説明

物体検知装置

【課題】コストを増大することなく極近距離に存在する物体を検知することのできる物体検知装置を提供する。
【解決手段】超音波を送受波する超音波振動子1と、物体A1からの反射波の受波に要する時間に基づいて近距離及び遠距離の物体A1を検知する第1のゲート期間G1及び第2のゲート期間G2を設定する制御部4とを備え、制御部4は、両ゲート期間G1,G2で反射波を受波した状態から第2のゲート期間G2のみで反射波を受波する状態に移行すると、第1のゲート期間G1で検知する位置よりも近い位置に物体A1が存在すると判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物体の存在の検知や物体までの距離を求める物体検知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、超音波を用いた車両用近接警報装置が知られており、例えば特許文献1に開示されている。この特許文献1に記載の従来例は、超音波の周波数信号を発振する発振手段と、この発振手段からの信号を超音波に変換し出力する送信手段と、受信した超音波を電気信号に変換する受信手段とを備える。また、この従来例は、受信手段からの信号により反射波を検出する反射波検出手段と、反射波を検出するまでの時間から障害物までの距離を計測するとともにあらかじめ設定されている時間内に反射波を検出しなければ測定範囲を変更する制御手段とを備える。
【0003】
制御手段は、反射波検出手段からの信号を定期的にチェックし、測定範囲に対応した測定時間内に検出信号を受信しない場合には、測定範囲を切り替える。一方、制御手段は、測定時間内に検出信号を受信すると、その検出時間が送信手段から直接入力される直接波の影響が無くなる時間以上であれば反射波によるものとみなし、障害物までの距離を計算する。したがって、この従来例では、遠く離れた障害物を検出できるように発振手段の発振時間を長くすると、近距離の障害物からの反射波が直接波と重なり検出できないという不都合を改善している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−76199号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来例では、発振手段からの信号を送信手段(超音波振動子)で変換して超音波を送波する際に、超音波振動子は、発振手段からの信号が止まった後も残響振動による超音波を送波する。この残響振動による超音波は受信手段(超音波振動子)に回り込んで受波されるため、物体からの反射波の検出にあたり、物体までの距離が極近距離で反射波が残響振動に埋もれてしまうと物体の検知ができないという問題があった。この問題は、超音波の送受波を1つの超音波振動子で行うものにおいても同様に起こり得る。
【0006】
ここで、物体からの反射波が残響振動に埋もれてしまうのを回避すべく、残響振動自体が小さい高性能な超音波振動子を用いることも考えられるが、この場合はコストが増大するという問題があった。
【0007】
本発明は、上記の点に鑑みて為されたもので、コストを増大することなく極近距離に存在する物体を検知することのできる物体検知装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の物体検知装置は、超音波を送受波する送受波部と、物体からの反射波の受波に要する時間に基づいて近距離及び遠距離の前記物体を検知する第1のゲート期間及び第2のゲート期間を設定する制御部とを備え、前記制御部は、前記両ゲート期間で反射波を受波した状態から前記第2のゲート期間のみで反射波を受波する状態に移行すると、前記第1のゲート期間で検知する位置よりも近い位置に前記物体が存在すると判定することを特徴とする。
【0009】
本発明の物体検知装置は、超音波を送受波する送受波部と、物体からの反射波の受波に要する時間に基づいて前記物体を検知する制御部とを備え、前記制御部は、1つ目の反射波を受波してからその受波に要する時間の半分の時間が経過した時点で2つ目の反射波を受波すると、前記1つ目の反射波で検知する位置よりも近い位置に前記物体が存在すると判定することを特徴とする。
【0010】
本発明の物体検知装置は、超音波を送受波する送受波部と、物体からの反射波の受波に要する時間に基づいて前記物体を検知する制御部とを備え、前記制御部は、3つの反射波を受波し、各反射波を受波する間隔が等しければ1つ目の反射波で検知する位置よりも近い位置に前記物体が存在すると判定することを特徴とする。
【0011】
この物体検知装置は、前記送受波部は、一定の間隔を空けて設けられる複数の超音波振動子を備え、隣り合う前記超音波振動子のうち一方の超音波振動子が送波する超音波を他方の超音波振動子が受波し、前記制御部は、前記一方の超音波振動子の送波タイミングと前記他方の超音波振動子の受波タイミングとに基づいて前記物体を検知することが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、コストを増大することなく極近距離に存在する物体を検知することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る物体検知装置の実施形態1を示す図で、(a)はブロック図で、(b),(c)は動作を説明するための波形図である。
【図2】本発明に係る物体検知装置の実施形態2における動作を説明するための波形図である。
【図3】本発明に係る物体検知装置の実施形態3における動作を説明するための波形図である。
【図4】本発明に係る物体検知装置の実施形態4を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(実施形態1)
以下、本発明に係る物体検知装置の実施形態1について図面を用いて説明する。本実施形態は、図1(a)に示すように、超音波を送受波する超音波振動子1(送受波部)と、超音波振動子1を駆動して超音波振動子1から超音波を送波させる駆動部2と、超音波振動子1で受波した物体A1からの反射波を処理する処理部3とを備える。また、本実施形態は、駆動部2を制御するとともに処理部3の処理結果から物体A1を検知する制御部4を備える。
【0015】
本実施形態は、例えば車両(図示せず)に装着されて、車両の周辺の障害物(物体A1)の検知及び障害物までの距離を求めるものである。本実施形態を車両に装着する場合には、超音波振動子1は車両のバンパーに埋め込まれ、その他の部材は車室内に配置される。
【0016】
超音波振動子1は、駆動部2から発振信号を入力されることによって振動し、当該発振信号の周波数の超音波を外部空間に送波する。また、超音波振動子1は、外部空間に存在する物体A1からの反射波を受波して振動することにより、反射波の周波数に基づいた受波信号に変換して処理部3に出力する。
【0017】
駆動部2は、所定の周波数の発振信号を発振する発振器(図示せず)と、発振器と超音波振動子1との接続を切り替えるスイッチ(図示せず)とを備える。当該スイッチは、制御部4から与えられる制御信号によってオン/オフが切り替えられる。したがって、駆動部2は、制御部4から与えられる制御信号に基づいて発振信号を超音波振動子1に入力し、超音波振動子1から所定の間隔で超音波を送波させる。
【0018】
処理部3は、ローパスフィルタ(LPF)30と、増幅回路31と、包絡線検波回路32と、コンパレータ33と、ゲート回路34とを備える。ローパスフィルタ30は、超音波振動子1から出力される受波信号に含まれるノイズを除去する。増幅回路31は、ローパスフィルタ30を通過した受波信号を所定のレベルまで増幅する。包絡線検波回路32は、増幅回路31で増幅された受波信号を包絡線検波する。コンパレータ33は、包絡線検波回路32から出力される信号のレベルと所定レベルとを比較し、当該信号のレベルが所定レベルを上回ると、ハイレベルの検波信号を出力する。
【0019】
ゲート回路34は、コンパレータ33から出力される検波信号のうち、所定期間範囲内に入力される検波信号のみを通過させる。具体的には、ゲート回路34は、コンパレータ33から出力される検波信号と、制御部4から与えられるゲート信号との論理積を演算する。そして、ゲート回路34では、ゲート信号がハイレベルとなる所定期間のみ検波信号とゲート信号との論理積が1となり、制御部4に検波信号が入力される。
【0020】
制御部4は、例えばマイコンから成り、上述のようにスイッチのオン/オフを切り替えるパルス状の制御信号を駆動部2に与えることで、超音波振動子1から所定の間隔で超音波を送波させる。このとき、制御部4は、制御信号を駆動部2に与えるタイミングを超音波振動子1の送波タイミングとして記憶する。また、制御部4は、上述のようにゲート回路34にパルス状のゲート信号を与えることで、コンパレータ33から出力される検波信号のうち、所定期間範囲内の検波信号のみを通過させる。
【0021】
ここで、超音波振動子1はQ値が高いために、駆動部2による駆動を停止しても直ぐには振動を止めることができず、振動は徐々に減衰していく。これが超音波振動子1の残響振動であり、この残響振動は一定時間継続するため、残響振動を物体A1からの反射波と誤って検知する虞がある。そこで、制御部4は、図1(b)に示すように、超音波を送波する時刻T0から、検波信号の出力値が所定の閾値を下回る時刻T1までの期間は、検波信号がゲート回路34を通過しないようにマスク期間G0に設定している。すなわち、当該マスク期間G0では、ゲート信号はローレベルとなるため、コンパレータ33から出力される検波信号との論理積が常に0となって制御部4に検波信号が入力されない。
【0022】
また、制御部4は、図1(b)に示すように、時刻T1から時刻T2までの期間を第1のゲート期間G1、時刻T2以降の期間を第2のゲート期間G2と設定している。これらのゲート期間G1,G2は上述の所定期間に相当し、各ゲート期間G1,G2ではゲート信号はハイレベルとなるため、コンパレータ33から出力される検波信号との論理積が1となって制御部4に検波信号が入力される。
【0023】
制御部4は、処理部3(コンパレータ33)からのハイレベルの検波信号が入力されるタイミングを超音波の受波タイミングとして記憶する。そして、制御部4は、既に記憶してある送波タイミングと、処理部3から得た受波タイミングとから超音波の送受波に要する伝播時間を求め、この伝播時間に基づいて物体A1までの距離を演算する。この演算結果は、例えばブザー等の装置に与えられる。ブザーに与えられる場合には、物体A1までの距離が所定の閾値以下になると警告音を鳴動するように構成することが考えられる。また、演算結果をディスプレイに表示させ、運転者に物体A1までの距離を知らせる構成も考えられる。
【0024】
本実施形態では、時刻T2よりも前、すなわち第1のゲート期間G1において検波信号が制御部4に入力された場合、制御部4は物体A1が近距離に存在すると判定して上述のブザー等に警告音を鳴動させ、外部に報知する。なお、時刻T2よりも後、すなわち第2のゲート期間G2において検波信号が制御部4に入力された場合、制御部4は物体A1が遠距離に存在すると判定する。
【0025】
以下、本実施形態における極近距離に存在する物体A1の検知について説明する。なお、「極近距離」とは、「超音波振動子1の残響振動に反射波が埋もれる程物体A1が接近している距離」を意味する。先ず、図1(b)に示すように、時刻T0において超音波振動子1から超音波を送波し、時刻T1から時刻T2の間、すなわち第1のゲート期間G1において、物体A1からの反射波を受波したものとする。ここで、物体A1が超音波振動子1の近くに位置する場合には、図1(a)に示すように、物体A1と超音波振動子1との間で超音波の反射を繰り返す多重反射が起こる。このため、図1(b)に示すように、時刻T2以降、すなわち第2のゲート期間において、超音波振動子1は多重反射による反射波を受波する。以下の説明では、物体A1からの1つ目の反射波を「第1の反射波W1」、多重反射による物体A1からの2つ目の反射波を「第2の反射波W2」と呼ぶものとする。
【0026】
図1(b)に示す場合では、超音波を送波する時刻T0から第1の反射波W1を受波するまでに要する時間と、第1の反射波W1を受波してから第2の反射波W2を受波するまでに要する時間とが等しい。したがって、この場合では、制御部4は超音波振動子1の残響振動の中に物体A1からの反射波が埋もれていないと判定する。また、第1のゲート期間G1において第1の反射波W1を受波しているので、制御部4は物体A1が近距離に存在すると判定し、ブザー等を用いてその旨を外部に報知する。
【0027】
次に、時刻T0に超音波を送波してから時間が経過して物体A1が更に接近し、時刻T3に超音波振動子1から再び超音波を送波する場合について図1(c)に示す。なお、同図において、時刻T3から時刻T4までの期間は、時刻T0から時刻T1までの期間と等しく、時刻T4から時刻T5までの期間は、時刻T1から時刻T2までの期間と等しいものとする。すなわち、同図においては、時刻T3から時刻T4までの期間がマスク期間G0、時刻T4から時刻T5までの期間が第1のゲート期間G1、時刻T5以降が第2のゲート期間G2となっている。
【0028】
この場合では、超音波振動子1は、第1のゲート期間G1において超音波を受波せず、第2のゲート期間G2において第1の反射波W1を受波している。ここで、単に第1の反射波W1を受波しただけでは、当該第1の反射波W1が物体A1からの最初の反射波か、或いは多重反射による反射波かは判定できず、物体A1が遠距離に存在すると制御部4が誤って判定する虞がある。
【0029】
そこで、本実施形態では、両ゲート期間G1,G2で反射波を受波した状態から第2のゲート期間G2のみで反射波を受波する状態に移行すると、制御部4は、超音波振動子1の残響振動の中に物体A1からの反射波W0が埋もれていると判定する。これにより、制御部4は、第1のゲート期間G1で検知する位置よりも近い位置、すなわち極近距離に物体A1が存在すると判定し、報知を継続させることができる。
【0030】
上述のように、本実施形態では、制御部4によって超音波振動子1の残響振動の中に埋もれた反射波があることを判定し、極近距離に存在する物体A1を検知することができる。したがって、本実施形態では、高性能の超音波振動子1を用いる必要がなく、残響振動の長い超音波振動子1を用いることも可能であることから、コストの増大を抑えることができる。
【0031】
(実施形態2)
以下、本発明に係る物体検知装置の実施形態2について図面を用いて説明する。但し、本実施形態の回路構成は実施形態1の図1(a)に示す回路構成と共通であるので、共通する部位には同一の番号を付して説明を省略する。先ず、図2に示すように、超音波振動子1が1つ目の反射波である第1の反射波W1を受波したものとする。ここで、単に第1の反射波W1を受波しただけでは、当該第1の反射波W1が物体A1からの最初の反射波か、或いは多重反射による反射波かは判定できない。また、図2に示すように、仮に多重反射による第2の反射波W2を受波していたとしても、物体A1とは異なる他の物体(図示せず)からの反射波をほぼ同時に受波して反射波が重なる場合、第2の反射波W2と他の反射波とを区別することができない。
【0032】
そこで、本実施形態の制御部4は、第1の反射波W1、すなわち1つ目の反射波を受波した時点で、超音波の送受波に要する伝播時間τ1を演算する。そして、制御部4は、1つ目の反射波を受波してから上記伝播時間τ1の半分の時間(τ1/2)が経過した時点における処理部3からの検波信号の有無を判定することで、当該時点における反射波の有無を判定する。
【0033】
上記時点において反射波を受波していないと判定した場合には、制御部4は第1の反射波W1による多重反射が生じていないと判定し、第1の反射波W1に基づいて物体A1の位置を検知する。一方、上記時点において反射波を受波したと判定した場合には、制御部4は当該反射波が第1の反射波W1の多重反射による第2の反射波W2であると判定する。そして、制御部4は、第1の反射波W1よりも伝播時間τ1の半分の時間だけ遡った時刻に反射波が存在する、すなわち、超音波振動子1の残響振動の中に物体A1からの反射波W0が埋もれていると判定する。これにより、制御部4は、第1の反射波W1で検知する位置よりも近い位置、すなわち極近距離に物体A1が存在すると判定することができる。
【0034】
上述のように、本実施形態では、制御部4によって超音波振動子1の残響振動の中に埋もれた反射波があることを判定し、極近距離に存在する物体A1を検知することができる。したがって、本実施形態では、高性能の超音波振動子1を用いる必要がなく、残響振動の長い超音波振動子1を用いることも可能であることから、コストの増大を抑えることができる。
【0035】
(実施形態3)
以下、本発明に係る物体検知装置の実施形態3について図面を用いて説明する。但し、本実施形態の回路構成は実施形態1の図1(a)に示す回路構成と共通であるので、共通する部位には同一の番号を付して説明を省略する。先ず、図3に示すように、超音波振動子1が3つの反射波W1〜W3を受波したものとする。ここで、単に3つの反射波W1〜W3を受波しただけでは、第1の反射波W1が物体A1からの最初の反射波か、或いは多重反射による反射波かは判定できない。
【0036】
そこで、本実施形態の制御部4は、第1の反射波W1を受波した時点から第2の反射波W2を受波した時点までに要する時間P1と、第2の反射波W2を受波した時点から第3の反射波W3を受波した時点までに要する時間P2とを演算する。そして、制御部4は時間P1,P2を比較し、これらの時間P1,P2が等しい場合には、第1の反射波W1よりも時間P1だけ遡った時刻に反射波が存在する、すなわち、超音波振動子1の残響振動の中に物体A1からの反射波W0が埋もれていると判定する。これにより、制御部4は、第1の反射波W1で検知する位置よりも近い位置、すなわち極近距離に物体A1が存在すると判定することができる。
【0037】
上述のように、本実施形態では、制御部4によって超音波振動子1の残響振動の中に埋もれた反射波があることを判定し、極近距離に存在する物体A1を検知することができる。したがって、本実施形態では、高性能の超音波振動子1を用いる必要がなく、残響振動の長い超音波振動子1を用いることも可能であることから、コストの増大を抑えることができる。
【0038】
(実施形態4)
以下、本発明に係る物体検知装置の実施形態4について図面を用いて説明する。但し、本実施形態の回路構成は実施形態1の図1(a)に示す回路構成と共通であるので、共通する部位には同一の番号を付して説明を省略する。本実施形態では、図4に示すように、複数(図示では4つ)の超音波振動子10〜13から送受波部が構成されており、各超音波振動子10〜13は、車両B1の前部又は後部に一定の間隔D1を空けて配置されている。本実施形態では、車両B1の前部のバンパー(図示せず)に各超音波振動子10〜13が配置されているものとする。
【0039】
ここで、各超音波振動子10〜13の前方の空間C1に物体A1が存在する場合には、上記何れかの実施形態を採用することで物体A1が車両B1の極近距離に存在することを検知することができる。一方、図4に示すように、隣り合う超音波振動子10〜13の間の空間C2に物体A1が存在する場合には、以下の問題が生じる。
【0040】
例えば、超音波振動子10で物体A1を検知する場合、この物体A1は空間C1から離れた位置にあるため、物体A1からの反射波は第2のゲート期間G2で受波することになり、制御部4は物体A1が遠距離に存在すると判定する。しかしながら、この物体A1は超音波振動子10から見れば遠距離に存在するものの、車両B1から見ると極近距離に存在する。このため、1つの超音波振動子10だけでは、空間C2に存在する物体A1が車両B1の極近距離に存在することを制御部4で判定することができない。
【0041】
本実施形態は、隣り合う2つの超音波振動子10〜13の間で超音波の送受波を行うことで、空間C2に存在する物体A1が車両B1の極近距離に存在することを制御部4で判定可能としたことに特徴がある。
【0042】
以下、本実施形態における車両B1の極近距離に存在する物体A1の検知について説明する。なお、以下の説明では、超音波振動子10を「第1の超音波振動子10」、超音波振動子11を「第2の超音波振動子11」、超音波振動子12を「第3の超音波振動子12」、超音波振動子13を「第4の超音波振動子13」と呼ぶものとする。また、各超音波振動子10〜13には、それぞれ駆動部2及び処理部3が個別に設けられ、各駆動部2及び各処理部3との信号の授受は1つの制御部4で行うものとする。
【0043】
先ず、制御部4は、第1の超音波振動子10で超音波の送受波を行わせることで、第1の超音波振動子10の前方の空間C1における物体A1の存在の有無を検知する。この検知方法としては、上記実施形態1〜3のうちの何れかの実施形態を採用すればよい。
【0044】
次に、制御部4は、第1の超音波振動子10から超音波を送波させ、この送波タイミングを記憶する。その後、第1の超音波振動子10から送波される超音波が物体A1で反射し、反射波が第1の超音波振動子10と隣り合う第2の超音波振動子11で受波されると、制御部4はこの受波タイミングを記憶する。そして、制御部4は、第1の超音波振動子10の送波タイミングと、第2の超音波振動子11の受波タイミングとから超音波の送受波に要する伝播時間を求める。制御部4は、この伝播時間から物体A1と第1の超音波振動子10との間の距離と、物体A1と第2の超音波振動子11との間の距離との和を演算する。
【0045】
ここで、各超音波振動子10,11と物体A1との間の距離の和が一定であれば、物体A1は、第1の超音波振動子10及び第2の超音波振動子11を焦点とした楕円上に位置することになる。このため、物体A1が位置する楕円の円周を判定することで、物体A1と車両B1のバンパーとの間の距離を概算することができる。したがって、制御部4は、各超音波振動子10,11と物体A1との間の距離の和と所定の閾値とを比較し、当該距離の和が所定の閾値を下回ると、隣り合う超音波振動子10,11の間の空間C2における極近距離に物体A1が存在すると判定することができる。そして、制御部4は、極近距離に物体A1が存在すると判定した場合には、ブザー等を用いてその旨を外部に報知する。
【0046】
その後、制御部4は、第2の超音波振動子11、隣り合う第2の超音波振動子11及び第3の超音波振動子12、第3の超音波振動子12と順々に超音波の送受波を行わせる。したがって、本実施形態では、各超音波振動子10〜13の前方の空間C1のみならず、隣り合う超音波振動子10〜13の間の空間C2においても極近距離に存在する物体A1を検知することができる。
【0047】
ところで、隣り合う超音波振動子10〜13の間で超音波の送受波を行う場合は、超音波の伝播時間が受波側の超音波振動子10〜13のマスク期間G0よりも長くなる。このため、受波側の超音波振動子10〜13は、マスク期間G0の後に物体A1からの反射波を受波することになるので、残響振動の影響を受けずに極近距離に存在する物体A1の検知を行うことができる。
【0048】
なお、本実施形態では、全ての超音波振動子10〜13の各駆動部2及び各処理部3との信号の授受を1つの制御部4で行っているが、超音波振動子10〜13毎に制御部4を設けてもよい。
【符号の説明】
【0049】
1 超音波振動子(送受波部)
4 制御部
A1 物体
G1 第1のゲート期間
G2 第2のゲート期間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波を送受波する送受波部と、物体からの反射波の受波に要する時間に基づいて近距離及び遠距離の前記物体を検知する第1のゲート期間及び第2のゲート期間を設定する制御部とを備え、前記制御部は、前記両ゲート期間で反射波を受波した状態から前記第2のゲート期間のみで反射波を受波する状態に移行すると、前記第1のゲート期間で検知する位置よりも近い位置に前記物体が存在すると判定することを特徴とする物体検知装置。
【請求項2】
超音波を送受波する送受波部と、物体からの反射波の受波に要する時間に基づいて前記物体を検知する制御部とを備え、前記制御部は、1つ目の反射波を受波してからその受波に要する時間の半分の時間が経過した時点で2つ目の反射波を受波すると、前記1つ目の反射波で検知する位置よりも近い位置に前記物体が存在すると判定することを特徴とする物体検知装置。
【請求項3】
超音波を送受波する送受波部と、物体からの反射波の受波に要する時間に基づいて前記物体を検知する制御部とを備え、前記制御部は、3つの反射波を受波し、各反射波を受波する間隔が等しければ1つ目の反射波で検知する位置よりも近い位置に前記物体が存在すると判定することを特徴とする物体検知装置。
【請求項4】
前記送受波部は、一定の間隔を空けて設けられる複数の超音波振動子を備え、隣り合う前記超音波振動子のうち一方の超音波振動子が送波する超音波を他方の超音波振動子が受波し、前記制御部は、前記一方の超音波振動子の送波タイミングと前記他方の超音波振動子の受波タイミングとに基づいて前記物体を検知することを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の物体検知装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−220435(P2012−220435A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−89015(P2011−89015)
【出願日】平成23年4月13日(2011.4.13)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】