説明

物品径の測定方法

【課題】センサ等を物品内に挿入することなく当該物品の内径や外径を効率的に測定する。
【解決手段】回転テーブル1上に載置された物品2の内周面21と、物品2の外に配設され回転テーブル1の回転軸13からの距離が判明している校正面4aとに、物品2の外に配設した二次元レーザ変位計3のスキャン線を位置させて、内周面21と校正面4aとの変位差を二次元レーザ変位計3にて測定し、上記距離と変位差に基づいて内周面21の半径を算出する。二次元レーザ変位計3のレーザ射出点とスキャン線を含む面上に、回転テーブル1の回転軸13が位置するように変位計3が配置されており、回転テーブル1を回転させて、内周面21とこれと径方向対称位置にある他の内周面における各半径を算出して、これら半径の値を合計することで物品2の直径を算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は物品径の測定方法に関し、特に内径の測定を効率的に行うことができる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
物品径のうち内径を測定するものとして特許文献1には、物品たるリング状モータコアの内部に回転軸を挿入し、回転軸の先端に設けた支持アームの両端に、モータコアの内周面に向けてそれぞれ変位センサを取り付けた内径測定装置が示されている。そして、回転軸を回転させて変位センサをモータコアの内周面に沿って移動させ、この際に変位センサから得られる検出結果に基づいてモータコアの内径等を演算している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−254742
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記従来の内径測定装置では物品内にセンサ等を挿入しなければならず、その設置に手間取るために効率的な測定が困難であるという問題があった。
【0005】
そこで、本発明はこのような課題を解決するもので、センサ等を物品内に挿入することなく当該物品の内径や外径を効率的に測定できる物品径の測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本第1発明では、物品(2)の測定対象円周面(21)と、前記物品(2)の外に配設され当該物品(2)の径中心(11)を通る中心線(13)からの距離(A)が判明している校正面(4a)とを前記物品(2)の外に配設した二次元レーザ変位計(3)のスキャン線(S1,S2)上に位置させて、前記測定対象円周面(21)と校正面(4a)との変位差(r)を前記二次元レーザ変位計(3)にて測定し、前記距離(A)と前記変位差(r)に基づいて前記測定対象円周面(21)の半径(R1)を算出することを特徴とする。
【0007】
本第1発明においては、校正面および二次元レーザ変位計をいずれも物品の外に配設した状態で物品の半径を算出測定することができ、物品内への設置の手間を要しないから、効率的な測定が可能である。
【0008】
本第2発明では、前記二次元レーザ変位計(3)のレーザ射出点(33)とスキャン線(S1,S2)を含む面内に、前記径中心を通る中心線(13)が位置するように前記変位計(3)が配置されている。
【0009】
本第2発明においては、補正計算等をすることなく、簡易に物品の半径を算出することができる。
【0010】
本第3発明では、前記物品(2)は回転テーブル(1)上に載置され、二次元レーザ変位計(3)のレーザ射出点(33)とスキャン線(S1,S2)を含む面内に、前記回転テーブル(1)の回転軸(13)が位置するように変位計(3)が配置されており、前記回転テーブル(1)を回転させて、複数の前記測定対象円周面(21)で各半径を測定する。
【0011】
本第3発明においては、二次元レーザ変位計を移動させることなく回転テーブルを適宜角度づつ回転させることで複数個所で物品の半径を簡易に測定することができる。
【0012】
本第4発明では、前記物品(2)は回転テーブル(1)上に載置され、二次元レーザ変位計(3)のレーザ射出点(33)とスキャン線(S1,S2)を含む面内に、前記回転テーブル(1)の回転軸(13)が位置するように前記変位計(3)が配置されており、前記回転テーブル(1)を回転させて、前記測定対象円周面(21)とこれと径方向対称位置にある他の測定対象円周面における各半径を算出して、これら半径の値を合計することで前記物品(2)の直径を算出する。
【0013】
本第4発明においては、回転テーブルを180度回転させて径方向対称位置にある各測定対象円周面の半径を算出することによって物品の直径を容易に算出することができる。
【0014】
上記カッコ内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【発明の効果】
【0015】
以上のように本発明の物品径の測定方法によれば、センサ等を物品内に挿入することなく当該物品の内径や外径を効率的に測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の測定方法を実施する装置の斜視図である。
【図2】校正部材を設置した装置部分の正面斜視図である。
【図3】測定方法を実施する装置の概略垂直断面図である。
【図4】測定方法を説明する要部概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
なお、以下に説明する実施形態はあくまで一例であり、本発明の要旨を逸脱しない範囲で当業者が行う種々の設計的改良も本発明の範囲に含まれる。
【0018】
図1に本発明方法を実施する装置の構成を示す。図において、回転テーブル1上には内直径を測定すべき円形リング状の物品2が載置されており、物品2はその中心が回転テーブル1の回転中心11とほぼ一致するように、内周縁に当接するガイドローラ12によって回転テーブル1上に位置決めされている。
【0019】
物品2を挟んで一方には物品2の上方位置に二次元変位計3が設けられている。そして、二次元変位計3のレーザ出光窓31からは上下方向へ直線状に広げられたレーザ光L(図3参照)が出力されて、その先端のスキャン線の上部S1が、物品2を挟んで他方の、物品2の上方に位置させられている校正部材4の校正面4aに入射し(図2)、スキャン線の下部S2は物品2の測定対象周面である内周面21に入射している。校正面4aは、回転テーブル1の回転中心11を通る回転軸13から予め定められた距離Aだけ離れて位置させられている。
【0020】
本実施形態では物品2の内周面21は実際には段付き面になっており(図3)、校正面4aと内周面21にスキャン線の上部S1と下部S2がそれぞれ投影されている(図3中の破線)。したがって、内周面21のいずれの段付き面についても以下に説明するようにしてその内直径Dを測定することが可能である。なお、図3においてレーザ光Lの照射範囲中の斜線部Xはスキャン線の合焦が可能な測定可能範囲を示す。
【0021】
本実施形態においては変位計3の設置姿勢を調整することによって、図3に示すように、変位計3のレーザ出光窓31(図1)から射出されて直線状に広がるレーザ光Lは、レーザ射出点33とスキャン線S1,S2を含む面上に回転軸13が位置するように出力されている。校正面4aや内周面21に入射して拡散反射されたレーザ光L1,L2(図3)は変位計3のレーザ受光窓32(図1)に入射して、変位計3内の受光素子上に入力し、ここにスキャン線S1,S2の像が結像する。
【0022】
変位計3では三角測量原理に基づく公知の方法によって、校正面4aと内周面21(本実施形態では最下段の内周面)との間の距離r(変位差、図4)が算出される。回転軸13と校正面4aとの間の距離Aは既知であるから、結局R1=A−rによって、回転軸13と内周面21との間の距離(内半径)R1を算出できる。この後、回転テーブル1を180度回転させ、上記内周面21に代えて径方向対称位置にある他の内周面を測定位置に移動させて、同様の方法で回転軸13と当該他の内周面との間の距離(内半径)R2が算出される。そして、R1+R2=Dより、これら内周面の間の距離、すなわち内直径Dが算出される。
【0023】
上記実施形態においては、互いに径方向対称位置にある内周面までの内半径を算出してこれらの和を内直径としたが、回転テーブル1の回転中心11と物品2の径中心が完全に一致していれば、一の内周面について算出された内半径を単純に2倍すれば内直径が得られる。
【0024】
上記実施形態では、レーザ射出点33とスキャン線S1,S2を含む面上に回転テーブル1の回転軸13が位置するようにレーザ出力をしているが、補正計算が必要になる煩雑さを厭わなければ、回転テーブル1の回転軸13がレーザ射出点33とスキャン線S1,S2を含む面上にある必要は必ずしもない。
【0025】
上記実施形態では物品2を回転テーブル1上に載せて容易に回転移動可能としたが、回転テーブル1上に載せる必要はなく、この場合には二次元レーザ変位計3のレーザ射出点33とスキャン線S1,S2を含む面内に、物品2の径中心を通る中心線が位置するように変位計3を配置すると良い。
【0026】
上記実施形態で、回転テーブルを所定角度ごとに回転させて、複数の内周面について各内半径を測定するようにしても良い。
【0027】
上記実施形態では物品の内径を測定したが、外径を測定する場合にも本発明方法を適用できることはもちろんである。
【符号の説明】
【0028】
1…回転テーブル、11…径中心、13…回転軸(中心線)、2…物品、21…内周面(測定対象円周面)、3…二次元レーザ変位計、33…レーザ射出点、4a…校正面、A…距離、r…変位差、R1…半径、S1…スキャン線上部、S2…スキャン線下部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品の測定対象円周面と、前記物品の外に配設され当該物品の径中心を通る中心線からの距離が判明している校正面とに、前記物品の外に配設した二次元レーザ変位計のスキャン線を位置させて、前記測定対象円周面と校正面との変位差を前記二次元レーザ変位計にて測定し、前記距離と前記変位差に基づいて前記測定対象円周面の半径を算出することを特徴とする物品径の測定方法。
【請求項2】
前記二次元レーザ変位計のレーザ射出点とスキャン線を含む面内に、前記径中心を通る中心線が位置するように前記変位計が配置されている請求項1に記載の物品径の測定方法。
【請求項3】
前記物品は回転テーブル上に載置され、前記校正面は前記回転テーブルの回転軸からの距離が判明しており、前記二次元レーザ変位計のレーザ射出点とスキャン線を含む面上に、前記回転軸が位置するように変位計が配置されており、前記回転テーブルを回転させて、複数の前記測定対象円周面で各半径を測定する請求項1に記載の物品径の測定方法。
【請求項4】
前記物品は回転テーブル上に載置され、前記校正面は前記回転テーブルの回転軸からの距離が判明しており、前記二次元レーザ変位計のレーザ射出点とスキャン線を含む面上に、前記回転軸が位置するように前記変位計が配置されており、前記回転テーブルを回転させて、前記測定対象円周面とこれと径方向対称位置にある他の測定対象円周面における各半径を算出して、これら半径の値を合計することで前記物品の直径を算出する請求項1に記載の物品径の測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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