切換弁SV4−2を燻蒸ガス戻し管54側に切り替えて,20秒間,採気管21を通じて燻蒸庫C内の燻蒸ガスGを接触燃焼式ガスセンサDSへ導入して燻蒸ガスG中の酸化エチレン濃度の測定を行う。
なお,赤外線式ガスセンサ70にも燻蒸ガスGは導入されるが,上記第1測定値が得られた後(ステップST20以降は),赤外線式ガスセンサ70による測定は行わない(モード切替スイッチ90が燻蒸モードになっているとき,赤外線式ガスセンサ70の信号は制御部60において無視される)。
接触燃焼式ガスセンサDSによる酸化エチレンの濃度測定値は,制御部60が,燻蒸ガスGの導入中において,接触燃焼式ガスセンサDSの出力が安定した時点で,ガス濃度計算を行うことによって得られる。
このステップST21’では,上のようにして接触燃焼式ガスセンサDSにて得られた第1回目の測定値を第2測定値とし,この第2測定値で前記第1測定値を割った値を補正値として記憶手段80に記憶させる。
上のようにして接触燃焼式ガスセンサDSにて得られた第1回目の測定値が,例えば1.3%であったとしたら,この測定値=1.3%を第2測定値とし,この第2測定値=1.3%で前記第1測定値(例えば1.5%)を割った値である1.153846154を補正値として記憶手段80に記憶させる。
またこのステップST21’では,上記第1回目の測定値に上記補正値を乗じた1.5%を,燻蒸庫C内におけるガス濃度値として表示部(60)に表示させる。これによって,燻蒸庫C内の上部における酸化エチレン濃度(すなわち殺菌・殺虫能力)を把握することができる。
接触燃焼式ガスセンサDSへ導入された燻蒸ガスGは,先と同様,燻蒸庫C内(燻蒸庫Cの上部)へ戻される。
上記濃度測定後(電磁弁SV1をONしてから20秒経過後),採気管21(CH.1)の電磁弁SV1を閉じる(OFFする)。
【0055】
なお,このステップST21’は,接触燃焼式ガスセンサDSによる第1回目の測定時にのみ実行され,第2回目以降の測定時には実行されない。第2回目以降の測定時には,ステップST21が実行される。
ステップST21がステップST21’と異なる点は,補正値を算出せず,したがってまた補正値を記憶させない点にあり,その他の点に変わりはない。
【0056】
(22)上記電磁弁SV1を閉じるとともに,ステップST22で,ポンプPを2秒間停止させる。
【0057】
(23)ステップST23でポンプPを作動させるとともに,ステップST20同様,エア用電磁弁SV4−1をON(開)し,かつ,第2換弁SV4−2をエア排気側(図2中「NO」参照)に切り替えて,38秒間エアを接触燃焼式ガスセンサDSへ導入し,ゼロ調整を行った後,エア用電磁弁SV4−1を閉じる。なお,接触燃焼式ガスセンサDSへ導入されたエアは,排気管51,合流管53,および第2切換弁SV4−2を経て大気中へ排出される。
【0058】
(24)上記エア用電磁弁SV4−1を閉じるとともに,ステップST24で,採気管22(CH.2)の電磁弁SV2をON(開)し,かつ,第2切換弁SV4−2を燻蒸ガス戻し管54側に切り替えて,20秒間採気管22を通じて燻蒸庫C内の燻蒸ガスGを接触燃焼式ガスセンサDSへ導入して燻蒸ガスG中の酸化エチレン濃度の測定を先と同様に行う。
そして,その測定値に,上記ステップST21’で得られた補正値(=1.153846154)を乗じた値を算出し,その値を燻蒸庫C内におけるガス濃度値として表示部(60)に表示させる。これによって,燻蒸庫C内の中程における酸化エチレン濃度(すなわち殺菌・殺虫能力)を把握することができる。
なお,接触燃焼式ガスセンサDSへ導入された燻蒸ガスGは,先と同様燻蒸庫C内へ戻される。
上記濃度測定後(電磁弁SV2をONしてから20秒経過後),採気管22(CH.2)の電磁弁SV2を閉じる(OFFする)。
(25)上記電磁弁SV2を閉じるとともに,ステップST13で,ポンプPを2秒間停止させる。
【0059】
(26)ステップST26でポンプPを作動させるとともに,ステップST20同様,エア用電磁弁SV4−1をON(開)し,かつ,第2換弁SV4−2をエア排気側(図2中「NO」参照)に切り替えて,38秒間エアを接触燃焼式ガスセンサDSへ導入し,ゼロ調整を行った後,エア用電磁弁SV4−1を閉じる。なお,接触燃焼式ガスセンサDSへ導入されたエアは,大気中へ排出される。
【0060】
(27)上記エア用電磁弁SV4−1を閉じるとともに,ステップST27で,採気管23(CH.3)の電磁弁SV3をON(開)し,かつ,第2切換弁SV4−2を燻蒸ガス戻し管54側に切り替えて,20秒間採気管23を通じて燻蒸庫C内の燻蒸ガスGを接触燃焼式ガスセンサDSへ導入して燻蒸ガスG中の酸化エチレン濃度の測定を先と同様に行う。
そして,その測定値に,上記ステップST21’で得られた補正値(=1.153846154)を乗じた値を算出し,その値を燻蒸庫C内におけるガス濃度値として表示部(60)に表示させる。これによって,燻蒸庫C内の下部における酸化エチレン濃度(すなわち殺菌・殺虫能力)を把握することができる。
なお,接触燃焼式ガスセンサDSへ導入された燻蒸ガスGは,先と同様燻蒸庫C内へ戻される。
上記濃度測定後(電磁弁SV3をONしてから20秒経過後),採気管23(CH.3)の電磁弁SV3を閉じる(OFFする)。
(28)上記電磁弁SV3を閉じるとともに,ステップST28で,ポンプPを2秒間停止させる。
【0061】
以上のステップST20〜ST28で接触燃焼式ガスセンサDSおよび補正値を用いた1回(1サイクル)の測定動作が終了するが,上記ステップ28が終了した時点では,接触燃焼式ガスセンサDSに燻蒸ガスGが導入されたままであるので,これを放置すると,接触燃焼式ガスセンサDSが燻蒸ガスGに含まれるHFC134a(触媒毒)との接触によって,感度低下を来す。
【0062】
そこで,この実施の形態では,以下のステップST29で掃気動作を行う。すなわち,
(29)ステップST29で,ポンプPを作動させるとともに,エア用電磁弁SV4−1をON(開)し,かつ,第2換弁SV4−2をエア排気側(図2中「NO」参照)に切り替えて,38秒間エアを接触燃焼式ガスセンサDSへ導入して接触燃焼式ガスセンサDSのガスチャンバDS1内(図5参照)および温度補償素子CSのガスチャンバCS1内を掃気する。上記チャンバ内を掃気したエアは,排気管51,合流管53,および第2切換弁SV4−2を経て大気中へ排出される。
なお,上記掃気動作後,ポンプPを停止させるとともに,エア用電磁弁SV4−1を閉じる。
【0063】
(30)その後,ステップST30で上記ステップST20〜ステップST28で得られた測定結果,すなわち,補正値により補正されたガス濃度値とその測定時刻とをプリンタでプリントアウトさせる。
【0064】
(31)ステップST31で待機状態に入る。
待機状態においては,ユーザーが設定した待機時間,上記測定動作が停止される。
待機時間は,例えば60分ごとに上記測定動作を行う場合には,60分から測定動作に要する時間(例えば7分)を引いた値(53分)が設定される。
【0065】
待機時間が経過した後,ステップST32〜37で採気管21,22,23内のガス置換を行う。このガス置換動作は,前述したステップST2〜7による動作と同一であるので,その説明は省略する。
ステップST32〜37の動作により,採気管21,22,23内のガスは,1サイクル経過後(上記の例では60分経過後)の燻蒸ガスGで満たされる。
その後,上記ステップST20以降の制御を繰り返す。例えば,24時間の測定が必要な場合には,24時間経過するまで繰り返す。
その後,前述した排気行程がなされ,燻蒸作業が終了する。
【0066】
以上のような燻蒸ガス濃度測定方法ないし燻蒸ガス濃度測定装置1によれば次のような作用効果が得られる。
(a)燻蒸ガスGを燻蒸庫C内に入れた後,先ず赤外線式ガスセンサ70にて燻蒸庫C内における殺菌・殺虫用ガスの濃度を測定して第1測定値を得るから(ステップST9参照),殺菌・殺虫用ガスの希釈用ガスに対する相対濃度が高い初期段階において,赤外線式ガスセンサ70にて正確に第1測定値を得ることができる。赤外線式ガスセンサは,ガス感度の安定性および再現性に優れているから,燻蒸作業を長期に亘って何度行ったとしても,第1測定値は,その度ごとに正確に得ることができる。
次いで,接触燃焼式ガスセンサ70にて燻蒸庫内における殺菌・殺虫用ガスの濃度を測定して第2測定値を得るとともに,第1測定値を第2測定値で割った補正値を得るが,このとき,接触燃焼式ガスセンサDSの感度が仮に低下していたとしても,上記第1測定値は正確に得られているから,補正値自体は正確に得ることができる(ステップST21’参照)。
その後,経時的に,接触燃焼式ガスセンサDSにて燻蒸庫内における殺菌・殺虫用ガスの濃度を間欠的に繰り返し測定し,その測定値に前記補正値を乗じた値を,燻蒸庫内におけるガス濃度値として間欠的に繰り返し得るから,仮に,接触燃焼式ガスセンサの感度が長期運用により低下していたとしても,燻蒸庫内における殺菌・殺虫用ガスの濃度を経時的に正確に測定することが可能となる(ステップST20〜30参照)。
上記の補正は,燻蒸作業が行われる度になされるから,長期に亘って,正確なガス濃度測定を行うことが可能となる。
(b)赤外線式ガスセンサ70による測定は,燻蒸庫内空間の上下方向において2以上の箇所(この実施の形態では上中下の3箇所)で行い,それらの測定値が一致したとき,該測定値を第1測定値とするから(ステップST17参照),第1測定値を,より正確に得ることができ,したがって,より正確な補正値を得ることができる。
(c)第2測定値自体に関しても,前記補正値を乗じて,燻蒸庫内におけるガス濃度値を得るから,接触燃焼式ガスセンサDSによる初回の測定値である第2測定値を,補正値を得るためだけでなく,接触燃焼式ガスセンサDSに基づく初回のガス濃度値を得るのに利用できる。
(d)赤外線式ガスセンサ70に燻蒸庫内の燻蒸ガスを導入する導入経路と,接触燃焼式ガスセンサDSに燻蒸庫内の燻蒸ガスを導入する導入経路とを,共通の導入経路(燻蒸ガス導入管20およびこれに介装された弁SV1〜3,フィルタ24,弁25,ポンプP,弁SV5)で構成したので,前記補正値をより正確に得ることができる。
仮に,赤外線式ガスセンサ70に燻蒸庫内の燻蒸ガスを導入する導入経路と,接触燃焼式ガスセンサDSに燻蒸庫内の燻蒸ガスを導入する導入経路とを,個別に構成したとすると,赤外線式ガスセンサ70に導入される燻蒸ガスの状態(例えば,温度や混合状態)と,接触燃焼式ガスセンサDSに導入される燻蒸ガスの状態との間に大きな差異が生じるおそれが生じ,前記補正値を正確に得ることができなくなるおそれが大きくなる。
これに対し,この実施の形態によれば,赤外線式ガスセンサ70に燻蒸庫内の燻蒸ガスを導入する導入経路と,接触燃焼式ガスセンサDSに燻蒸庫内の燻蒸ガスを導入する導入経路とを共通の導入経路で構成したので,赤外線式ガスセンサ70に導入される燻蒸ガスの状態と,接触燃焼式ガスセンサDSに導入される燻蒸ガスの状態との間に大きな差異が生じないか生じたとしてもその差異は著しく小さくなる。したがって,前記補正値をより正確に得ることができる。
【0067】
以上,本発明の実施の形態について説明したが,本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく,本発明の要旨の範囲内において適宜変形実施可能である。
例えば,使用する燻蒸ガスは「エキヒューム」に限らず,殺菌・殺虫性および可燃性ならびに赤外線吸収性を有する殺菌・殺虫用ガスと,この殺菌・殺虫用ガスよりも弱い赤外線吸収性を有しかつ触媒毒として作用する希釈用ガスとを含む燻蒸ガスを使用する場合には,本発明を適用し得る。
なお,この実施の形態では,第1測定値を第2測定値で割った値を補正値として得,接触燃焼式ガスセンサDSにて得られた測定値に該補正値を乗じた値をガス濃度値として得るようにしたが,第2測定値を第1測定値で割った値を補正値として用い,接触燃焼式ガスセンサDSにて得られた測定値を該補正値で割っても同一の結果が得られるから,両者は実質的に同一であり,したがって,請求項1はそのように読み替えることが可能である。
【符号の説明】
【0068】
C 燻蒸庫
1 燻蒸ガス濃度測定装置
M1 第1測定手段
M2 第2測定手段
20 燻蒸ガス導入管(導入経路)
60 制御部
70 赤外線式ガスセンサ
DS 接触燃焼式ガスセンサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燻蒸庫内に燻蒸対象物を収納し,殺菌・殺虫性および可燃性ならびに赤外線吸収性を有する殺菌・殺虫用ガスと,この殺菌・殺虫用ガスよりも弱い赤外線吸収性を有しかつ触媒毒として作用する希釈用ガスと,を含む燻蒸ガスを燻蒸庫内に入れて燻蒸対象物を燻蒸するに際し,
燻蒸ガスを燻蒸庫内に入れた後,先ず赤外線式ガスセンサにて燻蒸庫内における前記殺菌・殺虫用ガスの濃度を測定して第1測定値を得,次いで,接触燃焼式ガスセンサにて燻蒸庫内における前記殺菌・殺虫用ガスの濃度を測定して第2測定値を得るとともに,前記第1測定値を第2測定値で割った補正値を得,その後,経時的に,前記接触燃焼式ガスセンサにて燻蒸庫内における前記殺菌・殺虫用ガスの濃度を間欠的に繰り返し測定し,その測定値に前記補正値を乗じた値を,燻蒸庫内におけるガス濃度値として間欠的に繰り返し得ることを特徴とする燻蒸ガス濃度測定方法。
【請求項2】
前記赤外線式ガスセンサによる測定は,燻蒸庫内空間の上下方向において2以上の箇所で行い,それらの測定値が一致したとき,該測定値を前記第1測定値とすることを特徴とする請求項1記載の燻蒸ガス濃度測定方法。
【請求項3】
前記第2測定値自体に関しても,前記補正値を乗じて,燻蒸庫内におけるガス濃度値を得ることを特徴とする請求項1または2記載の燻蒸ガス濃度測定方法。
【請求項4】
請求項1記載の燻蒸ガス濃度測定方法を用いたガス濃度測定装置であって,
燻蒸庫内の燻蒸ガスを赤外線式ガスセンサに導入して燻蒸ガス中の殺菌・殺虫用ガスの濃度を測定して前記第1測定値を得る第1測定手段と,
燻蒸庫内の燻蒸ガスを接触燃焼式ガスセンサに導入して燻蒸ガス中の殺菌・殺虫用ガスの濃度を測定して前記第2測定値を得る第2測定手段と,
前記第1測定値を前記第2測定値で割って前記補正値を得るとともに,その補正値を記憶し,その後の前記第2測定手段による測定値に前記補正値を乗じた値を,燻蒸庫内におけるガス濃度値として得る制御部と,
を備えていることを特徴とする燻蒸ガス濃度測定装置。
【請求項5】
前記赤外線式ガスセンサに燻蒸庫内の燻蒸ガスを導入する導入経路と,前記接触燃焼式ガスセンサに燻蒸庫内の燻蒸ガスを導入する導入経路とを,共通の導入経路で構成したことを特徴とする請求項4記載の燻蒸ガス濃度測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−249528(P2010−249528A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−96043(P2009−96043)
【出願日】平成21年4月10日(2009.4.10)
【出願人】(500098149)株式会社東科精機 (5)
【Fターム(参考)】