説明

物体検出センサおよび警備システム

【課題】退出する利用者を侵入者として検出することなく、監視範囲を監視可能な物体検出センサを提供する。
【解決手段】警戒領域を走査して取得した現在の測距データと基準データとを比較して警戒領域内の侵入物体の存在有無を判定する物体検出センサであって、利用者が退出する際に通行する警戒領域内の領域である退出領域を記憶し、警備装置から警備開始信号の入力を受けると所定時間が経過するまでは退出領域を除いた警戒領域内の侵入物体の存在有無を判定し、所定時間が経過すると退出領域を含む警戒領域内の侵入物体の存在有無を判定する物体検出センサ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光線の投受光により監視領域内の被検出物までの距離を検出する物体検出センサに関し、特に、利用者が監視領域から退出する際に監視可能な物体検出センサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、屋外などの広域な監視範囲を監視するために、レーザ光線や可視光線、超音波、赤外線などの各種探査信号を監視範囲内に照射して、対象物からの反射回帰信号を受信することで監視範囲における物体を検出する物体検出センサが知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、所定角度範囲を回転走査しながらレーザ光を投光し、反射光の受光時に算出される距離値より侵入者の存在を判定するレーザセンサを用いた警備システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−241062号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、この特許文献1のレーザセンサを屋外に設置して建物の周囲を監視範囲とする場合、次のような問題が生じ得る。
すなわち、建物から退出しようとする利用者は、退出時に建物の出入口から外に出て建物周囲の一部を通行する必要がある。ここで、セキュリティ性を向上させるために退出時の利用者の通行経路を含む領域を監視範囲とするレーザセンサを設置すると、利用者が建物から退出する際にレーザセンサによって侵入者として検出されてしまうという問題が生じ得る。
【0006】
そこで、本発明は、退出する利用者を侵入者として検出することなく、監視範囲を監視可能な物体検出センサを提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために本発明による物体検出センサは、監視区域を監視する警備装置と接続される通信部を有し、該監視区域に含まれる警戒領域内を監視して該警戒領域内の侵入物体を検出する物体検出センサであって、利用者が前記監視区域を退出する際に通行する前記警戒領域内の領域である退出領域を記憶する記憶部と、前記警戒領域内を走査して該警戒領域における方向ごとに被測定物までの距離を示す測距データを生成する検知部と、前記測距データに基づき前記警戒領域内における方向ごとの基準データを生成して前記記憶部に記憶する基準データ生成部と、現在の前記測距データと前記基準データとを比較して侵入物体の存在有無を判定する侵入判定部と、を備え、前記侵入判定部は、前記警備装置から警備開始信号の入力を受けると所定時間が経過するまでは前記退出領域を除いた前記警戒領域内の侵入物体の存在有無を判定し、前記所定時間が経過すると前記退出領域を含む前記警戒領域内の侵入物体の存在有無を判定することを特徴とする。
【0008】
かかる構成において、物体検出センサは、警備装置にて監視区域の監視が開始されると、所定時間の間、利用者の退出経路となる退出領域を除いた警戒領域内について侵入物体の存在有無を判定する。そして、物体検出センサは、所定時間が経過すると、退出領域を含む警戒領域内について侵入物体の存在有無を判定する。
【0009】
これにより、利用者は、警備装置にて監視区域の監視を開始させた後、所定時間の間は、物体検出センサに侵入物体として判定されずに退出領域を通行することができる。さらに、物体検出センサは、所定時間の間であっても、退出領域を除く警戒領域内は監視を行い、所定時間が経過すると、退出領域を含む警戒領域内の監視を行うようになる。
従って、警備装置による警備開始後、利用者を侵入物体と判定することを防止しつつも、退出領域を含む警戒領域を監視することができる。
【0010】
また、本発明の物体検出センサにおいて、さらに、前記基準データ生成部は、前記所定時間が経過したときに、前記測距データから前記退出領域について基準データを生成するとともに、該生成した基準データと少なくとも前記所定時間経過前に生成されて前記記憶部に記憶している基準データとから前記退出領域を含む前記警戒領域全体の基準データを生成し、該基準データを前記記憶部に記憶してもよい。
【0011】
これにより、物体検出センサは、所定時間が経過した後は、退出者がいなくなった退出領域について基準データを生成し、この基準データを用いて退出領域の監視を行うことができる。
【0012】
また、本発明の物体検出センサにおいて、さらに、前記基準データ生成部は、前記警備装置から警備開始信号の入力を受けたときに、前記退出領域を除いた前記警戒領域について基準データを生成して前記記憶部に記憶してもよい。
【0013】
これにより、物体検出センサは、警備装置の警備開始後の所定時間は、退出領域を除いた警戒領域についての基準データと現在の測距データとを比較して侵入物体の存在有無を判定するので、退出者を侵入者と誤判定することを防止しつつ、退出領域を含む警戒領域を監視することができる。
【0014】
また、本発明の物体検出センサにおいて、さらに、前記退出領域において前記監視区域から退出する退出物体の存在有無を判定する退出判定部を備え、前記侵入判定部は、前記警備装置から警備開始信号の入力を受けたときに前記所定時間の計時を開始し、前記所定時間を計時中に前記退出判定部にて退出物体の存在有りと判定された後に退出物体の存在無しと判定されると、前記所定時間が経過したと判定するようにしてもよい。
【0015】
これにより、物体検出センサは、退出領域から利用者が退出したことを判定したときに、強制的に所定時間が経過したと判定して警戒領域全体の監視を行うので、利用者が退出領域を退出した場合には速やかに警戒領域全体の監視を行うことができる。
【0016】
また、本発明の物体検出センサにおいて、さらに、前記退出領域において前記監視区域から退出する退出物体の存在有無を判定する退出判定部を備え、前記侵入判定部は、前記警備装置から警備開始信号の入力を受け、前記退出判定部にて退出物体の存在有りと判定された後に退出物体の存在無しと判定されると前記所定時間の計時を開始するようにしてもよい。
【0017】
これにより、物体検出センサは、退出領域から利用者が退出することを判定したときに所定時間の計時を開始し、この所定時間が経過したときに警戒領域全体の監視を行うので、実際の利用者の退出状況に応じて警戒領域全体の監視を行うまでの期間を動的に設定することができ、高齢者など速やかに監視区域から退出できない利用者であっても退出完了までの間に退出領域の監視が開始されてしまうことを防止することができる。
【0018】
また、上記の目的を達成するために本発明による警備システムは、警戒領域内を監視して該警戒領域内の物体を検出する物体検出センサと、前記警戒領域を含む監視区域を監視する警備装置とを備えた警備システムであって、前記物体検出センサは、利用者が前記監視区域を退出する際に通行する前記警戒領域内の領域である退出領域を記憶する記憶部と、前記警戒領域内を走査して該警戒領域における方向ごとに被測定物までの距離を示す測距データを生成する検知部と、前記測距データに基づき前記警戒領域内における方向ごとの基準データを生成して前記記憶部に記憶する基準データ生成部と、現在の前記測距データと前記基準データとを比較して侵入物体の存在有無を判定する侵入判定部と、前記警備装置と接続される第1の通信部と、を備え、前記警備装置は、前記監視区域の異常を遠隔の監視センタに通報する警備セットモードと前記監視区域の異常を前記監視センタに通報しない警備解除モードとを設定するモード設定部と、前記警備セットモードが設定されたときに前記物体検出センサに警備開始信号を送信し、前記セットモードが設定されたときから所定時間が経過すると計時終了信号を送信する第2の通信部と、を備え、前記侵入判定部は、前記警備装置から前記警備開始信号の入力を受けると前記警備装置から前記計時終了信号の入力を受けるまでは前記退出領域を除いた前記警戒領域内の侵入物体の存在有無を判定し、前記計時終了信号の入力を受けると前記退出領域を含む前記警戒領域内の侵入物体の存在有無を判定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、利用者は、警備装置にて監視区域の監視を開始させた後、所定時間の間は、物体検出センサに侵入物体有りと判定されずに退出領域を通行することができる。
従って、警備装置による警備開始後、利用者を侵入物体と判定することを防止しつつも、退出領域を含む警戒領域を監視することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の警備システムの全体構成を示す概略図である。
【図2】本発明の物体検出センサの構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の警備装置の構成を示すブロック図である。
【図4】本発明の物体検出センサによる侵入物体の検出方法および本発明の物体検出センサが記憶する退出領域情報の概要を示す図である。
【図5】本発明の物体検出センサによる侵入物判定処理を示す図である。
【図6】本発明の物体検出センサの動作を示すフローチャートである。
【図7】本発明の物体検出センサによる第1の基準データ生成処理を示すフローチャートである。
【図8】本発明の物体検出センサによる第2の基準データ生成処理を示すフローチャートである。
【図9】本発明の物体検出センサによる侵入物判定処理を示すフローチャートである。
【図10】本発明の物体検出センサによる退出判定処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して具体的に説明する。
本実施形態では、監視建物において物体検出センサを用いて屋外監視する警備システムを例示するが、本発明の範囲はこれに限定されるものではない。
図1は、本発明の物体検出センサ2を用いた警備システム1を示す構成図である。
図1は、監視建物3の屋外壁面に設置される物体検出センサ2と、この物体検出センサ2の警戒領域4と、この警戒領域4内に含まれる退出領域4aと、監視建物3内に設置される警備装置5との関係を模式的に平面図上に示している。図1の例では、監視建物3の周囲に3つの物体検出センサ2が設置されている。物体検出センサ2は、それぞれ警備装置5と通信線にて接続されており、警備装置5は、遠隔の監視センタ6と通信回線網7を介して接続されている。なお、特に図示はしていないが、監視建物3の内部にも熱線センサや開閉センサなどの警備センサが設置されており、警備装置5に接続されている。
【0022】
物体検出センサ2は、予め設定された警戒領域4内にレーザ光を照射しながら所定周期で空間走査を行い、光路上にある物体にて反射した反射光を受光することで、領域内に存在する被測定物としての物体の位置を検出する。このようにして、物体検出センサ2は、警戒領域4内に出現する物体を監視し、異常発生と判定すると発生した異常種別と自己のアドレス情報を示す検知信号を警備装置5に出力する。
【0023】
ここで、物体検出センサ2は、不審者など警戒領域4への侵入物体による侵入異常を検出する。侵入異常とは、警戒領域4内に移動物体が侵入して監視建物3を含む監視区域の保全が損なわれ得る場合に判定される異常である。物体検出センサ2は、退出領域4aより利用者が退出しているときは、この退出領域4aを除いた警戒領域4について侵入異常の有無を監視し、利用者の退出が終了した後は、退出領域4aを含む警戒領域4全域について侵入異常の有無を監視する。
【0024】
警備装置5は、監視区域となる監視建物3の内外を監視している。そして、警備装置5は、物体検出センサ2の検知信号などに基づき監視区域の異常を確定し、監視センタ6に異常信号を出力する。
【0025】
監視センタ6は、警備会社などが運営するセンタ装置61を備えた施設である。センタ装置61は、1又は複数のコンピュータで構成されており、本発明に関連する監視センタ6の機能を実現する。監視センタ6では、センタ装置61により各種機器が制御され、警備装置5から受信した異常信号を記録するとともに、異常の情報をディスプレイ62に表示し、監視員が監視対象となる複数の監視区域を監視している。
【0026】
<物体検出センサ>
次に、図2を用いて物体検出センサ2の構成について説明する。図2は、物体検出センサ2の構成を示すブロック図である。
物体検出センサ2は、監視建物3の屋外壁面に水平または一定の俯角を設定されて設置され、警備装置5より電源供給を受けて作動する。
【0027】
物体検出センサ2は、警備装置5と接続され通信を行う通信部21と、レーザ光を照射及び受光する検知部22と、HDDやメモリなどで構成され各種設定情報やプログラムなどを記憶する記憶部23と、MPUやマイコンなどで構成され各部の制御を行う制御部24とを有して概略構成される。
【0028】
通信部21は、警備装置5と接続され、警備装置5から出力される警備開始信号および警備解除信号を受信して制御部24に当該信号を出力する。また、通信部21は、制御部24にて警戒領域4の異常が判定されると、かかる異常の情報と自己のアドレス情報を示す検知信号を警備装置5に送信する。
【0029】
検知部22は、レーザ光により警戒領域4を走査して、レーザ光を反射した被測定物としての物体の位置を検出する。検知部22は、例えば波長890nm程度の近赤外線を発射するレーザ発振部221と、レーザ光を反射して物体検出センサ2より照射させる走査鏡222と、走査鏡222を等速に回転駆動させる走査制御部223と、受光素子を備えてレーザ発振部221の近傍に設けられる反射光検出部224と、レーザ光の照射結果として測距データを生成する測距データ生成部225とを備えている。
【0030】
レーザ発振部221より発射されるレーザ光は、走査鏡222と走査制御部223とにより照射方向を制御されて、少なくとも警戒領域4の全体を走査する。この走査は、物体検出センサ2の設置角に応じて水平な平面について行うか、あるいは、俯角を以て遠距離となるほど地面に近づくような平面について行うことができる。走査は、所定の周期間隔(例えば30msec)で行われ、例えば、同方向について繰り返し行ってもよく、また、往方向の走査を行った後に復方向の走査を行ってもよい。
【0031】
測距データ生成部225は、レーザ光の照射から反射光の検出までに要する時間から算出される物体検出センサ2とレーザ光を反射した物体(測定点)との距離と、走査制御部223により回転駆動される走査鏡222の角度(警戒領域4における方向)とにより、レーザ光を反射した物体、即ちレーザ光を反射した測定点の相対位置を算出する。相対位置は、物体検出センサ2を基準とした測定点の位置であり、具体的には物体においてレーザ光を反射した面の位置である。また、測距データ生成部225は、所定時間内に反射光が返ってこない場合には、レーザ光の照射可能な距離内に物体がないと判断して、所定の擬似データを相対位置として記録する。擬似データは所定の値でよく、例えば物体検出センサ2が監視すべき警戒領域4の外周となる距離値でよい。
【0032】
測距データ生成部225により得られる測定データを本実施形態では測距データと呼ぶ。測距データは、具体的には検知部22による1回の走査で警戒領域4を所定の角度間隔(例えば0.25°)で測定した結果である。例えば、180°の範囲について0.25°間隔で測距データを取得すると721個の距離値が得られる。これら721個の距離値のセットが一つの測距データになる。測距データは、角度(方向)と距離のテーブルとして記憶されてよい。
測距データ生成部225は、所定の周期間隔(例えば30msec)にて検知部22の1回の走査が終了する毎に測距データを生成して制御部24に出力する。
【0033】
記憶部23は、ROMやRAM、又はHDDにて構成され自己を特定するためのアドレス情報と各種プログラムなどを記憶しており、更に物体検出センサ2を動作させるための各種情報を記憶する。具体的に、記憶部23は、設定された警戒領域4を示す警戒領域情報と、設定された退出領域4aを示す退出領域情報と、制御部24にて生成された基準データと、検知部22にて検出された物体のトラッキング情報と、現在の警戒領域4の状態を示す現状態情報とを記憶している。また、記憶部23には、検知部22から出力された過去所定周期分の測距データが記憶されている。
【0034】
警戒領域情報および退出領域情報は、例えば警備会社などによる監視区域の警備プランニングに応じ設定される警戒領域4および退出領域4aを示す情報である。
ここで、この警戒領域4は、物体検出センサ2にて監視すべき範囲として設定される領域である。また、退出領域4aは、警戒領域4内の領域であって、監視区域の警備を警備装置5に開始させた後に監視区域内部から外部に退出する利用者(退出者)が通行する領域である。
【0035】
警戒領域情報および退出領域情報は、物体検出センサ2の設置時や監視区域の警備プランニング変更時などに、設定端末や図示しない操作部などから検知部22による走査面上の範囲を指定されて入力される。
入力された警戒領域4の範囲は、検知部22で走査を行う所定の角度間隔(例えば0.25°)ごとに、検知部22からの角度(方向)と距離値が対応付けられて角度(方向)と距離のテーブルとして記憶部23に警戒領域情報として記憶される。
また、入力された退出領域4aの範囲は、検知部22で走査を行う所定の角度間隔(例えば0.25°)ごとに、検知部22からの角度(方向)と距離値が対応付けられて角度(方向)と距離のテーブルとして記憶部23に退出領域情報として記憶される。
【0036】
ここで、退出領域4aについて図4を用いて詳細に説明する。図4の中央の半円は物体検出センサ2を示し、図4の右側部分に退出領域4aを模式的に示している。
一点鎖線で示される円弧内は警戒領域4であり、退出領域4aはこの警戒領域4内に斜線で示される領域である。退出領域4aの範囲は、検知部22からの距離値としてレーザ光の光軸上における退出領域区間により特定されて退出領域情報に記憶される。退出領域区間は、物体検出センサ2から退出領域区間の開始地点までの距離と、物体検出センサ2から退出領域区間の終了地点までの距離とで指定された情報として退出領域情報に記憶される。例えば、図4に示すように、走査角度αに対応付けられて記憶される退出領域区間は、物体検出センサ2から区間の開始地点までの距離dα1と、物体検出センサ2から区間の終了地点までの距離dα2の情報とで特定され、この場合、退出領域情報には角度αに対応付けて距離dα1、dα2が記憶される。
【0037】
なお、警戒領域情報および退出領域情報は、これに限らず警戒領域4の範囲を示す情報と物体検出センサ2との位置関係、および、退出領域4aの範囲を示す情報と物体検出センサ2との位置関係が識別可能に記憶されていればよく、例えば、物体検出センサ2を原点として相対的な位置関係を示す二次元座標にて設定され記憶していてもよい。
【0038】
基準データは、後述する侵入判定処理にて現在の測距データと比較して警戒領域4に新規に出現した侵入物体を抽出するために用いられる比較基準情報であり、検知部22による走査開始後から現在までの所定の過去時点で取得された測距データより生成される。基準データは、角度(方向)と距離のテーブルとして記憶されてよい。
本実施形態では、基準データは、利用者が監視区域の警備を警備装置5に開始させた時点、および、警備装置5が警備を開始してから所定時間が経過した時点で取得された測距データより生成される。なお、生成された基準データは、随時に取得される測距データを用いて更新されてもよい。
【0039】
トラッキング情報は、後述する侵入判定処理にて警戒領域4に新規に出現した侵入物体を複数周期に渡り追跡するために用いられる情報である。トラッキング情報には、現在周期における侵入物体の位置と大きさ、及び当該侵入物体が警戒領域4に初めて出現した位置と大きさとが対応づけられて記憶されている。
【0040】
現状態情報には、制御部24による判定結果として現在の警戒領域4が正常であるか、不審者など警備領域4への侵入物体による侵入異常が発生しているかが記憶される。制御部24によりかかる異常発生と判定されると、異常の状態が記憶され、異常が消失したと判定されると正常であることが記憶される。
【0041】
制御部24は、CPU、ROM、RAM等からなるマイクロコンピュータ及びその周辺回路で構成され、上述した各部を制御する。そのために、制御部24は、このマイクロコンピュータ及びマイクロコンピュータ上で実行されるコンピュータプログラムによって実現される機能モジュールとして、検知部22の駆動を制御する駆動制御部241と、検知部22より取得された測距データから基準データを生成する基準データ生成部242と、侵入異常の有無を判定する侵入判定部243とを備えている。
【0042】
駆動制御部241は、通信部21を介して警備装置5から警備開始信号が入力されると検知部22に駆動信号を出力し、検知部22の駆動を開始させて、走査制御部223による走査鏡222の駆動およびレーザ発振部221によるレーザ光の照射などを開始させる。また、駆動制御部241は、警備装置5から警備解除信号が入力されると検知部22に駆動停止信号を出力し、その時点の走査終了を以て検知部22の駆動を停止させて、走査鏡222の駆動およびレーザ光の照射などを停止させる。
このように、警備装置5の警備開始にあわせて検知部22を駆動させることで連続稼働による駆動部品の破損を防止することが可能となる。
【0043】
基準データ生成部242は、検知部22より取得される測距データを用いて基準データを生成する。上述したように、本実施形態では、利用者が監視区域の警備を警備装置5に開始させた時点、および、警備装置5が警備を開始してから所定時間が経過した時点で走査された測距データから基準データが生成され記憶される。測距データにおける測定点の位置として或る角度に対応する距離値が警戒領域4内でない場合、当該角度に対応する警戒領域4の外周までの距離を基準データとして記憶する。この基準データには、当該走査による測定点までの距離が記憶されるため、この走査時点で警戒領域4に存在する植栽や外壁などの既設物が基準データとして取り込まれる。
【0044】
利用者が監視区域の警備を警備装置5に開始させた時点での基準データ生成処理(第1の基準データ生成処理)は、警備開始信号が通信部21を介して入力され、駆動制御部241より駆動信号が出力され検知部22の走査が開始されたときに実行される。基準データ生成部242は、この初回の走査で出力された測距データおよび記憶部23に記憶している退出領域情報に基づき基準データを生成し、生成した基準データを記憶部23に記憶する。
【0045】
この第1の基準データ生成処理において、基準データ生成部242は、記憶部23の退出領域情報を参照し、検知部22より出力された測距データより走査角度が退出領域4a以外の方向である(光軸方向に退出領域4aを含まない)場合の角度と距離値を抽出し、これらの抽出されたデータを基準データとして記憶する。
さらに、基準データ生成部242は、走査角度が退出領域4aを含む方向については、退出領域情報のうちこの走査角度と同角度に対応付いている最小の距離を基準データとして記憶する。図4の例を参照して説明すると、走査角度がαである場合、この走査角度αは、退出領域4aを含む方向であるので、退出領域情報のうちこの走査角度αと同角度に対応付いている距離dα1、dα2のうち、最小の値、つまり、距離dα1を基準データとして記憶する。
【0046】
従って、第1の基準データ生成処理により生成される基準データは、退出領域4aを除外した基準データとなる。後述する侵入判定部243は、この退出領域4aを除外した基準データに基づいて侵入物体を判定することになるので、退出領域4aを退出者が通行してもこれを侵入物体と判定することを防ぐことができる。
【0047】
次に、警備装置5が警備を開始してから所定時間が経過した時点での基準データ生成処理(第2の基準データ生成処理)について説明する。この第2の基準データ生成処理では、基準データ生成部242は、警備装置5が警備を開始してから所定時間が経過した時点に出力された測距データおよび当該時点よりも前に記憶部23に記憶している基準データに基づき基準データを生成し、生成した基準データで記憶部23の基準データを更新する。
【0048】
この第2の基準データ生成処理においては、基準データ生成部242は、記憶部23の基準データおよび退出領域情報を参照し、基準データのうち退出領域4aの方向に対応付けて記憶している距離値がある場合、この距離値を、現在の測距データのうち同角度で測定された距離値で上書き記憶する。
この第2の基準データ生成処理により、基準データにおいて、退出領域4aを光軸方向に含んだ走査角度に対応付いている距離値が、第1の基準データ生成処理にて擬似的に記憶された退出領域4aまでの距離値から、現時点の測距データによる測定点までの距離値に置き換わることとなり、走査範囲全ての基準データが、実際の測定点までの距離に基づくものとなる。そして、後述する侵入判定部243は、以降、この基準データに基づいて侵入物体を判定することになるので、物体検出センサ2は退出領域4aを含む警戒領域4全体を監視することができる。
【0049】
なお、基準データ生成部242は、検知部22による走査が開始された後、所定回数(例えば5分間の間に行われる走査)の測距データにおいて走査角度ごとに距離値の頻度を求め、最も頻度が高い距離値を当該走査角度の基準値として採用し、基準データを生成してもよい。
【0050】
侵入判定部243は、現在の測距データと基準データとを比較して警戒領域4に出現した侵入物体の存在有無を判定し、この侵入物体の移動に基づき侵入異常の発生を判定する。屋外環境では屋内と比較して小動物などの移動物体が多く、また植栽などの揺れや風による飛来物などが存在し得るため、警戒領域4に新規な物体(侵入物体)が出現しただけで即座に監視区域の保全が損なわれ得る侵入異常と判定することは誤判定を招きかねない。このため、本実施形態において、侵入判定部243は、警戒領域4に出現した侵入物体を検出すると、この侵入物体を複数周期に渡り評価して不審人物や不審車両などによる侵入異常が発生しているか否かを判定する。
【0051】
具体的には、侵入判定部243は、測距データから得られる走査角度ごとの距離値と、基準データに記憶された角度ごとの距離値との差分を対応する角度ごとに算出して、基準データよりも近距離となった測定点に基づき侵入物体の存在を判定する。そして、トラッキング情報を参照して前回周期の検出結果にこの侵入物体と対応する物体が存在するか否かを判定し、該当物体がある場合に、この侵入物体が警戒領域4に初めて出現した位置から現在位置までの移動距離が所定距離(例えば1m)以上であれば当該侵入物体による侵入異常の発生を判定する。また、トラッキング情報には現在周期で検出された物体の位置と大きさが記憶される。
侵入異常の発生が判定されると記憶部23の現状態情報に侵入異常が記憶され、侵入異常が発生していないことが判定されると現状態情報から当該異常の情報が削除される。
【0052】
図4及び図5を用いて更に詳細に説明する。図4の左側部分に侵入判定部243による侵入物体の検出方法を示した。図に示すように、ある走査角度において基準データに記憶された測定点(物体による反射点)までの距離dbに対し、現在の測定点までの距離dnが短い場合に物体Qが侵入物体として検出される。
【0053】
図5は、測距データの比較による侵入物判定処理の概念を示している。図5において横軸は角度であり、縦軸は角度成分に対応する距離値である。侵入判定部243は、現在の測距データと基準データとにおいて各々の角度成分ごとに距離値の差分を算出し、現在の測距データが基準データよりも所定距離以上近くなっている変化点の有無を調べる。変化点は、図5下段の図において距離差が負の値であって−Δ以下の点(距離差が−側にΔ以上の点)である。侵入判定部243は、変化点があればその連続区間を調べ、連続する区間をラベリングする。このとき、連続していない変化点(孤立点)はノイズとして除去してよく、また膨張収縮処理による統合やノイズ除去を行ってもよい。侵入判定部243は、ラベリングした物体の大きさが不審人物や不審車両の一部と判定できる所定サイズ(例えば15cm)以上であれば当該物体を侵入物体として検出する。
そして、侵入判定部243は、検出した侵入物体について前回周期の検出物体との対応付けを調べ、警戒領域に始めて出現した位置からの移動距離に基づき侵入異常が発生しているか否かを判定する。
【0054】
<警備装置>
次に、図3を用いて警備装置5の構成について説明する。図3は、警備装置5の構成を示すブロック図である。警備装置5は、監視建物3内に設置されて監視区域を警戒監視し、異常の所在を遠隔の監視センタ6へと通報する。
【0055】
警備装置5は、物体検出センサ2及びその他の警備センサ(不図示)と接続されるセンサI/F(インターフェース)51と、通信網7を介して遠隔の監視センタ6と接続される通信部52と、監視区域の利用者により操作される操作部53と、HDDやメモリなどで構成される記憶部54と、MPUやマイコンなどで構成され各部の制御を行う制御部55とを有して概略構成される。制御部55は、機能モジュールとして、監視区域の警備モードを設定/変更するモード設定部551と、監視区域に異常が発生したことを確定する異常処理部552とを備えている。また、記憶部54には、警備モード情報や現状態情報などの管理情報や、各種の処理プログラムやパラメータや警備装置5の識別情報などが記憶されている。
【0056】
モード設定部551は、利用者が警備モードを設定する際に操作部53から入力する情報を照合し、照合OKと判定できれば、操作部53の入力に基づいて警備モードを警備セットモードまたは警備解除モードに設定する。モード設定部551にて設定された警備モードは、記憶部54の警備モード情報に記憶される。
【0057】
ここで、警備セットモードは、夜間や休日など、監視建物3を含む監視区域が無人となるときに設定され、各種センサが事象の変化を検知したときに通信部を介して遠隔の監視センタ6に異常通報を行うモードである。また、警備解除モードは、監視区域が有人のときに設定され、各種センサの検知による異常通報を行わないモードである。
モード設定部551は、警備セットモードに設定されるとセンサI/F51を介して物体検出センサ2に警備開始信号を出力し、また、警備解除モードに設定されるとセンサI/F51を介して物体検出センサ2に警備解除信号を出力する。
【0058】
異常処理部552は、記憶部54に記憶された現在の警備モードが警備セットモードであるときに各種センサから検知信号の入力を受けると、監視区域に異常が発生したと確定し、現状態情報に各種センサから入力された検知信号に対応する異常種別と検知したセンサの情報を記憶する。また、異常処理部552は、異常の発生を確定すると、異常種別と検知したセンサ及び警備装置5の識別情報を含む異常信号を、遠隔の監視センタ6に通信部52を介して送信する。
【0059】
<動作の説明>
以上のように構成された警備システム1について、図面を参照してその動作を説明する。ここでは、主として物体検出センサ2に関する動作について説明する。図6は、物体検出センサ2にて実行される監視プログラムの動作を示すフローチャートである。
【0060】
駆動制御部241は、警備装置5から警備開始信号を受信すると(ステップST1−Yes)、検知部22に駆動信号を出力し、検知部22の駆動を開始させる(ステップST2)。また、このとき、所定期間を計時するタイマの計時が開始される(ステップST3)。なお、この計時する所定期間は、退出者が警備装置5に警備を開始させてから退出領域4aを通り過ぎることができる時間を考慮して監視区域の環境に合わせて適宜設定される。駆動信号の入力を受け検知部22が警戒領域4の走査を開始して測距データが出力されると(ステップST4−Yes)、基準データ生成部242は、この初回の走査による測距データに基づき退出領域4aを除く警戒領域4について基準データを生成して記憶部23に記憶する第1の基準データ生成処理を行う(ステップST5)。第1の基準データ生成処理については後述する。
【0061】
そして、基準データを生成した後に測距データが取得されると(ステップST6−Yes)、侵入判定部243により現在の測距データと基準データとを比較して侵入判定処理が行われる(ステップST7)。侵入判定処理については後述する。
【0062】
そして、侵入判定処理の結果に基づき記憶部23の現状態情報に警備装置5に出力していない異常情報が記憶されていれば(ステップST8−Yes)、通信部21よりかかる異常の情報と自己のアドレス情報を示す検知信号が警備装置5に送信される(ステップST9)。
【0063】
物体検出センサ2は、警備装置5から警備解除信号を受信していなければ(ステップST10−No)、ステップST3にて計時を開始したタイマがタイムアップしたか否かを判定する(ステップST13)。そして、ステップST13にてタイムアップしていないと判定した場合(ステップST13−No)は、かかるステップST6からST10の処理を繰り返し警戒領域4の監視を行う。
他方、ステップST3にて計時を開始したタイマがタイムアップしたと判定した場合(ステップST13−Yes)、現在の測距データを取得し(ステップST14−Yes)、この取得した測距データに基づき退出領域4aを含む警戒領域4について基準データを生成して記憶部23に記憶する第2の基準データ生成処理を行う(ステップST15)。第2の基準データ生成処理については後述する。なお、ステップST13にてタイマがタイムアップしたと判定された場合、直前の周期にて取得された測距データを現在の測距データとして採用し、ステップST14の処理をスキップしてもよい。
【0064】
また、ステップST10にて警備装置5から警備解除信号を受信すると、駆動制御部241が検知部22に駆動停止信号を出力して検知部22の駆動を停止させ(ステップST11)、記憶部23の現状態情報に記憶された異常の情報が削除され状態が正常となって(ステップST12)、一連の処理を終了する。なお、ステップST4、ST6およびST14において、走査周期(例えば30msec)を所定以上越えても測距データが取得されなければ、機器の異常として処理を終了してよい。
【0065】
以上に、物体検出センサ2の基本的な動作について説明した。
次に、図6のステップST5における第1の基準データ生成処理について図7を参照して説明する。図7は第1の基準データ生成処理のフローチャートである。
【0066】
図7において、基準データ生成部242は、記憶部23に記憶している退出領域情報と現在の測距データを読み出す(ステップST41)。そして、測距データから角度θのデータを抽出し(ステップST42)、退出領域情報に角度θが退出領域4aを光軸方向に含む角度として記憶されているか否かを判定する(ステップST43)。
退出領域情報に角度θのデータがあると判定した場合(ステップST43−Yes)、すなわち角度θの光軸方向に退出領域4aを含む場合、退出領域情報の角度θに対応する距離値であって最小の距離値を基準データにおける角度θの距離値として記憶する(ステップST44)。例えば、図4に示すように、角度αに対応付けて距離dα1、dα2が退出領域情報に記憶されている場合、基準データの角度αの距離値としてdα1を記憶する。
退出領域情報に角度θのデータがないと判定した場合(ステップST43−No)、測距データから抽出した角度θに対応付いている距離値(測定点までの距離)を基準データにおける角度θの距離値として記憶する(ステップST45)。
【0067】
ステップST44またはステップST45の処理が終わると、θに走査の角度間隔分(例えば0.25°)を加算し(ステップST46)、加算した角度が最大走査角度(例えば180°)より大きいか否かを判定する(ステップST47)。
加算した角度が最大走査角度より大きいと判定した場合(ステップST47−Yes)、処理を終了する。他方、加算した角度が最大走査角度より大きくないと判定した場合(ステップST47−No)、最大走査角度まで、ステップST42からステップST46の処理を繰り返し、全ての走査角度について対応する距離値を得て基準データを生成する。
【0068】
このように、第1の基準データ生成処理により生成される基準データは、退出領域4aを除外した基準データとなる。具体的には、退出領域4aの物体検出センサ2に近傍となる側の境界が擬似的に基準データとして用いられる。後述する侵入判定部243は、この退出領域4aを除外した基準データに基づいて侵入物体を判定することになるので、退出領域4aを退出者が通行してもこれを侵入物体と判定することを防ぐことができる。
【0069】
次に、図6のステップST15における第2の基準データ生成処理について図8を参照して説明する。図8は第2の基準データ生成処理のフローチャートである。
【0070】
図8において、基準データ生成部242は、記憶部23に記憶している退出領域情報と現在の測距データを読み出す(ステップST51)。そして、現在の測距データから角度θのデータを抽出し(ステップST52)、退出領域情報に角度θが退出領域4aを光軸方向に含む角度として記憶されているか否かを判定する(ステップST53)。
退出領域情報に角度θのデータがあると判定した場合(ステップST53−Yes)、測距データから抽出した角度θに対応付いている距離値(測定点までの距離)を基準データの角度θの距離値とし上書き記憶し(ステップST54)、ステップST55へと進む。
退出領域情報に角度θのデータがないと判定した場合(ステップST53−No)、ステップST54をスキップして基準データにおける角度θの距離値を更新することなくステップST55へと進む。
【0071】
ステップST55では、θに走査の角度間隔分(例えば0.25°)を加算し、加算した角度が最大走査角度(例えば180°)より大きいか否かを判定する(ステップST56)。
加算した角度が最大走査角度より大きいと判定した場合(ステップST56−Yes)、処理を終了する。他方、加算した角度が最大走査角度より大きくないと判定した場合(ステップST56−No)、最大走査角度まで、ステップST52からステップST55の処理を繰り返し、全ての走査角度について処理を行う。
【0072】
このように、第2の基準データ生成処理により生成される基準データは、退出領域4aの方向に対応付いている距離値が、第1の基準データ生成処理にて擬似的に記憶された退出領域4aまでの距離から、現時点の測距データによる測定点までの距離に置き換わることとなり、走査範囲全ての基準データが、実際の測定点までの距離に基づくものとなる。そして、後述する侵入判定部243は、以降、この基準データに基づいて侵入物体を判定することになるので、物体検出センサ2は退出領域4aを含む警戒領域4全体を監視することができる。
【0073】
次に、図6のステップST7における侵入判定処理について図9を参照して説明する。図9は侵入判定処理のフローチャートである。
【0074】
図9において、侵入判定部243は、現在周期にて取得された測距データと基準データを読み出し(ステップST31)、角度成分(方向)ごとに、現在の測距データで検出された距離値dnと基準データに記憶された距離値dbとの差分計算を行う(ステップST32)。
【0075】
そして、侵入判定部243は、現在の測距データと基準データとの差分結果から、現在の測距データが基準データよりも所定距離以上近くなっている変化点が存在するかを調べる(ステップST33)。変化点は、図5下段の図において距離差が負の値であって−Δ以下の点(距離差が−側にΔ以上の点)である。侵入判定部243は、変化点があれば(ステップST33−Yes)、その連続区間を調べ、連続する変化点をラベリングして侵入物体として検出する(ステップST34)。ここでは、検知部22が走査する際の角度間隔が検出対象物体(人や車両など)と比較して十分に密であるので、連続していない変化点(孤立点)や、ラベリングした大きさが検出対象物体(人や車両など)の一部と判定できる所定サイズ(例えば15cm)に満たない物体をノイズとして除去してよい。
【0076】
侵入判定部243は、侵入物体として検出されたラベルに含まれる測定点の位置(角度と距離値)を記憶部23の侵入判定用のトラッキング情報に現在周期の情報として記憶する(ステップST35)。そして、侵入判定部243は、トラッキング情報を参照して前回周期と現在周期の処理結果の比較を行い、ラベルごとにトラッキング対象が存在するかどうかを判定する(ステップST36)。トラッキング処理では、前回周期と現在周期の間で、所定の角度、距離範囲内にほぼ同一サイズの物体があるか否かでトラッキング対象の有無を判断する。該当物体があれば、その物体がトラッキング対象になる。トラッキング対象がなければ(ステップST36−No)、現在周期のラベルを新規に出現したラベルとして現在周期のトラッキング情報に記憶し、侵入判定処理は終了する。
【0077】
トラッキング対象が存在する場合(ステップST36−Yes)、侵入判定部243は、対応する前回周期のラベルについて警戒領域4に新規に出現したときの位置と大きさをトラッキング情報から読み出し、警戒領域4に新規に出現した位置から現在位置までの移動距離を算出する(ステップST37)。移動距離は、新規に出現した位置から現在位置までの直線距離より算出する。
【0078】
そして、算出された移動距離が所定距離(例えば1m)に満たなければ(ステップST38−No)、前回周期のラベルと現在周期の該当ラベルとを紐付けて現在周期のトラッキング情報に記憶して、警戒領域4に新規に出現したときの位置と大きさ及び現在の位置と大きさの対応付けを行い、侵入判定処理を終了する。他方、算出された移動距離が所定距離(例えば1m)以上であれば(ステップST38−Yes)、該当ラベル(侵入物体)による侵入異常が発生したと判定して記憶部23の現状態情報に侵入異常を記憶する(ステップST39)。この結果、図6のステップST9において警備装置5に検知信号が出力され、警備装置5にて異常が確定されると遠隔の監視センタに異常通報がなされる。
【0079】
このように、この侵入判定処理では、タイマ計時中は、第1の基準データ生成処理にて生成した退出領域4aを除外した基準データを用いて侵入異常の発生を判定する。
具体的に、侵入判定部243は、光軸方向に退出領域4aが含まれる角度については、物体検出センサ2から当該センサに最も近い退出領域4a境界までの範囲において移動する侵入物体を検出し、退出領域4aが含まれない角度については、物体検出センサ2から警備を開始した時点に取得した測距データの測定点までの範囲において移動する侵入物体を検出する。
従って、タイマ計時中は、退出領域4a内を通行する退出者を侵入者として検出することを防止しつつ、退出領域4aを除外した警戒領域4においては警備開始時点で生じている環境変化に対応した基準データを用いてそこに侵入する侵入者を検出することが可能となる。
【0080】
また、タイマがタイムアップした後は、第2の基準データ生成処理にて生成した退出領域4aを含む基準データを用いて侵入異常の発生を判定する。
具体的に、侵入判定部243は、光軸方向に退出領域4aが含まれる角度については、物体検出センサ2からタイマがタイムアップした時点に取得した測距データの測定点までの範囲において移動する侵入物体を検出し、退出領域4aが含まれない角度については、物体検出センサ2から警備を開始した時点に取得した測距データの測定点までの範囲において移動する侵入物体を検出する。
従って、タイマがタイムアップした後は、退出領域4aを含む全走査範囲において、警備開始時点またはタイムアップ時点で生じている環境変化に動的に対応した基準データを用いてそこに侵入する侵入者を検出することが可能となる。
【0081】
以上、本発明の警備システムの実施形態について説明したが、これに限られるものではなく、種々の変形例を適応してもよい。以下、本発明の警備システムの変形例について説明する。
【0082】
<変形例1>
上述した実施形態では、物体検出センサ2が警備開始信号を受信したときにタイマの計時を開始するとともに第1の基準データ生成処理を実行し、タイマがタイムアップしたときに第2の基準データ生成処理を実行していた。しかし、これに限定されるものではなく、警備開始信号を受信すると、測距データに基づき退出者が退出領域4aを通過して退出したか否かを判定し、退出したと判定したときにタイマの計時を開始し、タイマがタイムアップしたときに第2の基準データ生成処理を実行してもよい。以下、これを実現するための構成を具体的に説明する。なお、本変形例では、説明を簡略にするために上述した実施形態と相違する点を説明する。
【0083】
物体検出センサ2は、上述の実施形態の構成に加えて、さらに、退出者が退出領域4aを通過して退出したか否かを判定する退出判定処理を行う退出判定部を制御部24内に備える。また、本変形例において、物体検出センサ2は、退出判定処理に用いる退出判定用のトラッキング情報を記憶部23に記憶する。この退出判定用のトラッキング情報は、退出領域4aに新規に出現した退出者を複数周期に渡り追跡するために用いられる情報である。退出判定用のトラッキング情報には、現在周期における退出者の位置と大きさ、及び当該退出者が退出領域4aに始めて出現した位置と大きさとが対応づけてられて記憶されている。
【0084】
次に、本変形例における物体検出センサ2の動作について説明する。本変形例では、図6に示した物体検出センサ2にて実行される監視プログラムの動作において、ステップST2とステップST3の間に以下の動作が追加される。
まず、ステップST2にて検知部22が駆動すると、測距データの取得を行い、後述の退出判定処理を開始する。以降、退出判定処理にて退出を判定するまで、測距データの取得と退出判定処理を繰り返す。退出判定処理にて退出が判定されると、図6のステップST3のタイマ計時開始の処理へと進む。なお、ここで計時するタイマの所定時間は、次の点を考慮して適宜設定される。すなわち、退出を判定して物体検出センサ2による退出領域4aの監視がすぐに始まってしまうと、この直後に退出者が忘れ物などで退出領域4aに戻ってきた場合や、利用者が退出領域4aの境界付近をうろついた場合などに、これを侵入異常として検出してしまうといった点を考慮した所定の猶予期間として設定される。
【0085】
次に、退出判定部の具体的な動作について図10に示した退出判定処理を示すフローチャートを参照して説明する。
退出判定部は、まず、検知部22にて取得した現在の測距データと所定時間前の測距データと退出領域情報とを読み出し(ステップST71)、退出領域4a内において、所定時間前の測距データと現在の測距データとの差分を算出する(ステップST72)。この差分算出では、退出領域4aの方向が含まれる走査角度について、所定時間前の測距データの走査角度ごとの距離値と、現在の測距データの角度ごとの距離値との差分を対応する角度ごとに算出する。
【0086】
そして、所定以上の変化があった測定点があるか否かを判定する(ステップST73)。所定以上の変化があった測定点がある場合(ステップST73−Yes)、その連続区間を調べ、連続する変化点をラベリングする(ステップST74)。なお、この際に、検知部22が走査する際の角度間隔が検出対象物体である退出者と比較して十分に密であるので、連続していない変化点(孤立点)や、ラベリングした大きさが退出者の一部と判定できる所定サイズ(例えば15cm)に満たない物体をノイズとして除去してよい。
【0087】
次に、退出判定用のトラッキング情報を参照し、前回周期にトラッキング対象があるか否かを判定する(ステップST75)。トラッキング対象がない場合(ステップST75−No)は、現在周期のラベルを退出判定用のトラッキング情報に記憶し(ステップST81)、処理を終了する。トラッキング対象がある場合(ステップST75−Yes)は、トラッキング対象が退出者ラベルであるか否かを判定する(ステップST76)。退出者ラベルである場合(ステップST76−Yes)、現在周期のラベルを現在周期の退出者ラベルとして退出判定用のトラッキング情報に記憶し(ステップST81)、処理を終了する。トラッキング対象が退出者ラベルでない場合(ステップST76−No)、当該トラッキング対象が退出領域4aに新規に出現したときの位置と大きさを退出判定用のトラッキング情報から読み出し、退出領域4aに新規に出現した位置から現在位置までの移動距離を算出する(ステップST77)。移動距離は、新規に出現した位置から現在位置までの直線距離より算出する。
【0088】
そして、算出された移動距離が所定距離(例えば1m)に満たなければ(ステップST78−No)、前回周期のラベルと現在周期の該当ラベルとを紐付けて現在周期の退出判定用のトラッキング情報に記憶して、退出領域4aに新規に出現したときの位置と大きさ及び現在の位置と大きさの対応付けを行い、処理を終了する。他方、算出された移動距離が所定距離(例えば1m)以上であれば(ステップST78−Yes)、該当ラベルは人体(退出者)と判定して(ステップST79)、該当ラベルを退出者ラベルとして退出判定用のトラッキング情報に記憶し(ステップST80)、処理を終了する。
【0089】
ステップST73にて、所定以上の変化があった測定点がない場合は、退出判定用のトラッキング情報を参照し、前回周期には記憶されていた退出者ラベルが消失しているか否かを判定する(ステップST82)。退出者ラベルが消失したと判定すると(ステップST82−Yes)、退出者が退出領域4aから退出したと判定し(ステップST83)、処理を終了する。
なお、このステップST82の退出者ラベルが消失したと判定するための条件として、退出者ラベルの移動状況を考慮にいれて判定してもよい。具体的には、退出領域4aにおいて退出者が退出する際に通行を開始する通行開始位置と、通行を終了する通行終了位置とを予め記憶しておく。そして、ステップST82の判定において、退出者ラベルの最初の出現位置が通行開始領域に含まれ、かつ、消失直前に記憶されていた退出者ラベルの位置が通行終了領域に含まれていると、消失したと判定する。これにより、退出者ではない人体と同じくらいの大きさの物体が退出時に想定される移動状況と異なる移動した場合に退出と判定されてしまうことを防止できる。
【0090】
このように、この退出判定処理では、過去と現在の測距データの変化点を検出し、変化点のまとまりが、人体に相当する大きさで、かつ、移動していると人体(退出者)であると判定する。そして、退出者と判定された変化点のまとまりが消失すると、退出者が退出領域4aから退出したと判定する。
【0091】
以上により、本変形例では、警備開始後に行う警戒領域4全体の物体検出センサ2による監視を退出者の移動の状況に応じて動的に開始できるので、警戒領域4を通行者を侵入異常として検出することを防止しつつ、退出者が退出した場合には速やかに警戒領域4全体の監視が可能となる。
【0092】
<変形例2>
上述した実施形態では、物体検出センサ2が警備開始信号を受信したときにタイマの計時を開始するとともに第1の基準データ生成処理を実行し、タイマがタイムアップしたときに第2の基準データ生成処理を実行していた。しかし、これに限定されるものではなく、警備開始信号を受信したときに計時開始するタイマの計時中に、測距データに基づき退出者が退出領域4aを通過して退出したか否かを判定し、退出したと判定したときには、計時中のタイマがタイムアップする前であっても、タイムアップし計時が終了したと判定して第2の基準データ生成処理を実行してもよい。以下、これを実現するための構成を具体的に説明する。
【0093】
本変形例においては、図6に示す物体検出センサ2にて実行される監視プログラムの動作において、図6のステップST13にてNoと判定された場合に上述した変形例1で説明した退出判定処理を実行するステップを追加する。そして、退出判定処理にて退出を判定した場合は、タイマがタイムアップしたと判定してステップST14の判定へと進む。他方、退出判定処理にて退出を判定しない場合は、ステップST6の判定へと進む。
【0094】
これにより、タイマ計時中に退出が判定されるとタイマ計時中であってもタイムアップし計時が終了したと判定して第2の基準データが生成されることとなるので、退出者を検出して侵入異常を判定することを防止しつつ、退出者が退出すると直ちに警戒領域4全体の監視が可能となり、セキュリティ性を向上させることができる。
【0095】
<変形例3>
上述した実施形態では、第2の基準データ生成処理を開始するタイミングを物体検出センサ2が所定期間を計時するタイマを用いて判断するものであったが、これに限られるものではなく、警備装置5にてタイマを用いるようにしてもよい。
この場合、利用者によって警備セットモードが設定されたときに、警備装置5は、このタイマの計時を行い、タイムアップしたときに、通信部52を介して物体検出センサ2へ計時終了信号を送信する。物体検出センサ2は、通信部21を介してこの計時終了信号を受信すると、第2の基準データを作成する処理を行えばよい。
具体的には、図6に示す物体検出センサ2にて実行される監視プログラムの動作において、ステップST3のタイマ計時開始の処理を省略し、ステップST13の判定を、警備装置5から計時終了信号を受信したか否かを判定するようにする。
【0096】
これによっても上述した実施形態と同様に利用者が退出する時間中は退出領域4a内を通行する退出者を侵入者として検出することを防止しつつ警戒領域4の監視を行うことが可能となる。
【0097】
なお、本発明の実施形態及び変形例では、図7に示した侵入判定処理、及び図8に示した退出判定処理において、それぞれ1周期前(現在周期に対する前回周期)の測距データとの間でトラッキング処理を行う例について説明したが、これに限らず、所定時間内の測距データ(例えば1秒間の間に取得されるデータ)との間でトラッキング処理を行う構成としてよい。この場合上述したようにトラッキング処理において所定時間内に取得された測距データ全てについて対応付けの可否を判定し、対応するラベルが存在すればトラッキング対象ありと判定する。これにより、瞬時的なノイズにより検出が欠落した場合であっても誤判定することなくトラッキング対象を検出することができる。
【0098】
以上に本発明の実施形態及び変形例を例示により説明したが、本発明の範囲はこれらに限られるものではなく、請求項に記載された範囲内において目的に応じて変更・変形することが可能である。
【符号の説明】
【0099】
1 警備システム
2 物体検出センサ
21 通信部
22 検知部
221レーザ発振部
222走査鏡
223走査制御部
224反射光検出部
225測距データ生成部
23 記憶部
24 制御部
241駆動制御部
242基準データ生成部
243侵入判定部
3 監視建物
4 警戒領域
4a 退出領域
5 警備装置
51 センサI/F
52 通信部
53 操作部
54 記憶部
55 制御部
551モード設定部
552異常処理部
6 監視センタ
7 通信網



【特許請求の範囲】
【請求項1】
監視区域を監視する警備装置と接続される通信部を有し、該監視区域に含まれる警戒領域内を監視して該警戒領域内の侵入物体を検出する物体検出センサであって、
利用者が前記監視区域を退出する際に通行する前記警戒領域内の領域である退出領域を記憶する記憶部と、
前記警戒領域内を走査して該警戒領域における方向ごとに被測定物までの距離を示す測距データを生成する検知部と、
前記測距データに基づき前記警戒領域内における方向ごとの基準データを生成して前記記憶部に記憶する基準データ生成部と、
現在の前記測距データと前記基準データとを比較して侵入物体の存在有無を判定する侵入判定部と、を備え、
前記侵入判定部は、前記警備装置から警備開始信号の入力を受けると所定時間が経過するまでは前記退出領域を除いた前記警戒領域内の侵入物体の存在有無を判定し、前記所定時間が経過すると前記退出領域を含む前記警戒領域内の侵入物体の存在有無を判定することを特徴とする物体検出センサ。

【請求項2】
前記基準データ生成部は、前記所定時間が経過したときに、前記測距データから前記退出領域について基準データを生成するとともに、該生成した基準データと少なくとも前記所定時間経過前に生成されて前記記憶部に記憶している基準データとから前記退出領域を含む前記警戒領域全体の基準データを生成し、該基準データを前記記憶部に記憶する請求項1記載の物体検出センサ。

【請求項3】
前記基準データ生成部は、前記警備装置から警備開始信号の入力を受けたときに、前記退出領域を除いた前記警戒領域について基準データを生成して前記記憶部に記憶する請求項1又は請求項2に記載の物体検出センサ。

【請求項4】
さらに、前記退出領域において前記監視区域から退出する退出物体の存在有無を判定する退出判定部を備え、
前記侵入判定部は、前記警備装置から警備開始信号の入力を受けて所定時間が経過するまでの間に、前記退出判定部にて退出物体の存在有りと判定された後に退出物体の存在無しと判定されると、前記所定時間が経過したと判定する請求項1乃至請求項3の何れか一項に記載の物体検出センサ。

【請求項5】
さらに、前記退出領域において前記監視区域から退出する退出物体の存在有無を判定する退出判定部を備え、
前記侵入判定部は、前記警備装置から警備開始信号の入力を受け、前記退出判定部にて退出物体の存在有りと判定された後に退出物体の存在無しと判定されると前記所定時間の計時を開始する請求項1乃至請求項3の何れか一項に記載の物体検出センサ。

【請求項6】
警戒領域内を監視して該警戒領域内の物体を検出する物体検出センサと、前記警戒領域を含む監視区域を監視する警備装置とを備えた警備システムであって、
前記物体検出センサは、
利用者が前記監視区域を退出する際に通行する前記警戒領域内の領域である退出領域を記憶する記憶部と、
前記警戒領域内を走査して該警戒領域における方向ごとに被測定物までの距離を示す測距データを生成する検知部と、
前記測距データに基づき前記警戒領域内における方向ごとの基準データを生成して前記記憶部に記憶する基準データ生成部と、
現在の前記測距データと前記基準データとを比較して侵入物体の存在有無を判定する侵入判定部と、
前記警備装置と接続される第1の通信部と、を備え、
前記警備装置は、
前記監視区域の異常を遠隔の監視センタに通報する警備セットモードと前記監視区域の異常を前記監視センタに通報しない警備解除モードとを設定するモード設定部と、
前記警備セットモードが設定されたときに前記物体検出センサに警備開始信号を送信し、前記セットモードが設定されたときから所定時間が経過すると計時終了信号を送信する第2の通信部と、を備え、
前記侵入判定部は、前記警備装置から前記警備開始信号の入力を受けると前記警備装置から前記計時終了信号の入力を受けるまでの間は前記退出領域を除いた前記警戒領域内の侵入物体の存在有無を判定し、前記計時終了信号の入力を受けると前記退出領域を含む前記警戒領域内の侵入物体の存在有無を判定することを特徴とする警備システム。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−215776(P2011−215776A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−82026(P2010−82026)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000108085)セコム株式会社 (596)
【Fターム(参考)】