説明

物品管理方法及び物品管理装置

【課題】人間の目視による時間経過の認識が容易に行え、また、繰り返しの使用ができることにより、時間経過情報の調整(リセット)ができるようになされた物品管理方法を提供する。
【解決手段】所定波長の光によって励起されて発光し時間経過に応じて発光強度が低下する物質を含有する塗料を用いて管理対象物品に対し所定のマーキングを行い(ステップst1)、経過時間の管理開始時にマーキングに対して所定波長の光を照射し(ステップst3)、マーキングの発光状態により管理開始時からの経過時間を表示する(ステップst4)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工場設備、プラント設備及び生産ライン設備等、時間経過に影響を受ける物品を扱うシステムにおいて、個々の物品の時間経過を管理するための物品管理方法及び物品管理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
工場設備、プラント設備及び生産ライン設備等においては、時間経過に影響を受ける物品、例えば、時間経過により品質が劣化する物品等を扱う場合がある。このような物品を扱う場合には、個々の物品の時間経過を管理する必要がある。時間経過を管理しておかないと、所定の時間を経過し、例えば、品質が劣化した物品を、生産等に供してしまう虞があるからである。
【0003】
従来、物品の時間経過を管理するには、管理対象の物品にバーコードを添付しておき、作業者が個々の物品のバーコードをバーコードリーダで読み取ることにより、時間経過を含む物品に関する情報を認識することが行われている。
【0004】
また、特許文献1には、変色時間管理層が記載されている。この変色時間管理層は、油状物質のマイクロカプセルを含んでなる〔A〕層と油状物質と接触して変色を生起する物質を含んでなる〔B〕層の間に介在しており、マイクロカプセルを破壊して流出する油状物質が〔B〕層に到達し、変色を生起するまでの所要時間を制御するためのものである。この管理層は、スチレンを必須成分とする(メタ)アクリル酸エステル共重合体である芯と、メタクリル酸メチルを必須成分とする(メタ)アクリル酸エステル共重合体である殻とからなる多層構造粒子エマルションを乾燥して得られる連続皮膜である。
【0005】
特許文献2には、一時的に温度管理する管理温度を越えてもその後の温度管理を行うことができる温度管理部材及びその温度管理部材を用いた温度管理方法が記載されている。この温度管理部材は、温度により発色の濃度が異なり、環境温度下では不可逆性で、結晶−非結晶又は相分離−非相分離で色が変化する示温部材である。この温度管理部材は、示温部材のガラス転移温度が温度管理をする管理温度を越えた高い温度に設定されており、示温部材の発色時の色が吸収する波長の光を照射して、その反射光強度又は透過光強度を検知することにより、温度管理を行うようにしたものである。
【0006】
【特許文献1】特公平7−65029号公報
【特許文献2】特開2001−91368
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、管理対象の物品にバーコードを添付しておく従来の時間経過管理においては、バーコードリーダを用いて個々の物品のバーコードを読み取らなければ、時間情報が得られず、人間の目視による時間経過の認識ができないので、不便である。
【0008】
また、特許文献1に記載された色制御技術は、温度変化を管理するための技術であり、温度変化に依らずに時間経過情報を得るためには不適当であり、また、繰り返しの使用ができないため、時間経過情報の調整(リセット)ができず、不便である。
【0009】
そして、特許文献2に記載された管理部材も、温度変化を管理するための技術であり、温度変化に依らずに時間経過情報を得るためには不適当であり、また、所定の色の反射率の情報を読み込まなければ必要な情報が得られないため、不便である。
【0010】
そこで、本発明は、前記の実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、人間の目視による時間経過の認識が容易に行え、また、繰り返しの使用ができることにより、時間経過情報の調整(リセット)ができるようになされた物品管理方法及び物品管理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前述の課題を解決し、前記目的を達成するため、本発明に係る物品管理方法は、以下の構成を有するものである。
【0012】
〔構成1〕
所定波長の光によって励起されて発光し時間経過に応じて発光強度が低下する物質を含有する塗料を用いて管理対象物品に対し所定のマーキングを行い、経過時間の管理開始時にマーキングに対して所定波長の光を照射し、マーキングの発光状態により管理開始時からの経過時間を表示することを特徴とするものである。
【0013】
〔構成2〕
基調色が黒色であり時間経過に応じて揮発により変色する揮発性塗料を用いて管理対象物品に対し経過時間の管理開始時にバーコード印字を行い、バーコードの色の状態により管理開始時からの経過時間を表示することを特徴とするものである。
【0014】
また、本発明に係る物品管理装置は、以下の構成を有するものである。
【0015】
〔構成3〕
所定波長の光によって励起されて発光し時間経過に応じて発光強度が低下する物質を含有する塗料により所定のマーキングがなされた管理対象物品に対し所定波長の光の照射を行う光照射手段と、光照射手段を制御する制御手段とを備え、制御手段は、経過時間の管理開始時に、光照射手段により、マーキングに対する所定波長の光の照射を行い、マーキングの発光状態により、管理開始時からの経過時間を表示させることを特徴とするものである。
【0016】
〔構成4〕
基調色が黒色であり時間経過に応じて揮発により変色する揮発性塗料を用いて管理対象物品に対しバーコード印字を行う印字手段と、印字手段を制御する制御手段とを備え、制御手段は、経過時間の管理開始時に、管理対象物品に対するバーコード印字を行い、バーコードの色の状態により、管理開始時からの経過時間を表示させることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る物品管理方法においては、構成1を有することにより、所定波長の光によって励起されて発光し時間経過に応じて発光強度が低下する物質を含有する塗料を用いて管理対象物品に対し所定のマーキングを行い、経過時間の管理開始時にマーキングに対して所定波長の光を照射し、マーキングの発光状態により管理開始時からの経過時間を表示するので、人間の目視による時間経過の認識が容易に行え、また、繰り返しの使用ができることにより、時間経過情報の調整(リセット)ができる。また、塗料の色を使い分けることにより、他の情報、例えば、残り時間の表示、食料品等の劣化程度の表示(時間経過と共に劣化することがわかっている場合)、場所の情報(作業ゲート単位で使用する色を指定してある場合)等を付加することができる。
【0018】
本発明に係る物品管理方法においては、構成2を有することにより、基調色が黒色であり時間経過に応じて揮発により変色する揮発性塗料を用いて管理対象物品に対し経過時間の管理開始時にバーコード印字を行い、バーコードの色の状態により管理開始時からの経過時間を表示するので、人間の目視による時間経過の認識が容易に行える。
【0019】
本発明に係る物品管理装置においては、構成3を有することにより、所定波長の光によって励起されて発光し時間経過に応じて発光強度が低下する物質を含有する塗料により所定のマーキングがなされた管理対象物品に対し所定波長の光の照射を行う光照射手段と、光照射手段を制御する制御手段とを備え、制御手段は、経過時間の管理開始時に、光照射手段により、マーキングに対する所定波長の光の照射を行い、マーキングの発光状態により、管理開始時からの経過時間を表示させるので、人間の目視による時間経過の認識が容易に行え、また、繰り返しの使用ができることにより、時間経過情報の調整(リセット)ができる。また、塗料の色を使い分けることにより、他の情報、例えば、残り時間の表示、食料品等の劣化程度の表示(時間経過と共に劣化することがわかっている場合)、場所の情報(作業ゲート単位で使用する色を指定してある場合)等を付加することができる。
【0020】
本発明に係る物品管理装置においては、構成4有することにより、基調色が黒色であり時間経過に応じて揮発により変色する揮発性塗料を用いて管理対象物品に対しバーコード印字を行う印字手段と、印字手段を制御する制御手段とを備え、制御手段は、経過時間の管理開始時に、管理対象物品に対するバーコード印字を行い、バーコードの色の状態により、管理開始時からの経過時間を表示させるので、人間の目視による時間経過の認識が容易に行える。
【0021】
すなわち、本発明は、人間の目視による時間経過の認識が容易に行え、また、繰り返しの使用ができることにより、時間経過情報の調整(リセット)ができるようになされた物品管理方法及び物品管理装置を提供することができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明を実施するための最良の形態について図面を参照して説明する。
【0023】
〔第1の実施の形態〕
図1は、本発明に係る物品管理方法の第1の実施の形態を説明するフローチャートである。
【0024】
本発明に係る物品管理方法においては、図1に示すように、まず、ステップst1において、管理対象物品となる所定の部材や指示票に対し、所定のマーキングを行う。このマーキングは、所定波長の光によって励起されて発光し、時間経過に応じて発光強度が低下する物質、すなわち、蓄光顔料、または、蛍光顔料を含有する塗料を用いて行う。このとき、このマーキングは、無色(発光なし)の状態となっている。
【0025】
本発明において、蓄光顔料としては、暗時において青色発光または緑色発光を呈する市販の蓄光顔料を使用することができる。また、蛍光顔料としては、赤色(シンロイヒ(株)製FA203(レッド):商品名)、桃色(シンロイヒ(株)製FA207(ピンク):商品名)、橙色の赤色系蛍光顔料(シンロイヒ(株)製FA204(オレンジ):商品名)等を使用することができる。また、集光性蛍光染料として、赤色系集光性蛍光染料(BASF社製ルモゲンF300(レッド):商品名)等を使用することができる。
【0026】
次に、ステップst2において、ステップst1でマーキングした管理対象物品を、所定の工程に搬送する。この搬入がなされたときが、経過時間の管理開始時となる。
【0027】
そして、ステップst3において、管理対象物品のマーキングに対して、所定波長の光を照射し、マーキングをした塗料に含有される蓄光顔料、または、蛍光顔料を励起し、発光させる。このとき、本発明に係る物品管理装置を使用することができる。本発明に係る物品管理装置は、マーキングをした塗料に含有される物質を励起するための所定波長の光の照射を行う光照射手段を有している。この光照射手段は、照射対象となる管理対象物品の他には光が照射されないように、光の拡散を防止する覆い等を有していることが好ましい。また、この光照射手段は、制御手段によって制御される。この制御手段は、経過時間の管理開始時に、光照射手段により、マーキングに対する所定波長の光の照射を行う。
【0028】
次に、ステップst4において、管理対象物品を次の処理工程に搬送する。このとき、管理対象物品のマーキングは、その発光状態により、管理開始時からの経過時間を表示する。この表示は、マーキングの発光強度(残光、退色)によって表示されるものであり、人間の目視による時間経過の認識が容易に行える。
【0029】
ステップst5において、マーキングの発光が弱くなっている(無色になっている)ものを優先して、工程において使用し、ステップst2に戻る。ステップst2においては、別の工程における経過時間の管理開始時を設定し、再びステップst3において、管理対象物品のマーキングに対し、所定波長の光を照射することになる。
【0030】
この物品管理方法におけるマーキングは、所定波長の光の照射後、所定の時間が経過し発光強度が弱まっても、再び所定波長の光を照射することにより、発光状態が初期の状態に戻るので、繰り返しの使用が可能である。
【0031】
なお、マーキングは、文字や、種々の記号としてもよい。例えば、このマーキングは、日時、工程名、物品名などを表示する文字や記号を兼ねたものとしてもよい。
【0032】
〔第2の実施の形態〕
図2は、本発明に係る物品管理方法の第2の実施の形態を説明するフローチャートである。
【0033】
また、本発明に係る物品管理方法においては、図2に示すように、まず、ステップst6において、基調色が黒色であり時間経過に応じて揮発により変色する揮発性塗料を用いて、管理対象物品に対し、バーコード印字を行うようにしてもよい。このバーコード印字は、経過時間の管理開始時に行い、バーコードの色の状態により管理開始時からの経過時間を表示することができる。
【0034】
このような揮発性塗料としては、例えば、炭酸カルシウムを90重量%以上含む少なくとも1種の無機顔料、少なくとも1種の水溶性セルロース、アンモニア水、pH=5.0〜8.0に変色範囲を有する少なくとも1種のpH指示薬、及び水を含む水性塗料であって、無機顔料、水溶性セルロース、及びpH指示薬の割合が、水性塗料組成物の総重量に対して、それぞれ、45〜55重量%、0.2〜1.0重量%、及び0.01〜0.1重量%であり、水性塗料組成物におけるアンモニアNH3濃度が0.028〜0.224重量%であるものを使用することができる。
【0035】
この塗料は、塗膜とした際に一時的なマーキングが可能であり、塗布後の経過時間を把握することもできる。すなわち、この塗料は、塗布後所定時間経過後に、塗膜が消失する。
【0036】
したがって、本発明に係る物品管理方法において、管理対象物品に印字されたバーコードは、ステップst7で所定の工程に搬送されたときには、黒色で表示されており、ステップst8で所定の時間が経過したときには、時間の経過とともに、青色、緑色と変色してゆく。このような変色は、時間の経過を表示しており、人間の目視による時間経過の認識が容易に行える。
【0037】
そして、ステップst9では、印字されたバーコードの色が薄い順、すなわち、黒色からの変色が進んだものから順に、処理順序を決定する。ステップst10においては、ステップst9で決定された順序に従って、管理対象物品に対する処理を実施する。
【0038】
次に、ステップst7に戻り、別の工程における経過時間の管理開始時を設定する。このとき、再び、管理対象物品に対し、時間経過に応じて変色する揮発性塗料を用いてバーコード印字を行えば、このバーコードは、黒色で表示される。
【0039】
ステップst10において、最終工程のみが残っている場合には、ステップst11において、管理対象物品を最終工程に搬送し、再び、バーコード印字を行い、印字されたバーコードの色が薄い順に処理を行えば、全行程が終了する。
【0040】
このような本発明に係る物品管理方法を実施するための本発明に係る物品管理装置は、管理対象物品に対しバーコード印字を行う印字手段と、この印字手段を制御する制御手段とを備えている。印字手段は、基調色が黒色であり時間経過に応じて揮発により変色する揮発性塗料を用いて、バーコード印字を行う。制御手段は、印字手段により、経過時間の管理開始時に、管理対象物品に対するバーコード印字を行う。
【0041】
この物品管理装置により印字されたバーコードは、色の状態により、管理開始時からの経過時間を表示するので、人間の目視による時間経過の認識が容易に行える。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明に係る物品管理方法の第1の実施の形態を説明するフローチャートである。
【図2】本発明に係る物品管理方法の第2の実施の形態を説明するフローチャートである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定波長の光によって励起されて発光し時間経過に応じて発光強度が低下する物質を含有する塗料を用いて、管理対象物品に対し、所定のマーキングを行い、
経過時間の管理開始時に、前記マーキングに対して、前記所定波長の光を照射し、
前記マーキングの発光状態により、前記管理開始時からの経過時間を表示する
ことを特徴とする物品管理方法。
【請求項2】
基調色が黒色であり時間経過に応じて揮発により変色する揮発性塗料を用いて、管理対象物品に対し、経過時間の管理開始時にバーコード印字を行い、
前記バーコードの色の状態により、前記管理開始時からの経過時間を表示する
ことを特徴とする物品管理方法。
【請求項3】
所定波長の光によって励起されて発光し時間経過に応じて発光強度が低下する物質を含有する塗料により所定のマーキングがなされた管理対象物品に対し、前記所定波長の光の照射を行う光照射手段と、
前記光照射手段を制御する制御手段と
を備え、
前記制御手段は、経過時間の管理開始時に、前記光照射手段により、前記マーキングに対する前記所定波長の光の照射を行い、前記マーキングの発光状態により、前記管理開始時からの経過時間を表示させる
ことを特徴とする物品管理装置。
【請求項4】
基調色が黒色であり時間経過に応じて揮発により変色する揮発性塗料を用いて、管理対象物品に対し、バーコード印字を行う印字手段と、
前記印字手段を制御する制御手段と
を備え、
前記制御手段は、経過時間の管理開始時に、前記管理対象物品に対するバーコード印字を行い、前記バーコードの色の状態により、前記管理開始時からの経過時間を表示させる
ことを特徴とする物品管理装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−100355(P2010−100355A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−270726(P2008−270726)
【出願日】平成20年10月21日(2008.10.21)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】